JP2006002225A - 電解コンデンサ用アルミニウム箔および電解コンデンサ - Google Patents

電解コンデンサ用アルミニウム箔および電解コンデンサ Download PDF

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Abstract

【課題】 エッチングによるピット形成の起点となるエッチング開始点を増加させるとともに均一化させ、更に形成するピットのピット長を均一にさせることにより、静電容量および箔の強度を向上させることが可能な電解コンデンサ用アルミニウム箔を提供する。
【解決手段】 立方体方位率が80%以上であるとともに、FeおよびSiと、0.1ppmを越えて2ppm未満の範囲のPbと、0.1ppmを越えて10ppm未満の範囲のSnと、99.9質量%以上のAlとが含有され、かつPbとSnの合計量が0.1ppmを越えて10ppm未満の範囲であることを特徴とする電解コンデンサ用アルミニウム箔を採用する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、電解コンデンサ用アルミニウム箔およびこのアルミニウム箔を電極として備えた電解コンデンサに関するものである。
電解コンデンサの電極に用いられるアルミニウム箔は、陽極用、陰極用に限らず、粗面化処理(電解エッチング)を行うことによって表面積を有効に増大させ、よって静電容量を高めて使用されるのが一般的である。表面積を有効に増大させるためには、電解エッチングによってアルミニウム箔の表面にピット(腐食孔)を多数発生させる必要がある。その一方で、ピットの形成に伴ってアルミニウム箔の強度が低下する場合がある。従って、ピットの形成に際しては、ピットの形成位置の均一化を図るとともに、ピット長(ピットの深さ)を均一に制御することが必要とされている。従来のコンデンサ用アルミニウム箔では、ピット長がピット毎に不均一な場合が多く、特に著しく長く伸びたピットの存在によってアルミニウム箔の強度が著しく低下する場合があった。
そこで、下記特許文献1には、アルミニウムの結晶粒の大傾角粒界を少なくすることにより不均一なピット形成を抑制する手段が開示されている。また下記特許文献2には、アルミニウム箔をクラッド材とすることにより、箔中心部分の強度を向上させることでアルミニウム箔全体の強度向上を実現する手段が開示されている。更に、下記特許文献3には、Fe、SiおよびFeSiの含有率を限定することで結晶粒の粗大化を防止し、アルミニウム箔の強度低下を防止する手段が開示されている。
特開2000−269093号公報 特開2000−91164号公報 特開2000−3836号公報
しかし、上記の特許文献1に記載のアルミニウム箔では、実際に得られる効果が十分ではなかった。また特許文献2に記載のアルミニウム箔では、クラッド材にすることによって生産コストが高くなり、実用的ではないという問題があった。更に、特許文献3に記載のアルミニウム箔では、SiFeの含有量を6ppm以下にすることがコスト的に難しく、実際のコンデンサ用アルミニウム箔として実用化が難しい状況であった。
そこで本発明者らが、電解コンデンサ用アルミニウム箔の合金組成について鋭意研究を行った結果、PbおよびSnを同時に添加するとともに、これらPbおよびSnの添加量の割合を最適化させ、更に立方体方位率を高くすることによって、静電容量の向上と強度向上を同時に達成できることを見いだした。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、エッチングによるピット形成の起点となるエッチング開始点を増加させるとともに均一化させ、更に形成するピットのピット長を均一にさせることにより、静電容量および箔の強度を向上させることが可能な電解コンデンサ用アルミニウム箔およびこれを備えた電解コンデンサを提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
本発明の電解コンデンサ用アルミニウム箔は、立方体方位率が80%以上であるとともに、FeおよびSiと、0.1ppmを越えて2ppm未満の範囲のPbと、0.1ppmを越えて10ppm未満の範囲のSnと、99.9質量%以上のAlとが含有され、かつPbとSnの合計量が0.1ppmを越えて10ppm未満の範囲であることを特徴とする。
上記の電解コンデンサ用アルミニウム箔によれば、PbとSnとが上記の範囲で含まれているので、ピット形成の際のエッチング開始点の数を従来よりも増加させるとともにエッチング開始点を均一に発生させることができ、ピットの数を増やして表面積を増大させ、これにより静電容量を高めることができる。また、立方体方位率が80%以上であるとともにアルミニウムの含有率が99.9質量%以上なので、形成されるピットのピット長(ピットの深さ)を均一にすることができる。これにより、ピット長のバラツキがなくなり、アルミニウム箔のピット部分を除いた厚みが均一になり、箔の強度が局部的に低下することがなく、結果的に箔の強度を高めることができる。更にエッチング開始点が均一に形成されることから、箔強度低下の要因となるピットが一部に集中することなく箔全体に均一に形成され、これにより箔の強度をより向上できる。
また上記の電解コンデンサ用アルミニウム箔においては、SiおよびFeの添加率がそれぞれ、5ppm以上100ppm以下の範囲であることが好ましい。この構成によって、立方体方位率を80%以上にすることができる。
また上記の電解コンデンサ用アルミニウム箔においては、Cuが10ppmを越えて100ppm未満の範囲で含まれていてもよい。更に、Ge,Zn,Zr,Naが含まれていてもよい。Ge,Zn,Zr,Naの添加率は合計で1ppmを越えて50ppm未満の範囲が好ましい。
次に本発明に電解コンデンサは、先のいずれかに記載の電解コンデンサ用アルミニウム箔を電極として備えていることを特徴とする。
この構成によれば、電解コンデンサの静電容量を従来よりも高くすることができる。
本発明の電解コンデンサ用アルミニウム箔によれば、エッチングによるピット形成の起点となるエッチング開始点を増加させるとともに均一化させ、更に形成するピットのピット長を均一にさせることにより、静電容量および箔の強度を向上させることができる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の電解コンデンサ用アルミニウム箔は、FeおよびSiと、0.1ppmを越えて2ppm未満の範囲のPbと、0.1ppmを越えて10ppm未満の範囲のSnと、99.9質量%以上のAlとが含有され、かつPbとSnの合計量が0.1ppmを越えて10ppm未満の範囲で含有されて構成されている。またこの電解コンデンサ用アルミニウム箔においては、立方体方位率が80%以上とされている。更に、FeおよびSiの添加率がそれぞれ、5ppmを越えて100ppm未満の範囲とされている。以下、アルミニウム箔の添加元素の含有率および立方体方位率の限定理由について説明する。
Pbは、アルミニウム箔表面に濃縮されやすく、箔表面の活性を高める効果があり、エッチング開始点の数を従来よりも増加させることができる。特にPbは、箔表面に形成される極薄の酸化皮膜中に濃縮され、ピット形成のエッチング時に抵抗となる酸化皮膜を弱体化させ、ピット形成を容易にさせる効果がある。
また、Snは、Pbと同様に、アルミニウム箔表面に濃縮されやすく、箔表面の活性を高める効果があり、エッチング開始点の数を従来よりも増加させることができる。更にSnは、Pbが濃縮される酸化皮膜の直下のアルミニウム箔中で濃縮され、ピット形成のエッチング時に抵抗となる酸化皮膜を弱体化させ、ピット形成を容易にさせる効果がある。
良好なエッチング性を得るためには、PbとSnが適切なバランスで含有される必要がある。Pbは、酸化皮膜の脆弱化の効果が高いものの、ピット均一化の効果が不足している。一方、Snは、Pbよりも低温で表面に濃縮され、表層に均一分散する性質がある。ピットはこの均一に分散されたSnを基点にして発生するので、エッチングの際の電解電流を均一化される。これにより、発生するピット径が均一になり、結果として、ピット長のバラツキが低減される。
ピット長のバラツキが低減されることで、ピットの形成部分を除いたアルミニウム箔の厚みが均一になり、エッチング後の折り曲げ強度を向上させることができる。
なお、PbとSnのバランスが悪いと、エッチングの際に過度の表面溶解が起きたり、酸化皮膜の抵抗を受けてピットが十分に分散形成されなくなって静電容量の向上が望めなくなる。
以上のことから、Pbの添加率は0.1ppmを越えて2ppm未満の範囲が好ましい。またSnの添加率は0.1ppmを越えて10ppm未満の範囲が好ましい。更に、PbとSnの合計量は0.1ppmを越えて10ppm未満の範囲が好ましい。PbおよびSnの添加率がこの範囲から外れると、ピット長の均一なピットが形成されず、またピットの分布も不均一になるおそれがある。Pbの添加率は0.2ppmを越えて1.5ppm未満の範囲がより好ましい。またSnの添加率は0.3ppmを越えて5ppm未満の範囲がより好ましい。更に、PbとSnの合計量は0.5ppmを越えて6.5ppm未満の範囲がより好ましい。
また、SiおよびFeを添加することにより、立方体方位率を80%以上とすることができ、ピット長が均一なピットが得られる。またピットの分布も均一になる。SiおよびFeの含有率はそれぞれ、5ppm以上30ppm以下の範囲が好ましく、10ppm以上30ppm以下の範囲がより好ましい。FeおよびSiがそれぞれ5ppm未満になると、結晶粒が異状成長しやすくなり、また高純度アルミニウムが必要になってコスト高となるので好ましくない。またFeおよびSiがそれぞれ100ppmを越えると、SiFeの析出物が発生して立方晶の成長が妨げられ、必要な立方体方位率が得られなくなる。
また、立方体方位率は、体積比で80%以上であることが望ましく、95%以上がより望ましい。ピットは、アルミニウムの(100)面に沿って成長する性質がある。このため、異方位部分では箔の断面方向に対して斜めにピットが成長し、均一なピット長さが得られなくなる。このため、最低で80%以上の立方体方位率がないと、均一なピットが得られず、強度が著しく低下してしまう。
なお、立方体方位率は、例えば、SiおよびFeの添加率を上述した範囲に設定するとともに、熱処理の最終焼鈍を500℃ないし600℃の温度範囲で行なうことで、80%以上にすることができる。
次にCuは、エッチング時の溶解減量を増加させ、静電容量を向上させるのに重要な元素である。この作用を十分に得るためにはできるだけ多くのCuを含有させるのが望ましい。本発明では10ppmを越えて100ppm未満の範囲が好ましく、20ppmを越えて60ppm未満の範囲がより好ましい。Cuの含有率が10ppm以下ではその添加効果が十分に得られない。またCuが100ppm以上になると過剰な溶解による無効溶解部が増加し、静電容量が低下する。
また本発明の電解コンデンサ用アルミニウム箔には、更にGe、Zn、Zr、Naのうちの1種以上の元素が添加されていることが好ましい。これらの元素は、ピットを増加させるとともにピットを均一に分散させる効果がある。これらの元素の添加量は合計で1ppmを越えて50ppm未満の範囲が好ましく、5ppmを越えて30ppm未満の範囲がより好ましい。
なお、その他の不可避的不純物は、アルミニウム箔の無効溶解性を高めてしまうので、できるだけ抑制することが好ましいが、合計で50ppm以下程度であれば、PbおよびSnの添加効果を阻害するおそれがない。
またAlの含有量は99.9質量%以上であることが好ましい。Alの含有率が低下すると、特に中高圧コンデンサに用いた場合にリーク電流が増加し、コンデンサとしての基本性能が大幅に低下するので好ましくない。
本発明の電解コンデンサ用アルミニウム箔の製造に際しては、上記した成分をその設定範囲内で含有させ溶製したアルミニウム合金を用いることができる。該合金は常法により溶製することができ、例えば溶解、鋳造、均質化熱処理等を経て得ることができる。上記により得られた合金は、インゴット形態で高温に加熱して熱間圧延する。熱間圧延時条件は特に限定されるものではなく、この熱間圧延によって数mm厚程度のシート材とする。このシート材に対し続いて冷間圧延を行い、数十μmから100μm程度のアルミニウム合金箔を得る。なお、冷間圧廷途中あるいは冷間圧廷終了後に適宜脱脂を加えてもよい。また冷間圧廷の途中で適宜中間焼鈍を加えても差し支えない。また、アルミニウム箔の製造に際し、直接連続圧延によってアルミニウム薄板を得、これを冷間圧延して箔とするものであってもよい。更に、熱処理工程の最終焼鈍処理では、立方体方位率を80%以上とすべく、焼鈍温度を500℃ないし600℃の範囲とすることが望ましい。
上記により得られたアルミニウム箔に対しては、その後、粗面化処理がなされる。粗面化処理は、一般には塩酸を主体とする電解液を用いた電解エッチング等によって行われるが、本発明としてはこの粗面化処理の具体的条件等について特に限定されるものではなく、例えば常法に従って行うことができる。粗面化処理においては、上記成分の設定によって箔にピットが高密度で均一に形成され、高い粗面化率が得られる。特に、PbとSnは、粗面化処理でのエッチング開始点を増加させるとともにエッチンング開始点を均一に形成させ、これによりピットの数が増加するとともにピットが均一に形成され、静電容量が顕著に増大される。なお、電解エッチングは直流法、交流法のいずれでもよい。
さらに粗面化処理を施したアルミニウム箔には耐電圧性の酸化皮膜を形成する。この酸化皮膜は、通常は化成処理による陽極酸化皮膜として形成される。この酸化皮膜の形成方法も本発明としては特に手法、条件が限定されるものではなく、例えば常法により行うことができる。こうして得られた箔を常法により電解コンデンサに電極として組み込むことにより静電容量が高く、かつ漏れ電流の小さいコンデンサが得られる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
表1に示す組成のアルミニウム箔を通常の鋳造、面削、均質化処理、熱間圧延、冷間圧延により作製した。工程の途中で適宜、中間焼鈍及び脱脂洗浄を行った。得られたアルミニウム箔の厚さは100μmである。この箔に、Ar雰囲気中で420℃〜580℃、6時間保持の条件で最終焼鈍を施した。さらに、1モル/Lの塩酸と3モル/Lの硫酸との混合溶液を電解浴とし、液温75℃、DC電流密度0.2A/cm、電解時間120秒の条件で電解を行い、次いで75℃の50%硝酸で7分間の化学エッチングを行った後、270Vでの化成処理を行って静電容量を測定した。静電容量の測定結果を、実施例5を100%とする相対評価として表1に示した。
また、立方体方位率は、電解エッチング処理前のアルミニウム箔に対し、硝酸と塩酸の混酸を用いたエッチングにより立方体方位を現出させ、面分析を行ない体積率を算出した(使用したアルミニウム箔では、立方体方位が箔の厚み方向に沿って表裏に貫通しており、面分析により体積率を算出できる)。
更に、得られたアルミニウム箔について、折曲げ強度を測定した。折曲げ強度の測定は、MIT型自動折り曲げ試験機(JIS P 8115準拠)により行なった。折曲げ強度の測定結果を、実施例5を100%とする相対評価として表1に示した。
Figure 2006002225
表1に示したように、実施例1ないし実施例14については、添加元素の含有率および立方体方位率が本発明の範囲にあるため、いずれも優れた静電容量を示し、また高い折曲げ強度を示した。
一方、比較例1ないし比較例17については、静電容量、折曲げ強度のいずれか一方または両方が実施例よりも低くなった。特に比較例1ないし5および13、15、16については、添加元素濃度が最適範囲から外れたため、静電容量および折り曲げ強度が低下した。また、比較例10〜12および比較例17については、最終焼鈍温度が500℃未満であったため、立方体方位率が80%未満となり、静電容量が低下した。

Claims (2)

  1. 立方体方位率が80%以上であるとともに、FeおよびSiと、0.1ppmを越えて2ppm未満の範囲のPbと、0.1ppmを越えて10ppm未満の範囲のSnと、99.9質量%以上のAlとが含有され、かつPbとSnの合計量が0.1ppmを越えて10ppm未満の範囲であることを特徴とする電解コンデンサ用アルミニウム箔。
  2. 請求項1に記載の電解コンデンサ用アルミニウム箔を電極として備えたことを特徴とする電解コンデンサ。

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2009062595A (ja) * 2007-09-07 2009-03-26 Sumitomo Light Metal Ind Ltd アルミニウム箔材
JP2009084658A (ja) * 2007-10-02 2009-04-23 Nippon Light Metal Co Ltd 電解コンデンサ用アルミニウム合金箔
JP2017031448A (ja) * 2015-07-29 2017-02-09 三菱アルミニウム株式会社 電解コンデンサ用アルミニウム箔

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