JP2001152212A - 磁気記録材用紡錘状合金磁性粒子粉末の製造法 - Google Patents

磁気記録材用紡錘状合金磁性粒子粉末の製造法

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JP2001152212A
JP2001152212A JP33680099A JP33680099A JP2001152212A JP 2001152212 A JP2001152212 A JP 2001152212A JP 33680099 A JP33680099 A JP 33680099A JP 33680099 A JP33680099 A JP 33680099A JP 2001152212 A JP2001152212 A JP 2001152212A
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  • Manufacture Of Metal Powder And Suspensions Thereof (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、良好な磁気特性を維持したまま、
優れた分散性を有していると共に可及的に可溶性塩が低
減されているFe及びCoを主成分とする紡錘状合金磁
性粒子を製造する方法に関するものである。 【解決手段】 紡錘状合金磁性粒子粉末の製造法とは、
紡錘状ゲータイト粒子又は紡錘状へマタイト粒子を出発
原料とし、前記出発原料を加熱還元を行って紡錘状合金
磁性粒子粉末を得、該紡錘状合金磁性粒子粉末を気相中
で表面酸化する第1工程、第1工程を経由した紡錘状合
金磁性粒子粉末を水洗する第2工程、第2工程を経由し
た紡錘状合金磁性粒子粉末に付着している水を親水性、
且つ、沸点が100℃以下の有機溶媒で置換して脱水ろ
過した後に、造粒成型する第3工程及び第3工程を経由
した紡錘状合金磁性粒子粉末を50〜100℃の温度範
囲の空気中で有機溶媒を乾燥させると共に再表面酸化す
る第4工程からなる製造法である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、良好な磁気特性を
維持したまま、優れた分散性を有していると共に可及的
に可溶性塩が低減されているFe及びCoを主成分とす
る紡錘状合金磁性粒子を製造する方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】近年、オーディオ用、ビデオ用、コンピ
ュータ用の磁気記録再生用機器の小型軽量化、長時間記
録化、記録の高密度化、若しくは記憶容量の増大化が著
しく進行しており、磁気記録媒体である磁気テープ、磁
気ディスクに対する高性能化、高密度記録化の要求が益
々高まってきている。
【0003】即ち、磁気記録媒体の高画像画質、高出力
特性、殊に周波数特性の向上及び保存特性、耐久性の向
上が要求され、その為には、磁気記録媒体に起因するノ
イズの低下、高い保磁力Hcと保磁力分布SFD、耐候
性ΔBmが優れていることが要求されている。
【0004】磁気記録媒体のこれらの諸特性は磁気記録
媒体に使用される磁性粒子粉末と密接な関係を有してお
り、近年においては、従来の酸化鉄磁性粒子粉末に比較
して高い保磁力と大きな飽和磁化値σsを有する鉄を主
成分とする金属磁性粒子粉末が注目され、デジタルオー
ディオテープ(DAT)、8mmビデオテープ、Hi−
8テープ、さらにハイビジョン用のW−VHSテープ、
デジタル記録方式のDVCテープ等に使用され、コンピ
ューター用ではZip,スーパーディスク等のリムーバ
ブルディスクに使用され、最近では大容量のHi−FD
で採用され、現在その事業化段階にある。
【0005】そこで、これらの鉄を主成分とする金属磁
性粒子粉末についても更に特性改善が強く望まれてい
る。
【0006】即ち、より高い保磁力、優れた保磁力分布
SFD、優れた耐候性ΔBmを有する磁気記録媒体を得
るためには、鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末がより
高い保磁力とより大きい飽和磁化値を有すると共に、粒
子サイズの分布ができるだけ狭く、分散性が優れ、且
つ、酸化安定性Δσsに優れていることが強く要求され
ている。
【0007】また、上記各種磁気記録媒体の高密度化、
高信頼性及び耐久性向上のために金属磁性粒子粉末とし
ては、可及的に可溶性塩が除去されていることが要求さ
れている。
【0008】以下、この事実について詳述する。
【0009】即ち、一般に、鉄を主成分とする金属磁性
粒子粉末は、第一鉄塩水溶液と水酸化ナトリウム、水酸
化カリウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリ水溶液とを
反応して得られる鉄含有沈殿物を含む懸濁液を空気等の
酸素含有ガスを通気して酸化反応を行い得られる紡錘状
ゲータイト粒子粉末、該ゲータイト粒子粉末を加熱脱水
して得られる紡錘状ヘマタイト粒子粉末、又は、これら
粒子粉末に鉄以外の異種元素を含有させた紡錘状粒子粉
末を出発原料として用い、該出発原料を還元性ガス雰囲
気下で加熱還元することにより得られている。
【0010】上記製造法に由来して、紡錘状金属磁性粒
子粉末はナトリウムや製法上不可避的に存在するカルシ
ウムを含有しており、可溶性ナトリウム塩や可溶性カル
シウム塩を含有している場合には、磁気記録媒体に使用
したときに含有している可溶性ナトリウム塩や可溶性カ
ルシウム塩などの可溶性塩に起因した化合物が磁性塗膜
及び磁気ヘッドに析出するため問題となっている。この
事実は、特開平9−305958号公報の「各層に使用
される磁性体、非磁性体、カーボンブラック、フィラー
が含有している水溶性イオンの総和がある量を超えると
高温高湿条件で保存後走行させると摩擦係数が増加し、
極端な場合は張り付き現象が発生し走行停止する現象が
認められた。さらに極端な場合、析出物がスペーシング
ロスとなり、磁気テープの再生出力が低下する。また金
属ヘッドを腐食し、記録再生特性を劣化させてしま
う。」という記載からも明らかである。
【0011】金属磁性粒子粉末中の可溶性塩を低減させ
る方法としては、1)出発原料として水酸化ナトリウム
等のアルカリ金属からなるアルカリ水溶液を用いない、
2)水洗によって可溶性塩を低減する、のどちらかの方
法が採られている。本発明は、2)の方法に関するもの
である。
【0012】水洗による場合には、金属磁性粒子粉末に
至るまでの各生成物ごとに水洗することが考えられる
が、上記金属磁性粒子粉末の製造法において、出発原料
であるゲータイト粒子粉末及びヘマタイト粒子粉末の段
階で水洗を行っても、除去されるのは粒子粉末中の水可
溶性塩だけであるため、還元して金属磁性粒子粉末とし
た場合には、粒子中に含有している不溶性不純物が粒子
表面に移動し可溶性塩となって析出してくることが知ら
れている。この事実は、特開平7−22224号公報の
「周期表第1a族元素を0.05重量%以下にするに
は、これらの元素が製造過程で不可避的に混入する場合
にはその除去処理を行うことが必要である。……特にオ
キシ水酸化鉄、酸化鉄、金属磁性粉と工程が進むに伴っ
て該元素は粒子表面に偏析してくる…」という記載から
も明らかである。一方、金属磁性粒子粉末とした後に水
洗を行った場合、特に粒子形状が紡錘状の場合には、保
磁力などの磁気特性が低下し、磁性塗料中での分散性も
低下する傾向がある。
【0013】また、金属磁性粒子粉末の安定化等のため
に有機溶媒を用いた場合には、紡錘状金属磁性粒子粉末
中に多量のカーボンが残存し、磁性塗膜にするときの樹
脂との相溶性が悪くなり、分散性が低下する傾向があ
る。
【0014】近年、高い保磁力を有する金属磁性粒子粉
末を得るために粒子サイズは益々微粒子化しており、そ
の出発原料も微粒子化している。出発原料が0.15μ
m以下の微粒子から得られた金属磁性粒子粉末を水洗し
た場合には、粒子サイズが小さいことに起因して乾燥時
の粒子間距離がより小さくなり凝集が起こりやすくなる
ため、保磁力や飽和磁化値等の磁気特性の低下を招き、
優れた磁気記録媒体を得ることが困難となる。
【0015】従来、可溶性ナトリウムなどの不純物を低
減させる技術が、特開昭56−51029号公報、特開
平7−22224号公報、特開平8−172005号公
報、特開平9−305958号公報等に記載されてい
る。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】良好な磁気特性を維持
したまま、可及的に可溶性塩を低減すると共に優れた分
散性を有するFe及びCoを主成分とする紡錘状合金磁
性粒子を製造することは、現在最も要求されているとこ
ろであるが、前記諸特性を十分満足する紡錘状合金磁性
粒子は未だ提供されていない。
【0017】即ち、前出特開昭56−51029号公報
には、針状金属磁性粒子粉末を水性溶媒(水又は水と有
機溶媒を混和した水が50%以上のもの)で洗浄するこ
とが記載されているが、コバルト含有量が十分ではない
ため、有機溶剤が変成し残留しやすく、乾燥温度も高く
ないため有機溶剤の除去も十分とは言い難いものであ
る。また、得られた金属磁性粒子粉末は磁気特性及び分
散性の点で十分とは言い難いものである。
【0018】また、前出特開平7−22224号公報に
は、ヘマタイト粒子粉末及び金属磁性粒子粉末として水
洗することが記載されているが、後出比較例に示すとお
り、微粒子粉末で紡錘状の金属磁性粒子粉末を水洗・乾
燥しただけでは、金属磁性粒子粉末の粒子間の凝集が顕
著となり、嵩密度が高くなり、磁気特性及び分散性の点
で十分とは言い難いものである。
【0019】また、前出特開平8−172005号公報
には、紡錘状ゲータイト粒子粉末及び紡錘状ヘマタイト
粒子粉末を加熱還元し、次いで表面酸化した後、水洗乾
燥することが記載されているが、水の表面張力に関して
考慮されておらず、粒子間の凝集が起こりやすくなるた
め、得られた金属磁性粒子粉末の嵩密度が0.55〜
1.0g/mlと高く、分散性が十分とは言い難いもの
である。
【0020】また、前出特開平9−305958号公報
には、金属磁性粒子粉末を水洗した後、再度還元・表面
酸化することが記載されているが、後出比較例に示すと
おり、微粒子且つ、紡錘状を呈した金属磁性粒子粉末で
は途中の水洗・乾燥時に既に金属磁性粒子粉末の粒子間
の凝集が顕著となるため、得られる金属磁性粒子粉末は
嵩密度が高くなり、磁気特性及び分散性の点で十分とは
言い難いものである。
【0021】そこで、本発明は、良好な磁気特性を維持
したまま、優れた分散性を有していると共に可及的に可
溶性塩を低減されているFe及びCoを主成分とする紡
錘状合金磁性粒子を得ることを技術的課題とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】前記技術的課題は、次の
通りの本発明によって達成できる。
【0023】即ち、本発明は、全Feに対してCo換算
で20〜45原子%のコバルトを含有する平均長軸径が
0.05〜0.15μmの紡錘状ゲータイト粒子又は該
ゲータイト粒子を加熱脱水して得られる紡錘状へマタイ
ト粒子を出発原料として磁気記録材用紡錘状合金磁性粒
子粉末を得る製造法において、前記出発原料を加熱還元
を行って紡錘状合金磁性粒子粉末を得、該紡錘状合金磁
性粒子粉末を気相中で表面酸化する第1工程、第1工程
を経由した紡錘状合金磁性粒子粉末を水洗する第2工
程、第2工程を経由した紡錘状合金磁性粒子粉末に付着
している水を親水性、且つ、沸点が100℃以下の有機
溶媒で置換して脱水ろ過した後に、造粒成型する第3工
程及び第3工程を経由した紡錘状合金磁性粒子粉末を5
0〜100℃の温度範囲の空気中で有機溶媒を乾燥させ
ると共に再表面酸化する第4工程からなることを特徴と
する磁気記録材用Fe及びCoを主成分とする紡錘状合
金磁性粒子粉末の製造法である。
【0024】また、本発明は、上記製造法において、第
4工程で相対湿度1〜20%の空気中で紡錘状合金磁性
粒子粉末を乾燥させると共に再表面酸化することを特徴
とする磁気記録材用Fe及びCoを主成分とする紡錘状
合金磁性粒子粉末の製造法である。
【0025】次に、本発明の構成をより詳しく説明すれ
ば次の通りである。
【0026】本発明における出発原料には、全Feに対
してCo換算で20〜45原子%のコバルトを含有し、
平均長軸径が0.05〜0.15μmである紡錘状ゲー
タイト粒子粉末又は該ゲータイト粒子粉末を加熱脱水処
理して得られた全Feに対してCo換算で20〜45原
子%のコバルトを含有し、平均長軸径が0.05〜0.
13μmである紡錘状へマタイト粒子粉末を用いる。
【0027】本発明における出発原料は、紡錘状粒子で
あり、樹枝状粒子が混在せず、サイズ分布に優れるもの
である。
【0028】本発明における出発原料のコバルトの含有
量が全Feに対して20原子%未満の場合には、得られ
たFe及びCoを主成分とする紡錘状合金磁性粒子粉末
は酸化安定性を十分に改良することができず、また、大
きな飽和磁化値が得られ難い。また、有機溶剤が変成し
やすく、残存カーボン量が多くなる。45原子%を超え
る場合は、還元速度の制御が非常に難しくなり、加熱還
元時に粒子及び粒子相互間で形状破壊や焼結を生じ、高
い保磁力が得られ難くなる。
【0029】本発明における出発原料の平均長軸径が
0.05μm未満の場合には、得られる紡錘状合金磁性
粒子が超常磁性となりやすいため大きな飽和磁化値が得
られず、同時に高い保磁力も得られ難くなる。逆に0.
15μmを超える場合には、目的とする高い保磁力が得
られない。
【0030】本発明における紡錘状ゲータイト粒子粉末
は、焼結防止効果や還元速度の制御を考慮すると、平均
短軸径が0.010〜0.023μm、全Feに対して
Al換算で5〜15原子%のアルミニウムを含有し、軸
比(平均長軸径/平均短軸径)が4〜8、BET比表面
積値が100〜250m/gであることが好ましい。
【0031】本発明における紡錘状ゲータイト粒子粉末
は、粒子表面をCo化合物、Al化合物及び焼結防止剤
で被覆してもよい。
【0032】焼結防止剤としては、希土類元素の化合物
を用いることができ、スカンジウム、イットリウム、ラ
ンタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジウム、サマ
リウム等の1種又は2種以上が好ましい。特に、イット
リウム、ネオジウムが好適である。
【0033】なお、焼結防止効果の向上のため、あるい
は、必要によりその他の元素としてSi、B、Ca、M
g、Ba、Sr等から選ばれる元素の化合物の1種又は
2種以上を使用してもよい。これらの化合物は、焼結防
止効果を有するだけでなく、還元速度を制御する働きも
有するので、必要に応じて組み合わせて使用すればよ
い。
【0034】本発明における紡錘状へマタイト粒子粉末
は、焼結防止効果や還元速度の制御を考慮すると、平均
短軸径が0.010〜0.022μmであって、全Fe
に対してAl換算で5〜15原子%のアルミニウムと希
土類元素換算で5〜10原子%の希土類元素を含有し、
軸比(平均長軸径/平均短軸径)が4〜8、BET比表
面積値が50〜120m/gであることが好ましい。
【0035】また、紡錘状ヘマタイト粒子粉末は、前記
紡錘状ゲータイト粒子粉末を酸化性雰囲気下で150〜
350℃の温度範囲で加熱脱水し、更に、同雰囲気下で
450℃を超えて700℃未満の温度範囲で加熱処理し
て得ることが好ましい。
【0036】本発明において固定還元装置へ投入するに
当っては、前記出発粒子粉末を常法により造粒して平均
径1〜5mmの顆粒状物にして用いることが好ましい。
【0037】本発明における還元装置としては、固定層
を用いた還元装置が好ましく、具体的には、静置式還元
装置(バッチ式)もしくはベルト上に固定層を形成して
該ベルトを移送させながら還元する移動式還元装置(連
続式)が好ましい。
【0038】本発明における固定層の層高は、30cm
以下が好ましい。30cmを超える場合には、多量にC
oを含有するため還元促進作用が顕著であるのと同時
に、固定層の層下部の急激な還元による水蒸気分圧の増
大によって、固定層上部の保磁力が低下する等の問題が
起こり、全体として特性が劣化する。工業的な生産性を
考慮すると、3〜30cmがより好ましい。なお、バッ
チ式、連続式(特開平6−93312号公報等)では生
産性が異なるため、バッチ式の固定層還元装置では層高
を8cmを超え、30cm以下とすることが好ましい。
【0039】本発明では、第1工程の加熱還元温度まで
昇温する期間の雰囲気は不活性ガス雰囲気が好ましい。
不活性ガス雰囲気としては、窒素ガス、ヘリウムガス、
アルゴンガス等が好ましく、殊に窒素ガスが好適であ
る。不活性ガス以外の雰囲気では、温度が経時的に変化
する昇温時に還元が起こり、金属磁性粒子生成時の還元
温度が一定にできないため、均一な粒子成長が起こりに
くく高い保磁力を得ることが困難となる。
【0040】なお、第1工程の昇温速度は特に限定され
ないが、2〜100℃/minが好ましい。また、第1
工程の昇温時における不活性ガスのガス空塔速度は特に
限定されないが、出発原料の顆粒状物が飛散したり、破
壊されたりしない速度にすればよい。
【0041】また、第1工程の昇温時の不活性ガス雰囲
気から加熱還元工程の還元性ガス雰囲気への切り替え
は、還元装置の種類によって異なり、工業的には、バッ
チ式の場合では還元装置内の圧力を制御しながら段階的
に行う方法が好ましく、連続式の場合では昇温ゾーンと
還元ゾーンとを区分する方法が好ましい。いずれの場合
も短時間で切り替えを行う方が望ましく、少なくとも1
0分以内に行うことが好ましい。
【0042】本発明の第1工程の加熱還元工程における
雰囲気は、還元性ガスであり、還元性ガスとしては水素
が好適である。
【0043】本発明における第1工程の加熱還元温度は
350〜700℃が好ましく、より好ましくは、400
〜650℃である。加熱還元温度は、出発原料の被覆処
理に用いた化合物の種類、量に応じて上記温度範囲から
適宜選択することが好ましい。加熱還元温度が350℃
未満の場合には、還元の進行が非常に遅く工業的でな
く、得られた紡錘状合金磁性粉末の飽和磁化値も低いも
のとなる。700℃を超える場合には、還元反応が急激
に進行して粒子の形状破壊や粒子及び粒子相互間の焼結
を引き起こしてしまい、保磁力が低下する。
【0044】本発明における第1工程の還元性ガスのガ
ス空塔速度は、40〜150cm/sが好ましい。ガス
空塔速度が40cm/s未満の場合、出発原料の還元で
発生した水蒸気が系外に運ばれる速度が非常に遅くなる
ため、層上部の保磁力、SFDが低下し、全体として高
い保磁力が得られない。150cm/sを超える場合、
目的とする紡錘状合金磁性粒子粉末は得られるが、還元
温度が高温を要したり、造粒物が飛散し破壊されるなど
の問題が起こり易く好ましくない。
【0045】本発明における第1工程の表面酸化処理の
雰囲気は、酸素を含んだ不活性ガス雰囲気で表面酸化処
理を行う。不活性ガス雰囲気としては、窒素ガス、ヘリ
ウムガス、アルゴンガス等が好ましく、殊に窒素ガスが
好適である。酸素の含有量は0.1〜5vol%が好ま
しく、所定量まで徐々に酸素量を増加させることが好ま
しい。また、不活性ガス雰囲気としては水蒸気を含有さ
せてもよい。水蒸気を含有させた場合は、高い保磁力を
有する紡錘状合金磁性粒子粉末が得られやすい。
【0046】本発明における第1工程の表面酸化温度
は、40〜200℃が好ましく、より好ましくは、40
〜180℃である。40℃未満の場合には、十分な厚さ
を有する表面酸化層を形成することが困難となり、水洗
による磁気特性の低下が顕著となる。200℃を超える
場合には、粒子の形骸変化、特に酸化物が多量に生成さ
れるため短軸が極端に膨張し、場合によっては、形骸破
壊が起こりやすいため好ましくない。
【0047】なお、本発明においては第1工程の加熱還
元と表面酸化を繰り返し行ってもよく、具体的には、最
初の加熱還元を350〜600℃で行った後、80〜2
00℃で表面酸化を行い、次いで、450〜700℃で
再度加熱還元を行い、更に40〜160℃で表面酸化を
行う。加熱還元と表面酸化を繰り返し行うことによって
より緻密な紡錘状合金磁性粒子粉末を容易に得ることが
できる。
【0048】第1工程を終了した紡錘状合金磁性粒子粉
末は、粗粉砕して第2工程の水洗を行う。
【0049】本発明における第2工程の水洗は、第1工
程を経由した紡錘状合金磁性粒子粉末を水中に入れて紡
錘状合金磁性粒子粉末の懸濁液とし、ろ過後のろ液の電
気伝導度が10μS/cm以下になるまで水洗すること
が好ましい。この際、懸濁液及び水洗水の温度は、常温
から100℃までの温度範囲で行うことが好ましい。
【0050】水洗に使用する水は、イオン交換水である
ことが好ましい。
【0051】本発明における第3工程では、第2工程を
経由した紡錘状合金磁性粒子粉末に付着している水を有
機溶媒で置換し脱水する。用いる有機溶媒としては親水
性であって、且つ、沸点が100℃以下の有機溶媒を用
いる。具体的には、アセトン(沸点:56.5℃)、エ
タノール(沸点:78.3℃)、メタノール(沸点:6
4.1℃)等である。親水性以外の有機溶媒では水と容
易に置換することが出来ない。また、沸点が100℃を
超える場合には、第4工程において十分に乾燥すること
ができず、得られた紡錘状合金磁性粒子粉末は残存カー
ボン量が多くなる。
【0052】紡錘状合金磁性粒子粉末は、ろ過して造粒
成型した後、第4工程に移行する。
【0053】本発明における第4工程は空気中で行う。
また、空気中で相対湿度が1〜20%の範囲の水蒸気を
含有させてもよい。水蒸気を含有させることによって、
より高い保磁力を有する紡錘状合金磁性粒子粉末を得る
ことができる。水蒸気の含有量が相対湿度で1%未満の
場合には、保磁力向上の効果が十分とは言い難いもので
ある。20%を超える場合には、目的とする効果は得ら
れるが、吸着水分量が多くなるので好ましくない。水蒸
気の含有量は好ましくは、相対湿度で2〜18%であ
る。
【0054】本発明における第4工程の反応温度は50
〜100℃が好ましい。第4工程の反応温度が50℃未
満の場合には、乾燥が不十分なため第3工程で使用した
有機溶媒が残存する。100℃を超える場合には、親水
性有機溶媒は十分に揮発できるが、磁気特性、特に飽和
磁化値が低下するので好ましくない。
【0055】次に、本発明によって得られたFe及びC
oを主成分とする紡錘状合金磁性粒子粉末について述べ
る。
【0056】本発明によって得られるFe及びCoを主
成分とする紡錘状合金磁性粒子粉末は、Coを全Feに
対して20〜45原子%、好ましくは20〜40原子%
含有する。平均長軸径が0.05〜0.12μmであ
り、結晶子サイズD110は120〜160Åが好まし
く、より好ましくは130〜160Åである。また、標
準偏差は0.02μm以下が好ましく、サイズ分布は
0.20以下が好ましく、BET比表面積値は40〜6
0m/g、嵩密度は0.35〜0.50g/mlであ
ることが好ましい。また、可溶性ナトリウム塩は10p
pm以下、可溶性カルシウム塩は50ppm以下、残存
カーボン量は1.0wt%以下、水分含有量は1.5w
t%以下である。
【0057】本発明によって得られるFe及びCoを主
成分とする紡錘状合金磁性粒子粉末は、保磁力Hcが1
59.2〜198.9kA/m(2000〜2500O
e)が好ましく、より好ましくは167.1〜198.
9kA/m(2100〜2500Oe)であって、飽和
磁化値σsが120〜160Am/kg(120〜1
60emu/g)が好ましく、より好ましくは130〜
160Am/kg(130〜160emu/g)。角
型比(σr/σs)が0.52〜0.55、飽和磁化値
の酸化安定性Δσsは10%以下が好ましい。
【0058】なお、本発明によって得られるFe及びC
oを主成分とする紡錘状合金磁性粒子粉末を用いて得ら
れた磁性塗膜は、保磁力Hcが159.2〜198.9
kA/m(2000〜2500Oe)であって、角形比
(Br/Bm)が0.85以上、SFDが0.40以
下、酸化安定性ΔBmが8%未満である。
【0059】
【発明の実施の形態】本発明の代表的な実施の形態は次
の通りである。
【0060】本発明における紡錘状ゲータイト粒子粉
末、紡錘状へマタイト粒子粉末及びFe及びCoを主成
分とする紡錘状合金磁性粒子粉末の平均長軸径、平均短
軸径及び軸比は、いずれも電子顕微鏡写真から測定した
数値の平均値で示した。
【0061】本発明における紡錘状ゲータイト粒子粉
末、紡錘状へマタイト粒子粉末及びFe及びCoを主成
分とする紡錘状合金磁性粒子粉末のCo量、Al量、希
土類元素量、ナトリウム量、カルシウム量及びその他の
金属元素の含有量は、「誘導結合プラズマ発光分光分析
装置SPS4000」(セイコー電子工業(株)製)を
使用して、測定した。
【0062】粒子粉末のBET比表面積値は、「モノソ
ーブMS−11」(カンタクロム(株)製)を使用し
て、BET法により測定した値で示した。
【0063】結晶子サイズD110(紡錘状合金磁性粒
子のX線結晶粒径)は、「X線回折装置」(Rigak
u製)(測定条件:ターゲットCu、管電圧40kV、
管電流40mA)を使用して、X線回折法で測定される
結晶粒子の大きさを、紡錘状合金磁性粒子の(110)
結晶面のそれぞれに垂直な方向における結晶粒子の厚さ
を表したものであり、各結晶面についての回折ピーク曲
線から、下記のシェラーの式を用いて計算した値で示し
たものである。
【0064】D110=Kλ/βcosθ
【0065】但し、β=装置に起因する機械幅を補正し
た真の回折ピークの半値幅(ラジアン単位)。 K=シェラー定数(=0.9)、 λ=X線の波長(Cu Kα線 0.1542nm)、 θ=回折角((110)面の回折ピークに対応)。
【0066】紡錘状合金磁性粒子粉末の残存カーボン量
は、「炭素・硫黄測定装置」(Horiba製)を使用
して測定した。
【0067】紡錘状合金磁性粒子粉末の嵩密度は、試料
を内容積31mlの容器に入れて、下記計算により求め
た。 嵩密度(g/ml)=試料(g)/31(ml)
【0068】紡錘状合金磁性粒子粉末の水分含有量は、
「カールフィッシャー水分計」(京都電子(株)製)を
使用して測定した。
【0069】Fe及びCoを主成分とする紡錘状合金磁
性粒子粉末及び磁性塗膜片の磁気特性は、「振動試料磁
力計VSM−3S−15」(東英工業(株)製)を使用
して、外部磁場795.8kA/m(10kOe)で測
定した。
【0070】磁性塗膜片の磁気特性は、下記の成分を1
00mlのポリビンに下記の割合で入れた後、ペイント
シェーカー(レッドデビル社製)で8時間混合分散を行
うことにより調製した磁性塗料を厚さ25μmのポリエ
チレンテレフタートフィルム上にアプリケータを用いて
50μmの厚さに塗布し、次いで、500mT(5kG
auss)の磁場中で乾燥させることにより得た磁性塗
膜片の磁気特性を測定した。
【0071】 3mmφスチールボール: 800重量部、 Fe及びCoを主成分とする紡錘状合金磁性粒子粉末: 100重量部、 スルホン酸ナトリウム基を有するポリウレタン樹脂:20重量部、 シクロヘキサノン: 83.3重量部、 メチルエチルケトン: 83.3重量部、 トルエン: 83.3重量部。
【0072】粉体の飽和磁化値の酸化安定性の評価であ
るΔσs及び磁性塗膜の飽和磁束密度Bmの耐候性の評
価であるΔBmは、温度60℃、相対湿度90%の恒温
槽に粉体又は磁性塗膜片を一週間静置する促進経時試験
の後に、粉体の飽和磁化値及び磁性塗膜の飽和磁束密度
をそれぞれ測定し、試験開始前に測定したσs及びBm
と促進経時試験一週間後のσs’及びBm’との差(絶
対値)を試験開始前のσs及びBmでそれぞれ除した値
をΔσs、ΔBmとして算出した。Δσs、ΔBmが0
%に近いほど酸化安定性が優れていることを示す。
【0073】<紡錘状ゲータイト粒子粉末の製造>炭酸
ナトリウム25molと、水酸化ナトリウム水溶液を2
0mol(混合アルカリに対し水酸化ナトリウムは規定
換算で28.6mol%に該当する。)を含む混合アル
カリ水溶液30lを気泡塔の中に投入し、窒素ガスを通
気しながら47℃に調整する。次いでFe2+として2
0molを含む硫酸第一鉄水溶液20l(硫酸第一鉄に
対し混合アルカリ水溶液は規定換算で1.75当量に該
当する。)を気泡塔中に投入して20分間熟成した後、
Co2+4.2molを含む硫酸コバルト水溶液4l
(全Feに対しCo換算で21原子%に該当する。)を
添加し、さらに4時間40分間熟成した後、空気を通気
してFe2+の酸化率40%まで酸化反応を行ってゲー
タイト種晶粒子を生成させた。
【0074】次いで、Al3+2.4molを含む硫酸
アルミニウム水溶液1l(全Feに対しAl換算で12
原子%に該当する。)を添加して酸化反応を行った後、
水洗してプレスケーキとした。
【0075】前記ケーキの一部を常法により乾燥、粉砕
を行って得られた紡錘状ゲータイト粒子粉末は、平均長
軸径が0.131μm、平均短軸径が0.0175μ
m、軸比が7.5、標準偏差σが0.0250μm、サ
イズ分布(標準偏差/平均長軸径)が0.191、BE
T比表面積値が179.2m/g、粒子全体としてC
o含有量が全Feに対して21原子%、Al含有量が全
Feに対して12原子%であった。
【0076】<紡錘状へマタイト粒子粉末の製造>ここ
に得た紡錘状ゲータイト粒子粉末のプレスケーキを水中
に十分分散させた後、硝酸イットリウム水溶液と硫酸コ
バルト水溶液を添加し十分攪拌した。次いで攪拌しなが
ら、炭酸ナトリウム水溶液を添加して水溶液のpHを
9.5に調整し、その後、フィルタープレスで濾過、水
洗し、プレスケーキを得た。得られたプレスケーキを、
押出し成型機を用いて孔径3mmの成型板で押出し成型
して造粒し、次いで120℃で乾燥し、全Feに対して
Y換算で8原子%のY化合物と全Feに対してCo換算
で12原子%のCo化合物とが被覆された紡錘状ゲータ
イト粒子粉末の造粒物を得た。得られた紡錘状ゲータイ
ト粒子粉末中のCoの含有量は全Feに対して33原子
%、Alの含有量は全Feに対して12原子%、Yの含
有量は全Feに対して8原子%であった。
【0077】前記Y、Co化合物が被覆された紡錘状ゲ
ータイト粒子粉末の造粒物を空気中300℃で脱水し、
その後、同雰囲気中600℃で加熱脱水して紡錘状ヘマ
タイト粒子粉末の造粒物を得た。得られた紡錘状ヘマタ
イト粒子粉末造粒物は、顆粒状で、平均径が2.6mm
であった。
【0078】得られた紡錘状ヘマタイト粒子粉末は、平
均長軸径が0.121μm、平均短軸径が0.0168
μm、軸比が7.2、標準偏差σが0.0220μm、
サイズ分布が0.182、BET比表面積値が94.2
/gであり、該粒子中のCoの含有量は全Feに対
して33原子%、Alの含有量は全Feに対して12原
子%、Yの含有量は全Feに対して8原子%であった。
【0079】<紡錘状合金磁性粒子粉末の製造>ここに
得た紡錘状ヘマタイト粒子粉末の顆粒状造粒物100g
(平均径:2.6mm)を内径72mmのバッチ式固定
層還元装置に入れ、層高を5.5cmとした後、500
℃でガス空塔速度50cm/sの窒素ガスを通気しなが
ら、500℃まで加熱昇温し、次いで、水素ガスに切り
替えてガス空塔速度50cm/sの水素ガスを通気しな
がら、500℃で排気ガス露点が−30℃に達するまで
加熱還元して紡錘状合金磁性粒子粉末の造粒物を得た。
【0080】その後、再び窒素ガスに切り替えて80℃
まで冷却し、品温を80℃で保持し、次いで空気を混合
して酸素濃度を0.35vol%まで徐々に増加させて
品温が[保持温度+1]℃になるまで(最大品温140
℃、処理時間2時間)表面酸化処理を行い、粒子表面に
表面酸化層を形成した。
【0081】前記紡錘状合金磁性粒子粉末の飽和磁化値
は128.2Am/kgであった。次に、不活性ガス
雰囲気下で600℃まで昇温し、ガス空塔速度60cm
/sの水素ガスに切り換えて排気ガス露点が−30℃に
達するまで再度加熱還元した。
【0082】その後、再び窒素ガスに切り替えて40℃
まで冷却し、品温を40℃で保持し、次いで水蒸気6g
/mと空気を混合して酸素濃度を0.35vol%ま
で徐々に増加させて、品温が[保持温度+1]℃となる
まで(最大品温80℃、処理時間1時間)表面酸化処理
を行い、粒子表面に安定な表面酸化層を形成して紡錘状
合金磁性粒子の造粒物を得た(第1工程)。
【0083】第1工程で得られた紡錘状合金磁性粒子粉
末の造粒物50gを、乳鉢で粗粉砕し、60℃のイオン
交換水1lに1時間浸漬した後、ろ過し、更に1lのイ
オン交換水でろ液の電導度が10μS/cm以下になる
まで洗浄した後、ろ過してケーキを得た(第2工程)。
【0084】第2工程で得られた紡錘状合金磁性粒子粉
末のケーキに、アセトン1l(親水性溶媒で沸点56.
5℃)を通して該粒子粉末に付着している水をアセトン
に置換した後、ろ過して押し出し成型して造粒物(未乾
燥)を得た(第3工程)。
【0085】ここに得た紡錘状合金磁性粒子粉末の造粒
物(未乾燥)をステンレス製パレットに入れ、60℃、
相対湿度5%の空気を通気している乾燥機に3時間静置
して、アセトンを乾燥させると共に表面酸化被膜を形成
させて紡錘状合金磁性粒子粉末を得た(第4工程)
【0086】ここに得た紡錘状合金磁性粉末は、平均長
軸径が0.110μm、BET比表面積値が50.4m
/g、結晶子サイズD110が156Åの粒子からな
り、紡錘状かつ粒度が均整で樹枝状粒子がないものであ
った。また、該粒子中のCo含有量は全Feに対して3
3原子%、Al含有量は全Feに対して12原子%、Y
含有量は8原子%であった。
【0087】また、嵩密度が0.43g/ml、可溶性
Naが2ppm、可溶性Caが44ppm、残存カーボ
ンが0.28wt%、水分が1.2wt%であった。
尚、第1工程直後の紡錘状合金磁性粒子粉末及び第4工
程を経た紡錘状合金磁性粒子粉末から可溶性Feは検出
されなかった。
【0088】また、該紡錘状合金磁性粒子粉末の磁気特
性は、保磁力Hcが190.5kA/m(2394O
e)、飽和磁化値σsが139.8Am/kg(13
9.8emu/g)、角型比(σr/σs)が0.52
8、飽和磁化値の酸化安定性Δσsが絶対値として3.
0%(実測値−3.0%)であった。
【0089】また、磁性塗膜の特性は、保磁力Hcが1
91.1kA/m(2402Oe)、角形比(Br/B
m)が0.87、SFDが0.38、酸化安定性ΔBm
が絶対値として2.9%(実測値−2.9%)であっ
た。
【0090】
【作用】本発明において最も重要な点は、紡錘状合金磁
性粒子粉末を水洗した後、該粒子粉末に付着している水
を特定の有機溶媒で置換脱水後、乾燥することによっ
て、良好な磁気特性を維持したまま、優れた分散性を有
していると共に可及的に可溶性塩が低減されているFe
及びCoを主成分とする紡錘状合金磁性粒子粉末が得ら
れるという事実である。
【0091】本発明においては、第1工程で全Feに対
してCo換算で20〜45原子%のコバルトを含有する
出発原料を加熱還元して得られた紡錘状合金粒子粉末
に、表面酸化処理を行って安定化させているから、第3
工程において用いる有機溶剤の変成を抑制できるので、
有機溶剤に起因する残存カーボン量を極力少なくするこ
とができる。また、第1工程であらかじめ安定化されて
いるから、第4工程において高い温度で乾燥処理を行っ
ても磁気特性が大幅に低下することはない。
【0092】さらに、本発明においては、第2工程で紡
錘状合金磁性粒子粉末の状態で水洗するため、途中の生
成物であるゲータイト粒子粉末、ヘマタイト粒子粉末の
段階で水洗する場合に比べて、可溶性ナトリウム、可溶
性カルシウムなどの不純物をより低減することができ
る。
【0093】また、第2工程の水洗後、第3工程におい
て特定の有機溶媒で置換、脱水すること、即ち、表面張
力の大きな水を表面張力が小さい有機溶媒に置換するこ
とによって、乾燥後の紡錘状合金磁性粒子粉末の粒子間
の凝集を抑制することがでる。更に、用いる有機溶媒の
沸点が100℃以下であること及び第4工程の乾燥温度
を有機溶媒が揮発するのに十分に高い温度範囲で乾燥を
行うことから、紡錘状合金磁性粒子粉末中の残存カーボ
ン量も極力少なくすることができる。この相乗効果によ
って、磁性塗膜中での紡錘状合金磁性粒子粉末の磁気特
性及び分散性が低下しないものである。
【0094】この事実は、本発明の実施例と比較例を対
比することからも明らかである。即ち、水洗後有機溶媒
で置換しない場合(比較例2)は、粒子間の凝集が起こ
り嵩密度が高く分散性が低下している(磁性塗膜のSF
Dが悪くなる)。また、水洗後有機溶媒で置換しても乾
燥温度が高くなければ(比較例4)、嵩密度の増加と保
磁力の低下は抑制できるが、有機溶媒を十分に揮発する
ことができず残存カーボン量が多くなり、磁性塗膜中で
の分散性が低下する。
【0095】また、第4工程において水蒸気を含有する
雰囲気で乾燥処理及び表面酸化処理することによって、
保磁力を高くすることができる理由については未だ明ら
かではないが、紡錘状合金磁性粒子粉末の表面酸化層を
構成するFe−Co酸化物が形状あるいは結晶異方性を
向上させ、磁気特性、特に、保磁力の向上に上手く関与
しているものと本発明者は推定している。
【0096】また、本発明における合金磁性粒子粉末の
粒子形状は紡錘状であるにもかかわらず磁気特性の低下
が少ない。粒子形状が針状である特開昭56−5102
9号公報及び針状と推定される特開平7−22224号
公報では、磁気特性の低下が少ないが、粒子形状が紡錘
状である特開平8−172005号公報では、水洗によ
る磁気特性の低下が顕著である。本発明の製造法では上
記理由により、粒子形状が紡錘状でも磁気特性の低下が
少ないものと本発明者は考えている。
【0097】また、本発明によって得られた紡錘状合金
磁性粒子粉末は、水洗による不純物以外の金属成分が溶
出することが無く、紡錘状合金磁性粒子粉末として高い
金属含有率を有しているので、高密度の磁気記録媒体用
として優れている。
【0098】
【実施例】次に、実施例及び比較例を挙げる。
【0099】出発原料1〜2:出発原料粒子粉末とし
て、表1に示した特性を有する出発原料を準備した。な
お、出発原料1は前記実施の形態に記載の紡錘状ヘマタ
イト粒子粉末と同様の粒子粉末である。出発原料2は前
記実施の形態に記載の紡錘状ゲータイト粒子粉末に対し
て被覆するCo化合物の量を変化させ、次いで、ヘマタ
イト粒子粉末を得るときの加熱脱水温度を580℃にし
た以外は前記実施の形態と同様にして得た紡錘状ヘマタ
イト粒子粉末である。
【0100】
【表1】
【0101】実施例1〜6、比較例1〜7:出発原料の
種類及びそれぞれの製造条件を種々変化させた以外は前
記発明に実施の形態と同様にして紡錘状合金磁性粒子粉
末を得た。
【0102】このときの製造条件を表2に、得られた紡
錘状合金磁性粒子粉末の諸特性を表3に示す。なお、実
施例5の出発原料は、発明の実施の形態に記載のY化合
物とCo化合物とが被覆された紡錘状ゲータイト粒子粉
末である(紡錘状ゲータイト粒子粉末の組成は、全Fe
に対してCo含有量が33原子%、Al含有量が12原
子%、Y含有量が8原子%である。)。比較例6で使用
した有機溶媒:シクロヘキサノールは親水性で沸点が1
61.10℃である。比較例7で使用した有機溶媒:エ
チルメチルケトンは疎水性で沸点が79.58℃であ
る。比較例8では、第1工程における最初の還元処理の
後、第2工程での水洗を行い、溶媒置換を行わない第3
工程及び水蒸気を含有しない空気中で第4工程を経た
後、再度還元した以外は、前記発明の実施の形態と同様
にして紡錘状合金磁性粒子粉末を得た。
【0103】
【表2】
【0104】
【表3】
【0105】表3に示した各々の紡錘状合金磁性粒子粉
末を用いて、前記発明の実施の形態と同様にして磁性塗
膜片を得た。得られた磁性塗膜片の諸特性を表4に示
す。
【0106】
【表4】
【0107】
【発明の効果】本発明によれば、良好な磁気特性を維持
したまま、優れた分散性を有すると共に可及的に可溶性
塩が低減されているFe及びCoを主成分とする紡錘状
合金磁性粒子を得ることができる。
【0108】また、本発明により得られたFe及びCo
を主成分とする紡錘状合金磁性粒子粉末を用いて得られ
る磁気記録媒体は、高い保磁力、高い飽和磁化値及び優
れた分散性を有するので、高密度記録、高出力、しか
も、信頼性が高く耐候性が向上した磁気記録媒体として
好適である。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 全Feに対してCo換算で20〜45原
    子%のコバルトを含有する平均長軸径が0.05〜0.
    15μmの紡錘状ゲータイト粒子又は該ゲータイト粒子
    を加熱脱水して得られる紡錘状へマタイト粒子を出発原
    料として磁気記録材用紡錘状合金磁性粒子粉末を得る製
    造法において、前記出発原料を加熱還元を行って紡錘状
    合金磁性粒子粉末を得、該紡錘状合金磁性粒子粉末を気
    相中で表面酸化する第1工程、第1工程を経由した紡錘
    状合金磁性粒子粉末を水洗する第2工程、第2工程を経
    由した紡錘状合金磁性粒子粉末に付着している水を親水
    性、且つ、沸点が100℃以下の有機溶媒で置換して脱
    水ろ過した後に、造粒成型する第3工程及び第3工程を
    経由した紡錘状合金磁性粒子粉末を50〜100℃の温
    度範囲の空気中で有機溶媒を乾燥させると共に再表面酸
    化する第4工程からなることを特徴とする磁気記録材用
    Fe及びCoを主成分とする紡錘状合金磁性粒子粉末の
    製造法。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の製造法において、第4工
    程で相対湿度1〜20%の空気中で紡錘状合金磁性粒子
    粉末を乾燥と共に再表面酸化することを特徴とする磁気
    記録材用Fe及びCoを主成分とする紡錘状合金磁性粒
    子粉末の製造法。
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