JP2001127354A - 圧電体装置及びその製造方法 - Google Patents

圧電体装置及びその製造方法

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JP2001127354A
JP2001127354A JP30150999A JP30150999A JP2001127354A JP 2001127354 A JP2001127354 A JP 2001127354A JP 30150999 A JP30150999 A JP 30150999A JP 30150999 A JP30150999 A JP 30150999A JP 2001127354 A JP2001127354 A JP 2001127354A
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piezoelectric
metal complex
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thin film
salt
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JP30150999A
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English (en)
Inventor
Mari Wakabayashi
真理 若林
Minao Yamamoto
三七男 山本
Masataka Araogi
正隆 新荻
Toshihiko Sakuhara
寿彦 作原
Tetsuya Otsuki
哲也 大槻
Hitoshi Suenaga
仁士 末永
Yoshiaki Sakashita
好顕 阪下
Terubumi Sato
光史 佐藤
Riichi Nishide
利一 西出
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Seiko Instruments Inc
Teikoku Chemical Industry Co Ltd
Original Assignee
Seiko Instruments Inc
Teikoku Chemical Industry Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 圧電体装置の振動部分の構成において、接着
剤による振動部分の特性の劣化、バラツキを抑え、特性
を向上させること、ならびに、製造工程を簡略化するこ
とを課題とする。 【解決手段】 基板上に圧電体と同じ結晶構造に誘導で
きるアミノポリカルボン酸金属錯体とアミンとの塩また
はアミノポリカルボン酸金属塩とアミンとの塩から生成
した薄膜層を形成し、その薄膜層を介して基板と圧電体
層を接合した構造を備えた振動部分の構成、ならびに製
法とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、超音波モータ等
の、圧電アクチュエータに代表される圧電体装置および
その製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】圧電体装置の一つの有力な応用製品であ
る圧電アクチュエータをベースにして従来の圧電体装置
の振動部分の構成を説明する。近年、圧電アクチュエー
タは電磁型モータに代わる新しいモータとして注目され
ている。圧電アクチュエータはその駆動に際して電磁ノ
イズを発生させず、またノイズの影響も受けない。さら
に、圧電アクチュエータはマイクロマシンに代表される
ような、サブミリメートルクラスの大きさの機器を作る
技術として注目されており、その駆動源として微小な圧
電アクチュエータが求められている。
【0003】このような圧電アクチュエータの例として
超音波モータがある。従来の超音波モータの振動部分の
拡大図を図10に示す。この超音波モータは、ステータ
13と移動体7(ロータ)より構成されている。さらに、
このステータ13には、一般にステンレス鋼や真ちゅう
などを用いた弾性材料性の振動体6と電極付き圧電体1
7より構成されており、この振動体6と圧電体15は接
着剤14により貼り合わされている。このような構成超
音波モータでは、圧電体15に交流電圧が印加される
と、圧電効果によって生じた力が振動体6に伝播し、ス
テータ13に加圧接触している移動体7(ロータ)が駆動
することとなる。
【0004】この超音波モータの説明で代表されるよう
に、圧電アクチュエータの基本的構成は圧電体と弾性材
料を接着剤で貼り合わせた構造となっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
ような構造、製造方法では、以下のような問題点があっ
た。すなわち、従来のように接着剤を使用した場合、圧
電体より発生した力が伝播する際に接着層で乱反射した
り吸収されてしまい、その結果として、振動部の電気的
および機械的な性能や信頼性を低下させてしまうだけで
なく、圧電体との接着界面における剥離現象も生じさせ
てしまうという不具合があった。この不具合は、微小構
造の駆動源として上記圧電体装置の振動部分を実現しよ
うとした場合、その大きさがサブミリメートルクラスと
なるために、相対的に接着層の影響が大きくなる。
【0006】このような問題が生じる本質的原因は、接
着層およびその境界面が力学的に不安定な点にある。こ
の問題を解決するために、振動体に圧電体を直接形成す
る方法が近年盛んに研究されてきた。圧電体を直接形成
する製造方法として、スパッタ法や、CVD法が代表的
な製法であるが、寸法の小さい素子を作成できるという
利点の反面、非常に工数がかかるという課題がある。ま
た、アクチュエータの駆動力を出力するためには、圧電
体層を数〜数十μmの厚みに形成する必要があるが、上
記に示す従来法では、数〜数十μmの厚さの膜を形成す
るのは困難であった。
【0007】また、他の製造方法として、インクジェッ
トプリンタヘッドの圧電素子に広く用いられているスク
リーン印刷法がある。この製造方法は圧電体ペーストを
基板に塗布し、乾燥させ、さらに焼成することにより製
造する方法である。しかしながら、1000℃以上の高
温で焼成するため、基板と圧電体ペーストにかかる熱応
力の差により割れが発生したり、耐熱性基板を用いなけ
ればならないという制約がある。
【0008】同じく圧電体を直接形成する製造方法とし
て水熱法が知られている。これはチタン酸ジルコン酸鉛
(以下、PZTと称する。)を主成分とする強誘電体セ
ラミックスの強アルカリ性溶液をオートクレーブ中で反
応させ、チタン、あるいは酸化チタン基板の上にPZT
を形成するものである。ここではPZTを形成できる基
板がチタン、あるいはチタンを含む材料といったように
限定されてしまう。
【0009】そこで、本発明は、これらの問題点を解決
して製造工程を簡略化できしかも特性の向上、安定した
圧電体装置の製造方法および装置を提供することを目的
としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明は、基板上に圧電体層が形成された圧電体装
置において、基板と圧電体層との間に金属錯体から生成
した薄膜層が設けられることとした。また、金属錯体か
ら生成した薄膜層と圧電体層がPZTを含むこととし
た。
【0011】また、金属錯体から生成した薄膜層が、ア
ミノポリカルボン酸金属錯体とアミンとの塩またはアミ
ノポリカルボン酸金属塩とアミンとの塩によって合成さ
れた組成物から作成した層であることとした。さらに、
本発明の製造方法は、基板上に電極体層を形成する工程
と、電極体層上に金属錯体を含んだ前駆体溶液を塗布す
る工程と、前駆体溶液の上に圧電体層を設ける工程と、
前駆体溶液を焼成して、金属錯体から生成した薄膜層を
形成するとともに、薄膜層と圧電体層を接合する工程と
を備えることとした。
【0012】また、金属錯体を含んだ前駆体溶液と圧電
体層がチタンとジルコニウムと鉛を有することとした。
さらに、本発明の製造方法は、基板上に電極体層を形成
する工程と、電極体層層上に金属錯体を含んだ前駆体溶
液を塗布する工程と、前駆体溶液の上に圧電体ペースト
を設ける工程と、前駆体溶液と圧電体ペーストを同時に
焼成することにより、金属錯体から生成した薄膜層と圧
電体層を形成するとともに基板と薄膜層と圧電体層を接
合する工程と、を備えることとした。
【0013】また、金属錯体を含んだ前駆体溶液と圧電
体ペーストがチタンとジルコニウムと鉛を有することと
した。また、金属錯体から生成した薄膜層がアミノポリ
カルボン酸金属錯体とアミンとの塩またはアミノポリカ
ルボン酸金属塩とアミンとの塩によって合成された組成
物から作成した層であることとした。
【0014】また、金属錯体を含んだ前駆体溶液がアミ
ノポリカルボン酸チタン錯体とその塩、アミノポリカル
ボン酸ジルコニウム錯体とアミンとの塩、アミノポリカ
ルボン酸鉛塩とアミンとの塩を含有するアルコール溶液
組成物であることとした。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明による圧電体装置は、基板
と圧電体層との間に金属錯体から生成した薄膜層を設け
ることとした。これは圧電体層と類似の結晶構造に誘導
できる金属錯体から作成した薄膜層を基板と圧電体層と
の間に設けることによって基板と圧電体層との密着性を
高めることができるため、従来の接着剤を用いた接合に
よる圧電体の持つ振動特性にばらつきおよび特性不良を
減少させる効果がある。
【0016】また、金属錯体から生成した薄膜層と圧電
体層がPZTを含むこととした。これは接合層に圧電体
層と同程度の振動特性を持つPZTを用いるため、圧電
体層からの振動を吸収したり、振動の乱反射を発生させ
ずに振動体に伝播する効果がある。すなわち、圧電体お
よび金属錯体の薄膜層に同じ結晶構造を持つPZTが含
まれるため装置の振動特性の劣化を防ぐことが可能であ
る。
【0017】また、前駆体溶液を焼成することにより下
部電極を形成した基板との密着性をより高めることがで
きるとともに、焼成による膜の結晶成長を促進させる効
果がある。また、金属錯体から生成した薄膜層と圧電体
層の両方にPZTを含むことにより、従来の接着剤を用
いた装置に比べてより良好な圧電特性を得ることができ
るからである。
【0018】また、金属錯体から生成した薄膜層が、ア
ミノポリカルボン酸金属錯体とアミンとの塩またはアミ
ノポリカルボン酸金属塩とアミンとの塩によって合成さ
れた組成物から作成した層であることとした。これは、
接合層となる薄膜層に圧電体層と同じ結晶構造に誘導で
きる成分を含むため、密着性を上げることができる。
【0019】さらに、本発明による圧電体装置の製造方
法は、基板上に電極体層を形成する工程と、電極体層上
に金属錯体を含んだ前駆体溶液を塗布する工程と、前駆
体溶液の上に圧電体層を設ける工程と、前駆体溶液を焼
成して、金属錯体から生成した薄膜層を形成するととも
に、薄膜層と圧電体層を接合する工程とを備えることと
した。
【0020】また、金属錯体を含んだ前駆体溶液と圧電
体層がチタンとジルコニウムと鉛を有することとした。
これは、接合層に圧電体層と類似の特性を持つ薄膜層を
用いることにより、従来のエポキシ系樹脂などによる高
分子材料が主成分の接着剤を介在させるよりも圧電体層
および基板との密着性を高める効果がある。
【0021】さらに、本発明の製造方法は、基板上に電
極体層を形成する工程と、電極体層層上に金属錯体を含
んだ前駆体溶液を塗布する工程と、前駆体溶液の上に圧
電体ペーストを設ける工程と、前駆体溶液と圧電体ペー
ストを同時に焼成することにより、金属錯体から生成し
た薄膜層と圧電体層を形成するとともに基板と薄膜層と
圧電体層を接合する工程と、を備えることとした。
【0022】この工程を用いることにより、圧電体層の
焼成と同時に薄膜層の形成と接合ができ工程の簡略化が
できる。また、金属錯体を含んだ前駆体溶液と圧電体ペ
ーストがチタンとジルコニウムと鉛を有することとし
た。接合層となる薄膜層と圧電体層となるペーストの両
方に同じ結晶構造に誘導できるPZTの成分を含むこと
により密着性を上げることができる。
【0023】また、金属錯体から生成した薄膜層がアミ
ノポリカルボン酸金属錯体とアミンとの塩またはアミノ
ポリカルボン酸金属塩とアミンとの塩によって合成され
た組成物から作成した層であることとした。また、金属
錯体を含んだ前駆体溶液がアミノポリカルボン酸チタン
錯体とその塩、アミノポリカルボン酸ジルコニウム錯体
とアミンとの塩、アミノポリカルボン酸鉛塩とアミンと
の塩を含有するアルコール溶液組成物であることとし
た。
【0024】アミノポリカルボン酸金属錯体とアミンと
の塩、または、アミノポリカルボン酸金属塩とアミンと
の塩を用いた合成法は、ゾルゲル法など、従来の湿式の
直接形成法に用いられる金属アルコキシドに比べて簡単
に合成することができる。また、アルコール溶液として
使用できるため、取扱が簡単で、しかも非常に安定な物
質である。そのため工程の簡素化と作業性の向上が見込
まれる。
【0025】
【実施例】以下に本発明の実施例を図面に基づいて説明
する。図1は、この発明による圧電体装置の一つである
超音波モータの基本構造を示す縦断面図である。金属錯
体から生成した薄膜層1を介して圧電体層2が設けられ
た振動体6は金属などからなる弾性部材で作製されてお
り、中心軸11に打ち込みなどにより支持されている。
さらに、この中心軸11を案内として組み込まれ、上方
にある加圧ばね10により振動体6に加圧接触するよう
に配置されている。ここで2本のリード線12に時間的
位相がほぼ90°異なる信号を印加することによって、
圧電体層2と振動体6は屈曲運動による機械的進行波を
発生し、振動体6に加圧接触された移動体7が回転運動
する構成である。実際に本発明による振動体6を用いて
径が4mmφの超音波モータを製作した。振動体6の材
質にはアルミニウム、またはSUS304材を用いた。
摩擦材8の材質はカーボンファイバを含有した複合プラ
スチックを用いた。NC旋盤により丸棒原料を加工する
ことで振動体6の形状は形成され、煽動面も切削加工で
仕上げられている。
【0026】図1に示した超音波モータの振動部分の構
成の概略断面を図2に示す。ステンレスでできた振動体
6(基板に相当する)上の所定の位置に下部電極4が形
成され、その上に圧電体からなる金属錯体から生成した
薄膜層1が形成されている。さらに、その上にPZT系
の圧電体層2を形成し、その圧電体層2の上面に上部電
極5が形成されている。なお、振動体6が下部電極4と
しても機能する場合には、振動体6上に直接金属錯体か
ら生成した薄膜層1を設け、金属錯体から生成した薄膜
層1上に圧電体層2を形成する。
【0027】このように構成された超音波モータの特性
を以下に示す。図3に従来の接着剤16による接合方法
によって構成された振動体を備えた超音波モータのアド
ミッタンス特性を示し、図4に振動体6と圧電体層2と
の間に金属錯体から生成した薄膜層1が設けられた振動
体を備えた本発明による超音波モータのアドミッタンス
特性を示す。ただし、これらの図に示したアドミッタン
ス特性は移動体を取り外した状態、すなわち、振動体が
上下方向に対してフリーな状態で測定したものである。
対象としたモータ仕様の概略を以下の表1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】図3では、主共振点以外でのスプリアス振
動が見られるのに対して、図4では機械的Q値が高く、
主共振点以外でのスプリアス振動が見られない。これら
のアドミッタンス特性において、スプリアス振動は境界
面での力の乱反射に起因する現象であり、Q値は力が伝
播する際の減衰の度合いを示すものであるから、本発明
によるアクチュエータは従来型のアクチュエータと比較
して、大きく性能向上していることが判明する。
【0030】図5は本発明にかかる金属錯体から生成し
た薄膜層を備えた進行性超音波モータの周波数−回転数
特性を示す図表である。駆動電圧は正弦波形で約6Vp-
p 、振動体6への移動体7の加圧力は約10gfでの特
性である。本発明の構成によれば、回転周波数領域も比
較的広く、最大回転数も4500rpm以上と高速なこ
とから、中速〜高速領域における超音波モータの適用も
可能であり、本発明の有効性を示すものである。
【0031】つぎに、この超音波モータを駆動させた場
合のトルク性能、および耐久性を調査した。図6に超音
波モータのトルク性能を示す効率の測定結果を示し、図
7に耐久性についての測定結果を示す。図中の(a)は
本発明にかかる金属錯体から生成した薄膜層を設けた振
動部分を有する超音波モータの測定結果を表し、(b)
は従来例による振動部分を有する超音波モータの測定結
果を表している。これらの結果から明らかなように、効
率および耐久性ともに、本発明による振動部分の構造を
有する超音波モータは従来法に比べ明らかに優れてい
る。このように、金属錯体から生成した薄膜層を介して
振動体と圧電体を接合した振動部分を有する超音波モー
タでは、性能および耐久性が向上すると言える。これは
同じ圧電材を接合層に用いることにより密着性を良くす
るとともに接合層と圧電体層の熱膨張差を少なくするこ
とができるからである。また圧電材である金属錯体から
生成した薄膜層により接合層の厚みを薄くすることによ
り圧電体の振動の減衰、および境界面での力の乱反射を
押さえることができる。
【0032】すなわち、本発明にかかるアミノポリカル
ボン酸金属錯体とアミンとの塩またはアミノポリカルボ
ン酸金属塩とアミンとの塩によって合成された組成物か
ら作成した薄膜層を設けた振動部分の構成によれば、径
小薄型な超音波モータにおいても高効率化が実現できる
ようになると言える。次に、本発明の圧電体装置の振動
部分の製造方法を図8、図9を用いて説明する。圧電体
装置の振動部分の製造方法の工程を表す模式図を図8
に、製造工程のフローチャートを図9に示す。ここで示
された基板とは、図1、および図2の振動体に当たるも
のであるが、ここでは製造工程を簡便に説明するために
基板と称する。
【0033】はじめに、基板の洗浄工程(工程A)によ
り洗浄された基板3の表面に、蒸着法やスパッタ法によ
り、下部電極4を形成する(工程B)。具体的には、シ
リコンなどの基板上に中間層としてチタン膜をスパッタ
法を用いて500Å程度形成し、下部電極4となるPt
膜をスパッタ法を用いて約3000Å程度形成した。こ
こでは、チタン膜のスパッタはアルゴンの流量が11S
CCM、RFパワーが0.2kW、圧力が4mtorr
の条件でおこなった。Ptのスパッタは、アルゴンの流
量が120SCCM、RFパワーが2kW、圧力が4m
torrの条件で行った。中間層にチタン膜を設けたの
は焼成の段階で下地のシリコンとPZTの鉛が反応する
のを防ぐためである。下部電極をPtから作成したの
は、Ptが高温熱処理によって変質しないためである。
【0034】次に、この発明による圧電体装置の金属錯
体から生成した薄膜層1をアミノポリカルボン酸金属錯
体含有溶液の混合プロセスによって合成する方法につい
て説明する。振動体6上の所定の位置に下部電極4を形
成し(工程B)、その上にアミノポリカルボン酸金属錯
体含有溶液の混合プロセスによって合成されたPZT系
の前駆体溶液からなる金属錯体から生成した薄膜層1が
形成される(工程C)。さらに、その上にPZT系の圧
電体層2が形成され(工程D)、その圧電体層2の上面
に上部電極5が形成されている(工程E)。なお、基板
3(振動体6に相当する)が下部電極として機能する場
合は、直接基板3上にアミノポリカルボン酸金属錯体含
有溶液の混合プロセスによって合成されたPZT系の前
駆体溶液からなる金属錯体から生成した薄膜層1を設け
る。
【0035】次いで、金属錯体から生成した薄膜層の形
成工程を工程Cに示す。ここではPZT系エタノール溶
液を作成し、溶液をスピンコート法により成膜した後焼
成をおこなう。はじめに、チタンアミノポリカルボン酸
錯体アミン塩のエタノール溶液、ならびにジルコニウム
アミノポリカルボン酸錯体アミン塩のエタノール溶液、
鉛アミノポリカルボン酸塩とアミンとの塩のエタノール
溶液を既存の方法により合成する。チタンを含有するエ
タノール溶液は次のように合成した。100mL4つ口
フラスコに無水エタノール13.7g、ニトリロ三酢酸
10.32gを仕込み、撹拌しながらチタンテトライソ
プロポキシド15.35gを滴下し、続いてジ-n-ブチ
ルアミン7.76gを滴下し、還流温度で1時間反応さ
せ、淡黄色透明溶液を得た。これを30℃まで冷却し、
30%過酸化水素水6.8gを滴下した。1時間還流さ
せた後、冷却し、黄色透明のPZT系化合物前駆体溶液
の一つである酸化チタン前駆体溶液を得た。既存の方法
により合成した3種類の前駆体溶液(酸化鉛前駆体溶
液、酸化ジルコニウム前駆体溶液および酸化チタン前駆
体溶液)をPZT系圧電体セラミックスが合成される比
率(例えば、組成はモル比でPb:Zr:Ti=10
0:53:47)で混合し調製した。その溶液をスピン
コート法を用いて基板に塗布した。コート条件は100
rpmで15秒、次に連続して1000rpmで15秒
回転させた。塗布した基板は120℃で10分間プリベ
ーク(乾燥)して溶媒をを粗方除去した。プリベークし
た後基板を大気中550〜600℃で30分仮焼成し
た。550℃以上で仮焼成することにより前駆体溶液中
の有機物を分解除去し、密な膜形成をおこなうことがで
きる。
【0036】次に多層コートを行うため仮焼成した基板
上に同じように前駆体溶液を塗布し、乾燥、仮焼成を繰
り返しておこなった。10回のコートによりおよそ1μ
mの膜厚を得た。次いで、工程Dにおいて、この金属錯
体から生成した薄膜層1を介した基板3と圧電体層2の
接合工程を示す。
【0037】工程Dでは、基板3と接合するPZT系の
圧電材(バルク材)の両面に金属錯体から生成した薄膜
層1を形成し、双方を加圧密着させて接合し、これを5
00〜900℃で30分〜1時間の条件で一体焼成す
る。あるいは、PZT系の圧電材のペーストを塗布し、
焼成する。圧電材のペーストは粒径1μm以下からなる
圧電体の粉末原料にバインダとしてPVA(ポリビニル
アルコール)を約1%加えて混練、脱泡して作成する。
この圧電ペーストを金属錯体から生成した薄膜層1を形
成した基板3に塗布し、密着させ、これを500〜90
0℃で30分〜1時間の条件で常圧炉に酸素を流しなが
ら熱処理し接合することにより圧電体層2を得た。この
圧電体層2をX線解析したところ、ペロブスカイト構造
の鋭く強い結晶ピークが検出された。
【0038】最後に上部電極形成工程(工程E)によ
り、この圧電体層2の表面に金電極を蒸着法で形成す
る。この物性を測定したところ、比誘電率1200、電
圧歪み定数110pC/Nとなる優れた特性を示した。
なお、実施例ではPZT圧電体の組成を純粋な二成分系
としたが、圧電特性を向上させるために、例えば、マグ
ネシウムニオブ酸鉛−ジルコン酸鉛−チタン酸鉛のよう
な三成分系にしたり、また、耐電圧向上のために鉄、経
時変化を小さくする目的でクロム、強度向上のためにア
ンチモンのような添加物を加えても良い。この場合、金
属錯体溶液の組成を目的とする組成に合わせて調製する
ことにより対応することができる。
【0039】また、前駆体溶液の塗布の方法は、スピン
コート法、およびディップ法のどちらでも構わない。ス
ピンコート法では厚みにむらがなく一定の溶液量で塗布
することが可能であり、コート条件により膜の厚みを制
御することが可能である。なお、圧電振動子を利用した
超音波モータについては定在波方式と進行波方式が考え
られるが、本発明にかかる振動部分の構造はいずれの方
式においても利用することができる。
【0040】
【発明の効果】この発明によれば、基板上に圧電体と同
じ結晶構造に誘導できる金属錯体から生成した薄膜層を
直接形成することができるので、従来の接着剤を用い
ず、金属錯体から生成した薄膜層を介してバルクの圧電
体と基板を接合することができる。
【0041】本発明では、下部電極を形成した基板、あ
るいは下部電極として機能する基板に金属錯体から生成
した薄膜層を形成したことにより、圧電体層と基板の間
に圧電特性を低下させる接着層をなくした。これによ
り、圧電体層より発生した力が接着層で乱反射したり、
吸収されることなく伝播し、不要なスプリアス振動が発
生せず、良好なアドミッタンス特性を示す。さらに、モ
ータの効率、および耐久性を向上させることができる。
特に、マイクロマシンのような微小構造の駆動源として
電気的および機械的性能を向上させ、信頼性を高めるこ
とができる。また、アミノポリカルボン酸金属錯体含有
溶液の混合プロセスによって成膜することで、組成比の
ずれがほとんどなく膜形成することができる。また、ア
ミノポリカルボン酸金属錯体含有溶液の混合プロセスに
よって合成されたPZT系の前駆体溶液は非常に安定で
室温大気中で長期保存が可能である。またX線回折の結
果より500〜900℃の定温において圧電性を持つペ
ロブスカイト構造の鋭い結晶ピークが確認されており従
来法と比べて低温焼成が可能となっている。PZT系金
属酸化物前駆体溶液のアミノポリカルボン酸金属錯体と
アミンとの塩またはアミノポリカルボン酸金属塩とアミ
ンとの塩から薄膜を形成することにより基板との密着性
を良くし、さらに圧電体層との密着性をあげることが可
能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の圧電体装置である超音波モータの縦断
面図。
【図2】本発明による圧電体装置の振動部分の構造を示
す概略図。
【図3】従来の超音波モータの特性を表す図表。
【図4】本発明に係る超音波モータの特性を表す図表。
【図5】本発明に係る超音波モータの周波数−回転特性
を表す図表。
【図6】本発明に係る超音波モータの効率を表す図表。
【図7】本発明に係る超音波モータの耐久性を表す図
表。
【図8】本発明の実施例の製造工程を表す模式図。
【図9】本発明の実施例の製造工程を示すフローチャー
ト図。
【図10】従来の製造方法による振動部分の構造を示す
概略図。
【符号の説明】
1 アミノポリカルボン酸金属錯体とアミンとの塩ま
たはアミノポリカルボン酸金属塩とアミンとの塩から生
成した薄膜層 2 圧電体層 3 基板 4 下部電極 5 上部電極 6 振動体 7 移動体(ロータ) 8 摩擦材 9 固定台 10 加圧ばね 11 中心軸 12 リード線 13 ステータ 14 接着剤 15 圧電体
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山本 三七男 千葉県千葉市美浜区中瀬1丁目8番地 株 式会社エスアイアイ・アールディセンター 内 (72)発明者 新荻 正隆 千葉県千葉市美浜区中瀬1丁目8番地 株 式会社エスアイアイ・アールディセンター 内 (72)発明者 作原 寿彦 千葉県千葉市美浜区中瀬1丁目8番地 セ イコーインスツルメンツ株式会社内 (72)発明者 大槻 哲也 兵庫県伊丹市千僧5丁目41番地 帝国化学 産業株式会社伊丹工場内 (72)発明者 末永 仁士 兵庫県伊丹市千僧5丁目41番地 帝国化学 産業株式会社伊丹工場内 (72)発明者 阪下 好顕 兵庫県伊丹市千僧5丁目41番地 帝国化学 産業株式会社伊丹工場内 (72)発明者 佐藤 光史 東京都八王子市別所2−29エストラーセ長 池4−501 佐藤 光史内 (72)発明者 西出 利一 福島県郡山市本町2丁目21番5号ファース トパレス 307号 西出 利一内

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板上に圧電体層が形成された圧電体装
    置において、前記基板と前記圧電体層との間に金属錯体
    から生成した薄膜層が設けられたことを特徴とする圧電
    体装置。
  2. 【請求項2】 前記金属錯体から生成した薄膜層と圧電
    体層がチタン酸ジルコン酸鉛を含むことを特徴とする請
    求項1に記載の圧電体装置。
  3. 【請求項3】 前記金属錯体から生成した薄膜層がアミ
    ノポリカルボン酸金属錯体とアミンとの塩またはアミノ
    ポリカルボン酸金属塩とアミンとの塩によって合成され
    た組成物から作成した層であることを特徴とする請求項
    1または2に記載の圧電体装置。
  4. 【請求項4】 基板上に電極体層を形成する工程と、 前記電極体層上に金属錯体を含んだ前駆体溶液を塗布す
    る工程と、 前記前駆体溶液の上に圧電体層を設ける工程と、 前記前駆体溶液を焼成して、金属錯体から生成した薄膜
    層を形成するとともに、 前記薄膜層と前記圧電体層を接合する工程と、を備える
    ことを特徴とする圧電体装置の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記金属錯体を含んだ前駆体溶液と前記
    圧電体層がチタンとジルコニウムと鉛を有することを特
    徴とする請求項4に記載の圧電体装置の製造方法。
  6. 【請求項6】 基板上に電極体層を形成する工程と、 前記電極体層上に金属錯体を含んだ前駆体溶液を塗布す
    る工程と、 前記前駆体溶液の上に圧電体ペーストを設ける工程と、 前記前駆体溶液と前記ペーストを同時に焼成することに
    より、金属錯体から生成した薄膜層と圧電体層を形成す
    るとともに前記基板と前記薄膜層と前記圧電体層を接合
    する工程と、を備えることを特徴とする圧電体装置の製
    造方法。
  7. 【請求項7】 前記金属錯体を含んだ前駆体溶液と前記
    圧電体ペーストがチタンとジルコニウムと鉛を有するこ
    とを特徴とする請求項6に記載の圧電体装置の製造方
    法。
  8. 【請求項8】 前記金属錯体から生成した薄膜層がアミ
    ノポリカルボン酸金属錯体とアミンとの塩またはアミノ
    ポリカルボン酸金属塩とアミンとの塩によって合成され
    た組成物から作成した層であることを特徴とする請求項
    4〜7のいずれかに記載の圧電体装置の製造方法。
  9. 【請求項9】 前記金属錯体を含んだ前駆体溶液がアミ
    ノポリカルボン酸チタン錯体との塩、アミノポリカルボ
    ン酸ジルコニウム錯体とアミンとの塩、アミノポリカル
    ボン酸鉛塩とアミンとの塩を含有するアルコール溶液組
    成物であることを特徴とする請求項4〜8のいずれかに
    記載の圧電体装置の製造方法。
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