JP2001118437A - 酸化物超電導多芯線およびその製造方法 - Google Patents

酸化物超電導多芯線およびその製造方法

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JP2001118437A JP29381799A JP29381799A JP2001118437A JP 2001118437 A JP2001118437 A JP 2001118437A JP 29381799 A JP29381799 A JP 29381799A JP 29381799 A JP29381799 A JP 29381799A JP 2001118437 A JP2001118437 A JP 2001118437A
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Masahiro Taneda
賢宏 種子田
Jun Fujigami
純 藤上
Kazuya Daimatsu
一也 大松
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Tokyo Electric Power Company Holdings Inc
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Tokyo Electric Power Co Inc
Sumitomo Electric Industries Ltd
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    • Y02E40/60Superconducting electric elements or equipment; Power systems integrating superconducting elements or equipment

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 磁場方向に対する臨界電流密度(Jc)の依
存性が低く、高いJcを有する酸化物超電導多芯線を製
造する。 【解決手段】 酸化物超電導多芯線はパウダー・イン・
チューブ法を用いて製造される。酸化物超電導体の原料
粉末が安定化材で覆われたテープ線が、複数本、安定化
材からなる円筒形のチューブに充填される。テープ線の
厚み方向がチューブの径方向に略平行になるように充填
される。伸線加工の後、スエージ加工により、線材を径
方向に圧縮する。次いで、酸化物超電導体を焼結させ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、酸化物超電導体を
用いた線材およびその製造方法に関し、特に、高い臨界
電流密度(Jc)を有し、断面形状が略円形である酸化
物多芯超電導線材およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】酸化物超電導線は、104 A/cm2
超える臨界電流密度を有する長尺線が開発されてきた結
果、液体窒素冷却の超電導電力機器への応用が期待され
ている。特に、銀シースビスマス系酸化物超電導線に関
し、いわゆるテープ状線が、実用に値する臨界電流密
度、長尺、量産技術、等の課題を克服しつつある。テー
プ状多芯線は、ビスマス系酸化物超電導体の原料粉末の
銀パイプへの充填、伸線、多芯化、伸線、圧延、および
熱処理を経て作製される。
【0003】しかし、テープ状線材は、それに印加され
る磁場の方向にJcが顕著に左右される。具体的には、
線材の長手方向に平行な磁場よりも、垂直な磁場によっ
て、Jcが顕著に抑制される。このようなJcの磁場方
向依存性は、コイルの用途において、不利である。ま
た、超電導線材の交流応用において、変動磁界によって
生じる交流損失が問題になる。超電導線材を集合させた
ケーブル用導体においては、線材間のインピーダンスの
不均一によって偏流等の問題が生じる。偏流によって、
導体に顕著な交流損失が発生し得る。テープ状線材を多
層に重ねたケーブル用導体においてこのような問題が顕
著に生じ得る。したがって、磁場方向依存性が低く、交
流損失を発生させにくい線材が望まれる。
【0004】断面が円形の丸線は、そのよう要求に答え
得る可能性を有している。しかし、従来の丸線は、テー
プ状線と比較してJcが小さかった。これは、丸線のプ
ロセスにおいて圧延工程がないためであると考えられ
る。ビスマス系酸化物超電導体には、金属との界面でc
軸が配向し、そのc軸配向性が向上するほどJcが向上
するという性質がある。テープ状線のプロセスでは、線
材を圧延することによりc軸配向性が向上し、さらに超
電導結晶部の密度が大きくなる。しかしながら、丸線を
製造する場合、そのような圧延工程がないため、テープ
状線材と比較してc軸の高い配向性を得にくい。
【0005】従来、酸化物超電導丸線のJcを向上させ
ようとした例として、特開平4−262308号公報に
記載されるように、金属、銀または銀合金と円筒形の酸
化物超電導体とが交互に同心円状に積層された断面を有
する丸線があった。この公報では、金属と酸化物超電導
体とを交互に積層した多重環構造にしておき、酸化物超
電導体と金属との界面距離を小さくすることにより、具
体的には隣り合う界面同士の距離を100μm以下にす
ることにより、c軸配向ができることが述べられてい
る。しかしながら、この線材のJcは、それより以前の
他の丸線の値に比べて1桁高いが、テープ状線に比べて
は1桁小さな値であり、実用に必要なレベルではない。
【0006】特開平5−266726号公報は、臨界電
流密度が磁場方向にほとんど依存せず、円形の断面を有
する酸化物超電導線を製造するための方法を開示する。
具体的にその方法は、金属管とその内部に挿入される金
属コアとの間に形成される空隙部に酸化物超電導体の粉
末を充填する工程、管を塑性加工する工程、得られる線
材を焼結する工程を備える。この方法で得られる超電導
線は、金属コアと金属管の間に筒状の酸化物超電導層が
設けられた構造を有する。この方法は、コイル等に適す
る多数の超電導フィラメントを有する線材の製造にはあ
まり適さないと考えられる。
【0007】丸線の超電導線材の臨界電流密度を向上さ
せようとした別の例が Cryogenics(1992)Vol.32, No.
11, 940-948に開示されている。同文献が示す丸線で
は、断面が矩形の単芯ロッド55本が、銀チューブ内に
おいて、同心円状に3層で配置される。得られた線材に
ついて臨界電流の測定は行なわれていない。しかし、同
文献に示された線材は、それほど高いJcを有しないと
推定できる。
【0008】米国特許第5347085号明細書は、断
面が円形の多芯酸化物超電導線を開示し、そこにおい
て、複数のフラットな酸化物超電導体フィラメントは、
その幅方向が半径方向に向くよう、安定化材中に配置さ
れる。したがって、この線材の断面において、フィラメ
ントの厚み方向は、断面の周方向を向いている。概し
て、この線材では、より高いJcを得ることが困難であ
ると考えられる。というも、この線材を得るプロセスで
は、フィラメントの幅方向に塑性加工が付与され、その
ような方向の塑性加工は、高いJcをもたらし得るc軸
の配向をあまり促進しないと考えられるからである。ま
た、この線材では、フィラメントの厚み方向、すなわ
ち、線材断面の周方向に酸化物結晶のc軸が強く配向す
ると考えられる。この場合、線材に発生する自己磁場
は、c軸に略平行である。一般に、酸化物超電導体、特
にビスマス系酸化物超電導体のJcは、c軸に垂直な磁
場(a−b面に平行な磁場)よりもc軸に平行な磁場
(a−b面に垂直な磁場)によって大きく抑制されるこ
とが知られている。したがって、強く配向したc軸に平
行な自己磁場を発生させる先行技術の線材は、自己磁場
の観点から不利であり得る。
【0009】米国特許第5885938号明細書は、断
面のアスペクト比が低い多芯酸化物超電導線を開示す
る。この線材において、酸化物超電導体結晶のc軸は、
線材の長手方向に垂直に配向する。しかし、この線材で
は、フィラメントの異方性が高いため、線材に印加され
る磁場の方向に、Jcが顕著に左右されると考えられ
る。
【0010】特開平9−259660号公報および特開
平11−39963号公報は、パウダー・イン・チュー
ブ法を用いた酸化物多芯超電導線およびその製造方法を
開示する。これらの公報に開示される改良された方法
は、酸化物超電導体またはその原料の粉末を安定化材か
らなるチューブに充填する工程、粉末が充填されたチュ
ーブに塑性加工を施してテープ状線材を得る工程、テー
プ状線材を複数本、安定化材からなるチューブに充填す
る工程、テープ状線材が充填されたチューブに塑性加工
を施して、断面が略円形または六角形以上の略正多角形
である線材を得る工程、および、線材に熱処理を施して
酸化物超電導体の焼結体を生成させる工程を備え、そこ
において、チューブに充填されるテープ状線材の粉末か
らなる部分は、4〜40のアスペクト比を有するリボン
形状であり、かつ線材に熱処理を施した後、酸化物超電
導体フィラメントの厚みが5μm〜50μmの範囲であ
る線材が得られる。この方法では、充分に圧縮されたテ
ープ状線を適当な配置でチューブに充填することによ
り、酸化物超電導体結晶の配向性が高められ、高いJc
が得られている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、先行
技術、特に特開平9−259660号公報および特開平
11−39963号公報に開示される技術を改良するこ
とである。
【0012】本発明の更なる目的は、改良された超電導
特性、特に磁場方向に対する超電導特性の非依存性およ
び高いJcを有する酸化物多芯超電導線を提供すること
である。
【0013】本発明の更なる目的は、円形またはそれに
近い断面形状を有し、かつ、テープ線に匹敵する高い臨
界電流密度を有する酸化物超電導線を提供することであ
る。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明により、酸化物超
電導体からなるリボン形状の複数のフィラメントが安定
化材中に埋め込まれた酸化物超電導多芯線が提供され、
そこにおいて、線材の長手方向に垂直な断面の形状は略
円形であり、該断面におけるフィラメントの厚み方向
は、該断面の径方向に対し略平行であり、かつフィラメ
ントにおける酸化物超電導体結晶粒の配向について線材
の長手方向に対する平均ずれ角度(以下に定義)は、2
0°以下である。好ましくは、平均ずれ角度は15°以
下である。
【0015】本発明による線材において、複数のフィラ
メントは、線材の断面において、線材の中心に対し略回
転対称に配置されていることが好ましい。
【0016】好ましくは、本発明による線材の長手方向
に垂直な断面において各フィラメントに存在する毛状体
の数は、線材の断面積1mm2あたり500以下であ
る。
【0017】好ましくは、本発明による線材の長手方向
に垂直な断面において、複数のフィラメントは、螺旋状
または同心円状に、安定化材によって互いに分離される
態様で、配置される。
【0018】好ましくは、酸化物超電導体はビスマス系
酸化物超電導体であり、安定化材は銀または銀合金から
なる。
【0019】本発明による線材は、液体窒素温度、印加
磁場ゼロの条件下において、5000A/cm2以上の
臨界電流密度を有することができる。
【0020】本発明により、酸化物超電導体からなるリ
ボン形状の複数のフィラメントが安定化材中に埋め込ま
れ、断面が略円形であり、かつ該断面におけるフィラメ
ントの厚み方向が断面の径方向に対して略平行である、
酸化物超電導多芯線をパウダー・イン・チューブ法を用
いて製造する方法が提供され、当該方法は、酸化物超電
導体の原料粉末が安定化材で覆われたテープ状線材を、
複数本、安定化材からなる円筒形のチューブに、該テー
プ状線材の厚み方向が該円筒形のチューブの径方向に略
平行になるように充填し、かつ塑性加工して(かつ必要
に応じて焼結して)得られる、断面が略円形の線材に対
し、一組で略円筒形の成形空間を形成する複数の型を用
いて、該線材を径方向に圧縮し、断面が略円形の線材を
得る工程、および、圧縮された線材を加熱し、酸化物超
電導体を焼結させる工程を備える。
【0021】本発明による製造方法において、圧縮され
た線材に対する焼結工程は、最初の焼結工程であっても
よいし、2回目、または3回目以降の焼結工程であって
もよい。
【0022】本発明による製造方法において、焼結工程
の後、線材を塑性加工する工程および次いで線材を加熱
し酸化物超電導体を焼結させる工程を、1回または複数
回行うことが好ましい。
【0023】本発明による製造方法において、線材を圧
縮する工程は、線材をスエージ加工する工程であること
が好ましい。
【0024】本発明による製造方法において、線材を圧
縮する工程は、一対の型による1軸方向のプレス加工、
複数の型による線材の径方向へのプレス加工、またはそ
れらの組み合わせからなってもよい。
【0025】本発明による製造方法において、線材を圧
縮する工程は、一対の溝切りロールによる圧延加工、複
数の溝切りロールによる圧延加工、またはそれらの組み
合わせからなってもよい。
【0026】本発明による製造方法において、線材を圧
縮する工程により、フィラメントとなるべき粉末部のう
ねりを低減することができる。
【0027】本発明による製造方法において、焼結工程
後の塑性加工は、一組で略円筒形の成形空間を形成する
複数の型を用いて線材を圧縮する加工であることが好ま
しい。たとえば、焼結工程後の塑性加工は、一対の型に
よる1軸方向のプレス加工、複数の型による前記線材の
径方向へのプレス加工、またはそれらの組み合わせとす
ることができる。一方、焼結工程後の塑性加工は、一対
の溝切りロールによる圧延加工、複数の溝切りロールに
よる圧延加工、またはそれらの組み合わせとすることが
できる。
【0028】本発明による製造方法において、一対もし
くは複数の型または一対もしくは複数の溝きりロールに
より形成される略円筒形の成形空間における半径Rに対
する、一対もしくは複数の型のエッジ部または一対もし
くは複数の溝きりロールのエッジ部に形成される面取り
半径rの比r/Rは、0.2以下であることが好まし
い。一方、一対もしくは複数の型のエッジ部または一対
もしくは複数の溝きりロールのエッジ部に実質的に面取
りが施されていないくてもよい。
【0029】本発明による製造方法において、溝きりロ
ールによる圧延加工により得られる線材の直径dに対す
る溝きりロールの直径Dの比D/dは、40以上である
ことことが好ましい。
【0030】本発明による製造方法は、一対もしくは複
数の型または一対もしくは複数の溝きりロールによる加
工の結果、線材に形成されたバリを機械的または化学的
に除去する工程をさらに備えてもよい。
【0031】
【発明の実施の形態】本発明による酸化物超電導線材
は、安定化材マトリックス中に複数の酸化物超電導体フ
ィラメントが埋込まれた構造を有する多芯線である。本
発明による線材は、超電導フィラメントと安定化材とが
実質的に分離不可能に複合化されたモノリシック導体で
ある。この構造において、各フィラメントは、リボン形
状であり、線材の長手方向に延びている。フィラメント
は、矩形、楕円またはそれらに近い断面を有する。リボ
ン形状のフィラメントの長手方向は、線材の長手方向に
対応し、長手方向に垂直な線材の断面には、このフィラ
メント断面が露出する。リボン形状のフィラメントは、
その長手方向に垂直な方向に、「厚み」を有する。一般
に、リボン形状のフィラメントは、対向する1対の主要
面を有するため、「厚み」は1対の主要面間の距離とし
て定義することができる。本発明による線材において、
フィラメントの厚み方向は、線材断面の径方向に略平行
である。フィラメント断面において、厚み方向に垂直な
方向は、フィラメントの幅方向として定義することがで
きる。
【0032】本発明による線材において、フィラメント
断面のアスペクト比、すなわちフィラメントの厚みに対
する幅の比は、限定されることなく、4〜40の範囲、
好ましくは5〜20の範囲とすることができる。フィラ
メントの厚みは、限定されることなく、5μm〜50μ
mの範囲、好ましくは10μm〜50μmの範囲とする
ことができる。フィラメントの数は、限定されることな
く、4〜4000とすることができる。
【0033】本発明による線材において、長手方向に垂
直な断面は、円またはそれに近い形状を有する。たとえ
ば、本発明による線材の断面は、図1(a)に示すよう
な円でもよいし、図1(b)および(c)に示すように
わずかな部分が円から外れた形状を有してもよい。この
ような円およびそれに近い形状を、本明細書において
「略円形」と呼ぶ。
【0034】フィラメントにおける酸化物超電導体結晶
粒の配向についての線材の長手方向に対する平均ずれ角
度(θ)は以下のように定義する。
【0035】まず、液体窒素温度(77.3K)におい
て酸化物超電導線に種々の強度の磁場を印加してJcを
測定する。磁場は、図2に示すように、線材の長手方向
Lに平行な方向または垂直な方向のいずれかからかけ
る。長手方向に平行な磁場をB(平行)とし、垂直な磁
場をB(垂直)とする。すると、図3に示すようなグラ
フが得られる。図3の縦軸はJc(B)/Jc(0)
(任意の印加磁場下において得られるJcの、印加磁場
ゼロ下のJcに対する比)、横軸は磁場の強度を表す。
曲線Aは、種々の強度のB(平行)に対してJc(B)
/Jc(0)をプロットして得られ、曲線Bは、種々の
強度のB(垂直)に対してJc(B)/Jc(0)をプ
ロットして得られる。通常、(Jc(B)/Jc
(0))−B(平行)曲線と、(Jc(B)/Jc
(0))−B(垂直)曲線は異なっている。次に、これ
ら曲線上の任意のJc(B)/Jc(0)に対するB値
(B(平行)(Jc(B)/Jc(0))およびB(垂
直)(Jc(B)/Jc(0)))について、次式が成
立するθを求める。B(平行)(Jc(B)/Jc
(0))・sinθ=(2/π)・B(垂直)(Jc
(B)/Jc(0))・cosθここで得られるθが、
平均ずれ角度である。通常、計算に使用するJc(B)
/Jc(0)の値によって、θはばらつく。そこで、た
とえば、図4に示すように、Jc(B)/Jc(0)が
0.4〜0.6の範囲(Jcが外部印加磁場ゼロの時の
60%から40%まで落ちる範囲)のB値を等間隔に5
点とり、それらのB(平行)値およびB(垂直)値につ
いて、得られる5つのθ値の平均を平均ずれ角度とする
(方法1)。その代わりとして、θを任意の適当な値に
設定し、(Jc(B)/Jc(0))−B(平行)曲線
上の任意のB値について求められるB(平行)(Jc
(B)/Jc(0))・sinθをJc(B)/Jc
(0)に対してプロットして曲線Xを得、同様に(Jc
(B)/Jc(0))−B(垂直)曲線上の任意のB値
について求められる(2/π)・(B(垂直)(Jc
(B)/Jc(0))・cosθをJc(B)/Jc
(0)に対してプロットして曲線Yを得る。θを変化さ
せて、曲線XおよびYを求め、曲線XがYとほぼ重なる
か、曲線XがYと最も近づくときのθを平均ずれ角度と
する(方法2)(図5参照)。
【0036】平均ずれ角度は、酸化物超電導体結晶粒の
配向性を表す指標である。平均ずれ角度が0°の場合、
フィラメントを形成する酸化物結晶粒のほぼすべてが、
図6に示すように線材の長手方向に配向していると考え
ることができる。このような状態は、Jc値およびJc
の磁場方向依存性に関し、最適な状態と考えることがで
きる。しかし、通常、フィラメントにおいてかなりの酸
化物結晶粒は、図7に示すように、所定の範囲内で、線
材の長手方向からずれた方向を向いている。本発明で
は、このずれの指標として、上記計算により求められる
値を用いている。上記計算による求められる平均ずれ角
度が小さければ、線材は、より好ましい超電導特性、た
とえば、高いJcおよびより低いJcの磁場方向依存性
を有するはずである。平均ずれ角度の計算式は、磁場印
加時のJcの低下は、超電導体板状結晶のa−b面に垂
直(c軸に平行)な磁場成分に律速され、Jc−B曲線
についてx軸を板状結晶のc軸方向の磁場成分(平均
値)としてプロットすれば、Jc−B(平行)特性とJ
c−B(垂直)特性とは、ほぼ一致するという仮説に基
づいている。その詳細は、小林他、低温工学、Vol.
32、No.9(1997)、415−421頁、およ
びS.Kobayashi et al., Physica C 258(1996), 336-340
に記載されており、それらをここに引用により援用す
る。
【0037】本発明による線材において、平均ずれ角度
は20°以下、好ましくは15°以下であり、より好ま
しくは10°以下である。たとえば、本発明による線材
において、平均ずれ角度の範囲は、1°〜20°、好ま
しくは、1°〜15°、より好ましくは、1°〜10°
である。この範囲の平均ずれ角度は、本発明による製造
方法によって、再現性よく得られるようになった。下記
の例に示すように、従来の製造方法では、一般に、より
高い平均ずれ角度、たとえば20°を顕著に超える角度
が得られていた。本発明者は、この平均ずれ角度を再現
性よく低減する方法を見出したのである。
【0038】小さい平均ずれ角度は、一般に高いJcお
よび低い磁場依存性を意味する。本発明による線材は、
たとえば、液体窒素温度(77.3K)において、外部
磁場ゼロの条件下で、5000A/cm3以上、好まし
くは10000A/cm3以上のJcを有し得る。ま
た、本発明による線材について、液体窒素温度における
500G印加磁場下でのJc(Jc(500G))の、
印加磁場ゼロ下でのJc(Jc(0G))に対する比
(Jc(500G)/Jc(0G))は、0.25以
上、たとえば、0.25〜0.8となり得る。
【0039】本発明は、磁場が印加される方向によっ
て、Jc等の超電導特性があまり変化しない略円の断面
を有する線材を提供する。本発明の線材において、複数
のフィラメントは、安定化マトリックス中、線材の中心
に対して略回転対称に配置されていることが好ましい。
すなわち、線材の断面において、複数のフィラメントは
線材中心に対し、略回転対称に配置されることが好まし
い。このような配置は、図8(a)〜(c)に示すよう
な配置を含む。図8(a)では、複数のフィラメント7
1が安定化マトリックス72によって分離される態様で
同心円状に配置される。図8(b)では、複数のフィラ
メント71が安定化マトリックス72によって分離され
る態様でらせん状に配置される。図8(c)では、複数
のフィラメント71が、正多角形の辺にほぼ沿うよう配
置される。正多角形は、6角以上のものが好ましい。
【0040】本発明に従う線材の構造について、さらに
具体例を挙げながら以下に説明する。図9は、本発明の
線材について具体例を示す斜視図であり、線材の断面を
特に強調している。図9に示す酸化物超電導多芯線80
において、多数のフィラメント81は、それぞれ安定化
材マトリックス82に覆われている。フィラメント81
は、点線で示すようにリボン形状を有している。フィラ
メント81は、たとえばビスマス系酸化物超電導体から
なる。安定化材には、たとえば、銀または銀合金が用い
られる。銀合金には、たとえば、Ag−Au合金、Ag
−Mn合金、Ag−Al合金、Ag−Sb合金、Ag−
Ti合金等が含まれる。円形の断面を有する線材80の
中心には、断面が略円の安定化マトリックス82’が設
けられている。円筒形の安定化マトリックス82’の周
囲に安定化材で覆われたフィラメント81が、重ねられ
ている。フィラメント81は、線材の中心に対してほぼ
回転対称に配置される。多数のフィラメント81は、安
定化材によって互いに分離される態様で、らせん状また
は同心円状に配置される。矢印Xで示されるフィラメン
トの厚み方向は、矢印Yで示される線材の径方向にほぼ
平行である。フィラメントの酸化物結晶粒の配向に関
し、上述した平均ずれ角度は、たとえば、5°〜15°
である。
【0041】図10は、本発明による他の具体例を示し
ている。酸化物超電導多芯線90には、多数のフィラメ
ント91が螺旋状に配置されている。隣り合うフィラメ
ントを結ぶ線は、マトリックス92を取囲む螺旋を描
く。図9とは対称的に、線材の中心部にもフィラメント
91ができるかぎり多く配置される。フィラメント91
は、線材の長手方向に延びるリボン形状である。フィラ
メント91は、安定化材マトリックス92中に埋込まれ
ている。フィラメント92の酸化物結晶粒の配向性に関
し、平均ずれ角度は、たとえば、5°〜20°である。
【0042】本発明に従う線材は、いわゆるパウダー・
イン・チューブ法を用いて製造される。パウダー・イン
・チューブ法は、酸化物超電導体または、酸化物超電導
体を生成し得る原料の粉末を、安定化材のチューブに詰
め、それに塑性加工および熱処理を施して、線材を得る
方法である。原料粉末の調製では、超電導体を構成する
元素の酸化物または炭酸塩等の粉末が、所定の配合比で
配合され、かつ焼結された後、粉砕される。粉末を充填
するチューブは、たとえば銀または銀合金からなる。原
料粉末が充填されたチューブは、塑性加工される。
【0043】本発明では、多芯線を得るため、テープ線
を充填したチューブを塑性加工する。テープ線は、既成
のものでもよいし、パウダー・イン・チューブ法にした
がって調製してもよい。テープ線は単芯、多芯のいずれ
でもよい。単芯テープ線は、粉末が充填され、シールさ
れたチューブを、伸線加工および圧延加工して得ること
ができる。多芯テープ線は、粉末が充填され、シールさ
れたチューブを伸線し、切断して得られる複数のセグメ
ントをチューブに充填し、伸線、圧延して得ることがで
きる。使用されるテープ線において、原料粉末からなる
部分は、4〜40のアスペクト比を有するリボン形状で
あることが好ましい。長尺テープ線は、通常、切断さ
れ、複数本のセグメントとされ、必要な数のセグメント
が、次いで安定化材からなるチューブに充填される。
【0044】テープ線をチューブに充填する際、必要な
数のテープ線をチューブの中心に対し略回転対称となる
よう配置することが好ましい。たとえば、安定化材から
なるシートを与え、その上に複数のテープ線を平行に配
置し、次いで、複数のテープ線が配置されたシートを円
柱体の安定化材に巻きつけ、得られる構造物を円筒チュ
ーブに充填することができる。シートへのテープ線の配
置は、有機系接着剤を用いて行うことができる。一方、
円柱体の安定化材のまわりに各テープ線を順に配置しな
がら、それを順に安定化材シートで覆って固定し、得ら
れる構造体をチューブに挿入してもよい。このようにし
て、図11に示すように、チューブ100内で、円柱体
の安定化材101のまわりに複数のテープ線102が安
定化シート103とともにらせん状に配置された構造体
が得られる。一方、安定化材シート上に複数のテープ線
を平行に配置し、次いで、中心に安定化材を使用せず、
図12に示すように、テープ線112とともにシート1
13を巻いて、チューブ110に挿入することができ
る。これらの方法で、テープ線の厚み方向が円筒チュー
ブの径方向に略平行になるようにテープが充填される。
【0045】一方、図13に示すように、断面形状が正
n角形(nは6以上の整数)である角柱体の安定化材1
21を与え、そのまわりにテープ線122を重ね、円筒
チューブ120に充填してもよい。テープ線122は、
安定化材のまわりに1層または2層以上重ねることがで
きる。テープ線122は、安定化材121の中心につい
て対称的に重ねることが好ましい。 この方法でも、テ
ープ線の厚み方向が円筒チューブの径方向に略平行にな
るように、テープ線が充填される。
【0046】本発明による製造方法において、もっとも
重要な特徴は、このようにしてテープ線を充填したチュ
ーブに適当な塑性加工を施した後、得られる線材(未焼
結の線材および塑性加工後に焼結を経た線材を含む)に
対し、一組で略円筒形の成形空間を形成する複数の型
を、線材の径方向に押し付けて、線材を圧縮することで
ある。テープ線を充填したチューブへの塑性加工は、伸
線加工、スエージ加工、プレス加工、押出加工またはそ
れらの組合わせを含む一方、線材への複数の型による圧
縮は、伸線加工などの顕著な引張り応力が線材に作用す
る加工を含まない。たとえば、図14(a)および
(b)に示すように伸線加工では、線材130の径方向
Rへの圧縮応力の他に、線材長手方向Lへの引張り応力
が働く。一方、上記圧縮では、図15(a)および
(b)において矢印で示すような線材140の径方向R
への力が主に作用する。この圧縮工程は、1回または複
数回行うことができる。1回の圧縮工程の後、粉末の焼
結工程に移行してもよい。一方、1回目の圧縮工程の
後、2回目の圧縮工程を行い、粉末の焼結工程に移行し
てもよい。2回目の圧縮工程の後、さらに1回、または
複数回圧縮工程を行った後、焼結工程に移行してもよ
い。一方、1回目の圧縮工程の後、さらなる塑性加工を
行い、次いで、2回目の当該圧縮工程を行った後、焼結
に移行してもよい。塑性加工−圧縮加工を複数回繰返し
た後、焼結に移行することができる。また、塑性加工お
よび焼結を経た線材に、当該圧縮工程を施し、次いで焼
結を行ってもよい。いずれにせよ、重要なことは、圧縮
に続き、伸線を含むいかなる塑性加工もその間に行うこ
となく、焼結する工程を少なくとも1回行うことであ
る。圧縮工程は、プロセスにおいて伸線などの塑性加工
によってもたらされた好ましくない組織を改善する役割
を有しているからである。圧縮により組織の改善を行っ
た後、すぐに焼結を行えば、改善された組織が焼結さ
れ、より好ましい超電導特性が得られる。
【0047】この圧縮には、一組で略円筒形の成形空間
を形成する複数の型が使用される。そのような型を用い
るのは、線材の全周囲にわたって、線材の径方向にでき
るだけ均等に圧縮力をかけるためである。したがって、
以降に示すように、複数の型のうち1つは、円筒を径方
向に分割した形の溝またはくぼみを有する。このような
型を用いる圧縮は、ある種の型鍛造ということもでき
る。圧縮は、実質的に線材の全長に対して行われる。圧
縮の後得られる線材は、略円形の断面を有し、実質的に
線材の全長にわたって略均一な直径を有する。
【0048】圧縮は、特にスエージ加工によって行われ
ることが好ましい。スエージ加工は、ロータリースエー
ジングが好ましい。ロータリースエージングの例を図1
6(a)〜(c)に示す。使用される1対の押し型(ダ
イ)151および152のそれぞれは、円筒を2等分し
た形(断面では半円形)の溝153および154を有す
る。したがって、1対の型151および152は、円筒
形の成形空間を形成する。線材150は、1対の型15
1および152の間に挿入され、溝153および154
を介して径方向に圧縮される。これらの型により、線材
中心方向へのほぼ均一な圧縮が可能になる。1対の型
は、それぞれ1軸方向に線材を挟むように動き、一時に
線材を2方向からたたく。この1軸方向の運動中、1対
の型は、回転し、それにより線材の周方向に均等な圧縮
力をかける。線材は、長手方向に均等に圧縮されるよ
う、適当な速度で送られる。こうして、線材の全長にわ
たり、圧縮がかけられる。このようなスエージ加工によ
る圧縮は、たとえば、1〜50%の減面率で行うことが
でき、好ましくは2〜20%の減面率で行うことができ
る。スエージ加工では、2つの型の他に、たとえば、4
つの型を使用してもよい。
【0049】圧縮は、図17(a)〜(c)に示すよう
なプレス加工であってもよい。使用される1対の押し型
(ダイ)161および162のそれぞれは、円筒を2等
分した形(断面では半円形)の溝163および164を
有する。したがって、1対の型161および162は、
円筒形の成形空間を形成する。線材160は、1対の型
161および162の間に挿入され、溝163および1
64を介して径方向に圧縮される。これらの型により、
線材中心方向への圧縮が可能になる。1対の型は、それ
ぞれ1軸方向に線材を挟むように動き、一時に線材を2
方向から押す。線材は、長手方向に均等に圧縮されるよ
う、適当な速度で送られる。こうして、線材の全長にわ
たり、圧縮がかけられる。このようなプレス加工による
圧縮は、たとえば、1〜50%の減面率で行うことがで
き、好ましくは5〜20%の減面率で行うことができ
る。プレス加工では、2つの型の他に、3つまたはそれ
以上の型を使用してもよい。
【0050】圧縮は、図18(a)〜(c)に示すよう
な溝きりロール171および172による圧延であって
もよい。ここで、溝きりロール(穴型ロールともいう)
は、圧延用のロールに成形用の溝またはくぼみが形成さ
れたものを指す。図18(a)に示すように、使用され
る1対のロール171および172のそれぞれは、円筒
を2等分した形(断面では半円形)の溝173および1
74を有する。したがって、1対のロール171および
172は、円筒形の成形空間を形成する。線材170
は、1対のロール171および172の間に挿入され、
溝173および174を介して径方向に圧縮される。こ
れらのロールにより、線材中心方向への圧縮が可能にな
る。1対のロールが回転する間、線材は圧縮され、送ら
れる。線材は、長手方向に均一に圧縮されていく。こう
して、線材の全長にわたり、圧縮がかけられる。このよ
うな溝きりロール加工は、たとえば、1〜50%の減面
率で行うことができ、好ましくは5〜20%の減面率で
行うことができる。
【0051】圧縮工程の後、線材は、粉末の焼結のため
加熱される。焼結温度は、通常、800℃以上であり、
たとえば、ビスマス系酸化物超電導体の場合、830℃
〜860℃が好ましい。焼結時間は、線材の規格等に応
じて適宜設定される。焼結雰囲気は、大気等、酸素を適
当な分圧で含有するものである。
【0052】本発明による製造方法では、焼結の後、線
材を塑性加工する工程および次いで線材を加熱し酸化物
超電導体を焼結させる工程を、1回または複数回行って
もよい。焼結後の塑性加工は、伸線加工、または駆動式
ロールダイスによる伸線加工とすることができる。これ
らの伸線加工の後、再度、焼結が行われる。
【0053】一方、本発明者は、焼結後に、一組で略円
筒形の成形空間を形成する複数の型を使用して線材を圧
縮し、次いで焼結を行うと、Jcが向上することを見出
した。上述したように、この圧縮は、伸線加工などの顕
著な引張り応力が線材に作用する加工を含まない。すな
わち、この圧縮では、図15(a)および(b)におい
て矢印で示すような線材の径方向への力が主に作用す
る。焼結後の圧縮加工は、一対の型による1軸方向のプ
レス加工、複数の型による線材の径方向へのプレス加
工、またはそれらの組み合わせとすることができる。代
わりに、焼結工程後の圧縮加工は、一対の溝切りロール
による圧延加工、複数の溝切りロールによる圧延加工、
またはそれらの組み合わせとすることができる。1対ま
たは複数の型によるプレス加工、および1対または複数
の溝ロール加工には、図17(a)〜(c)および図1
8(a)〜(c)をそれぞれ参照して説明した具体例を
使用することができる。これらの圧縮加工の後、再度、
焼結が行われる。圧縮加工−焼結は、1回でもよいし、
複数回繰返してもよい。
【0054】溝きりロールによって圧縮を行う場合、図
19に示すように、得られる線材180の直径dに対す
る溝きりロール181の直径Dの比D/dが、40以上
であることが好ましい。d/Dを40以上にすること
で、良好な超電導特性を有する線材を得ることができ
る。
【0055】圧縮に関し、1対の型による1軸方向のプ
レス加工、または1対の溝切りロールによる圧延加工で
は、線材の一部が溝の外にながれ、得られる線材断面が
円形から若干はずれたり、バリが形成されたりすること
がある。図20(a)は、そのような変形が生じた様子
を示し、図20(b)および(c)はバリが生じた様子
を示す。この場合、バリは、必要な形からはずれた突起
部ということができる。本発明において、バリは除去し
てもよいし、支障がなければ残しておいてもよい。バリ
は、溶解液によるエッチング等の化学的処理、またはや
すりによる研磨等の機械的処理により、除去することが
できる。
【0056】図21に示すように、プレス型またはロー
ルにおける溝203のエッジ部203aおよび203b
には、面取りが一般に施されている。この場合、溝20
3の半径Rに対する面取り203aおよび203bの半
径rの比r/Rは、0.2以下であることが望ましい。
面取り半径がrが大きくなり、比r/Rが大きくなる
と、加工中に線材が溝から逃げやすくなり、得られる線
材の断面は、円から外れやすくなる。また、溝のエッジ
部には、図22に示すように、実質的に面取りが施され
ていなくてもよい。エッジ部に面取りがない場合、図2
0(b)に示すようなバリが発生するが、得られる線材
の断面は、真円に近くなる。
【0057】本発明による製造方法の具体的な流れを以
下に示す。プロセスA〜Gのいずれも本発明に従うもの
である。 A.粉末充填−伸線−圧延−テープ充填−伸線−圧縮
(スエージ)−焼結 B.Aプロセス−伸線−焼結 C.Aプロセス−圧縮(型プレスまたは溝ロールプレ
ス)−焼結 D.Bプロセス−圧縮(型プレスまたは溝ロールプレ
ス)−焼結 E.Cプロセス−圧縮(型プレスまたは溝ロールプレ
ス)−焼結 F.粉末充填−伸線−圧延−テープ充填−伸線−焼結−
圧縮(型プレスまたは溝ロールプレス)−焼結 G.粉末充填−伸線−圧延−テープ充填−伸線−焼結−
伸線−圧縮(型プレスまたは溝ロールプレス)−焼結 本発明者は、線材の製造プロセスにおいて、圧縮工程
が、フィラメントとなるべき粉末部のうねりを低減し、
粉末部と安定化材との界面を平滑にすることができるこ
とを見出した。特に、焼結前の圧縮加工は、うねりの低
減を効果的にもたらす。図23に粉末部のうねりが比較
的多い線材の断面を示し、図24にうねりが低減された
線材の断面を示す。図23の線材は、Fのプロセスで製
造され、図24の線材は、Cのプロセスで製造されてい
る。図24では、安定化材(銀)界面がまっすぐに伸び
ているものが多い。このように界面が改善されれば、界
面における結晶粒同士の結合が改善され、Jcの向上に
つながると考えられる。
【0058】また、本発明者は、フィラメントの細部に
着目し、フィラメントに存在する毛状体の数が、圧縮工
程により低減されることを見出した。図25に示すよう
に、毛状体240は、フィラメント241において、そ
の主要部242から分岐する細長い結晶である。線材の
断面を拡大した顕微鏡写真において、この主要部から分
岐する結晶について、その長さをL、長さLの半分の部
分の幅をTとし、L/Tが3以上のものを毛状体と定義
することができる。この毛状体とJcとは、相関関係が
あるようであり、毛状体の数が少ない方が、Jcが高い
傾向にある。上述したように、圧縮加工により安定化材
界面が平滑になれば、結晶粒の配向性が改善され、その
結果、毛状体の数が少なくなると考えられる。本発明に
よる線材において、毛状体の数は、線材の断面積1mm
2あたり500以下、好ましくは300以下とすること
ができる。この毛状体の密度(個/mm2)は、線材断
面の顕微鏡写真において、毛状体の総数を数え、それを
線材の断面積で割って得ることができる。また、線材断
面の適当な部分における毛状体の数を数え、それを当該
部分の面積で割って、密度を求めてもよい。
【0059】本発明では、特に、ビスマス系、タリウム
系酸化物超電導体等の酸化物超電導体を用いた線材が提
供される。特に本発明において、超電導体からなるフィ
ラメントは、Bi2Sr2Ca2Cu310-X、(Bi,P
b)2Sr2Ca2Cu310-X等のビスマス系2223相
またはBi2Sr2Ca1Cu28-X、(Bi,Pb)2
2Ca1Cu28-X等のビスマス系2212相を主体と
するビスマス系酸化物超電導体からなることが好まし
い。
【0060】以下本発明を例によってさらに詳細に説明
するが、本発明は、これらの例に限定されるものではな
い。
【0061】例1 Bi23、PbO、SrCO3、CuOを用いてBi:
Pb:Sr:Ca:Cu:O=1.9:0.4:1.
9:2.2:3.0の組成比の粉末を混合した。この粉
末に、700〜800℃で4時間の熱処理を行い、粉砕
を行った。得られた粉末を800℃で2時間の加熱処理
により脱気した後、外径36.0mmφ、内径31.5m
mφの銀パイプに充填した。粉末が充填されたパイプを
伸線し、2.74mmφの単芯丸線を作製した。次い
で、得られた線材を0.41mm厚に圧延した。得られ
たテープ線を切断し、20本のテープセグメントを0.
2mm厚の銀シートに貼り付け、14.7mmφの銀棒
の周りにらせん状に巻き付けた。得られた構造物を外径
36.0mmφ、内径34.5mmφの銀パイプに嵌合
し、0.96mmφまで伸線し多芯丸線を得た。この線
材に830〜850℃で50時間の一次熱処理をした
後、0.86mmφまで伸線し、さらに同一条件で20
時間の二次熱処理を行った。得られた線材の液体窒素
中、外部磁場印加なしの状態での臨界電流Icを直流4
端子法により測定した。Icは1μV/cm定義で4.
0Aであった。この線材の横断面を写真撮影し、銀部分
と超電導部分の面積の割合を求めた。線材横断面の超電
導部分の面積の割合は14%であった。Icを超電導部
分の面積で除した臨界電流密度Jcは4.9×103A/
cm2であった。得られた線材について、上述した方法
2によって求めた平均ずれ角度(θ)は22°であっ
た。フィラメントにおける毛状体の密度は700/mm
2であった。
【0062】例2 例1と同様にして得た1.02mmφの多芯丸線(未焼
結)に、0.95mmφの半円形の丸溝の入ったスエー
ジングダイス2枚により2方向から圧縮加工を施し、約
0.95mmφの線材を得た。このスエージ加工では、
ごくわずかしか線材の径を減少させなかった。得られた
線材に例1と同様、一次熱処理をした後、0.86mm
φまで伸線し、例1と同様の二次熱処理をした。得られ
た線材のIc(液体窒素中、外部磁場印加なし、1μV
/cm定義)は7.0Aであった。線材横断面の超電導
部分の面積の割合は12%で超電導部分が緻密化してい
ることを確認した。臨界電流密度Jcは1.0×104
/cm2であり、例1と比較して通電特性が向上した。
得られた線材について、上述した方法2によって求めた
平均ずれ角度(θ)は10°であった。フィラメントに
おける毛状体の密度は330/mm2であった。
【0063】例3 例1と同様の工程で作製した1.02mmφの多芯丸線
(未焼結)に、0.95mmφの半円形の丸溝の入った
スエージングダイス2枚により2方向から圧縮加工を施
し、例2と同様に0.95mmφの線材を得た。得られ
た線材に例1と同様の一次熱処理をした後、0.94m
mφの半円形の丸溝の入ったプレス型を用いて2方向か
ら圧縮加工を施した。この線材に例1と同様の二次熱処
理をした。得られた線材のIc(液体窒素中、外部磁場
印加なし、1μV/cm定義)は13.6Aであった。
線材横断面の超電導部分の面積の割合は12%、臨界電
流密度Jcは1.7×104A/cm2であり、例2と比
較して通電特性が向上した。得られた線材について、上
述した方法2によって求めた平均ずれ角度(θ)は9°
であった。フィラメントにおける毛状体の密度は280
/mm2であった。
【0064】例4 実施例1と同様の工程で作製した1.05mmφの多芯
丸線(未焼結)に、0.95mmφの半円形の丸溝の入
った圧延ロールを用いて2方向から圧縮加工を施し、
0.95mmφの線材を得た。これに例1と同様の一次
熱処理をした後、0.92mmφの半円形の丸溝の入っ
た240mmφの圧延ロールを用いて2方向から圧縮加
工を施した。圧延された線材に例1と同一の二次熱処理
をした。得られた線材のIc(液体窒素中、外部磁場印
加なし、1μV/cm定義)は12.0Aであった。線
材横断面の超電導部分の面積の割合は12%、臨界電流
密度Jcは1.5×104A/cm2であり、例2と比較
して通電特性が向上した。ロール直径Dとロールにより
圧縮加工された略丸形状の線材の直径dとの比の値D/
dは260であった。得られた線材について、上述した
方法2によって求めた平均ずれ角度(θ)は9°であっ
た。フィラメントにおける毛状体の密度は300/mm
2であった。
【0065】例5 例1と同様の工程で作製した1.05mmφの多芯丸線
(未焼結)に、0.95mmφの半円形の丸溝の入った
圧延ロールを用いて2方向から圧縮加工を施し、0.9
5mmφの線材を得た。これに例1と同様の一次熱処理
をした後、0.92mmφの半円形の丸溝の入った40
mmφの圧延ロールを用いて2方向から圧縮加工を施し
た。この線材に例1と同様の二次熱処理をした。得られ
た線材のIc(液体窒素中、外部磁場印加なし、1μV
/cm定義)は8.0Aであった。線材横断面の超電導
部分の面積の割合は12%、臨界電流密度Jcは1.0
×104A/cm2であり、例4と比較して圧延ロール径
が小さくなることにより通電特性が劣化した。ロール直
径Dとロールにより圧縮加工された略丸形状の線材の直
径dとの比の値D/dは43であった。例4と比較し
て、例5のD/dが小さいために通電特性が低いことが
分かった。得られた線材について、上述した方法2によ
って求めた平均ずれ角度(θ)は13°であった。フィ
ラメントにおける毛状体の密度は380/mm2であっ
た。
【0066】例6 例1と同様の工程で作製した1.02mmφの多芯丸線
(未焼結)に、0.94mmφの円筒形の孔を形成する
スエージングダイス4枚により4方向から圧縮加工を施
し、0.94mmφの線材を得た。これに例1と同様の
一次熱処理をした後、0.92mmφの半円形の丸溝の
入った240mmφの圧延ロールを用いて2方向から圧
縮加工を施した。このとき、圧延ロールには、丸溝のエ
ッジに半径0.20mmの面取り加工を施したロール6
Aと面取り加工を施していないロール6Bとの2種類を
用いて、それぞれ線材に圧縮加工を施した。ロール6A
のエッジの面取り加工の半径rと丸溝の半径Rとの比の
値r/Rは0.22で、ロール6Bのr/Rは0.02以
下であった。この線材に例1と同様の二次熱処理をし
た。得られた2種類の線材のIc(液体窒素中、外部磁
場印加なし、1μV/cm定義)はともに12.0Aで
あった。線材横断面の超電導部分の面積の割合は12
%、臨界電流密度Jcは1.5×104A/cm2であ
り、両者の通電特性は同等であった。線材横断面のアス
ペクト比は、面取り加工を施したロール6Aで圧縮加工
を施した線材が1.2、面取り加工を施していないロー
ル6Bで圧縮加工を施した線材が1.0となりロール6
Bの断面の方がより真円に近くなることが分かった。丸
溝による圧縮加工で真円に近い断面形状を得るためには
r/Rは0.2以下である必要があることが分かった。
得られた線材について、上述した方法2によって求めた
平均ずれ角度(θ)は、10°と9°であった。フィラ
メントにおける毛状体の密度は、310/mm2と30
0/mm2であった。
【0067】例7 例1と同様の工程で作製した1.15mmφの多芯丸線
(未焼結)に、1.02mmφの円筒形の孔を形成する
スエージングダイス4枚により4方向から圧縮加工を施
し、1.02mmφの線材を得た。これに例1と同様の
一次熱処理をした後、0.92mmφの半円形の丸溝の
入った240mmφの圧延ロールを用いて2方向から圧
縮加工を施した。このとき、バリが発生した。このバリ
を紙やすりでこすり落とした後、この線材に例1と同様
の二次熱処理をした。得られた線材のIc(液体窒素
中、外部磁場印加なし、1μV/cm定義)は8.0A
であった。線材横断面の超電導部分の面積の割合は12
%、臨界電流密度Jcは1.0×104A/cm2であ
り、例4と比較して紙やすりによるバリ取りで通電特性
が劣化した。得られた線材について、上述した方法2に
よって求めた平均ずれ角度(θ)は10°であった。フ
ィラメントにおける毛状体の密度は350/mm 2であ
った。
【0068】例8 例1と同様の工程で作製した1.06mmφの多芯丸線
(未焼結)に、1.04mmφの半円形の丸溝の入った
スエージングダイス2枚により2方向から圧縮加工を施
し、1.04mmφの線材を得た。これに例1と同様の
一次熱処理をした後、0.99mmφの半円形の丸溝の
入った240mmφの圧延ロールを用いて2方向から圧
縮加工を施した。このとき、バリが発生した。このバリ
を化学的に溶かすため、過酸化水素水、アンモニア水お
よび水を1:1:1の比率で混合した銀用エッチング液2
00cm3を調製し、このエッチング液に線材を10c
m長のみ1分間浸してバリを取った。使用したエッチン
グ液は銀を溶かす能力が低下するため、新たにバリのあ
る線材をエッチングする場合にはエッチング液を交換し
た。この条件でエッチングにより超電導部分が露出する
ことなくバリを取り除くことができた。また、エッチン
グにより線材に歪みを与えることはなかった。この線材
に例1と同様の二次熱処理をした。得られた線材のIc
(液体窒素中、外部磁場印加なし、1μV/cm定義)は
13.9Aであった。線材横断面の超電導部分の面積の
割合は12%、臨界電流密度Jcは1.5×104A/c
2であり、例4と同等の通電特性が得られた。得られ
た線材について、上述した方法2によって求めた平均ず
れ角度(θ)は9°であった。フィラメントにおける毛
状体の密度は300/mm2であった。
【0069】例9 例1と同様にして一次焼結まで行い0.94mmφの丸
線(焼結済)を得た。得られた線材に対し、0.93m
mφの半円形の丸溝の入ったプレス型を用いて2方向か
ら圧縮加工を施した。この線材に例1と同様の二次熱処
理をした。得られた線材のIc(液体窒素中、外部磁場
印加なし、1μV/cm定義)は12.5Aであった。
線材横断面の超電導部分の面積の割合は15%、臨界電
流密度Jcは1.4×104A/cm2であり、例1と比
較して通電特性が向上した。得られた線材について、上
述した方法2によって求めた平均ずれ角度(θ)は11
°であった。フィラメントにおける毛状体の密度は32
0/mm2であった。
【0070】例10 例1と同様にして一次焼結まで行い0.98mmφの丸
線(焼結済)を得た。得られた線材に、0.92mmφ
の半円形の丸溝の入った240mmφの圧延ロールを用
いて2方向から圧縮加工を施した。圧延された線材に例
1と同一の二次熱処理をした。得られた線材のIc(液
体窒素中、外部磁場印加なし、1μV/cm定義)は1
2.0Aであった。線材横断面の超電導部分の面積の割
合は12%、臨界電流密度Jcは1.5×104A/c
2であり、例1と比較して通電特性が向上した。ロー
ル直径Dとロールにより圧縮加工された略丸形状の線材
の直径dとの比の値D/dは260であった。得られた
線材について、上述した方法2によって求めた平均ずれ
角度(θ)は11°であった。フィラメントにおける毛
状体の密度は320/mm2であった。
【0071】
【発明の効果】以上に示すとおり、本発明によれば、比
較的高いJcを有し、Jcの磁場方向依存性が低いフィ
ラメントの配置を有する酸化物超電導多芯線を提供する
ことができる。本発明は、ケーブル、マグネット用コイ
ル、超電導機器等の用途において有用な線材を提供する
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)〜(c)は、本発明による線材の断面
の形状を示す断面図である。
【図2】 平均ずれ角度を求めるときの磁場の印加方向
を示す模式図である。
【図3】 酸化物超電導線のJc−B特性を示す図であ
る。
【図4】 平均ずれ角度を求める1つの方法を説明する
ための図である。
【図5】 平均ずれ角度を求めるもう1つの方法を説明
するための図である。
【図6】 フィラメントにおいて酸化物結晶粒が線材長
手方向にそろって配向している様子を示す模式図であ
る。
【図7】 フィラメントにおいて酸化物結晶粒の配向方
向が、線材長手方向から所定の範囲でずれている様子を
示す模式図である。
【図8】 (a)〜(c)は、本発明による線材のフィ
ラメントの配置を示す断面図である、
【図9】 本発明による線材の具体例を示す斜視図であ
る。
【図10】 本発明による線材のもう一つの具体例を示
す斜視図である。
【図11】 テープ線を安定化シートとともにチューブ
に充填する一態様を示す模式図である。
【図12】 テープ線を安定化シートとともにチューブ
に充填するもう一つの態様を示す模式図である。
【図13】 テープ線を安定化シートとともにチューブ
に充填するさらなる態様を示す模式図である。
【図14】 (a)および(b)は、伸線加工において
線材に働く応力の方向を示す図である。
【図15】 (a)および(b)は、本発明に従う圧縮
加工において線材に働く応力の方向を示す図である。
【図16】 (a)〜(c)は、スエージ加工の一具体
例を示す図である。
【図17】 (a)〜(c)は、プレス加工の一具体例
を示す図である。
【図18】 (a)〜(c)は、溝切りロール加工の一
具体例を示す図である。
【図19】 溝切りロールの直径と線材の直径との関係
を示す図である。
【図20】 プレス加工または溝切り加工において線材
に発生するバリを示す図である。
【図21】 エッジに面取りがされているプレス型また
は溝を示す断面図である。
【図22】 エッジに面取りがされていないプレス型ま
たは溝を示す断面図である。
【図23】 フィラメントのうねりが比較的多い線材の
断面図である。
【図24】 フィラメントのうねりが比較的少ない線材
の断面図である。
【図25】 フィラメントに存在する毛状体を説明する
ための図である。
【符号の説明】
70,80,90 酸化物超電導多芯線、71,81,
91 フィラメント、72,82,92 安定化マトリ
ックス。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 藤上 純 大阪市此花区島屋一丁目1番3号 住友電 気工業株式会社大阪製作所内 (72)発明者 大松 一也 大阪市此花区島屋一丁目1番3号 住友電 気工業株式会社大阪製作所内 Fターム(参考) 5G321 AA01 AA05 AA06 BA01 CA04 CA09 CA41 DB18

Claims (22)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 酸化物超電導体からなるリボン形状の複
    数のフィラメントが安定化材中に埋め込まれた酸化物超
    電導多芯線であって、 前記線材の長手方向に垂直な断面の形状が略円形であ
    り、 前記断面における前記フィラメントの厚み方向は、前記
    断面の径方向に対し略平行であり、かつ前記フィラメン
    トにおける酸化物超電導体結晶粒の配向について前記線
    材の長手方向に対する平均ずれ角度(本明細書中に定
    義)が20°以下であることを特徴とする、酸化物超電
    導多芯線。
  2. 【請求項2】 前記複数のフィラメントは、前記断面に
    おいて、前記線材の中心に対し略回転対称に配置されて
    いることを特徴とする、請求項1に記載の酸化物超電導
    多芯線。
  3. 【請求項3】 前記平均ずれ角度が15°以下であるこ
    とを特徴とする、請求項1または2に記載の酸化物超電
    導多芯線。
  4. 【請求項4】 前記断面において各フィラメントに存在
    する毛状体の数が、前記線材の断面積1mm2あたり5
    00以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいず
    れか1項に記載の酸化物超電導多芯線。
  5. 【請求項5】 前記断面において、前記複数のフィラメ
    ントは、螺旋状または同心円状に、前記安定化材によっ
    て互いに分離される態様で、配置されることを特徴とす
    る、請求項1〜4のいずれか1項に記載の酸化物超電導
    多芯線。
  6. 【請求項6】 前記酸化物超電導体がビスマス系酸化物
    超電導体であり、前記安定化材が銀または銀合金からな
    ることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記
    載の酸化物超電導多芯線。
  7. 【請求項7】 液体窒素温度、印加磁場ゼロの条件下に
    おいて、5000A/cm2以上の臨界電流密度を有す
    る、請求項1〜6のいずれか1項に記載の酸化物超電導
    多芯線。
  8. 【請求項8】 酸化物超電導体からなるリボン形状の複
    数のフィラメントが安定化材中に埋め込まれ、断面が略
    円形であり、かつ前記断面における前記フィラメントの
    厚み方向が前記断面の径方向に対して略平行である、酸
    化物超電導多芯線をパウダー・イン・チューブ法を用い
    て製造する方法であって、 酸化物超電導体の原料粉末が安定化材で覆われたテープ
    状線材を、複数本、安定化材からなる円筒形のチューブ
    に、前記テープ状線材の厚み方向が前記円筒形のチュー
    ブの径方向に略平行になるように充填し、かつ塑性加工
    して(かつ必要に応じて焼結して)得られる、断面が略
    円形の線材に対し、一組で略円筒形の成形空間を形成す
    る複数の型を用いて、前記線材を径方向に圧縮し、断面
    が略円形の線材を得る工程、および圧縮された前記線材
    を加熱し、酸化物超電導体を焼結させる工程を備えるこ
    とを特徴とする、製造方法。
  9. 【請求項9】 前記圧縮された線材に対する前記焼結工
    程が、最初の焼結工程であることを特徴とする、請求項
    8に記載の製造方法。
  10. 【請求項10】 前記圧縮された線材に対する前記焼結
    工程が、2回目または3回目以降の焼結工程であること
    を特徴とする、請求項8に記載の製造方法。
  11. 【請求項11】 前記圧縮された線材に対する前記焼結
    工程の後、前記線材を塑性加工する工程および次いで前
    記線材を加熱し酸化物超電導体を焼結させる工程を、1
    回または複数回行うことを特徴とする、請求項9に記載
    の製造方法。
  12. 【請求項12】 前記線材を圧縮する工程は、前記線材
    をスエージ加工する工程であることを特徴とする、請求
    項8、9または11に記載の製造方法。
  13. 【請求項13】 前記線材を圧縮する工程は、一対の型
    による1軸方向のプレス加工、複数の型による前記線材
    の径方向へのプレス加工、またはそれらの組み合わせか
    らなることを特徴とする、請求項8〜11のいずれか1
    項に記載の製造方法。
  14. 【請求項14】 前記線材を圧縮する工程は、一対の溝
    切りロールによる圧延加工、複数の溝切りロールによる
    圧延加工、またはそれらの組み合わせからなることを特
    徴とする、請求項8〜11のいずれか1項に記載の製造
    方法。
  15. 【請求項15】 前記線材を圧縮する工程により、フィ
    ラメントとなるべき粉末部のうねりが低減されることを
    特徴とする、請求項8〜14のいずれか1項に記載の製
    造方法。
  16. 【請求項16】 前記焼結工程後の塑性加工は、一組で
    略円筒形の成形空間を形成する複数の型を用いて前記線
    材を圧縮する加工であることを特徴とする、請求項11
    または12に記載の製造方法。
  17. 【請求項17】 前記焼結工程後の塑性加工は、一対の
    型による1軸方向のプレス加工、複数の型による前記線
    材の径方向へのプレス加工、またはそれらの組み合わせ
    であることを特徴とする、請求項16に記載の製造方
    法。
  18. 【請求項18】 前記焼結工程後の塑性加工は、一対の
    溝切りロールによる圧延加工、複数の溝切りロールによ
    る圧延加工、またはそれらの組み合わせであることを特
    徴とする、請求項16に記載の製造方法。
  19. 【請求項19】 前記一対もしくは複数の型または前記
    一対もしくは複数の溝きりロールにより形成される略円
    筒形の成形空間における半径Rに対する、前記一対もし
    くは複数の型のエッジ部または前記一対もしくは複数の
    溝きりロールのエッジ部に形成される面取り半径rの比
    r/Rが、0.2以下であることを特徴とする、請求項
    17または18に記載の製造方法。
  20. 【請求項20】 前記一対もしくは複数の型のエッジ部
    または前記一対もしくは複数の溝きりロールのエッジ部
    に実質的に面取りが施されていないことを特徴とする、
    請求項17または18に記載の製造方法。
  21. 【請求項21】 前記溝きりロールによる圧延加工によ
    り得られる線材の直径dに対する前記溝きりロールの直
    径Dの比D/dが、40以上であることを特徴とする、
    請求項18に記載の製造方法。
  22. 【請求項22】 前記一対もしくは複数の型または前記
    一対もしくは複数の溝きりロールによる加工の結果、線
    材に形成されたバリを機械的または化学的に除去する工
    程をさらに備えることを特徴とする、請求項17または
    18に記載の製造方法。
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