JP2001115874A - 内燃機関の燃料噴射制御装置 - Google Patents

内燃機関の燃料噴射制御装置

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 インジェクタ周辺構造の設計自由度に制約を
受けることなく、始動性を向上させた内燃機関の燃料噴
射制御装置を得る。 【解決手段】 クランク角信号SGT、運転状態および
気筒識別信号Aに応じて、各気筒毎のインジェクタ5を
駆動する噴射制御手段33Aは、気筒識別信号の生成後
において、吸入行程中でない気筒のみに対して同時に燃
料を噴射するとともに、所要量をFs、気筒の数をNと
した場合、各気筒に対する1回毎の基本噴射量Fbが、
Fb=Fs/(N−1)を満たすように、インジェクタ
の駆動時間を設定し、同時噴射時の所要量を確保すると
ともに、同時噴射制御時に吸入行程中の気筒への燃料噴
射を禁止して点火プラグへの燃料付着を防止する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、始動時において
同時噴射を行う内燃機関の燃料噴射制御装置に関し、特
に同時噴射時の所要量を確保するとともに、始動時にお
ける着火性を向上させた内燃機関の燃料噴射制御装置に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、たとえば車両用内燃機関にお
いては、バッテリ電圧変動の大きい始動時での燃料噴射
量を安定化させて着火性を向上するために、各点火サイ
クル毎に複数気筒に同時噴射を行う燃料噴射制御装置は
よく知られている。
【0003】図7は従来の内燃機関の燃料噴射制御装置
を概略的に示す機能ブロック図であり、ここでは、内燃
機関(エンジン)が3気筒の場合を示している。図8は
図7に示した従来装置による始動時(同時噴射時)のイ
ンジェクタ制御動作を示すタイミングチャートである。
【0004】図8において、クランク角信号SGTは、
各気筒(#1〜#3)に対する基準位置(B75°、B
5°)を、それぞれ立ち上がりおよび立ち下がりエッジ
とするパルスからなる。
【0005】なお、基準位置B75°は、各気筒の圧縮
行程での上死点(TDC)よりもクランク角75°手前
の位置であり、基準位置B5°は、上死点(TDC)よ
りもクランク角5°手前の位置である。
【0006】周知のように、基準位置B75°(立ち上
がりエッジ)は、各気筒毎の通常のタイマ制御用の基準
位置として用いられ、基準位置B5°(立ち下がりエッ
ジ)は、始動時における各気筒毎のイニシャル点火時期
として用いられる。
【0007】また、各気筒毎の噴射信号J1〜J3は、
始動スイッチの動作、クランク角信号SGT、および各
気筒毎の行程(吸入、圧縮、爆発および排気)と関連し
て示されている。
【0008】図7において、クランク角センサ1は、エ
ンジン(図示せず)のクランク軸に設けられており、図
8のように、エンジン回転位置に応じて、各気筒(#1
気筒〜#3気筒)の基準位置(B75°、B5°)に対
応したパルス列からなるクランク角信号SGTを生成す
る。
【0009】各種センサ2は、周知のスロットル開度セ
ンサ、吸気量センサ、回転数センサおよび始動スイッチ
などに加えて、エンジンの温度情報としてたとえば冷却
水温を検出する水温センサを含み、エンジンの運転状態
を示す各種情報を生成する。なお、クランク角センサ1
は、回転数センサとして機能することもでき、各種セン
サ2に含まれてもよい。
【0010】マイクロコンピュータからなるECU(電
子式制御ユニット)3は、クランク角センサ1からのク
ランク角信号SGTと各種センサ2からの運転状態情報
とに基づいて、エンジン制御用の点火信号Pおよび噴射
信号Jを生成する。
【0011】点火装置4は、パワートランジスタ、点火
コイルおよび点火プラグ(図示せず)を有し、クランク
角信号SGTに同期した点火信号Pにより駆動される。
点火装置4内のパワートランジスタは、点火信号Pによ
りオンオフされ、点火コイルから高電圧を発生させて点
火プラグを放電させることにより、エンジンを駆動す
る。
【0012】インジェクタ5は、エンジン負荷に応じた
パルス幅の噴射信号J(図8参照)により駆動されて、
エンジンの各気筒に所要量の燃料を噴射する。噴射信号
Jの基本パルス幅Tbは、燃料の噴射時間に相当し、点
火サイクル毎の噴射量の総和が所要量となるように設定
されている。
【0013】ECU3は、気筒識別信号Aを生成する気
筒識別手段31と、点火信号Pを生成する点火制御手段
32と、噴射信号Jを生成する噴射制御手段33とを備
えている。
【0014】ECU3内の気筒識別手段31は、クラン
ク角信号SGTに基づいて各気筒を識別して気筒識別信
号Aを生成する。点火制御手段32および噴射制御手段
33は、クランク角信号SGT、運転状態(各種情報)
および気筒識別信号Aに基づいて、それぞれ、点火信号
Pおよび噴射信号Jを生成する。
【0015】噴射制御手段33は、気筒識別完了後すな
わち気筒識別信号Aの生成後に、各気筒に対して同時に
噴射信号Jを生成して燃料を同時噴射させる。このと
き、各気筒に対する1回毎の基本噴射量Fbは、所要量
Fs、気筒数Nを用いて、以下の(1)式のように設定
される。
【0016】Fb=Fs/N ・・・(1)
【0017】したがって、各気筒毎のインジェクタ5の
駆動時間(基本パルス幅Tb)は、上記(1)式を満た
すように設定される。3気筒の場合、1回毎の基本噴射
量Fbは、所要量Fsの1/3となる。
【0018】次に、図8を参照しながら、図7に示した
従来の内燃機関の燃料噴射制御装置の具体的な動作につ
いて説明する。まず、運転者が始動スイッチをオン操作
すると、エンジンは始動モータ(図示せず)により強制
的に回転され、クランク角センサ1は、エンジン回転に
同期したクランク角信号SGTを生成してECU3に入
力する。
【0019】たとえば、クランク角信号SGTのパルス
幅は、周知のように特定気筒(たとえば、#2)のみが
オフセットされているので、ECU3内の気筒識別手段
31は、クランク角信号SGTのパルス幅を順次に比較
することにより、各気筒を識別することができる。
【0020】気筒識別手段31は、気筒識別を完了した
時点(時刻t0)で、気筒識別信号Aを生成する。これ
により、噴射制御手段33は、各気筒の制御サイクル毎
に、全気筒のインジェクタ5に対して基本パルス幅Tb
の噴射信号J1〜J3を出力し、同時噴射制御を開始す
る。
【0021】また、点火制御手段32は、図8内の点火
信号P1〜P3で示すように、圧縮行程の終了時に対応
する各気筒の点火サイクル毎(時刻t1、t2、t3、
・・・)に、#1、#3、#2の順にシーケンシャルな
点火制御を行う。
【0022】このとき、前述のように、基本パルス幅T
bによる噴射量Fbが所要量Fsの1/3に相当してい
るので、基本噴射量Fbが或る気筒に対して3回分だけ
蓄積された時点で、エンジンは初爆を開始することにな
る。
【0023】すなわち、同時噴射制御が開始されてから
最初の吸入行程で所要量Fs(=3×Fb)が蓄積され
た気筒が初爆を開始する。なお、圧縮行程における基本
噴射量Fbは、直後の点火制御には関与せず、次回の点
火制御時の噴射量として加算される。
【0024】図8の例では、#1気筒が最初に所要量F
sに到達するので、#1気筒の点火制御時(時刻t4)
において初爆が開始する。つまり、同時噴射制御の開始
(時刻t0)から4回目の点火サイクル時点(時刻t
4)で初爆が開始する。
【0025】以下、始動スイッチがオンされている間
は、始動モータによる駆動のみならずエンジン自身によ
る駆動が行われ、エンジン回転数が所定回転数(600
rpm程度)に達した時点で完爆状態となる。
【0026】したがって、運転者は、完爆状態の回転数
に達したと思われる時点で始動モータをオフにして、エ
ンジンのみによる駆動状態とする。このとき、噴射制御
手段33は、同時噴射制御から通常のシーケンシャル噴
射制御に切り換える。
【0027】
【発明が解決しようとする課題】従来の内燃機関の燃料
噴射制御装置は以上のように、始動時の同時噴射制御に
おいて各気筒の行程条件にかかわらず全気筒に燃料を噴
射しているので、たとえば設計上の都合によりインジェ
クタ5の噴射方向が点火装置4内の点火プラグに向くよ
うに配置された場合、吸入行程中に噴射された燃料が点
火プラグの放電ギャップに付着し易く、放電不能となっ
て始動性の悪化を招くという問題点があった。
【0028】また、上記点火プラグへの燃料付着を防止
しようとすると、インジェクタ5の配置およびインテー
クマニホールドの周辺構造が制約されて、設計の自由度
が損なわれてしまい、エンジン周辺構造の小形化を十分
に実現することができないという問題点があった。
【0029】また、吸入行程中に燃料噴射することは、
排気バルブの開放タイミングとオーバーラップした場合
に生ガスが排出されてしまい、環境汚染を招くという問
題点もあった。
【0030】また、従来の内燃機関の燃料噴射制御装置
は、同時噴射制御において一定の基本パルス幅Tbの噴
射信号J1〜J3を用いているので、3気筒の場合に気
筒識別完了時刻t0から初爆開始時刻t4まで、最短で
も4回の点火サイクルを要してしまい、初爆開始まで時
間がかかり始動性が悪化するという問題点があった。
【0031】また、上記初爆遅れを解消するためには、
気筒識別完了前に各気筒に対して予備噴射することも考
えられるが、たとえば運転者が始動スイッチのオン操作
を繰り返した場合などに噴射量過剰状態となり易く、点
火プラグの放電ギャップが燃料付着により導通してしま
い、点火不良により始動性の悪化を招くという問題点が
あった。
【0032】さらに、気筒識別完了時点からシーケンシ
ャルな噴射制御を行うことも考えられるが、前述のよう
にバッテリ電圧が不安定な始動時にシーケンシャルな噴
射制御を実行しても噴射量が不安定になり易いので、着
火性不良により始動性の悪化を招くという問題点があっ
た。
【0033】この発明は上記のような問題点を解決する
ためになされたもので、同時噴射制御時において、吸入
行程中の気筒に対する燃料噴射を禁止することにより、
インジェクタの噴射方向にかかわらず点火プラグへの燃
料付着を防止し、インジェクタ周辺構造の設計自由度に
制約を受けることなく、始動性を向上させた内燃機関の
燃料噴射制御装置を得ることを目的とする。
【0034】また、この発明は、同時噴射の制御開始時
において、吸入行程に干渉しない気筒への最初の噴射量
を増量補正することにより、同時噴射時の所要量を早期
に確保し、早期に初爆開始できるようにして始動性を向
上させた内燃機関の燃料噴射制御装置を得ることを目的
とする。
【0035】
【課題を解決するための手段】この発明の請求項1に係
る内燃機関の燃料噴射制御装置は、内燃機関の回転位置
に対応したクランク角信号を生成するクランク角センサ
と、内燃機関の運転状態を検出する各種センサと、内燃
機関の複数の気筒に所要量の燃料を噴射するインジェク
タと、クランク角信号に基づいて各気筒を識別して気筒
識別信号を生成する気筒識別手段と、クランク角信号、
運転状態および気筒識別信号に応じて、各気筒毎のイン
ジェクタを駆動する噴射制御手段とを備え、噴射制御手
段は、気筒識別信号の生成後において、吸入行程中でな
い気筒のみに対して同時に燃料を噴射するとともに、所
要量をFs、気筒の数をNとした場合、各気筒に対する
1回毎の基本噴射量Fbが、Fb=Fs/(N−1)を
満たすように、インジェクタの駆動時間を設定するもの
である。
【0036】また、この発明の請求項2に係る内燃機関
の燃料噴射制御装置は、請求項1において、気筒識別信
号に応答してインジェクタの駆動時間を補正する噴射量
補正手段を備え、噴射量補正手段は、インジェクタの駆
動時間が各気筒の吸入行程に干渉しないように駆動時間
を制限するための強制カット手段を含むものである。
【0037】また、この発明の請求項3に係る内燃機関
の燃料噴射制御装置は、請求項2において、強制カット
手段は、インジェクタの駆動時間が排気行程に干渉する
気筒が存在する場合に、当該気筒に対するインジェクタ
の駆動時間を、他気筒の点火タイミング付近で強制的に
中断するものである。
【0038】また、この発明の請求項4に係る内燃機関
の燃料噴射制御装置は、請求項2において、各種センサ
は、内燃機関の回転数および温度の少なくとも一方に関
する情報を出力し、強制カット手段は、回転数および温
度の少なくとも一方の情報に応じて、インジェクタの駆
動時間の中断タイミングを可変設定するものである。
【0039】また、この発明の請求項5に係る内燃機関
の燃料噴射制御装置は、請求項2において、強制カット
手段は、気筒識別信号が生成されてから少なくともN回
目〜2N回目の点火サイクル後に有効化されるものであ
る。
【0040】また、この発明の請求項6に係る内燃機関
の燃料噴射制御装置は、請求項2において、噴射量補正
手段は、噴射量を一時的に増量するための増量補正手段
を含み、増量補正手段は、気筒識別信号が生成されてか
ら最初の噴射タイミング中に排気行程を含む気筒のみに
対して、最初の1回の噴射量のみを基本噴射量の約(N
−1)倍に設定するものである。
【0041】また、この発明の請求項7に係る内燃機関
の燃料噴射制御装置は、請求項6において、各種センサ
は、内燃機関の回転数および温度の少なくとも一方に関
する情報を出力し、増量補正手段は、回転数および温度
の少なくとも一方の情報に応じて、最初の1回の噴射量
を可変設定するものである。
【0042】また、この発明の請求項8に係る内燃機関
の燃料噴射制御装置は、請求項1において、気筒識別信
号に応答してインジェクタの駆動時間を補正する噴射量
補正手段を備え、噴射量補正手段は、噴射量を一時的に
増量するための増量補正手段を含み、増量補正手段は、
気筒識別信号が生成されてから最初の噴射タイミング中
に排気行程を含む気筒のみに対して、最初の1回の噴射
量のみを基本噴射量の約(N−1)倍に設定するもので
ある。
【0043】また、この発明の請求項9に係る内燃機関
の燃料噴射制御装置は、請求項8において、各種センサ
は、内燃機関の回転数および温度の少なくとも一方に関
する情報を出力し、増量補正手段は、回転数および温度
の少なくとも一方の情報に応じて、最初の1回の噴射量
を可変設定するものである。
【0044】また、この発明の請求項10に係る内燃機
関の燃料噴射制御装置は、内燃機関の回転位置に対応し
たクランク角信号を生成するクランク角センサと、内燃
機関の運転状態を検出する各種センサと、内燃機関の複
数の気筒に所要量の燃料を噴射するインジェクタと、ク
ランク角信号に基づいて各気筒を識別して気筒識別信号
を生成する気筒識別手段と、クランク角信号、運転状態
および気筒識別信号に応じて各気筒毎のインジェクタを
駆動する噴射制御手段と、気筒識別信号に応答してイン
ジェクタの駆動時間を補正する噴射量補正手段を備え、
噴射制御手段は、気筒識別信号の生成後に、各気筒に対
して同時に燃料を噴射するとともに、所要量をFs、気
筒の数をNとした場合、各気筒に対する1回毎の基本噴
射量Fbが、Fb=Fs/Nを満たすように、インジェ
クタの駆動時間を設定し、噴射量補正手段は、噴射量を
一時的に増量するための増量補正手段を含み、増量補正
手段は、気筒識別信号が生成されてから最初の噴射タイ
ミング中に排気行程を含む気筒のみに対して、最初の1
回の噴射量のみを基本噴射量の約(N−1)倍に設定す
るものである。
【0045】また、この発明の請求項11に係る内燃機
関の燃料噴射制御装置は、請求項10において、各種セ
ンサは、内燃機関の回転数および温度の少なくとも一方
に関する情報を出力し、増量補正手段は、回転数および
温度の少なくとも一方の情報に応じて、最初の1回の噴
射量を可変設定するものである。
【0046】
【発明の実施の形態】実施の形態1.以下、この発明の
実施の形態1を図について説明する。図1はこの発明の
実施の形態1を概略的に示す機能ブロック図であり、前
述(図7参照)と同様のものについては、同一符号を付
して詳述を省略する。
【0047】図2はこの発明の実施の形態1による始動
時(同時噴射時)のインジェクタ制御動作を示すタイミ
ングチャートであり、前述(図8参照)と同様のものに
ついては、同一符号を付して詳述を省略する。
【0048】図1において、ECU3Aは、気筒識別手
段31、点火制御手段32および噴射制御手段33Aに
加えて、噴射制御手段33Aに関連した噴射量補正手段
34を備えている。噴射量補正手段34は、増量補正手
段35および強制カット手段36を含む。
【0049】噴射制御手段33Aは、気筒識別信号Aの
生成後において、吸入行程中でない気筒のみに対して同
時に燃料を噴射する。すなわち、吸入行程中の気筒のイ
ンジェクタ5に対しては、噴射信号Jを印加せず、燃料
噴射を行わない。
【0050】また、噴射制御手段33Aは、点火サイク
ル毎の燃料の所要量Fs、気筒数Nを用いて、各気筒に
対する1回毎の基本噴射量Fbが以下の(2)式を満た
すように、インジェクタ5の駆動時間(基本パルス幅T
b)を設定する。
【0051】Fb=Fs/(N−1) ・・・(2)
【0052】すなわち、3気筒の場合、1回毎の基本噴
射量Fbは、所要量Fsの1/2となる。
【0053】ECU3A内の噴射量補正手段34は、気
筒識別信号Aに応答してインジェクタ5の駆動時間を補
正するために、必要に応じて増量補正信号Cまたは強制
カット信号Dを生成する。
【0054】噴射量補正手段34内の増量補正手段35
は、気筒識別信号Aが生成されてから最初の噴射タイミ
ング中に排気行程を含む気筒のみに対して、噴射量を一
時的に増量するための増量補正信号Cを生成する。
【0055】噴射制御手段33Aは、増量補正信号Cに
応答して、排気行程を含む気筒(図2内の#2)に対す
る最初の1回の噴射量を、基本噴射量Fbの約(N−
1)倍に設定する。
【0056】すなわち、3気筒の場合、#2気筒に対す
る最初の1回の駆動時間Tcは、基本パルス幅Tb(基
本噴射量Fb)の約2倍に設定される。これにより、#
2気筒に対する噴射量は、最初の1回の噴射信号J2の
みで所要量Fsに達するので、#2気筒の最初の点火制
御時刻t3において初爆が開始する。
【0057】また、各種センサ2は、エンジン回転数お
よび温度の少なくとも一方に関する情報を出力し、増量
補正手段35は、エンジン回転数および温度の少なくと
も一方の情報に応じて、最初の1回の噴射量を可変設定
する。
【0058】すなわち、最初の1回の噴射量の増量補正
量は、たとえばエンジン回転数または温度が比較的高い
場合には低減され、エンジン回転数または温度が比較的
低い場合には増大される。
【0059】一方、噴射量補正手段34内の強制カット
手段36は、インジェクタ5の駆動時間が各気筒の吸入
行程に干渉しないように駆動時間を制限する。
【0060】すなわち、強制カット手段36は、たとえ
ば図2のように、インジェクタ5の駆動時間が排気行程
に干渉する気筒が存在する場合に、当該気筒に対するイ
ンジェクタ5の駆動時間Tdを、他気筒の点火タイミン
グ(基準位置B5°)付近で強制的に中断する。これに
より、排気行程に続く吸入行程への駆動時間の干渉を確
実に防止する。
【0061】また、強制カット手段36は、エンジン回
転数および温度の少なくとも一方の情報に応じて、イン
ジェクタ5の駆動時間Tdの中断タイミングを可変設定
する。
【0062】駆動時間Tdの中断タイミングは、たとえ
ばエンジン回転数または温度が比較的低い場合には、点
火制御気筒の基準位置B5°よりも遅角側に設定され、
エンジン回転数または温度が比較的高い場合には、点火
制御気筒の基準位置B5°とほぼ一致するように設定さ
れる。
【0063】さらに、強制カット手段36は、気筒識別
信号Aが生成されてから少なくともN回目〜2N回目の
点火サイクル後に有効化される。たとえば、3気筒の場
合には、同時噴射制御開始から3〜6回目までの点火サ
イクル期間(t1〜t3またはt1〜t6)は、インジ
ェクタ5の駆動時間が強制カットされることはない。
【0064】なぜなら、始動時の初期においては、エン
ジン回転数が極めて低いことから、排気行程から吸入行
程に移行するまでの時間が十分に長く、吸入行程に干渉
する可能性が極めて低いので、排気行程中での駆動時間
を強制カットする必要がないからである。
【0065】以下、図2とともに図3〜図5のタイミン
グチャートを参照しながら、図1に示したこの発明の実
施の形態1の具体的な動作について説明する。
【0066】ここでは、前述と同様に、3気筒エンジン
の場合を例にとって説明するが、たとえば4気筒以上の
任意の気筒数のエンジンであっても適用可能なことは言
うまでもない。
【0067】図3は吸入行程中の気筒への燃料噴射を禁
止するための処理ルーチンを示しており、増量補正手段
35を考慮しない場合の処理に相当している。図3の処
理ルーチンは、ECU3A内の噴射制御手段33Aにお
いて、基準位置B75°毎に割込処理される。
【0068】図4は排気行程中の気筒に対する噴射時間
を強制カットするための制御ルーチンを示しており、噴
射制御手段33Aおよび強制カット手段36において、
基準位置B5°毎に割込処理される。
【0069】図5は排気行程を含む気筒に対する最初の
1回の噴射量を増量補正するための制御ルーチンを示し
ており、噴射制御手段33Aおよび増量補正手段35に
おいて、基準位置B75°毎に割込処理される。
【0070】まず、図3において、噴射制御手段33A
は、気筒識別信号Aの有無に基づいて気筒識別が完了し
たか否かを判定し(ステップS1)、気筒識別が完了し
ていない(すなわち、NO)と判定されれば、そのまま
リターンする。
【0071】一方、ステップS1において、気筒識別が
完了した(すなわち、YES)と判定されれば、同時噴
射用の1回の基本燃料量Fbを演算し(ステップS
2)、#1気筒が吸入行程か否かを判定する(ステップ
S3)。
【0072】ステップS3において、#1気筒が吸入行
程でない(すなわち、NO)と判定されれば、#1気筒
に基本燃料量Fbを噴射して(ステップS4)、ステッ
プS5に進む。
【0073】一方、#1気筒が吸入行程である(すなわ
ち、YES)と判定されれば、#1気筒に対する燃料噴
射ステップS4を実行せずに、ステップS5に進む。
【0074】ステップS5、S6は#2気筒に対する処
理、ステップS7、S8は#3気筒に対する処理であ
り、それぞれ、上記#1気筒に対するステップS3、S
4に対応している。
【0075】噴射制御手段33Aは、#2気筒が吸入行
程か否かを判定し(ステップS5)、#2気筒が吸入行
程でない(すなわち、NO)と判定されれば、#2気筒
に基本燃料量Fbを噴射し(ステップS6)、#2気筒
が吸入行程である(すなわち、YES)と判定されれ
ば、燃料噴射ステップS6を実行せずに、ステップS7
に進む。
【0076】以下、同様に、#3気筒に対するステップ
S7、S8において、噴射制御手段33Aは、#3気筒
が吸入行程か否かを判定し、#3気筒が吸入行程でない
(すなわち、NO)と判定されれば、#3気筒に基本燃
料量Fbを噴射し(ステップS8)、#3気筒が吸入行
程である(すなわち、YES)と判定されれば、ステッ
プS8を実行せずに、図3の処理ルーチンを終了してリ
ターンする。
【0077】このように、気筒識別完了後の同時噴射制
御において、吸入行程中の気筒に対する燃料噴射を禁止
することにより、点火プラグへの燃料付着による点火不
良の発生を防止して始動性を向上させることができる。
【0078】次に、強制カット手段36からの強制カッ
ト信号Dに応じた噴射制御手段33Aの動作について説
明する。図4において、強制カット手段36は、まず、
気筒識別信号Aの有無に基づいて気筒識別が完了したか
否かを判定し(ステップS11)、気筒識別が完了して
いない(すなわち、NO)と判定されれば、そのままリ
ターンする。
【0079】一方、ステップS11において、気筒識別
が完了した(すなわち、YES)と判定されれば、続い
て、#1気筒が排気行程か否かを判定する(ステップS
12)。
【0080】ステップS12において、#1気筒が排気
行程である(すなわち、YES)と判定されれば、続い
て、#1気筒が現在噴射中か否かを判定する(ステップ
S13)。
【0081】ステップS13において、#1気筒が現在
噴射中(すなわち、YES)と判定されれば、#1気筒
の燃料噴射を強制カットするための中断時間を設定し
(ステップS14)、#1気筒の燃料噴射を強制カット
して(ステップS15)、ステップS16に進む。
【0082】一方、ステップS12において、#1気筒
が排気行程でない(すなわち、NO)と判定されるか、
または、ステップS13において、#1気筒が現在噴射
中でない(すなわち、NO)と判定されれば、ステップ
S14およびS15を実行せずにステップS16に進
む。
【0083】ステップS16〜S19は#2気筒に対す
る処理、ステップS20〜S23は#3気筒に対する処
理であり、それぞれ、上記#1気筒に対するステップS
12〜S15と同様なので、ここでは、ステップS16
〜S23に関する説明を省略する。
【0084】このように、排気行程中の気筒に対する噴
射信号Jのパルス幅を強制カットすることにより、噴射
信号Jが吸入行程まで延長されて干渉することがないの
で、吸入行程中の燃料噴射を確実に防止することができ
る。
【0085】したがって、点火プラグへの燃料付着によ
る点火不良の発生を防止して始動性を向上させることが
できる。図2の場合、各基準位置B5°に同期した時刻
t5、t6、t7において、排気行程中の駆動時間Td
(噴射信号J)が強制カットされている。
【0086】なお、強制カット手段36は、エンジン回
転数および温度の少なくとも一方の情報に応じて、イン
ジェクタ5の駆動時間の中断タイミングを可変設定する
ことができ、これにより、吸入行程に干渉しない範囲で
有効に燃料を噴射することができる。
【0087】すなわち、エンジン回転数(または、冷却
水温)が比較的低い場合には、排気行程から吸入行程に
移行するまでの余裕があるうえ、噴射量をできるだけ確
保することが望ましいので、噴射時間の中断タイミング
は、基準位置B5°よりも可能な範囲で遅角側に設定さ
れる。
【0088】したがって、運転状態に応じて所要量の噴
射量を可能な範囲で確保しつつ噴射時間を強制カットし
て、吸入行程中の気筒への燃料噴射を確実に防止するこ
とができ、さらに始動性を向上させることができる。
【0089】また、吸入行程中に排気バルブの開放タイ
ミングがオーバーラップした場合の生ガス排出による排
気ガスの悪化を防止することができる。
【0090】また、強制カット手段36は、気筒識別信
号Aが生成されてから少なくともN回目〜2N回目(気
筒数Nが「3」の場合には、3〜6回目)の点火サイク
ル後に有効化されるので、回転数の低い始動直後におい
て無駄に噴射量カットを実行することを防止することが
できる。
【0091】次に、増量補正手段35からの増量補正信
号Cに応じた噴射制御手段33Aの動作について説明す
る。図5において、ステップS1〜S8については、前
述(図3参照)と同様の処理なので詳述を省略する。
【0092】また、#1気筒に対する処理ステップS
3、S4、S34、S35と、#2気筒に対する処理ス
テップS5、S6、S36、S37と、#3気筒に対す
る処理ステップS7、S8、S38、S39とは、それ
ぞれ対応しており同様の処理なので、ここでは、代表的
に#1気筒に対する処理のみについて説明する。
【0093】まず、噴射制御手段33Aにおいて基本燃
料量Fbの演算(ステップS2)が実行された後、増量
補正手段35は、始動スイッチオン後の初めて処理か否
かを判定する(ステップS31)。
【0094】増量補正手段35は、ステップS31にお
いて、始動スイッチオン後の初めての処理でない(すな
わち、NO)と判定されれば、補正燃料量Fcとして基
本燃料量Fbを設定する(ステップS32)。
【0095】一方、ステップS31において、始動スイ
ッチオン後の初めての処理である(すなわち、YES)
と判定されれば、増量補正手段35は、以下の(3)式
のように、補正燃料量Fcとして基本燃料量Fbに補正
係数α(>1)を乗算した値を設定する(ステップS3
3)。
【0096】Fc=Fb×α ・・・(3)
【0097】なお、前述のように、3気筒の場合、補正
係数αは「2」程度に設定されるので、補正燃料量Fc
は基本燃料量Fbの約2倍となる。
【0098】次に、ステップS3において、#1気筒が
吸入行程でない(すなわち、NO)と判定された場合
に、#1気筒が排気行程か否かを判定し(ステップS3
4)、#1気筒が排気行程でない(すなわち、NO)と
判定されれば、#1気筒に基本燃料量Fbを噴射する
(ステップS4)。
【0099】一方、ステップS34において、#1気筒
が排気行程である(すなわち、YES)と判定されれ
ば、#1気筒に補正燃料量Fcを噴射し(ステップS3
5)、#2気筒に対する処理ステップS5に進む。
【0100】これにより、#1気筒が始動スイッチオン
後の初めての処理で排気行程にある場合に、噴射信号J
のパルス幅が増量補正されて、補正燃料量Fcが噴射さ
れることになる。
【0101】#1気筒が始動スイッチオン後の2回目の
処理においては、ステップS32により、補正燃料量F
cとして基本燃料量Fbが設定されるので、噴射量が増
量補正されることはない。
【0102】以下、#2気筒、#3気筒に対しても、ス
テップS5、S7に続く同様の処理が繰り返され、1回
目の噴射制御が排気行程にある気筒のみに対する噴射量
が増量補正される。
【0103】このように、排気行程中の気筒に対して最
初の1回の噴射量を増量補正することにより、上述した
通り、初爆開始タイミングを時刻t4(図8参照)から
時刻t3(図2参照)に早めることができ、始動性を向
上させることができる。
【0104】また、増量補正手段は、回転数および温度
の少なくとも一方の情報に応じて、最初の1回の噴射量
(増量補正量)を可変設定する。たとえば、エンジン回
転数または冷却水温が比較的低い場合には、燃料の所要
量Fsが増大するので、増量補正量を基本燃料量Fbの
(N−1)倍よりも増大させる。
【0105】これにより、運転状態に応じて最適な増量
補正を行うことにより、確実に初爆を開始することがで
き、始動性をさらに向上させることができる。
【0106】実施の形態2.なお、上記実施の形態1で
は、噴射制御手段33Aに関連した噴射量補正手段34
を設けたが、噴射量補正手段34を用いることなく、噴
射制御手段33Aのみで始動性の向上を実現することも
できる。
【0107】すなわち、噴射制御手段33Aは、吸入行
程以外の気筒のみに対して同時噴射を行い、点火プラグ
への燃料付着を防止することができるので、インジェク
タ5の設計自由度を損なうことなく始動性を向上させる
ことができる。
【0108】実施の形態3.また、上記実施の形態1で
は、噴射量補正手段34として、増量補正手段35およ
び強制カット手段36の両方を設けたが、増量補正手段
35および強制カット手段36のうちのいずれか一方の
みを設けてもよく、いずれの場合も、上述したようにイ
ンジェクタ5の設計自由度を損なうことなく始動性を向
上させることができる。
【0109】実施の形態4.さらに、上記実施の形態1
では、増量補正手段35を、吸入行程以外の気筒に同時
噴射を行う噴射制御手段33Aに設けたが、図6のよう
に、従来の噴射制御手段33に設けてもよい。
【0110】図6において、ECU3B内の噴射量補正
手段34Bは、増量補正手段35のみを含み、噴射制御
手段33に設けられている。このように、全気筒に同時
噴射を行う噴射制御手段33に増量補正手段35を設け
ることにより、前述と同様に初爆開始タイミングが早く
なるので、始動性を向上させることができる。
【0111】この場合も、運転状態(エンジン回転数ま
たは温度)に応じて増量補正量を可変設定すれば、さら
に始動性を向上させることができる。
【0112】
【発明の効果】以上のように、この発明の請求項1によ
れば、内燃機関の回転位置に対応したクランク角信号を
生成するクランク角センサと、内燃機関の運転状態を検
出する各種センサと、内燃機関の複数の気筒に所要量の
燃料を噴射するインジェクタと、クランク角信号に基づ
いて各気筒を識別して気筒識別信号を生成する気筒識別
手段と、クランク角信号、運転状態および気筒識別信号
に応じて、各気筒毎のインジェクタを駆動する噴射制御
手段とを備え、噴射制御手段は、気筒識別信号の生成後
において、吸入行程中でない気筒のみに対して同時に燃
料を噴射するとともに、所要量をFs、気筒の数をNと
した場合、各気筒に対する1回毎の基本噴射量Fbが、
Fb=Fs/(N−1)を満たすように、インジェクタ
の駆動時間を設定したので、同時噴射時の所要量を確保
するとともに、同時噴射制御時に吸入行程中の気筒への
燃料噴射を禁止して点火プラグへの燃料付着を防止する
ことができ、インジェクタ周辺構造の設計自由度に制約
を受けることなく、始動性を向上させた内燃機関の燃料
噴射制御装置が得られる効果がある。
【0113】また、この発明の請求項2によれば、請求
項1において、気筒識別信号に応答してインジェクタの
駆動時間を補正する噴射量補正手段を備え、噴射量補正
手段は、インジェクタの駆動時間が各気筒の吸入行程に
干渉しないように駆動時間を制限するための強制カット
手段を含むので、吸入行程中の気筒への燃料噴射を確実
に防止することができ、さらに始動性を向上させた内燃
機関の燃料噴射制御装置が得られる効果がある。
【0114】また、この発明の請求項3によれば、請求
項2において、強制カット手段は、インジェクタの駆動
時間が排気行程に干渉する気筒が存在する場合に、当該
気筒に対するインジェクタの駆動時間を、他気筒の点火
タイミング付近で強制的に中断するようにしたので、吸
入行程中の気筒への燃料噴射を確実に防止することがで
き、さらに始動性を向上させた内燃機関の燃料噴射制御
装置が得られる効果がある。
【0115】また、この発明の請求項4によれば、請求
項2において、各種センサは、内燃機関の回転数および
温度の少なくとも一方に関する情報を出力し、強制カッ
ト手段は、回転数および温度の少なくとも一方の情報に
応じて、インジェクタの駆動時間の中断タイミングを可
変設定するようにしたので、運転状態によらず吸入行程
中の気筒への燃料噴射を確実に防止することができ、さ
らに始動性を向上させた内燃機関の燃料噴射制御装置が
得られる効果がある。
【0116】また、この発明の請求項5によれば、請求
項2において、強制カット手段は、気筒識別信号が生成
されてから少なくともN回目〜2N回目の点火サイクル
後に有効化されるので、回転数の低い始動直後において
無駄に噴射量カットを実行することを防止した内燃機関
の燃料噴射制御装置が得られる効果がある。
【0117】また、この発明の請求項6によれば、請求
項2において、噴射量補正手段は、噴射量を一時的に増
量するための増量補正手段を含み、増量補正手段は、気
筒識別信号が生成されてから最初の噴射タイミング中に
排気行程を含む気筒のみに対して、最初の1回の噴射量
のみを基本噴射量の約(N−1)倍に設定し、同時噴射
の制御開始時に吸入行程に干渉しない気筒への最初の噴
射量を増量補正するようにしたので、同時噴射時の所要
量を確保することができ、早期に初爆開始させて始動性
を向上させた内燃機関の燃料噴射制御装置が得られる効
果がある。
【0118】また、この発明の請求項7によれば、請求
項6において、各種センサは、内燃機関の回転数および
温度の少なくとも一方に関する情報を出力し、増量補正
手段は、回転数および温度の少なくとも一方の情報に応
じて、最初の1回の噴射量を可変設定するようにしたの
で、運転状態に応じて最適な増量補正量を確保した内燃
機関の燃料噴射制御装置が得られる効果がある。
【0119】また、この発明の請求項8によれば、請求
項1において、気筒識別信号に応答してインジェクタの
駆動時間を補正する噴射量補正手段を備え、噴射量補正
手段は、噴射量を一時的に増量するための増量補正手段
を含み、増量補正手段は、気筒識別信号が生成されてか
ら最初の噴射タイミング中に排気行程を含む気筒のみに
対して、最初の1回の噴射量のみを基本噴射量の約(N
−1)倍に設定し、同時噴射の制御開始時に吸入行程に
干渉しない気筒への最初の噴射量を増量補正するように
したので、早期に初爆開始させて始動性を向上させた内
燃機関の燃料噴射制御装置が得られる効果がある。
【0120】また、この発明の請求項9によれば、請求
項8において、各種センサは、内燃機関の回転数および
温度の少なくとも一方に関する情報を出力し、増量補正
手段は、回転数および温度の少なくとも一方の情報に応
じて、最初の1回の噴射量を可変設定するようにしたの
で、運転状態に応じて最適な増量補正量を確保した内燃
機関の燃料噴射制御装置が得られる効果がある。
【0121】また、この発明の請求項10によれば、内
燃機関の回転位置に対応したクランク角信号を生成する
クランク角センサと、内燃機関の運転状態を検出する各
種センサと、内燃機関の複数の気筒に所要量の燃料を噴
射するインジェクタと、クランク角信号に基づいて各気
筒を識別して気筒識別信号を生成する気筒識別手段と、
クランク角信号、運転状態および気筒識別信号に応じて
各気筒毎のインジェクタを駆動する噴射制御手段と、気
筒識別信号に応答してインジェクタの駆動時間を補正す
る噴射量補正手段を備え、噴射制御手段は、気筒識別信
号の生成後に、各気筒に対して同時に燃料を噴射すると
ともに、所要量をFs、気筒の数をNとした場合、各気
筒に対する1回毎の基本噴射量Fbが、Fb=Fs/N
を満たすように、インジェクタの駆動時間を設定し、噴
射量補正手段は、噴射量を一時的に増量するための増量
補正手段を含み、増量補正手段は、気筒識別信号が生成
されてから最初の噴射タイミング中に排気行程を含む気
筒のみに対して、最初の1回の噴射量のみを基本噴射量
の約(N−1)倍に設定し、同時噴射の制御開始時に吸
入行程に干渉しない気筒への最初の噴射量を増量補正す
るようにしたので、早期に初爆開始させて始動性を向上
させた内燃機関の燃料噴射制御装置が得られる効果があ
る。
【0122】また、この発明の請求項11によれば、請
求項10において、各種センサは、内燃機関の回転数お
よび温度の少なくとも一方に関する情報を出力し、増量
補正手段は、回転数および温度の少なくとも一方の情報
に応じて、最初の1回の噴射量を可変設定するようにし
たので、運転状態に応じて最適な増量補正量を確保した
内燃機関の燃料噴射制御装置が得られる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1を概略的に示す機能
ブロック図である。
【図2】 この発明の実施の形態1による同様噴射制御
動作を示すタイミングチャートである。
【図3】 この発明の実施の形態1による同時噴射制御
動作を示すフローチャートである。
【図4】 この発明の実施の形態1による噴射信号の強
制カット動作を示すフローチャートである。
【図5】 この発明の実施の形態1による増量補正動作
を示すフローチャートである。
【図6】 この発明の実施の形態4を概略的に示す機能
ブロック図である。
【図7】 従来の内燃機関の燃料噴射制御装置を概略的
に示す機能ブロック図である。
【図8】 従来の内燃機関の燃料噴射制御装置による同
様噴射制御動作を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
1 クランク角センサ、2 各種センサ、3A、3B
ECU、4 点火装置、5 インジェクタ、31 気筒
識別手段、33、33A 噴射制御手段、34、34B
噴射量補正手段、35 増量補正手段、36 強制カ
ット手段、A気筒識別信号、B75° 基準位置、B5
° 基準位置(点火タイミング付近)、C 増量補正信
号、D 強制カット信号、Fb 基本噴射量、Fs 所
要量、J、J1〜J3 噴射信号、P 点火信号、SG
T クランク角信号、Tb 基本パルス幅、Tc 補正
パルス幅、Td 強制カットパルス幅。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 3G084 AA03 BA13 CA01 DA09 DA10 EB24 EC02 EC03 FA20 FA33 FA38 FA39 3G301 HA06 JA00 JA21 KA01 MA11 MA19 MA24 NB11 NE01 PE01Z PE03Z PE04Z PE05Z PE08Z PF16Z

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 内燃機関の回転位置に対応したクランク
    角信号を生成するクランク角センサと、 前記内燃機関の運転状態を検出する各種センサと、 前記内燃機関の複数の気筒に所要量の燃料を噴射するイ
    ンジェクタと、 前記クランク角信号に基づいて前記各気筒を識別して気
    筒識別信号を生成する気筒識別手段と、 前記クランク角信号、前記運転状態および前記気筒識別
    信号に応じて、前記各気筒毎のインジェクタを駆動する
    噴射制御手段とを備え、 前記噴射制御手段は、前記気筒識別信号の生成後におい
    て、吸入行程中でない気筒のみに対して同時に燃料を噴
    射するとともに、前記所要量をFs、前記気筒の数をN
    とした場合、前記各気筒に対する1回毎の基本噴射量F
    bが、 Fb=Fs/(N−1) を満たすように、前記インジェクタの駆動時間を設定す
    ることを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。
  2. 【請求項2】 前記気筒識別信号に応答して前記インジ
    ェクタの駆動時間を補正する噴射量補正手段を備え、 前記噴射量補正手段は、前記インジェクタの駆動時間が
    前記各気筒の吸入行程に干渉しないように前記駆動時間
    を制限するための強制カット手段を含むことを特徴とす
    る請求項1に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
  3. 【請求項3】 前記強制カット手段は、前記インジェク
    タの駆動時間が排気行程に干渉する気筒が存在する場合
    に、当該気筒に対するインジェクタの駆動時間を、他気
    筒の点火タイミング付近で強制的に中断することを特徴
    とする請求項2に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
  4. 【請求項4】 前記各種センサは、前記内燃機関の回転
    数および温度の少なくとも一方に関する情報を出力し、 前記強制カット手段は、前記回転数および温度の少なく
    とも一方の情報に応じて、前記インジェクタの駆動時間
    の中断タイミングを可変設定することを特徴とする請求
    項2に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
  5. 【請求項5】 前記強制カット手段は、前記気筒識別信
    号が生成されてから少なくともN回目〜2N回目の点火
    サイクル後に有効化されることを特徴とする請求項2に
    記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
  6. 【請求項6】 前記噴射量補正手段は、噴射量を一時的
    に増量するための増量補正手段を含み、 前記増量補正手段は、前記気筒識別信号が生成されてか
    ら最初の噴射タイミング中に排気行程を含む気筒のみに
    対して、最初の1回の噴射量のみを前記基本噴射量の約
    (N−1)倍に設定することを特徴とする請求項2に記
    載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
  7. 【請求項7】 前記各種センサは、前記内燃機関の回転
    数および温度の少なくとも一方に関する情報を出力し、 前記増量補正手段は、前記回転数および温度の少なくと
    も一方の情報に応じて、前記最初の1回の噴射量を可変
    設定することを特徴とする請求項6に記載の内燃機関の
    燃料噴射制御装置。
  8. 【請求項8】 前記気筒識別信号に応答して前記インジ
    ェクタの駆動時間を補正する噴射量補正手段を備え、 前記噴射量補正手段は、噴射量を一時的に増量するため
    の増量補正手段を含み、 前記増量補正手段は、前記気筒識別信号が生成されてか
    ら最初の噴射タイミング中に排気行程を含む気筒のみに
    対して、最初の1回の噴射量のみを前記基本噴射量の約
    (N−1)倍に設定することを特徴とする請求項1に記
    載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
  9. 【請求項9】 前記各種センサは、前記内燃機関の回転
    数および温度の少なくとも一方に関する情報を出力し、 前記増量補正手段は、前記回転数および温度の少なくと
    も一方の情報に応じて、前記最初の1回の噴射量を可変
    設定することを特徴とする請求項8に記載の内燃機関の
    燃料噴射制御装置。
  10. 【請求項10】 内燃機関の回転位置に対応したクラン
    ク角信号を生成するクランク角センサと、 前記内燃機関の運転状態を検出する各種センサと、 前記内燃機関の複数の気筒に所要量の燃料を噴射するイ
    ンジェクタと、 前記クランク角信号に基づいて各気筒を識別して気筒識
    別信号を生成する気筒識別手段と、 前記クランク角信号、前記運転状態および前記気筒識別
    信号に応じて前記各気筒毎のインジェクタを駆動する噴
    射制御手段と、 前記気筒識別信号に応答して前記インジェクタの駆動時
    間を補正する噴射量補正手段を備え、 前記噴射制御手段は、前記気筒識別信号の生成後に、前
    記各気筒に対して同時に燃料を噴射するとともに、前記
    所要量をFs、前記気筒の数をNとした場合、前記各気
    筒に対する1回毎の基本噴射量Fbが、 Fb=Fs/N を満たすように、前記インジェクタの駆動時間を設定
    し、 前記噴射量補正手段は、噴射量を一時的に増量するため
    の増量補正手段を含み、 前記増量補正手段は、前記気筒識別信号が生成されてか
    ら最初の噴射タイミング中に排気行程を含む気筒のみに
    対して、最初の1回の噴射量のみを前記基本噴射量の約
    (N−1)倍に設定することを特徴とする内燃機関の燃
    料噴射制御装置。
  11. 【請求項11】 前記各種センサは、前記内燃機関の回
    転数および温度の少なくとも一方に関する情報を出力
    し、 前記増量補正手段は、前記回転数および温度の少なくと
    も一方の情報に応じて、前記最初の1回の噴射量を可変
    設定することを特徴とする請求項10に記載の内燃機関
    の燃料噴射制御装置。
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