JP2001106574A - 炭素系ばね部材およびその製造方法 - Google Patents

炭素系ばね部材およびその製造方法

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JP2001106574A
JP2001106574A JP28854499A JP28854499A JP2001106574A JP 2001106574 A JP2001106574 A JP 2001106574A JP 28854499 A JP28854499 A JP 28854499A JP 28854499 A JP28854499 A JP 28854499A JP 2001106574 A JP2001106574 A JP 2001106574A
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Yoshihisa Suda
吉久 須田
Osamu Shimizu
修 清水
Yasushi Yamamoto
泰 山本
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高温度下で使用されるコイルばね状治具とし
て安定した優れた特性を有する炭素系ばね部材を安価に
製造する。 【解決手段】 焼成によりアモルファス炭素となる樹脂
組成物に黒鉛を混合し、所要の形状に賦形した後使用温
度よりも300℃高い温度、例えば1000℃まで焼成
する。樹脂組成物には、焼成後に難黒鉛化性炭素となる
樹脂のみが含まれる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、炭素系ばね部材、
特に、高温度下で行うアルミ材やステンレス材等のろう
付け加工及び電子部品のガラス材による絶縁被覆封止や
金属電極接合封止加工等に用いるに適したばね性を有す
るコイルばね状治具としての炭素系ばね部材とその製造
方法に関する。更に特定すれば、アモルファス状炭素と
黒鉛との複合材で構成され、不活性雰囲気中もしくは真
空雰囲気中において高温下荷重を加えながら素材を接合
する工程で用いることのできる、高温耐熱性と高温下バ
ネ性を有するコイルばね状治具としての炭素系ばね部材
とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来高温度下で、熱交換機部材としてア
ルミ材やステンレス材等の金属素材同士をろう付けによ
り接合する工程や、電子部品をガラス材により絶縁被覆
封止したり金属電極を接合封着する工程では、接合を充
分に行うために金属製の重し等により荷重を加えながら
接合処理する方法が一般的に用いられている。
【0003】しかし、通常の金属製の重しを治具として
使用する場合、実荷重分の重しを必要とするため取り扱
いが困難であり均一かつ微弱な荷重調整を行いにくいう
え、熱容量の大きな金属製重しの加熱冷却を繰り返し行
うためにエネルギー消費効率が悪いことなどの問題が生
じている。そのため、重しに代わり省スペース化の可能
な金属やセラミックス製のコイル状ばねが治具として検
討されている。金属ばね材としてはステンレスやインコ
ネル等が使用されているが、耐熱性金属であるインコネ
ル材であっても600℃を越えるとばねとしての性能を
保つことは困難であり、耐久性も劣る。また、セラミッ
クスばね材としてはアルミナや窒化珪素等が使用されて
いるが、セラミックといえども素材の融点を越えて使用
することは不可能であり、アルミナで1300℃程度、
窒化珪素でも1100℃程度を越えるとばねとしての性
能を保つことが困難であり、更に微弱な荷重調整の可能
なコイルばねを作製することも難しい。そのため、高温
度の不活性雰囲気中もしくは真空雰囲気中においても、
バネ性能の変化が無いうえ、熱容量が小さく加熱に際し
ての消費エネルギー量の少ない炭素材が素材として適し
ている。
【0004】一般的に耐熱治具材料として使用されてい
る等方性炭素材料のうち、切削加工で得られるものは曲
げ強度及びたわみ量が小さいためコイルばね状治具とし
て使用することは事実上不可能である。特開平6−26
4947号公報及び特開平8−290275号公報に
は、炭素繊維で強化された炭素系複合材料からなるコイ
ル状ばねが開示されている。しかし、製法上簡易に製造
することが困難なうえ微弱な荷重調整可能なものを作製
することが難しく、構造上も加工時に炭素繊維からバイ
ンター炭素の微細粉の剥離が発生し易く治具として使用
時に製品に影響を与えるなどの欠点を有している。
【0005】また、特公平1−44671号公報には種
々の炭素系スプリングが開示されているが、その中に、
結晶性黒鉛で強化された複合炭素材料からなる炭素系ス
プリングが含まれており、これには上記のような欠点は
ない。しかしながら、製造時の焼成温度とスプリング使
用時の温度との関係が明らかでないので、必要以上に高
い焼成温度を採用すると高価な設備が必要となり、コス
ト高になるという問題がある。また、上記の公報に開示
された、黒鉛で強化された複合炭素材料においては、炭
素の出発物質として、焼成後に易黒鉛化性炭素となる塩
化ビニル樹脂が使用されている。したがって、高温度下
での使用時に黒鉛化が進行してばね定数等の物理特性が
変化するという問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】したがって本発明の第
1の目的は、高温度下で使用されるコイルばね状治具と
して優れた特性を有する炭素系ばね部材を安価に製造す
ることにある。本発明の第2の目的は、高温度下でも安
定した物理特性を呈する炭素系ばね部材を提供すること
にある。
【0007】
【課題を解決するための手段】前述の第1の目的は、ア
モルファス炭素と黒鉛とを含み、使用温度よりも260
℃以上500℃以下の温度だけ高い温度で焼成して得ら
れた炭素系ばね部材により達成される。前述の第1の目
的は、焼成によりアモルファス炭素となる樹脂組成物に
黒鉛を混合し、該混合物を所要の形状に賦形し、該賦形
物を使用温度よりも260℃以上500℃以下の温度だ
け高い温度で焼成するステップを具備する炭素系ばね部
材の製造方法によっても達成される。
【0008】前述の第2の目的は、実質的に難黒鉛化性
炭素のみからなるアモルファス炭素と黒鉛とを含む炭素
系ばね部材によって達成される。前述の第2の目的は、
焼成後に難黒鉛化性炭素となる一種または二種以上の樹
脂のみからなる樹脂組成物に黒鉛を混合し、該混合物を
所要の形状に賦形し、該賦形物を焼成するステップを具
備する炭素系ばね部材の製造方法によっても達成され
る。
【0009】前記黒鉛は、賦形性及び構造制御を容易と
するために、平均粒径100μm以下の高配向性熱分解
黒鉛(HOPG)、キッシュ黒鉛、天然黒鉛、人造黒鉛
より選ばれることが望ましい。また製造段階で、通常の
樹脂成形に用いられる成形方法を用いて高分子樹脂中に
黒鉛粉末を均一に分散複合させた混合物を所望するコイ
ルばね状板形状に成形するのに際し、該黒鉛を通常の樹
脂成形方法を用いて一方向に高度に配向制御させた後、
不活性雰囲気中、非酸化性雰囲気中、又は真空中で焼成
し、高分子樹脂を炭素化することにより、外部から特別
の圧力を印加しなくとも樹脂焼成時の接合力、パッキン
グ、収縮力を利用できるため、高度に黒鉛とアモルファ
ス炭素が損失無く一体化し、治具としての使用時に炭素
粉末の剥離することのないコイルばね状治具が簡易かつ
安価に製造される。
【0010】本発明に於いて、焼成によりアモルファス
状炭素、好ましくは、高温度下での使用時に黒鉛化が進
行しない難黒鉛化性炭素となり得る高分子樹脂とは、炭
素化前段階の加熱時に分子間架橋を生じさせ三次元化さ
せることで、高い炭素残渣収率を示すものであり、か
つ、焼成炭素化時に黒鉛粉末をパッキング、収縮する能
力を有するものであり、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂の
一種または二種以上の複合体である。ここで熱硬化性樹
脂としては、フェノール樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹
脂、キシレン樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、不飽和ポリ
エステル樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、コプナ
樹脂等が用いられ、経時熱構造変化の少ないことなどか
ら、好ましくはフラン樹脂及びフェノール樹脂が用いら
れる。また熱可塑性樹脂としては、ポリ塩素化塩化ビニ
ル、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリイミド等
が用いられ、成形性の容易さ及びフラン樹脂やフェノー
ル樹脂と複合化した際の取り扱いの容易さから好ましく
はポリ塩素化塩化ビニル樹脂が用いられる。
【0011】次に、本発明において用いられる黒鉛粉末
について説明する。黒鉛粉末とは、高配向性熱分解黒鉛
(HOPG)、キッシュ黒鉛、天然黒鉛、人造黒鉛等で
ある。使用する黒鉛粉末の種類と量は、目的とするばね
の寸法、強さ等により適宜選択され、単独でも二種以上
の混合体でも使用することができるが、特にばねの強さ
の制御が容易なことから、結晶が良く発達した鱗状黒鉛
粉末を使用することが好ましい。黒鉛粉末の粒径は、成
形性及び黒鉛の一方向への配向制御の容易なことから平
均粒径が100μm以下であることが好ましい。
【0012】以下に本発明による、高温不活雰囲気中も
しくは高温真空雰囲気中において、加熱加圧しながら素
材を接合する工程で用いる、アモルファス炭素と黒鉛粉
末との複合炭素材料からなり高温耐熱性と高温下ばね性
を有するコイルばね状治具の製造方法を説明する。ま
ず、コイルばね状治具として必要な特性を具備せしめる
ことを目的として、焼成後にアモルファス炭素となる高
分子樹脂と黒鉛粉末とを適宜選択した後、混合機を用い
て充分に分散させる。次にこの混合体を、製膜機や押し
出し成型機のような通常のプラスチック成形を行う際に
使用されている成形機を用い、黒鉛微粉末を一方向に配
向制御させつつコイルばね形状に成形する。得られたコ
イルばね形状体は、エアオーブン中で炭素前駆体化処理
及び固化処理を施した後、窒素、アルゴン等の不活性ガ
ス雰囲気中で昇温速度を制御しつつ焼成することで炭素
化を終了させ、アモルファス炭素中に黒鉛粉末が一方向
に配向した炭素複合体からなるコイルばね形状治具が得
られる。ここで、炭素化は不活性ガス雰囲気もしくは真
空下で700〜2800℃程度まで加熱昇温し行われる
が、炭素化時の昇温速度が大きいと賦形体の形状が変形
したり微細なクラックが生じるなどの欠陥が生じる。し
たがって、500℃までは毎時50℃以下、それ以降も
毎時100℃以下で行うことが適切である。
【0013】また本発明で、通常の樹脂成形に用いられ
る成形方法を用いてアモルファス炭素と黒鉛粉末との複
合炭素材料からなるコイルばねを作製するのに際して、
目的とするばねの寸法、強さを得るために黒鉛粉末の種
類と量を選択し、高温下ばね性をえるために黒鉛粉末を
一方向に高温に配向制御させて成形し、高温耐熱性を得
るために不活性雰囲気中又は真空中で治具として使用す
る温度よりも260℃以上500℃以下の温度だけ高い
温度、好ましくは約300℃高い温度まで焼成炭素化処
理を施すことで、治具としての必要スペックを満たした
コイルばねを簡易に製造することができるうえ微弱な荷
重調整可能なものを作製することが可能となり、製造上
も使用時に剥離炭素粉が発生することのないコイルばね
状治具を効率よく安価に製造することが可能である。
【0014】以下に、実施例によって本発明を更に具体
的に説明するが、本願発明はこの実施例によって何等限
定されるものではない。
【0015】
【実施例】(実施例1)高分子樹脂として、塩素化塩化
ビニル樹脂(日本カーバイト社製T−741)45重量
%、フラン樹脂(日立化成社製 ヒタフランVF−30
2)15重量%、これに天然黒鉛微粉末(日本黒鉛社製
平均粒度5μm)40重量%から成る組成物に対し、
可塑材としてジアリルフタレートモノマーを25重量%
を添加して、ヘンシェル・ミキサーを用いて分散し、ミ
キシング用二本ロールを用いて十分に混練を繰り返した
混合物をスクリュー型押し出し機により線径8.0mmφ
の線状体を押し出した。線状体を円柱状治具に巻き付け
コイルばね状に賦形した後、最高温度時に180℃に加
熱されたエアー・オーブン中で30時間加熱することで
炭素前駆体化処理を施した。次に、これを窒素ガス中で
500℃迄を25℃/時の昇温速度で昇温し、その後1
000℃迄を100℃/時で昇温し、1000℃で3時
間保持した後自然冷却して焼成を完了した。
【0016】得られた圧縮用コイルばね状治具は、線径
6.5mmφ、コイル径60mmφ、自由長50mm、バネ定
数500g/mmで、密度1.75g/cm3 、曲げ強度2
20MPa 、熱伝導率250W/m・Kであった。これを
常温中で、50万回バネとしての圧縮密着試験を繰り返
したがバネ定数及び寸法に変化はなかった。またこれを
密着させたまま700℃中に24時間保持したが、バネ
定数及び寸法に変化はなかった。
【0017】このコイルばね状治具を実際にアルミのろ
う付け用としてもちい繰り返し使用したが、従来の耐熱
性金属ばねと異なり変化が無いうえ炭素粉塵の発生も観
察されなかった。 (実施例2)高分子樹脂として、塩素化塩化ビニル樹脂
(日本カーバイト社製T−741)45重量%、これに
天然黒鉛微粉末(日本黒鉛社製 平均粒度10μm)5
5重量%から成る組成物に対し、可塑材としてジアリル
フタレートモノマーを28重量%を添加して、ヘンシェ
ル・ミキサーを用いて分散し、ミキシング用二本ロール
を用いて十分に混練を繰り返した混合物をスクリュー型
押し出し機により線径10.0mmφの線状体を押し出し
た。線状体を円柱状治具に巻き付けコイルばね状に賦形
した後、最高温度時に180℃に加熱されたエアー・オ
ーブン中で50時間加熱することで炭素前駆体化処理を
施した。次に、これを窒素ガス中で500℃迄を20℃
/時の昇温速度で昇温し、その後1500℃迄を80℃
/時で昇温し、1500℃で3時間保持した後自然冷却
して焼成を完了した。
【0018】得られた圧縮用コイルばね状治具は、線径
8.2mmφ、コイル径70mmφ、自由長60mm、バネ定
数800g/mmで、密度1.70g/cm3 、曲げ強度2
00MPa 、熱伝導率300W/m・Kであった。これを
常温中で、50万回バネとしての圧縮密着試験を繰り返
したがバネ定数及び寸法に変化はなかった。またこれを
密着させたまま1200℃中に24時間保持したが、バ
ネ定数及び寸法に変化はなかった。
【0019】このコイルばね状治具を実際にステンレス
のろう付け用としてもちい繰り返し使用したが、従来の
耐熱性金属ばねと異なり変化が無いうえ炭素粉塵の発生
も観察されなかった。
【0020】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の炭素系ば
ね部材は不活性雰囲気もしくは真空雰囲気において、高
温下荷重を加えながら素材を接合する工程で用いるため
に、アモルファス炭素と黒鉛粉末との組成及び形状を制
御し、目的工程に合致する耐熱性、ばね特性、寸法形状
を具備するため、コイルばね状治具として有用である。
更に、従来の炭素系製品と比べ、治具としての特性を有
するばねを効率よく安価に製品を提供することが可能で
あるため、工業的価値は非常に大である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山本 泰 群馬県藤岡市立石1091 三菱鉛筆株式会社 群馬研究開発センター内 Fターム(参考) 3J059 AB01 AD05 BA01 BC04 GA50 4G032 AA04 AA13 BA02 GA11

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アモルファス炭素と黒鉛とを含み、使用
    温度よりも260℃以上500℃以下の温度だけ高い温
    度で焼成して得られた炭素系ばね部材。
  2. 【請求項2】 使用温度よりも約300℃だけ高い温度
    で焼成して得られた請求項1記載の炭素系ばね部材。
  3. 【請求項3】 前記アモルファス炭素は実質的に難黒鉛
    化性炭素のみからなる請求項1または2記載の炭素系ば
    ね部材。
  4. 【請求項4】 実質的に難黒鉛化性炭素のみからなるア
    モルファス炭素と黒鉛とを含む炭素系ばね部材。
  5. 【請求項5】 焼成によりアモルファス炭素となる樹脂
    組成物に黒鉛を混合し、該混合物を所要の形状に賦形
    し、該賦形物を使用温度よりも260℃以上500℃以
    下の温度だけ高い温度で焼成するステップを具備する炭
    素系ばね部材の製造方法。
  6. 【請求項6】 焼成するステップにおいて、炭素系ばね
    部材の使用温度よりも約300℃だけ高い温度で焼成が
    行なわれる請求項5記載の方法。
  7. 【請求項7】 前記樹脂組成物は焼成後に難黒鉛化性炭
    素となる一種または二種以上の樹脂のみからなる請求項
    5または6記載の方法。
  8. 【請求項8】 前記樹脂組成物は塩素化塩化ビニル樹脂
    を含む請求項7記載の方法。
  9. 【請求項9】 焼成後に難黒鉛化性炭素となる一種また
    は二種以上の樹脂のみからなる樹脂組成物に黒鉛を混合
    し、該混合物を所要の形状に賦形し、該賦形物を焼成す
    るステップを具備する炭素系ばね部材の製造方法。
  10. 【請求項10】 前記樹脂組成物は塩素化塩化ビニル樹
    脂を含む請求項9記載の方法。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002346741A (ja) * 2001-05-24 2002-12-04 Mitsubishi Pencil Co Ltd ろう付用治具及びろう付方法

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002346741A (ja) * 2001-05-24 2002-12-04 Mitsubishi Pencil Co Ltd ろう付用治具及びろう付方法

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