JP2001099812A - アルミニウム合金材の耐粒界腐食性評価方法および耐粒界腐食性に優れたアルミニウム合金材 - Google Patents

アルミニウム合金材の耐粒界腐食性評価方法および耐粒界腐食性に優れたアルミニウム合金材

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JP2001099812A
JP2001099812A JP28114999A JP28114999A JP2001099812A JP 2001099812 A JP2001099812 A JP 2001099812A JP 28114999 A JP28114999 A JP 28114999A JP 28114999 A JP28114999 A JP 28114999A JP 2001099812 A JP2001099812 A JP 2001099812A
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Yoshihiko Asakawa
義彦 浅川
Fumihiro Sato
文博 佐藤
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Kobe Steel Ltd
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Kobe Steel Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 迅速で、実際の腐食に良く対応する、粒界
腐食や応力腐食割れの評価方法と、これによって評価さ
れた耐粒界腐食性や耐応力腐食割れ性に優れた6000系Al
合金材を提供することを目的とする。 【解決手段】 Al合金材をアノードとし、室温〜60℃
で、かつ、1 〜10wt% のNaCl水溶液中において、Al合金
材を10〜1000μA/cm2 で10〜60分間直流電解後のAl合金
材の自然電位の値a により、Al合金材の耐粒界腐食性を
評価することである。また、前記評価方法により評価さ
れたAl合金材として、Si:0.2〜1.6% (質量% 、以下同
じ) 、Mg:0.2〜1.6%を含むAl-Mg-Si系Al合金材の前記自
然電位の最低値a1〜a5を−1000mV以上とすることであ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐粒界腐食性に優
れたアルミニウム合金材 (以下、アルミニウムを単にAl
と言う) に関するものである。
【0002】
【従来の技術】Al合金は、鋼に比してその比重が1/3 で
あること、優れたエネルギー吸収性を有すること、更に
は断面形状の自由度が高いという特性を有する。したが
って、車体重量を増加させずに、安全基準への対応や車
体性能を向上させることが可能となる。
【0003】このため、自動車、船舶あるいは車両など
の輸送機の外板や構造材あるいは部品用、また家電製品
の構造材あるいは部品用、更には屋根材などの建築、構
造物の部材用として、成形性に優れたAA乃至JIS5000 系
や成形性や焼付硬化性に優れたAA乃至JIS 6000系 (以
下、単に5000系乃至6000系と言う) のAl合金が使用され
ている。この中でも、特に、前記材料特性や、リサイク
ル性の点から、6000系のAl合金が使用され始めている。
【0004】この6000系Al合金は、基本的にSi:0.2〜1.
6% (質量% 、以下同じ) 、Mg:0.2〜1.6%を含有するAl-M
g-Si系アルミニウム合金である。そして、この6000系Al
合金は、プレス成形加工時には成形加工性を低耐力によ
り確保するとともに、プレス成形後の焼付塗装時に時効
硬化して耐力が向上し、必要な強度を確保できる。ま
た、スクラップをAl合金溶解原料として再利用する際
に、比較的合金量が少なく、元の6000系Al合金鋳塊を得
やすい。したがって、従来から輸送機用として使用され
てきたMg量などの合金量が多い5000系のAl合金に比して
有利である。
【0005】また、6000系Al合金の圧延板材、押出形
材、鍛造材などの所謂展伸材は、耐食性にも優れ、特
に、輸送機の構造材や補強材 (以下、総称して構造材と
言う) として、特に無塗装で用いられる場合に、耐粒界
腐食性や耐応力腐食割れ性などの耐食性や耐久性にも優
れている。
【0006】しかし、この6000系Al合金展伸材において
も、近年、前記各用途の側から、より高強度化や高成形
化などの機械的性質の向上が益々求められている。そし
て、これら機械的性質の向上とともに、Al合金展伸材の
前記粒界腐食や応力腐食などの耐食性をより一層向上さ
せることも強く求められるようになっている。
【0007】このため、従来から、Al合金材の素材側の
成分組成や組織的な改善によって、耐粒界腐食性や耐応
力腐食割れ性などの耐食性を高める努力が種々なされて
いる。また、Al合金材を表面処理することにより、これ
ら耐食性を高める努力も種々なされている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかし、一方で、Al合
金材の耐粒界腐食性や耐応力腐食割れ性を保証するため
に不可欠な、Al合金材のこれら耐食性の試験方法には、
多大の時間と労力を要するという問題がある。
【0009】例えば、粒界腐食試験方法には、塩水噴霧
による複合サイクル試験法と、アノード溶解法などのよ
うな腐食促進試験法とがある。この内、まず、前記塩水
噴霧による複合サイクル試験法にも、多くの試験方法が
あるものの、JASOの塩水噴霧試験方法 (M 609-91) を例
にとると、例えば、塩水噴霧(SST、2 時間) +乾燥(DR
Y、4 時間) +湿潤(WET、2 時間) のようなサイクルを1
0〜40日 (30〜120 サイクル) 繰り返し、十分な時間を
かけて腐食試験を行う。
【0010】したがって、塩水噴霧による複合サイクル
試験法は、実際の輸送機等での使用Al合金材の粒界腐食
などの発生傾向と良く対応しているものの、腐食試験の
ために多大の時間と労力を要する問題がある。
【0011】また、アノード溶解法にも、ASTMに規定さ
れる方法等種々の方法があるが、共通して、Al合金材を
アノードとして、電解液 (腐食液) 中で定電位乃至定電
流で通電して、腐食を促進させるものである。
【0012】したがって、このアノード溶解法などのよ
うな腐食促進試験は、前記塩水噴霧による複合サイクル
試験法よりも、腐食試験のための時間は少なくて済む反
面、実際の用途での使用Al合金材の粒界腐食発生傾向と
の相関がつきにくい。このため、実際に、Al合金材の耐
粒界腐食性や耐応力腐食割れ性を保証するためには、前
記塩水噴霧による複合サイクル試験法が採用されている
のが実情である。
【0013】このため、これら評価試験に要する時間の
長さは、前記Al合金材の耐粒界腐食性や耐応力腐食割れ
性の向上のための技術開発に対し、評価試験の側からの
応答が遅いことにつながり、前記技術開発自体を遅らせ
る結果となっていた。
【0014】本発明はこの様な事情に着目してなされた
ものであって、その目的は、従来の粒界腐食や応力腐食
割れの評価試験の問題点を解決し、迅速で、しかも実際
の粒界腐食や応力腐食割れに良く対応する、これら耐食
性の試験方法と、この試験方法により評価された耐粒界
腐食性や耐応力腐食割れ性に優れた6000系Al合金材を提
供しようとするものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するため
に、本発明耐粒界腐食性評価方法の要旨は、Al合金材を
アノードとし、室温〜60℃で、かつ、1 〜10%(質量% 、
以下同じ) のNaCl水溶液中において、Al合金材を10〜10
00μA/cm2 で10〜60分間直流電解後のAl合金材の自然電
位の値により、Al合金材の耐粒界腐食性を評価すること
である。
【0016】また、前記評価方法により評価されたAl合
金材として、Si:0.2〜1.6%、Mg:0.2〜1.6%を含むAl-Mg-
Si系Al合金材をアノードとし、30℃で5%のNaCl水溶液中
における100 μA/cm2 で30分間直流電解後の自然電位の
最低値が−1000mV以上とすることによって、耐粒界腐食
性や耐応力腐食割れ性に優れたAl合金材とすることであ
る (請求項2 に対応) 。
【0017】本発明者らは、迅速で、しかも実際の粒界
腐食や応力腐食割れに良く対応する、これら耐食性の簡
易評価方法につき、検討した結果、輸送機の構造材の、
海水などの塩水腐食環境下を模擬したNaCl水溶液中にお
いて、まず、Al合金材の直流電解による強制的なエッチ
ングを行い、しかる後に、このNaCl水溶液中におけるAl
合金材の自然電位の経時変化を測定して、自然電位の最
低値を測定することにより、この自然電位の最低値の傾
向が、実際の耐粒界腐食性や耐応力腐食割れ性の傾向と
良く対応していることを知見した。
【0018】即ち、単に、NaCl水溶液中において、Al合
金材の自然電位の経時変化を測定しただけでは、その測
定された自然電位の値 (最低値も含め) は、実際のAl合
金材の粒界腐食性や応力腐食割れの発生の傾向とは、全
く対応しない。
【0019】本発明者らは、NaCl水溶液中において、ま
ず、Al合金材の直流電解による強制的なエッチング、言
わばAl合金材の粒界腐食の促進を行うことによって、そ
の後に測定された自然電位の値 (最低値も含め) の傾向
が、実際の耐粒界腐食性や耐応力腐食割れ性の傾向と良
く対応していることを知見した。なお、本発明の名称を
耐粒界腐食性のみとしたのは、前記輸送機使用環境下で
のAl合金材の耐応力腐食割れ性は、粒界腐食性に一義的
に対応しており、Al合金材の耐粒界腐食性を評価するこ
とが耐応力腐食割れ性の評価にもつながるためである。
それゆえ、本発明では、両者の耐食性の向上を目的とす
るものの、発明の名称では耐応力腐食割れ性の記述を省
略した。
【0020】一方、前記アノード溶解法の箇所で述べた
通り、Al合金材をアノードとした直流電解により、Al合
金材の粒界腐食が促進されること自体は公知である。し
かし、この公知の粒界腐食促進方法によっても、実際の
Al合金材の耐粒界腐食性の評価自体は、Al合金材の粒界
腐食部分の面積や深さを評価することにより行われてい
る。即ち、従来技術では、一貫して、Al合金材の粒界腐
食の程度 (耐粒界腐食性の評価) を、あくまで、直接、
粒界腐食している部分の腐食状況や体積で評価してい
た。したがって、この粒界腐食部分の観察用試料の調整
にも多大の手間ひまを要していたのである。
【0021】これに対し、本発明では、Al合金材の耐粒
界腐食性の評価を、直接、粒界腐食している部分の腐食
状況や体積で行うのではなく、Al合金材をアノードとし
た直流電解後の自然電位により、言わば間接的に行う。
そして、このことが、前記粒界腐食部分の観察用試料の
調整も不要とし、評価の短縮化と簡略化に大いに寄与し
ているものである。
【0022】Al合金材をアノードとした直流電解後の自
然電位なり、自然電位の最低値の傾向が、実際の耐粒界
腐食性の傾向と良く対応している理由は定かではない
が、以下の通りと推考される。即ち、Al合金材の耐粒界
腐食が生じた場合、腐食の先端部分では、イオンの拡散
が遅れることにより、pHが酸性に変化する。そして、こ
のpHが酸性に変化した場合に、Al合金材の前記自然電位
が低下する現象が生じる。そして、本発明では、耐粒界
腐食に起因するAl合金材の自然電位の低下の傾向をよく
捉えている (反映している) 測定条件となっているため
に、Al合金材をアノードとした直流電解後の自然電位
が、実際の耐粒界腐食性の傾向と良く対応しているもの
と推考される。
【0023】
【発明の実施の形態】(自然電位)図1 に、各種Al合金材
をアノードとして直流電解後の、NaCl水溶液中における
自然電位a の経時変化の例を示す。なお、図1 は、後述
する実施例における6000系(Al-Mg-Si 系) Al合金鍛造材
の、直流電解後の、NaCl水溶液中における自然電位の経
時変化の例を示している。
【0024】本発明におけるAl合金材の自然電位の最低
値とは、図1 において、前記NaCl水溶液で直流電解後、
例えば5 分間 (2 〜10分の間から選択)Al 合金材の浸漬
して測定した自然電位a の値の内、最も低い電位a1〜a5
である。
【0025】そして、Al合金材の自然電位の具体的な測
定方法は、当該Al合金材を各々試料電極とし、後述する
直流電解条件のNaClの電解溶液中で、例えば、Hg/HgCl
を基準または標準電極として、公知の電位差計を用いる
ことにより簡便に測ることが可能である。
【0026】(自然電位による粒界腐食の評価)自然電位
による粒界腐食の評価は、前記図1 における自然電位の
経時変化の内、初期の自然電位と経時変化後の自然電位
との差、経時変化後の自然電位の最低値などによって行
うことができる。より具体的には、図1 において、後述
する実施例の通り、経時変化後の自然電位の最低値a1
a2が比較的高いAl合金材は耐粒界腐食性に優れ、経時変
化後の自然電位の最低値a3、a4、a5が比較的低いAl合金
材は耐粒界腐食性が劣っている。また、経時変化後の自
然電位の最低値a1、a2が比較的高いものは、初期の各自
然電位との差も小さく、経時変化後の自然電位の最低値
a3、a4、a5が比較的低いものは、初期の各自然電位との
差が大きい。
【0027】したがって、Al合金の種類毎、或いは熱処
理等の製造履歴毎に、図1 のように、粒界腐食と自然電
位の経時変化の関係を求めておけば、自然電位の経時変
化の内、初期の自然電位と経時変化後の自然電位との
差、経時変化後の自然電位の最低値などによって、Al合
金材の耐粒界腐食の評価を行うことができる。
【0028】なお、図1 の6000系(Al-Mg-Si 系) Al合金
鍛造材の経時変化後の自然電位において、前記した通
り、自然電位の最低値が−1000mVより大きい乃至−1000
mV以上の (マイナスの数値が小さい) a1、a2であれば、
当該6000系Al合金材の実際の耐粒界腐食性や耐応力腐食
割れ性が優れる。一方、前記自然電位の最低値が−1000
mVより小さい乃至−1000mV未満の (マイナスの数値が大
きい) a3、a4、a5であれば、当該6000系Al合金材の実際
の耐粒界腐食性や耐応力腐食割れ性は低下している。し
たがって、この自然電位の最低値をもって、鍛造材と、
鍛造材よりも耐食性に優れる板材、形材等6000系Al合金
材の耐粒界腐食性や耐応力腐食割れ性を簡便に評価する
ことが可能である。
【0029】(直流電解)Al合金材の自然電位の測定の前
に行う、言わば言わばAl合金材の粒界腐食の促進を行う
直流電解は、前記NaCl水溶液中においてAl合金材をアノ
ードとし、室温〜60℃で、かつ、1 〜10% のNaCl水溶液
中において、10〜1000μA/cm2 で10〜60分間、直流電解
する条件で行う。NaCl水溶液の温度と濃度は、直流電解
後のAl合金材の自然電位の測定値に再現性をもたせるも
ので、前記範囲を外れた場合、自然電位の測定値に誤差
が生じやすい。
【0030】これに対し、直流電解の際の電流密度と時
間の条件は、粒界腐食や応力腐食割れの評価の再現性や
相関性或いは評価の正確性に係わる。即ち、直流電流が
10μA/cm2 未満、または通電時間が10分未満であれば、
Al合金材のエッチング乃至鋭敏化処理が不充分となる。
このため、その後に測定された自然電位の値 (最低値も
含め) が、実際のAl合金材の粒界腐食や応力腐食割れの
発生の傾向とは、全く対応しなくなる。
【0031】一方、直流電流が1000μA/cm2 を超える、
または通電時間が60分を超える場合、Al合金材のエッチ
ング乃至鋭敏化処理が過度となる。このため、Al合金材
の表面が全面的に渡って腐食する全面腐食が生じる。こ
の全面腐食は、粒界腐食性や応力腐食割れの発生機構と
は異なる腐食形態であるため、その後測定された自然電
位の値 (最低値も含め) が、実際のAl合金材の粒界腐食
や応力腐食割れの発生の傾向とは、全く対応しなくな
る。
【0032】(適用対象Al合金)次に、本発明における適
用対象Al合金は、前記輸送機などの各種用途に使用され
るAA乃至JIS 3000系、5000系、6000系、7000系などの成
分規格のAl合金が適宜使用可能である。しかし、このJI
S 規格以外のAl合金でも、用途の要求特性を満足するAl
合金は、全て本発明の適用対象となる。
【0033】なお、これらのAl合金内でも、前記した成
形性や焼付硬化性などの材料特性や、リサイクル性の点
からは、6000系のAl合金が有利である。ここで言う6000
系Al合金材とは、前記輸送機用としての諸特性を満足す
るために、Si:0.2〜1.6%、Mg:0.2〜1.6%を基本的に含有
し、その他、Fe:1.0以下、Cu:1.5% 以下、Mn:1.0% 以
下、Cr:1.0以下、Zn:1.0% 以下、Ti:0.15%以下、B:300p
pm以下などを必要により選択的に含むAl合金とすること
が好ましい。
【0034】また、JIS 6000系Al合金の各成分規格通り
にならずとも、前記基本的な特性を有してさえいれば、
更なる特性の向上や他の特性を付加するための、適宜成
分組成の変更は許容される。この点、上記元素の成分範
囲の変更や、より具体的な用途および要求特性に応じ
て、その他、Ni、V 、Zr、Sc、Agなどの他の元素やH 等
の不純物を適宜含むことは許容される。
【0035】(Al合金材の製造方法)更に、本発明に係る
Al合金材は、常法による圧延加工、あるいは常法による
押出加工等によって、板材や形材 (中空断面など断面形
状が長さ方向のどの位置でも本質的に同一である形材)
として製造される。即ち、成分規格範囲内に溶解調整さ
れたアルミ合金溶湯を、例えば、連続鋳造圧延法、半連
続鋳造法(DC鋳造法)等の通常の溶解鋳造法を適宜選
択して鋳造する。次いで、このアルミ合金鋳塊に均質化
熱処理を施し、熱間圧延−冷間圧延−調質処理 (溶体化
および焼き入れ処理や時効硬化処理) 、押出加工−調質
処理、熱間鍛造−調質処理、あるいはこれらの組み合わ
せにより、板材、形材、鍛造材等の所望の断面形状のAl
合金材とする。
【0036】
【実施例】次に、本発明の実施例を説明する。表1 に示
すA 〜E までの組成の、板状の6000系Al合金鍛造材を前
記常法にて製作した。そして、この鍛造材から試験片を
採取し、試験片のAl合金材の自然電位の最低値を測定し
た。自然電位の最低値は、NaCl水溶液中において、試験
片をアノードとして、表2 に示す条件で、10〜1000μA/
cm2 で10〜60分直流電解後、5 分経過した際の自然電位
の最低値を測定している。比較のために、表2 のNo.11
〜15は、NaCl水溶液中において、Al合金材を直流電解せ
ずに、浸漬のみ行い、浸漬後 5分経過した際の自然電位
の最低値を測定している。これらの直流電解条件と自然
電位の測定条件、更に自然電位の最低値の測定結果を表
2 に示す。
【0037】図1 に、表2 の内のNo.1〜5(表1 のA 〜E)
の6000系Al合金鍛造材の、前記条件で直流電解後の、Na
Cl水溶液中における自然電位の経時変化の例を示す。経
時変化後の自然電位の最低値a1、a2、a3、a4、a5は、各
々表2 の内のNo.5〜1(表1 のE 〜A)に各々対応する。即
ち、図1 において、自然電位の最低値a1は表2 のNo.5
(表1 のE 合金) 、最低値a2は表2 のNo.4 (表1 のD 合
金) 、最低値a3は表2 のNo.3 (表1 のC 合金) 、最低値
a4は表2 のNo.2 (表1 のB 合金) 、最低値a5は表2 のN
o.1 (表1 のA 合金) である。
【0038】なお、表1 に示すA 〜E までの組成の6000
系Al合金鍛造材の内、A は不純物のFe含有量を意図的に
高くした6061相当、B はCuの含有量を意図的に高くした
6061相当、C は過剰Siの量を意図的に高くした6151相当
のAl合金であり、いずれも、前記輸送機の構造材として
使用された場合、塩水の腐食環境下で、粒界腐食および
応力腐食割れを生じやすい材料となるよう、意図的に作
成したAl合金である。一方、表1 に示すD 、E は6061お
よび6063通常の規格内で、かつ、FeやCu等を低めにし
て、粒界腐食および応力腐食割れが生じにくくしたAl合
金である。
【0039】また、本実施例でAl合金材を鍛造材とした
のは、鍛造材は、厚物や鍛造条件によっては鋳造組織が
残留する等、圧延板材や押出形材に比して、組織が比較
的不均一となり、粒界腐食や応力腐食割れが比較的生じ
やすいゆえに、Al合金材の代表として選択した。したが
って、この鍛造材での結果は、他の圧延板材や押出形材
にスライドさせて考えることが可能である。
【0040】また、表1 に示すA 〜E までの組成の6000
系Al合金鍛造材から別の試験片を採取し、塩水噴霧によ
る複合サイクル試験により、耐粒界腐食性試験を行っ
た。塩水噴霧による複合サイクル試験条件は、JASOの塩
水噴霧試験方法 (M 609-91) に準じて行い、35℃で5%の
塩水噴霧(SST) 2 時間+60℃で20〜30%RH での乾燥(DR
Y)4時間+50℃で95%RH での湿潤(WET)2時間のサイクル
を20日繰り返し、試験後の試験片の表面を200 倍の光学
顕微鏡により試験片の表面の腐食形態を観察した。この
結果、試験片表面から粒界に沿って網目状乃至河口状に
腐食が進展している典型的な粒界腐食が発生しているも
のを×、粒界腐食が発生しておらず、通常の、全面腐食
あるいは孔食などの腐食が生じているものを○として評
価した。これらの結果を表2 に示す。
【0041】更に、表1 に示すA 〜E までの組成の6000
系Al合金鍛造材から別の試験片を採取し、応力腐食割れ
試験 (促進試験) を行った。応力腐食割れ試験条件は、
各試験片をR が14t のU 字に曲げて治具に取り付け、試
験片両端部を拘束した応力付加状態で、電流密度0.062m
A/mm2 で試験片に通電し、試験液に浸漬した。試験液
は、3.5%、30℃のNaCl水溶液とし、発生までの時間
(分) により応力腐食割れを評価した。そして、1000分
以上応力腐食割れが発生しなかったものを○、1000分未
満で応力腐食割れが発生したものを×として評価した。
これらの結果も表2 に示す。
【0042】なお、前記粒界腐食試験および応力腐食割
れ試験は、自然電位の測定試験とは別個に行っているた
め、表2 のAl合金材の耐食性の欄の、粒界腐食と応力腐
食割れに対するA 〜E までのAl合金毎の評価は、自然電
位の測定条件に拘わらず、全て同じ結果となる。
【0043】表2 において、本発明の条件でAl合金材の
自然電位を測定した、No.1〜3 のグループと、No.4、5
、10のグループとを対比すると、粒界腐食および応力
腐食割れが生じやすい、表1 のA 〜C の6000系Al合金を
用いたNo.1〜3 のグループの自然電位の最低値は−1000
mV未満である (−1000mVより小さい) 。これに対し、粒
界腐食および応力腐食割れが生じにくい、表1 のD 、E
の6000系Al合金を用いたNo.4、5 、10のグループの自然
電位の最低値は−1000mV以上である (−1000mVより大き
い) 。
【0044】この自然電位の測定結果は、別個に試験し
た粒界腐食および応力腐食割れ試験の結果とも対応して
いる。即ち、自然電位の最低値が−1000mV未満のNo.1〜
3 のグループの場合に、粒界腐食および応力腐食割れが
生じており、耐食性が劣る。一方、自然電位の最低値が
−1000mV以上のNo.4、5 、10のグループの場合には、粒
界腐食および応力腐食割れが生じておらず、単に通常の
腐食が生じているのみである。
【0045】したがって、これらの結果から、本発明の
Al合金材の自然電位の測定方法が、Al合金材の耐粒界腐
食性および耐応力腐食割れ性と対応乃至相関しているこ
とが分かる。更に、6000系Al合金材においては、本発明
の自然電位の測定方法により、Al合金材の自然電位の最
低値−1000mVに、耐粒界腐食性および耐応力腐食割れ性
の臨界的な意義があることが分かる。
【0046】一方、比較のための、Al合金材を直流電解
せずに、NaCl水溶液中での浸漬のみ行い、浸漬後 5分経
過した際の自然電位の最低値を測定した表2 のNo.11 〜
15では、自然電位の最低値 (の数値) と、別個に試験し
た粒界腐食試験および応力腐食割れ試験の結果とが全く
対応乃至相関していない。また、A 〜E までの6000系Al
合金の耐食性の傾向とも全く対応乃至相関していない。
したがって、本発明方法にとって、NaCl水溶液中での直
流電解が必須であることが分かる。
【0047】更に、表2 において、本発明の好ましい範
囲外の条件で、Al合金材を直流電解して、自然電位の最
低値を測定した、No.6〜7 のグループと、No.8〜9 のグ
ループにおける自然電位の最低値 (の数値) と、別個に
試験した粒界腐食試験および応力腐食割れ試験の結果と
は全く対応乃至相関していない。即ち、この自然電位の
最低値は−1000mV以上であり、この自然電位の最低値か
ら、No.6、7 のAl合金材は耐粒界腐食性および耐応力腐
食割れ性に優れることになる。しかし、このNo.6、7 に
使用したAl合金材 (A 、B)は、実際には耐粒界腐食性お
よび耐応力腐食割れ性が劣るやすい材料である。
【0048】また、直流電解の電流値が高いあるいは直
流電解の通電時間が長い (直流電解が過多の)No.8 〜9
では、自然電位の最低値は−1000mV未満であり、この指
針からすると、No.8〜9 のAl合金材は耐粒界腐食性およ
び耐応力腐食割れ性に劣ることになる。しかし、このN
o.8〜9 に使用したAl合金材 (E)は、実際には耐粒界腐
食性および耐応力腐食割れ性が劣るやすい材料である。
【0049】これらの結果から、直流電解の本発明の好
ましい条件範囲や、本発明の臨界的な意義が分かる。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
【発明の効果】本発明によれば、迅速で、しかも実際の
粒界腐食や応力腐食割れに良く対応する、これら耐食性
の試験方法と、この試験方法により評価された耐粒界腐
食性や耐応力腐食割れ性に優れたAl合金材を提供するこ
とができる。したがって、Al合金材の機能を向上させる
とともに、用途を拡げることができる点で、多大な工業
的価値を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】各種Al合金材のNaCl水溶液中における自然電位
a の経時変化を示す図である。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アルミニウム合金材をアノードとし、室
    温〜60℃で、かつ、1 〜10質量% のNaCl水溶液中におい
    て、10〜1000μA/cm2 で10〜60分間直流電解後のアルミ
    ニウム合金材の自然電位の値により、アルミニウム合金
    材の耐粒界腐食性を評価することを特徴とするアルミニ
    ウム合金材の耐粒界腐食性評価方法。
  2. 【請求項2】 前記アルミニウム合金材が更にCuを0.05
    % 以上含む請求項1に記載のアルミニウム合金材の耐粒
    界腐食性評価方法。
  3. 【請求項3】 前記請求項1または2の評価方法によ
    り、耐粒界腐食性が評価された、Si:0.2〜1.6% (質量%
    、以下同じ) 、Mg:0.2〜1.6%を含む、Al-Mg-Si系アル
    ミニウム合金材であって、該アルミニウム合金材をアノ
    ードとし、30℃で5 % のNaCl水溶液中において、100 μ
    A/cm2 で30分間直流電解後に測定されるアルミニウム合
    金材の自然電位の最低値が−1000mV以上である耐粒界腐
    食性に優れたアルミニウム合金材。
  4. 【請求項4】 前記アルミニウム合金材が更にCuを0.05
    % 以上含む請求項3に記載の耐粒界腐食性に優れたアル
    ミニウム合金材。
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