JP2001098348A - 油井用高強度マルテンサイト系ステンレス鋼管 - Google Patents

油井用高強度マルテンサイト系ステンレス鋼管

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JP2001098348A JP27076299A JP27076299A JP2001098348A JP 2001098348 A JP2001098348 A JP 2001098348A JP 27076299 A JP27076299 A JP 27076299A JP 27076299 A JP27076299 A JP 27076299A JP 2001098348 A JP2001098348 A JP 2001098348A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 CO2 、Cl- 等を含む過酷な環境下においても
優れた耐食性と、高強度を有し、溶接接続が可能な溶接
性に優れた高強度油井用高強度マルテンサイト系ステン
レス鋼管を提供する。 【解決手段】 mass%で、Cr:10.5〜15.0%、Mn:0.30
〜2.00%、Ni:7.0 %以下、Nb:0.20%以下、V:0.20
%以下を含み、C:0.03%以下、N:0.03%以下、Si:
0.70%以下、S:0.005 %以下、、Al:0.05%以下、
O:0.01%以下に制限し、さらに、合金元素を、C+N
≦0.04、0.01≦0.8Nb +0.5 V≦0.20、Cr+Mo+16N+
0.5Ni −5 C≧11.5、1.1 (Cr +1.5Si +Mo) −Ni−0.
5(Mn+Cu) −30( C+N) ≦11 (ここに、C、N、N
b、V、Cr、Ni、Si、Mo、Mn、Cu:各元素の含有量(mas
s%))を満足する条件下で含有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、油井用マルテンサ
イト系ステンレス鋼管に係り、とくに高強度マルテンサ
イト系ステンレス鋼管の溶接性改善に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、原油価格の高騰や、近い将来に予
想される石油資源の枯渇という観点から、従来省みられ
なかったような深層油田や、腐食性の強い油田、ガス田
等の開発が盛んになっている。このような油田、ガス田
は、概して高深度で、かつ高温で、しかも炭酸ガスC
O2 、塩素イオンCl- 等を含む厳しい腐食環境となって
おり、このような環境下で使用される油井用鋼管は高い
高温強度と耐食性を兼ね備えた材質を有することが要求
される。
【0003】従来から、CO2 、Cl- 等を含む環境の油
田、ガス田では、採掘に使用する油井管として、耐炭酸
ガス腐食性、耐孔食性に優れた13%Crマルテンサイト系
ステンレス鋼管が多く使用されている。近年、油井、ガ
ス井等の深さは、資源の枯渇や掘削技術の進歩に伴い、
数千mから1万mという深さに達しようとしている。油
井、ガス井内に建て込む油井管は、膨大な本数の鋼管を
カップリングにて直列に接続して組み立てられるの一般
的である。鋼管の端部およびカップリングにはそれぞれ
接続用のネジが刻設される。
【0004】しかし、最近では、油田の掘削環境が厳し
くなり、油井管の接続手段である、ネジに対する要求も
厳しくなり、種々のPremium Joint が開発されている。
しかし、そのPremium Joint によっても対処できないよ
うな厳しい掘削条件の油井等も出現しており、ネジ接続
に代わる、信頼性の高い油井管の接続方法が熱望されて
いる。
【0005】鋼管の接続方法としては、ラインパイプの
接続のように溶接が考えられるが、油井用鋼管は強度が
高く溶接性が劣ることから、現在まで油井管の接続に溶
接を利用した例はない。最近、接合部の品質に優れる拡
散接合が油井管の接合手段として注目されている。例え
ば、特開平10-6038 号公報には、油井管の接合に利用で
きる拡散接合装置が、また、特開平10-85955号公報に
は、拡散接合におけるインサートメタルの固定方法が開
示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開平
10-6038 号公報、特開平10-85955号公報に記載された技
術では、接合時間がそれほど短縮できるわけではないう
え、さらに拡散接合のために大型で複雑な装置の設置が
必要となるなど、作業性、コスト面でまだ多くの問題が
残されており、実用の段階に至っていないというのが現
状である。
【0007】本発明者らは、上記した従来技術の問題に
鑑み、作業性に優れ、接合能率の高い溶接接合に着目
し、油井管の溶接接合を可能とするために、溶接性が従
来に比べ格段に向上した油井用高強度鋼管の開発を目標
した。本発明は、CO2 、Cl- 等を含む過酷な環境下にお
いても優れた耐食性と、高強度を有し、溶接接続が可能
な溶接性に優れた高強度油井用高強度マルテンサイト系
ステンレス鋼管を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記した
課題を達成するため、13%Cr鋼を基本組成とし、耐食
性、高強度および溶接性を兼備させるための合金元素の
含有量について検討した。その結果、C+N含有量を著
しく低減し、さらにNb、Vを適正範囲で含有させ、Si、
Mn、Mo、Ni、Cu含有量をCr、C、N含有量との関係で調
整し、さらにS、Si、Al、Oを低減することにより良好
な熱間加工性が確保されるとともに、溶接性が著しく改
善され、さらに過酷な環境下での耐食性、とくに耐孔食
性、耐硫化物応力腐食割れ性が顕著に改善されることを
見いだした。
【0009】本発明は、このような知見に基づき、さら
に検討を加え完成されたものである。すなわち、本発明
は、mass%で、C:0.03%以下、N:0.03%以下、Si:
0.70%以下、Mn:0.30〜2.00%、P:0.03%以下、S:
0.005 %以下、Cr:10.5〜15.0%、Ni:7.0 %以下、A
l:0.05%以下、Nb:0.20%以下、V:0.20%以下、
O:0.01%以下を、次(1)〜(4)式 C+N≦0.04 ………(1) 0.01≦0.8Nb +0.5 V≦0.20 ………(2) Cr+Mo+16N+0.5Ni −5 C≧11.5 ………(3) 1.1 (Cr +1.5Si +Mo) −Ni−0.5(Mn+Cu) −30( C+N) ≦11 …(4) (ここに、C、N、Nb、V、Cr、Ni、Si、Mo、Mn、Cu:
各元素の含有量(mass%))を満足する条件下で含有
し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する
ことを特徴とする靱性、耐食性および溶接性に優れた油
井用高強度マルテンサイト系ステンレス鋼管である。
【0010】また、本発明では、前記組成を、mass%
で、C:0.03%以下、N:0.03%以下、Si:0.70%以
下、Mn:0.30〜2.00%、P:0.03%以下、S:0.005 %
以下、Cr:10.5〜15.0%、Ni:7.0 %以下、Al:0.05%
以下、Nb:0.20%以下、V:0.20%以下、O:0.01%以
下、さらにMo:0.1 〜3.0 %、Cu:3.5 %以下のうちか
ら選ばれた1種または2種を、前記(1)〜(4)式を
満足する条件下で含有し、残部Feおよび不可避的不純物
からなる組成とするのが好ましい。
【0011】また、本発明では、前記組成を、mass%
で、C:0.03%以下、N:0.03%以下、Si:0.70%以
下、Mn:0.30〜2.00%、P:0.03%以下、S:0.005 %
以下、Cr:10.5〜15.0%、Ni:7.0 %以下、Al:0.05%
以下、Nb:0.20%以下、V:0.20%以下、O:0.01%以
下、さらにTi:0.3 %以下、Zr:0.2 %以下、B:0.00
05〜0.01%、W:3.0 %以下のうちから選ばれた1種ま
たは2種以上を、前記(1)〜(4)式を満足する条件
下で含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成
とするのが好ましい。
【0012】また、本発明では、前記組成を、mass%
で、C:0.03%以下、N:0.03%以下、Si:0.70%以
下、Mn:0.30〜2.00%、P:0.03%以下、S:0.005 %
以下、Cr:10.5〜15.0%、Ni:7.0 %以下、Al:0.05%
以下、Nb:0.20%以下、V:0.20%以下、O:0.01%以
下、さらにCa:0.0005〜0.01%を、前記(1)〜(4)
式を満足する条件下で含有し、残部Feおよび不可避的不
純物からなる組成とするのが好ましい。
【0013】また、本発明では、前記組成を、mass%
で、C:0.03%以下、N:0.03%以下、Si:0.70%以
下、Mn:0.30〜2.00%、P:0.03%以下、S:0.005 %
以下、Cr:10.5〜15.0%、Ni:7.0 %以下、Al:0.05%
以下、Nb:0.20%以下、V:0.20%以下、O:0.01%以
下、さらにMo:0.1 〜3.0 %、Cu:3.5 %以下のうちか
ら選ばれた1種または2種、およびTi:0.3 %以下、Z
r:0.2 %以下、B:0.0005〜0.01%、W:3.0 %以下
のうちから選ばれた1種または2種以上を、前記(1)
〜(4)式を満足する条件下で含有し、残部Feおよび不
可避的不純物からなる組成とするのが好ましい。
【0014】また、本発明では、前記組成を、mass%
で、C:0.03%以下、N:0.03%以下、Si:0.70%以
下、Mn:0.30〜2.00%、P:0.03%以下、S:0.005 %
以下、Cr:10.5〜15.0%、Ni:7.0 %以下、Al:0.05%
以下、Nb:0.20%以下、V:0.20%以下、O:0.01%以
下、さらにMo:0.1 〜3.0 %、Cu:3.5 %以下のうちか
ら選ばれた1種または2種、およびCa:0.0005〜0.01%
を、前記(1)〜(4)式を満足する条件下で含有し、
残部Feおよび不可避的不純物からなる組成とするのが好
ましい。
【0015】また、本発明では、前記組成を、mass%
で、C:0.03%以下、N:0.03%以下、Si:0.70%以
下、Mn:0.30〜2.00%、P:0.03%以下、S:0.005 %
以下、Cr:10.5〜15.0%、Ni:7.0 %以下、Al:0.05%
以下、Nb:0.20%以下、V:0.20%以下、O:0.01%以
下、さらにTi:0.3 %以下、Zr:0.2 %以下、B:0.00
05〜0.01%、W:3.0 %以下のうちから選ばれた1種ま
たは2種以上、およびCa:0.0005〜0.01%を、前記
(1)〜(4)式を満足する条件下で含有し、残部Feお
よび不可避的不純物からなる組成とするのが好ましい。
【0016】また、本発明では、前記組成を、mass%
で、C:0.03%以下、N:0.03%以下、Si:0.70%以
下、Mn:0.30〜2.00%、P:0.03%以下、S:0.005 %
以下、Cr:10.5〜15.0%、Ni:7.0 %以下、Al:0.05%
以下、Nb:0.20%以下、V:0.20%以下、O:0.01%以
下、さらにMo:0.1 〜0.3 %、Cu:3.5 %以下のうちか
ら選ばれた1種または2種、およびTi:0.3 %以下、Z
r:0.2 %以下、B:0.0005〜0.01%、W:3.0 %以下
のうちから選ばれた1種または2種以上、およびCa:0.
0005〜0.01%を、前記(1)〜(4)式を満足する条件
下で含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成
とするのが好ましい。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明の油井用高強度マルテンサ
イト系ステンレス鋼管は、95ksi 以上の降伏強さYSを
有し、−20℃における吸収エネルギーvE-20 が50J以上
の高強度高靱性の母材特性を有し、入熱15kJ/cm の溶接
熱影響部(ボンド部から1mmのHAZ )における−20℃に
おける吸収エネルギーvE-20 が50J以上と溶接性にすぐ
れ、かつ耐食性に優れた油井用高強度鋼管である。本発
明の高強度鋼管は、継目無鋼管( シームレス鋼管)、ま
たは溶接鋼管である。
【0018】次に、本発明の油井用高強度鋼管の化学成
分限定の理由について説明する。 C:0.03mass%以下(以下、mass%は単に%と記す) Cは、マルテンサイト系ステンレス鋼においては強度を
確保するために重要な元素であるが、多量の含有は溶接
熱影響部の硬さを増加させ溶接割れを発生させる危険性
を増大させるため、溶接性の観点から、所望の強度を確
保できる範囲でできるだけ低減するのが好ましく、本発
明では0.03%以下に限定した。また、Cは耐食性の観点
からも低減するのが望ましく、0.02%以下とするのが好
ましい。
【0019】N:0.03%以下 Nは、耐孔食性を著しく増加させる元素であるが、0.03
%を超えて含有すると、Cと同様に溶接熱影響部の硬さ
を増加させ、溶接割れを発生させる危険性が増大する。
このようなことから、Nは0.03%以下に限定した。な
お、好ましくは0.02%以下である。
【0020】C+N≦0.04 ………(1) 本発明では、鋼管の溶接性を向上させるために、C、N
含有量を上記した範囲内でさらに(1)式を満足するよ
うに限定する。C+Nが0.04%を超えると、溶接性、と
くに溶接割れ性が顕著に増大する。このため、C+Nを
0.04%以下に限定した。なお、より好ましくはC+Nは
0.025 %以下である。
【0021】Si:0.70%以下 Siは、脱酸剤として作用するとともに、強度を増加させ
る元素であるが、0.70%を超えて含有すると、熱間加工
性が低下し、さらに耐炭酸ガス腐食性が低下する。この
ため、本発明では0.70%以下に限定した。なお、好まし
くは0.1 〜0.5%である。
【0022】Mn:0.30〜2.00% Mnは、強度を増加させる元素であり、本発明では所望の
鋼管強度を確保するために0.30%以上の含有を必要とす
るが、2.00%を超える含有は靱性を劣化させる。このた
め、Mnは0.30〜2.00%の範囲に限定した。 P:0.03%以下 Pは、強度を増加させるが、延性、靱性を低下させ、さ
らに、耐CO2 腐食性、耐CO2 応力腐食割れ性、耐孔食性
および耐硫化物応力腐食割れ性をともに劣化させる元素
であり、できるだけ低減するのが望ましい。しかし、極
端な低減は製造コストの高騰を招き好ましくない。本発
明では、工業的に比較的安価に実施可能でかつ耐CO2
食性、耐CO2 応力腐食割れ性、耐孔食性および耐硫化物
応力腐食割れ性を劣化させない範囲の0.03%を上限とし
た。
【0023】S:0.005 %以下 Sは、パイプ製造過程で熱間加工性を著しく劣化させる
元素であり、できるだけ低減するのが望ましいが、0.00
5 %以下であれば、通常の工程でパイプ製造が可能であ
る。このことから、本発明ではSは0.005 %以下に限定
した。なお、好ましくは0.003 %以下である。
【0024】Cr:10.5〜15.0% Crは、保護被膜を形成し耐CO2 腐食性、耐CO2 応力腐食
割れ性等の耐食性を増加させる元素であり、耐食性の観
点からは10.5%以上の含有を必要とするが、15.0%を超
えて含有するとパイプ製造工程での熱間加工性が低下す
る。このため、本発明ではCrは10.5〜15.0%の範囲に限
定した。
【0025】Ni:7.0 %以下 Niは、保護被膜を強化し耐食性を増加させる元素であ
り、また、鋼管強度を増加させる元素でもあり、好まし
くは0.1 %以上含有するのが好ましい。一方、7.0 %を
超える含有はマルテンサイト組織の安定性を低下させ
る。このため、本発明では7.0 %以下に限定した。な
お、好ましくは1.0 〜6.0 %である。
【0026】Al:0.05%以下 Alは、脱酸剤として作用するが、0.05%を超える含有は
靱性を劣化させるため、本発明では、0.05%以下に限定
した。 Nb:0.20%以下 Nbは、靱性を劣化させずに常温、高温における強度を増
加させる効果を有している。本発明では、C低減による
強度低下を補償する目的でNbを添加するが、0.01%以上
の含有で強度増加の効果が顕著に認められるため、0.01
%以上含有するのが好ましい。しかし、0.20%を超えて
含有すると靱性が劣化する。このため、Nbは0.20%以下
に限定した。なお、好ましくは、0.01〜0.07%である。
【0027】V:0.20%以下 Vも、Nbと同様に靱性を劣化させずに常温、高温におけ
る強度を増加させる効果を有し、C低減による強度低下
を補償する目的でNbとともに添加する。0.02%以上の含
有で、強度増加の効果が顕著に認められ、0.02%以上含
有するのが好ましい。しかし、0.20%を超えて含有する
と靱性が劣化する。このため、Vは0.20%以下に限定し
た。なお、好ましくは、0.03〜0.10%である。
【0028】 0.01≦0.8Nb +0.5 V≦0.20 ………(2) Nb、Vはともに所望の鋼管強度を確保する目的で添加す
るが、強度、靱性のバランスを考慮して、Nb、V含有量
を上記したそれぞれの範囲内で、かつ(2)式を満足さ
せるように調整する。(0.8Nb +0.5 V)が0.01未満、
好ましくは0.010 未満では強度増加が少なく、一方、0.
20を超えると靱性劣化が著しくなる。
【0029】O:0.01%以下 Oは他の元素と結合し各種の酸化物を形成し、熱間加工
性、靱性および耐食性を著しく低下させる。とくに耐CO
2 腐食性、耐CO2 応力腐食割れ性、耐孔食性を劣化させ
る。このため、Oは0.01%以下、好ましくは0.006 %以
下とする。Mo:0.1 〜3.0 %、Cu:3.5 %以下のうちか
ら選ばれた1種または2種Mo、Cuはいずれも耐食性を高
める元素であり、必要に応じ選択して含有できる。
【0030】Moは、耐食性、とくに塩素イオンCl- によ
る孔食に対する抵抗を増加させる効果を有する。このよ
うな効果は0.1 %以上の含有で認められるが、3.0 %を
超えて含有するとδフェライトの生成を招き、熱間加工
性が低下するとともに耐CO2腐食性、耐CO2 応力腐食割
れ性が低下する。このため、Moは0.1 〜3.0 %の範囲に
限定するのが好ましい。なお、より好ましくは、0.5 〜
2.0 %である。
【0031】Cuは、とくに、保護被膜を強固にし、鋼中
への水素の侵入を抑制して耐硫化物応力腐食割れ性を高
める。しかし、3.5 %を超えて含有すると、高温でCuS
が結晶粒界に析出し熱間加工性を低下させる。このた
め、Cuは3.5 %以下とするのが好ましい。なお、より好
ましくは0.2 〜2.5 %である。 Ti:0.3 %以下、Zr:0.2 %以下、B:0.0005〜0.01
%、W:3.0 %以下のうちから選ばれた1種または2種
以上 Ti、Zr、B、Wは、いずれも強度を増加させ、かつ耐硫
化物応力腐食割れ性を改善する効果を有しており、必要
に応じ、Ti、Zr、B、Wのうちの1種または2種以上を
選択して含有できる。しかし、Tiは0.3 %、Zrは0.2
%、Bは0.01%、Wは3.0 %、をそれぞれ超えて含有す
ると靱性が劣化する。また、Bは0.0005%以上の含有で
上記した効果が認められる。このため、本発明では、Ti
は0.3 %以下、Zrは0.2 %以下、Bは0.0005〜0.01%、
Wは3.0 %以下に限定するのが好ましい。
【0032】Ca:0.0005〜0.01% Caは、Sと結合し硫化物を球状化し、介在物周囲のマト
リックスの格子歪を低減し、介在物の水素トラップ能を
低下させる作用を有しており、必要に応じ含有できる。
この効果は0.0005%以上のCa含有で認められるが、0.01
%を超えて含有すると、CaO の増加を招き、耐CO2 腐食
性、耐孔食性が劣化する。このため、Caは0.0005〜0.01
%の範囲に限定するのが好ましい。なお、より好ましく
は0.001〜0.005 %である。
【0033】本発明の鋼管は、上記した成分以外の残部
はFeおよび不可避的不純物である。さらに、本発明で
は、耐食性改善のために、合金元素量を(3)式、
(4)式の範囲に調整する。 Cr+Mo+16N+0.5Ni −5 C≧11.5 ………(3) 1.1 (Cr +1.5Si +Mo) −Ni−0.5(Mn+Cu) −30( C+N) ≦11 …(4) (3)式は、孔食状の不均一腐食の発生を防止するため
の限定条件であり、(3)式が満足されない場合には孔
食状の不均一腐食が発生しやすくする。
【0034】また、(4)式は、組織の不均一をなく
し、孔食状の不均一腐食の発生を抑制し、さらに応力腐
食割れの発生を防止するための限定条件であり、(4)
式が満足されない場合には孔食状の不均一腐食が発生し
やすくなるとともに、応力割れが発生しやすくなり、耐
応力腐食割れ性が劣化する。なお、本発明においては、
前記(1)〜(4)式の値を計算するに際しては、含有
しない合金元素については、当該合金元素の含有量を0
として計算するものとする。
【0035】つぎに、本発明鋼管の製造方法について説
明する。上記した組成の鋼を、転炉、電気炉等の通常公
知の溶製方法で溶製し、連続鋳造法あるいは鋼塊−分塊
圧延により鋼管素材とするのが好ましい。これら鋼管素
材を、通常の継目無鋼管製造工程、すなわち加熱し、マ
ンネスマン穿孔機で穿孔し、プラグミル方式、マンドレ
ル方式等の傾斜圧延方式ミルを用いて熱間圧延し、所定
寸法の継目無鋼管とするのが好ましい。この継目無鋼管
は圧延のままで、マルテンサイト組織となるが、所望の
強度靱性を付与するために、継目無鋼管はその後焼戻し
処理、あるいは焼入れ焼戻し処理を施されて所定の強
度、靱性を付与されるのが好ましい。焼戻し処理は、A
c3変態点以下の温度、好ましくは500 〜650 ℃で行うの
が好ましい。また、焼入れ焼戻し処理は、Ac3変態点以
上、好ましくは900 〜1000℃に加熱し焼入れを行ったの
ち、Ac3変態点以下、好ましくは500 〜650 ℃の温度で
焼戻しするのが良い。
【0036】また、これら鋼管素材を熱間圧延により鋼
帯とし、該鋼帯に、焼戻し処理、あるいは焼入れ焼戻し
処理を施し所定の強度としたのち、通常の電縫管製造工
程、すなわち、成形−溶接−矯正にしたがって、所定寸
法の電縫鋼管としてもよい。また鋼帯の状態では、圧延
のままとして、通常の電縫管製造工程を経て電縫鋼管と
したのち、電縫鋼管全体もしくはシーム溶接部に焼戻し
処理、あるいは焼入れ焼戻し処理を施して所定の強度、
靱性を付与してもよい。なお、焼戻し処理は、Ac3変態
点以下の温度でおこなうのが好ましい。また、焼入れ焼
戻し処理は、Ac3変態点以上1000℃以下に加熱し水冷ま
たは空冷する焼入れを行ったのち、Ac3変態点以下、好
ましくは500 〜650 ℃の温度で焼戻しするが好ましい。
また、電縫溶接の代わりにレーザ溶接を使用してもよ
い。
【0037】
【実施例】表1に示す組成の鋼を転炉で溶製し、連続鋳
造法によりビレットとした。これらのビレットを1200℃
に加熱して、マンネスマンマンドレル方式のミルで造管
し、圧延後空冷し継目無鋼管とした。ついで、これら鋼
管に表2に示す条件の焼入れ焼戻し処理を施し、降伏強
さ95ksi 級の強度を有する鋼管とした。
【0038】これら鋼管について、引張試験、シャルピ
ー衝撃試験、溶接継手試験および腐食試験を実施し、引
張特性、衝撃特性、溶接継手部特性および耐食性を調査
した。引張試験は、これら鋼管の長手方向からAPI 丸棒
試験片を採取し、降伏強さYS、引張強さTS、伸びElを測
定した。
【0039】衝撃試験は、これら鋼管の長手方向からJI
S 4 号試験片を採取し、−20℃における吸収エネルギー
vE-20 を測定した。溶接継手試験は、同一鋼種の鋼管の
端部同士を突き合わせて、25Cr系溶接ワイヤを用いてT
IG溶接法(入熱15kJ/cm )で、予熱および後熱なしの
条件で円周溶接し鋼管溶接継手を作製した。開先形状は
V型とした。これら溶接継手部の溶接熱影響部(bondか
ら1mmのHAZ)からシャルピー衝撃試験片(JIS 4 号
試験片)を採取し、−20℃における吸収エネルギーvE
-20 を測定した。
【0040】なお、溶接継手試験は、予め行った溶接割
れ試験により割れの発生が認められなかった鋼管につい
て実施した。溶接割れ試験はJIS Z 3158「y型溶接割れ
試験」に準拠して、鋼管と同一組成の15mm厚鋼板で実施
した。なお、予熱は30℃一定とした。腐食試験は、これ
ら鋼管から3.0 ×25×50mmの腐食試験片を採取し、炭酸
ガス腐食試験を実施し、耐孔食性を評価した。炭酸ガス
腐食試験は、オートクレーブで3.0MPaの圧力で炭酸ガス
を飽和させた20%NaCl水溶液(液温:80℃)中に腐食試
験片を7日間浸漬し、孔食の発生状況を調査した。孔食
の発生状況は、孔食の発生したものを○、孔食の発生し
なかったものを×で評価した。
【0041】これらの結果を表2に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】本発明例は、降伏強さ95ksi 級の高強度し
ているにもかかわらず、−20℃における吸収エネルギー
( vE-20 )も50J以上と高く優れた靱性を示し、しか
も予熱30℃という厳しい溶接条件においても、溶接割れ
の発生もなく優れた溶接性を示している。また、本発明
例は、炭酸ガス環境下の腐食試験においても孔食の発生
もなく優れた耐孔食性を有している。また、溶接熱影響
部も、−20℃における吸収エネルギー( vE-20 )が50
J以上と高く、優れた靱性を有している。
【0045】一方、本発明の範囲を外れる比較例は、溶
接性(溶接割れ、熱影響部靱性)、耐食性のうちいずれ
かが劣化していた。このように、本発明の鋼管は、高強
度高靱性で、かつ優れた溶接性、優れた耐孔食性を有し
ており、油井用鋼管として優れた特性を有していること
がわかる。
【0046】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、炭酸ガ
ス環境下で優れた耐孔食性を示し、さらに、耐溶接割れ
性に優れ、溶接部の低温靱性も高く、予熱、後熱なしで
円周溶接が可能であり、CO2 、Cl- 、H2S を含む過酷な
環境下の油井で使用可能な、油井用マルテンサイト系ス
テンレス鋼管を提供でき、産業上格段の効果を奏する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 豊岡 高明 愛知県半田市川崎町1丁目1番地 川崎製 鉄株式会社知多製造所内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 mass%で、 C:0.03%以下、 N:0.03%以下、 Si:0.70%以下、 Mn:0.30〜2.00%、 P:0.03%以下、 S:0.005 %以下、 Cr:10.5〜15.0%、 Ni:7.0 %以下、 Al:0.05%以下、 Nb:0.20%以下、 V:0.20%以下、 O:0.01%以下 を、下記(1)〜(4)式を満足する条件下で含有し、
    残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有すること
    を特徴とする靱性、耐食性および溶接性に優れた油井用
    高強度マルテンサイト系ステンレス鋼管。 記 C+N≦0.04 ………(1) 0.01≦0.8Nb +0.5 V≦0.20 ………(2) Cr+Mo+16N+0.5Ni −5 C≧11.5 ………(3) 1.1 (Cr +1.5Si +Mo) −Ni−0.5(Mn+Cu) −30( C+N) ≦11 …(4) ここに、C、N、Nb、V、Cr、Ni、Si、Mo、Mn、Cu:各
    元素の含有量(mass%)
  2. 【請求項2】 前記組成が、さらにmass%で、Mo:0.1
    〜3.0 %、Cu:3.5%以下のうちから選ばれた1種また
    は2種を含有する組成とすることを特徴とする請求項1
    に記載の油井用高強度マルテンサイト系ステンレス鋼
    管。
  3. 【請求項3】 前記組成が、さらにmass%で、Ti:0.3
    %以下、Zr:0.2 %以下、B:0.0005〜0.01%、W:3.
    0 %以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有
    する組成とすることを特徴とする請求項1または2に記
    載の油井用高強度マルテンサイト系ステンレス鋼管。
  4. 【請求項4】 前記組成が、さらにmass%で、Ca:0.00
    05〜0.01%を含有する組成とすることを特徴とする請求
    項1ないし3のいずれかに記載の油井用高強度マルテン
    サイト系ステンレス鋼管。
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