JP2004143500A - 耐座屈特性に優れた高強度鋼管およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ラインパイプ等の配管、あるいは、鋼管柱、鋼管杭等の構造用鋼管に好適な、低温靭性、耐座屈特性に優れた高強度鋼管およびその製造方法を提供する。
【解決手段】フェライトの平均結晶粒径が10μm以下であるミクロ組織を有し、管軸方向のr値が0.8以上であることを特徴とする耐座屈特性に優れた高強度鋼管。再結晶温度以上で、1パスあたりの圧下量が8%以上、パス間時間が3秒以下、圧下量の合計が32%以上、圧延後の保持時間が10〜300秒である圧延スケジュールを2回以上、累積圧下量が65%以上になるまで行い、さらにAr3[℃]以上再結晶温度未満で累積圧下量が65%以下の圧延を行い、20℃/s以下で500℃以下まで冷却することを特徴とする製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】フェライトの平均結晶粒径が10μm以下であるミクロ組織を有し、管軸方向のr値が0.8以上であることを特徴とする耐座屈特性に優れた高強度鋼管。再結晶温度以上で、1パスあたりの圧下量が8%以上、パス間時間が3秒以下、圧下量の合計が32%以上、圧延後の保持時間が10〜300秒である圧延スケジュールを2回以上、累積圧下量が65%以上になるまで行い、さらにAr3[℃]以上再結晶温度未満で累積圧下量が65%以下の圧延を行い、20℃/s以下で500℃以下まで冷却することを特徴とする製造方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明に属する技術分野】
本発明は、局所座屈特性等の変形特性に優れ、かつ低温靭性に優れた高強度鋼管に関するものである。具体的には、ラインパイプ等の配管、あるいは、鋼管柱、鋼管杭等の構造用鋼管に使用される鋼管で、特に圧縮および曲げにおける耐座屈特性に優れた鋼管に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
原油・天然ガスを輸送するラインパイプ、あるいは、柱や杭に使用される構造用鋼管は、これまで主として高強度化および高靱化が求められてきたが、最近になって、耐震特性等の観点から強度および靭性に加えて変形特性に優れた高強度鋼管の開発ニーズが高まっている。
【0003】
ラインパイプや、鋼管柱、鋼管杭は、地震等の変形で主として圧縮あるいは曲げ変形による局部的な座屈によって破壊する。これまでに耐局部座屈特性の向上には、低降伏化が有効であることが報告されている。また、例えば、特許文献1には、ミクロ組織をフェライトとマルテンサイトあるいはベイナイトを含む硬質第二相の複合組織とし、加工硬化指数(以下、n値)を高くした鋼管およびその製造方法が開示されている。しかしながら、この方法は低温の二相域で圧延するものであり、フェライトと硬質第二相が層状に形成されるため、セパレーションが発生して靭性が劣化するという問題があった。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−279700号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ラインパイプ等の配管、あるいは、鋼管柱、鋼管杭等の構造用鋼管に好適な、圧縮および曲げによる耐座屈特性に優れた高強度鋼管およびその製造方法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、n値以外の材質因子が耐座屈特性に及ぼす影響について詳細な検討を行った。その結果、耐座屈特性が管軸方向のランクフォード値(以下、r値)とともに向上することを見出した。さらに検討を進めて圧延条件を適正化し、低温靭性を損なうことなく管軸方向のr値を高めることに成功し、耐座屈特性に優れた高強度鋼管およびその製造方法を発明するに至った。本発明の要旨は、以下の通りである。
(1)質量%で、C:0.02%〜0.2%、Si:0.001%〜0.5%、Mn:0.5%〜3.0%、Al:0.002%〜0.1%、N:0.01%以下、P:0.02%以下、S:0.005%以下を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、フェライトの平均結晶粒径が10μm以下であり、残部が残留オーステナイト、ベイナイトおよびマルテンサイトからなるミクロ組織を有し、管の軸方向のr値が0.8より大きく、肉厚が6mm以上、外径が100mm以上であることを特徴とする耐座屈特性に優れた高強度鋼管。
(2)質量%で、さらに、Nb:0.1%以下、V:0.1%以下、Ti:0.1%以下の1種または2種以上を含有することを特徴とする(1)に記載の耐座屈特性に優れた高強度鋼管。
(3)質量%で、さらに、Mo:1.0%以下、Cu:2.0%以下、Ni:2.0%以下、Cr:1.0%以下、Co:3.0%以下、W:2.0%以下の1種または2種以上を含有することを特徴とする(1)または(2)に記載の耐座屈特性に優れた高強度鋼管。
(4)質量%で、さらに、B:0.005%以下を含有することを特徴とすることを特徴とする(1)〜(3)の何れか1項に記載の耐座屈特性に優れた高強度鋼管。
(5)質量%で、さらに、Ca:0.01%以下、Mg:0.1%以下、REM:0.02%以下の1種または2種以上を含有することを特徴とする(1)〜(4)の何れか1項に記載の耐座屈特性に優れた高強度鋼管。
(6)管の軸方向の一様伸びU.El[%]と引張強度TS[MPa]が下記(1)式を満たすことを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の耐座屈特性に優れた高強度鋼管。
TS+55×U.El>1085 ・・・ (1)
(7)(1)〜(5)の何れか1項に記載の成分からなるスラブを1050℃以上に加熱後、再結晶温度以上で、1パスあたりの圧下量が8%以上、パス間時間が3秒以下、圧下量の合計が32%以上、圧延後の保持時間が10〜300秒である圧延スケジュールを2回以上、累積圧下量が65%以上になるまで行い、さらにAr3[℃]以上再結晶温度未満で累積圧下量が65%以下の圧延を行い、20℃/s以下で500℃以下まで冷却し、さらに室温まで放冷した鋼板を、冷間成形で中空形状としてシーム溶接を施すことを特徴とする耐座屈特性に優れた高強度鋼管の製造方法。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明者は、靭性等の特性を損なうことなく耐座屈特性を向上させる手段について検討するため、以下の実験を行った。表1に示す材質を有する、外径315mm、肉厚7mm、長さ3000mmの鋼管を試験材とし、4点曲げ試験を実施した。アーム間の距離を1000mmとし、試験体中央の曲げ外側部に貼った歪みゲージからの歪みとアームに負荷した荷重を測定した。
【0008】
【表1】
【0009】
最大荷重を示す歪みεmを耐局部座屈特性として表し、管軸方向のr値との関係を示したものが図1である。図1に示したように、管軸方向のr値を向上させると耐座屈特性が高くなることを新たな知見として得た。
【0010】
なお、引張強度の測定は、JIS Z 2201の円弧状試験片JIS12C号を採取して、JIS Z 2241に準拠して行った。管軸方向のr値は、以下のようにして測定した。鋼管から引張試験と同様に管軸方向を長手としてJIS12C号試験片を採取し、試験片中央部に管軸方向およびそれに直交する周方向に歪みゲージを貼った。引張試験機で管軸方向に7%引張り、歪みゲージにより管軸方向および周方向の歪みを測定した。その測定値から、体積が一定であると仮定して肉厚方向の歪みを算出し、幅方向の歪みと肉厚方向歪みの比を管軸方向のr値とした。
【0011】
また、本発明の鋼管の使用対象となるラインパイプ等の配管、あるいは、鋼管柱、鋼管杭等に要求される靭性は使用環境によって異なるが、0℃でのシャルピー吸収エネルギー200J以上が必要である。靭性は結晶粒径の微細化によって向上するが、上記の要求を満足するには、フェライトの平均結晶粒径を10μm以下にすれば良いことがわかった。
【0012】
従来、高強度鋼管の製造において、結晶粒を微細化するためには、再結晶温度未満の未再結晶温度域で累積圧下率50%以上の熱間圧延を行い、その後の加速冷却していた。しかし、この場合は、管軸方向のr値を低下させる{112}<110>を主方位とした集合組織が発達するため、r値は0.8より小さくなる。
【0013】
そこで、本発明者は、再結晶温度以上で圧延と保持を繰り返すことにより再結晶させてオーステナイトを微細化し、その後、再結晶温度未満での圧延および冷却を制御することにより、r値に有害な集合組織を発達させることなくフェライトの平均結晶粒径を微細化する製造方法を指向した。
【0014】
再結晶を利用してオーステナイト粒径を細かくするためには、再結晶温度以上で再結晶するために必要な歪みをオーステナイトに蓄積して保持することが必要である。しかしながら、圧延温度が高く、圧延で導入された歪みが回復するため、再結晶に必要な歪みを蓄積するには、1パスあたりの圧下量を大きく、パス間時間を短くし、累積圧下量を制御しなければならない。
【0015】
本発明者は、再結晶挙動に及ぼす1パスあたりの圧下量およびパス間時間について詳細に調査した。調査方法は以下の通り行った。直径10mm、長さ10mmの円柱試験片に熱電対を取り付け、誘導加熱とガス冷却によって温度を制御し、長さ方向に歪みを加える圧縮試験を行った。試験片を1000℃〜1300℃の任意の温度に加熱した後、再結晶温度域の任意の温度で、1パスあたりの圧下量、パス間時間および合計圧下量を変化させた加工を行い、直ちに急冷した。その後、試験片断面をピクリン酸を用いたエッチングによって旧オーステナイト粒界を現出させ、オーステナイトの再結晶挙動を観察した。その結果、1パスあたりの圧下量が8%以下、パス間時間3秒以上、合計圧下量32%以下では歪みが回復し、再結晶が生じないことがわかった。
【0016】
このような検討をさらに進め、1パス当たりの圧下量、パス間時間および合計圧下量を制御した圧延を行い、再結晶させるための保持時間について検討を行った。その結果、圧延によって導入した歪みによりオーステナイトの再結晶が進行するのに必要な時間は、10秒以上であることがわかった。さらに、最終的にフェライトの平均結晶粒径を10μm以下にするためには、1パス当たりの圧下量、パス間時間、合計圧下量および圧延後の保持時間を制御した圧延スケジュールを2回以上行い、再結晶温度以上での圧延の累積圧下量を65%以上とする必要があることがわかった。
【0017】
また、再結晶温度未満での圧延により、フェライトの平均結晶粒径が著しく微細化するが、累積圧下量を大きくすると{112}<110>方位が形成してr値が低下する。そこで、再結晶温度未満の温度域において、累積圧下量によるフェライトの平均結晶粒径および集合組織の変化について検討を行った。
【0018】
再結晶温度以上の圧延条件の検討と同様に、温度と圧下量を変化させて加工を行った後、フェライトの平均結晶粒径を測定した。なおミクロ組織はフェライトと残留オーステナイトを含むベイナイトおよびマルテンサイトからなるものであり、フェライトの平均結晶粒径とは、フェライトとベイナイトおよびマルテンサイトと区別し、フェライトのみの結晶粒径をJIS G 0552に準じて切断法によって測定したものである。
【0019】
さらに、集合組織をX線回折法によって測定したが、その結果、{112}<110>方位を抑制するためには、累積圧下量を65%以下に制限する必要があることがわかった。さらに、圧延後の冷速を遅くすることが{112}<110>方位の集積の抑制に効果的であり、20℃/s以下にすることによってr値の低下を防止できることがわかった。
【0020】
以上の知見に基づいて、再結晶温度以上での圧延スケジュールを厳密に制御して、フェライトの平均結晶粒径を微細化し、再結晶温度未満での圧延の累積圧下量を制御して、r値を低下させる{112}<110>方位を抑制し、靭性を損なうことなく管軸方向のr値を0.8以上にすることに成功した。
【0021】
以下、成分含有量の規定した理由について述べる。
【0022】
C量は、0.02〜0.20%以下に限定する。Cは高強度化には最も有効な元素であり、十分な強度を得るためには0.02%以上は必要である。しかしながら、過度に多くなると、溶接性が悪くなることから上限を0.20%以下とした。
【0023】
Siは脱酸あるいは強度向上に有効な元素である。その効果を得るためには0.001%以上必要であるが、0.5%以上含有すると溶接熱影響部の靭性が著しく劣化する。したがって、Siの添加量を0.001〜0.5%の範囲とした。
【0024】
Mnは強度上昇に有効な元素であり、十分な強度向上を得るためには0.5%以上の添加が必要である。しかしながら、3.0%よりも多く含有すると伸びが確保できなくなる。したがって、Mnの添加量を0.5〜3.0%の範囲とした。
【0025】
PおよびSは不純物であり、Pは粒界に偏析し、また、SはMnSとして析出する。PおよびSはそれぞれ、0.02%超および0.005%超を含有すると靭性を劣化させるので、PおよびSの上限は、それぞれ0.02%以下、0.005%以下とする。
【0026】
Alは強力な脱酸元素であり、組織微細化にも寄与するが、この効果を得るには、0.002以上必要である。ただし、0.1%超となると溶接熱影響部の靭性を劣化させる。したがってAlの添加量を、0.002〜0.1%の範囲とした。
【0027】
Nは強化元素として有効であるが、この効果を得るには0.002%以上添加することが好ましい。一方、0.01%超のNを含有すると固溶N量が多くなり、伸びを著しく劣化させるので、上限を0.01%以下とした。
【0028】
さらに必要に応じて、Nb、V、Ti、Mo、Cu、Ni、Cr、Co、W、B、Ca、REM、Mgの1種または2種以上を含有しても良い。
【0029】
Nb、V、Tiは炭窒化物を形成し、析出強化として寄与する。しかしながら、それぞれ0.1%よりも多く含有すると粗大な析出物として存在し靭性を劣化させることから、それぞれの上限を0.1%以下とすることが好ましい。下限は、特に限定しないが、析出強化を発揮するためそれぞれ0.01%以上とすることが好ましい。
【0030】
Mo、Cu、Ni、Cr、Coは焼き入れ性を高め、高強度化に寄与する。この効果はMo、Cu、Ni、Cr、Coが、それぞれ、0.05%未満では不十分であるため、0.05%以上を下限とすることが好ましい。しかし、添加元素が多すぎると、経済性だけでなく、溶接熱影響部の靭性あるいは現地溶接性を劣化させるので、Mo、Cu、Ni、Cr、Coの上限を、それぞれ、1.0%、2.0%、2.0%、1.0%、3.0%とすることが好ましい。
【0031】
Wは固溶強化元素として高強度化に有効であるが、この効果はWが0.1%未満では不十分であるため、0.1%以上を下限とすることが好ましい。一方、2.0%よりも過度に添加すると伸びを劣化させるので、上限を2.0%以下とすることが好ましい。
【0032】
Bは少量で焼き入れ性を大幅に高め強化に寄与する。この効果はBが0.0001%未満では不十分であるため、0.0001%以上を下限とすることが好ましい。しかしながら、0.005%よりも多量に添加すると、伸びの劣化、溶接熱影響部の硬化を招くので、上限を0.005%以下とすることが好ましい。
【0033】
Ca、REMは硫化物の形態を制御し、靭性の向上に寄与する。硫化物の形態制御のためには、それぞれ0.0001%以上が必要であり、下限は0.0001%以上とすることが好ましい。しかしながらCaおよびREMを、それぞれ、0.01%および0.02%よりも過度に添加すると、大型の介在物として存在し、かえって靭性を劣化させるので、上限をそれぞれ0.01%および0.02%以下とすることが好ましい。
【0034】
Mgは巨力な脱酸元素であり、微細な酸化物として分散した場合、溶接熱影響部の靭性向上に大きく寄与する。この効果はMgが 0.0001%未満では不十分であるため0.0001%以上を下限とすることが好ましい。しかしながら、0.1%超を添加すると粗大な酸化物を生じて靭性を劣化させるので、上限を0.1%とすることが好ましい。
【0035】
フェライトの平均結晶粒径を小さくすると靭性が向上するが、0℃でのシャルピー吸収エネルギーを200J以上とするには、フェライトの結晶粒径を10μm以下にする必要がある。細粒になるほど靭性は向上するためフェライトの平均結晶粒径の下限は限定しないが、現状の技術では1μm以下にすることは困難である。
【0036】
なおフェライトの平均結晶粒径とは、フェライトと残留オーステナイトを含むベイナイトおよびマルテンサイトからなるミクロ組織において、フェライトのみの平均結晶粒径である。フェライトの平均結晶粒径は、鋼管の肉厚中心部より小片を切り出し、管軸方向に平行な断面を鏡面研磨後、エッチングして現出した組織を観察し、フェライトとベイナイトおよびマルテンサイトを区別して、任意の10視野におけるフェライトの平均結晶粒径をJIS G 0552に準じて切断法により測定することができる。
【0037】
管軸方向のr値は、本発明において最も重要な材質であり、耐座屈特性の向上に効果がある。しかし、r値が0.8より小さいと、この効果が不十分であるため、0.8を下限とする。上限は特に規定しないが、現状の鋼板製造設備の制約上、1.5が限界である。管軸方向のr値は、鋼管から管軸方向を長手として引張試験片を採取して均一変形する範囲で引張歪みを導入し、管軸方向の歪みと肉厚方向の歪みを測定して、その比として求めることができる。例えば、管軸方向を長手とする円弧状試験片を採取してその中央部に管軸方向およびそれに直交する周方向に歪みゲージを貼り、引張試験機で管軸方向に5〜15%引張り、歪みゲージにより管軸方向および周方向の歪みを測定し、その測定値から体積が一定であると仮定して肉厚方向の歪みを算出し、幅方向の歪みと肉厚方向歪みの比を管軸方向のr値として算出することができる。
【0038】
また、本発明鋼管の用途であるラインパイプ、鋼管杭および鋼管柱などが構造物として十分な強度を有するために、肉厚が6mm以上、外径が100mm以上であることが必要である。なお現状の技術では、肉厚および外形をそれぞれ50mm超および1200mm超とすることは困難である。
耐座屈特性を向上させるためには、均一伸びを大きくすることが好ましい。高強度化に伴い、均一伸びは減少するが、耐座屈特性を向上させるには、引張強度TSと均一伸びU.Elの間に、TS+55×U.El>1085の関係が成り立つことが好ましい。これは、鋼管のTSを縦軸、U.Elを横軸にプロットしたところ、TS=−55×U.El+1085の直線よりも上の範囲において座屈歪みが極めて良好になることから規定したものである。
【0039】
つぎに製造方法について述べる。
【0040】
圧延前の再加熱温度は、再結晶温度以上で累積圧下量が65%以上となる十分な熱間圧延を行うために、熱延時の冷却を考慮して1050℃以上にする必要がある。上限温度は特に規定しないが、1250℃を超えるとオーステナイト粒径が著しく粗大化するため、1250℃以下が好ましい。
【0041】
フェライトの平均結晶粒径を細かくするためには、再結晶温度以上での1パスあたりの圧下量、パス間時間、圧下量の合計および圧延後の保持時間を制御した圧延スケジュールを2回以上行う必要がある。
【0042】
まず、1パスあたりの圧下量は、8%未満では歪みが回復して再結晶を生じ難いため、8%以上が必要である。上限は特に規定しないが、設備制約上の上限は50%である。
【0043】
パス間時間は、3秒超では歪みの回復が急速に進み、再結晶を生じ難いため、3秒以下に制限する。下限は特に限定しないが、0.1秒よりも短くすることは現状の技術では困難である。
【0044】
圧下量の合計は、32%未満では歪みが回復して再結晶しないため、32%以上とすること必要である。上限は特に規定しないが、生産効率の観点から60%を上限にすることが好ましい。
【0045】
このような圧延後、十分に再結晶させるための保持時間が必要である。その保持時間が10秒未満であると再結晶が不十分であるため、10秒以上を下限とする。一方、300秒超保持すると粒成長して粒が粗大化するため、圧延後の保持時間を10〜300秒の範囲とする。なお、この保持時間内に急激な温度低下が生じることは好ましくない。通常は、放冷すれば良いが、保熱炉、保熱カバーによって温度低下を抑制しても構わない。
【0046】
さらに、この圧延スケジュールを2回以上繰り返すが、フェライトの平均結晶粒径を10μm以下にするためには、再結晶温度以上での圧延を累積圧下量が65%以上になるまで行うことが必要である。上限は特に規定しないが、設備制約上95%を上限にすることが好ましい。圧延スケジュールの繰り返し回数は、特に規定しないが、生産性の観点から10回を上限にすることが好ましい。再結晶温度未満での圧延はフェライトを著しく微細化させる効果があり、フェライトの平均結晶粒径を10μm以下とするためには累積圧下量を30%以上とすることが好ましい。一方、累積圧下量が65%よりも大きいと、r値を低下させる集合組織を形成する。したがって、累積圧下量の上限を65%以下とする。
【0047】
また、Ar3[℃]以下で圧延すると、圧延中にr値に有害な{112}<110>方位の集合組織が発達し、加工歪みを導入されたフェライトが残存して靭性および伸びが低下するため、Ar3超の温度域で熱間圧延を終了することが必要である。熱間圧延終了温度の上限は特に規定しないが、フェライトの平均結晶粒径を微細化するためには、Ar3+50℃が好ましい。なお、Ar3は、鋼中の化学成分から、各元素の単位を質量%として、次式によって求められる。
Ar3[℃]=921−325×C+33×Si+287×P+40×Al−92×(Mn+Mo+Cu)−46×(Cr+Ni)
また、圧延終了後の冷却速度が20℃/sよりも速くなると、r値を低下させる集合組織の発達が助長され、ベイナイトおよびマルテンサイトを生じて伸びが低下する。したがって、集合組織の発達を抑制するためには、圧延終了後の冷却速度を20℃/s以下にする必要がある。下限は特に規定しないが、強度を確保するためには5℃/s以上が好ましい。
【0048】
冷却の停止温度は、500℃超では靭性を大きく劣化させるマルテンサイトとオーステナイトの混合組織が多量に生成するため、500℃以下に限定する。冷却の停止温度の下限は特に問わない。停止温度の低下によって強度が上昇するため、必要強度にあわせて冷却停止温度を決定すれば良く、鋼板の形状の観点から200℃以上が好ましい。その後の冷却は放冷すれば良い。
【0049】
造管は冷間加工により成形し、端部をシーム溶接によって接合する製造プロセスで行う。冷間加工はプレス加工、ロール成形の何れでも良く、その組み合わせても構わないが、C成形、U成形およびO成形を行い、端部をシーム溶接して拡管するUOE方式による鋼管製造プロセスが好ましい。シーム溶接は、MAGアーク溶接、サブマージアーク溶接、レーザ溶接、電子ビーム溶接の何れでも良く、その組み合わせでも良い。
【0050】
【実施例】
表2に示す成分の鋼を溶製し、スラブを1050〜1250℃に加熱後、表3に示す条件で熱間圧延し、16mm厚さの鋼板を製造し、UOE鋼管製造プロセスによって外径690mm、肉厚16mmの鋼管に造管した。鋼管の肉厚中心部より小片を切り出し、管軸方向に平行な断面を鏡面研磨後、ナイタールエッチングにより現出した組織を観察し、フェライトとベイナイトおよびマルテンサイトを区別して、任意の10視野におけるフェライトの平均結晶粒径をJIS G 0552に準じて切断法によって求め、平均値をフェライトの平均結晶粒径とした。
【0051】
鋼管からJIS Z2201に準じて12C号円弧状引張試験片を採取し、JIS Z 2241に準じて引張特性を測定した。管軸方向のr値の測定は、鋼管の溶接部から周方向に90°、180°、270°の位置からJIS12C号円弧状引張試験片を採取して、平均値として求めた。管軸方向のr値の測定は、以下の方法によって行った。試験片平行部の中央に管軸方向および周方向の歪みを測定する歪みゲージを貼り、管軸方向に3〜7%の引張歪みを導入して管軸方向と周方向の歪みを測定し、体積が一定と仮定して肉厚方向の歪みを算出した。この周方向の歪みと肉厚方向の歪みの比を求め、その比をr値とした。
【0052】
各鋼材の耐座屈特性は、4点曲げ試験によって評価した。試験対のサイズは、肉厚16mm、外径690mm、長さ3000mmとし、押しつけアーム部間の距離を1000mmとした。試験体中央の曲げ外側部に歪みゲージを貼って管軸方向の歪みを測定しながら、アーム部に荷重を負荷し、最大荷重までの歪みεmを座屈歪みとして求め、耐座屈特性の指標とした。
【0053】
靭性の測定は、鋼管の肉厚中央部から周方向を長手としてJIS Z 2202に準じて2mmVノッチのシャルピー試験片を採取し、JIS Z 2242に準じて0℃でのシャルピー試験を行い、吸収エネルギーを測定した。
【0054】
表4に得られた結果を示す。本発明に従って製造した試験No.1〜15の鋼管は、一様伸びおよびr値が良好であり、従来鋼管と比較して座屈歪みεmが1.4以上と高い。
【0055】
一方、試験No.16、19、23〜25および27〜30は、再結晶温度以上の圧延の条件と再結晶温度未満での圧延および/または熱間圧延後の冷却の条件が本発明の範囲外であるため、フェライトの平均結晶粒径およびr値が低下し、靭性および座屈歪みがともに損なわれた比較例である。
【0056】
再結晶温度以上での圧延の条件については、試験No.23および28は累積圧下量が小さく、試験No.19および29は、1パスあたりの圧下量の下限が小さく、試験No.27はパス間時間が長く、試験No.30は、圧延スケジュールにおける保持時間が長い。また、試験No.16は圧延スケジュールの合計圧下量および累積圧下量が少ない。試験No.24はパス間時間が長く、累積圧下量が小さい。試験No.25は、圧延スケジュールの合計圧下量が少なく、圧延スケジュールにおける保持時間が長く、累積圧下量が小さい。
【0057】
再結晶温度未満での圧延および熱間圧延後の冷却速度については、試験No.16、19、23、25、26、28および30は再結晶温度未満での累積圧下量が多く、試験No.27は熱間圧延終了後の冷却速度が速く、試験No.28は、熱間圧延後の冷却の終了温度が高い。また、試験No.24および29は、再結晶温度未満での圧延の累積圧下量が大きく、熱間圧延後の冷却速度も速い。
【0058】
試験No.17、18および26は、再結晶温度未満での圧延および/または熱間圧延後の冷却速度が本発明の範囲外であったため、r値が低下し、座屈歪みが低下した比較例である。試験No.17および18は、ともに熱間圧延終了後の冷却速度が速く、試験No.17は、累積圧下量も本発明の範囲より小さい。試験No.26は、累積圧下量が本発明の範囲よりも小さい。
【0059】
試験No.20〜22は再結晶温度以上での圧延の条件が本発明の範囲外であり、フェライトの平均結晶粒径が粗大化して靭性が低下した比較例である。No.20は圧延スケジュールにおける保持時間が本発明の範囲よりも長く、No.21は1パスあたりの圧下量の下限が本発明の範囲よりも小さく、No.22はパス間時間が長い。
【0060】
【表2】
【0061】
【表3】
【0062】
【表4】
【0063】
【図面の簡単な説明】
【図1】座屈歪みに及ぼす管軸方向r値の影響を示す図。
【発明に属する技術分野】
本発明は、局所座屈特性等の変形特性に優れ、かつ低温靭性に優れた高強度鋼管に関するものである。具体的には、ラインパイプ等の配管、あるいは、鋼管柱、鋼管杭等の構造用鋼管に使用される鋼管で、特に圧縮および曲げにおける耐座屈特性に優れた鋼管に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
原油・天然ガスを輸送するラインパイプ、あるいは、柱や杭に使用される構造用鋼管は、これまで主として高強度化および高靱化が求められてきたが、最近になって、耐震特性等の観点から強度および靭性に加えて変形特性に優れた高強度鋼管の開発ニーズが高まっている。
【0003】
ラインパイプや、鋼管柱、鋼管杭は、地震等の変形で主として圧縮あるいは曲げ変形による局部的な座屈によって破壊する。これまでに耐局部座屈特性の向上には、低降伏化が有効であることが報告されている。また、例えば、特許文献1には、ミクロ組織をフェライトとマルテンサイトあるいはベイナイトを含む硬質第二相の複合組織とし、加工硬化指数(以下、n値)を高くした鋼管およびその製造方法が開示されている。しかしながら、この方法は低温の二相域で圧延するものであり、フェライトと硬質第二相が層状に形成されるため、セパレーションが発生して靭性が劣化するという問題があった。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−279700号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ラインパイプ等の配管、あるいは、鋼管柱、鋼管杭等の構造用鋼管に好適な、圧縮および曲げによる耐座屈特性に優れた高強度鋼管およびその製造方法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、n値以外の材質因子が耐座屈特性に及ぼす影響について詳細な検討を行った。その結果、耐座屈特性が管軸方向のランクフォード値(以下、r値)とともに向上することを見出した。さらに検討を進めて圧延条件を適正化し、低温靭性を損なうことなく管軸方向のr値を高めることに成功し、耐座屈特性に優れた高強度鋼管およびその製造方法を発明するに至った。本発明の要旨は、以下の通りである。
(1)質量%で、C:0.02%〜0.2%、Si:0.001%〜0.5%、Mn:0.5%〜3.0%、Al:0.002%〜0.1%、N:0.01%以下、P:0.02%以下、S:0.005%以下を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、フェライトの平均結晶粒径が10μm以下であり、残部が残留オーステナイト、ベイナイトおよびマルテンサイトからなるミクロ組織を有し、管の軸方向のr値が0.8より大きく、肉厚が6mm以上、外径が100mm以上であることを特徴とする耐座屈特性に優れた高強度鋼管。
(2)質量%で、さらに、Nb:0.1%以下、V:0.1%以下、Ti:0.1%以下の1種または2種以上を含有することを特徴とする(1)に記載の耐座屈特性に優れた高強度鋼管。
(3)質量%で、さらに、Mo:1.0%以下、Cu:2.0%以下、Ni:2.0%以下、Cr:1.0%以下、Co:3.0%以下、W:2.0%以下の1種または2種以上を含有することを特徴とする(1)または(2)に記載の耐座屈特性に優れた高強度鋼管。
(4)質量%で、さらに、B:0.005%以下を含有することを特徴とすることを特徴とする(1)〜(3)の何れか1項に記載の耐座屈特性に優れた高強度鋼管。
(5)質量%で、さらに、Ca:0.01%以下、Mg:0.1%以下、REM:0.02%以下の1種または2種以上を含有することを特徴とする(1)〜(4)の何れか1項に記載の耐座屈特性に優れた高強度鋼管。
(6)管の軸方向の一様伸びU.El[%]と引張強度TS[MPa]が下記(1)式を満たすことを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の耐座屈特性に優れた高強度鋼管。
TS+55×U.El>1085 ・・・ (1)
(7)(1)〜(5)の何れか1項に記載の成分からなるスラブを1050℃以上に加熱後、再結晶温度以上で、1パスあたりの圧下量が8%以上、パス間時間が3秒以下、圧下量の合計が32%以上、圧延後の保持時間が10〜300秒である圧延スケジュールを2回以上、累積圧下量が65%以上になるまで行い、さらにAr3[℃]以上再結晶温度未満で累積圧下量が65%以下の圧延を行い、20℃/s以下で500℃以下まで冷却し、さらに室温まで放冷した鋼板を、冷間成形で中空形状としてシーム溶接を施すことを特徴とする耐座屈特性に優れた高強度鋼管の製造方法。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明者は、靭性等の特性を損なうことなく耐座屈特性を向上させる手段について検討するため、以下の実験を行った。表1に示す材質を有する、外径315mm、肉厚7mm、長さ3000mmの鋼管を試験材とし、4点曲げ試験を実施した。アーム間の距離を1000mmとし、試験体中央の曲げ外側部に貼った歪みゲージからの歪みとアームに負荷した荷重を測定した。
【0008】
【表1】
【0009】
最大荷重を示す歪みεmを耐局部座屈特性として表し、管軸方向のr値との関係を示したものが図1である。図1に示したように、管軸方向のr値を向上させると耐座屈特性が高くなることを新たな知見として得た。
【0010】
なお、引張強度の測定は、JIS Z 2201の円弧状試験片JIS12C号を採取して、JIS Z 2241に準拠して行った。管軸方向のr値は、以下のようにして測定した。鋼管から引張試験と同様に管軸方向を長手としてJIS12C号試験片を採取し、試験片中央部に管軸方向およびそれに直交する周方向に歪みゲージを貼った。引張試験機で管軸方向に7%引張り、歪みゲージにより管軸方向および周方向の歪みを測定した。その測定値から、体積が一定であると仮定して肉厚方向の歪みを算出し、幅方向の歪みと肉厚方向歪みの比を管軸方向のr値とした。
【0011】
また、本発明の鋼管の使用対象となるラインパイプ等の配管、あるいは、鋼管柱、鋼管杭等に要求される靭性は使用環境によって異なるが、0℃でのシャルピー吸収エネルギー200J以上が必要である。靭性は結晶粒径の微細化によって向上するが、上記の要求を満足するには、フェライトの平均結晶粒径を10μm以下にすれば良いことがわかった。
【0012】
従来、高強度鋼管の製造において、結晶粒を微細化するためには、再結晶温度未満の未再結晶温度域で累積圧下率50%以上の熱間圧延を行い、その後の加速冷却していた。しかし、この場合は、管軸方向のr値を低下させる{112}<110>を主方位とした集合組織が発達するため、r値は0.8より小さくなる。
【0013】
そこで、本発明者は、再結晶温度以上で圧延と保持を繰り返すことにより再結晶させてオーステナイトを微細化し、その後、再結晶温度未満での圧延および冷却を制御することにより、r値に有害な集合組織を発達させることなくフェライトの平均結晶粒径を微細化する製造方法を指向した。
【0014】
再結晶を利用してオーステナイト粒径を細かくするためには、再結晶温度以上で再結晶するために必要な歪みをオーステナイトに蓄積して保持することが必要である。しかしながら、圧延温度が高く、圧延で導入された歪みが回復するため、再結晶に必要な歪みを蓄積するには、1パスあたりの圧下量を大きく、パス間時間を短くし、累積圧下量を制御しなければならない。
【0015】
本発明者は、再結晶挙動に及ぼす1パスあたりの圧下量およびパス間時間について詳細に調査した。調査方法は以下の通り行った。直径10mm、長さ10mmの円柱試験片に熱電対を取り付け、誘導加熱とガス冷却によって温度を制御し、長さ方向に歪みを加える圧縮試験を行った。試験片を1000℃〜1300℃の任意の温度に加熱した後、再結晶温度域の任意の温度で、1パスあたりの圧下量、パス間時間および合計圧下量を変化させた加工を行い、直ちに急冷した。その後、試験片断面をピクリン酸を用いたエッチングによって旧オーステナイト粒界を現出させ、オーステナイトの再結晶挙動を観察した。その結果、1パスあたりの圧下量が8%以下、パス間時間3秒以上、合計圧下量32%以下では歪みが回復し、再結晶が生じないことがわかった。
【0016】
このような検討をさらに進め、1パス当たりの圧下量、パス間時間および合計圧下量を制御した圧延を行い、再結晶させるための保持時間について検討を行った。その結果、圧延によって導入した歪みによりオーステナイトの再結晶が進行するのに必要な時間は、10秒以上であることがわかった。さらに、最終的にフェライトの平均結晶粒径を10μm以下にするためには、1パス当たりの圧下量、パス間時間、合計圧下量および圧延後の保持時間を制御した圧延スケジュールを2回以上行い、再結晶温度以上での圧延の累積圧下量を65%以上とする必要があることがわかった。
【0017】
また、再結晶温度未満での圧延により、フェライトの平均結晶粒径が著しく微細化するが、累積圧下量を大きくすると{112}<110>方位が形成してr値が低下する。そこで、再結晶温度未満の温度域において、累積圧下量によるフェライトの平均結晶粒径および集合組織の変化について検討を行った。
【0018】
再結晶温度以上の圧延条件の検討と同様に、温度と圧下量を変化させて加工を行った後、フェライトの平均結晶粒径を測定した。なおミクロ組織はフェライトと残留オーステナイトを含むベイナイトおよびマルテンサイトからなるものであり、フェライトの平均結晶粒径とは、フェライトとベイナイトおよびマルテンサイトと区別し、フェライトのみの結晶粒径をJIS G 0552に準じて切断法によって測定したものである。
【0019】
さらに、集合組織をX線回折法によって測定したが、その結果、{112}<110>方位を抑制するためには、累積圧下量を65%以下に制限する必要があることがわかった。さらに、圧延後の冷速を遅くすることが{112}<110>方位の集積の抑制に効果的であり、20℃/s以下にすることによってr値の低下を防止できることがわかった。
【0020】
以上の知見に基づいて、再結晶温度以上での圧延スケジュールを厳密に制御して、フェライトの平均結晶粒径を微細化し、再結晶温度未満での圧延の累積圧下量を制御して、r値を低下させる{112}<110>方位を抑制し、靭性を損なうことなく管軸方向のr値を0.8以上にすることに成功した。
【0021】
以下、成分含有量の規定した理由について述べる。
【0022】
C量は、0.02〜0.20%以下に限定する。Cは高強度化には最も有効な元素であり、十分な強度を得るためには0.02%以上は必要である。しかしながら、過度に多くなると、溶接性が悪くなることから上限を0.20%以下とした。
【0023】
Siは脱酸あるいは強度向上に有効な元素である。その効果を得るためには0.001%以上必要であるが、0.5%以上含有すると溶接熱影響部の靭性が著しく劣化する。したがって、Siの添加量を0.001〜0.5%の範囲とした。
【0024】
Mnは強度上昇に有効な元素であり、十分な強度向上を得るためには0.5%以上の添加が必要である。しかしながら、3.0%よりも多く含有すると伸びが確保できなくなる。したがって、Mnの添加量を0.5〜3.0%の範囲とした。
【0025】
PおよびSは不純物であり、Pは粒界に偏析し、また、SはMnSとして析出する。PおよびSはそれぞれ、0.02%超および0.005%超を含有すると靭性を劣化させるので、PおよびSの上限は、それぞれ0.02%以下、0.005%以下とする。
【0026】
Alは強力な脱酸元素であり、組織微細化にも寄与するが、この効果を得るには、0.002以上必要である。ただし、0.1%超となると溶接熱影響部の靭性を劣化させる。したがってAlの添加量を、0.002〜0.1%の範囲とした。
【0027】
Nは強化元素として有効であるが、この効果を得るには0.002%以上添加することが好ましい。一方、0.01%超のNを含有すると固溶N量が多くなり、伸びを著しく劣化させるので、上限を0.01%以下とした。
【0028】
さらに必要に応じて、Nb、V、Ti、Mo、Cu、Ni、Cr、Co、W、B、Ca、REM、Mgの1種または2種以上を含有しても良い。
【0029】
Nb、V、Tiは炭窒化物を形成し、析出強化として寄与する。しかしながら、それぞれ0.1%よりも多く含有すると粗大な析出物として存在し靭性を劣化させることから、それぞれの上限を0.1%以下とすることが好ましい。下限は、特に限定しないが、析出強化を発揮するためそれぞれ0.01%以上とすることが好ましい。
【0030】
Mo、Cu、Ni、Cr、Coは焼き入れ性を高め、高強度化に寄与する。この効果はMo、Cu、Ni、Cr、Coが、それぞれ、0.05%未満では不十分であるため、0.05%以上を下限とすることが好ましい。しかし、添加元素が多すぎると、経済性だけでなく、溶接熱影響部の靭性あるいは現地溶接性を劣化させるので、Mo、Cu、Ni、Cr、Coの上限を、それぞれ、1.0%、2.0%、2.0%、1.0%、3.0%とすることが好ましい。
【0031】
Wは固溶強化元素として高強度化に有効であるが、この効果はWが0.1%未満では不十分であるため、0.1%以上を下限とすることが好ましい。一方、2.0%よりも過度に添加すると伸びを劣化させるので、上限を2.0%以下とすることが好ましい。
【0032】
Bは少量で焼き入れ性を大幅に高め強化に寄与する。この効果はBが0.0001%未満では不十分であるため、0.0001%以上を下限とすることが好ましい。しかしながら、0.005%よりも多量に添加すると、伸びの劣化、溶接熱影響部の硬化を招くので、上限を0.005%以下とすることが好ましい。
【0033】
Ca、REMは硫化物の形態を制御し、靭性の向上に寄与する。硫化物の形態制御のためには、それぞれ0.0001%以上が必要であり、下限は0.0001%以上とすることが好ましい。しかしながらCaおよびREMを、それぞれ、0.01%および0.02%よりも過度に添加すると、大型の介在物として存在し、かえって靭性を劣化させるので、上限をそれぞれ0.01%および0.02%以下とすることが好ましい。
【0034】
Mgは巨力な脱酸元素であり、微細な酸化物として分散した場合、溶接熱影響部の靭性向上に大きく寄与する。この効果はMgが 0.0001%未満では不十分であるため0.0001%以上を下限とすることが好ましい。しかしながら、0.1%超を添加すると粗大な酸化物を生じて靭性を劣化させるので、上限を0.1%とすることが好ましい。
【0035】
フェライトの平均結晶粒径を小さくすると靭性が向上するが、0℃でのシャルピー吸収エネルギーを200J以上とするには、フェライトの結晶粒径を10μm以下にする必要がある。細粒になるほど靭性は向上するためフェライトの平均結晶粒径の下限は限定しないが、現状の技術では1μm以下にすることは困難である。
【0036】
なおフェライトの平均結晶粒径とは、フェライトと残留オーステナイトを含むベイナイトおよびマルテンサイトからなるミクロ組織において、フェライトのみの平均結晶粒径である。フェライトの平均結晶粒径は、鋼管の肉厚中心部より小片を切り出し、管軸方向に平行な断面を鏡面研磨後、エッチングして現出した組織を観察し、フェライトとベイナイトおよびマルテンサイトを区別して、任意の10視野におけるフェライトの平均結晶粒径をJIS G 0552に準じて切断法により測定することができる。
【0037】
管軸方向のr値は、本発明において最も重要な材質であり、耐座屈特性の向上に効果がある。しかし、r値が0.8より小さいと、この効果が不十分であるため、0.8を下限とする。上限は特に規定しないが、現状の鋼板製造設備の制約上、1.5が限界である。管軸方向のr値は、鋼管から管軸方向を長手として引張試験片を採取して均一変形する範囲で引張歪みを導入し、管軸方向の歪みと肉厚方向の歪みを測定して、その比として求めることができる。例えば、管軸方向を長手とする円弧状試験片を採取してその中央部に管軸方向およびそれに直交する周方向に歪みゲージを貼り、引張試験機で管軸方向に5〜15%引張り、歪みゲージにより管軸方向および周方向の歪みを測定し、その測定値から体積が一定であると仮定して肉厚方向の歪みを算出し、幅方向の歪みと肉厚方向歪みの比を管軸方向のr値として算出することができる。
【0038】
また、本発明鋼管の用途であるラインパイプ、鋼管杭および鋼管柱などが構造物として十分な強度を有するために、肉厚が6mm以上、外径が100mm以上であることが必要である。なお現状の技術では、肉厚および外形をそれぞれ50mm超および1200mm超とすることは困難である。
耐座屈特性を向上させるためには、均一伸びを大きくすることが好ましい。高強度化に伴い、均一伸びは減少するが、耐座屈特性を向上させるには、引張強度TSと均一伸びU.Elの間に、TS+55×U.El>1085の関係が成り立つことが好ましい。これは、鋼管のTSを縦軸、U.Elを横軸にプロットしたところ、TS=−55×U.El+1085の直線よりも上の範囲において座屈歪みが極めて良好になることから規定したものである。
【0039】
つぎに製造方法について述べる。
【0040】
圧延前の再加熱温度は、再結晶温度以上で累積圧下量が65%以上となる十分な熱間圧延を行うために、熱延時の冷却を考慮して1050℃以上にする必要がある。上限温度は特に規定しないが、1250℃を超えるとオーステナイト粒径が著しく粗大化するため、1250℃以下が好ましい。
【0041】
フェライトの平均結晶粒径を細かくするためには、再結晶温度以上での1パスあたりの圧下量、パス間時間、圧下量の合計および圧延後の保持時間を制御した圧延スケジュールを2回以上行う必要がある。
【0042】
まず、1パスあたりの圧下量は、8%未満では歪みが回復して再結晶を生じ難いため、8%以上が必要である。上限は特に規定しないが、設備制約上の上限は50%である。
【0043】
パス間時間は、3秒超では歪みの回復が急速に進み、再結晶を生じ難いため、3秒以下に制限する。下限は特に限定しないが、0.1秒よりも短くすることは現状の技術では困難である。
【0044】
圧下量の合計は、32%未満では歪みが回復して再結晶しないため、32%以上とすること必要である。上限は特に規定しないが、生産効率の観点から60%を上限にすることが好ましい。
【0045】
このような圧延後、十分に再結晶させるための保持時間が必要である。その保持時間が10秒未満であると再結晶が不十分であるため、10秒以上を下限とする。一方、300秒超保持すると粒成長して粒が粗大化するため、圧延後の保持時間を10〜300秒の範囲とする。なお、この保持時間内に急激な温度低下が生じることは好ましくない。通常は、放冷すれば良いが、保熱炉、保熱カバーによって温度低下を抑制しても構わない。
【0046】
さらに、この圧延スケジュールを2回以上繰り返すが、フェライトの平均結晶粒径を10μm以下にするためには、再結晶温度以上での圧延を累積圧下量が65%以上になるまで行うことが必要である。上限は特に規定しないが、設備制約上95%を上限にすることが好ましい。圧延スケジュールの繰り返し回数は、特に規定しないが、生産性の観点から10回を上限にすることが好ましい。再結晶温度未満での圧延はフェライトを著しく微細化させる効果があり、フェライトの平均結晶粒径を10μm以下とするためには累積圧下量を30%以上とすることが好ましい。一方、累積圧下量が65%よりも大きいと、r値を低下させる集合組織を形成する。したがって、累積圧下量の上限を65%以下とする。
【0047】
また、Ar3[℃]以下で圧延すると、圧延中にr値に有害な{112}<110>方位の集合組織が発達し、加工歪みを導入されたフェライトが残存して靭性および伸びが低下するため、Ar3超の温度域で熱間圧延を終了することが必要である。熱間圧延終了温度の上限は特に規定しないが、フェライトの平均結晶粒径を微細化するためには、Ar3+50℃が好ましい。なお、Ar3は、鋼中の化学成分から、各元素の単位を質量%として、次式によって求められる。
Ar3[℃]=921−325×C+33×Si+287×P+40×Al−92×(Mn+Mo+Cu)−46×(Cr+Ni)
また、圧延終了後の冷却速度が20℃/sよりも速くなると、r値を低下させる集合組織の発達が助長され、ベイナイトおよびマルテンサイトを生じて伸びが低下する。したがって、集合組織の発達を抑制するためには、圧延終了後の冷却速度を20℃/s以下にする必要がある。下限は特に規定しないが、強度を確保するためには5℃/s以上が好ましい。
【0048】
冷却の停止温度は、500℃超では靭性を大きく劣化させるマルテンサイトとオーステナイトの混合組織が多量に生成するため、500℃以下に限定する。冷却の停止温度の下限は特に問わない。停止温度の低下によって強度が上昇するため、必要強度にあわせて冷却停止温度を決定すれば良く、鋼板の形状の観点から200℃以上が好ましい。その後の冷却は放冷すれば良い。
【0049】
造管は冷間加工により成形し、端部をシーム溶接によって接合する製造プロセスで行う。冷間加工はプレス加工、ロール成形の何れでも良く、その組み合わせても構わないが、C成形、U成形およびO成形を行い、端部をシーム溶接して拡管するUOE方式による鋼管製造プロセスが好ましい。シーム溶接は、MAGアーク溶接、サブマージアーク溶接、レーザ溶接、電子ビーム溶接の何れでも良く、その組み合わせでも良い。
【0050】
【実施例】
表2に示す成分の鋼を溶製し、スラブを1050〜1250℃に加熱後、表3に示す条件で熱間圧延し、16mm厚さの鋼板を製造し、UOE鋼管製造プロセスによって外径690mm、肉厚16mmの鋼管に造管した。鋼管の肉厚中心部より小片を切り出し、管軸方向に平行な断面を鏡面研磨後、ナイタールエッチングにより現出した組織を観察し、フェライトとベイナイトおよびマルテンサイトを区別して、任意の10視野におけるフェライトの平均結晶粒径をJIS G 0552に準じて切断法によって求め、平均値をフェライトの平均結晶粒径とした。
【0051】
鋼管からJIS Z2201に準じて12C号円弧状引張試験片を採取し、JIS Z 2241に準じて引張特性を測定した。管軸方向のr値の測定は、鋼管の溶接部から周方向に90°、180°、270°の位置からJIS12C号円弧状引張試験片を採取して、平均値として求めた。管軸方向のr値の測定は、以下の方法によって行った。試験片平行部の中央に管軸方向および周方向の歪みを測定する歪みゲージを貼り、管軸方向に3〜7%の引張歪みを導入して管軸方向と周方向の歪みを測定し、体積が一定と仮定して肉厚方向の歪みを算出した。この周方向の歪みと肉厚方向の歪みの比を求め、その比をr値とした。
【0052】
各鋼材の耐座屈特性は、4点曲げ試験によって評価した。試験対のサイズは、肉厚16mm、外径690mm、長さ3000mmとし、押しつけアーム部間の距離を1000mmとした。試験体中央の曲げ外側部に歪みゲージを貼って管軸方向の歪みを測定しながら、アーム部に荷重を負荷し、最大荷重までの歪みεmを座屈歪みとして求め、耐座屈特性の指標とした。
【0053】
靭性の測定は、鋼管の肉厚中央部から周方向を長手としてJIS Z 2202に準じて2mmVノッチのシャルピー試験片を採取し、JIS Z 2242に準じて0℃でのシャルピー試験を行い、吸収エネルギーを測定した。
【0054】
表4に得られた結果を示す。本発明に従って製造した試験No.1〜15の鋼管は、一様伸びおよびr値が良好であり、従来鋼管と比較して座屈歪みεmが1.4以上と高い。
【0055】
一方、試験No.16、19、23〜25および27〜30は、再結晶温度以上の圧延の条件と再結晶温度未満での圧延および/または熱間圧延後の冷却の条件が本発明の範囲外であるため、フェライトの平均結晶粒径およびr値が低下し、靭性および座屈歪みがともに損なわれた比較例である。
【0056】
再結晶温度以上での圧延の条件については、試験No.23および28は累積圧下量が小さく、試験No.19および29は、1パスあたりの圧下量の下限が小さく、試験No.27はパス間時間が長く、試験No.30は、圧延スケジュールにおける保持時間が長い。また、試験No.16は圧延スケジュールの合計圧下量および累積圧下量が少ない。試験No.24はパス間時間が長く、累積圧下量が小さい。試験No.25は、圧延スケジュールの合計圧下量が少なく、圧延スケジュールにおける保持時間が長く、累積圧下量が小さい。
【0057】
再結晶温度未満での圧延および熱間圧延後の冷却速度については、試験No.16、19、23、25、26、28および30は再結晶温度未満での累積圧下量が多く、試験No.27は熱間圧延終了後の冷却速度が速く、試験No.28は、熱間圧延後の冷却の終了温度が高い。また、試験No.24および29は、再結晶温度未満での圧延の累積圧下量が大きく、熱間圧延後の冷却速度も速い。
【0058】
試験No.17、18および26は、再結晶温度未満での圧延および/または熱間圧延後の冷却速度が本発明の範囲外であったため、r値が低下し、座屈歪みが低下した比較例である。試験No.17および18は、ともに熱間圧延終了後の冷却速度が速く、試験No.17は、累積圧下量も本発明の範囲より小さい。試験No.26は、累積圧下量が本発明の範囲よりも小さい。
【0059】
試験No.20〜22は再結晶温度以上での圧延の条件が本発明の範囲外であり、フェライトの平均結晶粒径が粗大化して靭性が低下した比較例である。No.20は圧延スケジュールにおける保持時間が本発明の範囲よりも長く、No.21は1パスあたりの圧下量の下限が本発明の範囲よりも小さく、No.22はパス間時間が長い。
【0060】
【表2】
【0061】
【表3】
【0062】
【表4】
【0063】
【図面の簡単な説明】
【図1】座屈歪みに及ぼす管軸方向r値の影響を示す図。
Claims (7)
- 質量%で、
C :0.02%〜0.2%、
Si:0.001%〜0.5%、
Mn:0.5%〜3.0%、
Al:0.002%〜0.1%、
N :0.01%以下、
P :0.02%以下、
S :0.005%以下
を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、フェライトの平均結晶粒径が10μm以下であり、残部が残留オーステナイト、ベイナイトおよびマルテンサイトからなるミクロ組織を有し、管軸方向のr値が0.8以上であり、肉厚が6mm以上、外径が100mm以上であることを特徴とする耐座屈特性に優れた高強度鋼管。 - 質量%で、さらに、Nb:0.1%以下、V:0.1%以下、Ti:0.1%以下の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の耐座屈特性に優れた高強度鋼管。
- 質量%で、さらに、Mo:1.0%以下、Cu:2.0%以下、Ni:2.0%以下、Cr:1.0%以下、Co:3.0%以下、W:2.0%以下の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の耐座屈特性に優れた高強度鋼管。
- 質量%で、さらに、B:0.005%以下を含有することを特徴とすることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の耐座屈特性に優れた高強度鋼管。
- 質量%で、さらに、Ca:0.01%以下、Mg:0.1%以下、REM:0.02%以下の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の耐座屈特性に優れた高強度鋼管。
- 管の軸方向の一様伸びU.El[%]と引張強度TS[MPa]が下記(1)式を満たすことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の耐座屈特性に優れた高強度鋼管。
TS+55×U.El>1085 ・・・ (1) - 請求項1〜5の何れか1項に記載の成分からなるスラブを1050℃以上に加熱後、再結晶温度以上で、1パスあたりの圧下量が8%以上、パス間時間が3秒以下、圧下量の合計が32%以上、圧延後の保持時間が10〜300秒である圧延スケジュールを2回以上、累積圧下量が65%以上になるまで行い、さらにAr3[℃]以上再結晶温度未満で累積圧下量が65%以下の圧延を行い、20℃/s以下で500℃以下まで冷却し、さらに室温まで放冷した鋼板を、冷間成形で中空形状としてシーム溶接を施すことを特徴とする耐座屈特性に優れた高強度鋼管の製造方法。
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