JP2001097939A - ジメチルシアナミド及び1,1,3,3−テトラメチルグアニジンの製造方法 - Google Patents

ジメチルシアナミド及び1,1,3,3−テトラメチルグアニジンの製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 安全でしかも簡単な工程でジメチルシアナミ
ド及びその誘導体の1,1,3,3-テトラメチルグアニジンを
高収率に製造できる方法を提供する。 【解決手段】 塩化シアンの有機溶媒溶液とジメチルア
ミンの水溶液とを混合することにより、塩化シアンとジ
メチルアミンを反応させ、ジメチルシアナミドを合成す
る。この結果得られる反応液より有機溶媒を留去しジメ
チルアミンを加え加熱することで1,1,3,3-テトラメチル
グアニジンを合成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は医薬中間体、化成品
原料等として有用な1,1,3,3,- テトラメチルグアニジン
及びその製造の中間体として重要なジメチルシアナミド
の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来ジメチルシアナミドの製造方法とし
ては特公昭49-48932にあるように水と非混和の有機溶媒
中で塩化シアンとジメチルアミンを反応させる方法、特
開昭55-133352 にあるようにハロゲン化シアンとジメチ
ルアミンを水溶媒中で反応させる方法、特開昭61-28046
3 にあるように水溶媒中で青化ソーダまたは青化カリと
ジメチルアミンに塩素を作用させることでジメチルシア
ナミドを製造する方法等が知られている。また、このよ
うにして得られたジメチルシアナミドは1,1,3,3-テトラ
メチルグアニジンの合成中間体として利用されるが、1,
1,3,3-テトラメチルグアニジンの製造法としては、特公
昭49-48932にあるように水と非混和の有機溶媒中で高温
加圧下にジメチルシアナミドとジメチルアミン塩酸塩を
反応させる方法、特開昭61-280463 や特開昭55-133352
にあるように水溶媒中でジメチルシアナミドとジメチル
アミン、ジメチルアミン塩酸塩を反応させる方法等が知
られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ジメチルシアナミドか
ら1,1,3,3-テトラメチルグアニジンを製造する場合、水
と非混和の有機溶媒を用いる方法は高温加圧条件を要し
装置が複雑になる点や装置の耐食性の点で問題があり、
収率的にも満足のゆくものではない。したがって、ジメ
チルシアナミドから1,1,3,3-テトラメチルグアニジンを
製造する場合、特開昭55-133352 にあるように水溶媒中
での反応が好ましい。
【0004】このような観点では、特公昭49-48932のよ
うに水と非混和の有機溶媒中でジメチルシアナミドを合
成する方法は反応時にジメチルアミン塩酸塩等の固体が
析出する点と、水系溶媒で1,1,3,3-テトラメチルグアニ
ジンを合成するには溶媒を変換しなければならない点で
問題がある。
【0005】一方、比較例として後述するように塩化シ
アン水溶液とジメチルアミン水溶液とを用いた場合の反
応の収率は満足いくものではない。また、特開昭55-133
352の実施例3ではジメチルアミン水溶液中に塩化シア
ンをガスとしてフィードする方法で最終的な1,1,3,3-テ
トラメチルグアニジン収率が85.1mol%と低い値であるこ
とが示されている。これは主に中間体のジメチルシアナ
ミドの収率が低かったためと考えられる。
【0006】特開昭61-280463 で示された方法では、ジ
メチルシアナミドの水溶液が生成するので水溶媒中での
1,1,3,3-テトラメチルグアニジン製造に好都合である
が、還元性の有機物を含む溶液中に酸化剤である塩素を
吹き込む反応であり、後述のように筆者らの追試によれ
ば発火を起こす場合があり、危険性の点で問題があり、
操作も複雑である。本発明の目的は、ジメチルシアナミ
ドの製造に際して、工程が簡単で収率が高く危険性のな
い製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、塩化シア
ンの水非混和有機溶媒溶液とジメチルアミンの水溶液を
混合することにより、塩化シアンとジメチルアミンとを
反応させることでジメチルシアナミドを安全かつ高収率
に、固体析出のない扱いやすい条件で得られることを見
出した。即ち、本発明は、塩化シアンの水非混和有機溶
媒溶液とジメチルアミンの水溶液とを混合することによ
り、塩化シアンとジメチルアミンとを反応させるジメチ
ルシアナミドの製造方法に関する。本発明を実施するこ
とにより得られる合成液は、有機溶媒を留去することで
容易に1,1,3,3-テトラメチルグアニジンの合成原料とし
て利用できる。
【0008】これまで塩化シアンを水の存在下で反応さ
せてジメチルシアナミドを合成する方法は、塩化シアン
の副反応により収率が低下するためにいずれの文献でも
良好な収率が得られていない。水中で高収率にジメチル
シアナミドを合成する方法としては、特開昭61-280463
に示されるpH調整下に塩素を吹き込むという煩雑で微妙
な制御を必要とする方法のみであった。このように水が
存在する系でのジメチルシアナミド合成は、収率が低い
か操作が複雑になる問題点を避けられなかったが、塩化
シアンの水非混和有機溶媒溶液とジメチルアミンの水溶
液を混合することにより塩化シアンとジメチルアミンと
を反応させることで、特に複雑な操作や制御の必要なし
に高い収率が得られるようになった。
【0009】このようにして得られたジメチルシアナミ
ドを含む合成液からは、有機溶媒を留去し、ジメチルア
ミンを添加し加熱することで容易に1,1,3,3-テトラメチ
ルグアニジン塩酸塩が合成できる。また、この1,1,3,3-
テトラメチルグアニジン塩酸塩は水酸化ナトリウム、水
酸化カリウム等のアルカリにより塩酸を中和した後に抽
出、遊離、蒸留等の通常の操作に従って1,1,3,3-テトラ
メチルグアニジンが得られる。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明の反応では塩化シアン1モ
ルとジメチルアミン1モルが反応し、ジメチルシアナミ
ド1モルが生成する。このとき同時に発生する塩酸を中
和するために水酸化ナトリウム、ジメチルアミン等の塩
基1モルも必要で、これら塩基の塩酸塩が生成する。通
常ジメチルアミンを塩基として用い、塩化シアン1モル
に対してジメチルアミン2モルで反応が完結する。
【0011】塩化シアンとジメチルアミンの量比はこの
範囲をはずれても問題ないが、余剰分は反応せずに生成
液中に残ることになる。毒性と腐食性の高い塩化シアン
が残留することは取り扱い上問題が多く、ジメチルアミ
ンを過剰にして塩化シアンの残留を防ぐことが好まし
い。しかし、ジメチルアミンが大過剰であると次工程で
1,1,3,3-テトラメチルグアニジンを合成するために有機
溶媒を留去する場合にジメチルアミンも留出し溶媒と分
離する必要が生ずる。したがって、塩化シアンとジメチ
ルアミンの最終的な量比は塩化シアン1モルに対してジ
メチルアミン2から2.2モル程度が好ましい。
【0012】塩化シアンの水非混和有機溶媒溶液とジメ
チルアミンの水溶液の混合の形態としては、(a) ジメチ
ルアミン水溶液中に塩化シアン水非混和有機溶媒溶液を
加える。(b) 塩化シアン水非混和有機溶媒溶液とジメチ
ルアミン水溶液を流通型反応器で反応が完結する量比で
混合する。(c) 塩化シアン水非混和有機溶媒溶液中にジ
メチルアミン水溶液を加える、のいずれの方法でもかま
わない。水非混和有機溶媒溶液中の塩化シアンの濃度
は、好ましくは10から30重量%であり、ジメチルアミン
水溶液中のジメチルアミンの濃度は、好ましくは20から
60重量%である。
【0013】反応温度が高すぎると塩化シアンまたはジ
メチルアミンが揮発したり、副反応がおこるといった問
題がおこる。反応温度は50℃以下が好ましく、0から30
℃の範囲がさらに好ましい。
【0014】塩化シアンを溶解する水非混和有機溶媒
は、後に1,1,3,3-テトラメチルグアニジンを合成する際
に有機溶媒のみを留去する必要があるために、水よりも
沸点が低いものが好ましい。このような溶媒としては塩
化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ベンゼン、シ
クロヘキサン等があげられる。特に塩化メチレンが好適
である。
【0015】ジメチルシアナミド合成液中のジメチルシ
アナミドは通常単離されず、溶液のままで次の1,1,3,3-
テトラメチルグアニジン塩酸塩の合成に供される。しか
しながら、必要に応じて単離する場合は、ジメチルシア
ナミド合成液を静置した際に得られる2層のうち有機溶
媒層を蒸留することにより得られる。また水層にも一部
ジメチルシアナミドは溶解しているが、このジメチルシ
アナミドはジメチルシアナミド合成の際に用いた有機溶
媒に転溶した後、蒸留することにより得られる。
【0016】このようにして得られたジメチルシアナミ
ドの合成液より1,1,3,3-テトラメチルグアニジン塩酸塩
を合成する場合、有機溶媒を蒸留により除去しジメチル
シアナミド合成液中の有機溶媒濃度を1%以下にし、ジ
メチルアミンを添加した後に加熱すればよい。ジメチル
シアナミド合成液より有機溶媒を除去することにより有
機溶媒層に溶解していたジメチルシアナミドは水層に移
行する。このとき添加するジメチルアミンの量はジメチ
ルシアナミドに対して0.05から1.5 モル倍が好ましく、
特に0.1 から1モル倍が好適である。反応温度は60から
100℃で3から10時間が好適な範囲である。
【0017】生成された1,1,3,3-テトラメチルグアニジ
ン塩酸塩は反応溶媒である水を蒸留により除くことによ
り得られる。得られた1,1,3,3-テトラメチルグアニジン
塩酸塩は、例えばアルコール溶媒中で再結晶することに
より精製することが出来る。1,1,3,3-テトラメチルグア
ニジンとして反応液より回収するためには、水酸化ナト
リウム水溶液のようなアルカリ水溶液を、1,1,3,3-テト
ラメチルグアニジン塩酸塩が溶解している反応液に加え
て、1,1,3,3-テトラメチルグアニジンを遊離・塩析させ
る。次に遊離・塩析させて得られる1,1,3,3-テトラメチ
ルグアニジン層を単離して蒸留することで精製1,1,3,3-
テトラメチルグアニジンを得ることができる。あるい
は、反応液にアルカリ水溶液を加えて1,1,3,3-テトラメ
チルグアニジンを遊離・塩析させた後、得られる1,1,3,
3-テトラメチルグアニジン層を単離することなく更にト
ルエンのような有機溶媒を反応液に加えて1,1,3,3-テト
ラメチルグアニジンを抽出する。次に得られる抽出液を
蒸留することで精製1,1,3,3-テトラメチルグアニジンを
得る。
【0018】
【実施例】次に実施例に基づいて本発明を具体的に説明
するが、本発明はこれらに限定されるものではない。 実施例1 滴下漏斗とリフラックスコンデンサーを備えたガラス製
反応器にジメチルアミン29.8g と水29.8g を仕込んでお
く。マグネチックスターラーで撹拌しながら、この反応
器中に滴下漏斗より塩化シアン20.4g を塩化メチレン8
1.5g に溶解したものを約1時間かけて滴下した。反応
器は氷水浴により冷却し、反応温度は15から20℃に保
つ。滴下終了時に反応液中に固体の析出は見られず、無
色透明な2層の液が得られた。得られた反応液より塩化
メチレン層を分離し、さらに水層を20g の塩化メチレン
で抽出した。これら有機層をあわせてガスクロマトグラ
フ分析した結果使用した塩化シアンに対して98.2mol %
の収率でジメチルシアナミドが得られた。
【0019】実施例2 反応温度を40-45 ℃とする以外は実施例1と同様に行っ
た。その結果、96.8mol%の収率でジメチルシアナミドが
得られた。
【0020】実施例3 塩化シアン20.4g を塩化メチレン81.5g に溶解した液
と、ジメチルアミン29.8g を水29.8g に溶解した液をそ
れぞれ別々に、マグネチックスターラーで撹拌できる反
応容積3mlのオーバーフロー型反応器に約1時間かけて
導入した。この際、オーバーフローする液のpHが6から
8の間になるようにそれぞれの導入速度を調整した。ま
た、反応器は氷水浴で冷却し、反応器内温を15から20℃
に保った。オーバーフローで得られた液を実施例1と同
様に分析した結果、98.9mol %の収率でジメチルシアナ
ミドが得られた。
【0021】比較例1 リフラックスコンデンサーとポンプによる試料導入口を
備えたガラス製反応器にジメチルアミン29.8g と水29.8
g を仕込んでおく。マグネチックスターラーで撹拌しな
がら、この反応器中に塩化シアン20.4gと水81.5g と36%
塩酸水溶液1滴を混合したものを約1時間かけてポン
プフィードした。この液の中の塩化シアンは一部遊離
し、2層に分かれているので貯槽中で強く撹拌し、懸濁
液としてフィードを行った。反応器は氷水浴により冷却
し、反応温度は15から20℃に保った。滴下終了時に反応
液中に固体の析出は見られず、無色透明な液が得られ
た。得られた反応液を50g の塩化メチレンで2回抽出し
た。これら有機層をあわせてガスクロマトグラフ分析し
た結果使用した塩化シアンに対して72.1mol %の収率で
ジメチルシアナミドが得られた。
【0022】参考例1 原料液導入管、導入部が液部分に浸るガラス製塩素導入
管、pHメーター、リフラックスコンデンサーを備えたガ
ラス製反応器に40g の水を入れておく。マグネチックス
ターラーで撹拌しながらこの反応器に、青化ソーダ63.7
g 、ジメチルアミン122.9g、水186.6gを混合したものを
4-5ml/分の供給速度でフィードした。このとき、pHが7-
9 の範囲になるように塩素を塩素導入管より供給した。
反応器は氷水浴により冷却し、反応温度は15から20℃に
保った。反応開始から約20分経過時点(フィード液量と
して約120g)で塩素導入管接液部で火花が散るような現
象が見られ液が微黄色に着色した。同様の実験10回中2
回このような発火現象が見られた。どのようなときに発
火がおこるのかは不明である。
【0023】実施例4 実施例1と同様にしてジメチルシアナミドを合成した結
果、塩化シアンに対して98.5mol%の収率でジメチルシア
ナミドが合成された。(ジメチルシアナミドとして0.32
7mol)この反応液より、塩化メチレンを減圧留去し塩化
メチレン濃度を全液重量に対して0.3 重量% とした。こ
の結果得られた液に50重量% ジメチルアミン水溶液29.9
g (ジメチルアミン0.332mol) を加え、リフラックスコ
ンデンサーを備えたガラス製反応器中でマグネチックス
ターラーにより撹拌し70℃で5時間反応させた。得られ
た液に40重量% 水酸化ナトリウム水溶液83.8g を加え、
トルエン100gで抽出しガスクロマトグラフ分析したとこ
ろ1,1,3,3-テトラメチルグアニジンがジメチルシアナミ
ド基準で98.3mol%の収率で得られた。
【0024】実施例5 実施例1と同様にしてジメチルシアナミドを合成した結
果、塩化シアンに対して98.7mol%の収率でジメチルシア
ナミドが合成された。(ジメチルシアナミドとして0.32
8mol)この反応液より、塩化メチレンを減圧留去し塩化
メチレン濃度を全液重量に対して0.3 重量% とした。こ
の結果得られた液に50重量% ジメチルアミン水溶液6.0g
(ジメチルアミン0.066mol) を加え、リフラックスコン
デンサーを備えたガラス製反応器中でマグネチックスタ
ーラーにより撹拌し95℃で5時間反応させた。得られた
液に40重量%水酸化ナトリウム水溶液75.2g を加え、ト
ルエン100gで抽出しガスクロマトグラフ分析したところ
1,1,3,3-テトラメチルグアニジンがジメチルシアナミド
基準で96.7mol%の収率で得られた。
【0025】
【発明の効果】本発明により、安全でしかも簡単な工程
でジメチルシアナミド及びその誘導体の1,1,3,3-テトラ
メチルグアニジンを高収率に製造できる。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 塩化シアンの水非混和有機溶媒溶液とジ
    メチルアミンの水溶液とを混合することにより、塩化シ
    アンとジメチルアミンを反応させることを特徴とするジ
    メチルシアナミドの製造方法。
  2. 【請求項2】 塩化シアンを溶解する水非混和有機溶媒
    が塩化メチレンである請求項1記載のジメチルシアナミ
    ドの製造方法。
  3. 【請求項3】 塩化シアンの水非混和有機溶媒溶液とジ
    メチルアミンの水溶液とを混合することにより塩化シア
    ンとジメチルアミンを反応させジメチルシアナミド合成
    液を得、得られたジメチルシアナミド合成液より水非混
    和有機溶媒を留去し、次いでジメチルアミンを添加した
    後に加熱することを特徴とする1,1,3,3-テトラメチルグ
    アニジンの製造方法。
  4. 【請求項4】 塩化シアンを溶解する水非混和有機溶媒
    が塩化メチレンである請求項3記載のジメチルシアナミ
    ドの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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