JP3556275B2 - シアノ酢酸t−ブチルの精製法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、医農薬中間体および工業製品中間体として用いられるシアノ酢酸t−ブチルの精製法に関する。
【0002】
【従来技術とその問題点】
従来、シアノ酢酸t−ブチルの製造法としては、▲1▼クロロ酢酸t−ブチルとNaCNあるいはKCNを反応させる方法[DE1951032;Helv.Chim.Acta.、42、1214、1222 (1959);J.Am.Chem.Soc.、64、2274(1942)]、▲2▼シアノアセチルハライドとt−ブタノールとN、N−ジメチルアニリンを反応させる方法[J.Chem.Soc.、(1955) 423、426;Org.Synth.、Coll.Vol.5、171]および▲3▼クロロアセトニトリルとCOとt−ブタノールを反応させるアルコキシカルボニレーション法[DE2403483]などが知られている。
【0003】
しかしながら▲1▼の方法では、原料のクロロ酢酸t−ブチルを入手するのが容易でなく、別途煩雑な原料合成をしなくてはならない。さらには、反応に伴って副生するNaClなどの廃棄物が多量に生じてしまう。
【0004】
また▲2▼では、原料のシアノアセチルハライドを得るための工程が必要であり、そのために腐蝕性の高いPClなどを用いる必要があり、装置材質上の制約が大きくなる。さらに、N、N−ジメチルアニリンをシアノアセチルハライドと等量以上必要とし、反応の進行に伴いその塩酸塩を副生し、多量の廃棄物を生じてしまう。
【0005】
▲3▼はCOを高圧で反応させなくてはならず、設備的制約が生じる。
以上のように、従来のシアノ酢酸t−ブチルを製造する方法は種々の欠点を有している。
【0006】
本発明者らは、上述のような問題点を生じることなく、容易に入手可能な原料から簡便な方法で合理的にシアノ酢酸t−ブチルを製造する方法として、一般式NCCHCOOR(式中Rは炭素数1〜3のアルキル基を示す)で表わされる低級シアノ酢酸エステルとt−ブチルアルコールを有機錫系触媒を用いて反応させ、シアノ酢酸t−ブチルとする方法を提供している(特願平5−344466)。この方法を用いた場合、不純物として未反応原料である一般式NCCHCOOR(式中Rは炭素数1〜3のアルキル基を示す)で表わされる低級シアノ酢酸エステルが反応液中に含まれるため、分離精製の必要が生じる。しかし、前記不純物とシアノ酢酸t−ブチルは沸点差が少ないため、蒸留操作による精製は困難である。
【0007】
また、カラムクロマトグラフィーにかけて精製する方法も考えられるが、溶剤、充填剤を多量に使用するためコストがかかり工業的利用価値に乏しい。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上述のような問題点を生じることなく、高純度のシアノ酢酸t−ブチルを効率よく得るための方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意検討したところ、一般式NCCHCOOR(式中Rは炭素数1〜3のアルキル基を示す)で表わされる低級シアノ酢酸エステルを不純物として含有する粗シアノ酢酸t−ブチルをアルカリ水溶液で処理することにより、低級シアノ酢酸エステルが選択的に加水分解されてシアノ酢酸塩となり、分液、抽出、蒸留等の簡便な分離操作により、高純度のシアノ酢酸t−ブチルが得られることを見出して本発明に到達した。
【0010】
すなわち、本発明は、一般式NCCHCOOR(式中Rは炭素数1〜3のアルキル基を示す)で表わされる低級シアノ酢酸エステルを不純物として含有する粗シアノ酢酸t−ブチルをアルカリ水溶液で処理することを特徴とするシアノ酢酸t−ブチルの精製法に関する。
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明に用いるアルカリは、水溶液中でアルカリ性を示すものであれば、有機化合物、無機化合物を問わず、如何なるものでも用いられるが、好ましくはLi,Na,K,Rb等のアルカリ金属の水酸化物や炭酸塩、Be,Mg,Ca,Sr,Ba等のアルカリ土類金属の水酸化物や炭酸塩、アンモニア、炭酸アンモニウム塩、特に好ましくは、Li,Na,K,Rb等のアルカリ金属の水酸化物や炭酸塩、アンモニアを挙げることができる。
【0013】
本発明の実施にあたり、上記アルカリの使用量は、不純物である一般式NCCHCOOR(式中Rは炭素数1〜3のアルキル基を示す)で表わされる低級シアノ酢酸エステルに対して0.4〜10モル%、好ましくは0.6〜2.0モル%、特に好ましくは0.8〜1.2モル%である。
【0014】
アルカリ水溶液の濃度は0.1〜40wt%、好ましくは0.3〜25wt%、特に好ましくは、0.5〜10wt%の範囲である。
【0015】
処理温度は0〜100℃、好ましくは20〜80℃である。
【0016】
処理時間は、不純物量、アルカリ濃度、処理温度等により変動するが、通常1時間以内である。
【0017】
アルカリ水溶液処理時には溶媒を使用しても差し支えない。用いられる溶媒の種類としては、エ−テル類、ケトン類、酢酸エチル、クロロホルム、四塩化炭素、塩化メチレン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン等が挙げられる。
【0018】
本発明の一般的実施様態について説明すると、温度計、滴下漏斗を備えた反応器に不純物を含む粗シアノ酢酸t−ブチルを仕込み撹拌しながらアルカリ水溶液を滴下し、反応させる。
【0019】
反応後、反応液を分液し、有機層を分離、減圧蒸留することにより、目的物であるシアノ酢酸t−ブチルを留出させ取得することができる。
【0020】
分液時、シアノ酢酸t−ブチルは上層に分離するが、水層へのロスを少なくするためには抽剤を使用しても差し支えない。用いられる溶媒の種類としては、エ−テル類、ケトン類、酢酸エチル、クロロホルム、四塩化炭素、塩化メチレン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン等が挙げられる。
【0021】
また、アルカリ水溶液処理後、分液操作を行なわずに水を留出させた後、シアノ酢酸t−ブチルを留出させ取得することもできる。また、水を留出した後に、シアノ酢酸塩の結晶が析出するため、濾過によりこれを除去してから蒸留しても良い。
【0022】
【実施例】
次に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものでない。
【0023】
実施例1
撹拌器、温度計および滴下漏斗を備えたフラスコに、不純物としてシアノ酢酸メチルを26wt%含む粗シアノ酢酸t−ブチル30gを加えた。温度40℃にて2.5wt%NaOH水溶液127g(対シアノ酢酸メチル1モル%)を5分間かけて滴下した後、5分間撹拌した。抽剤として塩化メチレンを加えて有機相を抜き出し、減圧蒸留を行なって、精シアノ酢酸t−ブチル21.8gを回収した。ガスクロマトグラフィーで分析した結果、純度99.8%、回収率98%であった。
【0024】
実施例2
不純物としてシアノ酢酸エチルを26wt%含む粗シアノ酢酸t−ブチル30gを用いた以外は実施例1と同様の操作で精製した。ガスクロマトグラフィーで分析した結果、純度99.8%、回収率95%であった。
【0025】
実施例3〜6
アルカリ、温度を下記のように変えた以外は実施例1と同様の操作で精製した。アルカリ水溶液はすべて2.5wt%の濃度で用いた。結果を表1に示す。
【0026】
【表1】
Figure 0003556275
【0027】
実施例7
不純物としてシアノ酢酸イソプロピル18wt%を含む粗シアノ酢酸t−ブチル30gを用い、抽剤としての塩化メチレンを用いずに分液した以外は実施例1と同様に操作した結果、純度99.8%、回収率90%で精シアノ酢酸t−ブチルを得た。
【0028】
実施例8〜11
不純物としてシアノ酢酸メチルを下記の量含む粗シアノ酢酸t−ブチル30gを用いた以外は実施例1と同様の操作で精製した。結果を表2に示す。
【0029】
【表2】
Figure 0003556275
【0030】
実施例12〜15
アルカリ濃度を下記のように変化させた以外は実施例1と同様の操作で精製した。結果を表3に示す。
【0031】
【表3】
Figure 0003556275
【0032】
実施例16〜17
処理温度を下記のように変化させた以外は、実施例1と同様の操作で精製した。結果を表4に示す。
【0033】
【表4】
Figure 0003556275
【0034】
【発明の効果】
本発明により、安価で入手容易な原料である低級シアノ酢酸エステルとt−ブチルアルコールのエステル交換反応により得られた未反応の低級シアノ酢酸エステルを含むシアノ酢酸t−ブチルの反応液から、高純度のシアノ酢酸t−ブチルを高収率で、また簡便な操作および装置で取得することができる。

Claims (2)

  1. 一般式NCCHCOOR(式中Rは炭素数1〜3のアルキル基を示す)で表わされる低級シアノ酢酸エステルを不純物として含有する粗シアノ酢酸t−ブチルをアルカリ水溶液で処理することを特徴とするシアノ酢酸t−ブチルの精製法。
  2. アルカリが、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩およびアンモニアから選ばれた少なくとも1種である請求項1記載の精製法。
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