JP2001089839A - 鋼構造物の防食構造および防食方法 - Google Patents

鋼構造物の防食構造および防食方法

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JP2001089839A
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clad steel
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Hiroshi Kajiyama
浩志 梶山
Masaharu Honda
正春 本田
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NKK Corp
Nippon Kokan Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 鋼構造物の防食技術において、超長期の耐食
性を維持しつつ施工が容易でかつ安価にできることを特
徴とした鋼構造物の防食構造および防食方法を提供す
る。また、鋼構造物のライフサイクルコスト低減の観点
から、腐食傾向の強い部位にのみ、選択的に耐食性に優
れた素材を用いた鋼構造物を提供する。 【解決手段】 鋼構造物の防食構造において、鋼構造物
の劣悪環境部位にクラッド鋼を使用し、該クラッド鋼の
母材面の被覆に溶射を用いる。さらに、劣悪環境部位以
外の部分に耐候性鋼を用いる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、橋梁、鉄塔、高
架水槽、タンク、および海洋構造物等の鋼構造物一般の
防食処理技術に係り、特に鋼構造物の劣悪環境部位にク
ラッド鋼を用いることにより長期耐久性を高めた鋼構造
物の防食構造に関する。
【0002】
【従来の技術】橋梁、鉄塔、高架水槽、タンク、および
海洋構造物等の鋼構造物は、そのままでは腐食により赤
錆や黄褐色の浮き錆、流れ錆を生じ、景観を損なうばか
りではなく、腐食による肉厚減少に起因して構造物とし
ての強度低下を来たすので、何らかの防食対策が必要と
される。これら構造物の防食対策としては従来、塗装工
法が一般的であり、長期耐久性を高めた重防食塗装も知
られているものの、塗装コストが高い上、耐用年数に限
りがある。しかも、定期的な塗り替えが必要であること
からメンテナンスコストも高いという問題がある。
【0003】一方、鋼材にP,Cu,CrおよびNi等
の元素を少量添加することにより、大気中において数年
で腐食に対して保護性のある緻密な錆(安定錆)が形成
され、その後の腐食速度が極めて少ない鋼材として耐候
性鋼が知られている。耐候性鋼は、安定錆形成後は無塗
装で永続的に防食効果が持続する、いわゆるメンテナン
スフリー鋼であり、近年、橋梁や鉄塔等の構造物に対す
る採用が増加している。なお、耐候性鋼が無塗装で使用
することが可能な地域として、建設省は飛来する塩分量
が0.05mdd(mg/dm2 /day)以下の地域
を推奨している。
【0004】しかし、海岸地域や融雪塩散布地域のよう
に飛来する塩分が比較的多い環境では、耐候性鋼の錆が
安定化しにくく、実用的な耐食性が得難いことが知られ
ている。また、例えば橋梁の桁端部のように、上部の道
路、床版からの漏水などにより湿潤な環境となる部位、
あるいはフランジ下面のように、表面に付着した飛来塩
分などの腐食性物質が降雨により洗われない構造となっ
ている部位のような劣悪環境部位では、不安定な錆が生
じ、安定錆が形成されにくいため、防食効果が現われず
好ましくない。さらに、赤錆や黄錆等の浮き錆や流れ錆
は、外観上問題があるばかりでなく、周囲の環境汚染の
原因にもなり、利用可能な地域が限定されるという問題
がある。
【0005】海岸地域における耐候性を改善した鋼材の
製造技術としては、特開平7−207340号公報、特
開平7−242993号公報、特開平8−134587
号公報の発明がある。これらの技術は、クロムやニッケ
ルなどの元素を多量に添加することにより、飛来する塩
分が比較的多い環境における鋼の耐食性を改善してい
る。
【0006】一方、「Proceedings of The National St
eel Bridge Symposium, FHA, AASHTO, AIS, AISC(1996
年10月15〜17日、於シカゴ)」では、橋梁のライフサイ
クルコスト低減の観点から、橋桁を構成する鋼板に囲い
を設けることにより、検査および補修に係る作業を容易
にし、かつ鋼材の腐食を防止する、ブリッジエンクロー
ジャーシステム(Bridge enclosure system )が提案さ
れている。また、「鋼構造の新技術に関する調査研究報
告書(中間報告)、土木学会鋼構造委員会、鋼構造新技
術小委員会(平成5 年3 月発行)」では、鋼板に高耐食
性材料を接合したクラッド鋼を用いた箱桁の例が提案さ
れている。また、安定錆の形成されにくい部位のみ塗装
を施すという方法もある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開平
7−207340号公報、特開平7−242993号公
報、特開平8−134587号公報の発明におけるクロ
ムを多量に含有する鋼は、低温割れなどの溶接欠陥が生
じやすく、溶接前に予熱の実施が必要であるなどの溶接
欠陥を防止する処置が必要となる。橋梁などの溶接構造
物の場合、予熱や溶接欠陥の検査などの現場作業は困難
であり、建設コストが増加するなどの弊害が生じる。ま
た、上記の発明においてニッケルは高価な成分元素であ
り、これを多量に含有する鋼によって橋梁を建設するこ
とは、経済的に不利である。すなわち、特開平7−20
7340号公報、特開平7−242993号公報、特開
平8−134587号公報の発明では、実用的な耐食性
を有する橋梁を安価に建設することは困難である。ま
た、初期の錆汁、安定錆の色の問題から美観上都市域に
は適さないという欠点もある。
【0008】従来型の耐候性鋼材において耐候性が劣化
する要因のひとつは、実際の橋梁を構成したときに、部
位により予想外の塩分の付着や滞留が起こることであ
る。図3は沿岸部に設置されたI桁橋梁の主桁における
飛来塩分の付着状況を示す図である。橋梁(I 桁橋梁)
の主桁では、図3に示すように、構造物の腐食に重要な
影響を及ぼす飛来塩分の付着は、海側の下フランジ上面
ウエブ接合部近傍(3)にとどまらず、山側の接合部近
傍(12)やフランジ下面(1)、(4)、(11)、さ
らには、桁の風下側内面(8)、(9)、(10)にま
で及んでいる。塩分の付着や滞留を防ぐため、下フラン
ジ上面に排水勾配ができるように下フランジ形状を構成
したり、下フランジ上面にカバーを設けるなどの対策が
講じられている。しかし、これらの技術によっても、下
フランジ上面ウエブ接合部近傍(3)、(10)、(1
2)の塩分の滞留は防止できるものの、その他の部位に
ついては効果がない。特に下フランジ上面に排水勾配が
できるように下フランジ形状を構成した場合には、下フ
ランジ下面の風の巻き込みが強くなり、フランジ下面の
塩分の付着が逆に多くなるという欠点を有する。
【0009】一方、上記のブリッジエンクロージャーシ
ステムおよびクラッド鋼を用いた箱桁は、橋梁建設に係
る初期コストが大きいという欠点を有する。
【0010】すなわち、従来の技術によっては、飛来塩
分量が0.05mdd以上の地域において、十分な耐食
性を有する橋梁を安価に建設することは困難であった。
【0011】さらに、安定錆の形成されにくい部位に塗
装を施すという方法は、定期的な再塗装が避けられな
い。その際、前処理としてブラスト処理などの除錆処理
を行う必要があり、現場での作業は研掃材の回収や防塵
対策等を行わなければならず問題があった。
【0012】そこで本発明は、鋼構造物の防食技術にお
いて、超長期の耐食性を維持しつつ施工が容易でかつ安
価にできることを特徴とした鋼構造物の防食構造および
防食方法を提供することを目的とする。また、鋼構造物
のライフサイクルコスト低減の観点から、腐食傾向の強
い部位にのみ、選択的に耐食性に優れた素材を用いた鋼
構造物を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記の課題
を解決するために、超長期の耐食性を維持しつつ、か
つ、施工が容易でさらに安価にできる鋼構造物の防食構
造について検討を行った。その結果、鋼構造物の防食構
造において、鋼構造物の劣悪環境部位にクラッド鋼を使
用し、該クラッド鋼の母材面の被覆に溶射を用いること
により、上記の課題が解決されることを見い出した。
【0014】また、劣悪環境部位以外の部分に耐候性鋼
を用いることにより、鋼構造物全体の耐食性が向上し、
建設コストやメンテナンスコストを低減できる。すなわ
ち劣悪環境部位にのみクラッド鋼及び溶射皮膜を用い、
劣悪環境部位以外の腐食環境が比較的厳しくない部位に
耐候性鋼を用いることにより、鋼構造物全体にクラッド
鋼及び溶射皮膜を用いると高価となる問題や、劣悪環境
部位以外の部分の鋼材に塗装をして用いると塗り変え塗
装が必要となり、メンテナンスコストが多大になる問題
を防ぐ効果がある。
【0015】本発明はこのような知見に基づきなされた
もので、以下のような特徴を有する鋼構造物の防食構造
および防食方法である。 [1]鋼構造物の劣悪環境部位にクラッド鋼を用いる鋼
構造物の防食構造において、該クラッド鋼の母材面の被
覆に溶射を用いることを特徴とする鋼構造物の防食構
造。 [2]上記[1]の鋼構造物の防食構造において、劣悪
環境部位以外の部分に耐候性鋼を用いることを特徴とす
る鋼構造物の防食構造。 [3]鋼構造物の劣悪環境部位にクラッド鋼を用いる鋼
構造物の防食方法において、該クラッド鋼の母材面の被
覆に溶射を用いることを特徴とする鋼構造物の防食方
法。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る実施形態の一
例を説明する。
【0017】この発明は、鋼構造物の劣悪環境部位にク
ラッド鋼を用いる鋼構造物の防食構造において、該クラ
ッド鋼の母材面の被覆に溶射を用いるものである。
【0018】クラッド鋼の接合部および端部は、クラッ
ド鋼の母材金属がむき出しとなり、そのままでは腐食が
発生するおそれがあるため、溶射により母材面の被覆を
行うものである。
【0019】ここで、劣悪環境部位とは、例えば、上部
の道路、床版からの漏水などにより湿潤な環境となる橋
梁の桁端部、表面に付着した飛来塩分などの腐食性物質
が降雨により洗われないフランジ下面、あるいは鋼構造
物一般で漏水や塩分付着のため鋼材の腐食が著しい部位
をいう。また、道路凍結防止のために塩化ナトリウムや
塩化カリウムなどの融雪塩が散布され塩分を含む飛沫や
漏水により鋼材の腐食が著しい部位も含まれる。さら
に、耐候性鋼材を用いた鋼構造物では、同様の原因によ
り不安定錆が形成されやすい部位をいう。なお、ここで
の不安定錆とは大気腐食に対して保護作用を有さず、赤
錆や黄錆等の浮き錆が生じるような錆を意味する。
【0020】また、ここで用いるクラッド鋼とは、普通
鋼または耐候性鋼の母材に、合わせ材として耐食性金属
を用いた物であることが好ましい。耐食性金属として
は、例えば、ステンレス、チタン、チタン合金、ニッケ
ル、ニッケル合金、アルミニウム、アルミニウム合金が
好ましいが、耐食性金属であれば特に限定されない。ク
ラッド鋼の製造方法についても特に限定しないが、圧延
クラッド鋼、爆着クラッド鋼、抵抗シーム溶接によって
製作した溶接クラッド鋼などを用いることができる。な
お、耐食性金属の合わせ材は、母材の片面あるいは両面
のどちらに配したものを用いても良い。
【0021】クラッド鋼を適用する範囲の一例を図によ
って説明する。図1はI桁端部における適用範囲(図中
の斜線部分)の一例を示す図である。桁の長手方向の適
用範囲Dは、桁高さCの1.5倍程度の長さとすること
が好ましい。これは、桁端部上部に位置する道路等の隙
間から滴下する雨水や腐食性物質が広がる範囲を考慮
し、決定されるものである。
【0022】図2は箱桁端部における適用範囲(図中の
斜線部分)の一例を示す図である。桁の長手方向の適用
範囲DはI桁端部同様、桁高さCの1.5倍程度の長さ
とすることが好ましい。
【0023】なお、クラッド鋼の適用方法としては、片
面クラッド鋼、両面クラッド鋼を組み合わせて使用すれ
ばよく、使用される腐食環境によって適宜選択すること
ができる。
【0024】また、その他の適用部位としては、例えば
I桁フランジの上下またはどちらか一方のフランジ下
面、箱桁のフランジ下面あるいは鋼構造物一般で漏水や
塩分付着のため腐食が著しい部位に部分的に適用する事
もできる。
【0025】なお、劣悪環境部位以外の部分には、耐候
性鋼を用いることが好ましい。劣悪環境部位以外の部分
を耐候性鋼とすることにより、鋼構造物全体の耐食性が
向上し、建設コストやメンテナンスコストを低減でき
る。すなわち劣悪環境部位にのみクラッド鋼及び溶射皮
膜を用い、劣悪環境部位以外の腐食環境が比較的厳しく
ない部位に耐候性鋼を用いることにより、鋼構造物全体
にクラッド鋼及び溶射皮膜を用いると高価となる問題
や、劣悪環境部位以外の部分の鋼材に塗装をして用いる
と塗り変え塗装が必要となり、メンテナンスコストが多
大になる問題を防ぐ効果がある。
【0026】クラッド鋼同士の接合は通常の方法で行う
ことができる。通常の方法としては、例えば、クラッド
鋼の母材同士を溶接接合する方法が用いられる。
【0027】なお、クラッド鋼の溶接部分の合わせ材を
あらかじめ部分的に削除する方法が好ましい。ステンレ
スクラッド鋼の場合、合わせ材を削除せずに溶接すると
合わせ材の成分が混ざり溶接部の材質が変わってしまう
ため、溶接部の割れが発生することがあるためである。
チタンクラッド鋼の場合、合わせ材を削除せずに溶接す
ると合わせ材のチタンが混ざり脆いFe−Ti金属間化
合物が生成し、接合強度が低下したり、割れが発生する
ことがあるためである。
【0028】なお、合わせ材の厚さの薄いステンレスク
ラッド鋼の場合、溶接部分の合わせ材を削除せずに溶接
しても良い。合わせ材の厚さが薄いと、溶接部の材質に
及ぼす影響が小さいためである。この場合、合わせ材の
厚さは1mm 程度が好ましく、母材と共に一緒に溶け込む
ように溶接を行う。これにより、合わせ材の削除行程を
省略することができる。この場合、溶接材料は異種継ぎ
手用のものを用いることが好ましい。
【0029】クラッド鋼の接合部および端部は、クラッ
ド鋼の母材金属がむき出しとなり、腐食が発生するおそ
れがあるため、溶射により被覆する。以下に、本実施形
態に係る溶射方法の手順の一例を示す。手順は、溶射を
行うクラッド鋼の接合部分およびクラッド鋼の桁末端部
母材面の下地処理としてブラスト処理を行う、ブラスト
処理工程、その上に溶射による被覆を行う、溶射工程
、溶射後の後処理として封孔処理を行う封孔処理工程
とに区分することができる。以下、各工程ごとにその
詳細を説明する。
【0030】なお、ステンレスクラッド鋼の場合は、接
合部分および桁末端部母材面の被覆にステンレスの肉盛
溶接による方法、またはステンレスカバープレートを合
わせ材のステンレスと溶接して被覆する方法などを併用
することもできる。また、チタンクラッド鋼の場合は、
接合部分および桁末端部母材面の被覆にチタンカバープ
レートを合わせ材のチタンと溶接して被覆する方法など
を併用することもできる。
【0031】ブラスト処理工程 本実施形態に用いられるブラスト処理方法は、溶射の前
処理としての表面の黒皮、酸化物などを除去すると同時
に粗面化することを目的とし、通常の方法が利用でき
る。ブラスト処理に用いられる研削材としては、けい
砂、川砂、鋳鉄グリット、鋳鋼グリット、カットワイ
ヤ、アルミナグリット、炭化けい素グリット、スラググ
リットなどを用いることができる。
【0032】溶射工程 本実施形態に用いられる溶射皮膜としては、通常用いら
れる金属溶射、セラミックス溶射、サーメット溶射等を
適用することができる。これらの皮膜は、1層または2
層以上の複数の層で構成してもよい。溶射皮膜の厚さと
しては特に限定されないが、通常10〜1000μm 程度の厚
さであることが好ましい。10μm 未満では皮膜の欠陥が
多くなり十分な耐食性が得られず、1000μm を越えると
剥離や割れを生じることがあるからである。
【0033】金属溶射の皮膜としては、例えば、亜鉛、
亜鉛合金(亜鉛−アルミニウム合金、等)、アルミニウ
ム、アルミニウム合金(アルミニウム−マグネシウム合
金、等)、ニッケル、ニッケル合金(ニッケル−クロム
合金、モネル、ハステロイ、インコネル、等)、モリブ
デン、錫、銅、銅合金(黄銅、アルミニウム青銅、りん
青銅、等)、鉄、炭素鋼、ステンレス、タングステン、
コバルト、コバルト合金、チタン、チタン合金、MCrAlX
合金(Mは、Ni、Co、Fe、Ni-Co 等;X は、Y、Hf、S
i、Ta等を表す)等を用いることができる。
【0034】セラミックス溶射の皮膜としては、金属お
よび非金属の酸化物、炭化物、窒化物、ほう化物等を用
いることができる。これらのセラミックスは単独で溶射
してもよいし、結合剤の作用をする金属(Co、Ni、ニク
ロムなど)を用いてサーメット(セラミックスと金属を
混合して焼結したもの)として溶射してもよい。酸化物
系セラミックスとしては、酸化アルミニウム系、酸化ア
ルミニウム/ 酸化チタン系、酸化チタン系、酸化クロム
系、スピネル、酸化ジルコニウム系などの金属酸化物を
主成分としたものを使用することがより好ましい。ま
た、炭化物系セラミックスとしてはWC、TiC 、Cr2 C
3 、ZrC などが使用できる。窒化物系セラミックスと
してはTiN 、ZrN 、Si3 N 4 などが使用できる。ほう化
物系セラミックスとしてはTiB 2 、MoB 2 、B 4 C 、Zr
B 2 などが使用できる。
【0035】溶射皮膜としては、クラッド鋼の合わせ材
と同じ材質もしくは同等の耐食性を有する材料を選択す
ることが好ましい。たとえば、ステンレスクラッド鋼へ
の適用の場合、ステンレス溶射、ニッケル−クロム溶射
などが好ましい。これらの溶射皮膜の上層にアルミニウ
ム溶射やアルミニウム合金溶射を行ってもよい。また、
チタンクラッド鋼への適用の場合、チタン溶射、チタン
合金溶射、酸化チタン溶射などが好ましい。なお、これ
らの溶射皮膜の下層にニッケル−クロム溶射などを行っ
てもよい。さらに上層にアルミニウム溶射やアルミニウ
ム合金溶射を行ってもよい。
【0036】封孔処理工程 本発明に用いられる封孔処理としては、特に限定されな
いが鋼構造物の使用環境によって適宜選択することが好
ましい。封孔材の例としてはエポキシ系樹脂、フェノー
ル系樹脂、シリコン系樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル
樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシフェノール樹脂、ポ
リアミド樹脂、エポキシメラミン樹脂、コールタール、
パラフィン、防錆油、グリース、ワックス、ナトリウム
けい酸塩、エチルけい酸塩、嫌気性メタクリル酸塩、り
ん酸塩などを用いることができる。
【0037】また、封孔材には、通常用いられる防錆顔
料、着色顔料等を含有させてもよい。たとえば、ステン
レスクラッド鋼の母材面の被覆に灰色のNi-Cr 合金溶射
を用いた場合、封孔材にアルミニウム粉末を顔料として
混合することにより、溶射皮膜の耐食性を向上できるだ
けでなく、ステンレスと外観を揃えることもできる。
【0038】封孔処理は、溶射後、なるべく速やかに行
うことが好ましい。溶射後、数日おいてから封孔処理を
行っても、皮膜内で結露や酸化を生じ、また、ごみの付
着などがあって、皮膜に封孔材が完全に浸透せず気孔、
間隙が残るためである。また、封孔材塗布の前処理とし
て、皮膜材質と付着性の高いウォッシュプライマー(た
とえばポリビニルプチラールの溶液に、ジンククロメー
トおよびりん酸を加えたもの)を塗布してもよい。特
に、封孔しようとする皮膜が、水分を吸収しているよう
な場合にはウォッシュプライマーの下塗りをすることが
より好ましい。
【0039】以上により、鋼構造物の劣悪環境部位にク
ラッド鋼を使用し、該クラッド鋼の母材面の被覆に溶射
を用いることにより、超長期の耐食性を維持しつつ、施
工が容易でかつ安価にできる鋼構造物の防食構造および
防食方法が提供される。
【0040】
【実施例】以下、実施例を示して本発明をさらに詳細に
説明するが、本発明はこれらに限定されるものではな
い。
【0041】本発明に係る実施例を以下に示す。桁端部
のウェブはステンレスクラッド鋼、桁端部以外のウェブ
と補剛材は耐候性鋼材、上下フランジは片面ステンレス
クラッド鋼を使用し、隅肉溶接によりそれらを接合して
主桁とした。桁端部のステンレスクラッド鋼の母材面
と、下フランジのステンレスクラッド鋼の母材面にブラ
スト処理を施し、ニッケルークロム溶射を施した。ここ
で、封孔処理としてシリコン樹脂にアルミ粉末を混合し
たものを用いた。さらに、耐候性鋼材にて横桁及び対傾
構を構成し、耐候性高力ボルトおよびナットによりそれ
らを連結し、活荷重単純剛性鈑桁橋を作製し、実施例と
した。各部の寸法は、幅5.6m、高さ1.6m、長さ
30mである。
【0042】上記実施例に係る橋梁を暴露試験場におい
て、南向き岸壁から北へ100 mの位置に、長手を東西方
向として、無塗装のまま設置した。また、比較例とし
て、同じ構造で耐候性鋼材のみによって構成した橋梁を
作製し、上記実験橋の横にこれも無塗装のまま設置し
た。設置した位置における飛来塩分量は、1年間で、0.
62mdd であった。暴露試験開始後5年経過した後、評価
を行った。その結果、比較例では桁端部の漏水の影響部
とフランジ下面に不安定錆の形成が認められたが、ステ
ンレスクラッド鋼を適用した実施例では腐食は認められ
なかった。
【0043】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、ミ
ニマムメンテナンスで超長期の耐食性を維持しつつ施工
が容易でかつ安価にできる鋼構造物の防食構造および防
食方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】I桁端部におけるクラッド鋼及び溶射皮膜の適
用範囲の一例を示す図である。
【図2】箱桁端部におけるクラッド鋼及び溶射皮膜の適
用範囲の一例を示す図である。
【図3】沿岸部に設置されたI桁橋梁の主桁における飛
来塩分の付着状況を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4K031 AA05 AB09 BA01 CB21 CB22 CB33 CB35 CB37 CB39 CB42 CB43 CB44 CB45 CB46 FA06 FA07 FA09 4K060 AA07 BA13 BA14 BA26 BA33 BA45 DA07 EA01 EA08 EA19 EB01 EB10 FA09

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼構造物の劣悪環境部位にクラッド鋼を
    用いる鋼構造物の防食構造において、該クラッド鋼の母
    材面の被覆に溶射を用いることを特徴とする鋼構造物の
    防食構造。
  2. 【請求項2】 鋼構造物の防食構造において、上記劣悪
    環境部位以外の部分に耐候性鋼を用いることを特徴とす
    る請求項1に記載の鋼構造物の防食構造。
  3. 【請求項3】 鋼構造物の劣悪環境部位にクラッド鋼を
    用いる鋼構造物の防食方法において、該クラッド鋼の母
    材面の被覆に溶射を用いることを特徴とする鋼構造物の
    防食方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2014527576A (ja) * 2011-07-27 2014-10-16 ノースロップ グラマン システムズ コーポレーション 接着接合鋼継手の腐食に対する保護用コーティング
CN114012510A (zh) * 2021-11-23 2022-02-08 贵州电网有限责任公司 基于机器人及视觉识别的热喷铝防腐处理全自动生产线

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