JP2023166891A - 防食被覆構造および鋼部材 - Google Patents

防食被覆構造および鋼部材 Download PDF

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Hisao Kitagawa
貴志 岩川
Takashi Iwakawa
慶嗣 片瀬
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道夫 深谷
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Abstract

【課題】金属基材の被防食面の一部が耐食性金属によって被覆され、他の一部がジンクリッチ塗膜層によって被覆されていて、前記耐食性金属に対して溶接を行う場合でも、該耐食性金属に亜鉛脆化割れが発生することが抑制された防食被覆構造および該防食被覆構造を備えた鋼部材を提供する。【解決手段】防食対象の金属基材12の被防食面14の一部を被覆する耐食性金属16と、被防食面14の他の一部を被覆するジンクリッチ塗膜層18と、を備える防食被覆構造10であって、被防食面14において、耐食性金属16とジンクリッチ塗膜層18の間には、それらを隔てる分離領域14Aが設けられており、分離領域14Aを覆うように設けられたプライマー塗膜層20を有してなる。【選択図】図1

Description

本発明は、防食被覆構造および鋼部材に関するもので、詳細には、被防食面の一部が耐食性金属によって被覆され、他の一部がジンクリッチ塗膜層によって被覆された防食被覆構造および該防食被覆構造を備えた鋼部材に関するものである。
鋼材は安価でありながら機械的特性に優れており、多くの分野で用いられているが、腐食しやすいという弱点を抱えている。その弱点に対応するために、鋼構造物(とりわけ、海洋の影響を受ける地域に位置する海洋鋼構造物)においては、表面部分に耐食性金属や重防食塗装を用いることがよく行われている。海洋鋼構造物は、部位によって腐食環境の厳しさが異なっており、最も厳しい腐食環境である飛沫帯および干満帯に対しては耐食性金属ライニングを施し、それよりも上方の部位には重防食塗装を施し、海中部に対しては電気防食を施すことがある。そして、その場合、重防食塗装と耐食性金属ライニングとの境目となる境界部が生じることになる。この境界部において、耐食性金属ライニングの上に重防食塗装を直接塗装すると、耐食性金属ライニングの上に直接塗装された重防食塗装が剥離して、重防食塗装の剥離の起点となるおそれがある。
前記境界部における重防食塗装の剥離を防止する技術として活用可能と思われる技術として、例えば特許文献1に記載の技術がある。
特許文献1に記載の発明(防食被覆構造)によれば、耐食性金属薄板と防食性に優れたジンクリッチ塗膜の境界部上にプライマー塗膜層を設けることにより、桟橋、護岸、消波堤等の港湾構造物、石油掘削関連施設、シーバース、洋上備蓄基地等の海洋エネルギー開発関連構造物、沈埋トンネル、海上空港等の交通施設などの厳しい腐蝕環境下に晒される港湾・海洋鋼構造物に、長期に亘って高い防食性を付与することができ、特に、プライマー塗膜として特定の塗膜層を採用することにより、ジンクリッチ塗膜層、耐食性金属層及びエポキシ樹脂被覆層のいずれにも優れた付着性を確保することが可能となる、と特許文献1に記載されている(特許文献1の段落0007)。
特開2006-218699号公報
一方、鋼構造物に用いられた耐食性金属に対して、溶接で他の金属部材を取り付けることがあるが、この場合、溶接地点の近傍にジンクリッチ塗膜が存在すると、溶接熱の影響を受けて、ジンクリッチ塗膜中の亜鉛が溶融して耐食性金属の結晶粒界に拡散浸入して、耐食性金属が亜鉛脆化割れを起こすおそれがある。
特許文献1では、その段落0004において、「ステンレス鋼は、ジンクリッチ塗料中に含まれる亜鉛金属と接触した状態で溶接や火災等の高温環境にさらされると、溶体金属脆化を引き起こし、構造物の強度を低下させることがある等の問題もある。」と記載されているが、特許文献1に記載の技術では、耐食性金属薄板の片側端部とジンクリッチ塗膜層の片側端部とは隣接しており、溶接や火災等の高温環境にさらされると、ジンクリッチ塗膜層の亜鉛が溶融して、耐食性金属薄板と接触する可能性がある。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、金属基材の被防食面の一部が耐食性金属によって被覆され、他の一部がジンクリッチ塗膜層によって被覆されていて、前記耐食性金属に対して溶接を行う場合でも、該耐食性金属に亜鉛脆化割れが発生することが抑制された防食被覆構造および該防食被覆構造を備えた鋼部材を提供することを課題とする。
本発明は前記課題を解決する発明であり、以下のような防食被覆構造および鋼部材である。
即ち、本発明に係る防食被覆構造の第1の態様は、防食対象の金属基材の被防食面の一部を被覆する耐食性金属と、前記被防食面の他の一部を被覆するジンクリッチ塗膜層と、を備える防食被覆構造であって、前記被防食面において、前記耐食性金属と前記ジンクリッチ塗膜層の間には、それらを隔てる分離領域が設けられており、前記分離領域を覆うように設けられたプライマー塗膜層を有してなることを特徴とする防食被覆構造である。
ここで、本願において、金属基材の被防食面は、1つの2次元方向に広がる面だけではなく、異なる2次元方向に広がる複数の面を組み合わせてなる面、つまり屈曲した連続の面も含む。例えば防食対象の金属基材が立方体である場合、この立方体の6つの面を組み合わせてなる面の集合である屈曲した連続の面も当該金属基材の被防食面に含まれる。また、本願において、金属基材の被防食面は、平面に限られるわけではなく、曲面も含まれる。
また、本願において、防食被覆構造の構成要素の配置位置に関し、「上」という語を使って位置関係を述べることがあるが、実際の上下方向とは関係なく、「上」は防食対象の金属基材の被防食面から遠い側を意味することがある。
本発明に係る防食被覆構造の第2の態様は、前記第1の態様において、前記プライマー塗膜層が、前記耐食性金属の表面の少なくとも一部にも広がって構成されている態様である。
本発明に係る防食被覆構造の第3の態様は、前記第1又は前記第2の態様において、前記被防食面の一部を被覆する前記耐食性金属が、オーステナイト系ステンレス鋼、二相系ステンレス鋼及びニッケル合金のうちのいずれかで構成されている態様である。
本発明に係る防食被覆構造の第4の態様は、前記第1~前記第3の態様のいずれかの態様において、前記プライマー塗膜層と前記ジンクリッチ塗膜層は、防食層で被覆されて構成されている態様である。
本発明に係る防食被覆構造の第5の態様は、前記第4の態様において、前記防食層の部位のうち、前記ジンクリッチ塗膜層を被覆する部位については、エポキシ樹脂塗料、ポリウレタン樹脂塗料、シリコンアクリル樹脂塗料、ふっ素樹脂塗料、ガラスフレーク含有塗料、変性エポキシ樹脂塗料、超厚膜型エポキシ樹脂塗料のうち少なくとも1種類からなるように構成されている態様である。
本発明に係る防食被覆構造の第6の態様は、前記第4又は前記第5の態様において、前記防食層の上にさらに耐候性層が設けられて構成されている態様である。
本発明に係る防食被覆構造の第7の態様は、前記第1~前記第6の態様のいずれかの態様において、前記ジンクリッチ塗膜層に替えて、亜鉛を含む金属溶射層が用いられて構成されている態様である。
本発明に係る防食被覆構造の第8の態様は、前記第1~前記第7の態様のいずれかの態様において、前記耐食性金属が、前記被防食面に本体鋼材部が取り付けられたクラッド鋼の合せ材で構成されている態様である。
本発明に係る防食被覆構造の第9の態様は、前記第1~前記第7の態様のいずれかの態様において、前記被防食面は、本体鋼材部と合せ材とからなるクラッド鋼の前記本体鋼材部の面であり、前記耐食性金属は前記クラッド鋼の前記合せ材であり、前記ジンクリッチ塗膜層は前記クラッド鋼の前記合せ材とは反対側の前記本体鋼材部の面を被覆しており、前記分離領域は、前記クラッド鋼を前記本体鋼材部と前記合せ材の両方を横切るように厚さ方向に切断または切削して形成された前記クラッド鋼の厚さ方向の面のうちの前記本体鋼材部の面である、ように構成されている態様である。
本発明に係る防食被覆構造の第10の態様は、前記第9の態様において、前記厚さ方向の面が、前記クラッド鋼のコバ面で構成されている態様である。
本発明に係る防食被覆構造の第11の態様は、前記第9の態様において、前記厚さ方向の面が、前記クラッド鋼の厚さ方向の貫通孔の内側面で構成されている態様である。
本発明に係る防食被覆構造の第12の態様は、前記第8~前記第11の態様のいずれかの態様において、前記クラッド鋼が、圧延クラッド鋼で構成されている態様である。
本発明に係る鋼部材の一態様は、前記第1~前記第12の態様のいずれかの態様の防食被覆構造を有してなることを特徴とする鋼部材である。
本発明によれば、金属基材の被防食面の一部が耐食性金属によって被覆され、他の一部がジンクリッチ塗膜層によって被覆されていて、前記耐食性金属に対して溶接を行う場合でも、該耐食性金属に亜鉛脆化割れが発生することが抑制された防食被覆構造および該防食被覆構造を備えた鋼部材を提供することができる。
本発明の第1実施形態に係る防食被覆構造10を模式的に示す断面図 本発明の第2実施形態に係る防食被覆構造30を模式的に示す断面図 本発明の第3実施形態に係る防食被覆構造40を模式的に示す断面図 本発明の第4実施形態に係る防食被覆構造50を模式的に示す断面図 第3実施形態に係る防食被覆構造40を適用してなる箱桁橋60の箱桁62を模式的に示す鉛直断面図 箱桁橋60を側方(橋軸直角方向)から見た状態を模式的に示す側面図 第3実施形態に係る防食被覆構造40を適用してなる支承構造70を模式的に示す片側断面図 第3実施形態に係る防食被覆構造40を適用してなる板状のクラッド鋼42を吊り上げている状況を模式的に示す図および吊り上げに用いた吊りピース80を模式的に示す図であり、(A)は板状のクラッド鋼42を吊り上げている状況を模式的に示す正面図、(B)は板状のクラッド鋼42を吊り上げている状況を模式的に示す側面図であり、(C)は吊り上げに用いた吊りピース80を模式的に示す拡大図である。 第3実施形態に係る防食被覆構造40を適用してなる箱桁橋60の箱桁62の底板62Aに水抜きパイプ90を隅肉溶接92で取り付けた状態を模式的に示す鉛直断面図
以下、図面を参照して、本発明に係る防食被覆構造の実施形態(第1~4実施形態)を詳細に説明する。また、具体的な構造物や部材への本発明の適用例についても説明する。
(1)第1実施形態
図1は、本発明の第1実施形態に係る防食被覆構造10を模式的に示す断面図である。
本第1実施形態に係る防食被覆構造10は、図1に示すように、防食対象の金属基材12の被防食面14に設けられてなる防食被覆構造であり、金属基材12を防食する防食被覆構造である。防食対象の金属基材12は、溶接熱の影響を受けても液体亜鉛を生じさせない金属であればよく、具体的には例えば、炭素鋼の他、低合金鋼等を挙げることができる。
本第1実施形態に係る防食被覆構造10は、金属基材12の被防食面14の一部を被覆する耐食性金属16と、金属基材12の被防食面14の他の一部を被覆するジンクリッチ塗膜層18と、プライマー塗膜層20と、を備えてなる。そして、被防食面14において、耐食性金属16とジンクリッチ塗膜層18との間には、それらを隔てる分離領域14Aが設けられており、プライマー塗膜層20は分離領域14Aの全面を覆うように設けられている。プライマー塗膜層20は分離領域14Aの全面を覆うだけでなく、耐食性金属16の表面の少なくとも一部にも広がるように設けてもよく、本第1実施形態に係る防食被覆構造10では、図1に示すように、プライマー塗膜層20は、耐食性金属16の表面の少なくとも一部にも広がるように設けられている。
被防食面14において、耐食性金属16とジンクリッチ塗膜層18との間には、それらを隔てる分離領域14Aが設けられているので、他の部材を取り付ける等のために溶接を耐食性金属16に施しても、その溶接による熱はジンクリッチ塗膜層18に伝わりにくく、ジンクリッチ塗膜層18中の亜鉛が溶融することが抑制されており、かつ、ジンクリッチ塗膜層18中の亜鉛が溶融したとしても、分離領域14Aが設けられているので耐食性金属16に接触することが抑制されており、本第1実施形態に係る防食被覆構造10においては、耐食性金属16に溶接を施した場合でも、耐食性金属16が亜鉛脆化割れを起こすことが抑制されている。
耐食性金属16としては、耐食性に優れたものであれば特に制限はなく用いることができ、例えば、オーステナイト系、フェライト系、マルテンサイト系などのステンレス鋼、チタン又はチタン合金、ニッケル合金を使用することができる。ステンレス鋼としては、具体的には例えば、SUS410L、SUS410S、SUS430、SUS304、SUS304L、SUS316、SUS316L、SUS317、SUS317L、SUS321、SUS347、SUS310S、SUS329J1L、SUS329J3L、SUS329J4L、SUS312L、SUS836L、NAS354N、JSL310Moなどを好適に用いることができ、チタン又はチタン合金としては、具体的には例えば、TP270H、TP340Hなどを好適に用いることができ、ニッケル合金としては、NCF825、NW0276、NCF625、NW6022などを好適に用いることができる。
金属基材12の被防食面14への耐食性金属16の取り付けは、一般的に用いられている、プラズマ溶接、MAG(Metal Active Gas)溶接、抵抗溶接等を用いて行うことができる。また、爆発接合法や摩擦拡散接合、肉盛溶接による接合法を用いて行うこともできる。
本第1実施形態に係る防食被覆構造10では、前述したように、被防食面14において、耐食性金属16とジンクリッチ塗膜層18との間には、それらを隔てる分離領域14Aが設けられているので、他の部材を取り付ける等のために耐食性金属16に溶接を施した場合でも、耐食性金属16が亜鉛脆化割れを起こすことが抑制されている。したがって、本第1実施形態に係る防食被覆構造10は、亜鉛脆化割れを起こす可能性のある耐食性金属が耐食性金属16に用いられている場合に、大きな効果を発揮する。亜鉛脆化割れを起こす可能性のある耐食性金属は、具体的には例えば、オーステナイト系ステンレス鋼、二相系ステンレス鋼及びニッケル合金である。
本第1実施形態に係る防食被覆構造10では、被防食面14において耐食性金属16とジンクリッチ塗膜層18とを隔てる分離領域14Aが設けられていることで、前述したように、耐食性金属16が亜鉛脆化割れを起こすことが抑制されているが、この分離領域14Aには、耐食性金属16もジンクリッチ塗膜層18も設けられていないので、分離領域14Aにおける金属基材12の腐食が懸念される。このため、本第1実施形態に係る防食被覆構造10では、プライマー塗膜層20が分離領域14Aの全面を覆うように設けられている。防食性をより向上させる観点から、プライマー塗膜層20の上には、防食層32(図2参照)をさらに設けることが好ましい(第2実施形態)。
プライマー塗膜層20は、防食性に優れ、かつ、上に設ける防食層32との接着性がよいものであれば特に制限はなく用いることができ、具体的には例えば、エポキシ樹脂塗料、シリコンアクリル樹脂塗料、ウォッシュプライマー、ポリウレタン樹脂塗料、ラッカー塗料などを用いることができるが、付着性の観点で、エポキシ樹脂塗料が最適である。
プライマー塗膜層20を設ける前に、プライマー塗膜層20の付着性を向上させる観点から、被防食面14の分離領域14Aおよびプライマー塗膜層20を設ける部位の耐食性金属16の表面の素地調整をすることが好ましい。素地調整の具体的な方法としては、研磨や各種研削材によるブラスト処理などを挙げることができる。広い面積を行う場合は、珪砂、ガーネット、アルミナ、カーボランダム、ステンレスビーズ、ステンレスカットワイヤー、銅スラグ、ニッケルスラグから選ばれる少なくとも1種を研掃材として用いたブラスト処理が望ましい。ボルト孔の側面など狭隘部分に対する素地調整は、研磨紙を金属製の軸に巻いて回転させるフラップホイルを用いて行うことができる。素地調整の程度は、ISO Sa2.5以上であることが望ましい。
ジンクリッチ塗膜層18は、本第1実施形態に係る防食被覆構造10において、通常、乾燥膜厚で10μm以上、好ましくは15~100μmとなるように塗装することによって形成する。ジンクリッチ塗料の塗装は、例えば、エアスプレー、エアレススプレー、刷毛塗りなどの一般的に用いられている手段で行なうことができる。ジンクリッチ塗料としては、特に、エポキシ樹脂系結合剤及び亜鉛末を含んでなる有機ジンクリッチ塗料や、無機系結合剤及び亜鉛末を含んでなる無機ジンクリッチ塗料を好適に用いることができる。亜鉛末は、アルミニウム粉等の犠牲防食作用のある他の金属粉と併用してもよい。ジンクリッチ塗料には、通常の体質顔料、防錆顔料及び/又は着色顔料を、塗膜の緻密性を損なわない程度に混ぜて併用することができる。体質顔料としては、例えば、シリカ粉、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、クレーなどを用いることができ、防錆顔料及び着色顔料としては、例えば、酸化チタン、リン化鉄、MIO、シアナミド鉛、ジンククロメ-ト、リン酸亜鉛、リン酸カルシウム、メタホウ酸バリウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸アルミニウム、ベンガラ、シアニン系着色顔料、カーボンブラック、ルチル粉末、ジルコン粉末などを用いることができる。
上記ジンクリッチ塗料として無機ジンクリッチ塗料を使用する場合、形成される塗膜が厚膜であるとポーラスな膜となるので、必要に応じて次工程であるエポキシプライマー層や防食層を形成する前に、予め該ジンクリッチ塗膜に「ミストコート」と称する多量の溶剤で希釈した塗料を塗布し、ポーラスな箇所の孔をふさぐ工程を加えることが望ましい。該ミストコートとしては、通常、前述したエポキシプライマー等の塗料を十分低い粘度に希釈したものを使用することができ、これらは、通常、スプレーにて厚膜仕様のジンクリッチ塗膜上に噴霧する。
なお、耐食性金属16は、クラッド鋼の合せ材として用いられた状態のものを、本第1実施形態に係る防食被覆構造10に用いてもよい。この場合、金属基材12と同材質の金属を母材(本体鋼材部)とし、耐食性金属16を合せ材としたクラッド鋼を用い、当該クラッド鋼の母材部分を金属基材12に突合せ溶接で取り付けて、図1に示す本第1実施形態に係る防食被覆構造10にすることができる。クラッド鋼の合せ材として用いられた状態の合せ材の板厚は通常1.5mm以上である。また、金属基材12と同材質の金属を母材とし、耐食性金属16を合せ材としたクラッド鋼を用い、当該クラッド鋼の母材を金属基材12の被防食面14に隅肉溶接で取り付けることで、耐食性金属16を金属基材12に取り付けるようにしてもよい。ただし、この場合、金属基材12の被防食面14に、前記クラッド鋼の母材を介して耐食性金属16が取り付けられることになる。隅肉溶接部分にもプライマー塗膜層20を設ける。
(2)第2実施形態
図2は、本発明の第2実施形態に係る防食被覆構造30を模式的に示す断面図である。
前記「(1)第1実施形態」で前述したように、防食性をより向上させる観点から、プライマー塗膜層20の上に、防食層32をさらに設けるのが好ましく、本発明の第2実施形態に係る防食被覆構造30は、第1実施形態に係る防食被覆構造10のプライマー塗膜層20の上に防食層32をさらに設けた実施形態である。また、本第2実施形態に係る防食被覆構造30においては、第1実施形態に係る防食被覆構造10のジンクリッチ塗膜層18の上にも防食層32を設けている。これら以外の点は、本第2実施形態に係る防食被覆構造30は第1実施形態に係る防食被覆構造10と同様であるので、本第2実施形態に係る防食被覆構造30において、第1実施形態に係る防食被覆構造10と同一の構成要素には同一の符号を付し、それら同一の構成要素についての説明は原則として省略する。
本第2実施形態に係る防食被覆構造30は、金属基材12の被防食面14の一部を被覆する耐食性金属16と、金属基材12の被防食面14の他の一部を被覆するジンクリッチ塗膜層18と、プライマー塗膜層20と、防食層32と、を備えてなる。そして、被防食面14において、耐食性金属16とジンクリッチ塗膜層18との間には、それらを隔てる分離領域14Aが設けられており、プライマー塗膜層20は分離領域14Aの全面を覆うように設けられている。プライマー塗膜層20は分離領域14Aの全面を覆うだけでなく、耐食性金属16の表面の少なくとも一部にも広がるように設けてもよく、本第2実施形態に係る防食被覆構造30では、図2に示すように、プライマー塗膜層20は、耐食性金属16の表面の少なくとも一部にも広がるように設けられている。
本第2実施形態に係る防食被覆構造30においては、金属基材12の被防食面14の上に設けられたプライマー塗膜層20及びジンクリッチ塗膜層18の上に防食層32がさらに設けられている。このため、本第2実施形態に係る防食被覆構造30は、第1実施形態に係る防食被覆構造10よりもさらに防食性能が向上している。
防食層32は、エポキシ樹脂系塗料、厚膜形エポキシ樹脂塗装、エポキシガラスフレーク塗料、超厚膜形エポキシ樹脂系被覆、超厚膜形ポリウレタン樹脂系被覆、モルタル、プラスチックフィルムやゴムおよび金属箔と粘・接着剤層を組み合わせた防食テープを、膜厚で通常200μm以上、好ましくは300μm以上となるように被覆する。塗装にはピンホールが発生することがあるが、ピンホールが発生し難くなる膜厚を確保するべく、膜厚は通常200μm以上とする。ピンホールをさらに発生し難くするためには、同じ膜厚でも2回以上に分けて塗装することが効果的であり、膜を厚さ方向に貫通するピンホールが発生し難くなる。膜厚を300μm以上にすると、さらに水分の浸透が抑制され、防食性が向上する。
防食層32のうち、ジンクリッチ塗膜層18を被覆する部位については、エポキシ樹脂塗料、ポリウレタン樹脂塗料、シリコンアクリル樹脂塗料、ふっ素樹脂塗料、ガラスフレーク含有エポキシ樹脂系塗料、変性エポキシ樹脂塗料、超厚膜型エポキシ樹脂塗料のうち少なくとも1種類からなる仕様にしてもよく、防食層32についての前記仕様とジンクリッチ塗膜層18を合わせた防食仕様は、重防食塗装と呼ばれる防食仕様である。
防食層32の上に、さらに耐候性層を設けてもよく、この耐候性層としては、例えば、ポリウレタン樹脂塗料、シリコンアクリル樹脂塗料、ふっ素樹脂塗料のうち少なくとも1種類を用いることができる。
(3)第3実施形態
図3は、本発明の第3実施形態に係る防食被覆構造40を模式的に示す断面図である。
本第3実施形態に係る防食被覆構造40は、クラッド鋼42のクラッド鋼母材44を防食する防食被覆構造である。クラッド鋼母材44は、クラッド鋼42の本体鋼材部である。クラッド鋼母材44の被防食面48は、耐食性金属であるクラッド鋼合せ材46に覆われている被防食面48Bと、被防食面48Bとは反対側の被防食面48である被防食面48Cと、クラッド鋼42の端部の厚さ方向の切断面であるコバ面42Xにおける被防食面48である被防食面48Dと、に区分けされる。
本第3実施形態に係る防食被覆構造40に用いられているプライマー塗膜層20aは、第1、第2実施形態に係る防食被覆構造10、30で用いたプライマー塗膜層20と同材質であり、また、本第3実施形態に係る防食被覆構造40に用いられているジンクリッチ塗膜層18aは、第1、第2実施形態に係る防食被覆構造10、30で用いたジンクリッチ塗膜層18と同材質であり、本第3実施形態に係る防食被覆構造40に用いられている防食層32aは、第2実施形態に係る防食被覆構造30に用いた防食層32と同材質であるので、それらについての説明は原則として省略する。
クラッド鋼42は、クラッド鋼母材44にクラッド鋼合せ材46を金属組織的に接合してなる部材であり、耐食性金属であるクラッド鋼合せ材46が、防食対象の金属基材であるクラッド鋼母材44の1つの面である被防食面48Bの全面を覆うように接合されており、被防食面48Bは耐食性金属であるクラッド鋼合せ材46によって防食されている。
クラッド鋼42のクラッド鋼母材44の材質は、第1、第2実施形態に係る防食被覆構造10、30における防食対象の金属基材12と同材質のものを用いることができ、また、クラッド鋼42のクラッド鋼合せ材46の材質は、第1、第2実施形態に係る防食被覆構造10、30における耐食性金属16と同材質のものを用いることができる。
耐食性金属であるクラッド鋼合せ材46によって防食されたクラッド鋼母材44の被防食面48Bとは反対側のクラッド鋼母材44の面である被防食面48Cにはジンクリッチ塗膜層18aが設けられて防食されている。
被防食面48において、耐食性金属であるクラッド鋼合せ材46とジンクリッチ塗膜層18aとの間には、図3に示すように、空間的にそれらを隔てる分離領域48Aが設けられている。分離領域48Aは、クラッド鋼42の端部の厚さ方向の切断面であるコバ面42Xにおける被防食面48である被防食面48Dと一致する。耐食性金属であるクラッド鋼合せ材46とジンクリッチ塗膜層18aとの間を隔てる分離領域48Aが設けられているので、他の部材を取り付ける等のために溶接をクラッド鋼合せ材46に施しても、その溶接による熱はジンクリッチ塗膜層18aに伝わりにくく、ジンクリッチ塗膜層18a中の亜鉛が溶融することが抑制されており、かつ、ジンクリッチ塗膜層18a中の亜鉛が溶融したとしても、分離領域48Aが設けられているので耐食性金属であるクラッド鋼合せ材46に接触することが抑制されており、本第3実施形態に係る防食被覆構造40においては、クラッド鋼合せ材46に溶接を施した場合でも、耐食性金属であるクラッド鋼合せ材46が亜鉛脆化割れを起こすことが抑制されている。
ただし、この分離領域48Aには、耐食性金属であるクラッド鋼合せ材46もジンクリッチ塗膜層18aも設けられていないので、分離領域48A(被防食面48D)におけるクラッド鋼母材44の腐食が懸念される。このため、本第3実施形態に係る防食被覆構造40では、プライマー塗膜層20aが分離領域48A(被防食面48D)の全面を覆うように設けられている。また、防食性をより向上させる観点から、このプライマー塗膜層20aの上には、防食層32aがさらに設けられている。
詳細には、プライマー塗膜層20aは、クラッド鋼42の端部の厚さ方向の切断面であるコバ面42Xの全面に設けられており、コバ面42Xの分離領域48Aだけでなく、コバ面42Xのクラッド鋼合せ材46の部位にもプライマー塗膜層20aは設けられており、プライマー塗膜層20aが確実にコバ面42Xの分離領域48Aの全面を覆うようにしている。そして、防食層32aが、プライマー塗膜層20aの全面を覆っており、さらにジンクリッチ塗膜層18aの全面も覆うように設けられており、防食性をより向上させている。また、クラッド鋼合せ材46は耐食性金属であり、表面が不活性であることが多いが、プライマー塗膜層20aをコバ面42Xの全面に設けてコバ面42Xのクラッド鋼合せ材46の部位もプライマー塗膜層20aで覆うことにより、コバ面42Xに設ける防食層32aがクラッド鋼合せ材46と直接に接触することがなくなり、防食層32aの付着性も良好になっている。
防食層32aの部位のうち、ジンクリッチ塗膜層18aの全面を覆う部位を、エポキシ樹脂塗料、ポリウレタン樹脂塗料、シリコンアクリル樹脂塗料、ふっ素樹脂塗料、ガラスフレーク含有エポキシ樹脂系塗料、変性エポキシ樹脂塗料、超厚膜型エポキシ樹脂塗料のうち少なくとも1種類からなる仕様にしてもよく、この場合には、ジンクリッチ塗膜層18aの全面を覆う防食層32aの部位は、重防食塗装と呼ばれる防食仕様となる。
(4)第4実施形態
図4は、本発明の第4実施形態に係る防食被覆構造50を模式的に示す断面図である。
本第4実施形態に係る防食被覆構造50は、第3実施形態に係る防食被覆構造40と同様に、クラッド鋼42のクラッド鋼母材44を防食する防食被覆構造である。クラッド鋼母材44の被防食面48は、第3実施形態に係る防食被覆構造40と同様に、耐食性金属であるクラッド鋼合せ材46に覆われている被防食面48Bと、被防食面48Bとは反対側の被防食面48である被防食面48Cと、クラッド鋼42の端部の厚さ方向の切断面であるコバ面42Xにおける被防食面48である被防食面48Dと、に区分けされるが、本第4実施形態に係る防食被覆構造50は、特にコバ面42Xにおける防食構造をより安定化させた防食構造である。
本第4実施形態に係る防食被覆構造50に用いられているプライマー塗膜層20bは、第1、第2実施形態に係る防食被覆構造10、30で用いたプライマー塗膜層20と同材質であり、また、本第4実施形態に係る防食被覆構造50に用いられているジンクリッチ塗膜層18bは、第1、第2実施形態に係る防食被覆構造10、30で用いたジンクリッチ塗膜層18と同材質であり、本第4実施形態に係る防食被覆構造50に用いられている防食層32bは、第2実施形態に係る防食被覆構造30に用いた防食層32と同材質であるので、それらについての説明は原則として省略する。
また、本第4実施形態に係る防食被覆構造50の対象とするクラッド鋼42は、第3実施形態に係る防食被覆構造40で対象としたクラッド鋼42と同一であるので、クラッド鋼42自体の説明は原則として省略する。
本第4実施形態に係る防食被覆構造50では、図4に示すように、クラッド鋼母材44の被防食面48Bは、クラッド鋼合せ材46に覆われて防食されており、被防食面48Bとは反対側のクラッド鋼母材44の被防食面48Cは、重防食塗装52に覆われて防食されている。
重防食塗装52は、被防食面48Cに設けられたジンクリッチ塗膜層18bの全面を覆うように、エポキシ樹脂塗料、ポリウレタン樹脂塗料、シリコンアクリル樹脂塗料、ふっ素樹脂塗料、ガラスフレーク含有エポキシ樹脂系塗料、変性エポキシ樹脂塗料、超厚膜型エポキシ樹脂塗料のうち少なくとも1種類からなる防食層54を被覆してなる防食仕様である。
そして、本第4実施形態に係る防食被覆構造50では、図4に示すように、クラッド鋼42のコバ面42Xを中心として、プライマー塗膜層20bを設け、その一部が重防食塗装52およびクラッド鋼合せ材46の端部領域の上に達するようにプライマー塗膜層20bを設け、さらに、プライマー塗膜層20bの上に防食層32bを設けている。このため、プライマー塗膜層20bおよび防食層32bが、コバ面42Xだけでなく、被防食面48B、48C側にまでわたって設けられているので、コバ面42Xへの水分や腐食促進物質等の浸透が起こりにくくなっており、また、重防食塗装52が端部(コバ面42X)から剥離してしまうことも防止されており、本第4実施形態に係る防食被覆構造50は、より安定化した防食構造になっている。
また、本第4実施形態に係る防食被覆構造50では、防食層32bはプライマー塗膜層20bの上に設けられているので、耐食性金属であり表面が不活性なことが多いクラッド鋼合せ材46に防食層32bが直接に接触することがなく、防食層32bの付着性も良好になっている。
(5)具体的な構造物や部材への本発明の適用例
具体的な構造物や部材への本発明の適用例について説明するが、ここで示す具体例は本発明を適用可能な具体例を示しているだけであり、本発明の適用対象がここで示す具体例に限定されるわけではない。
図5は、第3実施形態に係る防食被覆構造40を適用してなる箱桁橋60の箱桁62を模式的に示す鉛直断面図であり、図6は、箱桁橋60を側方(橋軸直角方向)から見た状態を模式的に示す側面図である。図5および図6において、防食被覆構造40の明確な図示はしていないが、底板62Aおよびウェブ62Bを構成するクラッド鋼42のコバ面42Xを含めた部位に防食被覆構造40(図3参照)が設けられている。図5において、符号210はプレキャストPC床版を示し、符号212はアスファルト舗装を示している。
図6に示すように、橋脚200の天端に支承部300が配置されていて、支承部300の上に箱桁62の端部が載っており、箱桁62の上にプレキャストPC床版210が配置されて、箱桁橋60が構成されている。橋脚200の上方のプレキャストPC床版210同士の間(橋軸方向に隣り合う箱桁62の端部同士の間の上方)には伸縮装置220が配置されている。伸縮装置220の止水部品が破損・劣化した場合や伸縮装置220が排水型の伸縮装置である場合には、水分や塩分等の腐食促進物質が伸縮装置220を介して上方から下方へと流れるため、箱桁62のコバ面(クラッド鋼42のコバ面42X)は厳しい腐食環境に置かれることになる。
箱桁橋60の箱桁62は、前述したように底板62Aおよびウェブ62Bにクラッド鋼42が用いられており、クラッド鋼42の部位のうち、耐食性金属であるクラッド鋼合せ材46が外側を向き、クラッド鋼母材44が内側を向いており、クラッド鋼母材44の内面(箱桁62内部に向いた面)にはジンクリッチ塗膜層18aが設けられ、コバ面42Xの全面にプライマー塗膜層20aが設けられ、ジンクリッチ塗膜層18aおよびプライマー塗膜層20aの上に防食層32aが設けられて構成されており、クラッド鋼42のコバ面42Xを含めた部位に第3実施形態に係る防食被覆構造40(図3参照)が適用されている。
また、箱桁62の内部に設けられた部材である、底板縦リブ62A1、横リブ62C、上フランジ62D、上フランジ先端縦リブ62D1、垂直補剛材62Eの表面(箱桁62の内部に向いた面)には、図示はしていないが、ジンクリッチ塗膜層18aが設けられ、その上に防食層32aが設けられている。
図7は、第3実施形態に係る防食被覆構造40を適用してなる支承構造70を模式的に示す片側断面図であり、中心線よりも左側は橋軸直角方向から見た側面図であり、中心線よりも右側は橋軸直角方向から見た鉛直断面図である。図7において、防食被覆構造40の明確な図示はしていないが、支承構造70において箱桁62の底板62A(クラッド鋼42からなる底板)に設けられたボルト用の貫通孔62A2、62A3の内周面であるコバ面を含めた部位に、防食被覆構造40(図3参照)が適用されている。
支承構造70は、橋脚200の天端に設けられた支承部300と、箱桁橋60の箱桁62の底板62A(クラッド鋼42からなる底板)のうち支承部300と接触する下面接合部位62Xとからなる。支承部300は、箱桁橋60の上部構造である箱桁62から伝達される荷重を箱桁橋60の下部構造である橋脚200に伝達する部材を有してなり、箱桁62と橋脚200の間に位置する部位である。支承部300は、橋脚200の天端に近い方から順に、ベースプレート302、支承本体304、ソールプレート306を有してなる。支承部300を構成する部材のうち一番下に位置するベースプレート302が、アンカー302Aによって橋脚200の天端に固定されている。
支承部300のソールプレート306が箱桁62の底板62A(クラッド鋼42からなる底板)の下面接合部位62Xと直接的に接触しているが、ソールプレート306もクラッド鋼42aで形成されており、ソールプレート306のクラッド鋼合せ材46aが、箱桁62の底板62Aを形成するクラッド鋼42のクラッド鋼合せ材46と直接接触している。ソールプレート306を形成するクラッド鋼42aは、クラッド鋼母材44aおよびクラッド鋼合せ材46aからなっているが、第3実施形態におけるクラッド鋼42(クラッド鋼母材44およびクラッド鋼合せ材46からなるクラッド鋼)と同一の素材からなっており、ソールプレート306を形成するクラッド鋼42aのクラッド鋼合せ材46aは、箱桁62の底板62Aを形成するクラッド鋼42のクラッド鋼合せ材46と同一の材質の耐食性金属である。ソールプレート306を形成するクラッド鋼42aのクラッド鋼合せ材46aの材質は、本例(図7に示す例)のように、異種金属接触腐食防止の観点から、箱桁62の底板62Aを形成するクラッド鋼42のクラッド鋼合せ材46と同一の材質にすることが好ましい。
支承構造70において、箱桁62の底板62A(クラッド鋼42からなる底板)にボルト用の貫通孔62A2、62A3が設けられており、箱桁62の底板62Aの直下に設けられたソールプレート306にも、箱桁62の底板の貫通孔62A2、62A3に対応する位置に、貫通孔306A、306Bが設けられている。ソールプレート取付ボルト308の軸部が貫通孔62A2を挿通し、ソールプレート取付ボルト308の頭部が貫通孔306Aにおいて孔の径が大きい部位の上面に係止しており、また、貫通孔62A3および貫通孔306Bには、セットボルト310の軸部が挿通して螺合しており、箱桁62と支承部300は連結している。
支承構造70において箱桁62の底板62A(クラッド鋼42からなる底板)に設けられたボルト用の貫通孔62A2、62A3の内周面であるコバ面を含めた部位に、防食被覆構造40(図3参照)が適用されているが、具体的には、箱桁橋60の箱桁62は、外面部分を含む主要部がクラッド鋼42で構成されており、クラッド鋼42の部位のうち、耐食性金属であるクラッド鋼合せ材46が外側を向き、クラッド鋼母材44が内側を向いており、クラッド鋼母材44の内面(箱桁62内部に向いた面)にはジンクリッチ塗膜層18aが設けられ、底板62A(クラッド鋼42からなる底板)のボルト用の貫通孔62A2、62A3の内周面であるコバ面の全面にプライマー塗膜層20aが設けられ、ジンクリッチ塗膜層18aおよびプライマー塗膜層20aの上に防食層32aが設けられて構成されており、ボルト用の貫通孔62A2、62A3の内周面であるコバ面を含めた部位に第3実施形態に係る防食被覆構造40(図3参照)が適用されている。
図8は、第3実施形態に係る防食被覆構造40を適用してなる板状のクラッド鋼42を吊り上げている状況を模式的に示す図および吊り上げに用いた吊りピース80を模式的に示す図であり、(A)は板状のクラッド鋼42を吊り上げている状況を模式的に示す正面図、(B)は板状のクラッド鋼42を吊り上げている状況を模式的に示す側面図であり、(C)は吊り上げに用いた吊りピース80を模式的に示す拡大図である。図8において、吊りピース80を取り付けた板状のクラッド鋼42においてコバ面42Xを含めた部位に、防食被覆構造40(図3参照)が適用されている。
板状のクラッド鋼42は、第3実施形態に係る防食被覆構造40で対象としたクラッド鋼42と同一であり、クラッド鋼母材44およびクラッド鋼合せ材46からなっており、クラッド鋼合せ材46は耐食性金属である。
板状のクラッド鋼42は、図8(A)、(B)に示すように、略正方形のクラッド鋼板であるが、その1辺の端部付近(コバ面42X付近)に、2つの吊りピース80が間隔を空けて、クラッド鋼42のクラッド鋼合せ材46の表面に溶接で取り付けられている。取り付けられた2つの吊りピース80の貫通孔80Aにワイヤー82が挿通されて連結されていて、クラッド鋼42はクレーン(図示せず)で吊り上げられている。
板状のクラッド鋼42のクラッド鋼母材44の表面にはジンクリッチ塗膜層18aが設けられ、板状のクラッド鋼42のコバ面42Xの全面にプライマー塗膜層20aが設けられ、ジンクリッチ塗膜層18aおよびプライマー塗膜層20aの上に防食層32aが設けられて構成されており、板状のクラッド鋼42のコバ面42Xを含めた部位に第3実施形態に係る防食被覆構造40(図3参照)が適用されている。
板状のクラッド鋼42のクラッド鋼合せ材46の表面に溶接で2つの吊りピース80が取り付けられているが、耐食性金属であるクラッド鋼合せ材46とジンクリッチ塗膜層18aとの間を隔てる分離領域48A(図3参照)が設けられているので、2つの吊りピース80をクラッド鋼合せ材46の表面に取り付けるために溶接を施しても、その溶接による熱はジンクリッチ塗膜層18aに伝わりにくく、ジンクリッチ塗膜層18a中の亜鉛が溶融することが抑制されており、かつ、ジンクリッチ塗膜層18a中の亜鉛が溶融したとしても、分離領域48A(図3参照)が設けられているので耐食性金属であるクラッド鋼合せ材46に接触することが抑制されており、耐食性金属であるクラッド鋼合せ材46が亜鉛脆化割れを起こすことが抑制されている。
図9は、第3実施形態に係る防食被覆構造40を適用してなる箱桁橋60の箱桁62の底板62Aに水抜きパイプ90を隅肉溶接92で取り付けた状態を模式的に示す鉛直断面図である。図9において、箱桁62の底板62A(クラッド鋼42からなる底板)に設けられた水抜き用の貫通孔62A4の内周面であるコバ面を含めた部位に、防食被覆構造40(図3参照)が適用されている。
水抜きパイプ90は、例えば耐食性金属であるステンレス鋼であり、箱桁62の底板62Aであるクラッド鋼42のクラッド鋼合せ材46に隅肉溶接92で取り付けられている。水抜きパイプ90及びクラッド鋼42のクラッド鋼合せ材46の材質がステンレス鋼の場合、異種金属腐食防止の観点から、それらのステンレス鋼の孔食指数の差が6以下であることが好ましい。また、異種金属腐食防止の観点から、水抜きパイプ90の材質は、溶接取り付けの対象のクラッド鋼合せ材46と同一の材質にすることがより好ましい。
図9に示すように、箱桁62の底板62A(クラッド鋼42からなる底板)に設けられた水抜き用の貫通孔62A4の内周面であるコバ面を含めた部位に、防食被覆構造40(図3参照)が適用されているが、具体的には、箱桁橋60の箱桁62は、外面部分を含む主要部がクラッド鋼42で構成されており、クラッド鋼42の部位のうち、耐食性金属であるクラッド鋼合せ材46が外側を向き、クラッド鋼母材44が内側を向いており、クラッド鋼母材44の内面(箱桁62内部に向いた面)にはジンクリッチ塗膜層18aが設けられ、底板62A(クラッド鋼42からなる底板)の水抜き用の貫通孔62A4の内周面であるコバ面の全面にプライマー塗膜層20aが設けられ、ジンクリッチ塗膜層18aおよびプライマー塗膜層20aの上に防食層32aが設けられて構成されており、水抜き用の貫通孔62A4の内周面であるコバ面を含めた部位に第3実施形態に係る防食被覆構造40(図3参照)が適用されている。
クラッド鋼42のクラッド鋼合せ材46の表面に、図9に示すように、水抜き用の貫通孔62A4と連通するように、隅肉溶接92で水抜きパイプ90が取り付けられているが、耐食性金属であるクラッド鋼合せ材46とジンクリッチ塗膜層18aとの間を隔てる分離領域48Aが設けられているので、水抜きパイプ90をクラッド鋼合せ材46の表面に取り付けるために溶接を施しても、その溶接による熱はジンクリッチ塗膜層18aに伝わりにくく、ジンクリッチ塗膜層18a中の亜鉛が溶融することが抑制されており、かつ、ジンクリッチ塗膜層18a中の亜鉛が溶融したとしても、分離領域48Aが設けられているので耐食性金属であるクラッド鋼合せ材46に接触することが抑制されており、耐食性金属であるクラッド鋼合せ材46が亜鉛脆化割れを起こすことが抑制されている。
(6)補足
第1~第4実施形態に係る防食被覆構造において、ジンクリッチ塗膜層18、18a、18bに替えて、亜鉛を含む金属溶射層を用いてもよい。
また、本発明の実施に際してクラッド鋼(合せ材に耐食性金属を用いたクラッド鋼)を用いる場合、大きな板の製造が容易である点、および爆着クラッド鋼や肉盛クラッド鋼よりも安価である点から、圧延クラッド鋼を用いることが好ましい。
10、30、40、50…防食被覆構造
12…金属基材
14…被防食面
14A…分離領域
16…耐食性金属
18、18a、18b…ジンクリッチ塗膜層
20、20a、20b…プライマー塗膜層
32、32a、32b、54…防食層
42、42a…クラッド鋼
42X…コバ面
44、44a…クラッド鋼母材
46、46a…クラッド鋼合せ材
48、48B、48C、48D…被防食面
48A…分離領域
52…重防食塗装
60…箱桁橋
62…箱桁
62A…底板
62A1…底板縦リブ
62A2、62A3、62A4…貫通孔
62B…ウェブ
62C…横リブ
62D…上フランジ
62D1…上フランジ先端縦リブ
62E…垂直補剛材
62X…下面接合部位
70…支承構造
80…吊りピース
80A…貫通孔
82…ワイヤー
90…水抜きパイプ
92…隅肉溶接
200…橋脚
210…プレキャストPC床版
212…アスファルト舗装
220…伸縮装置
300…支承部
302…ベースプレート
302A…アンカー
304…支承本体
306…ソールプレート
306A、306B…貫通孔
308…ソールプレート取付ボルト
310…セットボルト

Claims (13)

  1. 防食対象の金属基材の被防食面の一部を被覆する耐食性金属と、前記被防食面の他の一部を被覆するジンクリッチ塗膜層と、を備える防食被覆構造であって、
    前記被防食面において、前記耐食性金属と前記ジンクリッチ塗膜層の間には、それらを隔てる分離領域が設けられており、
    前記分離領域を覆うように設けられたプライマー塗膜層を有してなることを特徴とする防食被覆構造。
  2. 前記プライマー塗膜層は、前記耐食性金属の表面の少なくとも一部にも広がっていることを特徴とする請求項1に記載の防食被覆構造。
  3. 前記被防食面の一部を被覆する前記耐食性金属は、オーステナイト系ステンレス鋼、二相系ステンレス鋼及びニッケル合金のうちのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の防食被覆構造。
  4. 前記プライマー塗膜層と前記ジンクリッチ塗膜層は、防食層で被覆されていることを特徴とする請求項1に記載の防食被覆構造。
  5. 前記防食層の部位のうち、前記ジンクリッチ塗膜層を被覆する部位については、エポキシ樹脂塗料、ポリウレタン樹脂塗料、シリコンアクリル樹脂塗料、ふっ素樹脂塗料、ガラスフレーク含有塗料、変性エポキシ樹脂塗料、超厚膜型エポキシ樹脂塗料のうち少なくとも1種類からなることを特徴とする請求項4に記載の防食被覆構造。
  6. 前記防食層の上にさらに耐候性層が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の防食被覆構造。
  7. 前記ジンクリッチ塗膜層に替えて、亜鉛を含む金属溶射層が用いられていることを特徴とする請求項1に記載の防食被覆構造。
  8. 前記耐食性金属は、前記被防食面に本体鋼材部が取り付けられたクラッド鋼の合せ材であることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の防食被覆構造。
  9. 前記被防食面は、本体鋼材部と合せ材とからなるクラッド鋼の前記本体鋼材部の面であり、前記耐食性金属は前記クラッド鋼の前記合せ材であり、前記ジンクリッチ塗膜層は前記クラッド鋼の前記合せ材とは反対側の前記本体鋼材部の面を被覆しており、前記分離領域は、前記クラッド鋼を前記本体鋼材部と前記合せ材の両方を横切るように厚さ方向に切断または切削して形成された前記クラッド鋼の厚さ方向の面のうちの前記本体鋼材部の面であることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の防食被覆構造。
  10. 前記厚さ方向の面は、前記クラッド鋼のコバ面であることを特徴とする請求項9に記載の防食被覆構造。
  11. 前記厚さ方向の面は、前記クラッド鋼の厚さ方向の貫通孔の内側面であることを特徴とする請求項9に記載の防食被覆構造。
  12. 前記クラッド鋼は、圧延クラッド鋼であることを特徴とする請求項8に記載の防食被覆構造。
  13. 請求項1~7のいずれかに記載の防食被覆構造を有してなることを特徴とする鋼部材。
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