JP2004315873A - 防食化された鋼材および防食方法 - Google Patents

防食化された鋼材および防食方法 Download PDF

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Yoshiki Kamibayashi
佳樹 上林
Seiji Komatsu
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Abstract

【課題】長期にわたり鋼材の腐蝕が生じにくい防食性に優れた鋼材を提供する。
【解決手段】鋼材表面上に、内層、外層の少なくとも二層の表面層を設けた鋼材であって、鋼材に接する内層が金属溶射により形成されたものであり、外層が無機セラミック塗装によるものである鋼材である。溶射に用いる金属は、鋼材よりも電気化学的に卑な金属を用いる。例えば、亜鉛やアルミニウム、亜鉛アルミニウム合金等が好ましく鋼材の防食効果が発揮できる。無機セラミック塗料は、酸化珪素を主成分とし、これに無機酸化物や金属または非金属の粉末等を加えた物である。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定の表面層を設けることで防食化された鋼材に関し、または、水上構造物などの新設若しくは既設の鋼材に対して同様の加工を行なうことにより、鋼材を防食化する防食方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
桟橋の鋼管杭基礎や鋼矢板岸壁のように、鋼材を用い水中若しくは水中に没し得る位置に基礎を有する水上構造物では、水面から鋼材表面に供給される水の飛沫と、その飛沫が付着した水層に大気から取り込まれた溶存酸素との相互作用により鋼材部分に腐蝕が生じやすい。特に、水上構造物のうち海洋構造物では、これに海水中の塩素イオンの作用や干満の影響が加わるため、さらに腐食作用が著しいものとなる。例えば、防食処理が行われていないか若しくは不十分な鋼矢板岸壁では、鋼矢板の腐蝕により生じた孔から背面裏埋土が吸い出され、陥没被害が生じたりする現象が生じている。
【0003】
これらの飛沫帯または干満帯から大気中部における鋼材の腐蝕を防止するために、各種の防食方法が提案されている。例えば、塗装によるものとしては、無機ジンクリッチペイント(高濃度亜鉛末無機塗料)とエポキシ樹脂塗料を重ね合わせて用いる方法があり、また、有機ライニングによるものとしては、ウレタンエラストマやポリエチレン等を鋼材にライニングする方法がある。また、原油の高温瑠分で常温で固状若しくは半固状であるペトロラタムをライニングし、FRPやチタンでカバーを設ける方法がある。また、モルタルを鋼材にライニングしてFRP等でカバーを設けたり、RC(鉄筋コンクリート)ライニングを行なう方法もある。これらのうち、既設構造物ではペトロラタムライニングが比較的多く行なわれており、新設構造物では有機ライニングが比較的多く使用されている。
【0004】
また、アルミニウム等の金属を鋼材表面に溶射して表面層を形成する防食方法も知られている(例えば、特許文献1参照)。この方法では、溶射により形成された層が金属酸化物や気孔を含む多孔質であるために、エポキシ樹脂等の有機材料を含んだ有機系塗料を用いて封孔処理を行なって鋼材表面への水等の浸入を防止することも多い。
【0005】
しかし、これらのいずれの方法でも、表面層を形成する材料自体の紫外線等による劣化や、表面層にピンホールや傷が発生した場合の耐性に問題がある。すなわち、多くの場合に水上構造物の設置から10年〜15年も経過すると表面防食層の寿命が尽きてしまい、防食の耐用年数は十分とは言えない。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−069606号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、長期にわたり鋼材の腐蝕が生じにくい防食性に優れた鋼材を提供することを課題とする。または、そのような鋼材を用いた防食方法を提供することを課題とする。望ましくは、鋼材を用いた水上構造物に特に適した防食方法を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
発明の第1は、鋼材表面上に、内層、外層の少なくとも二層の表面層を設けた鋼材であって、鋼材に接する内層が金属溶射により形成されたものであり、外層が無機セラミック塗装によるものである鋼材である。ここで、無機セラミック塗装が、固形分換算による無機率が90重量%以上の塗装であることは望ましい。また、鋼材が水上構造物に用いられているものであることは望ましい。
【0009】
発明の第2は、鋼材の表面に対し、前処理に続いて金属溶射による内層を形成し、しかるのち無機セラミック塗装による外層を形成して、少なくとも二層の表面層を設ける鋼材の防食方法である。ここで、鋼材が水上構造物に用いられており、鋼材表面に表面層を設ける処理を行なうにあたり、鋼材表面を乾燥状態に保つための仮設用鋼製作業函体を用いる防食方法であることは望ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、発明をより具体的に説明する。発明の防食対象物は鋼材である。鋼材の組成としては、鉄と炭素とを含んで一般の鋼材として使用される炭素鋼で構成されたものを主として意味するが、それ以外に、ステンレス鋼のようにクロム、ニッケルなどの第三の合金元素を加えた特殊鋼により構成されたものであってもよい。また、鋼材の形状としては、矢板、鋼管杭、H鋼等のいわゆる構造材として用いられているものを使用できるが、必要により非構造材として用いられているものであってもよい。
【0011】
鋼材防食のためには、鋼材表面に内層と外層の少なくとも二層の表面層を設けている。内層は鋼材表面に直接接しており、金属の溶射により形成されたものである。ここで溶射とは、金属等の固体物質を加熱溶融して物体表面に吹き付け、物体表面で冷却、固化して皮膜を形成させる方法を言う。溶射では、真空蒸着や電気鍍金に比して比較的厚い皮膜を形成できること、ほとんどあらゆる材料の被覆が可能であること、比較的簡単な装置で皮膜を形成できること、既設の装置類に対しても溶射皮膜を形成できる等の長所を有するが、一方で、金属等の溶融滴が大気中を飛散する間に一部が酸化されるために、溶射皮膜には金属の扁平粒子のみならず酸化物としても堆積すること、さらに空気も巻き込んで、皮膜が多孔質の複雑な構造になる。そのため、溶射皮膜を形成したままでは海水や水蒸気が容易に皮膜内部に浸透し、鋼材表面に到達してしまう等の短所も有する。
【0012】
溶射に用いる金属は、鋼材が使用される雰囲気下において、鋼材を構成する金属材料よりも電気化学的に卑な金属を用いることが望ましい。例えば、淡水雰囲気下では亜鉛単体や亜鉛アルミニウム合金等を用いることができ、海水雰囲気下では、さらにアルミニウム単体も用いることができ好ましい。これにより溶射皮膜層にピンホールなどが生じても、溶射皮膜が周りに残存している限り、電気化学的作用により鋼材の防食効果が発揮される。
【0013】
溶射皮膜層の厚みは、溶射金属や使用雰囲気によって異なるが、10ミクロン以上400ミクロン以下が好ましく、100ミクロン以上300ミクロン以下がより好ましい。これにより溶射皮膜の付着状態を維持したままで、必要な防食効果を得ることが可能となる。
【0014】
溶射皮膜を鋼材表面に設けるにあたっては、鋼材表面の錆や水分、油分等の汚れを除去すると共に、鋼材の表面積を大きくして溶射される金属が付着しやすいようにするための粗面化処理を行う。粗面化処理は、研磨剤の微粒子を圧縮空気によって鋼材表面にたたきつけて表面を粗すブラスト処理により行なう。研磨剤としては、砂やガラスビーズ、還元鉄粉、アルミナ質や炭化珪素質の人造研磨剤、鋳鉄や鋼線を切断したカットワイヤ等を用いることができる。この粗面化処理は溶射皮膜自体の耐久性に影響し、粗面化処理の規格は、例えばJIS Z0313で規定されている。
【0015】
次に、粗面化された鋼材表面に対して金属溶射を行なう。溶射に用いる材料の加熱方法には、可燃ガスを用いるフレーム式や、電気によるアーク式やプラズマ式等がありいずれを用いてもよいが、新設若しくは既設の水上構造物に用いられる鋼材に対して施工する場合に、施工面積や施工性の観点からフレーム式を用いることが好ましい。また、フレーム式溶射ガンに供給する溶射材料の形態により、溶線式、溶棒式、粉末式等がありいずれを用いてもよいが、やはり同様の観点から溶線式が好ましい。
【0016】
次に、溶射により形成された内層の上に、無機セラミック塗料を塗布若しくは吹き付けることにより無機セラミックの塗膜層である外層を形成することが必要である。これにより溶射皮膜の封孔処理を行う。
【0017】
ここで無機セラミック塗料とは、酸化珪素を主成分とし、これに無機酸化物や、金属または非金属の粉末などの充填材に結合材を加えた、無機率が固形分換算で90重量%以上である水系の塗料を言う。好ましくは無機率が100重量%である完全無機セラミック塗料である。なお、ここにいう無機率とは、塗料中、固形分を構成する全物質の重量から炭素−炭素結合を有する有機化合物の重量を減算し、固形分を構成する全物質重量で除した重量比を言う。このような無機セラミック塗料による塗膜を設けることにより、防食性能の寿命が格段に改善される。
【0018】
無機セラミック塗料の無機充填材は、非水溶性の微粒子または繊維状物で、紫外線に対する耐性を有するものであり、塗布時には溶射皮膜の多孔質内部に浸入でき、乾燥後には溶射皮膜内部で塗膜の体積を維持したまま固化してアンカー効果を発揮できるようにするためのものである。具体的には、シリカやアルミナ、酸化チタン等の酸化物の微粒子または繊維状物、または亜鉛、ニッケル、スズやステンレスなどの金属粉を用いるのが好ましく、これら以外にもタルク、カオリン、ベントナイト、パーライト、ムライト、炭化ケイ素のごとき炭化物、窒化ケイ素のごとき窒化物、ホウ化物等、または、スズ、マンガン、コバルト、クロム、ニッケル等の酸化物を用いることもできる。一定の塗膜を形成するためには、無機充填材の平均粒子径または最大平均長さは、好ましくは0.01ミクロン以上30ミクロン以下、より好ましくは0.1ミクロン以上20ミクロン以下である。また、無機充填材の形状は球形や扁平形であってもよいし、不定形であってもよい。
【0019】
無機セラミック塗料の結合材は、無機充填材を包含して塗膜を形成すると共に、形成した塗膜が塩分や水、紫外線等の水上構造物に特有の環境条件に対して長期耐性を有するものである。具体的には、ケイ酸塩、コロイド状シリカ、コロイド状アルミナ等が挙げられ、好ましくはケイ酸塩である。ケイ酸塩の具体例としては、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸アミン等が挙げられる。結合材は無機充填材100重量部に対して、固形分換算で5〜30重量部の範囲内で使用するのが望ましい。より望ましくは10〜25重量部である。この範囲内で塗量が取り扱いやすく、塗膜の接着力も得やすい。また、乾燥性も良好である。
【0020】
無機セラミック塗料では、上記の無機充填材および結合材を、主に水に分散または溶解して用いる。水を用いることにより環境負荷が低減し、施工時の作業環境が良好となる。水を用いる量は、塗料の分散が良好でかつ取り扱いやすく、しかも塗膜が形成しやすいように適宜定めればよいが、無機充填材100重量部に対し10〜100重量部用いることが望ましく、より望ましくは10〜50重量部である。なお、水には、環境負荷が小さく作業環境を悪化させない範囲内で、必要により親水性の有機溶剤を混合して用いてもよい。例えば、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等をあげることができる。さらに、無機セラミック塗料には、必要に応じて界面活性剤、分散剤、顔料等を含めるようにしてもよい。
【0021】
なお、このような塗料による塗膜を設けることにより、防食性能の寿命が格段に改善される理由は明確ではないものの以下のように推測している。まず無機セラミック塗膜自体が塩分や水分、紫外線などによる劣化が生じにくい性質を有することと合わせ、セラミック塗膜自体には比較的小さな孔しか存しないために、溶射皮膜から溶出して生成する金属水酸化物が、セラミック塗膜内に留め置かれて塗膜外に流出しがたく、逆に腐蝕原因物質は塗膜内に進入しがたくなり、それらの現象の重なり合いのために溶射皮膜層の寿命が格段に長くなり、ひいては鋼材の腐蝕の進行が遅くなると考えられる。一方で、鋼材の電位は電気防食に必要な−780mV以下(銀−塩化銀電極基準)を維持しており、優れた防食効果と長い防食寿命を両立させることができる。
【0022】
無機セラミック塗料の塗膜を形成するにあたっては、適宜濃度を調整した塗料をローラー、刷毛、スプレー等により、50g/平方メートル以上300g/平方メートル以下程度の塗布量の範囲内で塗布し、その後5℃以上の常温下において5時間から10時間程度乾燥すればよい。なお、塗布量は溶射層の状態によっても変化するので適宜調整すればよく、複数回に分けて塗布してもよい。
【0023】
また、発明の防食効果を損ねない範囲内であれば、金属溶射層の上に、その溶射層の金属よりさらに電気化学的に卑な金属を溶射して溶射層を二層若しくは多層にしたり、溶射層と無機セラミックス層との間に別の層を設けたりしてもよい。
【0024】
このようにして、鋼材表面に少なくとも二層の表面層を設けて防食することにより、水中若しくは水中に没しうる位置に基礎を有し、鋼材が用いられた水上構造物若しくは海洋構造物の腐蝕耐久性を格段に向上せしめることができる。このような防食方法を用いる場合に、新設の構造物に対してはあらかじめ防食処理を施した鋼材を用いて建設してもよいし、構造物を建設した後に防食処理を行なってもよい。さらに、新設構造物のみならず、既設の構造物の水中部から飛沫帯または干満帯から大気中部において生じた鋼材の腐蝕を補修する際にも用いることができる。
【0025】
次に、新設、既設を問わず完成した後の水上構造物等に対する防食方法について説明する。既設の水上構造物若しくは海洋構造物で特に防食が必要な部分は、用いられている鋼材表面が水若しくは海水によって、常に濡れているか若しくは濡れやすい状態にある。このような鋼材表面に金属溶射を行なって内層を形成するにあたっては、鋼材表面の腐蝕部分を取り除くことは当然であるが、同様に鋼材表面に付着している水分や塩分等を取り除いて乾燥状態にする必要がある。
【0026】
このためには、杭打ち船等を用いて止水矢板を補修対象となる構造物の周囲に打ち込み、その内側の水を排水して陸上と同じ乾式の作業空間を形成する、いわゆる仮締切工法を用いて必要により補修を行なうとともに防食の工事を行なうことができる。
【0027】
望ましくは、対象構造物との間の止水機構を持ち、工場製作されたユニット分割可能で再使用可能な函体(仮設用鋼製作業函体)を曳航・組立て・据付け後、函体で囲まれた内側の水を排水し、作業空間と足場を確保する仮設用鋼製作業函体工法を用いる。この工法では、対象構造物の形状寸法と施工部位により、着底型、抱き付き型、抱き付き型密閉式、張り付け型等の様々な構造形式が可能で、構造物の状況に適した形式を選定することができる。この工法では、鋼材表面のドライ状態を、比較的短い工期と函体の大部分の再使用による比較的低いコストで実現することができる。そのため、この工法と金属溶射及び無機セラミック塗装による防食方法の組み合わせにより、金属溶射に必要な条件を満たしつつ、金属溶射に伴うコストを吸収して防食工事全体のコストを低減することが可能となる。また、工期も短縮される。この工法に用いる仮設用鋼製作業函体の例は、例えば、特許第1749148号や実用新案登録第2021195号等に記載されている。
【0028】
このような工法により、既設の水上構造物等の防食対象部分の鋼材表面を空気中に露出させ、洗浄により表面の汚染物や塩分を除去した後、鋼材表面をドライ状態にする。続いて必要により腐蝕部分をほぼ除去した後、ブラストによる前処理から溶射工程および無機セラミック塗装を行って防食処理する。無機セラミック塗装が十分に乾燥したあと、仮設用鋼製作業函体を撤去して防食工事が終了する。以下、実施例を用いて発明を説明する。
【0029】
【実施例1】
7.5cm×15cm×0.3cmの炭素鋼板を試験片として用い、この片面にブラスト処理を行い、表面を粗面化した。次に、アセチレンガスを用いた溶線式フレーム溶射ガンを用い、試験片のブラスト処理面に対して、アルミニウムを約200ミクロン厚みとなるように溶射した。続いて、無機セラミック塗料(日板研究所製のSSA−1000)を、刷毛を用いて溶射面の上に均一になるように塗布した。続いて25℃で10時間乾燥して試験片を調整した。なお、無機セラミック塗膜の厚みはおよそ50ミクロンであった。
【0030】
次に、この試験片の耐食性を以下の加速試験で評価した。上で作成した試験片を、過酸化水素水にNaClを3%含有させた評価液に20℃で24時間浸漬して、表面状態が変化していく途中経過および24時間経過後における状態を目視で観察した。また、炭素鋼板の電位測定と評価液のpH測定も行なった。
【0031】
その結果、24時間経過後も、電位は−900mVと低い状態を維持しており、鋼材の表面にはなんら変化が認められなかった。表面の一部には若干白く変色している部分が生じたが、これは、溶射層から一部溶け出した水酸化アルミニウムが、無機セラミック塗装の内部に留まって塗装の孔を塞いでいるために生じたものと考えられる。また、評価液は白濁してpHは8.76を示した。
【0032】
【比較例1】
無機セラミック塗装を行なわなかった以外は実施例1と同様にして試験片を得た。この試験片を用いて実施例1と同様にして耐食性の評価を行った。24時間経過後には、電位は−941mVと防食に必要な電位を保っており、鋼材の表面は腐蝕には至っていないものの、表面全体が荒れた状態となっていた。また、評価液中のpHは8.44であり、アルミニウムが評価液中に溶け出して白濁していた。
【0033】
【比較例2】
金属溶射を行なわなかった以外は実施例1と同様にして試験片を得た。この試験片を用いて実施例1と同様にして耐食性の評価を行った。24時間経過後は、電位は−525mVと必要な電位を上回ってしまい、また、試験への全面に腐蝕と褐色の変色が見られた。評価液中にも鉄が溶け出して褐色に変色しており、pHは8.37であった。
【0034】
【実施例2】
溶射に用いる金属をアルミニウム・亜鉛擬合金に代え、溶射厚みを100ミクロンとなるようにした他は、実施例1と同様にして試験片を得て、続いて実施例1と同様にして試験片の耐食性を評価した。24時間経過後、電位は−944mVと低い状態を維持しており、鋼材の表面には腐食はないが、若干の白い析出物が認められる。評価液は白濁しておりpHは9.33であった。
【0035】
【比較例3】
無機セラミック塗装を行なわなかった以外は実施例2と同様にして試験片を得た。この試験片を用いて実施例2と同様にして耐食性の評価を行った。1時間後には析出物が表面に現れた。24時間経過後には、腐蝕は生じていないものの、試験片の表面全面に多量の白色の析出物が付着し、評価液は白濁してpHは10.22であった。また、試験片の電位は−892mVであった。
【0036】
【発明の効果】
長期にわたり腐蝕が生じにくい防食性に優れた鋼材が得られる。また、溶射および塗装という比較的簡単な手段で優れた防食性を得ることができる。

Claims (5)

  1. 鋼材表面上に、内層、外層の少なくとも二層の表面層を設けた鋼材であって、鋼材に接する内層が金属溶射により形成されたものであり、外層が無機セラミック塗装によるものである鋼材。
  2. 無機セラミック塗装が、固形分換算による無機率が90重量%以上の塗装である請求項1に記載の鋼材。
  3. 鋼材が水上構造物に用いられているものである請求項1に記載の鋼材。
  4. 鋼材の表面に対し、前処理に続いて金属溶射による内層を形成し、しかるのち無機セラミック塗装による外層を形成して、少なくとも二層の表面層を設ける鋼材の防食方法。
  5. 鋼材が水上構造物に用いられており、鋼材表面に表面層を設ける処理を行なうにあたり、鋼材表面を乾燥状態に保つための仮設用鋼製作業函体を用いる請求項4に記載の防食方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2014527576A (ja) * 2011-07-27 2014-10-16 ノースロップ グラマン システムズ コーポレーション 接着接合鋼継手の腐食に対する保護用コーティング
WO2015116123A3 (en) * 2014-01-31 2015-10-22 Hewlett-Packard Development Company, L.P. Surface treatments of metal substrates

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