JP2007056327A - アーク式金属溶射法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 この発明は、防汚皮膜を形成する金属溶射法において、溶射作業性が良好であり、なおかつ、防汚性能が非常に優れている方法を提供するとともに、異種金属腐食を防ぐ処理を簡便、安価そして環境対策も同時に実現できる方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 基材に粗面形成材を塗布し、アーク式溶射機を用いて、ボンディング材料として、錫または錫合金の溶射を行い、重ねて銅または銅合金溶射を行えば、溶射作業性が良好であり、なおかつ、防汚性能が非常に優れた防汚皮膜が得られる。さらに、下地に絶縁塗装を行ってから粗面形成材を塗布することにより、鋼材等と電位が大きく異なる錫合金や銅合金との間に起こる異種金属腐食を防ぐことも可能となる。安全性の高い錫と銅を使用することにより環境対策も実現できる。
【解決手段】 基材に粗面形成材を塗布し、アーク式溶射機を用いて、ボンディング材料として、錫または錫合金の溶射を行い、重ねて銅または銅合金溶射を行えば、溶射作業性が良好であり、なおかつ、防汚性能が非常に優れた防汚皮膜が得られる。さらに、下地に絶縁塗装を行ってから粗面形成材を塗布することにより、鋼材等と電位が大きく異なる錫合金や銅合金との間に起こる異種金属腐食を防ぐことも可能となる。安全性の高い錫と銅を使用することにより環境対策も実現できる。
Description
この発明は、作業性、環境対応性、耐久性に優れる金属溶射皮膜を作製することを可能とし、特に、防汚皮膜を形成する工程において、優れた防汚性を発揮する金属溶射法に関する。
従来、海水中の船舶の底部外板や海水導入管内面等の構造物は、各種の海中生物が付着することにより、海水との抵抗が大きくなって船舶の運行効率が低下したり、導入管内が狭くなって機能を著しく低下したりする等の問題が生じている。
また、河川の淡水においても下水処理設備や水道水導入管内等に水生生物が付着して、その機能が低下する。また、付着生物を除去すると、水生生物は腐敗して悪臭を発するために、その処分にも大きな問題が生じている。
そこで、水性生物の付着対策として各種防汚剤を配合した水中防汚塗料を塗布する等の方法が取られている。以前は、船底にはトリブチル錫メタクリレートの共重合体等の有機錫化合物が広く用いられていた。しかし、有機錫化合物は、その毒性の問題により使用が制限されるようになっている。
最近は、シリコン系の防汚塗料や亜酸化銅など防汚作用のある物質を添加した防汚塗料が使用されているが、耐久性が低いために数年で塗り替える必要がある。また、防汚塗膜は軟らかいため衝撃により容易に塗膜が剥離する問題もある。シリコン系の防汚塗膜は常時没水状態にする必要もある。
一方、金属材料の分野においては、銅イオンが、防汚作用を有していることは、既に公知であるので、銅合金を防汚素材として貼り付けて使用し、又はキプロニッケルクラット鋼板を防汚材料として使用し、数十年の長期間の防汚効果を発揮することが期待されている。しかし、銅合金と鉄の接合部では異種金属腐食が発生する等の問題があり、初期施工費が高くなっている。
コンクリート等の粗面に銅合金を直接溶射する方法があるが、密着性に難があり溶射皮膜が短期間で剥離することがある。
鋼材等にブラスト処理を行ってから銅合金溶射を行うことは可能であるが、海水に侵漬した場合は、鉄と銅合金の電位差が大きいために、異種金属腐食で短期間に鋼材は赤錆が発生し銅合金溶射皮膜は剥離する。異種金属腐食を防ぐために鋼材に絶縁塗装を行うと、塗膜に銅合金溶射皮膜を密着させることは全くできない。
そこで、絶縁皮膜に粗面形成材を塗付することにより、銅合金溶射皮膜の密着性を向上させることが可能となる(実用新案第2047424号、粗面形成材とは特許第1626558号及び特許第2003726号で言う5〜200μmの粒子を含む組成物:大日本塗料(株)の商品名ブラスノン#21を言う)。FRP船の船底に粗面形成材を塗付してから銅合金溶射をすることにより10年以上も防汚性能が持続していることも確認している。しかし、溶射初期の溶射効率が低く実用的ではなかった。
さらに、銅合金溶射皮膜は、無機材料やプラスチックスや塗膜等に意匠生用途としての利用も考えられるが、塗膜等に粗面形成材を塗布して銅合金溶射を行うと、溶射初期には溶射効率が10%以下と低く、銅合金溶射皮膜の塗着重量を1000g/m2以上にしなければ連続溶射皮膜とならず、溶射時の素材温度が高くなって溶射皮膜が剥離することがあるのでので、高度な溶射作業技術とともに余分な材料費や作業費が必要となるので、大きな面積の溶射には向いていなかった。
これらの銅合金溶射皮膜の密着性を改善する方法として、ボンディング材料として最初に、亜鉛溶射、アルミニウム溶射、亜鉛・アルミニウム合金溶射、亜鉛・アルミニウム擬合金溶射を行い、その皮膜の上に銅合金溶射を行うと効率良く溶射することが可能であるが、海水に侵漬すると電位が大きく異なるために、異種金属腐食で下地の溶射皮膜から白錆が発生し、銅合金溶射皮膜を押し上げ剥離するので、初期の目的を達成することができなかった。
実用新案第2047424号(実公平6−15825号公報)
特許第1626558号(特公平2−54422号公報)
特許第2003726号(特公平7−825号公報)
銅合金は融点が高いため、溶射時の温度が高くなり、溶射直後の温度低下時に皮膜が収縮するので、前処理が適当でない場合には溶射皮膜と素地との接触面においてせん断力が発生し、素地から溶射皮膜が端部において剥離する可能性が大きくなる。
溶射材料が銅合金等の融点が高く、基材が金属でなく、無機材料やプラスチックスや塗膜等の熱伝導性が小さい場合は、溶射時の溶射皮膜は更に高温になり、温度低下時には溶射皮膜の剥離する可能性が更に大きくなる。
そこで、この発明は、防汚皮膜を形成する金属溶射法において、溶射作業性が良好であり、なおかつ、防汚性能が非常に優れている方法を提供することを課題とする。
さらに、各種下地の材料に対して、粗面形成材を塗付してからの銅合金溶射皮膜は意匠生や防汚性が良好である。しかし、溶射効率が低く作業性が悪いので、それを改善する必要がある。
そして、下地に絶縁塗装を行ってから粗面形成材を塗布することにより、鋼材等と電位が大きく異なる銅合金との間に起こる異種金属腐食を防ぐ処理を簡便、安価そして環境対策も同時に実現できる方法を提供することを課題とする。
以上の課題を解決するために、請求項1の発明は、基材に粗面形成材を塗布し、ボンディング材料として、錫または錫合金の溶射を行い、重ねて銅または銅合金溶射をするアーク式金属溶射法である。
銅合金溶射皮膜の溶射効率を良好にして、銅合金溶射皮膜と異種金属腐食を起こさず、粗面形成材への溶射効率が良好な溶射金属の検討を行った結果、銅合金溶射皮膜と電位が近似の金属で、毒性の問題もない錫と錫合金を採用した。
特に、アーク式金属溶射法によれば、溶射温度が低いため、融点が232℃と低い錫の溶射が非常に容易で、かつ錫の沸点が2270℃と高いために金属蒸気になり難いために溶射効率が良好である。
錫線材は少し軟らかいが溶射ガンの調整で十分に溶射効率を良好にすることが出来る。亜鉛などとの合金にすると硬さを調整することも可能で亜鉛が30%以下であれば銅合金溶射後の白錆発生も無く密着性も良好となる。
請求項2の発明は、溶射作業性が良好であり、なおかつ、防汚性能が非常に優れていることを特徴とする、基材に粗面形成材を塗布し、ボンディング材料として、錫または錫合金の溶射を行い、重ねて銅または銅合金溶射するアーク式金属溶射法である。
金属溶射法には電気のアークを利用する線材を溶融するアーク式溶射法とプロパンガスやアセチレンガスと酸素の燃焼熱を利用して線材を溶融させるフレーム溶射法が主体であるが、融点が高い銅合金溶射を行うと溶射時の皮膜温度が高くなり、融点が低い錫合金溶射皮膜の上に溶射すると皮膜が溶融して密着性が不十分になる。溶射温度が高くならない様にゆっくりと溶射すると作業効率が低下する。
溶射効率を上げるには溶射時の温度が上がり難い低電圧のアーク式溶射法が良好である。
錫や錫亜鉛合金線材を粗面形成材の上にアーク式金属溶射した場合の溶射効率は40〜60%にも達し、溶射塗着量を150g/m2以上に設定すると、粗面形成材を隠蔽した良好な外観の溶射皮膜が得られる。
この溶射皮膜に銅合金溶射を行うと、銅合金溶射の溶射効率は40〜60%と良好であり、銅合金溶射皮膜を200g/m2以上塗着させると外観が均一となり、意匠生も防汚性も良好となる。
粗面形成材の上に、直接銅合金溶射して連続溶射皮膜を形成させるには、1000g/m2の溶射皮膜を塗着させる必要があり、かつ、溶射速度を上げると溶射熱が蓄積して、溶射皮膜が剥離することを比較すると、本発明の溶射作業性は十倍以上向上することになる。
基材に粗面形成材を塗布し、ボンディング材料として、錫または錫合金の溶射を行い、重ねて銅または銅合金溶射するアーク式金属溶射を行った場合の防汚性を評価するために海水中に2年間の浸漬試験を行った結果は非常に良好であった。
銅合金溶射皮膜よりイオン化し易い錫溶射や錫亜鉛溶射皮膜の上に溶射するので、銅合金のイオン化が低下して防汚性が低下することが懸念されたが、銅合金溶射皮膜の防汚性は銅合金の微量作用(オリゴディナミー)に起因しているので、初期の防汚性も非常に良好であり、銅イオンの初期溶出が押さえられることとなり、返って長期防汚性が期待できる結果となった。
銅の腐食物の緑青(塩基性炭酸銅)は、人間に対して毒性があると考えられていたが、下等動物に対しては猛毒であるのに対して、高等動物に対しては毒性がなく、反対に微量で有るが必要な成分であることが明らかになっている。 1円硬貨(アルミニウム)以外の日本の硬貨は全て銅合金であり、腐食しても人間等の高等動物には毒性がないが、細菌等の培養実験の結果では下等生物に対しては毒性があり、繁殖しないことが確認されている。
また、海水中には、銅イオンが1〜3μg/L含まれており、90/10銅-ニッケル合金の海水中における溶解速度が、25μm/年以下(年間220g/m2以下)であることと、飲料水に含まれる銅イオンの最高許容濃度が1mg/Lに設定されていることから判断すると十分な安全性が確保できていると考えられる。
請求項3の発明は、下地に絶縁塗装を行ってから粗面形成材を塗付することにより、鋼材等と電位が大きく異なる錫合金や銅合金との間に起こる異種金属腐食を防ぐことを特徴とする、基材に粗面形成材を塗付、ボンディング材料として、錫または錫合金の溶射を行い、重ねて銅または銅合金溶射をするアーク式金属溶射法である。
下地鋼材に塗装する絶縁塗装は、耐水性が不良であったり、薄膜であったり、ピンホール等の塗膜欠陥があると、海水に長期間浸漬すると鋼材と溶射皮膜との間に電気が通じて異種金属腐食が生じて鋼材が腐食して赤錆となるので、絶縁塗装はエポキシ樹脂塗料等の耐水性が良好な塗料を塗装する。又塗膜欠陥が生じない様に2回塗り以上の塗り重ねが必要で、500μm以上の厚膜が必要で、また、十分に揮発分が蒸発して、硬化していることが必要である。絶縁塗膜は密着性を良好にするために目荒らしをしてから、粗面形成材を塗付する。その後、ボンディング材料として、錫または錫合金の溶射を行い、重ねて銅または銅合金溶射をアーク式金属溶射する。
従来、防汚剤として使用されていたトリブチル錫メタアクリレートの共重合体等の有機錫化合物は毒性が大きいために規制されているが、ボンディング材料として溶射する金属錫は毒性がなく安全で、金属錫をめっきしたブリキ鋼板は食品の缶詰の内面に使用されている安全な金属である。
請求項1の発明の基材に粗面形成材を塗付し、ボンディング材料として、錫または錫合金の溶射を行い、重ねて銅または銅合金溶射をするアーク式金属溶射法によれば溶射効率向上する。粗面形成材に直接銅または銅合金溶射をすると初期溶射効率は10%以下と低いが、ボンディング材料として、錫または錫合金の溶射を行って、その上に銅または銅合金溶射を行うと、初期溶射効率は40%以上と飛躍的に向上する。
さらに、粗面形成材に直接銅または銅合金溶射をすると溶射皮膜は均一な連続溶射皮膜にするのに溶射皮膜塗付重量を1000g/m2にしなければならなかったが、錫または錫合金の溶射を行って、その上に銅または銅合金溶射を行うと、溶射皮膜塗付重量は100g/m2でも均一な連続溶射皮膜を得ることができる。
請求項2の発明の溶射作業性が良好であり、なおかつ、防汚性能が非常に優れていることを特徴とする、基材に粗面形成材を塗付し、ボンディング材料として、錫または錫合金の溶射を行い、重ねて銅または銅合金溶射するアーク式金属溶射法によれば、銅合金溶射皮膜を海水に浸漬すると、初期から溶解速度は少なく、しかも、防汚性は良好な状態である。海水への経時でも溶解速度の変化が殆どなく防汚性も低下しない。そのために銅合金溶射皮膜による防汚性の寿命は長くなると期待できる。
請求項3の発明は、下地鋼材に絶縁塗装を行ってから粗面形成材を塗付することにより、鋼材等と電位が大きく異なる錫合金や銅合金との間に起こる異種金属腐食を防ぐことが出来るので、従来は鋼材等に銅又は銅合金を溶射すると鋼材は赤錆が発生するので防汚作用の用途などには実用化出来なかったが可能になった。
この発明の実施形態を、以下に示す。
[実施例1]素材のFRP板(3×300×300mm)は表面のゲルコート膜を#80研磨紙で研磨後、全面に粗面形成材(商品名:ブラスノン#21大日本塗料(株)製のエポキシ樹脂系2液性塗付型)をエアースプレー塗装(空気圧0.5Mp)で塗付した。固形分の塗着重量は45g/m2であった。1.3mmφ錫線材をアーク式金属溶射機SX200(サンメタ(株)製)にて二次電圧14V、搬線速度8m/分、二次電流70A、空気圧0.7Mpでその全面に2分間溶射した。溶射皮膜の塗着重量は350g/m2で溶射効率は良好で外観は均一であった。計算した溶射効率は43%で、皮膜比重を7.3とすると重量計算の溶射膜厚は48μmであった。その上に1.3mmφの銅90wt%/亜鉛10wt%の10%丹銅線材をアーク金属溶射機SX200にて二次電圧17V、搬線速度8m/分、二次電流180A、空気圧0.7Mpの条件で、その全面に3分30秒間溶射した。塗着重量は880g/m2で溶射効率が42%と非常に良好であり、外観が良好な連続膜の皮膜であった。皮膜比重が8.92とすると重量から計算の溶射膜厚は99μmであった。大阪湾芦屋港の海水中に2年間浸漬試験の結果はスライムの付着は少しあるが、水で簡単に洗い流せて防汚性は非常に良好であった。
[実施例1]素材のFRP板(3×300×300mm)は表面のゲルコート膜を#80研磨紙で研磨後、全面に粗面形成材(商品名:ブラスノン#21大日本塗料(株)製のエポキシ樹脂系2液性塗付型)をエアースプレー塗装(空気圧0.5Mp)で塗付した。固形分の塗着重量は45g/m2であった。1.3mmφ錫線材をアーク式金属溶射機SX200(サンメタ(株)製)にて二次電圧14V、搬線速度8m/分、二次電流70A、空気圧0.7Mpでその全面に2分間溶射した。溶射皮膜の塗着重量は350g/m2で溶射効率は良好で外観は均一であった。計算した溶射効率は43%で、皮膜比重を7.3とすると重量計算の溶射膜厚は48μmであった。その上に1.3mmφの銅90wt%/亜鉛10wt%の10%丹銅線材をアーク金属溶射機SX200にて二次電圧17V、搬線速度8m/分、二次電流180A、空気圧0.7Mpの条件で、その全面に3分30秒間溶射した。塗着重量は880g/m2で溶射効率が42%と非常に良好であり、外観が良好な連続膜の皮膜であった。皮膜比重が8.92とすると重量から計算の溶射膜厚は99μmであった。大阪湾芦屋港の海水中に2年間浸漬試験の結果はスライムの付着は少しあるが、水で簡単に洗い流せて防汚性は非常に良好であった。
[比較例1]実施例1と同様、素材のFRP板(3×300×300mm)は表面のゲルコート膜を#80研磨紙で研磨後、粗面形成材ブラスノン#21をエアースプレー(空気圧0.5Mp)で塗付した。固形分の塗着重量は45g/m2であった。錫溶射は行わずに、実施例1と同様の1.3mmφの10%丹銅線材をアーク式金属溶射機SX200にて二次電圧17V、搬線速度8m/分、二次電流180A、空気圧0.7Mpの条件で、その全面に3分30秒間溶射した。塗着重量は200g/m2と溶射効率は9%と非常に悪く、溶射皮膜は連続膜とはならず粗面形成材が透けていた。更に溶射を続けてもなかなか連続膜とはならず、溶射皮膜を連続膜にするためには冷却しながら全面に3分30秒間の溶射を3回繰り返す必要があった。その時の溶射皮膜の塗着重量は1250g/m2も必要であった。しかも、端部から溶射皮膜が少し剥離していた。この溶射試験板は、大阪湾芦屋港の海水中に2年間浸漬試験を行った結果は、スライムの付着は少しあるが、水で簡単に洗い流せて防汚性は非常に良好ではあった。しかし、この条件での溶射は大面積への適用は溶射効率が悪く困難である。
[実施例2]素材のサンドブラスト鋼板(4×100×300mm)の全面にエポキシ樹脂塗料を3回塗りの絶縁塗装を行い、1000μmの塗装膜厚とした。2日間乾燥後、#120研磨紙で塗膜表面の研磨を行い、粗面形成材ブラスノン#21をエアースプレー塗装にて固形分塗付重量を50g/m2塗付した。その上に1.3mmφの錫80wt%亜鉛20wt%の20%錫亜鉛合金線材をアーク式金属溶射機SX200にて二次電圧14V、搬線速度8m/分、二次電流70A、空気圧0.7Mpの条件で、その全面に1分30秒間溶射した。塗着重量は370g/m2で溶射効率は良好で外観は均一であった。計算した溶射効率は44%で、皮膜比重を7.3とすると重量計算の溶射膜厚は51μmであった。その上に1.3mmφの銅95wt%/亜鉛5wt%の5%丹銅線材をアーク金属溶射機SX200にて二次電圧17V、搬線速度8m/分、二次電流190A、空気圧0.7Mpの条件で、その全面に2分30秒間溶射した。溶射皮膜の塗着重量は800g/m2で溶射効率が41%と非常に良好であり、外観が良好な連続膜の皮膜であった。皮膜比重が8.92とすると重量計算の溶射膜厚は90μmであった。大阪湾芦屋港の海水中に2年間浸漬試験の結果はスライムの付着は少しあるが、水で簡単に洗い流せて防汚性は非常に良好であった。
[比較例2]実施例2と同様に素材のサンドブラスト鋼板(4×100×300mm)の全面にエポキシ樹脂塗料を3回塗りの絶縁塗装を行い、1000μmの塗装膜厚とした。2日間乾燥後、#120研磨紙で塗膜表面の研磨を行い、粗面形成材ブラスノン#21をエアースプレー塗装で行い、固形分塗付重量を50g/m2とした。その上に1.3mmφの亜鉛線材をアーク式金属溶射機SX200にて二次電圧15V、搬線速度8m/分、二次電流100A、空気圧0.7Mpの条件で、その全面に1分30秒間溶射した。塗着重量は390g/m2で溶射効率は良好で外観は均一であった。計算した溶射効率は47%で、皮膜比重を7.14とすると重量計算の溶射膜厚は55μmであった。その上に1.3mmφの銅95wt%/亜鉛5wt%の5%丹銅線材をアーク金属溶射機SX200にて二次電圧17V、搬線速度8m/分、二次電流190A、空気圧0.7Mpの条件で、その全面に2分30秒間溶射した。溶射皮膜の塗着重量は820g/m2で溶射効率が42%と非常に良好であり、外観が良好な連続膜の皮膜となった。皮膜比重が8.92とすると重量計算の溶射膜厚は92μmであった。しかし、大阪湾芦屋港の海水中に3ヶ月間の浸漬試験の結果は、異種金属接触腐食で全面が亜鉛の白錆が発生していて5%丹銅溶射皮膜は浮き上がっていて外観不良となり、フジツボ等の水性生物が付着して防汚性も不良であった。
[実施例3]素材の鉄筋コンクリート板(60×300×300mm)の表面のレイタンス層はディスクサンダー研磨で除去し、全面にエポキシ樹脂塗料にて約100μm絶縁塗装を行い乾燥させた。側面は鉄筋と溶射皮膜の間に異種金属腐食が生じない様に更にエポキシ樹脂塗料を1000μm塗装して2日間乾燥させた。その上の両面に粗面形成材ブラスノン#21をエアースプレー塗装して、固形分塗着重量を約50g/m2として一晩乾燥させた。更に1.3mmφの錫90wt%/亜鉛10wt%の10%錫亜鉛合金線材をアーク式金属溶射機SX200にて二次電圧14V、搬線速度8m/分、二次電流70A、空気圧0.7Mpの条件で、その両面に2分間溶射した。溶射皮膜の塗着重量は380g/m2で溶射効率は45%と良好で外観は均一であった。皮膜比重を7.3とすると重量計算の溶射膜厚は52μmであった。その上に1.3mmφの銅90%/ニッケル10%の10%キュプロニッケル合金線材をアーク金属溶射機SX200にて二次電圧17V、搬線速度8m/分、二次電流200A、空気圧0.7Mpの条件で、その両面に3分40秒間溶射した。溶射皮膜の塗着重量は900g/m2で溶射効率が41%と非常に良好であり、外観が良好な連続膜の溶射皮膜となった。皮膜比重が8.92とすると重量計算の溶射膜厚は101μmであった。大阪湾芦屋港の海水中に2年間浸漬試験の結果はスライムの付着は少しあるが、水で簡単に洗い流せて防汚性は非常に良好であった。
[比較例3]実施例3と同様に素材の鉄筋コンクリート板(60×300×300mm)の表面のレイタンス層はディスクサンダー研磨で除去し、全面にエポキシ樹脂塗料にて約100μm絶縁塗装を行い乾燥させた。側面は鉄筋と溶射皮膜の間に異種金属接触腐食が生じない様に更にエポキシ樹脂塗料を1000μm塗装して2日間乾燥させた。その上に粗面形成材ブラスノン#21を塗付しないで、1.3mmφの錫90wt%/亜鉛10wt%の10%錫亜鉛合金線材をアーク式金属溶射機SX200にて二次電圧14V、搬線速度8m/分、二次電流70A、空気圧0.7Mpの条件で、その両面に2分間溶射した。溶射皮膜の塗着重量は340g/m2で溶射効率は40%で外観は均一であった。皮膜比重を7.3とすると重量計算の溶射膜厚は47μmであった。その上に1.3mmφの銅90wt%/ニッケル10wt%の10%キュプロニッケル合金線材をアーク金属溶射機SX200にて二次電圧17V、搬線速度8m/分、二次電流200A、空気圧0.7Mpの条件で、その両面に3分40秒間溶射した。溶射皮膜は10%錫亜鉛合金層とエポキシ樹脂塗膜との間で剥離して浸漬試験を行うための溶射試験板を作製することは出来なかった。
[比較例4]実施例3と同様に素材の鉄筋コンクリート板(60×300×300mm)の表面のレイタンス層をサンドブラスト処理にて除去し、同時にコンクリートの両面を粗面化した。コンクリートの側面は鉄筋と溶射皮膜の間に異種金属接触腐食が生じない様に更にエポキシ樹脂塗料を1000μm塗装して2日間乾燥させた。コンクリートの両面には粗面形成材ブラスノン#21を塗付しないで、その上に1.3mmφの銅90%/ニッケル10%の10%キュプロニッケル合金線材をアーク金属溶射機SX200にて二次電圧17V、搬線速度8m/分、二次電流200A、空気圧0.7Mpの条件で、その両面に3分40秒間溶射した。溶射皮膜の塗着重量は560g/m2で溶射効率は23%であり、溶射皮膜は連続膜とはならなかった。更にその両面に同じ条件で3分40行間の溶射を行った結果、溶射皮膜は連続膜となった。但し、溶射皮膜の端部より溶射皮膜が浮き上がってきた。溶射皮膜の塗着重量は1260g/m2であった。大阪湾芦屋港の海水中に2年間浸漬試験の結果は溶射皮膜の剥離が拡大していて、一部鉄筋の腐食と考えられる赤錆が発生していて、水性生物が付着していて防汚性は不十分であった。この条件での溶射は大面積への適用は溶射効率が悪く困難で、防汚性も不十分である。
[比較例5]実施例1と同様、素材のFRP板(3×300×300mm)の表面のゲルコート膜を#80研磨紙で研磨後、粗面形成材ブラスノン#21を塗付せず。錫溶射は行わずに、実施例1と同様の1.3mmφの10%丹銅線材をアーク式金属溶射機SX200にて二次電圧17V、搬線速度8m/分、二次電流180A、空気圧0.7Mpの条件で、その全面に3分30秒間溶射した。しかし、FRP板は黒く焼けが生じるだけで、溶射皮膜は全く塗着しなかった。
「実施形態の効果」
この実施形態によれば、いずれの実施例においても比較例に対して、溶射作業性に優れ、高い防汚性が安定的に得られた。
この実施形態によれば、いずれの実施例においても比較例に対して、溶射作業性に優れ、高い防汚性が安定的に得られた。
Claims (3)
- 基材に粗面形成材を塗付し、ボンディング材料として、錫または錫合金の溶射を行い、重ねて銅または銅合金溶射することを特徴とするアーク式金属溶射法。
- 溶射作業性が良好であり、なおかつ、防汚性能が非常に優れていることを特徴とする請求項1記載のアーク式金属溶射法。
- 素地の鋼材等に絶縁塗装を行ってから粗面形成材を塗布することにより、鋼材等と電位が大きく異なる錫合金や銅合金との間に起こる異種金属腐食を防ぐことを特徴とする請求項1記載のアーク式金属溶射法。
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