JP2001079769A - 砥粒付基体およびその製造方法 - Google Patents

砥粒付基体およびその製造方法

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JP2001079769A
JP2001079769A JP25396799A JP25396799A JP2001079769A JP 2001079769 A JP2001079769 A JP 2001079769A JP 25396799 A JP25396799 A JP 25396799A JP 25396799 A JP25396799 A JP 25396799A JP 2001079769 A JP2001079769 A JP 2001079769A
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emulsion
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Takako Yamada
貴子 山田
Hirofumi Goto
宏文 後藤
Nobuyuki Ito
信幸 伊藤
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 機械的および化学的安定性に優れた砥粒付基
体、およびその製造方法を提供する。 【解決手段】 本発明の砥粒付基体は、重合性化合物お
よび重合体の少なくとも一方(ポリイミド系樹脂等)か
らなる粒子を導電性基体(SUS板等)の表面に電着し
て形成された電着層によって、該導電性基体に砥粒(ダ
イヤモンド砥粒等)が固定されていることを特徴とす
る。この砥粒付基体は、導電性基体の表面に上記粒子を
電着して製造される。上記粒子は、電着後に加熱硬化さ
せることが好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、機械的安定性およ
び化学的安定性に優れ、かつ形状選択の自由度が高い砥
粒付基体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、砥粒プレートの製造方法として
は、砥粒が混在したメタルボンド層をプレート(基体)
表面に形成する方法、プレート表面に砥粒をメッキで保
持する方法等が用いられている。メタルボンド層を形成
する方法では、メタルパウダーと砥粒とを混合した混合
粉を凹型内に充填して押し出し型で圧搾し、焼成および
ホットプレスを行うことにより前記メタルパウダーを焼
結固化して成形加工する。メッキで保持する方法では、
プレート表面に砥粒を振りかけた後、銅浴、ニッケル
浴、コバルト浴などのメッキ槽で本メッキする。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、これらの方法
により製造された砥粒プレートは、いずれも砥粒を金属
により固定しており、しかもこの金属が砥粒プレートの
表面に露出されたままとなっている。したがって、この
金属が薬品等により腐食されて、砥粒がプレートから脱
落する場合があった。また、金属により砥粒を固定する
これらの方法によると、砥粒をプレートに固定するにあ
たって、固定の強度は高いが耐衝撃性に欠けるなどのよ
うに総合的な砥粒保持性(機械的安定性)が不十分とな
り、このため砥粒がプレートから脱落する場合があっ
た。
【0004】また、上記の砥粒固定方法では、基体の形
状によっては砥粒の固定できない箇所が生じたり、砥粒
を基体に均一かつ確実に固定することが困難であったり
する等、使用できる基体の形状が製造上の都合によって
制限される場合があった。
【0005】本発明の目的は、機械的安定性および化学
的安定性に優れ、かつ多様な形状のものを製造すること
のできる砥粒付基体およびその製造方法を提供すること
にある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、重合性化
合物および重合体の少なくとも一方からなる粒子を電着
して形成された電着層によって砥粒を固定することによ
り、上記課題が解決されることを見出して本発明を完成
した。
【0007】すなわち、請求項1記載の砥粒付基体は、
重合性化合物および重合体の少なくとも一方からなる粒
子を導電性基体の表面に電着して形成された電着層によ
って、該導電性基体に砥粒が固定されていることを特徴
とする。
【0008】上記砥粒付基体においては、金属により砥
粒を固定していた従来の砥粒プレートとは異なり、上記
粒子から形成された電着層により砥粒を固定している。
この電着層は、通常の金属に比べて耐薬品性に優れた
(すなわち、化学的安定性の高い)ものとすることがで
きる。また、金属により固定した場合に比べて、この電
着層によると砥粒固定の耐衝撃性を向上させることがで
きるため、機械的安定性の高い砥粒付基体が得られる。
そして、上記粒子から形成された電着層により砥粒を固
定する本方法によると、様々な形状の導電性基体に砥粒
を容易に固定することができる。
【0009】請求項1記載の砥粒付基体は、例えば請求
項2記載のように、重合性化合物および重合体の少なく
とも一方からなる粒子を導電性基体の表面に電着するこ
とにより該導電性基体に砥粒を固定して製造することが
できる。上記粒子は、請求項3記載のように、電着され
た後に加熱硬化されることが好ましい。これにより砥粒
固定の強度が向上する。
【0010】以下、本発明につきさらに詳しく説明す
る。 〔砥粒〕本発明において用いる砥粒としては、被研磨材
料に対して研磨性のある粒子を、この砥粒付基体の使用
目的や加工される材料などに応じて選択すればよいが、
硬度2以上のものを使用することが好ましい。具体的に
は、ダイヤモンド、アルミナ、シリカ、炭化珪素、黒
鉛、フッ化黒鉛、窒化ホウ素、酸化ジルコニウム、酸化
セリウム等からなる微粒子が挙げられる。これらのうち
1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明においては、高い研磨速度が得られ、耐久性が高
いという理由から、一般にダイヤモンドからなる砥粒が
特に好適に用いられる。また、本発明の砥粒付基体を半
導体(シリコンウエハー配線)に利用する場合には、砥
粒としてアルミナ、シリカ、または酸化セリウムを使用
することが好ましい。
【0011】この砥粒の平均粒子径は特に制限されず、
この砥粒付基体の使用目的などに応じて選択すればよ
い。通常は0.01〜500μmであり、0.05〜3
00μmであることが好ましく、0.1〜200μmで
あることがさらに好ましい。この砥粒は電着層から露出
していてもよく、また露出していなくてもよい。砥粒の
少なくとも一部が上記電着層から露出している場合に
は、研磨等の作用がよく発揮されるので好ましい。
【0012】本発明の砥粒付基体において、電着層と砥
粒との合計重量に占める砥粒の割合は、特に制限される
ものではないが、通常は5〜70重量%であり、10〜
40重量%とすることが好ましい。
【0013】〔導電性基体〕本発明の砥粒付基体に使用
する導電性基体は、導電性を有する限りにおいてその材
質は特に限定されず、金属、非金属またはそれらの複合
体等のいずれからなるものでもよい。通常は、銅、ステ
ンレス、ニッケル、アルミ、鉄等が、導電性基体の材質
として好ましく使用される。また、導電性基体の形状も
特に限定されず、ペレット型、リング型、多角形型、円
型、凸型、凹型、あるいはこれらの形状を変形したり組
み合わせたりした形状などのいずれの形状でもよい。こ
の導電性基体には、砥粒が固定される側の面に、この砥
粒と略同径の穴が規則的にあるいはランダムに設けられ
ていてもよい。このような導電性基体を用いた場合に
は、基体表面の所望の位置に砥粒を配置することが容易
となるので、砥粒を例えば均一な分布で配置することが
できる。また、砥粒固定の強度も向上させることがで
き、特に砥粒の径が比較的大きい場合(例えば50μm
以上、より好ましくは100μm以上)に有効である。
【0014】〔電着層〕本発明の電着層は、「重合性化
合物および重合体の少なくとも一方からなる粒子」を導
電性基体に電着して形成されたものである。この電着層
は高分子樹脂または高分子ゴムからなり、高分子樹脂か
らなることが好ましい。ここで、「重合性化合物」とは
重合性基を有する化合物を指し、完全硬化前の前駆的重
合体、重合性オリゴマー、単量体などを含む意味であ
る。一方、「重合体」とは実質的に重合反応が完了した
化合物を指す。ただし、加熱、湿気などによりこの重合
体を電着後に架橋させることも可能である。上記粒子の
エマルジョン等を含む電着液に、砥粒を配置した導電性
基体を浸漬して電極とし、対極を配して電流を流すこと
により、導電性基体の表面に粒子が電着される。また、
上記粒子として、重合性化合物および重合体の少なくと
も一方と砥粒とからなる複合粒子を用いてもよい。この
場合には、導電性基体にこの複合粒子を電着することに
より砥粒が導電性基体上に配置される。この電着を可能
とするために、上記粒子は表面に電荷を有する。この表
面電荷はアニオン型でもカチオン型でもよいが、導電性
基体を陰極として電着することにより金属の溶出が防止
できることから、カチオン型であることが好ましい。
【0015】上記粒子は、ポリイミド系樹脂、エポキシ
系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素
系樹脂およびシリコン系樹脂、から選択される一種また
は二種以上からなることが好ましい。また、これらの樹
脂に加えてさらに他の成分を含んでもよい。また、これ
らの樹脂は互いに、あるいは他の成分と化学的に結合さ
れていてもよい。本発明においては、強固な塗膜が得ら
れることから、ポリイミド系樹脂を主成分とする粒子を
用いることが特に好ましい。ここで、「ポリイミド系樹
脂」とは、電着後の加熱などにより硬化可能な前駆的重
合体(たとえばポリアミック酸など。)、ポリイミド系
樹脂の形成に用いられる単量体、オリゴマーなどをも含
む意味であり、他の樹脂についても同様である。さら
に、この「ポリイミド系樹脂」とは、ポリイミド樹脂ま
たはその前駆的重合体、ポリイミド樹脂の形成に用いら
れる単量体と他の単量体との共重合体樹脂またはその前
駆的重合体、ポリイミド樹脂またはその前駆的重合体と
他の化合物との反応物などをも含む意味であり、他の樹
脂についても同様である。
【0016】本発明の電着層の形成においては、電着さ
れた粒子の樹脂成分をさらに加熱硬化させることが好ま
しい。この熱処理により、十分な硬度をもつ電着層が得
られ、砥粒の導電性基体への固着性を増すことができ
る。熱処理の条件は、特に限定されるものではないが、
好ましい加熱温度は100℃以上であり、特に好ましく
は150〜300℃である。加熱温度が100℃未満で
あると、硬化が不十分であるため十分な皮膜強度が得ら
れず、また基板への十分な密着力が得られない場合があ
る。一方、加熱温度が400℃を超えると、電着層を構
成する化合物が分解しやすいので好ましくない。本発明
においては、主としてポリイミド系樹脂前駆体またはエ
ポキシ系樹脂前駆体からなる粒子を電着し、次いでこれ
を加熱硬化させて電着層を形成することが好ましい。こ
れにより、砥粒を強固に固定し、かつ耐薬品性の高い電
着層を得ることができる。
【0017】上記電着層の厚さは、砥粒の平均粒子径、
導電性基体表面の形状、砥粒付基体の使用目的などによ
り異なるが、導電性基体の表面に上記穴が形成されてお
らず、あらかじめ導電性基体上に砥粒を配置してから電
着を行う場合には、砥粒の平均粒子径に対して25〜9
5%の厚さとすることが好ましく、50〜90%とする
ことがより好ましい。電着層の厚さが上記範囲未満では
砥粒固定の強度が不足する場合があり、また上記範囲を
超えると砥粒の露出部分が少なくなるため研磨等の性能
が低下する恐れがある。一方、砥粒を含む粒子を電着し
て樹脂−砥粒複合皮膜を形成する場合、この複合皮膜の
厚さは0.1μm〜200μmとすることが好ましく、
1μm〜100μmとすることがより好ましい。
【0018】以下、主としてポリイミド系樹脂からから
なる粒子のエマルジョン(以下、「ポリイミド系樹脂エ
マルジョン」という。)、主としてエポキシ系樹脂から
なる粒子のエマルジョン(以下、「エポキシ系樹脂エマ
ルジョン」という。)、主としてアクリル系樹脂からな
る粒子のエマルジョン(以下、「アクリル系樹脂エマル
ジョン」という。)、主としてポリエステル系樹脂から
なる粒子のエマルジョン(以下、「ポリエステル系樹脂
エマルジョン」という。)、主としてフッ素系樹脂から
なる粒子のエマルジョン(以下、「フッ素系樹脂エマル
ジョン」という。)および主としてシリコン系樹脂から
なる粒子のエマルジョン(以下、「シリコン系樹脂エマ
ルジョン」という。)の製造方法について説明する。
【0019】ポリイミド系樹脂エマルジョン 本発明の電着層は、ポリイミド系樹脂からなることが特
に好ましい。このような電着層を得る好ましい方法とし
ては下記の二種類が挙げられる。 〔1〕(A)有機溶媒可溶性のポリイミドと(B)親水
性ポリマーとの複合粒子からなるポリイミド系樹脂エマ
ルジョンを電着液として、この複合粒子を電着する方
法。 〔2〕(C)ポリアミック酸と(D)疎水性化合物との
複合粒子を含む粒子からなるポリイミド系樹脂エマルジ
ョンを電着液としてこの粒子を電着し、電着されたポリ
アミック酸を加熱により脱水閉環する方法。 これらの方法において使用するポリイミド系樹脂エマル
ジョンを製造する方法としては、上記〔1〕の方法につ
いては特開平11−49951公報に記載の方法が、ま
た上記〔2〕の方法について特開平11−60947号
公報に記載の方法が例示される。
【0020】上記〔1〕の方法において使用するポリイ
ミド系樹脂エマルジョンの製造方法についてさらに詳し
く説明する。 (A)有機溶媒可溶性のポリイミドの合成法は特に限定
されるものではないが、例えば、有機極性溶媒中、テト
ラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを混合して重
縮合させて、ポリアミック酸を得たのち、該ポリアミッ
ク酸を加熱イミド化法または化学イミド化法により脱水
閉環反応させることにより、ポリイミドを合成すること
ができる。また、テトラカルボン酸二無水物とジアミン
化合物との重縮合を多段階で行うことにより、ブロック
構造を有するポリイミドを合成することも可能である。
この有機溶媒可溶性のポリイミドは、例えば、カルボキ
シル基、アミノ基、水酸基、スルホン酸基、アミド基、
エポキシ基、イソシアネート基等の反応性基(a)を1
種以上有することが好ましい。反応性基(a)を有する
ポリイミドの合成方法としては、例えば、ポリアミック
酸の合成に使用されるカルボン酸二無水物、ジアミン化
合物、カルボン酸一無水物、モノアミン化合物等の反応
原料として、反応性基(a)を有する化合物を使用し、
脱水閉環反応後に反応性基(a)を残存させる方法等を
挙げることができる。
【0021】(B)親水性ポリマーは、親水性基とし
て、例えば、アミノ基、カルボキシル基、水酸基、スル
ホン酸基、アミド基等を1種以上有し、水に対する20
℃の溶解度が、通常、0.01g/100g以上、好ま
しくは0.05g/100g以上である親水性ポリマー
からなる。前記親水性基に加えて、前記(A)成分中の
反応性基(a)と反応しうる反応性基(b)を1種以上
有することが好ましい。このような反応性基(b)とし
ては、例えば、エポキシ基、イソシアネート基、カルボ
キシル基のほか、前記親水性基と同様の基等を挙げるこ
とができる。このような親水性ポリマーは、親水性基お
よび/または反応性基(b)を有するモノビニル単量体
を単独重合または共重合させるか、あるいはこれらのモ
ノビニル単量体と他の単量体とを共重合させることによ
り得ることができる。
【0022】この(A)有機溶媒可溶性のポリイミドと
(B)親水性ポリマーとを、反応性基(a)と親水性ポ
リマー中の反応性基(b)とが適切な反応性を有する組
み合わせとなるように選択し、該ポリイミドと該親水性
ポリマーとを、例えば有機溶媒中にて溶液状態で混合し
て、必要に応じて加熱しつつ、反応させたのち、この反
応溶液と水性媒体とを混合し、場合により有機溶媒の少
なくとも一部を除去することにより、該ポリイミドと該
親水性ポリマーとを相互に結合して同一粒子内に含む複
合粒子からなるポリイミド系樹脂エマルジョンを得るこ
とができる。
【0023】次に、上記〔2〕の方法において使用する
ポリイミド系樹脂エマルジョンの製造方法についてさら
に詳しく説明する。ポリイミドの前駆体である(C)ポ
リアミック酸の合成法は、特に限定されるものではない
が、例えば、有機極性溶媒中、テトラカルボン酸二無水
物とジアミン化合物との重縮合反応によりポリアミック
酸を得ることができる。また、テトラカルボン酸二無水
物とジアミン化合物との重縮合反応を多段階で行うこと
により、ブロック構造を有するポリアミック酸を合成す
ることも可能である。なお、ポリアミック酸を脱水閉環
させることにより部分的にイミド化したポリアミック酸
も使用可能である。
【0024】一方、(D)疎水性化合物は、前記ポリア
ミック酸中の少なくともアミド酸基と反応しうる基(以
下、「反応性基」という。)を有する化合物である。こ
の反応性基としては、例えば、エポキシ基、イソシアナ
ト基、カルボジイミド基、水酸基、メルカプト基、ハロ
ゲン基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル
基、ジアゾ基、カルボニル基等を挙げることができる。
これらの反応性基は、疎水性化合物中に1種以上存在す
ることができる。なお、「疎水性」とは、水に対する2
0℃の溶解度が、通常、0.05g/100g未満、好
ましくは0.01/100g未満、さらに好ましくは
0.005g/100g未満であることを意味する。
【0025】このような疎水性化合物としては、例え
ば、エポキシ化ポリブタジエン、ビスフェノールA型エ
ポキシ樹脂、ナフタレン系エポキシ樹脂、フルオレン系
エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、グリシジル
エステル型エポキシ樹脂、アリルグリシジルエーテル、
グリシジル(メタ)アクリレート、1,3,5,6−テ
トラグリシジル−2,4−ヘキサンジオール、N,N,
N’,N’,−テトラグリシジル−m−キシレンジアミ
ン、トリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルカル
ボジイミド、ポリカルボジイミド、コレステロール、ベ
ンジルアルコールp−トルエンスルホン酸エステル、ク
ロロ酢酸エチル、トリアジントリチオール、ジアゾメタ
ン、ジアセトン(メタ)アクリルアミド等から選択され
る1種または2種以上を使用することができる。
【0026】この(C)ポリアミック酸と(D)疎水性
化合物とを、例えば、有機溶媒中にて溶液状態で混合し
て反応させたのち、この反応溶液を水性媒体と混合し、
場合により有機溶媒の少なくとも一部を除去することに
より、ポリアミック酸と疎水性化合物とを同一粒子内に
含む複合粒子からなるポリイミド系樹脂エマルジョンを
得ることができる。
【0027】なお、上記〔1〕および〔2〕の方法にお
いて用いられるテトラカルボン酸二無水物は特に限定さ
れるものではなく、その例としては、ブタンテトラカル
ボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラ
カルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジシクロヘ
キシルテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカ
ルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,
4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−
2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−
c]−フラン−1,3−ジオン等の脂肪族テトラカルボ
ン酸二無水物あるいは脂環式テトラカルボン酸二無水
物;ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベ
ンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,
4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水
物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物;等を挙げるこ
とができる。これらのテトラカルボン酸二無水物は、単
独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0028】また、上記〔1〕および〔2〕の方法にお
いて用いられるジアミン化合物は特に限定されるもので
はなく、その例としては、p−フェニレンジアミン、
4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス
[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン等
の芳香族ジアミン類;1,1−メタキシリレンジアミ
ン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミ
ン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)
等の脂肪族ジアミンあるいは脂環式ジアミン類;2,3
−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノ−6−ジメチル
アミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−
5−フェニルチアゾール、ビス(4−アミノフェニル)
フェニルアミン等の、分子内に2つの第一級アミノ基お
よび該第一級アミノ基以外の窒素原子を有するジアミン
類;モノ置換フェニレンジアミン類;ジアミノオルガノ
シロキサン;等を挙げることができる。これらのジアミ
ン化合物は、単独でまたは2種以上を混合して使用する
ことができる。
【0029】エポキシ系樹脂エマルジョン エポキシ系樹脂エマルジョンの製造方法は特に限定され
るものではなく、従来公知の方法、例えば特開平9−2
35495号公報、同9−208865号公報に記載の
方法などによればよい。
【0030】アクリル系樹脂エマルジョン アクリル系樹脂エマルジョンの製造方法は特に限定され
るものではないが、例えば通常の乳化重合法により製造
できる。単量体としては一般的なアクリル系および/ま
たはメタクリル系単量体から選択される一種または二種
以上を用いればよい。このとき、粒子を電着可能とする
ために、アミノ基、アミド基、フォスフォノ基などのカ
チオン性基を有する単量体、またはカルボキシル基、ス
ルホン酸基等などのアニオン性基を有する単量体を共重
合させることが好ましく、その共重合量は使用する単量
体全体に対して5〜80重量%(より好ましくは10〜
50重量%)とすることが好ましい。上記アミノ基を有
する単量体の具体例としては、ジメチルアミノエチルア
クリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドな
どが好ましく使用される。
【0031】ポリエステル系樹脂エマルジョン ポリエステル系樹脂エマルジョンの製造方法は特に限定
されるものではなく、従来公知の方法、例えば特開昭5
7−10663号公報、同57−70153号公報、同
58−174421号公報に記載の方法などによればよ
い。
【0032】フッ素系樹脂エマルジョン フッ素系樹脂エマルジョンの製造方法は特に限定される
ものではなく、従来公知の方法、例えば特開平7−26
8163号公報に記載の方法などによればよい。
【0033】シリコン系樹脂エマルジョン シリコン系樹脂エマルジョンの製造方法は特に限定され
るものではなく、従来公知の方法、例えば特開平10−
60280号公報に記載の方法などによればよい。
【0034】〔アルコキシシラン〕上記粒子の電着は、
請求項5記載のように、上記粒子のエマルジョンと、下
記式(1)で示されるオルガノシラン、このオルガノシ
ランの有する加水分解性基の一部または全部が加水分解
された加水分解物およびこの加水分解物が部分的に脱水
縮合した部分縮合物から選択される少なくとも一種(以
下、「オルガノシラン縮合物等」という。)と、を含有
する電着液を用いて行われることが好ましい。こうして
得られた電着層は、特に電着後に加熱硬化させた場合に
は、電着層中でオルガノシラン縮合物等が架橋すること
により、硬度および耐薬品性に優れたものとなる。
【0035】
【化2】 (R1nSi(OR24-n (1) (式中、R1は水素原子または炭素数1〜8の一価の有
機基を示し、R2は炭素数1〜5のアルキル基、炭素数
1〜6のアシル基またはフェニル基を示し、nは1また
は2の整数である。R1およびR2は同一であってもよい
し、異なっていてもよい。)
【0036】上記式(1)において、R1の炭素数1〜
8の有機基としては、直鎖または分岐を有するアルキル
基、ハロゲン置換されたアルキル基、ビニル基、フェニ
ル基及び3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基等を
挙げることができる。なお、R1はカルボニル基を有し
ていてもよい。なお、R1は炭素数1〜4のアルキル基
またはフェニル基であることが好ましい。R2の炭素数
1〜5のアルキル基または炭素数1〜6のアシル基とし
ては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロ
ピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル
基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、アセチル
基、プロピオニル基、ブチリル基等が挙げられる。な
お、R2は炭素数1〜4のアルキル基であることが好ま
しい。
【0037】好ましく使用されるオルガノシランの例と
しては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキ
シシラン、イソブチルトリメトキシシラン及びフェニル
トリエトキシシランが挙げられる。これらのオルガノシ
ランは、1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用
してもよい。
【0038】上記「オルガノシラン縮合物等」は、本発
明の電着液中において、上記粒子と複合体粒子を形成し
ていることが好ましい。この「複合体粒子」とは、上記
粒子を構成する化合物とオルガノシラン縮合物等とが化
学的に結合したもの、上記粒子の表面または内部にオル
ガノシラン縮合物等が吸着したものなどを指す。このオ
ルガノシラン縮合物等の使用量は、上記粒子を100重
量部として0.1〜500重量部とすることが好まし
く、0.5〜250重量部とすることがより好ましい。
オルガノシラン縮合物等の使用量が0.1重量部未満で
は所望の効果が得られない場合があり、一方500重量
部を超える場合には金属への密着性などが低下する傾向
にある。
【0039】このような複合体粒子は、下記〔1〕また
は〔2〕の方法等によって製造することができる。な
お、これらの方法を組み合わせてもよい。 〔1〕上記粒子のエマルジョンに上記オルガノシランを
添加し、オルガノシランの少なくとも一部を上記粒子に
吸収させた後、このオルガノシランの加水分解反応およ
び縮合反応を進行させる。 〔2〕水系媒体に分散された上記オルガノシラン縮合物
等の存在下で上記粒子を生成させる反応を行う。
【0040】上記〔1〕の方法においてオルガノシラン
を粒子に吸収させるには、エマルジョン中にオルガノシ
ランを添加して十分に攪拌するなどの方法によればよ
い。このとき、添加したオルガノシランの10重量%以
上(より好ましくは30重量%以上)を粒子に吸収させ
ることが好ましい。吸収が不十分な段階でオルガノシラ
ンの加水分解・縮合反応が進んでしまうのを避けるため
に、反応系のpHを通常4〜10、好ましくは5〜1
0、さらに好ましくは6〜8に調製することができる。
オルガノシランを粒子に吸収させるための処理温度は7
0℃以下とすることが好ましく、より好ましくは50℃
以下、さらに好ましくは0〜30℃である。処理時間は
通常5〜180分であり、20〜60分程度とすること
が好ましい。吸収されたオルガノシランを加水分解・縮
合させる際の温度は、通常30℃以上、好ましくは50
〜100℃、より好ましくは70〜90℃であり、好ま
しい重合時間は0.3〜15時間、より好ましくは1〜
8時間である。
【0041】また、上記〔2〕の方法においては、上記
オルガノシランを、ホモミキサーまたは超音波混合機等
を用いて、アルキルベンゼンスルホン酸等の強酸性乳化
剤の水溶液中で混合し、加水分解・縮合させることによ
って、水系媒体に分散されたオルガノシラン縮合物等が
得られる。このオルガノシラン縮合物等の存在下で、好
ましくは乳化重合により上記粒子を生成させればよい。
【0042】(用途)本発明の砥粒付基体は、砥粒の材
質、砥粒の粒径および形状、この砥粒付基体による処理
時間などにより、各種材料の研磨、研削、凹凸化など
(以下、「研磨等」という。)に利用することができ、
砥石、研削加工用砥石のツルア等として有用である。こ
の砥粒付基体は、酸性またはアルカリ性のスラリーを用
いても腐食されにくく、砥粒の脱落が生じにくいので、
電子材料、半導体などの製造における研磨等に好適であ
る。また、本発明の砥粒付基体は、その形状に関して製
造上の制限を受けにくいことから、被研磨材料の研磨に
あたり、この被研磨材料の形状や加工目的に合わせて、
研磨効率のよい形状の砥粒付基体を自由に選択すること
ができる。これにより研磨性能を高めることができる。
【0043】(作用および効果)金属の表面に、この金
属の耐薬品性を高めるための保護層を設ける方法として
は、樹脂等の有機溶媒溶液を塗布する方法、ポリテトラ
フロロエチレン等を粉体塗装する方法なども考えられ
る。しかし、硬質砥粒プレート等においては、これらの
方法によると砥粒の表面にも保護層が形成されてしま
い、硬質砥粒プレートの使用前にこの砥粒上の保護層を
除去しなくては研磨等の性能が発揮されない。しかも、
これらの方法はいずれも砥粒の上方(反プレート表面
側)から保護層を形成するものなので、複雑な形状を有
する砥粒の下部(プレート側)に隙間なく密着した保護
層を形成することは困難である。このため、上述のよう
に砥粒上の保護層を除去した後には砥粒と保護層とのあ
いだに隙間が生じ、ここから下地の金属が腐食されてし
まうため十分な保護効果を得ることができない。また、
この隙間により砥粒の保持性が不足する。本発明の電着
層は、金属等に比べて化学的安定性に優れている。この
ため、本発明の砥粒付基体においては上記のような保護
層は不要である。
【0044】
【発明の実施の形態】以下、実施例および比較例により
本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下におい
て、特記しない限り、「部」および「%」は重量基準で
ある。
【0045】(1)エマルジョンの合成 以下の合成例1〜5により、電着液に用いる粒子のエマ
ルジョンを合成した。
【0046】(合成例1:ポリイミド系樹脂エマルジョ
ン)テトラカルボン酸二無水物として3,3’,4,
4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物3
2.29g(90ミリモル)および1,3,3a,4,
5,9b−ヘキサヒドロ−5(テトラヒドロ−2,5−
ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フ
ラン−1,3−ジオン3.00g(10ミリモル)、ジ
アミン化合物として2,2−ビス[4−(4−アミノフ
ェノキシ)フェニル]プロパン36.95g(90ミリ
モル)およびオルガノシロキサンLP7100(信越化
学製の商品名)2.49g(10ミリモル)を、N−メ
チル−2−ピロリドン450gに溶解して、室温で12
時間反応させた。その後、この反応溶液に、ピリジン3
2gおよび無水酢酸71gを添加し、100℃で3時間
脱水閉環反応を行った。次いで、反応溶液を減圧留去し
て精製し、固形分10%のポリイミド溶液を得た。ジエ
チレングリコールモノエチルエーテル100部を入れた
反応容器を、窒素ガス雰囲気下で85℃に保持し、この
反応容器に、n−ブチルアクリレート65部、ジメチル
アミノエチルアクリレート30部、グリシジルメタアク
リレート5部およびアゾビスイソブチロニトリル1部か
らなる混合液を5時間かけて連続的に添加しつつ、撹拌
下で溶液重合を行なった。滴下終了後、85℃でさらに
2時間撹拌を続けて、溶液重合を完結させ、固形分50
%のアクリルポリマー溶液を得た。ポリイミド溶液50
部(固形分)とアクリルポリマー溶液30部(固形分)
とエピコート828(油化シェルエポキシ社製の商品
名)20部を混合し、70℃×3時間反応させた後、酢
酸3部を徐々に添加して混合し、pH調整を行った。次
いで、蒸留水1000部を徐々に添加しつつ強く撹拌し
て、カチオン性のポリイミド系樹脂エマルジョンを得
た。
【0047】(合成例2;ポリアミック酸系エマルジョ
ン)テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリ
カルボキシシクロペンチル酢酸二無水物22.4g(1
00ミリモル)、ジアミン化合物として2,2−ビス
〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン4
1.1g(100ミリモル)を、N−メチル−2−ピロ
リドン450gに溶解させ、60℃で6時間反応させ
た。減圧留去により、濃縮を行い、固形分15%のポリ
アミック酸溶液を得た。前記ポリアミック酸の溶液70
部(固形分)に対して、エピコート828(油化シェル
エポキシ社製)30部を添加して十分混合し、80℃×
60分反応させたのち、トリエタノールアミン10部を
添加した蒸留水1000部に徐々に加えながら強く撹拌
して、アニオン性のポリアミック酸エマルジョン(ポリ
イミド系樹脂エマルジョンの一例である)を得た。
【0048】(合成例3:エポキシ系樹脂エマルジョ
ン)トリレンジイソシアネートと2−エチルヘキサノー
ルからなるブロックイソシアネート46.3部と、エピ
コート828(油化シェルエポキシ社製の商品名)とジ
エチルアミンとを反応させて得られたエポキシアミン付
加物89.3部とを混合し、pH調節剤として酢酸3.
8部を加えた。これを、イオン交換水1200部中に攪
拌しながら投入することによって、カチオン性のエポキ
シ系樹脂前駆体を主成分とする分散粒子のエマルジョン
を得た。
【0049】(合成例4:アクリル系樹脂エマルジョ
ン)イオン交換水200部、コータミン24(花王株式
会社製、界面活性剤の商品名)1部を反応器に仕込み、
窒素気流下で系を60℃まで昇温した後、V−50(和
光純薬株式会社製、開始剤の商品名)を仕込んで重合反
応を開始させた。反応開始直後から、イオン交換水30
部、ブチルアクリレート20部、メチルメタクリレート
77部、DMAPAA−Q3部(興人株式会社製の商品
名)、コータミン24 0.3部、エマルゲンE−92
0(花王株式会社製、界面活性剤の商品名)2部からな
るモノマーエマルジョンを、3時間かけて連続的に滴下
した。滴下終了後、系を65℃に昇温してさらに3時間
反応させることによって、カチオン性のアクリル系樹脂
重合体を主成分とする分散粒子のエマルジョンを得た。
【0050】(合成例5:ポリエステル系樹脂エマルジ
ョン)ジメチルテレフタレート466部、ジメチルイソ
フタレート388部、5−ナトリウムスルホイソフタル
酸ジメチル178部、エチレングリコール443部、ネ
オペンチルグリコール400部、酢酸亜鉛0.44部、
酢酸ナトリウム0.04部、三酸化アンチモン0.43
部を反応器に仕込み、140〜220℃で4時間かけて
エステル交換反応を行った。次に260℃20mmHg
の真空下重縮合反応を1時間行ってポリエステル系樹脂
を得た。このポリエステル系樹脂30部をイソプロパノ
ール14部と水56部の混合液中に入れ、70〜75℃
で3時間かけて分散させることによって、カチオン性の
ポリエステル系樹脂重合体を主成分とする分散粒子のエ
マルジョンを得た。
【0051】(合成例6:ポリイミド系樹脂/アルコキ
シシラン複合エマルジョン)合成例1で得られたポリイ
ミド系樹脂エマルジョン80部(固形分)にメチルトリ
エトキシシラン20部を攪拌しながら添加し、70℃×
4時間反応を行うことによって、ポリイミド系樹脂/ア
ルコキシシラン複合粒子のエマルジョンを得た。
【0052】(合成例7:ポリイミド系樹脂/アルミナ
複合エマルジョン)合成例1で得られたポリイミド系樹
脂エマルジョン50部(固形分)にアルミナスラリー
(平均粒子径0.1μm)50部(固形分)を攪拌しな
がら添加し、ポリイミド系樹脂/アルミナ複合エマルジ
ョンを得た。この複合エマルジョンに含まれるアルミナ
は、このエマルジョンを電着液に用いて製造された砥粒
付基体において砥粒として作用する。
【0053】(合成例8:ポリイミド系樹脂/PVA/
酸化セリウム複合エマルジョン)合成例1で得られたポ
リイミド系樹脂エマルジョン40部(固形分)にポリビ
ニルアルコール(PVA)溶液10部(固形分)、酸化
セリウムスラリー(平均粒子径0.1μm)50部(固
形分)を攪拌しながら添加し、ポリイミド系樹脂/PV
A/酸化セリウム複合エマルジョンを得た。この複合エ
マルジョンに含まれる酸化セリウムは、このエマルジョ
ンを電着液に用いて製造された砥粒付基体において砥粒
として作用する。
【0054】(1−2)砥粒付基体の作製 〔実施例1〕砥粒付基体の製造は、導電性基体としての
SUS板(直径30mm)上に砥粒としてのシリカ(平
均粒子径50μm)を振りかけて、合成例1で得られた
ポリイミド系樹脂エマルジョンを含む電着液に浸漬し、
定電圧法により陰極側のSUS板上に粒子を電着した。
その後、電着された粒子を100℃で10分間加熱し、
さらに250℃で30分間加熱して硬化させることによ
り、厚さ30μmの電着層によってシリカ砥粒がSUS
板に固定された砥粒付基体を得た。
【0055】〔実施例2〕砥粒の材質として酸化セリウ
ム(平均粒子径80μm)を使用し、電着液として合成
例5で得たポリエステル系樹脂エマルジョンを使用し、
電着層の厚さを40μmとした点以外は、実施例1と同
様にして砥粒付基体を得た。
【0056】〔実施例3〕砥粒の材質としてアルミナ
(平均粒子径50μm)を使用し、電着液として合成例
2で得たポリアミック酸系エマルジョンを使用し、電極
の正負を逆転させた点以外は、実施例1と同様にして砥
粒付基体を得た。
【0057】〔実施例4〕導電性基体の材質としてアル
ミニウム板、砥粒の材質としてシリカ(平均粒子径50
μm)、電着液として合成例4で得たアクリル系樹脂エ
マルジョンを使用した点以外は、実施例1と同様にして
砥粒付基体を得た。
【0058】〔実施例5〕砥粒の材質としてダイヤモン
ド(平均粒子径100μm)を使用し、電着液として合
成例6で得られたポリイミド系樹脂/アルコキシシラン
複合エマルジョンを使用し、電着層の厚さを50μmと
した点以外は、実施例1と同様にして砥粒付基体を得
た。
【0059】〔実施例6〕砥粒の材質としてシリカ(平
均粒子径50μm)を使用し、電着液として合成例3で
得られたエポキシ系樹脂エマルジョンを使用した点以外
は、実施例1と同様にして砥粒付基体を得た。
【0060】〔実施例7〕実施例1と同様のSUS板
を、合成例7で得たポリイミド系樹脂/アルミナ複合エ
マルジョンを含む電着液に浸漬し、定電圧法により陰極
側のSUS板上に粒子を電着した。その後、電着された
粒子を100℃で10分間加熱し、さらに250℃で3
0分間加熱して樹脂を硬化させることにより、導電性基
体上に厚さ50μmの樹脂−砥粒複合皮膜を形成して、
アルミナ砥粒が固定された砥粒付基体を得た。
【0061】〔実施例8〕電着液として合成例8で得た
ポリイミド系樹脂/PVA/酸化セリウム複合エマルジ
ョンを使用した点以外は、実施例7と同様にして酸化セ
リウム砥粒が固定された砥粒付基体を得た。
【0062】〔比較例1〕導電性基体としてのSUS板
(直径30mm)上に砥粒としてのシリカ(平均粒子径
50μm)を振りかけて、電着液としてのニッケル−リ
ンメッキ液(上村工業株式会社製、商品名「ニムデンS
X」)に浸漬し、この金属プレート上に厚さ7μm、砥
粒共析量50%の無電解ニッケル−リン/砥粒メッキ膜
を形成した。これを加熱炉内に収容し、大気雰囲気中に
て300℃で60分間焼成してメッキされた金属を焼結
することにより、シリカ砥粒が固定された砥粒付基体を
得た。
【0063】(2)性能評価 上記実施例1〜8および比較例1の砥粒付基体の性能を
下記の方法により評価した。その結果を表1および表2
に示す。
【0064】〔研磨速度〕得られた砥粒付基体を用いて
以下の条件で研磨を行い、研磨速度(μm/分)を測定
した。被研磨物としては、#2000ダイヤペレットで
前加工した125mm×125mmの石英ガラス板を用
いた。 研磨加工圧力 120g/cm2 回転数 25rpm 研磨加工時間 10分間
【0065】〔耐薬品性〕得られた砥粒付基体を、5重
量%塩酸水溶液、5重量%硫酸水溶液、10重量%硝酸
水溶液、5重量%水酸化ナトリウム水溶液および42重
量%塩化第二鉄水溶液に、それぞれ常温で24時間浸漬
した。浸漬の前後において砥粒付基体の単位面積当たり
の重量変化を測定し、また砥粒脱落の程度を目視評価す
ることにより耐薬品性を調べた。 ○;重量減少量1mg/mm2未満、砥粒脱落5%未
満。 ×;重量減少量1mg/mm2以上、砥粒脱落5%以
上。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】表1および表2から判るように、比較例1
の砥粒付基体では重量減少および砥粒脱落が生じた酸性
またはアルカリ性の各種薬品に対しても、実施例1〜8
の砥粒付基体はいずれも耐薬品性が良好であった。ま
た、同じシリカ砥粒を、樹脂成分により基体に固定した
実施例1、4および6と、金属メッキにより基体に固定
した比較例1との比較から判るように、実施例1、4お
よび6の砥粒付基体は耐薬品性(化学的安定性)および
機械的安定性の双方において金属メッキ品よりも優れる
ことから、砥粒の脱落が防止されるので研磨効率が高
い。このため、比較例1に比べて実施例1、4および6
では研磨速度が向上した。
【0069】
【発明の効果】本発明の砥粒付基体によると、従来の砥
粒プレートと同等以上の研磨速度を維持しながら、導電
性基体上に砥粒を強固に固定させることができる。この
砥粒付基体は、電着層によって砥粒を固定していること
から、耐薬品性に優れるため砥粒の脱落を防ぐことがで
きる。また、砥粒の固定における強度と耐衝撃性のバラ
ンスが良いことから、砥粒の機械的安定性にも優れる。
従って、本発明の砥粒付基体は、砥石、研削加工用砥石
のツルア等として好適に使用することができる。また、
本発明の製造方法によると、上記のように優れた性能を
有する砥粒付基体が得られる。この製造方法によると、
被研磨材料の形状等に合わせた形状の砥粒付基体とする
ことができるので、高い研磨効率が得られる。
フロントページの続き (72)発明者 伊藤 信幸 東京都中央区築地二丁目11番24号 ジェイ エスアール株式会社内 Fターム(参考) 3C063 AA02 AA10 AB01 BB01 BB02 BB03 BC03 BG01 BH03 CC02 CC13 EE10 FF22

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重合性化合物および重合体の少なくとも
    一方からなる粒子を導電性基体の表面に電着して形成さ
    れた電着層によって、該導電性基体に砥粒が固定されて
    いることを特徴とする砥粒付基体。
  2. 【請求項2】 重合性化合物および重合体の少なくとも
    一方からなる粒子を導電性基体の表面に電着することに
    より、該導電性基体に砥粒を固定することを特徴とする
    砥粒付基体の製造方法。
  3. 【請求項3】 上記粒子を電着後に加熱硬化させる工程
    を含む請求項2に記載の砥粒付基体の製造方法。
  4. 【請求項4】 上記粒子は、粒子表面に電荷を有し、ポ
    リイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ポ
    リエステル系樹脂、フッ素系樹脂およびシリコン系樹脂
    から選択された少なくとも一種の樹脂からなる請求項2
    または3に記載の砥粒付基体の製造方法。
  5. 【請求項5】 上記粒子の電着は、 上記粒子のエマルジョンと、 下記式(1)で示されるオルガノシラン、該オルガノシ
    ランの加水分解物および該加水分解物の部分縮合物から
    選択された少なくとも一種と、 を含有する電着液を用いて行われる請求項2から4のい
    ずれか一項に記載の砥粒付基体の製造方法。 【化1】 (R1nSi(OR24-n (1) (式中、R1は水素原子または炭素数1〜8の一価の有
    機基を示し、R2は炭素数1〜5のアルキル基、炭素数
    1〜6のアシル基またはフェニル基を示し、nは1また
    は2の整数である。R1およびR2は同一であってもよい
    し、異なっていてもよい。)
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006328548A (ja) * 2006-08-22 2006-12-07 Jsr Corp 表面処理液及び表面処理部材

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