JP2001064728A - 溶接性及び歪時効後の靭性に優れた60キロ級高張力鋼の製造方法 - Google Patents

溶接性及び歪時効後の靭性に優れた60キロ級高張力鋼の製造方法

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JP2001064728A
JP2001064728A JP23992399A JP23992399A JP2001064728A JP 2001064728 A JP2001064728 A JP 2001064728A JP 23992399 A JP23992399 A JP 23992399A JP 23992399 A JP23992399 A JP 23992399A JP 2001064728 A JP2001064728 A JP 2001064728A
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steel
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weldability
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Shinichi Suzuki
伸一 鈴木
Minoru Suwa
稔 諏訪
Noriki Wada
典己 和田
Takayuki Kobayashi
孝之 小林
Akiyoshi Tsuji
章嘉 辻
Kazuo Komata
一夫 小俣
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JFE Engineering Corp
Original Assignee
NKK Corp
Nippon Kokan Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】この発明は、溶接性並びに歪時効後の靭性に優
れた60キロ級加速冷却鋼の製造方法を提供する。 【解決手段】 重量%で、C:0.04〜0.09%、
Si:0.1〜0.5%、Mn:1.2〜1.8%、N
b:0.01〜0.05%、sol.Al:0.002
〜0.07%、N:0.001〜0.004%を含み、
且つPcm≦0.20%、Ceq(WES)≦0.42
%を満足し、更にCr,Mo,Cu,Ni,V,Ti,
Caの一種又は二種以上を含有する鋼を、950℃以上
1250℃以下に加熱し、720℃以上で圧延後、72
0℃以上Ar3点以下の温度から、400〜650℃ま
で、冷却速度2℃/秒以上で加速冷却する。Pcm=C
+Mn/20+Si/30+Cu/20+Ni/60+
Cr/20+Mo/15+V/10+5B, Ceq
(WES)=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+
Cr/5+Mo/4+V/14

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、水圧鉄管、圧力
容器、ラインパイプ及び海洋構造物等に用いられる60
キロ級構造用鋼で、特に低成分設計でも高強度が得ら
れ,熱処理コストの削減が可能な直接焼入れ焼戻し鋼
で、曲げなどの冷間加工後においても優れた低温靭性を
有する歪時効後の靭性に優れた60キロ級構造用鋼の製
造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】鋼を冷間で塑性変形すると歪時効脆化と
呼ばれる靭性が劣化する現象が生ずる。歪時効脆化に間
しては主に自動車ボデイ用の薄鋼板を対象に研究が行な
われてきたが、近年、構造物の信頼性に対する要求が高
まり、厚鋼板においても素材段階のみならず加工や不慮
の事故などにより塑性変形を受けた後の靭性が問題視さ
れるようになってきた。
【0003】歪時効脆化を評価する試験として5%の引
張り予歪を付与し、250℃で1時間の時効処理後シャ
ルピー試験を行なう歪時効シャルピー試験が知られ、近
年、材料評価試験の一つとして要求される事例が増えて
いる。
【0004】厚鋼板を対象とする歪時効脆化抑制の技術
として、特開平5−320820号、特開昭59−18
2915号及び特開昭56−127750号等がある
が、いずれも一般的な600MPa級厚肉鋼板を対象と
した技術ではない。
【0005】特開平5−320820号には引張り強度
400MPa級の球状船首用低降伏点焼入れ鋼が開示
されている。鋼材組織を整粒化し、歪時効後の靭性劣化
を防止するものであるが、C量が0.002〜0.03
%、他の強化元素も殆ど含有されていない成分組成が対
象であり、60キロ級鋼に適用することは出来ない。
【0006】特開昭59−182915号はTMCP型
500MPa級鋼での歪時効脆化を抑制する製造方法を
開示している。TMCP50キロ鋼を冷間加工した場
合、冷間加工後の脆化がフェライト・ベイナイト組織の
フェライト相に歪が集中することにより生じることに着
目し、フェライト中の固溶N,固溶Cを冷却停止温度の
制御により低減させ、フェライト相の脆化を抑制する技
術である。このため、室温付近まで冷却され、焼入れ組
織となる60キロ級鋼には適用できない。
【0007】特開昭56−127750号には600M
Pa級鋼の歪時効脆化抑制技術が記載されているが、本
技術はVN析出型の鋼において、0.01%以上のN含
有により生ずる歪時効脆化をCaまたはMgの添加によ
り抑制できることを示している。しかし、本技術は、a
s rollあるいはノルマで製造するVN鋼に限って
その効果を発揮するもので、実施例の鋼もC量が0.1
2%以上と高く、Pcmも0.25%以上と溶接施工性に
劣る鋼が記載され、現在の一般的な需要家の要望に応え
るものではない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】以上、述べたように、
溶接施工性に優れた60キロ級厚肉鋼材で塑性変形させ
た後の脆化を抑制する技術は未だ完成されていない。本
発明は、溶接性に優れ、かつ歪時効後にも優れた靭性を
有する60キロ級高張力鋼の製造方法を提供するもので
あり、具体的には溶接性に優れ、かつ歪時効シャルピー
試験の破面遷移温度vTrs(aged)がー40℃以
下となる加速冷却型60キロ級高張力鋼の製造方法を提
供する。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者等は,加速冷却
鋼について塑性変形を受けた後の靭性劣化の原因、及び
その防止技術について鋭意検討を行った。その結果、加
速冷却材は、再加熱焼入れ材に比較するとオーステナイ
ト組織の細粒化が困難で、粗いベイナイト組織となり、
粒界面積は小さくなる。
【0010】その為、加速冷却停止後の空冷時に粒界に
析出するセメンタイトは再加熱焼入れ材の場合より粗大
化し、歪が加わった場合のセメンタイト周辺の歪集中も
大きく、著しい歪脆化を生じることを把握した。そこ
で、粒界面積を増大させる方法について検討を重ね、加
速冷却時に旧オーステナイト粒界に数μm以下の膜状も
しくは点列状のフェライトを生成させた場合、実質的に
粒界面積が増大し、セメンタイトが微細化され、歪脆化
の抑制が可能なことを見出した。
【0011】図1は表1の鋼種Dを用い、圧延後の加速
冷却開始温度が歪時効前後のシャルピー脆性―延性破面
遷移温度(vTrs)に及ぼす影響について調査した結
果を示すもので、加速冷却開始温度がAr3点(鋼種D
では757℃)以下とした場合に、歪時効による靭性の
劣化量(歪時効後のvTrs−歪時効前のvTrs)が
小さくなり、また、加速冷却開始温度が720℃以下で
は歪時効前の靭性が低下している。
【0012】以上の結果より、鋼の成分組成としては未
再結晶温度域での圧延歪蓄積からの変態を促進させるオ
ーステナイト粒界の活性化に有効なNbの添加、フェラ
イト生成元素であるSiの適量添加が重要であり、加速
冷却条件としては、熱間圧延を720℃以上で終了後、
フェライトを適度に析出させるため、Ar3点〜720
℃の温度域から加速冷却することの重要性が確認され
た。
【0013】本発明は以上の知見を基に更に検討を加え
てなされたものである。
【0014】1. 重量%で、C:0.04〜0.09
%、Si:0.1〜0.5%、Mn:1.2〜1.8
%、Nb:0.01〜0.05%、sol.Al:0.
002〜0.07%、N:0.001〜0.004%を
含み、且つPcm≦0.20%、Ceq(WES)≦
0.42%を満たす鋼を、950℃以上1250℃以下
に加熱し、720℃以上で圧延終了後、720℃以上A
r3点以下の温度域より、400℃以上650℃以下の
温度まで2℃/秒以上で加速冷却することを特徴とする
溶接性及び歪時効後の靭性に優れた60キロ級高張力鋼
の製造方法。
【0015】但し、Pcm=C+Mn/20+Si/3
0+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15
+V/10+5B,Ceq(WES)=C+Mn/6+
Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/1
4とする。
【0016】2. 鋼組成として、更に重量%でCr:
0.1〜0.5%を含有する1記載の溶接性及び歪時効
後の靭性に優れた60キロ級高張力鋼の製造方法。
【0017】3. 鋼組成として、更に重量%でMo:
0.02〜0.3%、Cu:0.1〜0.6%の一種ま
たは二種を含有する1又は2記載の溶接性及び歪時効後
の靭性に優れた60キロ級高張力鋼の製造方法。
【0018】4. 鋼組成として、更に重量%でNi:
0.1〜0.5%を含有する1乃至3の何れかに記載の
溶接性及び歪時効後の靭性に優れた60キロ級高張力鋼
の製造方法。
【0019】5. 鋼組成として、更に重量%でV:
0.01〜0.08%を含有する1乃至4の何れかに記
載の溶接性及び歪時効後の靭性に優れた60キロ級高張
力鋼の製造方法。
【0020】6. 鋼組成として、更に重量%でTi:
0.005〜0.02%、Ca:0.001〜0.00
4%の一種または二種を含有する1乃至5の何れかに記
載の溶接性及び歪時効後の靭性に優れた60キロ級高張
力鋼の製造方法。
【0021】7. Ar3点以上900℃未満の温度域
で累積圧下率10%以上60%以下の圧延工程を具備し
たことを特徴とする1乃至6の何れかに記載の溶接性及
び歪時効後の靭性に優れた60キロ級高張力鋼の製造方
法。
【0022】
【発明の実施の形態】以下に本発明における成分組成、
製造条件について説明する。
【0023】1.成分組成 C:0.04%以上0.09%以下 Cは所定の強度を確保するため添加する。0.04%未
満では厚肉材の場合60キロ級の引張り強度を確保する
ことが困難で、0.09%を超えると,歪時効後の靭性
が劣化するため、0.04%以上0.09%以下添加す
る。
【0024】Si:0.1%以上0.5%以下 Siは強力なフェライト生成元素であり、圧延後加速冷
却開始までの間に、旧オーステナイト粒界に膜状もしく
は点列状のフェライトを生成させるため添加する。0.
1%未満ではその効果が十分でなく、0.5%を超える
と効果が飽和し、溶接熱影響部の靭性が著しく劣化する
ため、0.1%以上0.5%以下添加する。
【0025】Mn:1.2%以上1.8%以下 Mnは所定の強度を確保するために添加する。1.2%
未満では厚肉材の場合60キロ級の引張り強度を確保す
ることが困難で、1.8%を超えると、溶接熱影響部の
靭性が著しく劣化するため1.2%以上1.8%以下添
加する。
【0026】Nb:0.01%以上0.05%以下 Nbは、圧延時の未再結晶温度域を広げオーステナイト
の再結晶を抑制し、加速冷却時のオーステナイト粒界を
活性化させ、膜状もしくは点列状フェライトの生成を容
易とする。また、加速冷却停止後の空冷時にNb炭化物
として析出し、強度上昇に有効なため添加する。0.0
1%未満ではそれらの効果が不十分で、0.05%超え
では著しいNb炭化物の析出強化により靭性が劣化する
ため0.01%以上0.05%以下添加する。
【0027】sol.Al:0.002%以上0.07
%以下 Alは脱酸のため添加する。sol.Al量で0.00
2%未満の場合、その効果が十分でなく、0.07%を
超えて添加すると鋼材の表面疵が発生しやすくなるた
め、0.002%以上0.07%以下添加する。
【0028】N:0.001%以上0.004%以下 Nは、圧延加熱時AlあるいはTiと結びつきAlN,
TiNを生成し、オーステナイト粒を微細化させる。
0.001%未満ではその効果が十分でなく、0.00
4%を超えて含有すると加速冷却後も固溶Nにより著し
い歪時効脆化を生じるため、0.001%以上0.00
4%以下とする。
【0029】Pcm≦0.20、Ceq(WES)≦
0.42 Pcm,Ceq(WES)は、溶接低温割れ性、溶接熱
影響部の靭性の指標で、Pcmが0.20%を超えた場
合、予熱無しの溶接では低温割れが生じる可能性があ
り、Ceq(WES)が0.42を超えた場合、大入熱
溶接の熱影響部靭性が著しく劣化するためPcm≦0.
20、Ceq(WES)≦0.42とする。ここでPc
m=C+Mn/20+Si/30+Cu/20+Ni/
60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B,Ce
q(WES)=C+Mn/6+Si/24+Ni/40
+Cr/5+Mo/4+V/14とする。
【0030】以上が本発明鋼における基本的な成分組成
であるが、所望する特性を向上させるため、Cr,M
o,Cu、Ni,V,Ti,Caを単独または複合添加
することが可能である。
【0031】Cr:0.1%以上0.5%以下 Crは、強力なフェライト生成元素で圧延後加速冷却開
始までの間に、旧オーステナイト粒界に膜状もしくは点
列状のフェライトを生成させるため添加する。0.1%
未満では、その効果が不十分で、0.5%を超えると焼
入れ性が著しく高まり、膜状もしくは点列状のフェライ
トの生成が困難になるため0.1%以上0.5%以下添
加する。
【0032】Mo:0.02%以上0.3%以下、C
u:0.1%以上0.6%以下の一種または二種 Moは強度を向上させ、特に厚肉材で有効なため添加す
る。0.02%未満ではその効果が十分でなく、0.3
%を超えると溶接性及び溶接熱影響部の靭性が著しく劣
化するため0.02%以上0.3%以下とする。Cuは
強度を向上させるため添加する。
【0033】0.1%未満ではその効果が十分でなく、
0.6%を超えて添加するとCu割れの懸念が高まるた
め0.1%以上0.6%以下とする。
【0034】Ni:0.1%以上0.5%以下 Niは靭性を向上させるため添加する。0.1%未満で
はその効果が十分でなく、0.5%を超えると鋼材コス
トの上昇が著しいので0.5%以下とする。
【0035】V:0.01%以上0.08%以下 Vは加速冷却後の空冷時、炭化物として析出し、強度を
向上させるため添加する。0.01%未満ではその効果
が十分でなく、0.08%超えでは著しいV炭化物の析
出強化により靭性が劣化するため0.01%以上0.0
8%以下とする。
【0036】Ti:0.005%以上0.02%以下、
Ca:0.001%以上0.004%以下の一種又は二
種 Ti、Caは母材靭性並びに溶接熱影響部の靭性を向上
させるため添加する。Tiは圧延加熱時あるいは溶接
時、TiNを生成しオーステナイト粒径を微細化する。
【0037】0.005%未満ではその効果が十分でな
く、0.02%を超えて添加すると圧延時にTiNbの
複合炭化物が析出し、加速冷却停止後の空冷時のNb炭
化物の析出量が不足するようになり強度低下が生じるた
め、0.005%以上0.02%以下とする。
【0038】CaはCa硫化物として鋼中に存在し、圧
延加熱時あるいは溶接時、オーステナイト粒径を微細化
する。0.001%未満ではその効果が十分でなく、
0.004%を超えて添加すると多量のCa硫酸化物に
より清浄度を著しく劣化させるため、0.001%以上
0.004%以下とする。
【0039】更に本発明ではB,O、P,Sを以下の範
囲に規制することが望ましい。
【0040】B:0.0002%以下、O:0.001
%以上0.004%以下 Bは本発明では不純物元素として扱う。加速冷却時、固
溶Bとして存在すると旧オーステナイト粒界における膜
状もしくは点列状フェライトの生成が抑制されるため溶
解原料の選別などにより0.0002%以下に規制す
る。Oは不可避不純物であるが、0.001%未満とす
ることは製造コストが高価となり、0.004%を超え
ると多量のCa硫酸化物が集合し、清浄度を劣化させる
ため、0.001%以上0.004%以下とする。
【0041】P≦0.010%、S≦0.002% P,Sは不純物元素で、P≦0.010%、S≦0.0
02%とした場合、中央偏析が軽減され、板厚中央の靭
性及び溶接性を向上させる。
【0042】2.製造条件 本発明鋼はその製造方法を加速冷却に限定する。再加熱
焼入れ焼戻し処理により、Pcm≦0.20%、Ceq
(WES)≦0.42%を満足する組成の厚肉鋼材で6
0キロ級の引張り強度を得る事は困難であり、加速冷却
により製造する。
【0043】スラブ加熱温度:950℃以上1250℃
以下 スラブ加熱温度は950℃未満ではNb添加鋼の場合、
オーステナイトの再結晶温度域での圧延が不足し、靭性
が劣化する。また、変形抵抗が大きくなり熱間圧延が困
難となる。1250℃を超えると、オーステナイト結晶
粒が急激に粗大化し、その後の圧延による細粒化が困難
で歪時効後の靭性が劣化するため、1250℃以下とす
る。
【0044】圧延終了温度:720℃以上 圧延終了温度は720℃未満の場合、旧オーステナイト
粒界に析出するフェライト量が多く、加速冷却によって
も60キロ級の強度が得られないため、720℃以上と
する。
【0045】加速冷却開始温度:720℃以上Ar3点
以下 加速冷却開始温度は720℃未満の場合、フェライトの
粗大化により、靭性が劣化し、また、加速冷却開始まで
長時間の待機を要し、生産効率を阻害する。Ar3点を
超えると冷却中に旧オーステナイト粒界に膜状もしくは
点列状のフェライトが生成しにくく、セメンタイトの微
細化効果が明確でない。Ar3点は例えばAr3=910
−310C−80Mn−20Cu−15Cr−55Ni
−80Moとして求められる。
【0046】冷却速度:2℃/秒以上 冷却速度は2℃/秒未満ではベイナイトの生成が不安定
となるため、2℃/秒以上とする。
【0047】加速冷却停止温度:400℃以上650℃
以下 加速冷却停止温度は、400℃未満では加速冷却による
ベイナイトが十分に自己焼戻しされず、650℃を超え
るとベイナイトの生成が不安定となり、生成した場合で
も加速冷却後の空冷時の自己焼戻しによるセメンタイト
が粗大となり、歪時効後の靭性を著しく劣化させるた
め、400℃以上650℃以下とする。
【0048】更に、本発明では圧延時にAr3点以上9
00℃未満の温度域で累積圧下率10%以上60%以下
の圧延を行っても良い。圧延歪の累積により旧オーステ
ナイト粒界に膜状もしくは点列状のフェライトの析出を
促進し、歪時効特性をより向上させることが可能とな
る。圧延温度は900℃以上では圧延歪の累積効果が十
分でなく、Ar3点未満ではではフェライト変態が進行
し、圧延歪による累積を必要としないため、Ar3点以
上900℃未満とする。累積圧下率は10%未満ではフ
ェライト変態の促進効果が十分でなく、60%を超える
と効果が飽和し、鋼材の異方性が増加するため、10%
以上60%以下の圧延とする。
【0049】
【実施例】表1に実施例に用いた供試鋼の化学成分を示
す(表示しない残部は実質的にFe及び不可避不純物よ
りなる)。これらの化学成分を有する250mm厚の鋳
片を930〜1150℃に加熱後、28〜75mmに圧
延した。圧延後、加速冷却し、その後、機械的特性の調
査を行った。表2に製造条件を示す。
【0050】機械的特性として強度、靭性および歪時効
後の靭性を求めた。引張り試験は1/4tより、採取し
たJIS4号試験片を用いた試験とした。
【0051】衝撃試験は、1/4tより長手方向が圧延
方向と直角になるように採取した2mmVノッチシャル
ピー衝撃試験片(JIS4号標準試験片)を用いた試験
とした。歪時効後の靭性は板状の試験片に、5%引張り
予歪を付与し、250℃で1時間の時効処理後、引張方
向に2mmVノッチシャルピー衝撃試験片を採取し、試
験を行った。表3に鋼板の特性を示す。
【0052】以下、実施例について詳細に説明する。表
1における鋼種A〜Gは請求項1乃至6の何れかに記載
の発明を満足する成分組成の鋼で、鋼種HはC量の規定
が発明の範囲外となっている。表2における鋼番1〜8
は鋼種A〜Gを用いた製造例で請求項1乃至7の何れか
に記載の発明の実施例となっている。鋼番9〜16は成
分組成もしくは製造条件が請求項1乃至6記載の発明の
範囲外となっている。
【0053】表3に示すように鋼番1〜8は60キロ級
としての引張り強度と歪時効後のvTrsがー40℃以
下、歪時効の前後でのvTrsの変化も小さく、良好な
耐歪時効脆化性が得られている。鋼番9は、鋼種Aによ
る製造例であるが、加速冷却開始温度が本発明範囲外で
高く、歪時効による靭性の劣化が大きい。鋼番10は加
速冷却停止温度が650℃を超えているため、60キロ
級としての引張り強度が得られず、歪時効によるvTr
sの劣化度が大きい。
【0054】鋼番11は圧延後の加速冷却を省略してい
るため、60キロ級としての引張り強度が得られていな
い。鋼番12は鋼種Dによる製造例であるが加速冷却停
止温度が本発明の範囲外で低く、歪時効なしでの靭性に
劣る。
【0055】鋼番13はスラブ加熱温度が本発明の範囲
外で低く、オーステナイトの再結晶域での圧延が不十分
で歪時効なしの靭性が劣る。鋼番14は圧延終了温度及
び加速冷却開始温度が本発明の範囲外で低く、60キロ
級鋼としての引張り強度が得られず、また歪時効無しで
の靭性に劣る。鋼番15は加速冷却開始温度が本発明の
範囲外で低く、歪時効なしでの靭性が劣る。鋼板16は
鋼種Hによる製造例で、成分組成が本発明の範囲外であ
り、歪時効による靭性の劣化が大きい。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
【発明の効果】本発明によれば、加速冷却時に、旧オー
ステナイト粒界に膜状もしくは点列状のフェライトが生
成され、実質的な粒界面積が増大されるため、焼戻しに
おいて析出するセメンタイトが微細化し、セメンタイト
に集中する歪が小さく、歪時効後の靭性に優れると共
に、溶接性に優れる60キロ級加速冷却鋼の製造方法の
提供が可能で、産業上その効果は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】歪時効前後のvTrsに及ぼす加速冷却開始温
度の影響を示す図
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 和田 典己 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 小林 孝之 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 辻 章嘉 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 小俣 一夫 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 Fターム(参考) 4K032 AA01 AA04 AA08 AA11 AA14 AA16 AA19 AA21 AA22 AA23 AA27 AA29 AA31 AA35 AA36 BA01 CA01 CA02 CA03 CC02 CC03 CD02 CD03

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、C:0.04〜0.09%、
    Si:0.1〜0.5%、Mn:1.2〜1.8%、N
    b:0.01〜0.05%、sol.Al:0.002
    〜0.07%、N:0.001〜0.004%を含み、
    且つPcm≦0.20%、Ceq(WES)≦0.42
    %を満たす鋼を、950℃以上1250℃以下に加熱
    し、720℃以上で圧延終了後、720℃以上Ar3点
    以下の温度域より、400℃以上650℃以下の温度ま
    で2℃/秒以上で加速冷却することを特徴とする溶接性
    及び歪時効後の靭性に優れた60キロ級高張力鋼の製造
    方法。但し、Pcm=C+Mn/20+Si/30+C
    u/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/
    10+5B,Ceq(WES)=C+Mn/6+Si/
    24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14とす
    る。
  2. 【請求項2】 鋼組成として、更に重量%でCr:0.
    1〜0.5%を含有する請求項1記載の溶接性及び歪時
    効後の靭性に優れた60キロ級高張力鋼の製造方法。
  3. 【請求項3】 鋼組成として、更に重量%でMo:0.
    02〜0.3%、Cu:0.1〜0.6%の一種または
    二種を含有する請求項1又は2記載の溶接性及び歪時効
    後の靭性に優れた60キロ級高張力鋼の製造方法。
  4. 【請求項4】 鋼組成として、更に重量%でNi:0.
    1〜0.5%を含有する請求項1乃至3の何れかに記載
    の溶接性及び歪時効後の靭性に優れた60キロ級高張力
    鋼の製造方法。
  5. 【請求項5】 鋼組成として、更に重量%でV:0.0
    1〜0.08%を含有する請求項1乃至4の何れかに記
    載の溶接性及び歪時効後の靭性に優れた60キロ級高張
    力鋼の製造方法。
  6. 【請求項6】 鋼組成として、更に重量%でTi:0.
    005〜0.02%、Ca:0.001〜0.004%
    の一種または二種を含有する請求項1乃至5の何れかに
    記載の溶接性及び歪時効後の靭性に優れた60キロ級高
    張力鋼の製造方法。
  7. 【請求項7】 Ar3点以上900℃未満の温度域で累
    積圧下率10%以上60%以下の圧延工程を具備したこ
    とを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の溶接性
    及び歪時効後の靭性に優れた60キロ級高張力鋼の製造
    方法。
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