JP2001058884A - 珪酸カルシウム硬化体の製造方法 - Google Patents

珪酸カルシウム硬化体の製造方法

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JP2001058884A
JP2001058884A JP23224099A JP23224099A JP2001058884A JP 2001058884 A JP2001058884 A JP 2001058884A JP 23224099 A JP23224099 A JP 23224099A JP 23224099 A JP23224099 A JP 23224099A JP 2001058884 A JP2001058884 A JP 2001058884A
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calcium silicate
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Kunio Matsui
久仁雄 松井
Akihiro Ogawa
晃博 小川
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Asahi Chemical Industry Co Ltd
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    • C04B40/00Processes, in general, for influencing or modifying the properties of mortars, concrete or artificial stone compositions, e.g. their setting or hardening ability
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    • C04B2111/00034Physico-chemical characteristics of the mixtures
    • C04B2111/00189Compositions or ingredients of the compositions characterised by analysis-spectra, e.g. NMR

Abstract

(57)【要約】 【課題】 嵩比重が0.2以上0.7未満と軽量であり
ながら、高い強度と長期耐久性に優れ、しかも表面平滑
性や鋸引き等の加工性に優れた珪酸カルシウム硬化体の
製造方法において、強度低下、ひび割れ等の組織劣化を
起こすこと無く短時間で乾燥する乾燥工程を提供する。 【解決手段】 乾燥工程における乾燥雰囲気の水蒸気分
圧が300mmHg以上、温度が100℃以上であるこ
とを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、軽量で高強度な珪
酸カルシウム硬化体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、建築物の軽量化への要望から、不
燃性かつ軽量な建築材料が求められている。従来、この
様な建材として、軽量気泡コンクリート(ALC)およ
び繊維補強珪酸カルシウム板(ケイカル板)が一般的であ
る。軽量気泡コンクリートは、セメント、珪石粉を主原
料とし、これに必要により生石灰粉、石膏等を加え、水
を添加してスラリー状とし、型枠で成形してオートクレ
ーブ養生して製造される。これら軽量気泡コンクリート
は、比重が0.5から0.6付近と軽量であり、さらに
結晶性の高いトバモライト(5CaO・6SiO
5HO)を多量に含むことから長期の耐候性に優
れ、建築物の外壁材、床材、内壁材として広く利用され
ている。
【0003】これら軽量気泡コンクリートの圧縮強度
は、40〜50kgf/cm2の範囲にある。一方面材
として重要な物性である曲げ強度は、素材の強度として
10kgf/cm2程度と低く、そのために内部に鉄筋
を配置することにより、設計強度を確保している。また
軽量気泡コンクリートは直径1mm程度の気泡を多量に
含むことから、欠けやすく、表面は粗く意匠性に劣る、
および鋸引き性等の加工性に劣る、という大きな欠点を
有している。
【0004】また繊維補強珪酸カルシウム板は、結晶質
あるいは非晶質珪酸と石灰を反応させオートクレーブに
より、補強繊維とともに硬化させたものである。用途は
比重0.3以下の保温材、0.3〜0.4の耐火被覆
材、0.6〜1.2の耐火建材に大別される。成型法
は、比重0.4以下ではフィルタープレス、比重0.6
以上では抄造法が用いられ、硬化反応はいずれの場合も
オートクレーブが用いられる。硬化体は、繊維の他にト
バモライト、ゾノトライト、低結晶質珪酸カルシウム水
和物(トバモライトゲルあるいはCSHゲル。以後CS
Hと略記する。)等を主な構成物としている。
【0005】これら繊維補強珪酸カルシウム板は、繊維
を5〜20重量%と多量に含むため、曲げ強度、靱性に
優れ、高い加工性を持っている。反面、吸水率および乾
燥収縮率が大きく、寸法精度に劣る。また、粉落ちが多
い、表面硬度が低くキズがつき易いなどの欠点を持って
いる。さらにCSHを主構成物とするものは耐候性、耐
久性に劣っている。従って、外装建材としての用途は制
限され、主に内装用建材として用いられている。
【0006】本発明者らは、これら軽量気泡コンクリー
トおよび繊維補強珪酸カルシウム板の持つ欠点を同時に
解決する材料として、粉末X線回折におけるトバモライ
トの(220)面の回折ピーク強度Ibが、トバモライ
トの(220)面と(222)面の2本の回折ピークに
挟まれた角度領域における回折強度の最低値Iaとの間
に、Ib/Iaが3以上となる関係を持ち、嵩比重が
0.2以上0.7未満であり、最大径200μmを越え
る気泡が実質的に無い珪酸カルシウム硬化体を新たに見
出した。この硬化体は、絶乾時の嵩比重が0.2以上
0.7未満と軽量であるもののオートクレーブ養生直後
の含水率が高く、軽量化するためには製造工程中に短期
間で水分を除去する工程を必須としている。工業的に水
分を短時間に除去するには、たとえば100℃以上の高
温にて乾燥することが必要であるが、従来から行われて
いる乾燥空気を用いた熱風乾燥では、寸法変化や組織劣
化がおこり強度の低下やひび割れ等の硬化体のダメージ
が大きく工業的には実施できないのが現状である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、嵩比重が
0.2以上0.7未満と軽量でありながら、高い強度と
長期耐久性に優れ、しかも表面平滑性や鋸引き等の加工
性に優れた珪酸カルシウム硬化体の製造方法において、
強度低下、ひび割れ等の組織劣化を起こすこと無く短時
間で乾燥する乾燥工程を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、高温乾燥
において見られる珪酸カルシウム硬化体の寸法変化に着
目し研究を行った結果、高温における硬化体の収縮は比
較的大きな細孔中の水の除去によりもたらされるもので
はなく、より小さな細孔中の水が除去される時に発生す
ることを明らかにした。さらにこれら小さな細孔中の水
を残したまま乾燥を終了させる方法を見出し、本発明を
完成するに至った。
【0009】すなわち本発明は、粉末X線回折における
トバモライトの(220)面の回折ピーク強度Ibが、
トバモライトの(220)面と(222)面の2本の回
折ピークに挟まれた角度領域における回折強度の最低値
Iaとの間に、Ib/Iaが3以上となる関係を持ち、
嵩比重が0.2以上0.7未満であり、最大径200μ
mを越える気泡が実質的に無い珪酸カルシウム硬化体
を、珪酸質原料、石灰質原料を主とした固体原料と水を
混合して、得られたスラリーを予備硬化した後160℃
以上でオートクレーブ養生し、さらに乾燥工程を経て製
造するにあたり、乾燥工程における乾燥雰囲気の水蒸気
分圧が300mmHg以上、温度が100℃以上の条件
下で乾燥を行うことにより、寸法変化および組織劣化を
発生させずに短時間で乾燥を行う方法を見出したことに
基づくものである。
【0010】以下、本発明を詳細に説明する。本発明の
珪酸カルシウム硬化体は、好ましくはトバモライト(5
CaO・6SiO2・5H2 O)を主成分とする。トバ
モライトは、軽量気泡コンクリート(ALC)などの組
織中に通常見られる代表的な珪酸カルシウム水和物の1
つであり、板状あるいは短冊状の粒子形態をとる。ここ
でトバモライトが主成分であるか否かは、珪酸カルシウ
ム硬化体の破面の走査型電子顕微鏡観察と粉末X線観察
を併用することにより判断できる。すなわち、粉末X線
回折において、トバモライトの最強線(220)を越え
る他の回折ピークが存在しないことである。ただしトバ
モライトとともに、高結晶性の物質(結晶質シリカ等の
酸化物、二水石膏、無水石膏等の硫酸塩あるいは炭酸塩
等)が少量共存する場合、トバモライトが主成分であっ
ても、共存する物質の高い結晶性のために、これらの物
質の最強線がトバモライトの最強線を越えることがあ
る。この様な場合、走査型電子顕微鏡観察下において、
その構造が板状あるいは短冊状の粒子が主体であると判
断できれば、例外として、トバモライトが主成分である
とする。
【0011】ここで板状あるいは短冊状の粒子とは、1
つの粒子を構成する面の中で最大の面積を持ち、かつ互
いにほぼ平行な一組の面を少なくとも持つ粒子であり、
その粒子の最大長さがこれら一組の面間の距離の5倍以
上である粒子を言う。もちろん、ここで言う最大長さは
二次元への投影長さである。これらトバモライトの粒子
の大きさは特に規定はしないが、最大長さが数μm〜1
0μmであることが好ましい。通常トバモライトは、C
SHと共存することが多い。CSHは様々な粒子形態を
とることが知られている。繊維状、粒状、塊状の粒子形
態をとる場合に限り、電子顕微鏡下でトバモライト粒子
と区別できる。この様なCSHは、トバモライトの基本
骨格を崩さない範囲で含有しても差し支えないが、後述
する様に、CSHは建材としての様々な性能を低下させ
るので、可能な限り含有しないことが好ましい。さら
に、少量の軽量骨材、補強繊維、パルプ、樹脂等もトバ
モライトの基本骨格を崩さない範囲で含有することがで
きる。
【0012】本発明の珪酸カルシウム硬化体は、粉末X
線回折において観察される、2つのトバモライトの回折
線(220)、(222)に挟まれた角度領域における
回折強度の最低値Iaに対するトバモライトの(22
0)回折ピーク強度Ibの比(Ib/Ia)が3以上で
ある。ここで粉末X線回折とは、X線としてCuKα線
を用いた回折装置を言う。珪酸カルシウム硬化体中にC
SHが多量に存在すると、乾湿繰り返し時の寸法安定性
が低下する。さらに長期間大気中に放置されると、これ
らCSHは大気中に含まれる二酸化炭素と容易に反応し
て、炭酸カルシウムと非晶質珪酸に分解する炭酸化反応
を起こす。この時、体積の収縮を伴うことから亀裂、組
織劣化が発生する。嵩密度が0.7未満の場合、通気性
がある程度あるためにこれら炭酸化反応が内部まで起こ
り易く、外装用建材として使用する場合には致命的な欠
陥となる。トバモライトとCSHが共存する硬化体につ
いて、粉末X線回折を行うと、トバモライトの(22
0)回折ピークと(222)回折ピークに挟まれた領域
に、比較的ブロードなCSHの回折ピークが認められ
る。この回折ピークは通常29.1〜29.4°(2
θ)付近に出現する。
【0013】またCSHがトバモライトに比べて少ない
場合、CSHのピークは、トバモライトの回折線に吸収
された形になり、通常CSHの回折強度の測定は不可能
となる。ところがこの様な場合、トバモライトの(22
0)回折ピークと(222)回折ピークに挟まれた領域
におけるX線の回折強度は、ベースラインに比べて高い
値となることから、CSHの存在の有無を判定すること
ができる。 珪酸カルシウム硬化体がCSHを全く含ま
ず、かつ高結晶性のトバモライトを主体とする場合、同
領域におけるX線強度の最低値はバックグランド強度と
一致する。すなわち2つのトバモライトの回折線、(2
20)と(222)に挟まれた角度領域における回折強
度の最低値Iaに対するトバモライトの(220)面の
回折ピーク強度Ibの比(Ib/Ia)が大きい程、珪
酸カルシウム硬化体中に含有されるCSHが少ない。
【0014】一方、たとえCSHが存在しない場合で
も、トバモライトの結晶性が低い場合には、Ib/Ia
は小さくなる。これは(220)と(222)が近接し
ているために、ピークのすそのが重なり合うためであ
る。トバモライトの結晶性が低下すると、珪酸カルシウ
ム硬化体の強度劣化、および耐候性の低下が起こる。従
っていずれの場合でも、Ib/Iaの値は3以上である
ことが好ましく、より好ましくは4以上であり、さらに
好ましくは5以上である。市販の軽量気泡コンクリート
は、反応性の低い珪石源を用いることにより、トバモラ
イトの結晶性を高め、結果としてIb/Iaの値は高く
なっている。この値が高いにも関わらず強度が低い理由
は、前述の様に粗大気泡を含有するためである。なお、
ここでの強度IaおよびIbは、バックグランド強度を
含めた値であり、後述のI(002)、I(220)の
算出方法とは異なる。Ia、Ibの算出方法の概略を図
1(A)、(B)に示す。
【0015】本発明の珪酸カルシウム硬化体は、トバモ
ライトの板状あるいは短冊状粒子の間に、これら粒子の
最大長さと同等あるいはそれ以下の径を持つ空隙が多量
に存在することが好ましい。主としてこれら粒子間空隙
により軽量化を実現していることが、本発明の珪酸カル
シウム硬化体の特徴の1つである。この構造により、本
発明の珪酸カルシウム硬化体は、高い圧縮強度および曲
げ強度を発現する一方で、少ない繊維補強等で高い耐欠
け性および良好な加工性を併せ持っている。本発明の珪
酸カルシウム硬化体の嵩比重は、0.2以上0.7未満
の範囲にあり、好ましくは0.3以上、0.7未満、よ
り好ましくは0.4以上0.7未満である。ここで言う
嵩比重とは、105℃での平衡重量から求めた嵩比重、
すなわち絶乾比重を指す。0.2未満では本発明の目的
とする高い強度は得られない。
【0016】本発明の珪酸カルシウム硬化体は、実質的
に最大径が200μmを越える気泡が無いことを特徴と
する。ここで言う気泡とは、原料混合時あるいは予備硬
化時に気体が内部に閉じこめられて生じた粗大な球状の
空隙を言い、通常、球、楕円体、水滴状、あるいはこれ
らが結合した形状をなすことから、亀裂や欠けにより発
生した空隙、あるいは大きさが10μm以下の微細な空
隙とは容易に区別できる。実質的に最大径が200μm
を越える気泡が無いこととは、本発明の珪酸カルシウム
硬化体を破断させて生じた面上において、10mm四方
に最大径が200μmを越える気泡が20個以内である
こととする。ここで最大径とは、破断面上において観察
される気泡の断面形状(円、楕円、水滴形状、あるいは
これらの合体した形状等)の最大長さを言う。これら気
泡は実体顕微鏡等を用いて容易に観察できる。従来の軽
量気泡コンクリートは、直径100μm〜1mmの気泡
を導入することにより軽量化を実現しており、本発明の
珪酸カルシウム硬化体とは、著しく構造が異なってい
る。最大径が200μmを越える気泡が実質的に無いこ
とにより、従来の軽量気泡コンクリートでは実現できな
かった高い強度が発現する。
【0017】本発明の珪酸カルシウム硬化体は、窒素吸
着法(BET法)で測定される比表面積が、好ましくは
60m2 /g以下である。ここでトバモライトの比表面
積は結晶性が高くなるにつれて小さくなり、高結晶性の
トバモライトは、40〜50m2/gであることが報告
されている(石膏と石灰,No.214 P.129
(1988))。一方同文献によると、CSHの比表面
積は200〜250m2/gと著しく高い。すなわち比
表面積の値は、トバモライトの結晶性とCSHの含有率
を併せた指標と考えることができ、トバモライトを含有
する建材の性能を表す物性の一つと言える。従って比表
面積が60m2 /gを越えると、トバモライトの結晶性
の低下あるいはCSHの含有量の増加を意味するところ
となり、硬化体の強度が低下するとともに、耐候性、寸
法安定性に代表される建材としての性能が劣化する。従
って本発明の珪酸カルシウム硬化体は、窒素吸着法(B
ET法)で測定される比表面積が、好ましくは60m2
/g以下であり、さらに好ましくは50m2 /g以下で
ある。ここで比表面積が著しく低下することは、トバモ
ライト以外の低い比表面積を持つ物質が多量に混入して
いることを意味することから、比表面積は20m2/g
以上が好ましい。
【0018】本発明の珪酸カルシウム硬化体は、粉末X
線回折において観察されるトバモライトの回折線のう
ち、(220)面の回折ピーク強度I(220)に対す
る(002)面の回折ピーク強度I(002)の比(I
(002)/I(220))が好ましくは0.25以上
である。トバモライトの板状あるいは短冊状の粒子は、
平面に垂直な方向すなわち厚み方向が結晶のC軸方向と
考えられている。従ってI(002)の相対強度が増加
することは、C軸方向の相対的な規則性が増すことであ
り、それに伴い板状結晶の厚みも増加することを意味す
る。JCPDSカードNo.19−1364によれば、
理想的なトバモライト結晶のI(002)/I(22
0)は0.8と記載されており、この値に近づくことで
結晶の厚みが増し、単一結晶の強度が増加する。結果と
して、これら結晶から構成される硬化体の強度も増加す
る。さらに結晶の規則性が増加することにより、耐炭酸
化等の耐候性に代表される建材としての性能も向上す
る。従ってI(002)/I(220)の値は0.25
以上が好ましく、さらに好ましくは0.35以上であ
る。これらI(002)、I(220)の算出方法の概
略を図2に示す。
【0019】本発明の珪酸カルシウム硬化体は、水銀圧
入法で測定される細孔のうち、その径が1μm以上の細
孔が1vol%以上15vol%以下、好ましくはその
径が0.5μm以上の細孔が1vol%以上20vol
%以下、さらに好ましくはその径が0.1μm以上の細
孔が5vol%以上45vol%以下、よりさらに好ま
しくはその径が0.1μm以上の細孔が5vol%以上
40vol%以下である。ここで、水銀圧入法とは珪酸
カルシウム硬化体内部に水銀を圧入させて、その時の圧
力と侵入量の関係から細孔径の分布を測定するものであ
り、細孔の形状が円筒形であると仮定して計算されたも
のである。従って、この値は実際の細孔の直径を現すも
のではなく、構成物質間の間隙の大きさの指標として使
用されるものである。同法により測定された細孔のう
ち、その径が1μm以上の細孔が15vol%を越える
と、強度の低下をもたらすだけではなく、毛細管現象に
よる水分の移動が激しくなり、建材としても性能を低下
させる。また、現在の製造方法では、下限はその径が
1.0μm以上の細孔および0.5μm以上の細孔では
1vol%であり、その径が0.1μm以上の細孔で5
vol%である。
【0020】本発明の珪酸カルシウム硬化体は、好まし
くは補強鉄筋あるいは補強金網が内部に埋設される。こ
こで補強鉄筋とは、鉄筋を所望の形状に配列し、交叉接
点を溶接加工したものを言う。また補強金網とは鉄を網
状に加工したもので、たとえばラス網等がその代表的な
例である。補強鉄筋もしくは補強金網の形状、寸法、鉄
筋の太さ、金網の目の大きさ、さらに硬化体中に埋設す
る際の位置等、すなわち配筋の仕方については、板の大
きさ、用途等によって異なるために一概に限定すること
はできない。なお、これら補強鉄筋または補強金網は、
耐久性上有効な防錆剤処理が施されていることが好まし
い。防錆剤としては合成樹脂系等、公知のものを使用で
きる。この様に鉄筋あるいは金網を内部に配置すること
により破壊時の耐力が著しく向上する。特に本発明の珪
酸カルシウム硬化体は、高結晶性に由来して圧縮弾性率
が従来の材料に比べて格段に高いため、鉄筋あるいは金
網による補強が有効になる。さらに前述した均一な微細
気泡のために、鉄筋との付着力も従来の軽量気泡コンク
リートに比べて大幅に向上することが見出された。
【0021】以下、本発明の珪酸カルシウム硬化体の製
造方法について説明する。本発明の珪酸カルシウム硬化
体は、珪酸質原料、石灰質原料を主とする固体原料と水
を混合して、得られたスラリーを予備硬化して予備硬化
体とした後、予備硬化体を160℃以上でオートクレー
ブ養生して含水硬化体とし、さらに含水硬化体を乾燥工
程を経て製造され、該乾燥工程における乾燥雰囲気の水
蒸気分圧が300mmHg以上、温度が100℃以上で
あることを特徴としている。
【0022】ここで珪酸質原料とは、SiO2の含有量
が50重量%以上の原料を言う。たとえば、結晶質の珪
石、珪砂、石英の含有率の高い岩石等、あるいは珪藻
土、シリカヒューム、フライアッシュ、およびカオリン
質粘土、モンモリロナイト質粘土等の天然の粘土鉱物あ
るいはそれらの焼成物等である。これらうちで非晶質珪
酸原料とは、珪藻土、シリカヒューム、フライアッシュ
等の粉末X線回折において固有の明瞭な回折ピークを示
さないものを言う。これらに加えてここでは、カオリン
質粘土、モンモリロナイト質粘土、ベントナイト等の天
然の粘土鉱物、あるいはそれらの焼成物等は、固有の回
折ピークを示すが、その反応性の高さから非晶質珪酸原
料に含める。
【0023】一方珪石、珪砂等は、通常粉末X線回折に
おいて、α−石英のシャープな回折ピークを呈すること
が多い。石灰質原料とは、酸化物換算でCaOを50重
量%以上含む原料であり、生石灰あるいは消石灰等を言
う。さらにこれに加えてカルシウム成分を主体とするセ
メント類、すなわち普通ポルトランドセメント、早強ポ
ルトランドセメント、ビーライトセメント、各種アルミ
ナセメント等も石灰質原料とする。本発明においてオー
トクレーブ養生した後の乾燥工程前の物を含水硬化体と
しているが、この含水硬化体の製造方法としては、
(1)珪酸質原料と石灰質原料を主とする固体原料と水
を、混合後のCaO/SiO2のモル比が0.5〜1.
5、かつ水/固体原料の重量比が1.0〜5.0となる
様に混合して得られたスラリーを型枠に注入して予備硬
化して予備硬化体とした後に、オートクレーブ養生する
方法があげられる。(2)そして、より好ましい製造方
法としては前記(1)の方法において、珪酸質原料と石
灰質原料を主成分とする固体原料と水を混合してスラリ
ーとなす段階で、混合を2段回に分けて行う製造方法が
ある。
【0024】即ち、予め一部の原料をスラリー状態にて
混合させた後に残りの原料を混合し、引き続き予備硬化
を行って予備硬化体とした後に、オートクレーブ養生す
る方法である。(3)そして、前記(2)の製造方法の
中でもさらに好ましい製造方法としては、珪酸質原料と
石灰質原料を主とする固体原料と水を、予め CaO/
SiOモル比1.2〜2.5の範囲になるように混合
して反応させて得た一次原料に、珪酸質原料と石灰質原
料の少なくとも一種、あるいは珪酸質原料と石灰質原料
の少なくとも一種と水を主とする二次原料を、 混合後
のCaO/SiOのモル比が0.6〜1.5、かつ全
固体重量に対する水の重量比が1.0〜5.0、かつ珪
酸質原料中の非晶質珪酸原料の割合が20重量%未満に
なるようにして混合して得られるスラリーを40℃以上
で予備硬化して予備硬化体とした後、予備硬化体を16
0℃以上でオートクレーブ養生して得る方法である。以
上のいずれの方法においても予備硬化体とは、各種原料
を混合した後に硬化させて得られるオートクレーブ養生
前のものをいう。
【0025】本発明で規定される水/固体比の範囲で、
オートクレーブ処理前に予備硬化させるためには、珪酸
質原料は高い反応性を持つことが好ましい。さらに珪酸
カルシウム硬化体中に未反応物質が多量に残留すること
は、欠け易さを増大させ強度の低下を招く。従って珪酸
質原料は、高反応性のものあるいは微粉砕したものが好
ましく、たとえばブレーン比表面積で測定して3000
cm2/g以上の粉末度のものが好ましく、さらに好ま
しくは7000cm2/g以上である。粉末度があまり
に高くなると、原料の管理、ハンドリングの点で好まし
くない。従ってブレーン比表面積で測定して、3000
00cm2/g以下が好ましい。珪酸質原料の中でも非
晶質珪酸原料は、結晶質珪酸原料に比べて著しく高い反
応性を持っている。
【0026】しかしながら、上記の様な微粉末の珪酸質
原料、あるいは非晶質珪酸原料を用いると、水の存在下
で石灰質原料と反応させた段階で、CaO/SiO2
ル比が1付近でCSHが常温下でも容易に生成すること
が知られている。さらにこれらCSHは非常に安定な物
質であることから、その後に高温高圧の養生を行って
も、トバモライトへは容易に変化しないことが常識とな
っている。ところが、先の製造方法(3)に記したよう
に原料をCaO/SiO2 モル比で1.2〜2.5の範
囲に配合して水と一定時間以上接触させて得た一次原料
と、それより低いCaO/SiO2モル比の二次原料を
混合し、混合後のCaO/SiO2のモル比が0.6〜
1.5にすることにより、高反応性の珪酸質原料を用い
ても上述の安定なCSHが生成せずに、その後の高温高
圧養生により結晶性の高いトバモライトが多量に生成す
ることが、本発明者らにより初めて見出された。
【0027】以下、先の製造方法(3)について、より
詳細に説明する。一次原料は、珪酸質原料と石灰質原料
を主とする固体原料と水を、 CaO/SiO2モル比
1.2〜2.5の範囲になるように混合して得られるも
のである。この時の混合時間は10分以上、好ましくは
30分以上である。この際に著しく長い時間を経過させ
ることは、最終硬化体のトバモライトの結晶性を低下さ
せる。従って得られた混合物は24時間以内をもって一
次原料とすることが好ましい。この一次原料は、スラリ
ー状態、あるいは硬化した状態、いずれでも構わない。
【0028】一次原料を生成させる際の温度については
特に規定はないが、混合直後の温度で40℃以上、10
0℃以下が好ましい。ここでCaO/SiO2 モル比が
1.2未満であると前述の安定なCSHがこの段階で生
成し、後の工程においてトバモライトの生成が抑制され
る。2.5を越えると、系内に水酸化カルシウム結晶が
瞬時に生成し水溶液中のCa成分を奪うため、結果とし
て反応に寄与できるCaO/SiO2のモル比が1.2
未満となり、先の場合と同様に安定なCSHが多量に生
成する。
【0029】従ってCaO/SiO2 モル比は1.2〜
2.5であることが必要であり、好ましくは1.5〜
2.0である。一次原料には、石膏(二水石膏、半水石
膏、無水石膏)、補強繊維、増粘剤、骨材等を添加する
こともできる。一次原料の生成に使用される水について
は、一次原料、二次原料合計で使用される珪酸質原料と
石灰質原料及びその他の固体原料の総重量に対して使用
される全ての水の重量比が、1.0〜5.0の範囲にあ
れば特に規定はしないが、一次原料だけについて言えば
一次原料に使用される珪酸質原料と石灰質原料及びその
他の固体原料の総重量に対して使用される全ての水の重
量比は0.7以上であることが好ましく、より好ましく
は1.0以上、さらに好ましくは1.5以上である。
【0030】これら一次原料の固体原料の粉体と水の混
合は通常工業的に使用されるミキサーが使用可能であ
る。具体的には、低粘度モルタル用の高速回転羽根を持
った撹拌機を用い、70℃に加温した一次原料の水に一
次原料の固体原料の粉体を投入した後、一分間混合する
方法があげられる。上記一次原料を投入し混合槽を60
℃に加温しながら大気下で回転数1200rpmで1分
間混合する。より好ましい混合条件は減圧下で混合する
ことであり、混合槽を60℃に加温した状態で200m
mHg以下の減圧下で回転数1200rpmで3分間撹
拌することである。減圧条件下で攪拌することにより、
攪拌時の巻き込みによる気泡の低減が図れる。撹拌雰囲
気は大気中でなくて窒素の様な不活性ガス下でも構わな
い。
【0031】以上のようにして得られた一次原料は、ス
ラリー状態ではそのままで、硬化している場合は解砕し
てから二次原料と混合される。この時混合後のCaO/
SiO2モル比は、0.6〜1.5であることが必要で
あり、好ましくは0.7〜1.2である。0.6未満で
は未反応の珪酸原料が多量に残留し、トバモライトの生
成量も低下する。1.5を越えるとトバモライトの生成
量が著しく低下する。この組成範囲にするためには、二
次原料のCaO/SiO2モル比は一次原料のそれに比
べて低い値とすることが必要である。
【0032】また、一次原料と二次原料の混合比率は、
一次原料重量/(一次原料重量+二次原料中の粉体重
量)=0.2〜0.97の範囲(一次原料重量中の粉体
重量/(一次原料中の粉体重量+二次原料中の粉体重
量)=0.15〜0.85)にすることが好まし、より
好ましくは一次原料重量/(一次原料重量+二次原料中
の粉体重量)=0.30〜0.95の範囲(一次原料重
量中の粉体重量/(一次原料中の粉体重量+二次原料中
の粉体重量)=0.2〜0.8)の範囲である。ここ
で、一次原料重量とは水分を含む重量である。両原料の
混合比がこの範囲からはずれると安定なCSHが生成し
やすくなり、トバモライトの含有量および結晶性を高め
ることが難しくなる。
【0033】さらに二次原料中には一次原料と同様、石
膏、補強繊維、増粘剤、骨材等を使用することができ
る。ここで石膏の添加は、珪酸カルシウム硬化体の耐炭
酸化抵抗を高めることが、本発明者らにより初めて見い
だされた。従って、水を除く全原料に対して0.5重量
%以上10重量%以下で添加されることが好ましく、よ
り好ましくは1重量%以上6重量%以下であり、さらに
好ましくは2重量%以上5重量%以下である。石膏の種
類としては、二水石膏(CaSO4・2H2 O)を用い
ることが好ましい。
【0034】補強繊維としては、各種有機繊維、無機繊
維が使用できる。有機繊維の中でも、パルプは安価な
上、オートクレーブ中での劣化が少ないため好適に用い
られる。パルプは針葉樹、広葉樹を問わずバージンパル
プ、古紙パルプ等を使用できる。これらパルプは増粘
剤、分散安定剤としても有効であり、好ましくはミクロ
フィブリル化セルロースが用いられる。これら補強繊維
は、曲げ強度の向上には効果があるものの、圧縮強度お
よび粉落ちに代表される表面硬度を低下させる。さらに
有機繊維の過度の添加は耐火性能を低下させるので、添
加量は水を除く全原料に対して0.5重量%以上6重量
%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5重
量%以上5重量%以下であり、さらに好ましくは0.5
重量%以上4重量%以下である。
【0035】石膏、補強繊維、増粘剤、骨材等の添加
は、一次原料の作成時、二次原料と共に添加するとき、
あるいは一次原料、二次原料どちらに添加しても構わな
いが、混合のしやすさから二次原料と共に添加すること
が好ましい。一次原料と二次原料粉体は、使用する珪酸
質原料、石灰質原料及びその他の固体原料の総重量に対
して使用する全ての水の重量比が1.0〜5.0になる
ように、スラリー状態で混合される。すなわち、(一次
原料混合時に使用した水+二次原料混合時に追加する
水)/(一次原料中の粉体重量+二次原料中の粉体重
量)で表される重量比が、1.0〜5.0の範囲になる
ことを意味する。この範囲以外では、本発明において規
定される嵩比重が得られない。高強度で、かつ嵩比重の
小さい珪酸カルシウム硬化体を得るためには、この値は
1.5〜4.0の範囲が好ましい。
【0036】さらにすべての珪酸原料に占める非晶質珪
酸原料の割合が20重量%未満になるように、非晶質珪
酸原料の使用量が制限される。非晶質珪酸原料は高い反
応性に加えて、スラリーの水/固体比が高い時に固体の
沈降を防ぐ効果を持っており、比重が0.5未満の場合
には有用な原料の1つとなる。しかしながらその高い反
応性から、CSHを生成し易くトバモライトの高結晶化
には有害であることは前述した。全珪酸質原料に占める
非晶質珪酸原料の割合が高い場合、本発明の二段階の混
合をもってしてもCSHの生成は押さえられない。従っ
て、すべての珪酸原料に占める非晶質珪酸原料の割合は
20重量%未満であり、好ましくは15重量%未満であ
る。さらにCSHを低減する目的から、非晶質珪酸原料
は一次原料として使用されることが好ましい。
【0037】混合は一次原料混合時と同様、任意のミキ
サーが使用可能である。この様にして混合されたスラリ
ーは、必要に応じて補強鉄筋あるいは補強金網が配置さ
れた型枠に、好ましくはそのまま流しこまれた後予備硬
化し、予備硬化体となす。予備硬化は、好ましくは40
〜100℃の間で3時間以上かけておこなわれる。得ら
れた予備硬化体は、必要に応じて任意の形状に切断され
た後に、オートクレーブを用いて高温高圧養生し含水硬
化体となす。切断は軽量気泡コンクリートの製造に一般
的に使用されるワイヤーによる切断法も使用てきる。オ
ートクレーブの条件としては160℃(ゲージ圧力:約
5.3kgf/cm2)以上、220℃(ゲージ圧力:
約22.6kgf/cm2)以下が好ましい。
【0038】本発明の珪酸カルシウム硬化体は、含水硬
化体を乾燥工程を経由させ、水分を除去することにより
得られる。前述した(1)、あるいは(2)、あるいは
(3)の製造方法いずれの場合でも、含有水分の除去は
必須の工程である。該乾燥工程における乾燥雰囲気の水
蒸気分圧が300mmHg以上、温度が100℃以上で
あることが本発明の大きな特徴である。この様に一定以
上の水蒸気を含有したまま高温乾燥することにより、小
さな細孔中に存在する水を残したまま乾燥を終了させる
ことが、本発明者らにより初めて可能となった。これは
細孔中の水は含有するすべての水に対する比率は非常に
低いものの、固体表面に強く束縛されており、これら水
が除去される時に大きな寸法変化が発生することが本発
明者らにより初めて見出されたことに基づいている。す
なわち、水蒸気分圧が300mmHg未満では硬化体の
乾燥にあたり大きな寸法変化を招くことになる。珪酸カ
ルシウム硬化体の寸法変化をさらに小さくするために
は、水蒸気分圧をさらに高めることが好ましい。すなわ
ち、水蒸気分圧は好ましくは500mmHg以上、さら
に好ましくは700mmHg以上、である。水蒸気分圧
が760mmHgを越えると、乾燥室内部の圧力は1気
圧を越えるため、圧力容器が必要となる。この時、オー
トクレーブ等の圧力容器が好適に用いられる。
【0039】圧力容器を用いた場合、容器内の水蒸気分
圧が飽和水蒸気圧に一致すると硬化体の乾燥が起こらな
い。この様な場合、容器内を過熱蒸気雰囲気にする必要
がある。たとえば(ア)過熱蒸気を圧力容器内に直接導
入すること、(イ)圧力容器を一定圧力に制御したま
ま、該圧力容器内の温度より高温の蒸気あるいは電気ヒ
ーター等により該圧力容器内の雰囲気を、さらに高温に
加熱すること、等により達成できる。ここで過熱蒸気と
は水蒸気圧力に相当する飽和温度よりも高温に加熱され
た蒸気を言う。一方、圧力容器を使用しない場合、水蒸
気分圧は760mmHg以下に制限される。圧力容器を
使用しない時、本発明の水蒸気分圧は、(a)蒸気ヒー
ターと生蒸気の噴霧の併用、(b)化石燃料あるいは電
気ヒーターによる熱風と生蒸気の噴霧、(c)過熱蒸気
を直接乾燥室内へ導入すること、等により達成できる。
この場合でも、100℃以上の雰囲気を容易に実現でき
ることが可能なことから、(c)の過熱蒸気を用いるこ
とがより好ましい。
【0040】圧力容器を使用する、あるいは使用しな
い、いずれの方法においても、短期間で乾燥を終了させ
るためには、乾燥雰囲気の温度は100℃以上が必要で
あり、好ましくは120℃以上、さらに好ましくは15
0℃以上である。あまりに高い温度は、設備の腐食およ
び硬化体の組織劣化をもたらすことから、雰囲気の温度
は300℃以下が好ましい。さらにいずれの方法におい
ても伝熱係数を上げられることから過熱蒸気を使用する
ことが好ましい。圧力容器、および乾燥室は、規定の圧
力以上の仕様に設計されていればいかなる形状のもので
も使用できるが、内部の充填率、風速、温度および湿度
の均一性等を考慮して設計されたものを用いることが好
ましい。
【0041】
【発明の実施の形態】以下に実施例により本発明を具体
的に説明する。なお、本発明において使用される各種の
測定方法は以下の通りである。 [水蒸気分圧]日本特殊陶業製の高温用湿度センサー
(HUV15BD−HSV59F)を用いて乾燥室内の
水蒸気分圧を直接測定した。 [曲げ強度、圧縮強度]JIS R 5201 「セメ
ントの物理試験法」における曲げ強さおよび圧縮強さの
測定に準じて測定した。すなわち、曲げ強度測定に用い
た供試体寸法は、40mm×40mm×160mmであ
り、スパン幅は100mmである。圧縮強度は曲げ試験
で割れた半分の試料において、加圧面40mm×40m
m、加圧面の距離40mmで最大荷重を測定した。 [パネル強度]JIS A 5416 「軽量気泡コン
クリートパネル」9.5パネルの曲げ強さ試験、におい
てL=1900mmとして測定した。 [嵩比重]曲げ試験に用いたのと同じ寸法の硬化体を、
105℃にて24時間乾燥させた時の重量と寸法から算
出した。
【0042】[気泡径の観察]オリンパス光学工業
(株)製、実体顕微鏡(SZ)を用いて、曲げ強度試験
後の試料破断面を40倍の倍率で観察し、10mm四方
内に存在する最大径が200μm以上の気泡の個数を数
えた。 [窒素吸着法による比表面積]水銀圧入法に用いたのと
同様の処理を行った試料を、さらに真空下70℃で3時
間乾燥させて測定用試料とした。これら試料をQuan
tachrome社製、Autosorb 1−MPを
用いて比表面積の測定を行った。なお測定点は1試料に
つき6点とした。 [ブレーン比表面積の測定方法]JIS R 5201
のセメントの物理試験法における比鏡面席試験に準じて
測定した。
【0043】[粉末X線回折:Ia,Ibの測定]強度
測定に用いた試料を乳鉢中で粉砕した後に、理学電気
(株)製RINT2000において、CuのKα線を用
いて測定した。測定条件は、加速電圧40kV、加速電
流200mA、受光スリット幅0.15mm、走査速度
4゜/分、サンプリング0.02゜である。なお回折線
はグラファイトのモノクロメーターにより単色化されて
カウントされた。2つのトバモライト回折線(22
0),(222)に挟まれた角度領域におけるバックグ
ランドを含めた回折強度の最低値をIa、およびバック
グランドを含めたトバモライト回折線(220)の最大
強度をIbとする。なおこれら2つの回折線はそれぞれ
29.0゜、30.0゜(2θ)付近に見られる回折線
に対応する。図1(A)、(B)に算出方法の模式図を
示す。 [粉末X線回折:I(002),I(220)の測定]
試料および測定条件は、Ia、Ibの測定と同様に行っ
た。ここでI(002)は、回折角6から9゜(2θ)
付近にかけて、バックグランドを直線近似して得られた
真の回折強度である。同様にI(220)は、回折角2
0から40゜(2θ)付近にかけて、バックグランドを
直線近似して得られた真の回折強度である。なお、トバ
モライトの(002)回折線は、7.7゜(2θ)付近
に見られる回折線に対応する。図2に算出方法の模式図
を示す。 [表面平滑性]表面の状態を目視で観察して評価した。
【0044】
【実施例1】表1の一次原料を表1に記載の配合比にて
攪拌機を用いて混合を行った。混合は60℃に加温した
水に固体原料を加えた後、混合槽を60℃に加温しなが
ら、大気圧下にて2時間スラリー状態のまま反応させ
た。この後二次原料を加え1分間混合した後、内寸が高
さ600mm、長さ2000mm、幅100mmであ
り、5mm径の鉄筋が配置された型枠中に流し込み、水
分の蒸発を抑制した状態にて60℃で8〜15時間かけ
て予備硬化し予備硬化体とした。結晶質珪酸原料として
ブレーン比表面積11000cm/gの珪石粉砕粉
を、非晶質珪酸原料としては、EFACO社のシリカヒ
ュームを、パルプとしては、ミクロフィブリル化セルロ
ース(ダイセル化学社製「セリッシュ、KY−100
G」)を使用した。得られた予備硬化体を脱型してオー
トクレーブにて180℃で4時間、高温高圧養生を行
い、補強鉄筋が内部に埋設された含水硬化体を得た。こ
れら含水硬化体を蒸気ヒーターとファンの付いた乾燥室
内(高さ1.8m、幅1.8m、長さ5m)に入れて、
室内の温度を150℃に制御し、さらに150℃の蒸気
を乾燥室内に噴霧しながら、大気圧下で乾燥を行った。
この時の室内の温度は147℃、水蒸気分圧は500m
mHg以上となり湿度センサーでは測定不可能であっ
た。60時間経た後に室温まで冷却して珪酸カルシウム
硬化体を得た。
【0045】含水硬化体の含水量が120重量%であっ
たのに対して得られた珪酸カルシウム硬化体の含水量は
14重量%であった。得られた珪酸カルシウム硬化体の
パネル曲げ試験を行った結果を表2に示す。さらにパネ
ル曲げ試験後に亀裂のない部分から小片を切り出し、各
種物性を測定した結果を表3に示した。これら小片の破
断面を走査型電子顕微鏡を用いて観察を行った結果、そ
の構造は、いずれの硬化体においても、図3に代表され
るほぼトバモライトの板状粒子と、少量の繊維状粒子か
ら構成されていた。さらに粉末X線回折の結果、いずれ
の硬化体においても、最強線はトバモライトの(22
0)回折線と同定された。図4には実施例1の水銀圧入
法による細孔分布曲線を示した。尚、表1中普通ポルト
ランドセメントはOPCと表している。
【0046】
【比較例1】乾燥室内に蒸気を噴霧しない他は実施例1
同様にして珪酸カルシウム硬化体を得た。この時乾燥室
内の温度はほぼ148℃、水蒸気分圧は10〜60mm
Hgの間で推移した。含水硬化体の乾燥前の含水率は1
17重量%、乾燥後の含水率は18重量%であった。硬
化体表面には無数の亀裂が観察され、パネル曲げ試験に
は適さないと判断して測定は行わなかった。亀裂のない
部分から小片を切り出し、各種物性を測定した結果を表
3に示した。これら小片の破断面を走査型電子顕微鏡を
用いて観察を行った結果、その構造は、いずれの硬化体
においても、図3に代表されるほぼトバモライトの板状
粒子と、少量の繊維状粒子から構成されていた。さらに
粉末X線回折の結果、いずれの硬化体においても、最強
線はトバモライトの(220)回折線と同定された。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】
【発明の効果】本発明の高強度珪酸カルシウム硬化体
は、不燃性かつ軽量でありながら高い圧縮強度と高い曲
げ強度を有し、高強度、高弾性、耐火性に優れる。さら
に表面平滑であるため表面美観に優れ、加工性にも優れ
ていることから、各種建築物の外壁材、内壁材、床材に
好適である。具体的には、耐火間仕切り板、クロス直仕
上げ用壁材、ビル用外壁、住宅床板、耐火野地板、防火
軒天、耐火被覆板、等に使用できる。そして本発明によ
り、これら珪酸カルシウム硬化体の組織および強度を劣
化させずに工業的な乾燥が可能になった。本発明の乾燥
工程は、本発明の珪酸カルシウム硬化体の他にも、軽量
気泡コンクリートおよび繊維補強珪酸カルシウム板等の
建築材料の製造方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】粉末X線回折における、実施例1に対するI
a、Ibの算出方法の説明図である。
【図2】粉末X線回折における、実施例1に対するI
(002)、I(220)の算出方法の説明図である。
【図3】実施例1の走査型電子顕微鏡写真である。
【図4】実施例1の水銀圧入法による細孔分布曲線であ
る。
【図5】実施例1、比較例1における補強鉄筋の配置図
である。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 粉末X線回折におけるトバモライトの
    (220)面の回折ピーク強度Ibが、トバモライトの
    (220)面と(222)面の2本の回折ピークに挟ま
    れた角度領域における回折強度の最低値Iaとの間に、
    Ib/Iaが3以上となる関係を持ち、嵩比重が0.2
    以上0.7未満であり、最大径200μmを越える気泡
    が実質的に無い珪酸カルシウム硬化体を、珪酸質原料、
    石灰質原料を主とした固体原料と水を混合して、得られ
    たスラリーを予備硬化した後160℃以上でオートクレ
    ーブ養生し、さらに乾燥工程を経て製造するにあたり、
    乾燥工程における乾燥雰囲気の水蒸気分圧が300mm
    Hg以上、温度が100℃以上であることを特徴とする
    珪酸カルシウム硬化体の製造方法。
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