JP2001051074A - 電磁変換器、計時装置およびロータ磁石の着磁方法 - Google Patents

電磁変換器、計時装置およびロータ磁石の着磁方法

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JP2001051074A
JP2001051074A JP22175899A JP22175899A JP2001051074A JP 2001051074 A JP2001051074 A JP 2001051074A JP 22175899 A JP22175899 A JP 22175899A JP 22175899 A JP22175899 A JP 22175899A JP 2001051074 A JP2001051074 A JP 2001051074A
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rotor
gear
wheel
chronograph
magnet
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JP22175899A
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Yoshitaka Iijima
好隆 飯島
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Seiko Epson Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 異方性磁石からなるロータ磁石を輪列ととも
に装置に組み込んだ状態で着磁でき、かつ着磁不足やロ
ータ軸等の破損も防止でき、生産性も向上できる電磁変
換器を提供すること。 【解決手段】 数1で求められるロータ13および輪列
80における強度比αを、設定値3.0×10−14(m
s2)以下とする。着磁時に大きな力が加わってもロータ
13などの破損を確実に防止できる。ロータ磁石13b
を輪列80とともに時計内に組み込んだ状態で着磁して
も、ロータ磁石13bは、破損することなく確実に着磁
用の外部磁界の方向に合わせて回転し、着磁不足が発生
しない。着磁コイルのみを設ければよく、組立のサイク
ルタイムを短縮でき、ステップモータ8の生産性も向上
できる。 【数1】

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、異方性磁石からな
るロータ磁石を有し、かつ、輪列に噛み合うロータを備
える電磁変換器、この電磁変換器を用いた計時装置およ
びロータ磁石の着磁方法に関するものである。
【0002】
【背景技術】発電機やモータなどの電磁変換器として、
ロータ磁石を有するロータと、このロータが配置される
ステータ穴を有するステータと、このステータが接続さ
れてコイルが巻回されるコア(コイルブロック)とを備
えて構成されたものが知られている。そして、この電磁
変換器のロータかなに歯車(輪列)を噛み合わせて、ロ
ータを回転させたり(発電機の場合)、ロータの回転を
伝達させたり(モータの場合)している。
【0003】この電磁変換器で使用されるロータは、通
常、予め外部から直流強磁界を与えてロータ磁石を着磁
しておいた後に、歯車に噛み合わされて装置内に組み込
まれている。
【0004】しかしながら、ロータ磁石を着磁後に輪列
などとともに装置内に組み込む場合には、ロータ磁石が
ステータ穴などに引きつけられて組み込む作業が困難に
なるため、電磁変換器の生産性が損なわれるという問題
があった。
【0005】そこで、電磁変換器の生産性向上のため
に、ロータ磁石が未着磁状態のロータを歯車に噛み合わ
せて装置内に組み込んだ状態で、ロータ磁石を着磁する
ものが知られている(特公平3−34597号公報等参
照)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、磁石には、
所定の方向にのみ磁性が強い異方性磁石と、どの方向で
も同じ磁性を有する等方性磁石とがある。このうち、異
方性磁石は等方性磁石に比べて磁力が強く、特に、腕時
計などの小型の機器に組み込まれる電磁変換器には異方
性磁石のほうが適している。
【0007】この異方性磁石からなるロータ磁石を輪列
とともに装置内に組み込んだ状態で着磁すると、着磁用
の外部磁界の方向と磁性方向とが揃うようにロータ磁石
は回転する。この際、ロータ磁石は輪列の歯車と噛み合
っており、ロータや歯車の慣性が大きいと回転するまで
に時間がかかり、ロータ磁石の磁性方向が外部磁界に十
分に揃わず、着磁不足が生じるおそれがあるという問題
があった。
【0008】また、腕時計のような小型電子機器に使用
されているロータ磁石は、エネルギ積の大きな磁石を使
用しているため、着磁に必要な磁界は2MA/m(1M
=10)以上にもなり、回転時に瞬間的にロータに加
わる衝撃力が部品強度の許容値を超える可能性がある。
このため、特に細い軸部分や、樹脂に磁石をインサート
成形したロータ等では、着磁時に破壊を起こすおそれが
あるという問題があった。
【0009】一方で、このような問題を無くすために、
輪列とともに組み込まれた未着磁のロータ磁石を、ま
ず、着磁用のコイルよりも磁力の弱い外部磁界発生用コ
イル内を通過させて回転し、その方向を揃えた後、着磁
用のコイル内を通過させて着磁させる方法も知られてい
る(特開昭59−122345号公報等参照)。
【0010】このような着磁方法では、2種類のコイル
が必要となり、この2種類のコイルは、搬送中にロータ
の方向がずれないようになるべく近傍に設置する必要が
ある。この際、直流電流が常時印加された外部磁界発生
用コイルは、着磁用のコイルからの磁界の影響で誘起電
流が流れ磁界が乱れるため、着磁時は、直流電流をカッ
トし、コイルをオープン状態にするか、誘起電流の影響
を受けないように搬送するムーブメント(装置、機械
体)の間隔を広くする必要がある。
【0011】しかし、コイルに電流を流したり、止めた
りすると、そのオン、オフ時にノイズが発生し、ムーブ
メント組立の検査器等に悪影響を及ぼすという問題があ
る。また、ムーブメントの間隔を広くすることは、組立
のサイクルタイムが長くなり、電磁変換器の生産性が損
なわれるという問題がある。
【0012】そして、前述のような問題は、電磁変換器
を備える計時装置や、ロータ磁石の着磁方法を考える場
合も同様である。
【0013】本発明の目的は、異方性磁石からなるロー
タ磁石を輪列とともに装置に組み込んだ状態で着磁で
き、かつ着磁不足やロータ軸等の破損も防止でき、生産
性も向上できる電磁変換器、計時装置およびロータ磁石
の着磁方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明の電磁変換器は、
異方性磁石からなるロータ磁石を有し、かつ、輪列に噛
み合うロータを備える電磁変換器であって、前記ロータ
と噛み合う第1の歯車の慣性モーメントをIw1、この第
1の歯車に噛み合う第2の歯車の慣性モーメントを
w2、ロータから第1の歯車への減速比をZ、第1の
歯車から第2の歯車への減速比をZ、ロータおよび第
1の歯車における各部位の断面積Sと各材料許容応力σ
とを掛けた値である許容強度の中で最も小さい許容強度
をFとした場合に、
【0015】
【数3】
【0016】で求められるαが設定値以下であることを
特徴とするものである。
【0017】ここで、αについて説明する。
【0018】まず、歯車の回転エネルギーJは、その歯
車の慣性モーメントI、回転角速度ωで表すと、(Iω
)/2となる。
【0019】ロータ磁石を着磁する際は、輪列が同時に
回転することになり、輪列を回転させるエネルギーが必
要になってくる。そこで、着磁の際に、ロータが、当該
ロータに噛み合う歯車以降の輪列を回転させるのに必要
なエネルギーを求めてみる。
【0020】まず、ロータに噛み合う第1の歯車の回転
角速度ωは、
【0021】
【数4】
【0022】となる。ここで、ω0はロータの回転角速
度である。同様に、第1の歯車に噛み合う第2の歯車の
回転角速度ωは、
【0023】
【数5】
【0024】となる。同様に、第2の歯車に噛み合う第
3の歯車の回転角速度ωは、
【0025】
【数6】
【0026】となる。
【0027】また、これら第1、第2、第3の歯車の回
転エネルギーJ、J、Jは、それぞれ、
【0028】
【数7】
【0029】
【数8】
【0030】
【数9】
【0031】となり、減速比の2乗に比例することがわ
かる。このため、第2の歯車に噛み合う第3の歯車以降
のエネルギーJは、例えば、ロータに対する第3の歯
車の減速比Z・Z・Zが1/30程度であるとす
ると、J=Iw3・ω /(900×2)となり、
非常に小さくなるため無視できる。第4の歯車以降もさ
らに減速比が小さくなるため、無視することができる。
従って、必要な回転エネルギーの合計Jは、第1、第2
の歯車の回転エネルギーJ、Jを足したものでよ
く、数10の通りになる。
【0032】
【数10】
【0033】ロータ磁石の着磁は、瞬時に行われるた
め、数10に示すエネルギーは小さい方が望ましい。す
なわち、(Iw1+Z ・Iw2)とZとは小さい方
がよい。
【0034】一方で、ロータ磁石の着磁時にロータ等が
破損するかは、そのロータ等において、最も小さい許容
強度Fに対する回転エネルギーの大きさに関係する。
【0035】すなわち、各ロータ、第1の歯車における
各部位の断面積Sと各材料許容応力σとを掛けた値であ
る許容強度の中で最も小さい許容強度Fに対する回転エ
ネルギーの比をαとすれば、このαが小さいほど破損等
が生じにくくなる。つまり、αは、ロータや歯車の最小
強度Fに対する慣性モーメントの比であるから、(Iw1
+Z ・Iw2)・Z を、ロータや歯車の最小強度
Fで割ることで、上記数1が導出される。なお、最小許
容強度Fは、通常、ロータのほぞやプラスチックで形成
されたロータかなやこのかなに噛み合う第1の歯車の各
歯の肉薄部である。
【0036】このような本発明においては、αは、ロー
タや歯車の最小強度に対する慣性モーメントの比、つま
りロータおよび輪列における強度比を表すため、このα
の値が小さければ、耐久強度が高くなり、破損し難いこ
とが分かる。従って、異方性磁石からなるロータ磁石を
輪列とともに装置に組み込んだ際に、着磁時に瞬間的に
加わる力によってロータや歯車が破損するか否かを、こ
のαの値が設定値以下であるか否かで予め判断でき、破
損し難い輪列を設計することができる。
【0037】このため、ロータ磁石を輪列とともに装置
内に組み込んだ状態で着磁しても、ロータ磁石は破損す
ることなく確実に着磁用の外部磁界の方向に合わせて回
転し、着磁不足が発生しない。また、着磁コイルのみを
設ければよく、従来のように、方向設定用の外部磁界発
生コイルを併設する必要がないため、生産ラインにおい
て、ロータが組み込まれる装置(ムーブメント)を離し
て配置する必要などもなく、組立のサイクルタイムを短
縮でき、電磁変換器の生産性も向上できる。
【0038】ここで、前記設定値は、3.0×10−14
(ms2)であることが好ましい。前記設定値は、着磁時等
にロータに加わる力、つまりロータが回転する回転速度
に応じて適宜設定されるが、一般的な着磁装置の場合、
つまり着磁時にロータに加わる力が一般的な範囲の場
合、αが3.0×10−14(ms2)以下であれば、材料や
輪列構成等が異なる各種の電磁変換器において、着磁時
のように大きな力が加わってもロータなどの破損を確実
に防止できる。
【0039】また、前記ロータは耐震軸受で支持されて
いることが好ましい。耐震軸受を用いれば、着磁用の外
部磁界によってロータに加わる力をより軽減することが
可能となり、ロータなどの破損をより確実に防止でき
る。
【0040】本発明の計時装置は、前述の電磁変換器
と、時刻を表示する時刻表示装置とを備えていることを
特徴とする。
【0041】このような本発明によれば、計時装置に組
み込まれる電磁変換器を小型、軽量化できるので、計時
装置もより一層小型、軽量化でき、腕時計等に適した計
時装置とすることができる。
【0042】本発明のロータ磁石の着磁方法は、異方性
磁石からなるロータ磁石を有し、かつ、輪列に噛み合う
ロータと、このロータに噛み合う歯車を含む輪列とを備
える電磁変換器におけるロータ磁石の着磁方法におい
て、前記ロータと噛み合う第1の歯車の慣性モーメント
をIw1、この第1の歯車に噛み合う第2の歯車の慣性モ
ーメントをIw2、ロータから第1の歯車への減速比をZ
、第1の歯車から第2の歯車への減速比をZ、ロー
タおよび第1の歯車における各部位の断面積Sと各材料
許容応力σとを掛けた値である許容強度の中で最も小さ
い許容強度をFとした場合に、数11で求められるαが
設定値以下となる輪列のみを組み込んで着磁することを
特徴とするものである。
【0043】
【数11】
【0044】この際、αは、設定値の3.0×10−14
(ms2)以下であることが好ましい。
【0045】このような本発明によれば、αが設定値以
下になる輪列のみを組み込んで着磁しているので、着磁
時に瞬間的に大きな力が加わっても、ロータや歯車が破
損することを防止できる。
【0046】従って、ロータ磁石を輪列とともに装置内
に組み込んだ状態で着磁しても、ロータ磁石は破損する
ことなく確実に着磁用の外部磁界の方向に合わせて回転
し、着磁不足が発生しない。また、着磁コイルのみを設
ければよく、従来のように、方向設定用の外部磁界発生
コイルを併設する必要がないため、生産ラインにおい
て、ロータが組み込まれる装置(ムーブメント)を離し
て配置する必要などもなく、組立のサイクルタイムを短
縮でき、電磁変換器の生産性も向上できる。
【0047】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態を図面
に基づいて説明する。
【0048】図1は、本発明の第1実施形態に係る計時
装置であるクロノグラフ時計の平面図であり、図2は、
クロノグラフ時計のムーブメントを裏蓋側から見た平面
図、図3は、その一部分を示す拡大平面図であり、図4
は、図3の断面図である。
【0049】クロノグラフ時計は、時刻を表示する時刻
表示装置2と、経過時間を表示するためのクロノグラフ
表示装置3と、これら時刻表示装置2およびクロノグラ
フ表示装置3を駆動する電磁変換器であるステップモー
タ5〜8とを備えている。
【0050】時刻表示装置2は、時針21、分針22、
秒針23から構成され、これらの針21〜23は、基本
時計用ステップモータ5によって駆動される。
【0051】クロノグラフ表示装置3は、秒を計測する
ための秒クロノグラフ針31と、分を計測するための分
クロノグラフ針32と、時を計測するための時クロノグ
ラフ針33と、1/100秒を計測するための1/10
0秒クロノグラフ針34と、1/10秒を計測するため
の1/10秒クロノグラフ針35とを備えている。これ
らの針31〜35は、秒クロノグラフ用ステップモータ
6、分クロノグラフ用ステップモータ7、1/100秒
クロノグラフ用ステップモータ8によって駆動される。
【0052】各ステップモータ5〜8は、ロータ13
と、このロータ13が配置されるステータ孔14bを有
するステータ14と、このステータ14の端部が接続さ
れるとともに、コイル15が巻回されるコア16とを備
えて構成されている。
【0053】各ロータ13は、樹脂に磁石をインサート
成形することで形成され、ロータかな13aおよび異方
性磁石からなるロータ磁石13bを備えて構成されてい
る。このロータ13は、その両端部に突出するほぞ13
c部分で地板1aおよび輪列受1bに支持されている。
なお、各ロータ13は、内蔵電池で作動される駆動回路
からの駆動パルスを、コイル15に流すことによって所
定の回転周期で回転する。
【0054】基本時計用ステップモータ5のロータ13
のロータかな13aには、輪列50を構成する五番車5
4が噛み合っており、これにより、ロータ13の回転が
輪列50に伝達されるようになっている。
【0055】つまり、前述のロータ13の回転は、五番
車54、四番車53、三番車52、二番車51、日の裏
車56、筒車(図示略)からなる輪列50を介して減速
されて伝達される。この伝達された回転によって、二番
車51に嵌装されている分針22および筒車に嵌装され
ている時針21が駆動されるようになっている。
【0056】一方、ロータ13の回転は、五番車54を
介して小秒車55にも減速されて伝達され、これによ
り、当該小秒車55に取り付けられている秒針23が駆
動されるようになっている。
【0057】また、秒クロノグラフ用ステップモータ6
のロータかな13aには、輪列60を構成する秒クロノ
グラフ第1中間車61が噛み合っており、これにより、
ロータ13の回転が輪列60に伝達されるようになって
いる。
【0058】つまり、このロータ13の回転は、秒クロ
ノグラフ第1中間車61、秒クロノグラフ第2中間車6
2および秒クロノグラフ車63からなる輪列60に減速
されて伝達される。この伝達された回転によって、秒ク
ロノグラフ車63に嵌装されている秒クロノグラフ針3
1が駆動するようになっている。この秒クロノグラフ針
31は、60秒で一回転するように設定されている。こ
こで、秒クロノグラフ車63は、前述の二番車51と同
軸上に配置されている。つまり、時針21、分針22、
秒クロノグラフ針31は、同軸上に配置されている。
【0059】さらに、分クロノグラフ用ステップモータ
7のロータかな13aには、輪列70を構成する分クロ
ノグラフ第1中間車71が噛み合っており、これによ
り、ロータ13の回転が輪列70に伝達されるようにな
っている。
【0060】つまり、このロータ13の回転は、分クロ
ノグラフ第1中間車71および分クロノグラフ車72、
時クロノグラフ中間車73、時クロノグラフ車(図示
略)からなる輪列70に減速されて伝達される。この伝
達された回転によって、分クロノグラフ車72に嵌装さ
れている分クロノグラフ針32および時クロノグラフ車
(図示略)に嵌装されている時クロノグラフ針33が駆
動するようになっている。ここで、分クロノグラフ針3
2は、30分で一回転するように設定されている。同様
に、時クロノグラフ針33は、12時間で一回転するよ
うに設定されている。従って、分クロノグラフ針32が
二回転すると、時クロノグラフ針33が一目盛りだけ進
んで1時間だけ進行したことが表示されるようになって
いる。
【0061】1/100秒クロノグラフ用ステップモー
タ8のロータかな13aには、輪列80を構成する1/
100秒クロノグラフ中間車81が噛み合っており、こ
れにより、ロータ13の回転が輪列80に伝達されるよ
うになっている。
【0062】つまり、このロータ13の回転は、図3、
図4にも示されるように、1/100秒クロノグラフ中
間車81および1/100秒クロノグラフ車82、1/
10秒クロノグラフ中間車83、1/10秒クロノグラ
フ車(図示略)からなる輪列80に減速されて伝達され
る。この伝達された回転によって、1/100秒クロノ
グラフ車82に嵌装されている1/100秒クロノグラ
フ針34および1/10秒クロノグラフ車(図示略)に
嵌装されている1/10秒クロノグラフ針35が駆動す
るようになっている。
【0063】ここで、ロータ13から1/100秒クロ
ノグラフ中間車81への減速比は、1/6であり、1/
100秒クロノグラフ中間車81から1/100秒クロ
ノグラフ車82への減速比は、6/5であり、1/10
0秒クロノグラフ車82から1/10秒クロノグラフ中
間車83への減速比は、2/5となっている。
【0064】このような減速比により、1/100秒ク
ロノグラフ針34は、0.1秒で一回転するように設定
されている。同様に、1/10秒クロノグラフ針35
は、1秒で一回転するように設定されている。従って、
1/100秒クロノグラフ針34が1回転すると、1/
10秒クロノグラフ針35が一目盛りだけ進んで0.1
秒だけ進行したことが表示されるようになっている。
【0065】次に、このようなステップモータ5〜8を
構成するロータ磁石13bに関するαの値を、1/10
0秒クロノグラフ用ステップモータ8のロータ磁石13
bを例に、以下に説明する。
【0066】まず、従来の1/100秒クロノグラフ用
ステップモータ8のロータ13および輪列80から、α
を算出してみる。ロータ13と噛み合う第1の歯車であ
る1/100秒クロノグラフ中間車81の慣性モーメン
トIw1’は、1.9×10−12(kgm2)であり、この1
/100秒クロノグラフ中間車81に噛み合う第2の歯
車である1/100秒クロノグラフ車82の慣性モーメ
ントIw2’は、1.0×10−12(kgm2)である。
【0067】また、ロータ13から1/100秒クロノ
グラフ中間車81への減速比Zは、前述のように1/
6であり、1/100秒クロノグラフ中間車81から1
/100秒クロノグラフ車82への減速比Zは、前述
のように6/5である。
【0068】さらに、ロータ13および1/100秒ク
ロノグラフ中間車81において、Fが小さくなるのは、
通常、ほぞ13c、ロータかな13aの歯の肉薄部、か
な13aに噛み合う1/100秒クロノグラフ中間車8
1の歯の肉薄部のいずれかである。本実施形態では、F
=S×σが最小となるのは、ほぞ13cの部分であり、
その際のFは、S=π×(0.85×10−4)2(m2)であ
り、材料許容応力σ=9.12×107(N/m2)であるこ
とから、S×σ=π×(0.85×10−4)2×9.12
×107=2.07(N)である。
【0069】これらを数1に代入すると、α’=4.4
9×10−14(ms2)となる。しかし、この値では、ロー
タ13を輪列80とともに時計内に組み込んで着磁する
と当該ロータ13および輪列80が破損する場合があっ
た。
【0070】一方、本実施形態では、1/100秒クロ
ノグラフ中間車81および1/100秒クロノグラフ車
82の慣性モーメントIw1 ,Iw2を小さくして、前記α
の値を設定値(3×10−14(ms2))以下とした。具体
的には、1/100秒クロノグラフ中間車81の材質を
比重の低いプラスチックに変更するとともに、一部(図
4のA部分)を削って軽量化することで、慣性モーメン
トIw1を従来の2/3(1.267×10−12(kgm2))
に低減している。
【0071】また、1/100秒クロノグラフ車82の
材質を黄銅からアルミニウムに変更し、一部(図4のB
部分)を削って軽量化することで、慣性モーメントIw2
を従来の1/2(0.5×10−12(kgm2))に低減して
いる。
【0072】このような輪列80を組み込むことによ
り、α=2.67×10−14(ms2)となり、ロータ磁石
13bを輪列80とともに時計内に組み込んだ状態で着
磁しても、ロータ13や輪列80は破損することがなく
なった。これにより、ロータ13は着磁用の外部磁界の
方向に合わせて確実に回転し、着磁不足も発生しないよ
うになる。
【0073】従来および本実施形態における1/100
秒クロノグラフ部分のαをグラフに示すと、図5のよう
に表される。ここで、従来の1/100秒クロノグラフ
部分のαは、機種Aで表され、本実施形態の1/100
秒クロノグラフ部分のαは、機種A’で表されている。
【0074】この図から、ロータ13を輪列80ととも
に時計に組み込んだ際に、着磁時に瞬間的に加わる力に
よってロータ13や歯車81、82が破損するか否かの
基準となる設定値は、3×10−14(ms2)に設定すれば
よいことが分かる。つまり、数1によって算出された値
αが、この設定値以下であれば、ロータ13および輪列
80等が破損することがなく、逆にこの設定値よりも大
きければ、ロータ13および輪列80等が破損するおそ
れがあるということであり、実際に着磁する前に判断す
ることができる。なお、着磁時にロータ13に加わる力
Jには、回転各速度ωの値も含まれるため、αに基づい
て破損するか否かを判断するための設定値は、3×10
−14(ms2)に限定されるものではなく、ロータ13の回
転速度つまり着磁装置からロータ13に加わる力によっ
て設定値を設定すればよい。すなわち、使用する着磁装
置において、αの異なるものを複数テストして破損の有
無を調べて設定値を判断すればよい。但し、通常の着磁
装置であれば、ほぼ上記設定値3×10−14(ms2)を基
準とすればよい。
【0075】他のステップモータ5、6、7も、αを設
定値(例えば3×10−14(ms2))以下に設定すること
で、ロータ磁石13bを輪列50、60、70とともに
時計内に組み込んだ状態で着磁することが可能となる。
【0076】このような本第1実施形態によれば、次の
ような効果が得られる。
【0077】(1)すなわち、αは、ロータ13および
各輪列50〜80における強度比を表すため、このαの
値が小さければ、耐久強度が高くなり、破損し難いこと
が分かる。従って、ロータ磁石13bを輪列50〜80
とともに時計内に組み込んだ際に、着磁時に瞬間的に加
わる力によってロータ13や歯車が破損するか否かを、
このαの値が設定値以下であるか否かで予め判断でき、
破損し難い輪列を設計することができる。
【0078】(2)ロータ磁石13bを輪列50〜80
とともに時計内に組み込んだ状態で着磁しても、ロータ
磁石13bは、破損することなく確実に着磁用の外部磁
界の方向に合わせて回転するため、着磁不足の発生を防
止できる。
【0079】(3)着磁コイルのみを設ければよく、従
来のように、方向設定用の外部磁界発生コイルを併設す
る必要がないため、生産ラインにおいて、ロータ13が
組み込まれる装置(ムーブメント)を離して配置する必
要などもなく、組立のサイクルタイムを短縮でき、ステ
ップモータ5〜8の生産性も向上できる。
【0080】(4)設定値を3.0×10−14(ms2)と
したので、通常使用される着磁装置を用いた場合には、
ロータ13などの破損を確実に防止できる。
【0081】(5)クロノグラフ時計に組み込まれる輪
列50〜80やロータ13を含むステップモータ5〜8
をプラスチック等で形成することで、小型、軽量化でき
るので、クロノグラフ時計もより一層小型、軽量化で
き、腕時計等に適した計時装置とすることができる。
【0082】図6には、本発明の第2実施形態に係る2
針時計の要部の断面図が示されている。本第2実施形態
は、一般的に知られている2針時計を用いたものであ
る。
【0083】詳しくは、2針時計用ステップモータ90
を構成するロータ91の回転は、三番車94、二番車9
3、日の裏車98、筒車95からなる輪列92を介して
減速されて伝達される。この伝達された回転によって、
二番車93に嵌装されている分針96および筒車95に
嵌装されている時針97が駆動されるようになってい
る。
【0084】この2針時計用ステップモータ90の三番
車94の回転モーメントIw3は、通常、9.9×10
−12(kgm2)であり、二番車93は回転モーメントI
w4は、1.25×10−11(kgm2)、ロータ91のほぞ9
1cの直径1.8×10−4(m)、材料許容応力σ=9.
12×107(N/m2)であるため、前記実施形態と同様に
算出すると、α=5.98×10−14(ms2)が求められ
る。しかし、この設定値よりも大きなαの場合では、ロ
ータ91を輪列92とともに時計内に組み込んでロータ
磁石91aを着磁した際に、ロータ91等が破損するこ
とがあった。
【0085】一方、本実施形態では、三番車94の材質
を金属(黄銅)からプラスチックに変更し、三番車94
の比重を従来の約1/5(8.5から1.6)に低減し
ている。この変更により、α=1.19×10−14(m
s2)となった。これにより、αが設定値よりも小さくな
り、ロータ磁石91aを輪列92とともに時計内に組み
込んだ状態で着磁しても、ロータ磁石91aは破損する
ことがなくなった。
【0086】従来および本実施形態における2針時計の
αをグラフに示すと、図5のように表される。ここで、
従来の2針時計のαは、機種Cで表され、本実施形態の
2針時計のαは、機種C’で表されている。
【0087】このような本第2実施形態によれば、2針
時計であっても前記第1実施形態と同一の効果を得るこ
とができる。
【0088】なお、本発明は前記実施の形態に限定され
るものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等
を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
【0089】例えば、設定値としては、前記実施形態で
示した値に限らず、着磁装置の種類、すなわち着磁時に
ロータ磁石に加わる力の大きさなどに応じて適宜設定す
ればよい。具体的には、各着磁装置において、αが異な
る何種類かのロータ磁石を輪列とともに時計内に組み込
んだ状態で着磁して図5のようなグラフを作成し、破損
が生じる場合と生じない場合とを比較することで設定す
ればよい。
【0090】また、ロータ13や各輪列の歯車は、耐震
軸受で支持してもよい。このような耐震軸受を用いれ
ば、着磁用の外部磁界によって当該ロータ13に加わる
力をより軽減することができ、ロータ13等の破損をよ
り確実に防止できる。
【0091】本発明の計時装置としては、クロノグラフ
時計や2針時計に限らず、例えば、3針時計でもよい。
【0092】また、ステップモータの駆動方式として
は、電池で駆動するものに限らず、例えば、発電機で発
電した電力を利用してステップモータを駆動させるよう
な方式でもよく、実施に当たって適宜選択すればよい。
【0093】さらに、時計としては、クロノグラフ時計
等の腕時計に限らず、例えば、置き時計、クロック等の
各種時計でもよい。
【0094】また、本発明の計時装置としては、ステッ
プモータで駆動されるものに限らず、ゼンマイから輪列
を介して伝達されるトルクで電磁変換器である発電機の
ロータを回転し、その発電電力で駆動回路を作動して発
電機の回転速度を調速することで、前記輪列に設けられ
た指針をコントロールする電子制御式機械時計などを用
いてもよい。
【0095】このような様々の種類の計時装置において
も、例えば、図5の機種Bで示されるある従来の機種に
おけるαと、改善後の機種B’におけるαとで比較でき
るように、αが所定の設定値以下となるようにすれば、
着磁時にロータ破損が発生することがない。
【0096】また、本発明のロータ磁石の着磁方法で
は、αが設定値以下となる輪列のみを組み込んで着磁す
ればよい。このため、αが設定値以上になってしまう場
合には、ロータ磁石13bを組み込む前に着磁すること
で対応すればよい。
【0097】さらに、本発明の電磁変換器は、前述のよ
うな各種計時装置に組み込まれるものに限らず、携帯型
時計、携帯型の血圧計、携帯電話機、ページャ、万歩
計、電卓、携帯用パーソナルコンピュータ、電子手帳、
携帯ラジオ、オルゴール、メトロノーム、電気かみそり
等に組み込まれるモータや発電機にも適用することがで
きる。さらに、モータや発電機単独の製品に用いてもよ
い。要するに、本発明は、輪列と組み合わされる各種の
モータ、発電機等の電磁変換器や、このような電磁変換
器を有する計時装置などに広く適用できる。
【0098】
【発明の効果】以上に述べたように、本発明の電磁変換
器、計時装置およびロータ磁石の着磁方法によれば、異
方性磁石からなるロータ磁石を輪列とともに装置に組み
込んだ状態で着磁でき、かつ着磁不足やロータ軸等の破
損も防止でき、生産性も向上できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る計時装置であるク
ロノグラフ時計を示す平面図である。
【図2】前記実施形態におけるクロノグラフ時計の要部
を示す平面図である。
【図3】前記実施形態における要部の一部分を示す拡大
平面図である。
【図4】図3の断面図である。
【図5】各種時計におけるαの値を示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る要部を示す断面図
である。
【符号の説明】
1a 地板 1b 輪列受 2 時刻表示装置 3 クロノグラフ表示装置 5 基本時計用ステップモータ 6 秒クロノグラフ用ステップモータ 7 分クロノグラフ用ステップモータ 8 1/100秒クロノグラフ用ステップモータ 13 ロータ 13b ロータ磁石 14 ステータ 14b ステータ孔 15 コイル 16 コア 21 時針 22 分針 23 秒針 31 秒クロノグラフ針 32 分クロノグラフ針 33 時クロノグラフ針 34 1/100秒クロノグラフ針 35 1/10秒クロノグラフ針 50、60、70、80 輪列 81 第1の歯車である1/100秒クロノグラフ中間
車 82 第2の歯車である1/100秒クロノグラフ車 83 1/10秒クロノグラフ中間車 90 2針時計用ステップモータ 91 ロータ 91a ロータ磁石 92 輪列 93 第2の歯車である二番車 94 第1の歯車である三番車 96 分針 97 時針

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 異方性磁石からなるロータ磁石を有し、
    かつ、輪列に噛み合うロータを備える電磁変換器であっ
    て、 前記ロータと噛み合う第1の歯車の慣性モーメントをI
    w1、この第1の歯車に噛み合う第2の歯車の慣性モーメ
    ントをIw2、ロータから第1の歯車への減速比をZa
    第1の歯車から第2の歯車への減速比をZ、ロータお
    よび第1の歯車における各部位の断面積Sと各材料許容
    応力σとを掛けた値である許容強度の中で最も小さい許
    容強度をFとした場合に、 【数1】 で求められるαが設定値以下であることを特徴とする電
    磁変換器。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の電磁変換器において、 前記設定値は、3.0×10−14(ms)であることを特
    徴とする電磁変換器。
  3. 【請求項3】 請求項1または請求項2に記載の電磁変
    換器において、 前記ロータは耐震軸受で支持されていることを特徴とす
    る電磁変換器。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれかに記載の電磁変
    換器と、時刻を表示する時刻表示装置とを有することを
    特徴とする計時装置。
  5. 【請求項5】 異方性磁石からなるロータ磁石を有し、
    かつ、輪列に噛み合うロータを備える電磁変換器におけ
    るロータ磁石の着磁方法において、 前記ロータと噛み合う第1の歯車の慣性モーメントをI
    w1、この第1の歯車に噛み合う第2の歯車の慣性モーメ
    ントをIw2、ロータから第1の歯車への減速比をZa
    第1の歯車から第2の歯車への減速比をZ、ロータお
    よび第1の歯車における各部位の断面積Sと各材料許容
    応力σとを掛けた値である許容強度の中で最も小さい許
    容強度をFとした場合に、数2で求められるαが設定値
    以下となる輪列のみを組み込んで着磁することを特徴と
    するロータ磁石の着磁方法。 【数2】
  6. 【請求項6】 請求項5に記載のロータ磁石の着磁方法
    において、 前記設定値は、3.0×10−14(ms2)以下であること
    を特徴とするロータ磁石の着磁方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2010109487A2 (en) * 2009-03-24 2010-09-30 Akshay Sanghavi System for power storage amplification and generation
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JP2017161256A (ja) * 2016-03-07 2017-09-14 セイコーインスツル株式会社 表示機構、ムーブメント及び時計

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