JP2001048702A - 殺虫剤組成物 - Google Patents

殺虫剤組成物

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Abstract

(57)【要約】 【課題】DDVPを殺虫成分とする、臭気の弱い殺虫剤
組成物を提供すること。 【解決手段】溶剤及び殺虫剤成分を含有してなる殺虫剤
組成物において、さらに炭素数10〜12の一価アルコ
ールを含有してなることを特徴とする殺虫剤組成物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は害虫駆除を目的とす
る殺虫剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】害虫駆除を目的とする殺虫剤組成物には
油剤、乳剤等がある。かかる剤型の違いにかかわらず、
殺虫剤成分を溶解希釈させるために溶剤が使用されてい
る。従来より溶剤としては、石油、キシロール等の各種
溶剤がその溶解性能に応じて使用されている。昨今、害
虫駆除を目的とする殺虫剤組成物はその臭いの少ないも
のの要望が高く、臭いの強いキシロールや芳香族化合物
を含む石油系溶剤は敬遠されつつある。臭いの低い溶剤
としては芳香族化合物を含まない石油系溶剤、例えば、
パラフィン系又はイソパラフィン系石油等が利用されて
いる。
【0003】ところが殺虫剤成分の中には芳香族化合物
を含まない石油系溶剤には溶解しにくいか、ほとんど溶
解しないものがあり、かかる殺虫剤成分を用いて臭いの
少ない殺虫剤組成物を製造する際の障害となっている。
例えば、有機リン系殺虫剤であるスミチオンは芳香族を
含まない石油系溶剤にはほとんど溶解せず、アルキルベ
ンゼン等の芳香族溶剤を溶解補助剤として使用し製剤化
されている。
【0004】一方、同じ有機リン系殺虫剤としてDDV
Pがある。DDVPは単独製剤に限らず各種混合製剤に
も適用できる。DDVPを含む混合製剤は数多く市場に
流通している。具体例を挙げればスミチオンDDVP油
剤/乳剤、ダイアジノンDDVP油剤/乳剤、バイテッ
クスDDVP油剤/乳剤、サフロチンDDVP油剤/乳
剤等が挙げられる。混合製剤が多いことはそれだけ有用
な用途があることを示しており、殺虫剤の中で重要な位
置を占めている。このようなDDVPには、溶解性が悪
いという製剤上の欠点がある。即ち、DDVPは芳香族
化合物を含有する石油系溶剤には溶解するが、芳香族化
合物を含まない石油系溶剤にはほとんど溶解しない。そ
れだけでなく、DDVPはアルキルベンゼン等の芳香族
溶剤にも溶解しにくい。このようなDDVPの溶解性
は、溶剤臭、石油臭の少ない殺虫剤組成物を提供する際
の障害となっている。したがって、DDVPを含有する
殺虫剤組成物を製剤する際の溶剤選択には著しい制約が
あった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、DD
VPを殺虫成分とする、臭気の弱い殺虫剤組成物を提供
することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者は、DDVPを
効率良く溶解させ、かつ臭いの少ない殺虫剤組成物を提
供すべく研究を重ねた結果、脂肪族アルコールの特殊な
範囲のなかに、DDVPを効率良く溶解させることがで
きる化合物があることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】即ち、本発明の要旨は、溶剤及び殺虫剤成
分を含有してなる殺虫剤組成物において、さらに炭素数
10〜12の一価アルコールを含有してなることを特徴
とする殺虫剤組成物に関するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】溶剤としては石油系溶剤が好まし
いものとして挙げられる。例えば、炭素数9〜17の、
より好ましくは炭素数11〜15の炭化水素又はその混
合物が挙げられる。取り分け、芳香族化合物の含有量が
0.5重量%以下のものが、いわゆる「石油臭」が弱い
ためより好ましい。好適な石油系溶剤としては、低アロ
マ又はノンアロマと称されるもので、パラフィン系石油
のものとイソパラフィン系石油のものとがある。具体例
を挙げれば、例えば、ネオチオゾールF(中央化成社
製)、イソパラフィンYH−CF(中央化成社製)、エ
クソール(エクソン化学社製)、LA-30 (出光興産社
製)、FP-30 (出光興産社製)、パラオール250(昭
和シェル石油社製)、アイソパーM(エクソン化学社
製)等が挙げられる。溶剤は単独で用いても良く、複数
成分を併用しても良い。芳香族化合物の含有量は石油の
密度、粘度、屈折率等の物性値から演算により求められ
る。
【0009】溶剤の含有量は殺虫剤組成物の0.1〜9
9.4重量%が好ましく、50〜99.0重量%がより
好ましく、70〜98.5重量%が特に好ましい。
【0010】殺虫剤成分としてはDDVPが好ましい。
DDVPは代表的な有機リン系殺虫剤として広く使用さ
れているため、本発明によりその使用場面が広がること
は極めて有用である。殺虫剤成分はDDVP単独でも良
く、さらに他の各種殺虫剤と併用しても良い。殺虫剤成
分の含有量は殺虫剤組成物の0.1〜50重量%が好ま
しく、0.2〜15重量%がより好ましく、0.2〜
9.0重量%が特に好ましい。
【0011】炭素数10〜12の一価アルコールとして
は、デカノール、ウンデカノール及びドデカノールが好
ましい。かかるアルコールは直鎖でも分岐鎖でも良い
が、直鎖のもの、即ち、n−デカノール、n−ウンデカ
ノール及びn−ドデカノールがより好ましい。炭素数1
0〜12の一価アルコールは単独で用いても良く、複数
成分を併用しても良い。かかるアルコールはDDVPの
溶解性に優れているだけでなく、臭気が少ないこと、低
毒性であること、常温で取り扱い易い融点・引火点であ
ること、及び比較的安価にかつ容易に供給できることと
いった極めて好ましい性質を有する。
【0012】炭素数10〜12の一価アルコールの含有
量は殺虫剤組成物の0.1〜50重量%が好ましく、
0.2〜15重量%がより好ましく、0.2〜9.0重
量%が特に好ましい。
【0013】本発明の組成物は、例えば、炭素数10〜
12の一価アルコールと殺虫剤成分とを混合して混合物
(該混合物を「殺虫剤濃縮液」とする。)を得、殺虫剤
濃縮液と溶剤とを混合する方法、炭素数10〜12の一
価アルコールと溶剤とを混合して混合物(該混合物を
「混合溶剤」とする。)を得、混合溶剤と殺虫剤成分と
を混合する方法等により調製することができる。
【0014】本発明の殺虫剤組成物の剤型は特に限定さ
れず、油剤型でも乳剤型でも良い。乳剤型殺虫剤組成物
においては、上記の油剤型殺虫剤組成物100重量部に
対して、乳化剤が好ましくは1〜20重量部、より好ま
しくは3〜15重量部、特に好ましくは3〜10重量部
含有してなる。乳化剤としては、本技術分野で通常使用
される公知の乳化剤を制限なく使用することができる。
乳剤型の組成物は、例えば上記の殺虫剤組成物に乳化剤
をさらに混合して攪拌処理等を行うこと等により調製す
ることができる。
【0015】本発明の殺虫剤組成物には乳化剤、共力
剤、消臭剤、香料等が含有されていても良い。
【0016】本発明の殺虫剤濃縮液は炭素数10〜12
の一価アルコールの単独成分又は混合物と殺虫剤成分と
を含有してなる。本発明の殺虫剤組成物は一旦殺虫剤濃
縮液として調製した後、溶剤と混合することでも調製す
ることができるため、殺虫剤組成物を遠隔地へ移送する
場合、殺虫剤濃縮液の形態で移送する方がコスト的に極
めて有利である。殺虫剤濃縮液における炭素数10〜1
2の一価アルコールの含有量は30〜70重量%が好ま
しく、40〜60重量%がより好ましい。殺虫剤濃縮液
における殺虫剤成分の含有量は30〜70重量%が好ま
しく、40〜60重量%がより好ましい。
【0017】
【実施例】次に、本発明を実施例等に基づいてさらに詳
細に説明するが、本発明はかかる実施例等に何ら限定さ
れるものではない。
【0018】試験例1 石油系溶剤に限って言えば、一般的に石油中の芳香族化
合物が多いほど溶解力が高くなる傾向にある。そこで、
石油系溶剤の性質とスミチオン、DDVPの溶解性を調
べた。結果を表1に示す。ここで、ノンアロマ石油系溶
剤としてはエクソールを、含アロマ石油系溶剤としては
CA-30 (出光興産社製)を、アロマ石油系溶剤としては
ソルベッソ(エクソン化学社製)を用いた。
【0019】
【表1】
【0020】表1のように臭気の無い石油を溶剤として
選択すると溶解力がなくなってしまう。臭気があっても
許容される場合は、アロマ石油やキシロールが溶剤とし
て利用される。低臭化を目的とする場合、上記の溶剤で
はその目的にそぐわないため、溶剤も臭気がないものを
選択する必要がある。低臭化と溶解性の両者を満たす目
的のために、溶剤の溶解力を向上させる剤である溶解補
助剤が使用されることがある。現在使用されている溶解
補助剤には、スミチオンの溶解補助剤であるアルキルベ
ンゼン及びKMC-113 (クレハ化学社製)、IPBC(三井化
学社製)の溶解補助剤であるMFTG(日本乳化剤社製)が
知られている。しかしながら、溶解補助剤には溶解させ
るものについての特異性があるのが一般的である。アル
キルベンゼンにDDVPは溶解しない。KMC-113 にもD
DVPは溶解しない。従ってDDVPの溶解補助剤は従
来適当なものがなく、DDVPを殺虫成分とする殺虫剤
組成物の溶剤としてはアロマ石油を使用せざるを得ない
状態であった。
【0021】試験例2 各種脂肪族アルコール等について、その性質及びDDV
Pの溶解性等を検討した。まず、臭気の強弱については
次のように評価した。
【0022】無臭灯油(芳香族含有量0重量%)の溶剤
(ここではネオチオゾールF)を使用し、これを0重量
%芳香族溶剤添加品とした。この0重量%芳香族溶剤添
加品に、芳香族100重量%の溶剤(ここではソルベッ
ソ150)を添加した臭気比較溶液を作製した。臭気比
較溶液は7種類用意し、それぞれのソルベッソ150の
含有量は1重量%、2重量%、5重量%、10重量%、
15重量%、20重量%、25重量%であった。臭いの
尺度は、各臭気比較溶液におけるソルベッソ150の含
有量の重量%の数値の5分の1の数値を採用した。評価
する溶剤がどの尺度の臭気比較溶液と同等であるかを知
覚により判定し、該当する臭気比較溶液の尺度で評価し
た。従来溶剤の臭気を上記評価方法で評価した結果を表
2に示す。
【0023】
【表2】
【0024】次いで、各種脂肪族アルコール等について
検討した。臭いの尺度の値が4.0以上を「強い」臭気
と、0.4以下を「弱い」臭気と判定した。DDVPの
溶解性については、溶剤と混合し、−5℃で24時間放
置後、分離物の生じないものを「溶解する」と、同一条
件で分離物を認めるものを「溶解せず」と判定した。結
果を表3に示す。
【0025】
【表3】
【0026】この結果より、n−デカノール、n−ウン
デカノール、n−ドデカノールが、DDVPの溶解性が
良好なだけではなく、臭気が弱く、常温で取り扱い易い
ものであることが分かった。よって、これらのアルコー
ルはDDVPの溶解に使用し得ることが分かった。さら
に、DDVPの溶解性については、アルコールであれば
いかなるものであっても良好であるというわけではな
く、例えば、ベンジルアルコールやブタノール、エタノ
ールにはDDVPは溶解しなかった。
【0027】実施例1 表4の処方に従ってDDVP油剤を調製した。具体的に
は、まず最初にDDVPとn−ドデカノールとを混合
し、次いで石油系溶剤(低臭灯油)と混合して調製した
(本発明組成物)。本発明組成物においては、常温での
DDVPの溶解性は全く問題がなく、調製も迅速に行う
ことができた。調製されたDDVP油剤は石油臭、溶剤
臭がなく、低臭油剤として有用なものであった。なお、
低臭灯油は低アロマタイプ石油系溶剤(出光興産社製、
商品名:スーパーゾルLA−30)であり、この灯油の
物性値からの演算法による芳香族化合物含有量は0.1
重量%以下であった。有臭灯油は含アロマ石油系溶剤
(出光興産社製、商品名:スーパーゾルCA−30)で
あり、この灯油は芳香族化合物を22.8重量%含有す
るものであった。参考に、n−ドデカノールを使用せず
に調製したDDVP油剤(比較組成物1、2)との比較
も行った。比較組成物1は、DDVPと石油系溶剤(有
臭灯油)とを混合して調製した。比較組成物2は、各成
分を混合しても製剤化自体が不可能であった。
【0028】
【表4】
【0029】上記結果から明らかなように、芳香族化合
物を含まない石油系溶剤(低臭灯油)はDDVPを溶解
させるだけの溶解力はなく、低臭灯油単独では製剤化で
きなかった(比較組成物2)。芳香族化合物を含む石油
系溶剤(有臭灯油)であればそれ単独でも製剤化はでき
るが、製剤化された組成物は石油臭が強く、臭いの弱い
商品を提供する観点からは不適切なものであった(比較
組成物1)。一方、本発明組成物は低臭灯油が組成物中
の99重量%以上を占めているにもかかわらず、DDV
Pが完全に溶解しており、製剤化も非常に簡単であっ
た。できた組成物は石油臭が全くなく、臭いの弱い商品
として最適であった。
【0030】実施例2 表5の処方に従って、DDVPとn−デカノールとを混
合してDDVP油剤濃縮液を調製した。該濃縮液におい
ては、常温でのDDVPの溶解性は全く問題がなく、調
製も迅速に行うことができた。得られた濃縮液は石油
臭、溶剤臭が無く、低臭油剤濃縮液として有用なもので
あった。本濃縮液は用途に従って石油等の溶剤で希釈し
て使用するものであり、表5の希釈倍率にて低臭灯油で
濃縮液を希釈したところ、容易に殺虫剤組成物を調製す
ることができた。このことからも、本発明の濃縮液は低
臭用油剤濃縮液として有用なものであった。一方、n−
デカノールを使わずに低臭灯油を使用して濃縮液の調製
を試みたが、調製自体が不可能であった。
【0031】
【表5】
【0032】本発明の濃縮液は、芳香族化合物を含まな
い石油系溶剤で希釈して殺虫剤組成物を調製するのに非
常に有効であった。炭素数10〜12の一価アルコール
を含有させることにより、本実施例のような濃縮液を調
製することが初めて可能になった。このような濃縮液は
遠隔地への移送に極めて有利である。
【0033】実施例3 表6の処方に従ってDDVP乳剤を調製した。具体的に
は、まず最初にDDVPとn−ドデカノールとを混合
し、次いで溶剤と混合し、さらに乳化剤〔陰イオン、非
イオン混合品(日本乳化剤社製、商品名:TS−751
4)〕と混合して乳剤を調製した(本発明組成物)。
【0034】
【表6】
【0035】本発明組成物の乳剤においては、常温での
DDVPの溶解性は全く問題がなく、調製も迅速に行う
ことができた。調製したDDVP乳剤は石油臭、溶剤臭
が無く、水で所定量に希釈して散布しても溶剤臭はしな
かった。比較組成物は、DDVPとキシロールとを混合
した後、乳化剤と混合して調製した。本発明組成物と比
較組成物の乳剤の性能を比較した結果を表7に示す。
【0036】
【表7】
【0037】DDVP乳剤に限らず、一般に乳剤には溶
剤としてキシロールが使用されている。キシロールにつ
いては近年その毒性が話題になっていることから、溶剤
転換が望まれている。本発明のDDVP乳剤はキシロー
ルを用いることなく調製することができるため安全性が
高く、さらに石油臭、溶剤臭もほとんど無い乳剤であ
る。
【0038】
【発明の効果】本発明の殺虫剤組成物は、芳香族化合物
が低含有量の石油系溶剤を溶剤として製剤化された、D
DVPを含有する殺虫剤組成物であり、本発明により臭
気の弱いDDVPを含有する殺虫剤組成物を提供するこ
とができる。本発明によれば、DDVPの溶剤選択につ
いての制約が取り除かれることになり、幅広い製剤を提
供することが可能になる。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 溶剤及び殺虫剤成分を含有してなる殺虫
    剤組成物において、さらに炭素数10〜12の一価アル
    コールを含有してなることを特徴とする殺虫剤組成物。
  2. 【請求項2】 溶剤、殺虫剤成分及び炭素数10〜12
    の一価アルコールの含有量がそれぞれ0.1〜99.4
    重量%、0.1〜50重量%及び0.1〜50重量%で
    ある請求項1記載の組成物。
  3. 【請求項3】 炭素数10〜12の一価アルコールと殺
    虫剤成分とを混合して得られる殺虫剤濃縮液と、溶剤と
    を混合して得られる請求項1又は2記載の組成物。
  4. 【請求項4】 炭素数10〜12の一価アルコールと溶
    剤とを混合して得られる混合溶剤と、殺虫剤成分とを混
    合して得られる請求項1又は2記載の組成物。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4いずれか記載の殺虫剤組成
    物100重量部に対して、乳化剤を1〜20重量部含有
    してなる乳剤型殺虫剤組成物。
  6. 【請求項6】 炭素数10〜12の一価アルコールと殺
    虫剤成分とを含有してなる殺虫剤濃縮液。
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