JP2001044543A - ガスレーザ装置用予備電離電極 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 第２電極も誘電体物質で覆って第１電極と第
２電極の間に誘電体バリア放電を行わせるようにして、
高繰り返し動作において、高出力、高安定、高効率なレ
ーザ発振を可能にする。 【解決手段】 レーザガスを電離して励起するための一
対の主放電電極３、４と共にガスレーザ装置中に配置さ
れ、主放電電極３、４が伸びる方向に伸びていて誘電体
物質８で覆われた第１電極７と、第１電極７に沿って伸
びている第２電極９とからなる予備電離電極１５におい
て、第２電極９が誘電体物質１０で覆われている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、エキシマレーザ等
のガスレーザ装置用の予備電離電極に関し、特に、効率
良く安定して均一に予備電離可能なガスレーザ装置用予
備電離電極に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】エキシマレーザ装置等のガスレーザ装置
においては、レーザガスを電離して励起するための主放
電電極とは別に、主放電による電離に先立ってレーザガ
スを弱電離させる紫外線を照射するためのコロナ予備電
離電極を有している（特表平８−５０２１４５号、特開
平１０−２４２５５３号等）。

【０００３】このようなコロナ予備電離電極として、中
空状の誘電体物質の内部軸方向に一方の電極を配置し、
その誘電体物質の外面に平行に他方のワイヤ状の電極を
当接配置してコロナ放電をさせ、主放電電極間の放電空
間を均一に予備電離する構造のものが知られている
（Ｊ．Ａｐｐｌ．Ｐｈｙｓ．５６（１１）３１６３〜３
１６８（１９８４．１２）、特公平７−１６０４８
号）。

【０００４】図６はエキシマレーザ装置のレーザ発振方
向に垂直な断面図であり、レーザキャビティ１内にレー
ザガスが満たされており、そのレーザガスを励起するた
めの主放電電極３と４がレーザ発振方向に垂直な方向に
対向配置されている。この対向する主放電電極３、４間
にガス流２を形成するように、レーザガスが不図示のフ
ァンにより循環されている。一方の主放電電極４に沿っ
て平行にレーザガスの流れ２の上流と下流にコロナ予備
電離電極５が配置されており、主放電電極３、４間に主
放電を起こすパルス電圧が加わる直前にコロナ放電動作
をして、紫外線６を主放電電極３、４間のレーザガスに
照射して弱電離させ、主放電電極３、４による励起を促
進させる。特公平７−１６０４８号等のコロナ予備電離
電極５は、第１の電極７をアルミナセラミックス等から
なる誘電体物質のチューブ８内に通し、第２の電極９を
ワイヤ状の導電体としてそのチューブ８外面に平行に接
触させている構造のものである。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】エキシマレーザ装置等
においては、近年、高繰り返し発振動作が要求されてい
る（従来の１ｋＨｚから２〜３ｋＨｚが要求されてい
る。）。高繰り返し動作のためには、コロナ予備電離強
度を大きくすると共に、高繰り返し動作でコロナ発光強
度を低下させずにコロナ発光強度を均一にし、また、高
速ガス流中でもコロナ予備電離電極構成が変化しないよ
うにする必要がある（繰り返し周波数に比例してレーザ
ガスの流速を上げなければならない。）。

【０００６】しかしながら、上記の誘電体物質で覆われ
た第１電極に沿って導電体からなる第２電極を配置する
方式では、放電に伴って第２電極からダスト、不純物が
発生して、レーザガス、レーザキャビティ（チャンバ
ー）、窓の劣化を引き起し、また、第２電極のスパッタ
リングによる磨耗を引き起し、装置の寿命を短くする。
そして、図６に矢印で示したように、高速ガス流によっ
て第２電極９がチューブ８の外面に沿う方向及びそれか
ら離接する方向に振動し、電界強度が変化して、予備電
離の不均一が生じる。

【０００７】しかも、コロナ放電の繰り返し数が高周波
数になると、このような電極構成では、コロナ放電が電
極間で不均一になる結果、レーザ出力が周波数の増加に
比例しないで効率が低下する問題がある（図３（ｂ）、
図４）。

【０００８】本発明は従来技術のこのような問題点に鑑
みてなされたものであり、その目的は、第２電極も誘電
体物質で覆って第１電極と第２電極の間に誘電体バリア
放電を行わせるようにして、高繰り返し動作において、
高出力、高安定、高効率なレーザ発振を可能にするガス
レーザ装置用予備電離電極を提供することである。

【０００９】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成する本発
明のガスレーザ装置用予備電離電極は、レーザガスを電
離して励起するための一対の主放電電極と共にガスレー
ザ装置中に配置され、主放電電極が伸びる方向に伸びて
いて誘電体物質で覆われた第１電極と、第１電極に沿っ
て伸びている第２電極とからなる予備電離電極におい
て、前記第２電極が誘電体物質で覆われていることを特
徴とするものである。

【００１０】この場合に、第１電極の一方の端部と第２
電極の反対側の端部とが共に誘電体物質で閉じられてい
ることが望ましい。

【００１１】本発明においては、第１電極、第２電極が
共に誘電体物質で覆われているので、放電空間に両電極
から直接電子が供給されず、高繰り返し周波数領域にお
いてもホットスポットからの熱電子放出等による放電集
中が起き難いので、放電分布の空間的均一性が高い。そ
のため、放電動作の繰り返し周波数が高い領域において
も放電の不均一性が起きず、予備電離の均一性が高く効
率が低下しない。また、第２電極が誘電体物質で覆われ
ているので振動し難くなり、高電界を保ったまま安定に
なり、放電の不安定さがなくなる。したがって、高繰り
返し発振動作においても、高出力、高安定、高効率なレ
ーザ発振が可能になる。また、放電によるダスト、不純
物の発生がなく、電極、レーザガス、レーザキャビティ
（チャンバー）、窓の劣化が起き難く、装置の寿命が長
くなる。

【００１２】

【発明の実施の形態】以下、本発明のガスレーザ装置用
予備電離電極を実施例に基づいて説明する：図１（ａ）
は、本発明による１実施例の予備電離電極を用いたエキ
シマレーザ装置の構成を示すためのレーザ発振方向に垂
直な断面図である。

【００１３】図１（ａ）に示すレーザキャビティ１内に
レーザガス（ＡｒＦエキシマレーザの場合は、Ａｒガス
とＦ₂ ガスとＮｅガスの混合ガス）が満たされており、
そのレーザガスを励起するための主放電電極３と４がレ
ーザ発振方向に垂直な方向に対向配置されている。この
対向する主放電電極３、４間にレーザガスのガス流２を
形成するように不図示のファンによりレーザガスが循環
されている。一方の主放電電極４に沿って平行にレーザ
ガス流２の上流と下流に本発明による予備電離電極１５
が配置されており、主放電電極３、４間に主放電を起こ
すパルス電圧が加わる直前に高電圧パルスを印加して予
備電離電極１５の放電動作を起こさせて紫外線６を発生
させ、主放電電極３、４間のレーザガスにその紫外線６
を照射して弱電離させ、主放電電極３、４による励起を
促進させる。

【００１４】この実施例において、本発明による予備電
離電極１５は、第１電極７がアルミナセラミックス等の
誘電体物質製のチューブ８内に円柱状電極を挿入して構
成され、第２電極９が直径０．５ｍｍ以下の導電性ワイ
ヤを同じアルミナセラミックス等の誘電体物質製のチュ
ーブ１０内に挿入して構成されている。なお、第１電極
７は円筒状電極であってもよい。

【００１５】誘電体物質８、１０で覆われた第１電極７
と第２電極９の間は、図１（ｂ）に示すように、誘電体
物質８、１０表面で相互に当接していてもよく、図１
（ｃ）に示すように、相互に離間していてもよい。図１
（ｂ）、（ｃ）において、放電領域は符号１１で示して
ある。そして、この放電領域１１が主放電電極３と４の
間のレーザ励起空間を見込むことができる位置になるよ
うに、両電極７、９の配置が決められている。

【００１６】ここで、このような予備電離電極１５によ
る放電について説明する。図２は、本発明の予備電離電
極１５による放電の原理と従来のコロナ予備電離電極５
（図６）による放電の原理とを比較して示すモデル図で
あり、第１電極１７と第２電極１９が対向して配置さ
れ、それら電極間に誘電体物質層１８、２０が離間して
配置されていたときに、第１電極１７と第２電極１９の
間に高電圧を印加すると、第１電極１７と誘電体物質層
１８の間に放電Ｃが、誘電体物質層１８と誘電体物質層
２０の間に放電Ｂが、誘電体物質層２０と第２電極１９
の間に放電Ａが、それぞれ発生する。放電Ａ、Ｃは、電
極１９、１７から直接電子が空間に注入されて生じるコ
ロナ放電であり、従来のコロナ予備電離電極５が予備電
離のための紫外線６を発生させるために利用している放
電である。これに対して、放電Ｂは、電極１７、１９か
ら誘電体物質層１８、２０間の空間には直接電子が注入
されずに起こる放電であり、誘電体バリア放電と呼ばれ
る放電であり、本発明の予備電離電極１５が予備電離の
ための紫外線６を発生させるために利用している放電で
ある。

【００１７】このような放電原理の違いにより放電の均
一性に差が出る。図３はその差を説明するための図であ
り、図３（ａ）は図１の本発明の予備電離電極１５にお
けるる放電の様子を模式的に示す図、図３（ｂ）は図６
の従来のコロナ予備電離電極５における放電の様子を模
式的に示す図であり、従来の場合は、放電空間に第２電
極９から直接電子が供給され、その結果、放電生成物が
生じ、熱が発生する。すなわち、図２における放電Ａ，
Ｃに相当する。その際、電子の供給に不均一があると、
放電生成物及び発生する熱にも不均一が生じ、そのため
特に繰り返し周波数の高い領域において放電は益々不均
一になり、放電分布は符号１２’で示すように空間的に
大きな不均一性を示すことになる。これに対して、本発
明の予備電離電極１５においては、放電空間に両電極
７、９から直接電子が供給されない。すなわち、図２に
おける放電Ｂに相当するものであって、高繰り返し周波
数領域においもホットスポットからの熱電子放出等によ
る放電集中が起き難いので、放電分布は符号１２で示す
ように空間的に均一性が高い。

【００１８】したがって、図４に図１の本発明の予備電
離電極１５を用いたエキシマレーザ装置（実線）と図６
の従来のコロナ予備電離電極５を用いたエキシマレーザ
装置（破線）のレーザ出力特性を比較して示すように、
図１に示したような本発明の予備電離電極１５において
は、予備電離のための放電動作の繰り返し周波数が高い
領域においも、放電の不均一性が起きず、予備電離の均
一性が高く効率が低下しないため、高繰り返し発振動作
においても、高出力、高安定、高効率なレーザ発振が可
能になる。

【００１９】しかも、第２電極９はアルミナセラミック
ス等の誘電体物質製のチューブ１０内にあるので、第２
電極９に高速のレーザガス流２が当たっても振動し難く
なり、高電界を保ったまま安定になり、放電の不安定さ
がなくなる。

【００２０】したがって、高繰り返し発振動作にして
も、本発明の予備電離電極１５を用いたエキシマレーザ
装置は、従来のコロナ予備電離電極５を用いたものに比
較して、高出力、高安定、高効率なレーザ発振が可能に
なる。

【００２１】ところで、図１の配置において、第１電極
７と第２電極９の長手方向の構成としては、図５（ａ）
に示すように、第１電極７はその一端（図の右端）にお
い誘電体物質８で閉じられ、第２電極９はその反対側の
端（図の左端）におい誘電体物質１０で閉じられるよう
に、誘電体物質８、１０を電極７、１０の周囲に配置す
ると、露出した導電体間の距離が長く取れるので、予備
電離電極１５の構造をコンパクトにすることができる。
なお、図５（ｂ）に示すように、両電極７、９あるいは
その一方の電極の両端を誘電体物質８、１０で閉じない
ようにしても、両電極７、９間に絶縁距離を保つ限り問
題は起きない。

【００２２】以上、本発明のガスレーザ装置用予備電離
電極を実施例に基づいて説明してきたが、本発明はこれ
ら実施例に限定されず種々の変形が可能である。例え
ば、電極９はワイヤの代わりに金属板を用いて、先端部
に誘電体を被せてもよい。

【００２３】

【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
のガスレーザ装置用予備電離電極によると、第１電極、
第２電極が共に誘電体物質で覆われているので、放電空
間に両電極から直接電子が供給されず、高繰り返し周波
数領域においもホットスポットからの熱電子放出等によ
る放電集中が起き難いので、放電分布の空間的均一性が
高い。そのため、放電動作の繰り返し周波数が高い領域
においも放電の不均一性が起きず、予備電離の均一性が
高く効率が低下しない。また、第２電極が誘電体物質で
覆われているので振動し難くなり、高電界を保ったまま
安定になり、放電の不安定さがなくなる。したがって、
高繰り返し発振動作においても、高出力、高安定、高効
率なレーザ発振が可能になる。また、放電によるダス
ト、不純物の発生がなく、電極、レーザガス、レーザキ
ャビティ（チャンバー）、窓の劣化が起き難く、装置の
寿命が長くなる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明による１実施例の予備電離電極を用いた
エキシマレーザ装置放電部のレーザ発振方向に垂直な断
面図と両電極間の可能な配置を示す図である。

【図２】本発明の予備電離電極による放電の原理と従来
のコロナ予備電離電極による放電の原理とを比較して示
すモデル図である。

【図３】本発明の予備電離電極による放電の原理と従来
のコロナ予備電離電極による放電の原理との違いにより
放電の均一性の差を説明するための図である。

【図４】図１の本発明の予備電離電極を用いたエキシマ
レーザ装置と図６の従来のコロナ予備電離電極を用いた
エキシマレーザ装置のレーザ出力特性を比較して示す図
である。

【図５】本発明の予備電離電極の第１電極と第２電極の
長手方向の構成を示す図である。

【図６】従来のコロナ予備電離電極の１例を用いたエキ
シマレーザ装置放電部の断面図である。

【符号の説明】

１…レーザキャビティ ２…レーザガス流 ３、４…主放電電極 ６…紫外線 ７…第１電極 ８…誘電体チューブ ９…第２電極 １０…誘電体チューブ １１…放電領域 １２、１２’…放電分布 １５…予備電離電極（本発明） １７…第１電極 １８、２０…誘電体物質層 １９…第２電極 Ａ、Ｃ…コロナ放電 Ｂ…誘電体バリア放電

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 五十嵐 龍志 静岡県御殿場市駒門１−90 株式会社ウシ オ総合技術研究所 (72)発明者 堀田 和明 静岡県御殿場市駒門１−90 株式会社ウシ オ総合技術研究所 Ｆターム(参考） 5F071 AA06 CC05 CC09 DD06 GG04 JJ02 JJ04 JJ05 JJ07

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 レーザガスを電離して励起するための一
   対の主放電電極と共にガスレーザ装置中に配置され、主
   放電電極が伸びる方向に伸びていて誘電体物質で覆われ
   た第１電極と、第１電極に沿って伸びている第２電極と
   からなる予備電離電極において、 前記第２電極が誘電体物質で覆われていることを特徴と
   するガスレーザ装置用予備電離電極。
2. 【請求項２】 前記第１電極の一方の端部と前記第２電
   極の反対側の端部とが共に誘電体物質で閉じられている
   ことを特徴とする請求項１記載のガスレーザ装置用予備
   電離電極。