JP3819181B2 - レーザ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は封入された高気圧のレーザ媒質ガスに放電を行って励起し、レーザ光を発振させるレーザ装置に係り、殊に放電励起型ガスレーザ装置の予備電離に関する。
【0002】
【従来技術】
エキシマレーザ等のレーザ装置では、レーザ媒質ガスの予備電離を十分に行った後、一対の主放電電極間にグロー放電を行ってレーザ媒質ガスを励起させ、レーザ発振を行っている。予備電離方式としては一般的に、アーク(スパーク)放電によるアーク方式、X線によるX線方式、コロナ放電によるコロナ方式等が知られている。
【0003】
アーク方式は電離密度が高く十分な予備電離ができる反面、予備電離電極が高温となってスパッタリングが生じ、電極の一部が金属粉としてレーザ媒質ガス中に溶融飛散するため、ガス寿命が短くなり、電離能力の低下や主放電の不均一化によるレーザ出力の低下などが生じる可能性がある。X線方式は透過力が高く、広い断面積に安定した放電が可能であるが、放射線制御が必要となるため、装置が大型化する。コロナ方式(沿面コロナ)は安定した放電が可能であるが、電離密度が低く、十分な予備電離を行い難い。また、コロナ放電で十分な電離密度を得るために図4に示すようにアース側電極22を誘電体セラミック23から所定距離だけ離し、強力な線状コロナ(ほっすコロナ)を発生させることで、電離密度を高めたものが案出されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図4に示したようなコロナ予備電離方式では、負荷側電極21及び誘電体セラミック23とアース側電極22がともに主電極20に平行に配置されているため、誘電体セラミック23とアース側電極22の間のどの場所でも発生し得るため、コロナ放電が生じる場所が特定されず、安定した電離が行われ難い。このように予備電離が安定して行われない状態で主放電(グロー放電)が行われると、グロー放電の他にアーク放電が主放電電極間で生じ、スパッタリングにより主放電電極の一部が溶融飛散し、レーザ媒質ガス中に不純物が混入することでガス寿命を縮めたり、レーザ出力が低下し不安定になる。
【0005】
本発明は上記従来技術を鑑み、コロナ放電による十分な予備電離を安定して行うことができるレーザ装置を提供することを技術課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0007】
(1) レーザ媒質ガスを予備電離し,レーザ光軸に直交する方向に対向して設けられた一対の主放電電極間にグロー放電を発生させることでレーザ光を得るレーザ装置において、レーザ光軸方向に沿って所定間隔で配置された複数のコロナ予備電離用の針状電極と、前記針状電極の先端部と対向する位置でレーザ光軸に平行に配置される負荷電極と、前記負荷電極を被覆する誘電体と、を備えることを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1はエキシマレーザ装置の概略構成図である。
【0011】
レーザ媒質ガスのレーザ管1への供給・排気は、ガス供給排気系2により行われる。レーザ媒質ガスは、例えば、Ar(アルゴン)の希ガスとF2(フッ素)のハロゲンガスの混合ガスを使用すると、ArFのエキシマレーザ(発振波長193nm)を得ることができる。
【0012】
レーザ管1の前後には反射ミラー7、出力ミラー8が配置されて共振光学系が構成されている。レーザ光軸上に配置され、共振光学系を構成する全反射ミラー7は波長193nmの光を全反射し、出力ミラー8は波長193nmの光を一部透過する特性をそれぞれ持つ。
【0013】
励起回路3からの信号によって、レーザ管1内に配置される放電電極間に放電が生じると、レーザ管1内のレーザ媒質ガスが励起される。放電励起により放出された光は共振光学系間を往復して増幅され、レーザ光として出力ミラー8からレーザ管1を出射した後、導光光学系4を介して被照射物を照射する。
【0014】
制御部5は入力部6からのレーザ照射条件等の入力信号に基づいて、ガス供給排気系2、励起回路3、導光光学系4を駆動制御し、レーザ管1のレーザ発振の動作、導光光学系4による被照射物へのレーザ照射動作を行なう。
【0015】
図2はレーザ管1内の電極の配置構成を説明する図であり、図3は図2のA−A断面図である。
【0016】
導電体である保持板10には対を成すレール状のエルンスト型などの主放電電極11が設けられており、レーザ管1によって発生されるレーザ光軸方向に主放電電極11の長手方向が沿うように配置されている。エルンスト型主放電電極11の横断面は(図3参照)、主放電電極間で一様なグロー放電を行うに適した蒲鉾状の形状をしている。主放電電極11の両側には円筒型のピーキングコンデンサ12が保持板10を連結するように固定配置されている。
【0017】
コロナ予備電離用のHV(高電圧)ロッド13は、電圧を負荷する線状のHV(高電圧)電極14と、これを内包するように被覆する円筒形状の誘電体(絶縁部材)15より構成されており、レーザ光軸方向(主放電電極11の長手方向)に平行に配置される。針形状のアース(接地)電極16は、HVロッド13に対して略垂直に所定間隔(例えば、10〜20mm程度)で配置される。このように、アース電極16を所定間隔で配置することで、予備電離放電をアース電極16の先端部を起点として発生させることができ、特定された場所で放電を行うことができる。
【0018】
また、アース電極16はHVロッド13の誘電体15とは接しておらず、所定距離離れて(例えば、2mm程度)配置されている。これにより電極が接触している場合に発生する沿面コロナよりも電離能力の高い線状コロナ(ほっすコロナ)を発生させることができる。
【0019】
誘電体15にはガラス、セラミックス、サファイア等が使用され、好ましくは比誘電率が1000以上の高誘電率を有する誘電体セラミックス、例えば、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)等がよい。
【0020】
以上のような構成をそなえるレーザ装置に関して、以下にそのレーザ発振動作を説明する。
【0021】
レーザ管1内にガス供給排気系2より高気圧のレーザ媒質ガスが供給され、封入される。レーザ管1内では図示なきファンの回転により常に新しいガスが主放電電極11間の電離領域に行き渡るように循環されている。
【0022】
HVロッド13とアース電極16の間に電荷が付加されると、HVロッド13、アース電極16間でコロナ放電が生じ、主放電電極間が放電破壊電圧に達する前にレーザ媒質ガスの十分な予備電離が行なわれる。HVロッド13に高誘電率の誘電体15が被覆されている時には、コロナ放電による電離イオン密度もより高いものとなり、主放電電極11間のレーザ媒質ガスの予備電離を十分に行なうことができる。
【0023】
また、コロナ放電は一様に配置されたアース電極16の先端部を起点として生じるため、放電する場所が特定され、等価的に電離領域を一様にコロナ放電を生じさせることができるため、安定した予備電離放電を行うことができ、延いては、レーザ出力を安定し、レーザ媒質ガスの寿命を長くすることができる。
【0024】
ピーキングコンデンサ12が充電されて主放電電極間が放電破壊電圧に達すると、予備電離により電離した電子によってグロー放電である主放電が短時間に発生するようになる。このような強力な放電エネルギにより、レーザ媒質ガスが効率良く励起され、放出された光が共振器光学系間を往復して増幅し、エキシマレーザがレーザ管1から発振される。
【0025】
本形態ではHVロッド13をレーザ光軸に対して略平行に配置したが、HV電極を針形状としてアース電極16の先端部と対向させ、HV電極の先端部に誘電体を被覆することによっても同様の効果を得ることができる。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、コロナ放電による十分な予備電離を安定して行うことができ、延いては、レーザ出力を安定させ、レーザガスの劣化を抑制し、ガス寿命を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態のレーザ装置の概略構成図である。
【図2】レーザ管内の電極配置構成の説明図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】従来のコロナ予備電離方式の説明図である。
【符号の説明】
11 主放電電極
13 HVロッド
14 HV電極
15 誘電体
16 アース電極

Claims (1)

  1. レーザ媒質ガスを予備電離し,レーザ光軸に直交する方向に対向して設けられた一対の主放電電極間にグロー放電を発生させることでレーザ光を得るレーザ装置において、レーザ光軸方向に沿って所定間隔で配置された複数のコロナ予備電離用の針状電極と、前記針状電極の先端部と対向する位置でレーザ光軸に平行に配置される負荷電極と、前記負荷電極を被覆する誘電体と、を備えることを特徴とするレーザ装置。
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