JP2001041881A - 偏光を用いたspr装置及びspr測定方法 - Google Patents
偏光を用いたspr装置及びspr測定方法Info
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Abstract
頼性で、かつ安定したSPRの測定が可能な新規なSP
R装置及びその測定方法を提供するものである。また、
本発明はリアルタイムの化学反応、特に抗原−抗体反応
などに代表される反応、錯体形成反応などの非共有結合
形成反応、受容体との反応などを高感度、高精度、高信
頼性で測定できる新規な装置及び測定方法を提供するも
のである。 【解決手段】 本発明は、表面プラズモン共鳴(SP
R)装置において、金属薄膜で反射された反射光の偏光
を測定し得る装置を有していることを特徴とする表面プ
ラズモン共鳴(SPR)装置及びそれを用いたSPRの
測定方法に関する。より詳細には、入射光が通常光の場
合には、これを偏光にし、好ましくはそれを偏光のp成
分とs成分とにして、これを測定することを特徴とする
ものである。また、入射光が偏光の場合には、反射光の
偏光のp成分とs成分を測定することを特徴とするもの
である。
Description
モン共鳴(SPR)の装置及び測定方法に関する。より
詳細には、本発明は、表面プラズモン共鳴(SPR)装
置において、共鳴シグナルを金属薄膜で反射された反射
光の偏光、好ましくは偏光のp成分とs成分との偏光成
分により測定することを特徴とする表面プラズモン共鳴
(SPR)装置及びそれを用いた測定方法に関する。
学は、主としてタンパク質間の相互作用、あるいは、タ
ンパク質と他の分子との相互作用が研究の対象とされて
きている。また、病気などの診断、測定の分野において
は、抗原、抗体反応などの蛋白質間の相互作用又は蛋白
質と他の分子との相互作用が多数利用されてきている。
これらの蛋白質の作用については、種々の化学的、生化
学的又は分子生物学的方法で検出、同定されているが、
いずれの方法も蛋白質の相互作用をリアルタイムで測定
するものではなく、相互作用、例えば反応の結果を測定
することしかできないものであった。また、これらの測
定法の多くは蛋白質などを標識化しなければ測定するこ
とができないものであった。さらに、実際のタンパク質
同士の相互作用を解析するためには、速度論的な解析が
きわめて重要になってくるが、従来の測定装置では速度
論的な解析は大変な作業となることが多かった。
rface P1asmon Resonance))
は、1971年、クレッチェマン(Kretschma
nn)により光励起による表面ブラズモン励起法が確立
され、それから11年後、SPRが初めてナイランダー
(Nylander)らによってセンサーとしてガスセ
ンシングに応用された例が報告された。1980年代後
半には、チオール、スルフィド類等の金表面に対する自
己吸着の研究が行われ、カルボン酸やアミノ基など様々
な官能基をもったアルキルチオール類で金表面を修飾し
た自己吸着性単層膜(Self−Assembled
Monolayer)の研究例が報告された。1993
年、金表面の自己吸着性単層膜(Self−Assem
bledMonolayer)上にポリマーを膜として
固定化し、ポリマー中の活性部位に抗原−抗体などの特
異的な反応を示すリガンドを固定したバイオセンサーが
開発され、定性、定量分析や反応プロセスの解明などに
用いられるようになった。また、この頃から小型化を目
的とした光ファイバー型SPRセンサーの研究例が報告
され始め、従来の光源の波長を一定にし、試料への共鳴
の起こる入射角を測定する方法から、光の入射角を一定
にし波長を変化させるセンサー装置が開発された。
る測定は、エバネッセント波を用いて間接的に試料の状
態変化を測定するデバイスである。例えば、金属薄膜の
表面で生起している化学反応を当該金属薄膜の裏面から
測定することができる測定装置である。このため、測定
に使われるレーザー光の通る部位と試料の存在する部位
が異なることから、金属薄膜センサー表面で起こる各種
の反応や相互作用をリアルタイムでかつ連続的に測定す
ることができる、測定に使用する光が試料に直接照射さ
れないので試料の着色、濁りや気泡などの影響を受けに
くい、及び、金属薄膜センサーの狭い領域での光学特性
を測定するので必要とする試料溶液の量が極めて少なく
てすむ、という極めて特殊な特性を有している。したが
って、表面プラズモン共鳴(SPR)を用いることによ
り、金属薄膜センサー上で生起する相互作用や化学反応
を、測定系による影響を受けることなく、リアルタイム
で連続的に測定することができることになる。さらに、
表面プラズモン共鳴(SPR)では標識物質を介さずに
測定できるという点で、従来から感染症の検査や診断の
分野において利用されてきたRIAやEIAなどの免疫
測定法をSPR法に置き換えるためのセンサーデバイス
として注目されている測定法である。
Resonance)センサーは、金や銀などの金属
薄膜表面に発生する表面プラズモン共鳴現象を利用し
て、金属薄膜表面付近の屈折率変化を検出するデバイス
である。表面プラズモンとは、金属−誘電体界面に生じ
る電子の疎密波の一種であり、その波数は金属薄膜表面
に接する数100nmまでの試料の厚さや光学特性(誘
電率、屈折率)によって変化する。この変化を直接測定
することは不可能なため、SPRセンサーではしーザー
光を試料の反対面から当てエバネッセント波を発生さ
せ、これが表面ブラズモンと共鳴する時のレーザーの反
射角度変化又は反射強度の変化を測定することで表面の
状態の変化を間接的に測定するのが一般的な方法となっ
ている。
置では光源に発光ダイオードを用い、波長760nmの
偏光をプリズムでくさび型の光に集光し、プリズムの底
部にオプトインターフェイスを介して装着させたセンサ
ーチップに全反射の条件下で照射している。すると金薄
膜側にエバネッセント波が生じ、金薄膜の自由電子によ
るブラズモンの共鳴に使われるため、固定したダイオー
ドアレイでこの反射光の強度を測定すると、図2に示さ
れるような「光の谷」が認められる。そして、例えば金
薄膜を形成したセンサーチップ上に抗体を固定化し、こ
の抗体が特異的に認識する抗原を含む試料を注入する
と、特異的抗原−抗体反応によりセンサーチップ表面の
質量が増加し、その結果としてセンサーチップ表面の屈
折率が増加する。この屈折率の実部又は虚部の変化に応
じて前記の「光の谷」は図2に示されるように角度変化
又は反射強度変化がA点からB点へと移動するため(図
2では角度変化を示す。)、この移動度の経時変化をセ
ンサーグラムと呼ぶグラフとして表示することにより、
センサーチップ表面での分子の相互作用をリアルタイム
にモニターすることができる。
て、SPR角度の0.10の変化が1000レゾナンス
ユニット(RU)と定義されており、1000RUはセ
ンサーチップ表面でのタンパク質の約1ng/mm2の
質量変化に相当することが確認されている。従来の測定
においては10RU程度からの変化を観察することがで
き約0.01ng/mm2の質量変化を検出することが
限界とされている。
の光学測定装置とは異なる特異的な特徴を有しているた
めに、今後SPRセンサーは、医療分野での遺伝子診断
装置や、医薬品分野での新規薬剤設計などに有効に利用
され得る新しい測定装置としての期待されているのであ
るが、より精度を上げるためには0.001度以下の反
射角を厳密測定しなければならないことや、乱反射によ
るノイズが大きく精密な測定が困難であることや、さら
に、試料の屈折率、分子の反応速度、溶媒の性状などは
温度により微妙に変化するものであるので、光学測定部
分の温度を4〜40℃の範囲で一定温度に厳密に制御す
ることが難しいという課題があり、広く普及するにはま
だ多くの問題が残されている。
で、かつ安定したSPRの測定が可能な新規なSPR装
置及びその測定方法を提供するものである。また、本発
明はリアルタイムの化学反応、特に抗原−抗体反応を高
精度、高信頼性で測定できる新規な装置及び測定方法を
提供するものである。
徴を生かしながら、SPRの直面している問題点を解決
するために鋭意研究したところ、SPRの測定を偏光を
用いるてその偏光成分を測定することにより、簡便で高
精度なSPR測定ができることを見出した。
装置において、金属薄膜で反射された反射光の偏光を測
定し得る装置を有していることを特徴とする表面プラズ
モン共鳴(SPR)装置に関し、より詳細にはSPR装
置における反射光を偏光に分ける装置が、偏光のp成分
とs成分を測定可能に分け、それらの各成分を測定する
ことからなるSPR装置に関する。また、本発明はSP
Rの測定において、反射光の偏光を測定することからな
るSPR測定方法に関し、より詳細には、SPRの測定
における反射光を偏光成分に分け、分けられた偏光のp
成分とs成分を測定し、それらのデータをデータ処理す
ることからなるSPRの測定方法に関する。
る従来のSPR装置の反射光の検出部の前に、偏光子な
どの光を偏光成分に分ける装置を設置し、この偏光装置
により取り出された偏光を検出部で検出することを特徴
とするものである。図3は、本発明の偏光を用いたSP
Rの検出結果を例示するものである。図3は金薄膜セン
サーのSPRスペクトルである。図中の、細い点線は本
発明の偏光にした後の偏光のp成分のSPRスペクトル
を示し、破線は偏光のs成分のSPRスペクトルを示
し、太い実線は両者の商、即ち(p成分の強度)/(s
成分の強度)の値を示している。
反射光を偏光にして、それを偏光のp成分及びs成分に
分けて測定することにより、偏光のp成分がSPRの吸
収スペクトルを示すのに対して、偏光のs成分はSPR
の影響あまり受けないものであることが判明した。即
ち、SPRの結果は偏光のp成分に主として表現される
ものであり(図3の細い点線)、偏光のs成分はSPR
の結果を反映しないものであり、寧ろSPRの測定時の
バックグラウンドを示すものであることが分かった(図
3の破線)。さらに、得られた偏光のp成分及びs成分
の強度(intensity)を加工、処理して両者の
相対値で示すことにより、従来のSPRスペクトルに比
べて極めて鮮明なSPRスペクトルが得られることがわ
かった。例えば、図3に示すように、s成分の強度をバ
ックグラウンドと仮定して両者の商((p成分の強度)
/(s成分の強度))を当該相対値としてすると、図3
に示されるように極めて鮮明なスペクトルとなることが
わかる(図3の太い実線)。
を金属の裏面から測定するものであり、かつ金属表面で
起きている作用も化学反応や物質と物質の微弱な相互作
用であり、従来SPRは測定法が簡易なため、感度が低
くかつノイズも多く、さらに光源の強度分布などのノイ
ズに強く依存していおり、ノイズを除去し感度を上げる
ことは非常に困難とされていたが、本発明の方法は偏光
を用いるという簡単な操作により、ノイズの多くの部分
を含むバックグラウンド分を偏光のs成分の測定により
簡単に計測することができ、同時に偏光のp成分により
SPRスペクトルを確実に補足することができるので、
ノイズの除去と感度の向上とを同時に達成することがで
きる。
PRの測定方法についての実施の形態を具体的に説明す
るが、本発明はこれらの具体的な装置及び方法に限定さ
れるものではなく、本発明の技術的思想に基づくSPR
装置及びその方法並びにそれに付帯する技術の一切は本
発明の技術的範囲に属するものである。
4中の1は金属薄膜であり、2は金属薄膜1の表面に取
り付けられた試料セルである。試料セル2に検体を流し
金属薄膜1の表面で化学反応や物質間の相互作用などを
生起させる。3はプリズムであり、金属薄膜1はプリズ
ム3に密着している。4は光源である。光源4から発射
された光は光学系レンズ5及び6により集光されて、プ
リズム3に密着している金属薄膜2の裏面で反射され
る。反射光は光学レンズ7で平行光とさる。偏光板8に
より偏光を調整し、平行光は偏光ビームスプリッター9
により偏光のp成分とs成分に分離される。各々の偏光
成分はそれぞれCCDカメラ10及び11で測定され、
得られた画像情報は情報処理装置12に転送され、デー
タ処理が行われる。測定されたデータやデータ処理装置
12などで処理されたデータを、測定した値を記録、処
理することができる装置に記録することもできる。ま
た、必要に応じてそれらのデータを印刷したり表示する
こともできる。本発明は、SPR装置において偏光ビー
ムスプリッター9を設けて偏光のp成分とs成分を分離
して測定することを特徴とするものである。
にする装置としては、偏光板や偏光子などの公知の装置
を使用することができる。また、偏光を検出、定量する
装置もCCDカメラなどや他の公知のものを使用するこ
とができる。必要に応じてこれらの装置をSPR装置に
設計変更することもできる。これらの装置で得られた偏
光のp成分の値とs成分の値は、その片方のみを測定デ
ータとすることもできるが、両成分の値を同時に測定す
るのが好ましい。また、両成分のSPRスペクトルデー
タをそのまま使用することもできるが、これらの成分の
値をデータ処理装置12などの装置によりデータ処理す
るのが好ましい。これらの成分の値をデータ処理する方
法としては、前記した商をとる方法に限定されるもので
はなく、両者の差(例えば、(s成分の強度)−(p成
分の強度))をとってもよいし、他の処理方法を採用す
ることができる。
相差が生じる場合もあり、両者の位相差を測定すること
もできる。SPRは、化学反応や物質間の相互作用をリ
アルタイムで連続的に測定できるものでるから、前記の
偏光成分の位相差を利用して金属薄膜表面での化学反応
や物質間の相互作用が起こったか否かを極めて高感度で
検出、定量することが可能となる。例えば、図2に示さ
れるように、金属薄膜の表面で化学反応や物質間の相互
作用が生起すると、金属表面の状態が変化し、その結果
SPRスペクトルの吸収を示す角度に変化が生じる(図
2のAからBへの変化)。従来はこれを吸収スペクトル
として相対的な値により測定していたのであるが、本発
明の位相差を用いる偏光成分の測定方法によれば、まず
図2のAの状態(反応や相互作用の生起する前の状態)
において偏光のp成分とs成分の位相差をキャンセルす
るようにしておき、即ちいずれの偏光も観測することが
できない状態にしておき、次いで金属薄膜表面において
化学反応や物質間の相互作用が生起するとこれにより新
たな偏光の位相差が生じるために偏光のp成分とs成分
の位相差を観測することができるようになる。
トルのような相対的なものではなく、新たな偏光による
観測可能な光量が有るか無いかという絶対的なものであ
るから、極めて高感度で測定を行うことが可能となる。
したがって、本発明は、SPR装置において反射光にお
ける偏光のp成分とs成分との位相差を打ち消すように
調整し得る装置をさらに有するものを包含するものであ
る。
に示す。図5は光源24としてレーザーを用いた例を示
している。また、入射光として偏光子26をとおした偏
光を用いた例を示している。偏光された入射光はプリズ
ム23を通り、金属表面に試料セル22を有する金属薄
膜21の裏面で反射され、反射光としてプリズム23か
ら出る。プリズム23から出た反射光は、偏光のp成分
とs成分との位相差を打ち消すように調整し得る装置の
1種である補償板33に入り、例えば、試料セル22に
おける反応等の前の状態では補償板33からの光量が無
いように、即ち光量がゼロになるように調整される。補
償板33の後には検光子29が設けられ、その後に検
出、定量できる検出器31がある。試料セル22で化学
反応等が生起してSPRスペクトルが変動すると、偏光
の位相差が変動し、予め調整された補償板33から試料
セル22における化学反応等に応じた光量が検出器31
によって検出されることになる。
であればよく、通常の偏光子を使用することができる
が、適宜SPR装置に適した方式等に設計変更すること
もできる。また、前記偏光のp成分とs成分との位相差
を打ち消すように調整し得る装置33としては、バビネ
−ソレイユの補償器やブレイス−ケーラーの補償器など
の補償器(コンペンセーター)などを使用することがで
きるがこれらに限定されるものではない。検出器31に
よって得られたデータはデータ処理装置32により適宜
データ処理される。
ーグラムを例示する。横軸は時間であり、縦軸は光子数
を示す。金属薄膜の表面での化学反応や物質間の相互作
用が生じる前の定常状態になったときに、偏光のp成分
とs成分との位相差を打ち消すように調整し得る装置3
3により光量がゼロとなるように調整する。次いで、金
属薄膜の表面に検体などを流して金属薄膜の表面で化学
反応や物質間の相互作用が生じるようにする。図6に示
すt時間後に金属薄膜の表面で目的の化学反応や物質間
の相互作用が生じると、SPR応答が変化し、光量をゼ
ロに調整したところから光量が観察できるようになる
(図6のt時間後の部分参照)。この場合の光量は、光
子単位で測定することも可能である。このように本発明
のこの装置によれば、光子単位での測定も可能であり、
極めて高感度でSPR応答を測定することができるよう
になる。本発明においては、この方法をゼロメソッドS
PRと称する。
より、金属薄膜上における化学反応や物質間の相互作用
等により新たに生じたSPRの微弱な変動を偏光の位相
差の有無により検出、定量することができるようにな
り、金属薄膜表面で起きた化学反応や物質間の相互作用
等を極めて高感度で検出、定量することが可能となる。
例えば、金属薄膜表面にある抗体を固定化しておき、そ
の状態でのSPR装置の反射光の偏光の位相差を打ち消
すように調整しておき、即ち光量を全く観測することが
できない状態にしておき、次いで、抗体が固定化されて
いる金属薄膜表面にその抗原を含む検体を流す。当該検
体中にその抗体に対する抗原が含有されていると、金属
薄膜表面において抗原−抗体反応が生起し、SPRの吸
収反射角が変動することになるが(図2参照)、本発明
のSPR装置によれば前記の光量が全く観測されない状
態から新たな位相差により光量が観測される状態に変化
することになる。この新たな位相差に基づく光量を測定
することにより、検体中に抗原が含有されているか否か
を検出し、定量することが可能となる。
は、従来のSPR装置の入射光をそのまま使用すること
もできるが、入射光を偏光とすることもできる。このよ
うな装置としては、例えば前記した図5に示すような装
置を挙げることができる。また、本発明のSPR装置の
光源としては、従来から使用されているLEDに限ら
ず、レーザー光などの種々の光源を使用することができ
る。光源の波長も種々の波長のもを使用することができ
る。光源の波長としては、可視領域、赤外領域、紫外領
域などの広い範囲の波長を選択することができる。さら
に本発明者らの知見によれば、一般に、光源の波長が長
くなるほど金属薄膜の表面から遠くにある物の反応や作
用を観測することができるとされているので、金属薄膜
の表面から近い位置の反応や作用を観測したい場合には
波長の短い光源を、また金属薄膜の表面から遠くの位置
にある反応や作用を観測したい場合には波長の長い光源
を使用するのが好ましい。
使用することにより、金属薄膜の表面から異なる位置に
ある物質の反応や作用等を同時に観測することができ
る。2種以上の光源の波長の相違の程度は、反射光にお
いてこれらの波長を各々分離することができる程度に相
違するものであればよく、また、観測したい金属表面か
らの距離に応じて適宜設定することができる。波長の異
なる2種の光源を用いた本発明のSPR装置の例を図7
に示す。光源51と光源52は、波長の異なるLED光
源であり、光源51及び光源52から発射された光は、
ダイクロイックミラー45により平行入射光とされ、次
いで光学系レンズ46により集光されてプリズム43に
入射される。入射された光は、表面に試料セル42を有
する金属薄膜41の裏面で反射され、プリズム43を出
て光学系レンズ47で元の平行光とされた後、ダイクロ
イックミラー48によりそれぞれの波長に分離される。
分離された反射光をそのまま従来の方法、例えばCCD
カメラなどで観測することもできる。
た各波長の反射光を観測すれば、金属薄膜の表面に取り
付けられた試料セル42で生起している化学反応や相互
作用などの金属薄膜41の表面から異なる位置にある物
質の反応や作用等を同時に観測することができることに
なる。したがって、本発明は波長の異なる2種以上の光
源を用いるSPR装置及びそれを用いたSPR測定方法
にも関する。また、図7に示すようにダイクロイックミ
ラー48により分離された各波長の反射光を、本発明の
方法に従って偏光ビームスプリッター49を用いて偏光
成分に分け、偏光のp成分とs成分とをそれぞれ観測す
ることもできる。これにより、さらに高感度で試料セル
中の金属薄膜の表面からの距離の異なる位置にある物質
の挙動を把握することができる。さらに、2つの波長で
測定した各波長のSPR成分の差を計測することによ
り、金属薄膜からの特定の距離の部分の挙動を高精度で
測定することができるようになる。このとき、波長を接
近させると、金属薄膜の膜厚方向の限られた部分の挙動
を高精度で測定することができるようになり、このデー
タを処理してゆくことにより膜厚方向の解像度を上げる
ことができることになる。
てきたが、本発明のSPRは、第一に測定系の光を偏光
成分に分離して測定することを特徴とするものであり、
第二に分離された各々の偏光成分からのデータをデータ
処理することを特徴とするものであり、第三に入射光と
して偏光を用いることを特徴とするものであり、第四に
偏光成分の位相差を利用して観測される光量の有無によ
る高感度の測定ができることを特徴とするものであり、
第五に入射光として波長の異なる2種以上の光源を使用
することを特徴とするものであり、第六にこれらの本発
明の特徴を組み合わせて使用することができることを特
徴とするものである。
おける測定対象としては、金属薄膜上で生起し得る化学
反応や物質間の相互作用などであれば特に制限はなく、
本発明においてはこれらをまとめて「化学反応や物質間
の相互作用」というが、これは通常の化学反応や相互作
用に限定されるものではなく、分子や分子の集合体の挙
動、膜や物質の構造変化、結晶構造の変化などのSPR
で測定可能なあらゆる変化を包含をするものである。例
えば、金属薄膜上での化学反応や物質間の相互作用が抗
原−抗体反応や受容体との反応などの基質特異的な反
応、錯体形成反応などの非共有結合相互作用などが挙げ
られる。また、DNA断片などのプローブを固定し、ハ
イブリダイゼーションの有無を測定対象とすることも考
えられる。現在多くの診断や検査において抗原−抗体反
応が利用されているが、その多くは放射性同位元素を用
いたRIA法や、酵素を用いたEIA法や、蛍光標識体
を用いたFIA法などであるが、本発明のSPRの装置
や測定方法を用いることにより、これらの抗原−抗体反
応を標識化を行うことなく、より簡便で、かつ迅速な測
定が可能となり、本発明は診断や検査における新たな手
法を提供するものである。標識化の必要のない点はプロ
ーブを用いたハイブリダイゼーションにおいても同様で
ある。
する場合には、例えば、検査の対象となる抗原又は抗体
を金属薄膜上に固定し、本発明の方法により。例えば、
金属薄膜の表面にメルカプト化合物などを用いて抗原を
固定化し、これに検体を導入すると、検体中に固定化さ
れた抗原と反応する抗体が存在すると抗原−抗体反応が
起こり、SPRスペクトルが反応前のものから反応後の
状態に変動し、これを偏光成分に分離したシグナルとし
て観測することにより、検体中の抗体の存在を知ること
ができる。
ルに2以上の方向から検体と検出試薬とを導入し、検出
試薬又は検体が導入された時のSPRスペクトルの変動
を前記と同様に検出して、検体の検査を行うこともでき
る。本発明の方法によれば、目的の検査対象に適した抗
原若しくは抗体が金属薄膜の表面に固定化された金属薄
膜又は抗原若しくは抗体などの検出試薬を導入できる試
料セルを用いることにより、標識化などの煩雑な操作を
必要としない簡便で迅速かつ高感度の抗原−抗体反応を
測定することができる。
する場合には、例えば、前記した方法などに準じて金属
薄膜の表面に受容体を固定しておき、これに受容体に結
合し得る又はその可能性のある物質を含有する検体を試
料セルに導入する。検体中の物質が受容体と結合すると
SPR応答を観察することができる。本発明のSPR装
置は極めて高感度であるために、固定化された受容体数
が少なくてもSPRを応答を測定することが可能とな
る。また、受容体との結合が比較的弱い場合においても
本発明のSPR装置によれば、SPR応答を測定するこ
とが可能となる。例えば、金属薄膜の表面に女性ホルモ
ン受容体を固定化しておき、これに環境ホルモンとなる
疑いのある物質を含有する検体を導入すると、極めて高
感度で女性ホルモン受容体との結合性の有無およびその
程度を知ることができる。したがって、本発明は、本発
明のSPR装置を用いた特定の受容体に結合する物質を
スクリーニングする方法を提供するものである。本発明
のこのスクリーニング方法によれば、環境ホルモンなど
の有害物質の探索や特定の受容体の拮抗剤などの開発に
有用となる。
る手段を採用することにより、簡便、高精度、高信頼性
で、迅速かつ安定した表面プラズモン共鳴(SPR)の
測定装置及び測定方法を提供するものである。また、本
発明はSPR装置を用いた標識化などの煩雑な操作を必
要としない簡便で迅速かつ高感度の抗原−抗体反応や受
容体との反応を測定する方法及びその装置を提供するも
のである。本発明のSPR装置は極めて高感度であるた
めに、受容体との反応やハイブリダイゼーションなどの
微弱な反応を検出することができ、生化学分野にも広く
応用されるものである。
のである。
のである。
明の偏光成分に分けたSPRスペクトルを示す。
を例示するものである。
SPR装置を例示するものである。
SPR装置によるSPR応答のセンサーグラムを例示す
るものである。
装置を例示するものである。
Claims (22)
- 【請求項1】 表面プラズモン共鳴(SPR)装置にお
いて、金属薄膜で反射された反射光の偏光を測定し得る
装置を有していることを特徴とする表面プラズモン共鳴
(SPR)装置。 - 【請求項2】 反射光を偏光に分ける装置を有すること
を特徴とする請求項1に記載の装置。 - 【請求項3】 反射光を偏光に分ける装置が、偏光のp
成分とs成分を測定可能に分けるものである請求項2に
記載の装置。 - 【請求項4】 反射光の偏光のp成分とs成分とを同時
に測定する請求項1〜3のいずれかに記載の装置。 - 【請求項5】 入射光が偏光である請求項1に記載の装
置。 - 【請求項6】 反射光の偏光のp成分とs成分の測定値
を比較する装置を有する請求項1〜5のいずれかに記載
の装置。 - 【請求項7】 偏光のp成分とs成分との比較が、両者
の商又は差である請求項6に記載の装置。 - 【請求項8】 偏光のp成分とs成分との比較が、両者
の位相差である請求項6に記載の装置。 - 【請求項9】 反射光における偏光のp成分とs成分と
の位相差を打ち消すように調整し得る装置を有する請求
項8に記載の装置。 - 【請求項10】 金属薄膜上における化学反応又は物質
間の相互作用により新たに生じた偏光の位相差を検出、
定量できる装置を有する請求項9に記載の装置。 - 【請求項11】 金属薄膜上における化学反応又は物質
間の相互作用が生起する前に、反射光における偏光のp
成分とs成分との位相差を打ち消すように調整し得る装
置により反射光の光量をゼロとし、金属薄膜上における
化学反応又は物質間の相互作用により新たに生じた偏光
の位相差による反射光の光量を検出、定量できる装置を
有する請求項8〜10のいずれかに記載の装置。 - 【請求項12】 金属薄膜上での化学反応又は物質間の
相互作用が、抗原−抗体反応、錯体形成反応又は受容体
との反応である請求項1〜11のいずれかに記載の装
置。 - 【請求項13】 金属薄膜上での化学反応が抗原−抗体
反応である請求項12に記載の装置。 - 【請求項14】 測定した値を記録、処理することがで
きる装置をさらに有する請求項1〜13のいずれかに記
載の装置。 - 【請求項15】 入射光の光源が、2種以上の波長の異
なる光源からなるものである請求項1〜14のいずれか
に記載の装置。 - 【請求項16】 入射光の光源として、2種以上の波長
の異なる光源をもちることを特徴とする表面プラズモン
共鳴(SPR)装置。 - 【請求項17】 請求項1〜16のいずれかに記載する
装置を用いて表面プラズモン共鳴(SPR)を測定する
方法。 - 【請求項18】 金属薄膜上における化学反応等により
新たに生じた偏光の位相差の有無を検出、定量する請求
項17に記載の方法。 - 【請求項19】 金属薄膜の表面に抗原又は抗体を固定
化した金属薄膜を用いて、請求項17又は18に記載の
表面プラズモン共鳴(SPR)を測定する方法により検
体中の抗体又は抗原を検出又は定量する方法。 - 【請求項20】 金属薄膜の表面に受容体を固定化した
金属薄膜を用いて、請求項17又は18に記載の表面プ
ラズモン共鳴(SPR)を測定する方法により検体中の
前記受容体に結合する物質を測定又はスクリーニングす
る方法。 - 【請求項21】 金属薄膜の表面に抗原若しくは抗体又
は受容体を固定化した金属薄膜を用いた請求項1〜16
のいずれかに記載の表面プラズモン共鳴(SPR)測定
装置により検体中の抗体若しくは抗原又は受容体に結合
する物質を検出又は定量するための装置。 - 【請求項22】 請求項17又は18に記載の検出又は
定量する方法のための抗原若しくは抗体又は受容体がそ
の表面に固定化された金属薄膜。
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