JP2001038445A - 鍛造用の金型装置 - Google Patents

鍛造用の金型装置

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悟 岩瀬
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幹治 吉坂
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Abstract

(57)【要約】 【課題】金型内の素材を効率よく加熱することができ、
金型ホルダーの寿命を伸ばすことができる鍛造用の金型
装置を提供する。 【解決手段】金型ホルダー2の収容保持部2Aの周壁部
の外側に環状外側膨出部2dが設けられると共に、周壁
部の内側に環状内側膨出部2cが金型1内の素材に対応
した位置に形成され、環状内側膨出部2cが金型1の外
周面に接触し、環状内側膨出部2cの上下に上環状空間
2aと下環状空間2bが形成される。加熱コイル5によ
る加熱時、金型ホルダー2の環状外側膨出部2d付近に
最大電流が流れ、その部分が大きく加熱される。環状外
側膨出部2dで発生した熱は、環状内側膨出部2cを介
して金型1に伝導される。環状内側膨出部2cの上下に
上環状空間2aと下環状空間2bが形成されているか
ら、熱の不要な箇所への分散を押え、必要な金型1内の
素材近傍に効率よく熱を伝えることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、素材を金型外で加
熱した後、金型内に投入し、熱間鍛造或は温間鍛造によ
り金属部品を成形する鍛造用の金型装置に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば、エンジンバルブ等の金属部品を
成形する場合、熱間鍛造或は温間鍛造用の金型装置を使
用し、ビレット(素材)を金型外で加熱した後、金型内
へ投入し、ポンチにより金型内からダイの狭窄部(型
部)を通してビレットを押圧し、所定形状の部品を成形
することが行なわれている。この種の押し出し成形用の
金型装置においては、金型内のビレットの温度低下を抑
制するために、高周波誘導加熱を使用する傾向にあり、
従来、図5に示すような金型装置が使用されている。
【0003】この金型装置は、図5に示す如く、基本的
には、ビレットBが収容される略円筒状の金型21を、
同様な略円筒形状の金型ホルダー22内に収容し、金型
ホルダー22の周囲に高周波誘導加熱用の加熱コイルを
巻装して構成される。金型21は内側下部に型部を有し
た略円筒状にセラミック材料により形成され、金型ホル
ダー22は、上部に金型を収容する収容保持部を設ける
と共に、下部には細い円筒状のピンガイド23を嵌挿し
て略円筒状に鋼材料により形成される。金型ホルダー2
2の上部には蓋板24を固定ボルト26により固定し
て、金型21をホルダー内に取り付け、その金型ホルダ
ー22の外周部に、高周波誘導加熱用の加熱コイル25
が巻装される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、この従来の金
型装置では、高周波誘導加熱を用いてビレットBを加熱
した場合、必ずしも効率良くビレットの加熱が行なわれ
ないことが判明した。即ち、実験を行なって、高周波誘
導加熱時の金型及び金型ホルダーの温度分布を測定した
ところ、図6の温度分布図に示すように、高周波の誘導
電流は加熱コイル25内に位置する金属の表面に流れ易
いため、金型ホルダー22の外周面付近に熱が発生し温
度が高くなるが、その熱が金型ホルダー22と金型21
の当接面を通して金型21内に伝導する際、この熱が分
散するため、金型ホルダー22の熱が金型内のビレット
B近傍に伝導しにくく、金型の加熱が効率よく行なわれ
ないことが判明した。
【0005】更に、図6のように、加熱コイル25に近
い金型ホルダー22の上角周縁部が異常に温度上昇し、
この異常高温の発生により、金型ホルダーの寿命が短く
なる恐れがあった。
【0006】本発明は、上記の点に鑑みてなされたもの
で、金型内の素材を効率よく加熱することができ、金型
ホルダーの寿命を伸ばすことができる鍛造用の金型装置
を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明の鍛造用の金型装置は、上部を開口した内部
に鍛造用の素材を収容する金型と、金型を収容するため
の収容保持部を設けた金型ホルダーと、金型ホルダーの
外周に巻装された高周波誘導加熱用の加熱コイルと、を
備えてなる鍛造用の金型装置において、金型ホルダーの
収容保持部の周壁部の外側に環状外側膨出部が設けられ
ると共に、周壁部の内側に環状内側膨出部が金型内の素
材に対応した位置に形成され、環状内側膨出部が金型の
外周面に接触し、環状内側膨出部の近傍に環状空間が形
成されることを特徴とする。
【0008】ここで、金型の外周部には、内側保持リン
グと外側保持リングが重ねて嵌着され、外側保持リング
の熱膨張係数を内側保持リングの熱膨張係数より低く設
定するとよい。
【0009】
【作用】このような構成の金型装置では、加熱コイルに
高周波電流を供給して、金型内を加熱しておき、予め加
熱した素材を金型内に投入し、金型内にポンチを押し込
み、金型内の素材を押し出し成形する。この加熱時、加
熱コイルの高周波電流により、金型ホルダー及び素材に
誘導電流(渦電流)が発生し、そのジュール熱により金
型ホルダーが昇温するが、誘導された高周波電流は導体
の表面を流れ易い性質があるため、金型ホルダーの環状
外側膨出部付近に最大電流が流れ、その部分が大きく加
熱される。
【0010】環状外側膨出部で発生した熱は、環状内側
膨出部を介して金型に伝導され、環状内側膨出部が金型
内の素材の位置に対応し、また、環状内側膨出部の近傍
に環状空間が形成されているから、熱の不要な箇所への
分散を押え、必要な金型内の素材近傍に効率よく熱を伝
えることができ、金型の必要部分を効率よく昇温させる
ことができる。つまり、環状内側膨出部とその近傍に設
けられた環状空間により温度分布を自在にコントロール
することができる。
【0011】また、加熱コイルの直ぐ内側に環状外側膨
出部が位置し、金型ホルダーの周壁部の上角周縁部は加
熱コイルから離れることになるため、この部分に誘導電
流が集中することはなく、従来の周壁部の上角周縁部に
おける異常高温の発生を防止することができる。
【0012】また、金型の外周部に、内側保持リングと
外側保持リングを重ねて嵌着する構造とし、外側保持リ
ングの熱膨張係数を内側保持リングの熱膨張係数より低
く設定すれば、金型の加熱時に、熱膨張係数の高い内側
保持リングが昇温・膨張して金型の締付けを緩めるが、
外側に嵌着された熱膨張係数の低い外側保持リングによ
って、内側保持リングの緩みが抑制され、成形時の金型
の締付を適正に行なうことができる。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
に基づいて説明する。図1は、高周波誘導加熱を用いて
加熱する熱間鍛造用の金型装置の断面図を示し、図2は
その横断面図を示している。1は略円筒状に形成された
金型で、内部にビレットBを入れるための収容室を有
し、上部は開口し、その収容室の下部には狭窄部(型
部)1aが形成され、その下に細い貫通孔が形成され
る。金型1は、サイアロン、窒化珪素等のセラミック材
料により形成される。
【0014】この金型1は、金型ホルダー2の上部に設
けた収容保持部2A内に挿入され、上から円形の開口部
を有する蓋板4を被せ、固定ボルト6で締め付けること
により、金型ホルダー2内に取り付けられる。金型ホル
ダー2は、鋼材料により略円筒状に形成され、上部に金
型1を収容するための収容保持部2Aが形成され、その
下部の同軸上に細い貫通孔が形成され、その貫通孔に、
細い筒状のピンガイド(ノックピン用のガイド部材)3
が収容保持部側から嵌着される。ピンガイド3の貫通孔
と金型1の収容室下部の貫通孔は連通する。
【0015】さらに、金型ホルダー2の収容保持部2A
の周壁を形成する周壁部には、その中間部内側に、環状
に膨出する環状内側膨出部2cが形成され、その環状内
側膨出部2cの上下に、隙間として上環状空間2aと下
環状空間2bが形成される。また、周壁部の中間部外側
にも、環状に膨出する環状外側膨出部2dが形成され
る。この環状内側膨出部2cと環状外側膨出部2dが形
成された部分は、その内側に配設される金型1内のビレ
ットBが位置する箇所の外側に対応している。
【0016】このような金型ホルダー2の収容保持部2
A内に、金型1が収容・保持されるが、このとき、図1
に示すように、金型1の中間部外周面が金型ホルダー2
の環状内側膨出部2cに接触して保持され、金型1の上
部外周部と下部外周部は、上環状空間2aと下環状空間
2bにより囲まれ、金型ホルダー2とは直接接触しない
箇所となる。
【0017】この金型ホルダー2の外周部には、高周波
誘導加熱用の加熱コイル5が巻装されるが、この加熱コ
イル5は、金型ホルダー2内の金型1内のビレットBの
位置を中心にして巻装される。加熱コイル5は図示しな
い高周波電源装置に接続される。
【0018】このように構成された金型装置は、図示し
ないプレス装置のボルスタ上に設けられた取付台上に金
型ホルダー2が固定され、ノックピンが取付台からピン
ガイド3内に昇降可能に挿入され、プレス装置上部のス
ライダにパンチが下向きに固定され、パンチは金型ホル
ダー2上の開口部から金型1内に挿入可能に配置され
る。
【0019】この金型装置を用いて、熱間鍛造を行なう
場合、先ず、高周波電源装置から高周波電流を加熱コイ
ル5に供給し、金型1を例えば約500℃まで加熱す
る。加熱コイル5内を流れる高周波電流により、金型ホ
ルダー2に誘導電流(渦電流)が流れ、そのジュール熱
により金型ホルダー2が昇温するが、誘導された高周波
電流は導体の表面を流れ易い性質があるため、金型ホル
ダー2にあっては、上部の環状外側膨出部2d付近に最
大電流が流れ、金型ホルダー2内の温度分布は、図3に
示すように生じる。
【0020】このため、金型ホルダー2の上部における
収容保持部2Aの周壁部の環状外側膨出部2dで主に発
生した熱は、その内側の環状内側膨出部2cを通して接
触する金型1に伝導し、金型1が昇温する。
【0021】次に、金型外で予め1200℃に加熱され
たビレットを金型内へ投入する。この時、金型1内のビ
レットBの位置に対応して環状外側膨出部2dと環状内
側膨出部2cが位置し、ビレットBが位置しない金型1
の上部と下部の外周部には、上環状空間2aと下環状空
間2bがあって、金型ホルダー2からの熱伝導率は低い
ため、ビレットBが位置しない金型1の上部と下部への
熱の分散が防止され、ビレットB近傍の金型1の昇温を
促進させることができる。
【0022】このように、図3の温度分布図に示すごと
く、金型ホルダー2の環状外側膨出部2dで主に発生し
た熱は、環状内側膨出部2cを通して金型1におけるビ
レットBの収容部分に効率よく伝導され、金型1内の材
料成形過程で材料と金型が接触する箇所の温度を所定の
温度(例えば400℃〜550℃)まで効率良く昇温・
保持させることができる。また、金型ホルダー2の上部
の加熱コイル5を巻装した部分には環状外側膨出部2d
が位置し、金型ホルダー2の周壁部の上角周縁部は加熱
コイル5から離れているため、この部分に誘導電流が集
中することはなく、従来のような周壁部の上角周縁部に
おける異常高温の発生を防止し、金型ホルダー2の耐久
性を向上させることができる。
【0023】この状態で、プレス機のスライドが下降
し、そこに固定されたポンチが金型1内に進入して、ビ
レットBを下方に押し出し、成形が行なわれる。
【0024】図4は他の実施例の金型装置を示してい
る。この金型装置の金型ホルダー12、ピンガイド1
3、蓋板4、及び加熱コイル15の構成及び配置は、上
記実施例と同様である。図4に示すように、金型ホルダ
ー12の上部に収容保持部12Aが設けられ、この収容
保持部12A内に、2つの保持リング17、18を有し
た金型11が収容され、上から円形の開口部を有する蓋
板14を被せ、固定ボルト16で締め付けることによ
り、金型ホルダー12内に取り付けられる。
【0025】金型ホルダー2の収容保持部12Aの周壁
を形成する周壁部には、上記と同様、その中間部内側
に、環状に膨出する環状内側膨出部12cが形成され、
その環状内側膨出部12cの上下に、隙間として上環状
空間12aと下環状空間12bが形成される。また、周
壁部の中間部外側にも、環状に膨出する環状外側膨出部
12dが形成される。この環状内側膨出部12cと環状
外側膨出部12dが形成された部分は、その内側に配設
される金型11内のビレットBが位置する箇所の外側に
対応している。
【0026】更に、この例の金型装置では、成形時にお
ける金型11の耐圧強度を高めるために、図4に示すご
とく、上記の金型1に代えて保持リング付きの金型11
が使用され、その金型11の外側に2個の円筒状の内側
保持リング17と外側保持リング18が重ねて嵌着され
る。金型11は、サイアロン、窒化珪素等のセラミック
材料により円筒状に形成され、内側下部に型部が設けら
れる。
【0027】金型11の外側に円筒状の内側保持リング
17が嵌着されるが、この内側保持リング17は通常の
鋼材のように比較的熱膨張係数の高い材料により円筒状
に形成され、その外側に嵌着される外側保持リング18
はこの内側保持リング17より熱膨張係数の低い材料に
より形成される。例えば、内側保持リング17としてS
KD61(400℃の熱膨張係数が13.2×10-6
℃)を使用した場合、外側保持リング18には、例えば
HRA904(400℃における熱膨張係数が6.0×
10-6/℃)を使用する。
【0028】このような、内側保持リング17と外側保
持リング18を重ねて嵌着した金型11では、加熱コイ
ル15による金型の加熱時に、比較的熱膨張係数の高い
素材の内側保持リング17も昇温・膨張して金型11の
締付けを緩めるが、その外側の熱膨張係数の低い素材の
外側保持リング18により、内側保持リング17の緩み
が抑制されるため、成形時の金型11の締付を適正に行
なうことができる。
【0029】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の鍛造用の
金型装置によれば、加熱コイルによる加熱時に、金型ホ
ルダーの環状外側膨出部で主に発生した熱が、環状内側
膨出部を通して金型内の素材収容部分に効率よく伝導さ
れ、金型を効率良く昇温させることができる。また、加
熱コイルの内側に環状外側膨出部が位置して、金型ホル
ダーの周壁部の上角周縁部は加熱コイルから離れること
になるため、この部分に誘導電流が集中することはな
く、従来の周壁部の上角周縁部における異常高温の発生
を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す鍛造用金型装置の縦
断面図である。
【図2】図1のII-II 断面図である。
【図3】図1の金型装置の加熱時の温度分布を示す説明
図である。
【図4】他の実施例の金型装置の縦断面図である。
【図5】従来の金型装置の縦断面図である。
【図6】従来の金型装置の加熱時の温度分布を示す説明
図である。
【符号の説明】
1−金型 2−金型ホルダー 2A−収容保持部 2a−上環状空間 2b−下環状空間 2c−環状内側膨出部 2d−環状外側膨出部 5−加熱コイル
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 吉坂 幹治 愛知県大府市共和町一丁目1番地の1 愛 三工業株式会社内 (72)発明者 堀田 昭雄 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 Fターム(参考) 3K059 AB00 AB25 AB27 AC07 AC37 AC54 AD03 AD26 AD30 CD44 CD52 CD62 CD73 4E087 AA09 AA10 BA14 CA11 CA33 CB01 CB02 DB15 DB22 DB23 EA35 EC22 ED12

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 上部を開口した内部に鍛造用の素材を収
    容する金型と、該金型を収容するための収容保持部を設
    けた金型ホルダーと、該金型ホルダーの外周に巻装され
    た高周波誘導加熱用の加熱コイルと、を備えてなる鍛造
    用の金型装置において、 該金型ホルダーの該収容保持部の周壁部の外側に環状外
    側膨出部が設けられると共に、該周壁部の内側に環状内
    側膨出部が該金型内の素材に対応した位置に形成され、
    該環状内側膨出部が該金型の外周面に接触し、該環状内
    側膨出部の近傍に環状空間が形成されることを特徴とす
    る鍛造用の金型装置。
  2. 【請求項2】 前記金型の外周部に内側保持リングと外
    側保持リングが重ねて嵌着され、該外側保持リングの熱
    膨張係数が該内側保持リングの熱膨張係数より低く設定
    されたことを特徴とする請求項1記載の鍛造用の金型装
    置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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