JP2001020047A - アルミニウム合金鍛造用素材およびその製造方法 - Google Patents

アルミニウム合金鍛造用素材およびその製造方法

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JP2001020047A
JP2001020047A JP19095199A JP19095199A JP2001020047A JP 2001020047 A JP2001020047 A JP 2001020047A JP 19095199 A JP19095199 A JP 19095199A JP 19095199 A JP19095199 A JP 19095199A JP 2001020047 A JP2001020047 A JP 2001020047A
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aluminum alloy
billet
crystals
extrusion
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JP19095199A
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English (en)
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Tsunehisa Sekiguchi
常久 関口
Tetsuya Komada
哲也 駒田
Takayuki Kato
崇行 加藤
Takamitsu Mukai
孝光 向井
Masato Takamatsu
正人 高松
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Toyota Industries Corp
Tokyu Co Ltd
Original Assignee
Tokyu Co Ltd
Toyoda Automatic Loom Works Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 均質化焼鈍処理を必要とせず、安価であっ
て、高温強度、疲労強度、耐摩耗性、耐応力腐食性に優
れ、かつ鍛造性、シャーリング切断性に優れたアルミニ
ウム合金鍛造用素材および生産性に優れたその製造方法
を提供する。 【解決手段】 Siを8〜22wt%、Cuを0.5〜
5wt%、Mgを0.3〜1.5wt%含有するアルミ
ニウム合金からなり、Al−Si共晶組織のSi晶の平
均粒径が25μm以下であり、かつ、初晶のSi晶の平
均粒径が30μm以下あるいは初晶のα晶の平均粒径が
60μm以下であるミクロ組織を有し、360〜460
℃の温度下、加工率30〜70%の熱間押出加工により
成形されたアルミニウム合金鍛造用素材とする。また、
この鍛造用素材を、鋳造工程における冷却速度と、押出
加工工程における加工温度および加工率とを規制した製
造方法によって製造する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】アルミニウム合金製の製品を
鍛造加工によって製造するための素材となるアルミニウ
ム鍛造用素材およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】カーコンプレッサ用ピストン、斜板、バ
ルブリフタ、デジタルVTRの磁気テープガイド用シリ
ンダ等の機械部品の多くは、アルミニウム合金が用いら
れ、高温強度が大きく、耐摩耗性、耐応力腐食性に優
れ、熱膨張係数が小さい等の利点から、特にAl−Si
系の合金が好んで使用されている。この種の合金として
は、金型鋳物ではAC8A、AC8B、AC8C等が、
ダイカスト用ではADC12、A390等が、また、伸
展・押出用ではA4032等がよく知られている。
【0003】上記種々の部品の製造は、その生産性を考
慮し、A4032合金等を用いて、鍛造加工によって行
われる場合が多い。比較的小さな部品の製造において
は、やはり生産性を考慮し、連続鋳造された大径のビレ
ットから、押出加工により比較的小さな所定の断面を持
つ棒材を成形し、次いで、この棒材を製品に適合した長
さに切断して鍛造に供していた。
【0004】ところが、棒材を所定の寸法に切断する
際、鋸盤によって切断するのが一般的であるが、鋸盤に
よる切断は、次工程である鍛造工程の加工速度よりも遅
く、製品の生産性を向上させる場合の障害となってい
た。そこで、切断速度を向上させるために、鋸盤による
切断に代え、シャーリングによる切断を採用することが
検討されている。
【0005】Al−Si系合金は、延性、靭性に優れる
ため、シャーリングによる切断性はあまり良好ではな
く、例えば、A4032合金をシャーリング切断する
と、切断面にクラックが発生したり、切断面に著しい凹
凸を生じることとなり、鍛造用素材として供することが
困難であった。また、A4032合金の場合は、疲労強
度に難点があり、例えばカーコンプレッサ用ピストン、
斜板、バルブリフタ等のような高負荷で連続的な荷重が
作用するような部品を製造するための素材としては適し
ていなかった。
【0006】上記問題に対応すべく、従来において、例
えば、特許第2506115号公報に示すように、アル
ミニウム合金が含有する合金成分を調整し、かつ、その
合金組織および表面強度を規定することで、高温強度、
疲労強度、耐摩耗性、耐応力腐食性を満足しつつ、シャ
ーリングによる切断性を向上させる技術が検討されてい
た。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記公報記
載のアルミニウム合金を用いてこれを押出加工すること
により鍛造用素材を製造しようとする場合、上記公報中
に記載されているように、押出加工の前にその合金に対
して均質化焼鈍処理を施さなければならなかった。この
均質化焼鈍処理は、鋳造されたアルミニウム合金におけ
る鋳造組織を消失させる等の目的で行うものであり、例
えば430℃程度の温度で、一定時間加熱炉中に保持し
て行う。このような均質化焼鈍処理を必要とすること
は、生産性の向上を阻害するものであり、また製品のコ
ストを増大させる要因ともなる。
【0008】さらに、従来の押出加工では、上述したよ
うに、大きな断面積をもつ大径ビレットから押出すこと
から、加工率の大きい加工となっている。加工率の大き
な押出加工を施すことは、鍛造用素材の組織に顕著な方
向性を生じさせることになり、疲労強度、延び等の特性
にも方向性を生じさせ、鍛造後の製品の性能を低下させ
る一因ともなっている。また、大きな加工率の押出加工
は大きな加工発熱を伴うため、結晶粒の粗大化等の組織
変化をもたらし、その後の鍛造加工における鍛造性、製
品の強度特性等を悪化させる一因ともなっていた。
【0009】本発明者らは、アルミニウム合金の組成お
よび組織を適正なものにすることに加え、鍛造用素材を
製造するための押出加工の加工条件をも適性なものとす
ることにより、上記従来のアルミニウム合金鍛造用素材
の抱える問題を解決できるとの知見を得た。
【0010】本発明は、この知見に基づくものであり、
均質化焼鈍処理を必要とせず、安価であって、高温強
度、疲労強度、耐摩耗性、耐応力腐食性に優れ、かつ鍛
造性、シャーリング切断性に優れたアルミニウム合金鍛
造用素材を提供することを課題とし、このアルミニウム
合金鍛造用素材の生産性に優れた製造方法を提供するこ
とを課題としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】製造コスト、高温強度、
疲労強度、耐摩耗性、耐応力腐食性、鍛造性、シャーリ
ング切断性のすべてを満足させるためには、アルミニウ
ム合金鍛造用素材が、(イ)適切な合金成分を適切な量
だけ含有すること、(ロ)簡便な製造方法にて製造でき
ること、(ハ)均一で微細な組織を有し、鋳造組織が残
存しないこと、(ニ)シャーリング切断時に剪断面が平
坦になり凹凸を生じないこと、(ホ)シャー切断時に剪
断によるクラック等が発生しないことが必要であると考
えられる。以下にこれらの条件についてさらに詳しく説
明する。
【0012】(イ)適切な合金成分を適切な量だけ含有
すること 比較的安価であり、高温強度、耐摩耗性、耐応力腐食性
が良好で、熱膨張係数が小さいAl−Si系の合金を採
用するのが好ましい。より優れた性能を発揮させるもの
として、Cu、Mgを含有するAl−Si−Cu−Mg
系の合金を使用するのがよいと判断する。
【0013】(ロ)簡便な製造方法にて製造できること 連続鋳造材を用いることができ、鍛造用素材としての仕
上がり寸法精度が良好であり、また、容易に鋳造組織を
消失させることのできる熱間押出加工によって製造する
のが良く、さらには、工程を単純化するためおよび製造
コストの削減のため、熱間押出加工前に均質化焼鈍処理
を必要としない製造方法によって製造できる必要があ
る。
【0014】(ハ)均一で微細な組織を有し、鋳造組織
が残存しないこと 鋳造組織のミクロ組織は、過共晶合金であれば初晶とし
てSi晶を有し、また亜共晶合金であれば初晶としてα
晶(Al晶)を有し、そして共晶組織を有している。鍛
造用素材としては、鋳造したままの組織が残存せず、さ
らに均一で、微細化されている必要がある。
【0015】上記熱間押出加工によれば、鋳造組織は容
易に消滅させることができるが、加工率が高いと、素材
に方向性が生じ、延び等の特性にも方向性を生じ、また
疲労強度に対しても悪影響を及ぼす。さらに加工率が高
いと、加工発熱により結晶組織の変化をもたらし、製品
の特性を劣化させる。特に結晶粒の粗大化による強度低
下を避ける必要がある。
【0016】このことから、加工率を低く抑える必要が
ある。ここで加工率とは、押出加工の際、ビレットが挿
入されるコンテナの前端部に設けられたダイス穴を通過
する直前の素材の断面積に対する押出成形後(つまりダ
イス穴通過直後)の素材の断面積の減少率をいう。通常
の押出成形では、加工率は85〜90%で実施されてい
るが、加工率を30〜70%に抑えることで、鋳造組織
を残存させず、均一で微細な合金組織を得ることができ
る。
【0017】(ニ)シャーリング切断時に剪断面が平坦
になり凹凸を生じないこと 押出加工によって得られた鍛造用素材は、長い棒材とな
る。この素材を鍛造加工に供するためには、製品に適合
した所定の長さに切断する必要がある。この時鋸刃によ
る切断では、切削屑が発生し、歩留りが低下することに
なる。また、鋸刃による切断では、切断速度が遅く高生
産性は期待できない。そこで、シャーリング切断を行う
ことが望ましい。
【0018】ところが、シャーリング切断では、切断面
が凹凸となり易く、この凹凸が鍛造時に被り欠陥の原因
となる。またシャーリング切断時に剪断破壊の前に剪断
方向に塑性変形すると変形部分の特性が局部的に変化し
てしまい、鍛造後の製品にも悪影響を及ぼす。これらの
ことから、切断面つまり剪断面が平滑であることが望ま
れる。剪断面の平滑性は、鍛造用素材がある程度の脆性
を有することを必要とする。また、素材内部に偏析等に
よるラミネーションがないことも必要とされ、この点で
も熱間による押出加工は残留する偏析等を緩和させるこ
とができ好適な加工となる。
【0019】(ホ)シャー切断時に剪断によるクラック
等が発生しないこと 剪断によりクラック等が発生する場合は、鍛造加工によ
って割れ欠陥を生じるばかりでなく、製品の機械的強度
を大きく低下させてしまう。このためには、鍛造用素材
が適正な靭性を有することを要求される。しかし上記
(ニ)において脆性をも必要とすることから、結論的に
は、靭性と脆性とのバランスのとれた素材であることを
要求される。
【0020】以上のすべての条件を満足するアルミニウ
ム合金鍛造用素材は、本発明者らが鋭意研究の結果見出
した本発明のアルミニウム合金鍛造用素材であり、この
アルミニウム合金鍛造用素材は、Siを8〜22wt
%、Cuを0.5〜5wt%、Mgを0.3〜1.5w
t%含有するアルミニウム合金からなり、Al−Si共
晶組織のSi晶の平均粒径が25μm以下であり、か
つ、初晶のSi晶の平均粒径が30μm以下あるいは初
晶のα晶の平均粒径が60μm以下であるミクロ組織を
有し、360〜460℃の温度下、加工率30〜70%
の熱間押出加工により成形されたことを特徴とする。
【0021】つまり、本発明のアルミニウム合金用鍛造
素材は、アルミニウム合金の組成および組織を適正なも
のにすることに加え、鍛造用素材を製造するための押出
加工の加工条件をも適性なものとした鍛造素材であり、
上記構成を採用することで、安価であって、高温強度、
疲労強度、耐摩耗性、耐応力腐食性、鍛造性、シャーリ
ング切断性に優れた鍛造用素材となる。
【0022】また、本発明の製造方法は、上記本発明の
アルミニウム合金用鍛造素材の製造方法であって、Si
を8〜22wt%、Cuを0.5〜5wt%、Mgを
0.3〜1.5wt%含有するアルミニウム合金の溶湯
を凝固時の冷却速度がすべて部位において3℃/sec
以上となるように鋳造して押出成形用ビレットを成形す
るビレット鋳造工程と、前記押出成形用ビレットをコン
テナ内に挿入し、360〜460℃の温度下、該押出成
形用ビレットを該コンテナの後部より加圧して該コンテ
ナの前端部に設けられたダイス穴より加工率30〜70
%となるように押出して鍛造用素材を成形する熱間押出
加工工程とを含んでなることを特徴とする。
【0023】つまり、本発明の製造方法は、上記組成を
もつアルミニウム合金溶湯から押出成形用ビレットを鋳
造する鋳造工程における冷却速度と、押出加工工程にお
ける加工温度および加工率とを規制することで、均一で
あり微細な組織を有する本発明のアルミニウム合金鍛造
用素材を容易に得ることができる。また、鋳造工程と押
出加工工程との間に、均質化焼鈍処理、ピーリング(皮
むき)加工を必要としないことで、簡便であって、迅速
かつ低コストな製造方法となる。
【0024】
【発明の実施の形態】以下に、本発明のアルミニウム合
金鍛造用素材およびその製造方法の実施形態について詳
しく説明する。
【0025】〈合金成分〉本発明のアルミニウム合金鍛
造用素材は、Siを8〜22wt%、Cuを0.5〜5
wt%、Mgを0.3〜1.5wt%含有するアルミニ
ウム合金からなる。つまり、Si、Cu、Mgを上記組
成範囲で含有し、残部がAlと不可避の不純物で構成さ
れるものでもよく、種々の特性を改良するために他の合
金成分を含有するものであってもよい。
【0026】Siは、合金の熱膨張係数を低下させ、耐
摩耗性を向上させる役割を果たす。機械的強度、耐摩耗
性、のみならず疲労強度においても良好な特性を得られ
ることから、Siの含有割合は、8wt%以上22wt
%以下とする。22wt%を超える場合は、ビレット製
造時の鋳造性が低下し、また、鍛造性、押出成形性、切
削性が低下し、実用性に欠けることになる。
【0027】Cuは、合金の基地に固溶して、その強度
を向上させる役割を果たす。含有割合が1.5wt%未
満では、強度、耐摩耗性、切削性において良好な特性が
得られず、また、5wt%を超える場合は、割れが発生
したり、鋳造時に湯流れ不良が生じ易くなって鋳造が困
難になったりする。このため、Cuの含有割合は、0.
5wt%以上5wt%以下とする。
【0028】Mgは、時効硬化によって合金の特性を改
善させる役割等を果たす。0.3wt%未満では、合金
が時効硬化性に乏しく望む特性が得られず、1.5wt
%を超える場合は、酸化ロスが増えるばかりでなく、鋳
造時あるいは鍛造時の割れが生じ易くなり、特性が劣化
する。このため、Mgの含有割合は、0.3wt%以上
1.5wt%以下とする。
【0029】本発明のアルミニウム合金鍛造用素材は、
その特性をより良好なものとすることを目的として、さ
らに、Mnを0.2〜1.5wt%およびFeを0.0
4〜0.8wt%(MnとFeとの総量で0.25〜2
wt%)、TiおよびBの少なくとも1種を総量で0.
005〜5wt%含有するアルミニウム合金からなるよ
うにすることが望ましい。
【0030】MnおよびFeは、合金の再結晶温度を上
昇させて、鍛造された製品の高温特性を良好にする役割
を果たす。Mnの含有割合が0.2wt%未満では効果
が乏しく、また、1.5wt%を超える場合は、鍛造性
が悪化する。このことからMnの含有割合は、0.2w
t%以上1.5wt%以下とするのが望ましい。Feの
含有割合が0.04wt%未満では効果が乏しく、ま
た、0.8wt%を超える場合は、Al−Fe、Al−
Fe−Siの針状組織が晶出し、伸び特性を悪化させ
る。このことから、Feの含有割合は、0.04wt%
以上0.8wt%以下とするのが望ましい。さらに、M
nとFeとの総量をも規制する必要がある。MnとFe
との総含有割合が0.25wt%未満では、やはり効果
が乏しく、また、2.0wt%を超える場合は、Al−
Mn−Fe、Al−Fe−Si等の金属間化合物が針状
に発生する。そこでMnとFeとの総量は、0.25w
t%以上0.2wt%以下とするのが望ましい。
【0031】TiおよびBは、結晶粒の微細化に役立
つ。結晶粒の微細化は、強度特性を向上させるとともに
シャーリング切断性をも向上させる。両者の総量が0.
005wt%未満では効果が少なく、0.5wt%を超
えて添加してもその効果は低下するとともにAl−Ti
等の針状組織が発生し靭性を損なうことになる。したが
って、TiおよびBの少なくとも1種含有させ、その総
含有割合を0.005wt%以上5wt%以下とするの
が望ましい。より望ましくは、0.02〜0.25wt
%とするのがよい。さらに理想的には、総量を0.1w
t%とし、重量比でTi:B=4:1として添加するの
が好ましい。
【0032】なお、上記態様は、Mn、Fe、Tiおよ
びBの少なくとも1種のすべてを含む態様であるが、M
nのみ、Feのみ、MnとFeのみ、TiおよびBの少
なくとも1種のみを添加する態様とすることもできる。
この場合であってもそれぞれの合金成分の添加効果が期
待できる。
【0033】さらに、本発明のアルミニウム合金鍛造用
素材では、さらに、Niを0.15〜2wt%および/
またはCrを0.04〜0.4wt%含有するアルミニ
ウム合金からなるようにするのが望ましい。Niおよび
Crの少量の添加は、合金の高温特性を向上させる。た
だし、これらの金属の過剰な添加は靭性、疲労強度の低
下を招くため、それぞれ、上記範囲の添加にとどめるの
がよい。
【0034】また、本発明のアルミニウム合金鍛造用素
材では、Znを含有するものであってもよい。Znは、
強度向上に効果があり、特にMgとの共存により、機械
的性質、機械加工性を向上させるという役割を果たす。
Znが0.1wt%未満の場合は、機械的特性への寄与
率が小さくなり、また、0.4wt%を超える場合は、
靭性が劣化し、耐食性が悪くなることから、Zuの含有
割合は、0.1wt%以上0.4wt%以下とするのが
望ましい。
【0035】さらにまた、本発明のアルミニウム合金鍛
造用素材では、接種剤として、Sr、Na、Ca、K、
P等を溶湯中に10〜30ppm添加するものであって
もよい。これらの元素の添加は、共晶組織のSi晶、あ
るいは初晶であるSi晶の成長を抑制し、鋳造素材の結
晶を微細化して鍛造性、機械的性質の改善とシャーリン
グ切断性の向上に寄与する。特に過共晶合金を比較的遅
い冷却速度で凝固させるような場合には、適当な接種剤
を加えることが有効となる。
【0036】〈合金組織〉本発明のアルミニウム合金鍛
造用素材では、強度特性、鍛造性等を担保するため、特
にシャーリング切断性を向上するために、合金のミクロ
組織が、Al−Si共晶組織のSi晶の平均粒径が25
μm以下であり、かつ、初晶のSi晶の平均粒径が30
μm以下あるいは初晶のα晶の平均粒径が60μm以下
となるようにする。
【0037】共晶組織におけるSi晶の平均粒径を25
μm以下に抑えることで、鍛造性、強度特性等が良好と
なり、さらにシャーリング切断時の剪断面が平滑にな
る。より良好特性を得るためには、15μm以下とする
のがより望ましい。
【0038】Siの含有割合が約12%を超える過共晶
合金の場合、鋳造時に初晶としてSi晶が晶出する。こ
の初晶のSi晶が存在する場合、その平均粒径を30μ
m以下とする。より良好な特性を得るためには25μm
以下とするのが望ましい。また、Siの含有割合が約1
2%未満の亜共晶合金の場合、鋳造時に初晶としてα晶
が晶出する。この初晶のα晶が存在する場合、その平均
粒径を60μm以下とする。
【0039】それぞれの結晶粒を小さなレベルに制限す
るためには、後に詳しく説明するように、鋳造する際の
鋳塊(ビレット)の冷却速度を大きくし、さらに、後に
行う押出成形の加工率、加工温度を制限することによっ
て達成できる。
【0040】なお、さらに、本発明のアルミニウム合金
鍛造用素材では、マクロ組織において、等軸晶が面積率
で60%以上となる合金からなるようにするのが望まし
い。これは、等軸晶においては、シャーリング切断によ
る剪断面が平滑になり、羽毛状晶が存在すると、剪断面
の状況が等軸晶の場合と異なり、凹凸が大きくなり、ま
た割れを発生させるからである。したがって、羽毛状晶
が実質的に存在しない組織を有するものがより望まし
い。
【0041】〈熱間押出加工による成形〉本発明のアル
ミニウム合金鍛造用素材は、360〜460℃の温度
下、加工率30〜70%の熱間押出加工により成形され
る。熱間押出加工は、加工仕上がり寸法精度が良好であ
り、また素材から容易に鋳造組織を消失させることがで
きるというメリットがある。
【0042】ただし、加工率が高い押出加工は、合金組
織の方向性が顕著となり、強度等の特性についても方向
性を生じさせるため望ましくない。また、加工率の高い
押出加工を行えば、加工発熱が大きく、結晶粒が粗大化
し、素材の靭性低下を招く、強度特性、シャーリング切
断性を良好に保つためには、加工率を30〜70%とす
る必要がある。なお、鍛造性を含めた特性のバランスの
採れた鍛造用素材とするためには、加工率が35〜70
%の押出加工により成形するのがより望ましい。
【0043】また、加工温度は、押出加工のし易さと結
晶粒の大きさとの兼ね合いから、360〜460℃の範
囲とする。加工率、押出成形される素材の断面積、形状
等によって異なるものとなるが、より良好な特性を得る
ためには、420〜450℃の範囲で熱間押出加工を行
うのがより望ましい。
【0044】〈本発明のアルミニウム合金鍛造用素材の
製造方法〉本発明のアルミニウム合金鍛造用素材の製造
方法は、上記熱間押出加工を除いて、特に限定されるも
のではない。ただし鋳造時の冷却速度等の影響も大き
く、以下に説明する本発明の製造方法によるものが望ま
しい。
【0045】本発明の製造方法は、Siを8〜22wt
%、Cuを0.5〜5wt%、Mgを0.3〜1.5w
t%含有するアルミニウム合金の溶湯を凝固時の冷却速
度がすべての部位において3℃/sec以上となるよう
に鋳造して押出成形用ビレットを成形するビレット鋳造
工程と、この押出成形用ビレットをコンテナ内に挿入
し、360〜460℃の温度下、押出成形用ビレットを
コンテナの後部より加圧してコンテナの前端部に設けら
れたダイス穴より加工率が30〜70%となるように押
出して鍛造用素材を成形する熱間押出加工工程とを含ん
でなる。
【0046】ビレット鋳造工程における鋳造方法は、特
に限定されるものではなく、公知の種々の鋳造方法を採
用することができる。生産性を考慮すれば、連続鋳造法
を採用するのがよい。
【0047】鋳造工程における凝固時の冷却速度をビレ
ットのすべての部位において3℃/sec以上となるよ
うにするのは、合金の結晶粒の粗大化を防止するため、
偏析を抑えるため、および、冷却速度差による各部位の
組織差を生じさせないためである。さらに望ましくは各
部位において、冷却速度が5℃/sec以上となるよう
にするのがよい。なお、凝固時とは、凝固するときのみ
を意味するのではなく、凝固開始から再結晶温度以下に
温度が下降するまでを意味する。凝固時の冷却速度を大
きくするには、鋳型の冷却および鋳型から取り出したビ
レットの冷却を適正な方法で強化すればよい。
【0048】従来、押出加工に供されるビレットは、断
面が円形を成すものが一般的である。連続鋳造法におい
て、円形断面のビレットを製造する場合、直径で約10
0mmφ以下の断面をもつビレットとすることにより、
すべての部位において3℃/sec以上の冷却速度を維
持することができる。直径100mmφ以下のビレット
は、かなり小径であるため、生産性を満足させることが
できないとも考えられる。この場合、ビレットの断面を
矩形状とすることにより、より大きな断面をもつビレッ
トであっても同等の冷却速度を維持することができる。
同一断面積であれば、円形に比べ矩形のほうが、外周長
が長いからであり、より大きな断面積をもつビレットを
製造できることで、生産性を向上させることができる。
ちなみに、170mm×70mmの矩形状の断面を持つ
ビレットの場合であっても、後の実施例の項で示すよう
に、良好な合金組織が得られることが確認できた。な
お、矩形状とは、正方形、長方形を意味するが、ひし
形、台形等の若干異形状をしたもの、頂点が曲線状に形
成されるもの等を含むことを意味する。
【0049】熱間押出加工工程は、押出成形用ビレット
をコンテナ内に挿入し、コンテナの後部より加圧してコ
ンテナの前端部に設けられたダイス穴より押出して鍛造
用素材を成形する。加工温度および加工率については、
上記の条件に従う。
【0050】加工率30〜70%の押出加工は、低加工
率であるため、ダイス穴が1つでは大きな断面積をもつ
ビレットからでは大きな断面をもつ鍛造用素材しか成形
することはできない。そこで小さい断面積を有する鍛造
用素材を成形する場合は、複数のダイス穴を設け、同時
に複数本の鍛造用素材を成形することによって、低加工
率の押出加工を実施できることとなる。
【0051】ただし、複数のダイス穴を設けて小さい断
面積の鍛造用素材を成形する場合、、ダイス穴を通過す
る直前では、素材に塑性流動の乱れを生じ易く、成形後
の合金組織に悪影響を与えることも懸念される。そこで
本発明の製造方法では、コンテナの前部を、ダイス穴に
向かって連続的に内部断面積が減少する形状とし、熱間
押出加工工程を、押出成形用ビレットがコンテナの前部
にて予備成形されつつダイス穴より押出されるような態
様のものとすることが望ましい。
【0052】コンテナ内で行う予備成形の状態を、図1
に概念的に示す。図1に示す様に、コンテナ10の前端
部には、ダイス穴11が設けられ、コンテナのダイス穴
11に向かう前部は、ビレット20の断面積を減少させ
るべくテーパー状になっており、この部分が予備成形部
12となっている。このようなコンテナ10を用いて押
出加工を行うことにより、塑性流動が整然とした押出成
形を行うことが可能となり、押出された鍛造用素材の合
金組織は良好な状態を保ちつつ、低加工率であって、小
さな断面積をもつ鍛造用素材の成形が可能となる。な
お、このようなテーパー状の予備成形部を設けること
は、コンテナ内に残留するデッドメタルを少なくできる
というメリットもあり、より経済的な押出加工を達成で
きる。
【0053】予備成形後の形状は、つまりダイス穴直前
のコンテナの断面形状は、押出される素材の断面形状お
よび断面積、設けられるダイス穴の数、ビレット自体の
断面形状等に応じ、適切な任意のものとすることができ
る。例えば、上記の矩形状の断面をもつビレットの場合
であっても、予備成形後の断面形状は、円形、楕円形、
角に丸みを帯びた矩形状等種々の形状を採用することが
できる。
【0054】予備成形における断面積の減少勾配は、塑
性流動の整然さ、残留するデッドメタルの量等との兼ね
合いで決定すればよい。例えば、1000mm2の断面
積をもつビレットを、断面積500mm2となるように
予備成形する場合は、予備成形開始点から予備成形終了
点までの押出し方向の距離が、20〜70mmとなるよ
うな予備成形部を有するコンテナによって押出加工する
ことが望ましい。他の場合であってもこの範囲の断面積
減少勾配を有するようにコンテナを設計することが望ま
しい。
【0055】一実施形態として、上述した170mm×
70mmの矩形断面をもつビレットを、130mm×6
5mmの断面形状に予備成形した後、直径30mmφの
断面をもつ鍛造用素材を6本同時に押出成形する場合
の、ビレットから鍛造用素材までの連続した形状を、図
2に模式的に示す。この場合の予備成形部の押出し方向
の長さは35mmであり、ちなみに、押出された鍛造用
素材の加工率は64%である。
【0056】
【実施例】本発明のアルミニウム合金鍛造用素材を実際
に実施例として製造した。また、本発明のアルミニウム
合金鍛造用素材と異なる組成または製造方法の鍛造用素
材を比較例として製造した。そしてこれらに対して、種
々の試験を施し、本発明のアルミニウム合金鍛造用素材
の優秀性について確認した。以下に説明する。
【0057】下記表1に、実施例、比較例のアルミニウ
ム合金鍛造用素材の組成および製造方法の概略を一覧と
して示す。
【0058】
【表1】
【0059】〈実施例〉実施例は、サンプルNo.1〜
6のものであり、その組成は、Siの含有割合をを3段
階に変更し、他の成分を適宜分布させたものである。表
記した成分の溶湯を、凝固時の冷却速度が鋳塊の各部で
5℃/sec以上となるようにし、連続鋳造法で、断面
が100mm×80mmの矩形状のビレットとした。従
来行っていた均質化焼鈍処理およびピーリング加工を省
略し、上記実施形態で例示した図2に示すような方法
で、420℃の温度に加熱したビレットを押出し、直径
30mmφの鍛造用素材を製造した。なお、熱間押出加
工における加工率は、47%であった。
【0060】〈比較例1〉比較例1は、サンプルNo.
11〜13のものであり、実施例のものと組成のの異な
る合金からなるものである。サンプルNo.11のもの
は、Al−Cu−Mg系の型打ち鍛造用合金であるA2
218を、サンプルNo.12のものは、鋳造用合金で
あるAC8Bを、サンプルNo.13のものは、本発明
の鍛造用素材に近い組成をもつ型打ち鍛造用合金である
A4032をそれぞれ採用した。
【0061】サンプルNo.11のものは、冷却速度2
℃/secで直径250mmφに連続鋳造した円形ビレ
ットを、ピーリング加工および均質化焼鈍処理(490
℃×4Hr後、60〜80℃/Hrの冷却速度で常温ま
で冷却)を施し、次いで、420℃の温度に加熱して、
加工率85%の熱間押出加工を行って、10本の直径3
0mmφの鍛造用素材とした。
【0062】サンプルNo.12のものは、金型により
直径30mmφに鋳造し、鍛造用素材とした。このとき
の冷却速度は0.4℃/secであった。またサンプル
No.13のものは、直径30mmφに細径連続鋳造
し、鍛造用素材としたものである。この場合の冷却速度
は4.5℃/secであった。
【0063】〈比較例2〉比較例2は、サンプルNo.
21〜23のものであり、実施例のサンプルNo.2、
4、6とそれぞれ同じ組成をもつ合金からなる。サンプ
ルNo.11のものと同様に、それぞれ、連続鋳造した
直径250mmφの円形ビレットを、ピーリング加工お
よび均質化焼鈍処理後、直径30mmφに押出加工して
製造した。
【0064】〈特性試験〉上記実施例および比較例の鍛
造用素材から試験片を切削成形して、その試験片に対し
て、特性調査のための各種の試験を行った。これらの試
験方法を以下に示す。なお、下記の試験の内、シャーリ
ング試験、鍛造性試験以外の機械的性質についての試験
は、実際に使用される場合と同条件であることを想定
し、T6処理(505℃×4Hr加熱後、温水焼入れし
て、170℃×7Hrの人工時効処理を施すもの)を施
した試験片に対して行った。
【0065】(1)断面組織観察 それぞれの鍛造用素材を機械加工して所定寸法の試験片
を得、試験片の横断面を研磨し、エッチングを行って断
面組織の観察を行い、共晶組織のSi晶および初晶であ
るSi晶またはα晶の平均粒径を測定した。
【0066】(2)シャーリング切断試験 直径30mmφの丸棒状の試験片を、能力160t、毎
分65回のストローク、ラムストローク140mmの仕
様をもつシャーリング切断機により、刃具とのクリアラ
ンス0.2mmで剪断し、その剪断面の状況を目視にて
判定した。判定は、図3に示す基準に従い、剪断面の凹
凸および割れの有無により評価するものとした。
【0067】(3)鍛造性試験 図4(a)に示す形状をもつ試験片31を作製し、36
0℃×1Hrの焼鈍処理を施した後、図4(b)に示す
様な鍛造性試験機30を用い、試験片31を金敷き32
に置き、ハンマー33により鍛圧し、鍛圧後の試験片3
1の割れ34により限界加工率を測定し、この限界加工
率を基に評価した。
【0068】(4)引張試験 20tのアムスラ万能試験機により、引張強さ、耐力、
伸びを測定した。
【0069】(5)疲労試験 小野式疲労試験機にて、1×107の繰返し時の破断荷
重を測定した。
【0070】(6)高温強度引張試験 200℃の温度に30分間保持し、高温引張試験機によ
り、高温強度を測定した。
【0071】(7)耐摩耗試験 大越式耐摩耗試験により摩擦速度3.1m/sec、荷
重18.9kg、摩擦距離600mの条件で、相手材と
してFC30を用いて実施し、比摩耗量を測定した。
【0072】〈評価〉断面組織観察の結果として、その
代表的なものであるサンプルNo.3およびNo.13
の断面組織写真をそれぞれ図5および図6に示す。ま
た、上記各種試験の結果を一欄にして下記表2に示す。
【0073】
【表2】
【0074】図5に示す実施例であるサンプルNo.3
の鍛造用素材では、亜共晶合金であるため、断面組織に
おいて、初晶のα晶と共晶組織のSi晶とが混在するも
のとなっている。図5中、不定形の微細形状のものが共
晶Siであり、白くツリー状に見えるのがα晶である。
共晶組織のSi晶の平均粒径は4μm、初晶のα晶の平
均粒径は28μmであり、微細な結晶粒から構成された
組織であることが判る。
【0075】これに対して図6に示す比較例であるサン
プルNo.13の鍛造用素材では、共晶系の合金である
ため、断面組織において、初晶のSi晶は殆ど存在しな
い。図6中、針状に黒く見えるの共晶Siであり、粗大
化している。また、白色で雲状をを呈しているのがα晶
で、これも粗大化している。共晶組織のSi晶の平均粒
径は32μmであり、大きなな結晶粒から構成された合
金組織となっている。
【0076】また、表2に挙げた実施例、比較例のすべ
ての鍛造用素材の結晶粒子の平均粒径から判るように、
実施例の鍛造用素材では、比較例の鍛造用素材と比較し
て微細な結晶粒を有する組織となっていることが確認で
きる。このように微細な組織であるが故、以下に説明す
る良好な特性が得られる鍛造用素材となる。
【0077】他の特性について説明を加えれば、シャー
リング切断性については、実施例の鍛造用素材は、比較
例の鍛造用素材に比べ、明らかに良好であり、本発明の
鍛造用素材の優位性を示した結果となっている。また、
鍛造性についても、実施例の鍛造用素材は良好であり、
これに対して比較例の鍛造用素材は劣るものとなってい
る。特に比較例2のサンプルNo.23のものは割れが
発生し、鍛造用素材としては不適当なものであることが
判る。
【0078】引張試験においては、Cuの含有量が多い
ほど、引張強さ、耐力の向上が見られる。疲労試験、高
温引張試験についても、比較例に比べ、実施例の鍛造用
素材が良好であり、上述した結晶粒の微細化による靭性
および強度の向上によるものであることが確認できる。
耐摩耗性試験による比摩耗量の値についても、実施例の
鍛造用素材は、ほぼ同成分系のAC8B(サンプルN
o.12)およびA4032(サンプルNo.13)と
比較して良好であり、結晶組織が均一でかつ粒度が小さ
いことによる効果であることが確認できる。
【0079】〈製品試験〉上記実施例のうちサンプルN
o.1の合金を使用して、実際にカーコンプレッサ用ピ
ストンの鍛造を行った。鍛造され、その後外周部および
所定の部位を機械加工して形成されるピストンは、概
略、図7に示す形状をなすものである。鍛造は、400
tのクランクプレスを使用し、鍛造温度を420℃で実
施した。詳しい鍛造条件は、下記表3に示す。
【0080】
【表3】
【0081】鍛造結果は良好で、割れ等の鍛造欠陥の発
生は見られなかった。また、製造したピストンに対し
て、両端の2点を支持し、中央部に負荷をかける抗折試
験を行った結果、1.4tの負荷にまで耐えることがで
き、充分な実用強度を有する製品 であることが確認で
きた。
【0082】
【発明の効果】本発明のアルミニウム合金鍛造用素材
は、材料となるアルミニウム合金の組成および組織を適
正なものとしたことに加え、成形するための押出加工の
加工条件をも適性なものとした鍛造用素材である。この
ような構成の鍛造用素材としたことで、本発明の鍛造用
素材は、均質化焼鈍処理を必要とせず、安価であって、
高温強度、疲労強度、耐摩耗性、耐応力腐食性に優れ、
かつ鍛造性、シャーリング切断性に優れたアルミニウム
合金鍛造用素材となる。そしてこの鍛造用素材を用いて
鍛造した製品、例えば、カーコンプレッサ用ピストン、
斜板、バルブリフタ、デジタルVTRの磁気テープガイ
ド用シリンダ等の機械部品は、機械的特性が充分良好で
あるとともに、製造効率が良く、製造コストを低く抑え
ることのできる製品となる。
【0083】また本発明の製造方法は、上記本発明のア
ルミニウム合金鍛造用素材の製造方法であって、アルミ
ニウム合金溶湯から押出成形用ビレットを鋳造する鋳造
工程における冷却速度と、押出加工工程における加工温
度および加工率とを規制するという構成をとる。このよ
うな構成とすることで、本発明の製造方法は、均一であ
り微細な組織を有する本発明のアルミニウム合金鍛造用
素材を容易に得ることができ、また、鋳造工程と押出加
工工程との間に、均質化焼鈍処理、ピーリング加工を必
要としないことで、生産性がよく、簡便であって、迅速
かつ低コストな製造方法となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の製造方法であって、熱間押出加工工
程において、押出し成形用ビレットがコンテナの前部に
て予備成形されつつダイス穴より押出される様子を概念
的に示す。
【図2】 本発明の製造方法の一実施形態であって、矩
形状の断面をもつビレットを予備成形しつつ、小径の鍛
造用素材を押出成形する場合の、ビレットから鍛造用素
材までの連続した形状を模式的に示す。
【図3】 実施例で行ったシャーリング切断試験の判定
基準を示す。
【図4】 実施例で行った鍛造性試験における試験片お
よび試験方法の概略を示す。
【図5】 本発明のアルミニウム合金鍛造用素材の実施
例であるサンプルNo.3の鍛造用素材の断面組織を示
す。
【図6】 比較例であるサンプルNo.13の鍛造用素
材の断面組織を示す。
【図7】 製品試験で鍛造を行ったカーコンプレッサ用
ピストンの概略形状を示す。
【符号の説明】
10:コンテナ 11:ダイス穴 12:予備成形部 20:押出成形用ビレット 30:鍛造性試験機 31:試験片 32:金敷き 33:ハンマー 34:割れ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) B22D 11/00 B22D 11/00 E 11/124 11/124 L C22C 21/02 C22C 21/02 // C22F 1/00 604 C22F 1/00 604 612 612 630 630J 630A 630D 630G 640 640A 692 692A 694 694A 694B (72)発明者 駒田 哲也 愛知県丹羽郡大口町余野一丁目60番地 東 久株式会社内 (72)発明者 加藤 崇行 愛知県刈谷市豊田町2丁目1番地 株式会 社豊田自動織機製作所内 (72)発明者 向井 孝光 愛知県刈谷市豊田町2丁目1番地 株式会 社豊田自動織機製作所内 (72)発明者 高松 正人 愛知県刈谷市豊田町2丁目1番地 株式会 社豊田自動織機製作所内 Fターム(参考) 4E004 KA12 4E029 AA01 AA03 AA06 AB01 AB03 BA02 RA01 SA01 SA02 SA04 4E087 AA10 BA01 BA03 BA14 BA24 CA21 CA22 CB01 CB04 DB12 DB15 DB16 DB23 DB24 EC17 EC18 EC54 HA62 HA67

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Siを8〜22wt%、Cuを0.5〜
    5wt%、Mgを0.3〜1.5wt%含有するアルミ
    ニウム合金からなり、 Al−Si共晶組織のSi晶の平均粒径が25μm以下
    であり、かつ、初晶のSi晶の平均粒径が30μm以下
    あるいは初晶のα晶の平均粒径が60μm以下であるミ
    クロ組織を有し、 360〜460℃の温度下、加工率30〜70%の熱間
    押出加工により成形されたアルミニウム合金鍛造用素
    材。
  2. 【請求項2】 前記アルミニウム合金は、さらに、Mn
    を0.2〜1.5wt%およびFeを0.04〜0.8
    wt%(MnとFeとの総量で0.25〜2wt%)、
    TiおよびBの少なくとも1種を総量で0.005〜5
    wt%含有する請求項1に記載のアルミニウム合金鍛造
    用素材。
  3. 【請求項3】 前記アルミニウム合金は、さらに、Ni
    を0.15〜2wt%および/またはCrを0.04〜
    0.4wt%含有する請求項1または請求項2に記載の
    アルミニウム合金鍛造用素材。
  4. 【請求項4】 Siを8〜22wt%、Cuを0.5〜
    5wt%、Mgを0.3〜1.5wt%含有するアルミ
    ニウム合金の溶湯を凝固時の冷却速度がすべての部位に
    おいて3℃/sec以上となるように鋳造して押出成形
    用ビレットを成形するビレット鋳造工程と、 前記押出成形用ビレットをコンテナ内に挿入し、360
    〜460℃の温度下、該押出成形用ビレットを該コンテ
    ナの後部より加圧して該コンテナの前端部に設けられた
    ダイス穴より加工率が30〜70%となるように押出し
    て鍛造用素材を成形する熱間押出加工工程と、 を含んでなるアルミニウム合金鍛造用素材の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記押出成形用ビレットは、断面が矩形
    状をなすように鋳造される請求項4に記載のアルミニウ
    ム合金鍛造用素材の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記コンテナの前部は、前記ダイス穴に
    向かって連続的に内部断面積が減少する形状をなし、前
    記熱間押出加工工程は、前記押出成形用ビレットが該コ
    ンテナの前部にて予備成形されつつ前記ダイス穴より押
    出される請求項4または請求項5に記載のアルミニウム
    合金鍛造用素材の製造方法。
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