JP4511156B2 - アルミニウム合金の製造方法と、これにより製造されるアルミニウム合金、棒状材、摺動部品、鍛造成形品および機械加工成形品 - Google Patents
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Description
上記の合金材は耐摩耗性及び強度向上を目的とし、Cuが多く含まれているが、陽極酸化処理皮膜の厚さ及び硬さを出す事が難しいとされている。
特許文献1はSi:6〜12%(重量%以下同じ)、Fe:0.1〜1.0%、Cu:1.0〜5.0%、Mn:0.1〜1.0%、Mg:0.4〜2.0%、Ti:0.01〜0.3%、Sr:0.005〜0.2%を含有し、不純物としてNiを0.05%未満に制限し、残部Al及び不純物からなり、マトリックス中に分散する共晶Si粒子の平均粒径が1.5〜5.0μmであり、該平均粒径の共晶Si粒子が5000個/mm2以上10000個/mm2未満存在していることを特徴としている。
したがって、従来のAl−Si系合金では、陽極酸化処理をせずに使用する部品が主力であり、陽極酸化皮膜を必要とする部品では、皮膜が形成されることができれば皮膜硬さを要求されないような部品(箇所)に適用されており、著しく適用に制限があり、市場の要求に応えることが困難とされていた。
尚、陽極酸化処理性の良い6000系合金及び5000系合金においては、皮膜を30μm以上施した場合、皮膜にクラックが発生し、使用に適さない状態となる。
そこで、本発明は、自動車他に用いる摺動部品であって陽極酸化皮膜の硬さ及び厚さを必要とされ、且つクラックが発生せず、耐摩耗性が要求される部品を提供することができるアルミニウム合金の製造方法と、これにより製造されるアルミニウム合金、棒状材、摺動部品、鍛造成形品および機械加工成形品を提案することを目的とする。
本発明は、まず、形成される陽極酸化皮膜中に共晶Si粒子が粒径0.4〜5.5μmの幅で存在し、皮膜厚さ30μm以上、皮膜硬さHv400以上となるように陽極酸化処理することを特徴とするアルミニウム合金の製造方法である。
また、形成される陽極酸化皮膜中に共晶Si粒子が粒径0.8〜5.5μmの幅で存在し、皮膜厚さ40μm以上、皮膜硬さHv400以上となるように陽極酸化処理することを特徴とするアルミニウム合金の製造方法である。
また、溶湯温度および鋳造速度を制御することで凝固速度を速めた連続鋳造方式で鋳造して鋳塊を得ることも好ましい。
また、このアルミニウム合金は、特殊な陽極酸化処理をしなくても十分な硬さが得られるので、陽極酸化処理をせずに使用する部品にも適用できる。
また、溶湯温度および鋳造速度を制御することで凝固速度を速めた連続鋳造方式で鋳造して鋳塊を得ることで、所望の共晶Siの発生状態を得られる。
Mn:0.1〜1%、Cr:0.04〜0.3%、Zr:0.04〜0.3%、V:0.01〜0.1%、のうちの1種又は2種以上を含有することが好ましい。
Ti:0.01〜0.3%、B:0.0001〜0.05%、Sr:0.001〜0.1%のうち1種又は2種以上を含有することが好ましい。
このような組成のアルミニウム合金は、加工性や陽極酸化処理性に優れ、前述の陽極酸化皮膜の硬さ(Hv400以上)を保持することが可能となる。
また、特殊な陽極酸化処理をしなくても十分な硬さが得られるので、陽極酸化処理をせずに使用する部品にも適用できる点からも好ましい。
Cuの含有はCuAl2粒子を析出してアルミニウム合金の強度と硬さに寄与するが、Cuの含有量が1%以上では、陽極酸化皮膜の硬さが低下する。より皮膜の硬さを増加するのに好ましくは0.5%未満、より好ましくは実質的に含有させない。
Cuは陽極酸化処理の際に溶解するが、溶解したCuイオンは貴な金属イオンのため再びアルミニウム合金母材の表面にCuが析出し、陽極酸化皮膜が形成し難く皮膜の緻密性も低下する。Cu量を抑制することで、陽極酸化皮膜の成形性と緻密性を向上し、皮膜硬さを向上することができる。
Niは、0.1%以下であることが好ましい。
そのためには、合金マトリックス中における共晶Siの分散状態を均一に特定することが重要であり、陽極酸化皮膜中に共晶Si粒子を存在させ、皮膜硬さに優れ、皮膜厚さを厚くしてもクラックが発生しないものとなる。
具体的には合金マトリックス中に分散する共晶Si粒子の粒径は、0.4〜5.5μm(好ましくは0.8〜5.5μm)である。その内の共晶Si粒子の粒径が0.8〜2.4μmの大きさで60%以上(好ましくは80%以上)を占め、尚かつマトリックス中に4000個/mm2以上40000個/mm2未満(より好ましくは10000個/mm2以上38000個/mm2未満)存在させることが好ましくは必要である。
尚、「共晶Si粒子の粒径が0.4〜5.5μm」とは、実質的な粒径分布が0.4〜5.5μmということであり、例えば95%以上、好ましくは98%以上が0.4〜5.5μmの範囲ということである。
また、上述のように共晶Si粒子の粒径の大きさが0.8〜2.4μmの大きさで60%以上を占めるが、60%未満、特に50%以下の場合には陽極酸化処理時に電流の流れやすい部分と流れにくい部分の差が大きくなって電流の流れが一定でないため皮膜厚さが不均一となる。
特に工業的に利用用途が広いSi:9〜12%(特に10.5±0.5%)の場合には80%以上が好ましい。
共晶Si粒子の粒径が0.8〜2.4μmの大きさのものが合金マトリックス中に4000個/mm2以上40000個/mm2未満であるものは、陽極酸化処理時に電流の流れが一定となるので、皮膜厚さ均一となる。アルミニウム合金マトリックス中に分散する共晶Si粒子はマトリックスより電流が流れ難いが、これを抑えることができるため、陽極酸化皮膜が均一に形成することができる。さらに、共晶Siが陽極酸化皮膜処理の際に溶解せずに皮膜中に残留するのを低減させ、皮膜中に残留した共晶Si粒子の周囲の皮膜の緻密性が低下するのを抑えることができるので、皮膜硬度の低下を抑えることができる。
合金中の共晶Siの発生状態は、所定の組成の合金溶湯を連続鋳造方式で凝固させる時に、溶湯温度や鋳造速度の影響を受ける。
そこで、共晶Si粒径が0.4〜5.5μmの幅となるように、溶湯温度や鋳造速度を制御することにより本発明のアルミニウム合金を得ることができる。また、共晶Si粒径が0.8〜2.4μmの大きさで60%以上となるように、溶湯温度や鋳造速度を制御することにより本発明のアルミニウム合金を得ることができる。
但し、本発明のアルミニウム合金ではCuが少なく、凝固時の固液共存領域が少なくなり、凝固しやすくなるため、凝固速度を従来より速めに制御する必要がある。例えば鋳造径φ72mmの場合の凝固速度は200〜350[mm/分]とすることが望ましい。
気体加圧ホットトップ連続鋳造方式は溶湯とモールド間を気体加圧しているため鋳造速度を速くすることができるので、共晶Siの粒径を所定の状態に制御した本発明のアルミニウム合金を容易に製造することができるので好ましい。
そこで、共晶Si粒径が0.4〜5.5μmの幅で共晶Si粒子が粒状となるように、均質化温度や均質化時間を制御することにより本発明のアルミニウム合金を得ることができる。また、共晶Si粒径が0.8〜2.4μmの大きさで60%以上で共晶Si粒子が粒状となるように、均質化温度や均質化時間を制御することにより本発明のアルミニウム合金を得ることができる。
共晶Si粒子が粒状となることで、均質化処理前の針状形状より鋳塊の加工性が向上する。さらに陽極酸化処理性も向上する。
均質化処理は、上記条件を満足する範囲で特に限定するものではないが、例えば450℃以上500℃未満(より好ましくは480℃以上)の温度で4時間以上行えば良い。
初晶Siの粒子分布位置:鋳塊の外周から鋳造径の半径の20%以下の位置までに初晶Siがないこと(面積占有率0.2%以下)。
初晶Siの平均粒径:30μm以下。
初晶Siの面積占有率:0.8%以下。
例えばSi量を12%以下とし、気体加圧ホットトップ連続鋳造時、気体加圧量や鋳造速度や溶湯温度の条件を制御すれば初晶Siの上記の状態を得ることができるため好ましい。
棒状材から成形品を作製するには、機械加工、鍛造加工などを適宜に組み合わせて施すことができるが、鍛造加工の前又は機械加工の前に、押出し加工又は引抜き加工を施すことが好ましい。押出し加工又は引抜き加工を施されたものは、延性が向上し、加工性や製品の延性の点で好ましい。また、直径20mm以下の丸棒は連続鋳造方式では得られにくいが、押出し又は引抜き加工では容易に得られる。
押出し加工は、特に限定するものではないが、例えば2500t押出機を用いて押出し速度を最高8m/minで行えば良い。
皮膜厚さは、浴温、電圧、時間を調整することにより、所定の厚さのものを得ることができる。
(a)スクロール、ピストンなどの空調機器用コンプレッサー部品
(b)自動車のエアサスペンション用コンプレッサーピストン
(c)スプール,スリーブなどの自動車のエンジン,トランスミッション,ABS用油圧部品
(d)自動車のブレーキマスターシリンダーピストン/キャリパーピストン
(e)自動車のクラッチシリンダーピストン
(f)自転車のブレーキキャリパーボディ
そして、得られた耐摩耗性アルミニウム合金は、その用途を限定するものではないが、自動車部品の中でも、ブレーキキャリパーピストン及びエアサスペンション用コンプレッサーピストン、その他皮膜硬さを必要とし、クラックのない皮膜を望む部品に好適に利用することができる。
以下、本発明の実施例を比較例と対比して説明する。
<試験1>
〔実施例1〕
表1に示す組成を有するアルミニウム合金を気体加圧ホットトップ連続鋳造方式でビレット(直径8インチ)を鋳造し、このビレット鋳塊を490℃で12時間均質化処理した後、間接押出機を用いて押出し加工を行ない、直径44mmの押出棒を作成し、常法に従ってT6処理を施し、この押出棒を試験材として、以下に示す基準にて陽極酸化処理性、皮膜硬さ、皮膜のクラック発生の有無、耐摩耗性、機械的性質について評価した。また試験材断面並びに陽極酸化皮膜中の共晶Si粒子及び粒径の大きさ分布状態についても画像解析装置を用いて以下に示す条件にて測定した。
測定はサンプルを任意の大きさに切断し、このサンプルを研磨用の樹脂に埋め込み、共晶Si粒子を測定可能な範囲までミクロ研磨を行い測定した。
測定条件:光学顕微鏡に接続したルーゼックス,画面上の倍率:1240倍,20視野連続測定結果より算出
皮膜厚さ:44〜47μm
尚、表1において、本発明における条件を外れたものには下線を付した。
「陽極酸化処理性」
押出棒の押出方向に垂直な断面を、切削加工にて表面粗さを一定にした平滑な面とし、評価用サンプルとした。
陽極酸化処理条件として、電解浴として15wt%硫酸を使用し、サンプル表面に目標40μm厚さで、陽極酸化皮膜が形成されるように、浴温、電圧、時間を設定して陽極酸化処理を行なった。
得られた評価サンプルの断面を観察し、任意の10mm長さで膜厚を測定し、実際に形成された膜の平均膜厚により陽極酸化処理性を評価した。尚、同一条件でより厚い膜が形成されたものが陽極酸化処理性が良い。結果は表3に示した。
○ : 平均膜厚40μm以上
× : 平均膜厚33μm以下
△ : ○と×の間
陽極酸化処理をした評価サンプルを任意の大きさに切断し、樹脂に埋め込み陽極酸化皮膜硬さが測定可能な範囲までミクロ研磨を施し、皮膜の硬さを測定し評価した。結果は表3に示した。
○ : 平均膜厚硬さ、HV:400以上
× : 平均膜厚硬さ、HV:330以下
△ : ○と×の間
大越式摩耗試験機を用いて摩耗速度1m/s、摩耗距離200m、荷重3.2kg、相手材S50C(HV750)の条件で試験を行ない、比摩耗量で比較した。結果は表2に示した。
○ : 6.0×10-7mm2/kg未満
× : 9.0×10-7mm2/kg超
△ : 6.0〜9.0×10-7mm2/kg
陽極酸化処理をした評価サンプルを光学顕微鏡で表面状態を観察し、クラックの有無を確認し評価した。結果は表3に示した。
○ : 皮膜にクラック無し
× : 皮膜にクラック有り
押出棒材の押出方向に平行に棒材の中央部よりJIS4号試験片を採取し、引張試験を行なった。好ましい値である引張強さ:310(N/mm2)、耐力:230(N/mm2)を合格基準とした。結果は表2に示した。
表1に示した組成とした以外は実施例1と同様である。陽極酸化皮膜の形成条件は実施例1と同じである。
これに対し、比較例1ではSi量が少ないため、耐摩耗性で劣っていた。さらに、比較例1,2,4,5,8では、Cu量が多く、陽極酸化処理性が劣り、皮膜硬さも劣っていた。
表5に示す組成を有するアルミニウム合金を特公昭54−42827号公報にて開示されている気体加圧ホットトップ連続鋳造方式でφ72mm棒材を鋳造し、その後、棒材を490℃で4時間均質化処理し、表6に示す条件で常法に従ってT6処理(500〜510℃、2〜3時間の溶体化処理、その後水冷した。さらに180〜190℃、5〜6Hrの時効処理)したものを試験材とし、又は連鋳(連続鋳造)棒材を同様に均質化処理後、鋳肌部を面削除去し、所定の長さに切断し、焼鈍処理し、ボンデ処理した後、最外径68mm、その内径52mm、内側の外径32mm、その内径15mm、高さ40mm、底厚10mmの2重カップ状に鍛造し、表8に示す条件で常法に従ってT6処理(500〜510℃、2〜3時間の溶体化処理、その後水冷した。さらに180〜190℃、5〜6Hrの時効処理)を施した鍛造品を試験材として、さらに機械加工後に、以下に示す基準にて陽極酸化処理性、皮膜硬さ、皮膜のクラック発生の有無、耐摩耗性、機械的性質について評価した。また試験材断面並びに陽極酸化皮膜中の共晶Si粒子及び粒径の大きさ分布状態についても画像解析装置を用いて以下に示す条件にて測定した。
測定はサンプルを任意の大きさに切断し、このサンプルを研磨用の樹脂に埋め込み、共晶Si粒子を測定可能な範囲までミクロ研磨を行い測定した。
測定条件:画像処理装置の画面上の倍率:1240倍,20視野連続測定結果より算出
皮膜厚さ:25〜47μm
尚、表5において、本発明における条件を外れたものには下線を付した。
表5に示す組成を有する特開昭61−33735号公報にて開示されている水平連続鋳造法によっでφ30mm棒材を鋳造し、その後、棒材を490℃で4時間均質化処理し、表20に示す条件で常法に従ってT6処理(500〜510℃、2〜3時間の溶体化処理、その後水冷した。さらに180〜190℃、5〜6Hrの時効処理)したものを試験材とし、又は連鋳棒材を同様に均質化処理後、鋳肌部を面削除去し、所定の長さに切断し、焼鈍処理し、ボンデ処理した後、外径32mm、内径15mm、高さ27mm、底厚8mmのカップ状に鍛造し、表8に示す条件で常法に従ってT6処理(500〜510℃、2〜3時間の溶体化処理、その後水冷した。さらに180〜190℃、5〜6Hrの時効処理)を施した鍛造品を試験材として、さらに機械加工後に、以下に示す基準にて陽極酸化処理性、皮膜硬さ、皮膜のクラック発生の有無、耐摩耗性、機械的性質について評価した。また試験材断面並びに陽極酸化皮膜中の共晶Si粒子及び粒径の大きさ分布状態についても画像解析装置を用いて以下に示す条件にて測定した。
測定はサンプルを任意の大きさに切断し、このサンプルを研磨用の樹脂に埋め込み、共晶Si粒子を測定可能な範囲までミクロ研磨を行い測定した。
測定条件:画像処理装置の画面上の倍率1240倍,20視野連続測定結果より算出
皮膜厚さ:25〜47μm
尚、表5において、本発明における条件を外れたもの(比較例)には下線を付した。
表5に示す組成を有するアルミニウム合金を特公昭54−42827号公告にて開示されている気体加圧ホットトップ連続鋳造方式でビレット(直径8インチ)を鋳造した。その後このビレット鋳塊を490℃で4時間均質化処理した。その後、鋳塊を350℃に加熱後、間接押出機を用いて押出し加工を行ない、直径32mmの押出棒を作成し、表20に示す条件で常法に従ってT6処理(500〜510℃、2〜3時間の溶体化処理、その後水冷した。さらに180〜190℃、5〜6Hrの時効処理)を施した押出棒を試験材とし、又は同間接押出を行った押出棒を直径39.2mmに引抜き、表6に示す条件で常法に従ってT6処理(500〜510℃、2〜3時間の溶体化処理、その後水冷した。さらに180〜190℃、5〜6Hrの時効処理)を施した引抜棒を試験材とし、又は、同押出棒から直径39.2mmに引抜いた引抜棒を所定の長さに切断し、焼鈍処理し、ボンデ処理した後、外径32mm、内径15mm、高さ27mm、底厚8mmのカップ状に鍛造し、表8に示す条件で常法に従ってT6処理(500〜510℃、2〜3時間の溶体化処理、その後水冷した。さらに180〜190℃、5〜6Hrの時効処理)を施した鍛造品を試験材として、機械加工した後に、以下に示す基準にて陽極酸化処理性、皮膜硬さ、皮膜のクラック発生の有無、耐摩耗性、機械的性質について評価した。また試験材断面並びに陽極酸化皮膜中の共晶Si粒子及び粒径の大きさ分布状態についても画像解析装置を用いて以下に示す条件にて測定した。
測定はサンプルを任意の大きさに切断し、このサンプルを研磨用の樹脂に埋め込み、共晶Si粒子を測定可能な範囲までミクロ研磨を行い測定した。
測定条件:画像処理装置の画面上の倍率1240倍,20視野連続測定結果より算出
皮膜厚さ:25〜47μm
尚、表5において、本発明における条件を外れたものには下線を付した。
「陽極酸化処理性」
押出棒の押出方向に垂直な断面を、切削加工にて表面粗さを一定にした平滑な面とし、評価用サンプルとした。
陽極酸化処理条件として、電解浴として15wt%硫酸を使用し、サンプル表面に目標30μm厚さで、陽極酸化皮膜が形成されるように、浴温、電圧、時間を設定して陽極酸化処理を行なった。
得られた評価サンプルの断面を観察し、任意の10mm長さで膜厚を測定し、実際に形成された膜の平均膜厚により陽極酸化処理性を評価した。尚、同一条件でより厚い膜が形成されたものが陽極酸化処理性が良い。結果は、鍛造処理をしていないものについては表7に、鍛造処理したものについては表9に示した。
○: 平均膜厚30μm以上
×: 平均膜厚30μm未満
尚、前記試験1では目標厚さを40μmとしたが、この試験2〜4ではサンプル総数が多いため、目標厚さを30μmとした。そのため、評価基準も上記のとおりとした。
陽極酸化処理をした評価サンプルを任意の大きさに切断し、樹脂に埋め込み陽極酸化皮膜硬さが測定可能な範囲までミクロ研磨を施し、皮膜の硬さを測定し評価した。結果は鍛造処理をしていないものについては表6に、鍛造処理したものについては表8に示した。
大越式摩耗試験機を用いて摩耗速度1m/s、摩耗距離200m、荷重3.2kg、相手材S50C(Hv750)の条件で試験を行ない、比摩耗量で比較した。結果は鍛造処理をしていないものについては表6に、鍛造処理したものについては表8に示した。
○ : 6.0×10-7mm2/kg未満
× : 9.0×10-7mm2/kg超
△ : 6.0〜9.0×10-7mm2/kg
陽極酸化処理をした評価サンプルを10倍以上の拡大鏡を通して目視で表面状態を観察し、クラックの有無を確認し評価した。結果は鍛造処理をしていないものについては表7に、鍛造処理したものについては表9に示した。
結果は表3に示した。
○ : 皮膜にクラック無し
× : 皮膜にクラック有り
棒材の長手方向に平行に棒材の中央部よりJIS4号試験片を採取し、引張試験を行なった。好ましい値である引張強さ:310(N/mm2)、耐力:230(N/mm2)を合格基準とした。結果は表6に示した。
表1に示す組成を有する実施例101〜104,121〜125,141〜144,150〜153の連鋳材及び押出材、引抜材、さらにこれらの鍛造品(実施例201〜204,221〜225,241〜244,250〜253)を機械加工にてブレーキキャリパーピストンを作成し、常法に従ってT6処理を施し、表面に38μm以上の陽極酸化皮膜を形成した。このブレーキキャリパーピストンを4輪車のブレーキマスターシリンダーに組み込み、ブレーキ作動を繰り返して焼き付きやロックの状況を調べた。比較のために、表1に示す組成を有する比較例101,104,108,109,111,114,115,118〜120,124〜126のアルミニウム合金を用いてブレーキキャリパーピストンを同様に試験した。
その結果、一般的な規格である50万回のブレーキ作動では、実施例101〜153、実施例201〜253のブレーキキャリパーピストンも比較例も問題を生じなかった。その後もブレーキ作動回数を増やして試験を継続したところ、100万回では比較例で筋状の傷が発生したが、実施例11〜153、実施例201〜253のブレーキキャリパーピストンでは全く傷が発生しなかった。また、表1に示す組成を有する比較例125,126のアルミニウム合金を用いたものは、表面にクラックが発生していたので、試験に供することができなかった。
(b)自動車のエアサスペンション用コンプレッサーピストン
(c)スプール,スリーブなどの自動車のエンジン,トランスミッション,ABS用油圧部品
(d)自動車のブレーキマスターシリンダーピストン/キャリパーピストン
(e)自動車のクラッチシリンダーピストン
(f)自転車のブレーキキャリパーボディ
等、に用いることができ、特にブレーキキャリパーピストン及びエアサスペンション用コンプレッサーピストン、その他皮膜硬さを必要とし、クラックのない皮膜を望む部品に好適に利用することができる。
Claims (14)
- Si:5〜12%(質量%以下同じ)、Fe:0.1〜1%、Cu:1%未満、Mg:0.3〜1.5%を含有し、残部Al及び不純物からなる組成のアルミニウム合金を、鋳塊の外周から鋳造径の半径の20%以下の位置まで不存在であり、平均粒径が30μm以下、面積占有率が0.8%以下となる初晶Siの状態を得るように、かつ、マトリックス中に分散する共晶Si粒子の粒径が0.4〜5.5μmの幅で存在し、その内の共晶Si粒子の粒径が0.8〜2.4μmの大きさで60%以上を占め、尚かつ共晶Si粒子が4000個/mm 2 以上40000個/mm 2 未満存在するように、連続鋳造方式で鋳造して鋳塊を得、この鋳塊を均質化処理した後、押出し加工及び/又は鍛造加工及び/又は機械加工し、形成される陽極酸化皮膜中に共晶Si粒子の粒径が0.4〜5.5μmの幅で存在し、皮膜厚さ30μm以上、皮膜硬さHv400以上となるように陽極酸化処理する、ことを特徴とするアルミニウム合金の製造方法。
- Si:5〜12%(質量%以下同じ)、Fe:0.1〜1%、Cu:1%未満、Mg:0.3〜1.5%を含有し、残部Al及び不純物からなる組成のアルミニウム合金を、溶湯温度および鋳造速度を制御することで凝固速度を速めるとともに、マトリックス中に分散する共晶Si粒子の粒径が0.4〜5.5μmの幅で存在し、その内の共晶Si粒子の粒径が0.8〜2.4μmの大きさで60%以上を占め、尚かつ共晶Si粒子が4000個/mm 2 以上40000個/mm 2 未満存在するように、連続鋳造方式で鋳造して鋳塊を得、この鋳塊を均質化処理した後、押出し加工及び/又は鍛造加工及び/又は機械加工し、形成される陽極酸化皮膜中に共晶Si粒子の粒径が0.4〜5.5μmの幅で存在し、皮膜厚さ30μm以上、皮膜硬さHv400以上となるように陽極酸化処理する、ことを特徴とするアルミニウム合金の製造方法。
- 前記陽極酸化処理を、形成される陽極酸化皮膜中に共晶Si粒子の粒径が0.8〜5.5μmの幅で存在し、皮膜厚さ40μm以上、皮膜硬さHv400以上となるように行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のアルミニウム合金の製造方法。
- 前記アルミニウム合金の組成中Siが9〜12%の場合に、前記マトリクス中に分散する共晶Si粒子の粒径が0.8〜2.4μmの大きさで80%以上を占めることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のアルミニウム合金の製造方法の製造方法。
- 前記アルミニウム合金の組成において、Cuを実質的に含有しないことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載のアルミニウム合金の製造方法。
- 前記アルミニウム合金の組成において、Mn:0.1〜1%、Cr:0.04〜0.3%、Zr:0.04〜0.3%、V:0.01〜0.1%、のうちの1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載のアルミニウム合金の製造方法。
- 前記アルミニウム合金の組成において、Ti:0.01〜0.3%、B:0.0001〜0.05%、Sr:0.001〜0.1%のうち1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載のアルミニウム合金の製造方法。
- 前記連続鋳造方式で鋳造する鋳塊が棒状材であることを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載のアルミニウム合金の製造方法。
- 前記連続鋳造方式で鋳造した鋳塊が棒状材であって、前記押出し加工及び/又は鍛造加工及び/又は機械加工を行う前に、前記棒状材を押出し加工又は押出し、引抜き加工することを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載のアルミニウム合金の製造方法。
- 請求項1乃至9の何れか一項に記載のアルミニウム合金の製造方法により製造されることを特徴とするアルミニウム合金。
- 請求項1乃至9の何れか一項に記載のアルミニウム合金の製造方法により製造されることを特徴とする棒状材。
- 請求項1乃至9の何れか一項に記載のアルミニウム合金の製造方法により製造されることを特徴とする摺動部品。
- 請求項1乃至9の何れか一項に記載のアルミニウム合金の製造方法により製造されることを特徴とする鍛造成形品。
- 請求項1乃至9の何れか一項に記載のアルミニウム合金の製造方法により製造されることを特徴とする機械加工成形品。
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