JPH10110231A - 耐摩耗性,鋳造性,鍛造性に優れた鋳造・鍛造用アルミ合金材及びその製造法 - Google Patents
耐摩耗性,鋳造性,鍛造性に優れた鋳造・鍛造用アルミ合金材及びその製造法Info
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Abstract
性及び機械的特性に優れたアルミ合金材を得る。 【効果】 このアルミ合金材は、Si:3.0〜7.0
%,Mg:0.6〜1.5%,Mn:0.1〜0.5
%,Cu:0.3〜0.9%,Cr:0.3〜0.5
%,Fe:0.25%以下,Ti:0.01〜0.2
%,B:0.001〜0.01%を含み、必要に応じて
更にSr:0.001〜0.05%,Sb:0.05〜
0.15%の1種又は2種を含み、残部が実質的にAl
の組成をもつ。鋳造時の共晶Siの平均長さは、3〜6
μmであることが好ましい。型鋳造で製造された予成形
体は、500〜535℃に2〜12時間加熱する均質化
処理が施される。
Description
等に使用され、鍛造性,耐摩耗性に優れた鋳造・鍛造用
合金材及びその製造方法に関する。
たモールド中で溶湯を連続的に凝固させた連鋳棒や、連
鋳棒から押出加工された丸棒等が一般的に使用されてい
る。しかし、これらの素材を使用して複雑形状の製品を
成形する場合、歩留りが低く、コスト高になる。そこ
で、最近では金型やダイカスト等で製造した予成形体を
1工程の鍛造で成形する鋳造・鍛造法が普及してきた。
すなわち、この鋳造・鍛造法では、鋳造時に極力最終製
品に近い予成形体に鋳造し、押出工程を経ることなく予
成形体を熱間鍛造している。予成形体を1工程の鍛造で
成形するためには、鍛造の前工程で健全な予成形体が得
られることが重要であり、鋳造性の良好な合金の開発が
要求される。しかしながら、現在のアルミ合金では、鋳
造性,鍛造性,製品強度の全てを満足する材料は実用化
されていない。たとえば、現在鍛造に用いられているア
ルミ合金としては、JIS A6061,A6151等
のAl−Mg−Si系合金やJISA2017,A70
75等の高強度の展伸材がある。しかし、これらの材料
は、連続鋳造材や押出材を鍛造素材として使用するの
で、金型鋳造によって三次元形状の予成形体を得ようと
すると、鋳造時の割れ,流動性不良等に起因して鋳造欠
陥が発生し易く、目的とする予成形体形状が得られな
い。また、材料内部に欠陥を内在しやすいため、鍛造用
素材としては不向きである。
素材として、本発明者等は、Si,Sb,Fe,Ti,
Mg,B,Cuの間で成分バランスを図り、展伸用合金
に匹敵する引張強さをもつアルミ合金材を特願平4−1
43405号で提案した。このアルミ合金は、押出性,
鍛造性を確保するためCr及びMgの含有量を低く抑え
ている。しかし、Cr含有量が少ないことから、鍛造後
のT6処理時の溶体化処理で再結晶粒の粗大化が散見さ
れる。また、特開平8−3675号公報で紹介した鋳造
・鍛造用合金では、鍛造性を確保するためにSi含有量
を調整しているが、Si含有量が低いために鋳造性が十
分でない。また、耐摩耗性も十分でない。本発明は、先
に提案した2種類の合金を改良したものであり、他の合
金成分との関連でSi,Crを増量させることにより鋳
造性,鍛造性等を改善し、複雑形状の予成形体が得ら
れ、溶体化処理時に再結晶粒の粗大化が抑制され、耐摩
耗性に優れ、且つ予成形体を均質化処理することにより
更に鍛造性にも優れたアルミ合金材を得ることを目的と
する。
ルミ合金材は、その目的を達成するため、Si:3.0
〜7.0重量%,Mg:0.6〜1.5重量%,Mn:
0.1〜0.5重量%,Cu:0.3〜0.9重量%,
Cr:0.3〜0.5重量%,Fe:0.25重量%以
下,Ti:0.01〜0.2重量%,B:0.001〜
0.01重量%を含み、残部が実質的にAlの組成をも
つことを特徴とする。この鋳造・鍛造用アルミ合金材
は、更にSr:0.001〜0.05重量%,Sb:
0.05〜0.15重量%の1種又は2種を含み、鋳造
時の共晶Siの平均長さが3〜6μmであることが好ま
しい。この鋳造・鍛造用アルミ合金材は、溶製後、型鋳
造で予成形体を製造し、予成形体を500〜535℃に
2〜12時間加熱する均質化処理を施した後、強制冷却
し、次いで鍛造上りの材料表面温度が400〜500℃
となる条件下で熱間鍛造し、更にT6処理を施し、機械
加工することにより製造される。予成形体は、ガス含有
量を0.30cc/100g以下に規制することが好ま
しい。また、溶製に際しては、アルゴン又は窒素と塩素
との混合ガス雰囲気中で合金溶湯を脱ガスすることが好
ましい。なお、予成形体が単純な形状で鍛造が容易な場
合には、均質化処理及び強制冷却を省略することも可能
である。
形状の予成形体を製造し、押出工程を経ずに鍛造で最終
形状に成形するため、鋳造性,鍛造性を改良した合金設
計を採用している。なかでも、Si含有量の増加は、湯
流れ性,鋳造割れ,ヒケ性等を有効に改善し、複雑な形
状をもつ予成形体の製造を可能にしている。Si含有量
の増加は、耐摩耗性を改善する上でも有効である。ま
た、Cr含有量の増加により、鍛造後のT6処理時の溶
体化処理において再結晶粒の粗大化が抑制され、材料に
伸びが付与される。Si,Crの増量による鍛造性の劣
化は、予成形体が複雑形状で鍛造性が悪い場合、予成形
体を高温で均質化処理することにより解消される。均質
化処理は、従来の鋳造・鍛造法で使用される予成形体で
は実施されていないが、押出工程が省略できることから
結果としてコスト節減に寄与している。
成分,含有量等を説明する。 Si:3.0〜7.0重量% 複雑な予成形体を鋳造する際の鋳型に対する湯流れを良
くし、鋳造割れ,ヒケ性を改善する作用を呈し、健全な
予成形体が鋳造される。また、製品の耐摩耗性を向上す
る作用もある。このような作用は、3.0重量%以上の
Si含有で顕著になる。しかし、7.0重量%を超える
多量のSiが含まれると、伸び,靭性が劣化し、鍛造加
工性が悪くなる。 Mg:0.6〜1.5重量% T6処理で微細なMg2 Siをマトリックスに析出さ
せ、材料強度を向上させる作用を呈する合金成分であ
る。Mg含有量が0.6重量%未満では強度向上作用が
少なく、1.5重量%を超えると鍛造時の加工性が劣化
する。
制し、強度,伸び,靭性を向上する作用を呈する合金成
分である。Mnの作用は、0.1重量%以上の含有量で
顕著になる。しかし、0.5重量%を超える多量のMn
が含まれると、Al−Si−Fe−Mn系等の硬質で脆
い金属間化合物の析出量が多くなり、加工性に悪影響を
及ぼす。この点、Mn含有量を0.1〜0.5重量%の
範囲に維持すると、Al−Fe−Si系化合物が針状か
ら塊状に変わり、これによっても靭性が向上する。 Cu:0.3〜0.9重量% T6処理の時効処理時にCuAl2 等のAl−Cu系,
Al−Cu−Mg系等の析出物となって材料強度を向上
する作用を呈する。Cuの作用は、0.3重量%以上の
含有量で顕著になる。しかし、0.9重量%を超える多
量のCuが含まれると、耐食性が劣化する。
粒の粗大化を抑制し、強度,伸び,靭性を向上する作用
を呈する。Crの作用は、0.3重量%以上で顕著にな
り、Mnとの併用添加により一層大きな効果が得られ
る。しかし、0.5重量%を超える多量のCrが含まれ
ると、加工性が劣化する。 Fe:0.25重量%以下 不純物としてアルミ合金に混入する成分であり、Al−
Fe−Si系化合物となってマトリックスに分散し、伸
び,靭性,耐食性等に悪影響を与える。そのため、Fe
含有量は少ないほど好ましいが、過度にFe含有量を下
げることは合金の溶製を困難にする。したがって、本発
明においては実質的な悪影響がみられない0.25重量
%にFe含有量の上限を設定した。
に、塑性加工に伴うオレンジピール等の肌荒れが鍛造品
の表面に発生することを防止する作用を呈する合金成分
である。このような作用は、0.01重量%以上のTi
含有量で顕著になる。しかし、0.2重量%を超える多
量のTi含有量は、TiB2 ,TiAl3 等の巨大な晶
出物の発生を促進させ、鍛造加工時の割れ,切削加工時
の表面疵を発生させる原因となる。 B:0.001〜0.01重量% Tiと同様に、鋳造時の結晶粒の微細化に有効な合金成
分であり、0.001重量%以上でその効果が発現され
る。しかし、0.01重量%を超えて多量にTiが含ま
れると、巨大なTiB2 等の晶出物が発生し易くなり、
鍛造,切削等の加工性が低下する。
Siを微細化し、衝撃値や伸びを向上させる作用を呈す
る。また、Naのように過度の微細化を生じさせること
がないので、耐摩耗性が損なわれない。Srの作用は、
0.001重量%以上の含有量で顕著になる。しかし、
0.05重量%を超える多量の含有量では、金属間化合
物の発生に起因した加工性の低下やアルミ溶湯に対する
ガス,介在物等の介入を促進させる原因となる。 Sb:0.05〜0.15重量% 必要に応じて添加される合金成分であり、Srと同様に
鋳造時の共晶Siを微細化する作用を呈し、特に鋳造・
鍛造用合金においては伸びを改善する。また、Naのよ
うに過度の微細化を生じさせることがないので、耐摩耗
性が損なわれない。Sb添加による微細化作用は、0.
05重量%以上の含有量で顕著になる。しかし、0.1
5重量%を超える多量の含有量は、Sb2 Mg3 等の金
属間化合物の発生を促進させ、鍛造性を劣化させる。
際しては、通常のAl−Si系合金の鋳造に比較して製
造条件を高度に制御することが重要である。具体的に
は、700〜750℃でアルミ合金を溶製し、特に合金
溶湯のガス含有量を厳しくコントロールする。このとき
の製造条件が不適当であると、鍛造時に割れが発生し易
く、均質化処理,T6処理でも製品にフクレが発生し易
くなる。たとえば、750℃を超える高温で溶製する
と、ガス含有量が増加し、鍛造時の割れや製品のフクレ
の原因となる。溶製された合金溶湯は、アルゴン又は窒
素と塩素ガスとの混合ガス雰囲気中で、通常の鋳物に比
較して十分に脱ガスされる。通常のAl−Si系鋳物の
ガス含有量は0.30〜0.35cc/100gである
が、本発明に従ったアルミ合金材では多くても0.25
〜0.30cc/100gのオーダまでガス含有量を低
減する。これにより、均質化処理時にフクレの発生が防
止される。
造温度を700〜750℃に設定する。鋳造方式として
は、重力鋳造,溶湯鍛造法等が好ましく、ダイカスト法
はガス含有量が多くなるので好ましくない。鋳型の材質
は、金属,グラファイト等がある。鋳型温度は、常温〜
450℃の範囲で設定されるが、常に一定温度であるこ
とが重要であり、この温度にバラツキがあると鋳造組織
が変動し、後続工程における制御が難しくなる。鋳造時
の溶湯の冷却速度は、粗大晶出物の発生を防止するため
0.3℃/秒以上に設定される。0.3℃/秒よりも遅
い冷却速度では、粗大な晶出物が結晶粒界に晶出し、鍛
造時の加工性に悪影響を及ぼす。
欠陥がないため、押出工程を経ることなく熱間鍛造でき
る素材となる。予成形体における共晶Siが平均長さで
3〜6μmに調整されていると、鍛造時のメタル流動が
スムーズに行われ、割れやオレンジピール等の鍛造欠陥
が発生しない。他方、共晶Siの平均長さが3μm未満
では、小さすぎて均質化処理や熱処理によって耐摩耗性
に有効なSi粒子数が減少してしまう。逆に、平均長さ
が6μmを超える共晶Siでは、大きいことにより熱間
鍛造時に共晶Si粒子が破断したり、メタル流動がスム
ーズに行われず、鋳造欠陥が発生し易い。
時間加熱 鋳造で得られた予成形体を均質化処理することにより、
鋳造時に結晶粒界に晶出したAl2 Cu,Mg2 Si等
の晶出物がマトリックスに固溶する。また、均質化処理
によって、Al−Fe−Si−Cr,Al−Fe−Mn
−Si系等の金属間化合物の晶出物を極力マトリックス
に固溶させる。これにより、熱間鍛造時の変形抵抗が少
なく、加工性が向上する。また、平均長さ3〜6μmの
共晶Siが球状化し、熱間鍛造時の変形抵抗が小さくな
る。均質化処理の条件についてみると、500℃未満の
処理温度や2時間に達しない加熱時間では、固溶化が十
分でなく、鋳造歪みの除去も不十分である。しかし、5
35℃を超える処理温度では、予成形体に部分的融解が
発生する。また、12時間を超える加熱時間では、加熱
処理の長期化に見合った均質化の効果上昇がみられな
い。均質化処理された予成形体は、その組織を維持する
ため均質化処理後に強制冷却される。このときの冷却速
度は200℃/時以上が必要であり、強制空冷,油中冷
却,水中冷却等が採用される。なお、鋳造で製造された
予成形体の形状が簡単なものでは鋳造欠陥が発生せず、
熱間鍛造時にもメタルの流動が単純なことから、均質化
処理を施さなくても熱間鍛造が可能である。
0〜500℃ 予成形体の熱間鍛造に先立って、合金元素を極力固溶さ
せるため、400〜500℃に加熱する。他方、熱間鍛
造用の金型を材料の大きさ及び加工率との兼ね合いで3
00〜450℃に予熱しておき、加工率30〜80%で
熱間鍛造する。このとき、鍛造上りの材料表面温度が4
00〜500℃,好ましくは450〜500℃となるよ
うに加熱条件を選定することが重要である。このように
熱間鍛造を高温条件に設定することにより、鍛造時の変
形抵抗が低下して鍛造性が良くなり、またCr,Mn系
の化合物を微細で均一に分布させることができる。その
結果、次のT6処理時の溶体化において、再結晶粒の粗
大化が防止される。これに対し、予成形体の加熱温度が
500℃を超えると鍛造時の昇温で合金材が部分溶解す
る虞れがある。400℃以下では変形抵抗が高くなり、
またCr,Mn系の化合物が微細に析出しないため、T
6処理時の溶体化で再結晶粒が粗大化することがある。
は、溶体化処理によりCu,Mg,Si等を固溶体化さ
せ、水焼入れした後、時効処理される。溶体化では、た
とえば熱間鍛造品が500〜530℃に2〜6時間加熱
される。時効処理では、150〜200℃に4〜12時
間加熱される。時効処理によりAl2 Cu,Mg2 Si
等が析出し、材料強度が上昇する。また、マトリックス
に固溶していたAl−Si−Fe−Cr系,Al−Mn
−Fe系等の金属間化合物も、少量ではあるが時効処理
により細かく析出し、材料の強度を向上させる。時効処
理されたAl合金材は、次いで機械加工され、必要に応
じて表面処理が施され、最終製品となる。
1に示す組成をもつ各種溶湯を720℃で溶製した。
10kgを表2の条件で脱ガス処理し、400℃に加熱
保持した金型に注湯し、0.4℃/秒で冷却した。金型
には、高さ31mm,幅70mm,長さ130mmのサ
イズをもつ鋳鉄製のブロック状型を使用した。得られた
ブロック状の鋳塊からサンプルを切り出し、ガス含有量
を測定した。測定結果を、表2に併せ示す。表2から明
らかなように、窒素だけを使用した脱ガス処理では鋳塊
のガス含有量が多いが、アルゴン又は塩素−窒素の混合
ガスを使用した脱ガスでは、ガス含有量が0.30cc
/100g以下になっていた。そのため、530℃×6
時間の均熱処理を施したところ、鋳塊A,Bではフクレ
が発生しなかったのに対し、鋳塊Cではフクレが発生し
た。
及ぼす影響を調査するため、N2 −Cl2 混合ガスを用
いて試料番号3,7〜9の溶湯を720℃で脱ガスした
後、実施例1と同じ金型に鋳込み、得られた鋳塊の鋳造
組織を調べた。調査結果である共晶Siの平均長さを表
3に示すように、Sr,Sbの添加によって共晶Siが
微細化されていることが判る。
6μmであると耐摩耗性を損なわず且つ靭性も良好であ
るとの知見をすでに得ている(たとえば、特願昭63−
260462号参照)。本発明に従った試料番号3,7
〜9の鋳塊は、何れも共晶Siの平均長さ3〜6μmの
要件を満足しており、耐摩耗性及び靭性が良好なものと
いえる。
試料番号1〜5の溶湯を720℃で脱ガスした後、40
0℃に加熱保持した鋳鉄製のブロック状金型に鋳込ん
だ。得られた鋳塊から直径14mm,高さ21mmのサ
ンプルを切り出し、As Cast 材及び530℃×6時間の
均熱処理後に強制空冷した材料(HO材)を用意した。
各材料を350℃,400℃,450℃に加熱し、圧縮
試験法で熱間変形抵抗を調べた。圧縮試験法では、図1
に示すように350℃,400℃又は450℃に加熱保
持した上金型1と下金型2との間にAs Cast 材又はHO
材3を挟み、圧縮速度100mm/秒でAs Cast 材又は
HO材3を圧縮した。そして、各材料について図2の荷
重−変位曲線を求め、この荷重−変位曲線から加工率5
0%での所要荷重を読み取り、計算で求められた理想断
面積で除すことにより熱間変形抵抗値を算出した。調査
結果を表4に示す。なお、圧縮試験直後の材料表面温度
は、サンプルが小さいことからほぼ型温に近い値であっ
た。
ast 材に比較してHO材の変形抵抗が小さく、試験温度
が高温になるほど変形抵抗が小さくなっている。また、
Si含有量の増加に伴って変形抵抗も上昇している。こ
の調査結果から、熱間鍛造における鍛造性(加工性)の
評価として、HO材で材料の予備加熱温度及び鍛造上り
の温度を400℃以上にすることが有効であることが判
る。また、As Cast 材でも鍛造温度が450℃と高いと
き、熱間変形抵抗が小さいことから、簡単形状の鍛造品
を得る場合には均質化処理を施さなくても鍛造可能なこ
とが判る。しかし、500℃を超える高温では、材料に
部分融解が生じるため、好ましくない。
t 材に種々の条件下で均質化処理を施し、均質化処理条
件が熱間変形抵抗に及ぼす影響を調査した。本実施例で
使用したサンプルの形状及び試験方法は、実施例3と同
じにした。なお、熱間試験条件は、サンプルを450℃
に予備加熱し、型温450℃,加工率50%で熱間鍛造
した。試験結果を示す表5にみられるように、本発明に
従った均質化処理を施した予成形体は、熱間変形抵抗値
が低下しており、鍛造性が良好であることが判る。しか
し、均質化処理の温度が500℃未満や処理時間が1時
間程度では、予成形体の熱間変形抵抗値がAs Cast 材と
ほとんど変わらなかった。熱間変形抵抗値に鍛造時の温
度が最も大きな影響を与えるが、鍛造温度を一定にした
場合、更に予成形体の均質化処理によって鍛造性が向上
することが判る。これにより、複雑形状をもつ予成形体
であっても、均質化処理により熱間変形抵抗値が下が
り、スムーズに鍛造できることが確認された。
湯をN2 −Cl2 混合ガスを用いて脱ガスし、720℃
で溶製した後、400℃に加熱保持した鋳鉄製のブロッ
ク状金型に鋳込んだ。得られた鋳塊に520℃×6時間
の均熱処理を施した後、強制空冷した。次いで、450
℃に加熱し、同じく450℃の加熱保持した金型を用い
て加工率60%で熱間鍛造した。鍛造品に520℃×2
時間の溶体化処理を施し、水焼入れした後、175℃×
6時間の時効処理を施した。時効処理後の材料から鍛造
方向と垂直な方向に試験片を切り出し、機械的性質及び
耐摩耗性を調査した。なお、耐摩耗性は、FC28を相
手材とし、潤滑剤を使用することなく摩擦速度1.21
m/秒で摩擦距離600mを摺動させ、比摩耗量で評価
した。引張強さ400N/mm2 以上,0.2%耐力3
50N/mm2 以上,伸び10%以上,比摩耗量9×1
0-7mm2/kg以下が合格品と判定される。表6の調
査結果にみられるように、本発明に従って得られた鍛造
品をT6処理したものでは、引張強さ,0.2%耐力,
伸び,耐摩耗性共に良好であった。また、T6処理材の
ミクロ組織は、Cr含有量が少ない試料番号6を除き、
何れも微細な再結晶粒であった。他方、Cr含有量が少
ない試料番号6のT6処理材では、粗大化した再結晶粒
が検出された。
は、Si,Crの増量により鋳造性を改善すると共に鍛
造後のT6処理時の溶体化処理で再結晶粒の粗大化を抑
制した合金設計を採用している。このアルミ合金材を比
較的高温で均質化処理すると、Si,Crの増量に起因
した鍛造性の劣化が抑制される。このようにして、本発
明のアルミ合金材は、押出工程を経ない鋳造・鍛造法で
製品形状にすることができ、しかも耐摩耗性及び機械的
特性が優れた材料であることから、自動車部品,家電製
品等として広範な分野で使用される。
HO材
Claims (5)
- 【請求項1】 Si:3.0〜7.0重量%,Mg:
0.6〜1.5重量%,Mn:0.1〜0.5重量%,
Cu:0.3〜0.9重量%,Cr:0.3〜0.5重
量%,Fe:0.25重量%以下,Ti:0.01〜
0.2重量%,B:0.001〜0.01重量%を含
み、残部が実質的にAlの組成をもつ耐摩耗性,鋳造
性,鍛造性に優れた鋳造・鍛造用アルミ合金材。 - 【請求項2】 更にSr:0.001〜0.05重量
%,Sb:0.05〜0.15重量%の1種又は2種を
含み、鋳造時の共晶Siの平均長さが3〜6μmである
請求項1記載の耐摩耗性,鋳造性,鍛造性に優れた鋳造
・鍛造用アルミ合金材。 - 【請求項3】 請求項1又は2記載の組成をもつ合金を
溶製した後、型鋳造で予成形体を製造し、予成形体を5
00〜535℃に2〜12時間加熱する均質化処理を施
した後、強制冷却し、次いで鍛造上りの材料表面温度が
400〜500℃となる条件下で熱間鍛造し、更にT6
処理を施し、機械加工することを特徴とする耐摩耗性,
鋳造性,鍛造性に優れた鋳造・鍛造用アルミ合金材の製
造方法。 - 【請求項4】 ガス含有量を0.30cc/100g以
下に規制した予成形体を使用する請求項3記載の耐摩耗
性,鋳造性,鍛造性に優れた鋳造・鍛造用アルミ合金材
の製造方法。 - 【請求項5】 アルゴン又は窒素と塩素との混合ガス雰
囲気中で溶製時に合金溶湯を脱ガスする請求項3記載の
耐摩耗性,鋳造性,鍛造性に優れた鋳造・鍛造用アルミ
合金材の製造方法。
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JP26688496A JP3346186B2 (ja) | 1996-10-08 | 1996-10-08 | 耐摩耗性,鋳造性,鍛造性に優れた鋳造・鍛造用アルミ合金材及びその製造法 |
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JP26688496A JP3346186B2 (ja) | 1996-10-08 | 1996-10-08 | 耐摩耗性,鋳造性,鍛造性に優れた鋳造・鍛造用アルミ合金材及びその製造法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
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JPH10110231A true JPH10110231A (ja) | 1998-04-28 |
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