JP2001019493A - 機能性フロートガラスおよびその製造方法 - Google Patents

機能性フロートガラスおよびその製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 機能性フロートガラスの有する機能を十分発
揮し、かつ耐久性能が大きくばらつくことを押さえるこ
とを目的とする。 【解決手段】 フロートガラスのスズの少ない面を選択
し、その面のみにシロキサン結合を有し、かつＣＦ3基
もしくはＣＨ3基が表面に露出した単分子膜を形成する
ことにより、フロートガラスのスズの多い面を選択し、
その上に形成する場合と比べ、シロキサン結合を有する
膜の耐久性を向上させることができ、また面を選択しな
い場合に比べて、耐久性能に大きなばらつきを押さえる
ことができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【０００１】
【発明の属する技術分野】本発明は、フロートガラスの
スズの少ない面を選択し、その上にシロキサン結合を有
する膜を形成した機能性フロートガラス、およびその製
造方法に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】フロートガラスはその製造工程において
スズ浴上にて行われるため、出来上がったフロートガラ
スには必ずスズが少ない無垢のガラス面と、スズが多い
面との両面を有するものである。
【０００３】従来の技術は、前記フロートガラス基材の
面を選択することなく、これらの面上にシロキサン結合
を有する膜を形成していた。
【０００４】すなわち、一般にフロートガラスは、ガラ
スを溶融状態で溶融スズ浴の上に通すことでフラットな
面を形成している。そのためフロートガラスの面には、
溶融スズ浴に接触したためにシリケート表面にスズが多
い面と、その反対面で溶融スズ浴に接触せず、シリケー
ト表面にスズが少ない面がある。例えばこのフロートガ
ラスの２つの面に少なくともシラン系化合物を含む溶液
を塗布し、乾燥することで、シラン系化合物とこの２つ
の面の表面水酸基、あるいはシラン系化合物どうしが縮
合反応を起こし、シロキサン結合を有する膜が、スズの
多い面ではシリケート表面に形成される面と、スズの少
ないシリケート表面上に形成される面とが出来る。
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
方法で得られるシロキサン結合を有する膜のうち、フロ
ートガラスのスズの多い面を選択し、その上に形成され
たシロキサン結合を有する膜は、スズの少ない面のそれ
と比べ付着性が悪いため、耐熱、耐磨耗性が劣り、従っ
てスズの少ない面とスズの多い面を選択しない場合、耐
久性能に大きなばらつきを生じた。本発明はこれらの課
題を解決するものであり、機能性フロートガラスの有す
る機能を十分発揮し、かつ耐久性能が大きくばらつくこ
とを押さえることを目的とする。
【０００６】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に本発明は、フロートガラスのスズの少ない面を選択
し、その面のみにシロキサン結合を有し、かつＣＦ3基
もしくはＣＨ3基が表面に露出した単分子膜を形成する
ことにより、フロートガラスのスズの多い面を選択し、
その上に形成する場合と比べ、シロキサン結合を有する
膜の耐久性を向上させることができ、また面を選択しな
い場合に比べて、耐久性能に大きなばらつきを押さえる
ことができる。
【０００７】また、フロートガラスのスズの少ない面を
選択する選択工程と、少なくともシラン系化合物を含む
溶液を接触させＣＦ3基もしくはＣＨ3基が表面に露出し
た単分子膜を形成させる吸着工程と、その後ガラス基材
を乾燥させる乾燥工程とを有する機能性フロートガラス
の製造方法とすることにより、比較的簡単な方法で、し
かも一定性能の機能性フロートガラスを得ることが出来
る。
【０００８】
【発明の実施の形態】請求項１記載の発明は、フロート
ガラスのスズの少ない面を選択し、その面のみにシロキ
サン結合を有し、かつＣＦ3基もしくはＣＨ3基が表面に
露出した単分子膜を形成した膜を形成したものである。
【０００９】請求項２記載の発明は、フロートガラスの
スズの少ない面を選択する選択工程と、少なくともシラ
ン系化合物を含む溶液を接触させＣＦ3基もしくはＣＨ3
基が表面に露出した単分子膜を形成させる吸着工程と、
その後ガラス基材を乾燥させる乾燥工程とを有する機能
性フロートガラスの製造方法とする。
【００１０】請求項３記載の発明は、フロートガラスの
スズの少ない面を選択する選択工程と、少なくともシラ
ン系化合物を含む溶液を接触させＣＦ3基もしくはＣＨ3
基が表面に露出した単分子膜を形成させる吸着工程と、
その後ガラス基材を乾燥させる乾燥工程と、さらにその
後ガラス基材を溶剤で洗浄する洗浄工程とを有する機能
性フロートガラスの製造方法とする。
【００１１】
【実施例】以下、本発明の機能性フロートガラスとその
製造方法の具体的実施例として、機能性フロートガラス
を図１に示す。また、その製造方法を図２を用いて説明
する。フロートガラス基材としてアルカリソーダガラス
系フロートガラスを用い、この基材表面に３００ｎｍ以
下の波長分布を有するガラス検査灯の光を照射すること
で、この基材表面がスズに起因する表面発光が観測され
るスズの多い面と、表面発光が観測されないスズの少な
い面とを選別する。この工程を選択工程とする。
【００１２】この選択されたフロートガラス基材のスズ
の少ない面のみに（図２（Ａ））、室温程度の無水雰囲
気下で、ロールコータを用いてシラン系化合物として化
学式C8F17C2H4SiCl3で示されるフルオロアルキルトリク
ロロシラン、その非水系溶媒としてオクタデカフルオロ
オクタンを用いた１０ー2vol／L溶液を、厚さ１０〜２０
μｍで塗布すると、フルオロアルキルトリクロロシラン
とスズの少ない面のシリケートの表面水酸基とが縮合反
応を起こし、フルオロアルキルトリクロロシランがスズ
の少ない面のシリケートと化学結合を形成する。この工
程を吸着工程とする（図２（Ｂ））。この後、水分を含
む雰囲気下で乾燥すると、フルオロアルキルトリクロロ
シランどうしが縮合反応を起こし、フルオロアルキル基
を含むシロキサン結合を有し、かつＣＦ3基もしくはＣ
Ｈ3基が表面に露出した単分子膜を形成した膜が、スズ
の少ない面上に形成される。この工程を乾燥工程とする
（図２（Ｃ））。
【００１３】さらに、これらの基材を、オクタデカフル
オロオクタンで洗浄すると、スズの少ない面のシリケー
トと化学結合を形成していないシロキサン結合を有する
膜がオクタデカフルオロオクタンに溶解し、最終的には
スズの少ない面のシリケートと化学結合を形成したフル
オロアルキル基を含むシロキサン結合を有するＣＦ3基
が表面に露出した単分子膜のみがスズの少ない面上に残
る。この工程を洗浄工程とする（図２（Ｄ））。このよ
うにして、本発明の実施例の機能性フロートガラスが製
造できる。
【００１４】本発明の機能性フロートガラスを評価する
ために、本発明のフロートガラス基材と比較品としてフ
ロートガラス基材のスズの多い面のみに上記と同じ方法
を用い、スズの多い面のシリケートと化学結合を形成し
たフルオロアルキル基を含むシロキサン結合を有し、か
つＣＦ3基が表面に露出した単分子膜を有するフロート
ガラスを基材を３００℃中に１００時間放置した。この
間、２０時間毎に基材の汚れの洗浄をエタノールで超音
波浸漬洗浄し、基材表面に水１０μｌを滴下した時の、
フルオロアルキル基を含むシロキサン結合を有する膜表
面の水に対する接触角を測定した。その結果を図３に示
す。
【００１５】また、上記２つの基材を２ｋｇｆの荷重を
加えた食器洗い用スポンジで１００００回擦った。この
間２０００回毎に基材の汚れの洗浄をエタノールで超音
波浸漬洗浄し、基材表面に水１０μｌを滴下した時の、
フルオロアルキル基を含むシロキサン結合を有し、かつ
ＣＦ3基が表面に露出した単分子膜表面の水に対する接
触角を測定した。その結果を図４に示す。
【００１６】これらの結果を比較すると、スズの少ない
面のシリケート表面に形成されたフルオロアルキル基を
含むシロキサン結合を有し、かつＣＦ3基が表面に露出
した単分子膜の耐久性は、スズの多い面に形成されたそ
れよりも優れていることが明らかである。これは、スズ
の少ない面のシリケート表面とシロキサン結合を有する
膜との付着性が、スズの多い面のスズ膜とそれとの付着
性がより良好なためであり、スズの少ない面を選択し、
その上にシロキサン結合を有する膜が、耐熱、耐磨耗性
が優れることになる。
【００１７】なお、本発明に供されるシラン化合物とし
ては、アルキルシラン化合物としてメチルトリクロロシ
ラン、メチルトリメトキシシラン等、フロオロアルキル
シラン化合物としてヘプタデカフルオロデキシルトリク
ロロシラン、ヘプタデカフルオロデキシルトリクロロシ
ラン等の一般式CnH2n-m+1Fm-SiX3（n=0,1,2,・・・;m=0,1,
2・・・2n+1;X=ハロゲン原子,アルコキシ基）に示したもの
が利用可能である。また、非水系溶媒としては、上記シ
ラン化合物と反応する活性水素を持たない有機溶媒であ
ればよく、例えば上記シラン化合物に対しては、ｎ−ヘ
キサデカン等の炭化水素系溶媒やオクタデカフルオロオ
クタン等のハロゲン化炭化水素溶媒やヘキサメチルジシ
ロキサン等のシリコーンオイル、あるいはこれらを任意
に混合したものが好ましく、上記に示した性能が得られ
る。また、塗布方法として上記ロールコータをはじめス
ピンコータ、スプレー等が有効である。
【００１８】
【発明の効果】以上の実施例から明らかなように、本発
明によればフロートガラスのスズの多い面を選択し、そ
の上に形成する場合と比べ、シロキサン結合を有し、か
つＣＦ 3基もしくはＣＨ3基が表面に露出した単分子膜の
耐久性を向上させることができ、またスズの少ない面と
スズの多い面を選択しない場合、耐久性能に大きなばら
つきを押さえることができる機能性フロートガラスを提
供できる。
【００１９】また、比較的簡単な方法で、しかも一定性
能の機能性フロートガラスを得ることが出来るので、そ
の工業的価値は大なるものである。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の機能性フロートガラスを示す模式図
【図２】本発明の機能性フロートガラスの製造工程を示
す模式図
【図３】本発明の機能性フロートガラスの水に対する接
触角の３００℃耐熱試験時間による変化を示す図
【図４】本発明の機能性フロートガラスの水に対する接
触角のスポンジ擦り回数による変化を示す図
フロントページの続き (72)発明者 胡桃沢 利光 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 (72)発明者 徳満 修三 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 (72)発明者 柴田 恒雄 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 (72)発明者 川西 英賢 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 (72)発明者 麻植 淳 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 (72)発明者 清水 聡 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項１】 スズの少ない面上にシロキサン結合を有
    し、かつＣＦ3基もしくはＣＨ3基が表面に露出した単分
    子膜を形成した機能性フロートガラス。
  2. 【請求項２】 スズの少ない面を選択する選択工程と、
    少なくともシラン系化合物を含む溶液を接触させＣＦ3
    基もしくはＣＨ3基が表面に露出した単分子膜を形成さ
    せる吸着工程と、その後ガラス基材を乾燥させる乾燥工
    程とを有する機能性フロートガラスの製造方法。
  3. 【請求項３】 スズの少ない面を選択する選択工程と、
    少なくともシラン系化合物を含む溶液を接触させＣＦ3
    基もしくはＣＨ3基が表面に露出した単分子膜を形成さ
    せる吸着工程と、その後ガラス基材を乾燥させる乾燥工
    程と、さらにその後ガラス基材を溶剤で洗浄する洗浄工
    程とを有する機能性フロートガラスの製造方法。
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