JP2001011947A - 鉄筋コンクリート造柱及び鉄骨造梁の接合構造 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】鉄骨梁に作用した圧縮力を負担させるための特
別な抵抗部材を設ける必要がなく、これによりコストダ
ウンが可能な鉄筋コンクリート造柱及び鉄骨造梁の接合
構造を提供する。 【解決手段】鉄筋コンクリート造柱１０の周囲に複数の
鉄骨造梁１１を配置し、この鉄骨造梁１１に作用した圧
縮力を鉄筋コンクリート造柱１０のコンクリート１２に
伝達するための圧縮力伝達部材１５を鉄骨造梁の１１接
合側の端部に設け、鉄骨造梁１１の端部及び圧縮力伝達
部材１５をコンクリート１２内に配置し、隣接する圧縮
力伝達部材１５、１５同士の端部に互いに対向する傾斜
面３０、３０を設けたことを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、鉄筋コンクリート
造柱及び鉄骨造梁の接合構造に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、鉄筋コンクリート造柱と鉄骨造梁
との接合構造においては、鉄筋コンクリート造柱に例え
ば鉄骨造梁と同一の部材で形成したブラケットを取付
け、このブラケットに鉄骨造梁を突き合わせ、ブラケッ
トと鉄骨造梁の上下面に接合板を当てて、この接合板を
ブラケット及び鉄骨造梁に高力ボルトで固定することに
より、ブラケットと鉄骨造梁とを鉄筋コンクリート造柱
の外側で接合するのが一般的であった。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
鉄筋コンクリート造柱と鉄骨造梁の接合構造では、鉄筋
コンクリート造柱のコンクリートの外周側に主鉄筋が設
けられているものの、コンクリートの圧縮耐力が比較的
弱く、鉄骨造梁に作用する圧縮力の全部又は一部を接合
用鋼板など他の抵抗要素によって負担させ、残りの圧縮
力をコンクリートによって負担させる必要があった。そ
のため、部品点数が増大すると共に、部材重量が増大
し、コストアップになるという問題があった。

【０００４】また、高力ボルトの使用本数が多くなり、
更に接合部内で鋼材（鉄骨梁等）の加工や溶接を多数行
わなければならないので、作業性が悪く、施工性及び経
済性が劣るという問題があった。

【０００５】本発明の目的は、このような問題点を解決
するためになされたものであり、鉄骨造梁に作用した圧
縮力を負担させるための特別な抵抗部材を設ける必要が
なく、また、高力ボルトの使用本数を０にすると共に、
接合部内での溶接や加工を低減することにより、コスト
ダウンが可能な鉄筋コンクリート造柱及び鉄骨造梁の接
合構造を提供することにある。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明は鉄筋コンクリー
ト造柱及び鉄骨造梁の接合構造であり、前述の技術的課
題を解決するために以下のように構成されている。すな
わち、本発明の鉄筋コンクリート造柱及び鉄骨造梁の接
合構造は、鉄筋コンクリート造柱の周囲に複数の鉄骨造
梁を配置し、前記鉄骨造梁に作用した圧縮力を前記鉄筋
コンクリート造柱のコンクリートに伝達するための圧縮
力伝達部材を前記鉄骨造梁の接合側の端部に設け、前記
鉄骨造梁の端部及び前記圧縮力伝達部材を前記コンクリ
ート内に配置し、隣接する前記圧縮力伝達部材同士の端
部に互いに対向する傾斜面を設けたことを特徴とする。

【０００７】また、本発明は、前記鉄骨造梁の上下に水
平接合板を配置し、前記水平接合板を前記鉄筋コンクリ
ート柱の主鉄筋に固定し、前記水平接合板の略中央部に
開口を設け、前記圧縮力伝達部材の端部を前記開口内に
配置し、前記鉄骨梁に作用する引張力によって前記圧縮
力伝達部材の端部が前記開口の周壁に直接的又は間接的
に係止されるようにしたことを特徴とする。

【０００８】（作用）本発明に係る鉄筋コンクリート造
柱及び鉄骨造梁の接合構造によれば、鉄骨造梁に作用し
た圧縮力は、圧縮力伝達部材を介して鉄筋コンクリート
造柱のコンクリートに伝達されると共に、この圧縮力伝
達部材と隣接する圧縮力伝達部材の端部の対向する傾斜
面を介して隣接する圧縮力伝達部材及び鉄骨造梁に伝達
される。

【０００９】また、鉄骨造梁の上下に水平接合板を配置
し、水平接合板を鉄筋コンクリート柱の主鉄筋に固定
し、水平接合板の略中央部に開口を設け、圧縮力伝達部
材の端部を開口内に配置し、前記鉄骨梁に作用する引張
力によって前記圧縮力伝達部材の端部が前記開口の周壁
に直接的又は間接的に係止されるようにした場合には、
鉄骨造梁に作用した圧縮力と引張力との両方が、圧縮力
伝達部材を介してコンクリート及び水平接合板に伝達さ
れる。

【００１０】

【発明の実施の形態】以下、本発明に係る鉄筋コンクリ
ート造柱及び鉄骨造梁の接合構造の実施の形態につい
て、図面を参照して詳細に説明する。

【００１１】（第１の実施の形態）図１は、本発明に係
る鉄筋コンクリート造柱及び鉄骨造梁の接合構造の第１
の実施の形態を示す横断面図である。この鉄筋コンクリ
ート造柱及び鉄骨造梁の接合構造においては、鉄筋コン
クリート造柱１０の内部で鉄骨造梁１１が接合されてい
る。

【００１２】すなわち、鉄筋コンクリート造柱１０の周
囲に複数、ここでは４個の鉄骨造梁１１が十字状に配置
され、これらの鉄骨造梁１１に作用した圧縮力を鉄筋コ
ンクリート造柱１０のコンクリート１２に伝達するため
の圧縮力伝達部材１５が鉄骨造梁１１の接合側の端部に
設けられている。また、鉄骨造梁１１の端部及び圧縮力
伝達部材１５がコンクリート１２内に配置され、隣接す
る圧縮力伝達部材１５、１５同士の端面に互いに対向す
る傾斜面３０、３０が設けられている。

【００１３】鉄筋コンクリート造柱１０は断面が４角形
であり、その４面に例えばＨ型鋼で形成された鉄骨造梁
１１が接合されている。鉄筋コンクリート造柱１０は、
断面４角形のコンクリート１２と、その４隅に配置され
た３本組の主鉄筋１３ａ，１３ｂ，１３ｂとを備えてい
る。このうち、内側の２本の主鉄筋１３ｂ，１３ｂに
は、後述のように鉄骨造梁１１に作用した引張力を支持
するために２枚の水平接合板１４、１４が固定されてい
る。

【００１４】圧縮力伝達部材１５の端部の傾斜面３０
は、本実施の形態では、その傾斜角度が略４５°であ
り、隣接する圧縮力伝達部材１５、１５同士の傾斜面３
０、３０が略当接するか、又は僅かな隙間を空けて対向
するようになっている。この圧縮力伝達部材１５は、後
述のように鉄骨造梁１１に作用した引張力を水平接合板
１４、１４に伝達するためにも用いられている。

【００１５】水平接合板１４、１４は、図２に示すよう
に鉄骨造梁１１の上下に配置されている。ここでは、少
なくとも内側の２本の主鉄筋１３ｂとしてネジ鉄筋が使
用され、この主鉄筋１３ｂに螺入されたロックナット１
６で、上下の水平接合板１４、１４が鉄骨造梁１１側に
密着されて固定されている。これにより、鉄骨造梁１１
が上下の水平接合板１４、１４で挟持されている。な
お、図２ではロックナット１６を水平接合板１４、１４
の片側にのみ配置したが、水平接合板１４、１４の両側
をロックナット１６で挟持することもできる。

【００１６】この水平接合板１４、１４の中央部には、
４角形の開口１７が設けられている。この開口１７の各
辺の周壁１７ａは、それぞれ鉄骨造梁１１の端面とほぼ
平行であり、鉄骨造梁１１の端面より僅かに外側に位置
している。鉄骨造梁１１の端面に溶着された圧縮力伝達
部材１５の上下端部には、鉄骨造梁１１の上下端より突
出した係止部分１５ａが設けられている。そして、この
係止部分１５ａが水平接合板１４の開口１７内に挿入さ
れ、開口１７の周壁に係止可能になっている。

【００１７】水平接合板１４の開口１７の周壁１７ａと
係止部分１５ａとの間には、図３に示すように組み立て
性を考慮して僅かな隙間があくように設定されている。
ここでは、開口１７の周壁１７ａに傾斜が設けられてお
り、鉄骨造梁１１の組み立て後に隙間内に楔状の隙間調
整部材１９が挿入される。これにより、寸法誤差を吸収
できる。なお、図２中の符号２０は隙間調整部材１９の
脱落を防止する蓋であり、２１は蓋２０を水平接合板１
４に固定するボルトである。隙間調整部材１９と蓋２０
とは一体化することもできる。また、隙間調整部材１９
を省略することもでき、この場合には係止部分１５ａと
周壁１７ａとの間にコンクリート２１が介在する。

【００１８】図２に示すように、鉄筋コンクリート造柱
１０の主鉄筋１３ａ，１３ｂには、全長に渡ってフープ
筋２２が適宜な間隔で巻かれている。このフープ筋２２
は上下の水平接合板１４、１４の間にも設けられてお
り、ここではフープ筋２２が鉄骨造梁１１のウェブ１１
ｂを貫通している。

【００１９】次に、この鉄筋コンクリート造柱及び鉄骨
造梁の接合構造の作用を説明する。いま、図２中の右側
の鉄骨造梁１１に引張力Ｆ１が作用すると、この引張力
Ｆ１は圧縮力伝達部材１５の係止部分１５ａ及び隙間調
整部材１９（図３）を介して水平接合板１４に伝達され
る。したがって、圧縮力伝達部材１５と水平接合板１４
は高力ボルトなどで結合する必要はなく、接合部内での
溶接や加工も低減される。

【００２０】また、鉄骨造梁１１に圧縮力Ｆ２が作用す
ると、この圧縮力Ｆ２は圧縮力伝達部材１５を介して、
４枚の圧縮力伝達部材１５に囲まれたコンクリート１２
に伝達される。また、この圧縮力Ｆ２は、図１に示すよ
うに圧縮力伝達部材１５の傾斜面３０及び隣接する圧縮
力伝達部材１５の傾斜面３０を介して、隣接する圧縮力
伝達部材１５及び鉄骨造梁１１に伝達される。これによ
り、鉄骨造梁１１に作用した圧縮力Ｆ２は、コンクリー
ト１２と隣接する鉄骨造梁１１とで支持されることにな
るので、コンクリート１２にかかる負担が軽減される。
したがって、４枚の圧縮力伝達部材１５によって囲まれ
たコンクリート１２の破損を防止できる。

【００２１】本発明は、上述のように、圧縮力伝達部材
１５と水平接合板１４とを高力ボルトなどで結合する必
要がないので、高力ボルトの使用本数を０にすることが
でき、また、溶接やその他の加工なども従来に比べて大
幅に低減できるので、施工性及び経済性を向上させるこ
とができる。

【００２２】また、鉄骨造梁１１に作用する圧縮力Ｆ２
をコンクリート１２と隣接する鉄骨造梁１１とで負担す
るので、コンクリート１２にかかる負担が軽減され、コ
ンクリート１２が破損するのを防止できる。

【００２３】（第２の実施の形態）図４は、本発明の第
２の実施の形態を示す。ここでは、上下の水平接合板１
４の板面に例えば４角形の筒状部材２３が、点溶接によ
って仮止めされている。この筒状部材２３は、主鉄筋１
３ａ，１３ｂの外側に配置されている。これ以外は、上
述の第１の実施の形態と同一である。

【００２４】この場合には、図５に示すように圧縮力伝
達部材１５からその外側のコンクリート１２に作用した
圧縮力Ｆ３が筒状部材２３の一辺２３ａに伝達され、更
にこの一辺２３ａから両側の２辺２３ｂ，２３ｂを介し
て対辺２３ｃに伝達される。この対辺２３ｃに伝達され
た力は、筒状部材２３の内側のコンクリート１２によっ
て全体的に支持される。筒状部材２３の内側のコンクリ
ート１２は、肉厚が厚いので圧縮力Ｆ３によって破損す
るのを防止できる。

【００２５】（第３の実施の形態）図６は、本発明の第
３の実施の形態を示す。この第３の実施の形態では、鉄
骨造梁１１からコンクリート１２に作用するコーン耐力
の破断線２４の内側に、３本の主鉄筋１３ａ，１３ｂの
うち内側の２本の主鉄筋１３ｂ，１３ｂが配置され、こ
の主鉄筋１３ｂ，１３ｂに中子筋２５が設けられてい
る。

【００２６】この中子筋２５は、図７に示すように接合
部分の近傍、本実施の形態では上下の接合板１４の直上
及び直下（直上のみ図示）の数本のフープ筋２２の上下
に設けられている。これ以外は、第１の実施の形態と同
様である。

【００２７】この場合には、図６に示すように圧縮力伝
達部材１５からその外側のコンクリート１２に作用した
圧縮力Ｆ３が、破断線２４の内側の中子筋２５に伝達さ
れ、この中子筋２５を介して中子筋２５内のコンクリー
ト１２に伝達されるので、引張力Ｆ３を支持するコンク
リート１２の断面積が増大する。したがって、コンクリ
ート１２の破損を防止できる。

【００２８】

【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
鉄骨造梁に作用した圧縮力は、圧縮力伝達部材を介して
鉄筋コンクリート造柱のコンクリートに伝達されると共
に、この圧縮力伝達部材の傾斜面、隣接する圧縮力伝達
部材の傾斜面及び圧縮力伝達部材を介して隣接する鉄骨
造梁に伝達され、これによりコンクリートが負担する分
が軽減されるので、コンクリートが破損するのを防止で
きる。

【００２９】また、鉄骨造梁の上下に水平接合板を配置
し、水平接合板を鉄筋コンクリート柱の主鉄筋に固定
し、水平接合板の略中央部に開口を設け、圧縮力伝達部
材の端部を開口内に配置し、鉄骨梁に作用する引張力に
よって圧縮力伝達部材の端部が開口の周壁に直接的又は
間接的に係止されるようにした場合には、鉄骨造梁に作
用した圧縮力と引張力が、圧縮力伝達部材を介してコン
クリート及び水平接合板に伝達されるので、圧縮力伝達
部材と接合板とを高力ボルトなどで結合する必要がなく
なる。したがって、高力ボルトの使用本数を０にできる
と共に、接合部内での加工や溶接を低減でき、これによ
り、施工性及び経済性を向上させることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る鉄筋コンクリート造柱及び鉄骨造
梁との接合構造の第１の実施の形態を示す横断面図であ
る。

【図２】図１のＡ−Ａ断面図である。

【図３】本発明に係る鉄筋コンクリート造柱及び鉄骨造
梁の接合構造の第１の実施の形態の隙間調整部材を示す
断面図である。

【図４】本発明に係る鉄筋コンクリート造柱及び鉄骨造
梁の接合構造の第２の実施の形態を示す断面図である。

【図５】図４のＢ矢視図である。

【図６】本発明に係る鉄筋コンクリート造柱及び鉄骨造
梁の接合構造の第３の実施の形態を示す断面図である。

【図７】図６のＣ矢視図である。

【符号の説明】

１０ 鉄筋コンクリート造柱 １１ 鉄骨造梁 １２ コンクリート １３ｂ 主鉄筋 １４ 水平接合板 １７ 開口 １５ 圧縮力伝達部材 ３０ 傾斜面

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 吉野 茂 東京都千代田区富士見二丁目10番26号前田 建設工業株式会社内 (72)発明者 一柳 成幸 東京都千代田区富士見二丁目10番26号前田 建設工業株式会社内 (72)発明者 黒坂 誠 東京都千代田区富士見二丁目10番26号前田 建設工業株式会社内 (72)発明者 岩岡 信一 東京都千代田区富士見二丁目10番26号前田 建設工業株式会社内

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 鉄筋コンクリート造柱の周囲に複数の鉄
   骨造梁を配置し、 前記鉄骨造梁に作用した圧縮力を前記鉄筋コンクリート
   造柱のコンクリートに伝達するための圧縮力伝達部材を
   前記鉄骨造梁の接合側の端部に設け、 前記鉄骨造梁の端部及び前記圧縮力伝達部材を前記コン
   クリート内に配置し、 隣接する前記圧縮力伝達部材同士の端部に互いに対向す
   る傾斜面を設けたことを特徴とする鉄筋コンクリート造
   柱及び鉄骨造梁の接合構造。
2. 【請求項２】 前記鉄骨造梁の上下に水平接合板を配置
   し、 前記水平接合板を前記鉄筋コンクリート柱の主鉄筋に固
   定し、 前記水平接合板の略中央部に開口を設け、 前記圧縮力伝達部材の端部を前記開口内に配置し、 前記鉄骨梁に作用する引張力によって前記圧縮力伝達部
   材の端部が前記開口の周壁に直接的又は間接的に係止さ
   れるようにしたことを特徴とする請求項１に記載の鉄筋
   コンクリート造柱及び鉄骨造梁の接合構造。