JP2001000271A - シートの背中支持構造 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 Ｓ字ばねの撓み感と、ワイヤの連続感とを共
有して快適な着座が実現し得るようにする。 【解決手段】 シートバックにおける着座者の背中支持
用の支持構造１０であって、環状で略矩形状を呈したバ
ックフレーム２と、このバックフレーム２の縦フレーム
２１間に張設される少なくとも1本のＳ字ばね３と、こ
のＳ字ばね３に支持されるようにバックフレーム２の横
フレーム間に配設され、背中のＳ字曲線に合った曲面を
有する背中支持ワイヤ４とからなっている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、シートのシートバ
ックにおける着座者の背中を支持するための背中支持構
造に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来、シートボトムの後端部にシートバ
ックが立設されてなるシートにおいて、シートバックに
形成された着座者の背中を支持するための背中支持構造
が知られている。この背中支持構造は、シートバックの
骨格として採用されるバックフレームの縦フレーム間
に、波形を呈したいわゆるＳ字ばねが複数本張設されて
なるものであり、これらＳ字ばね上にパッドを積層する
ことによってシートバックが形成されている。従って、
着座者がシートバックに凭れ掛かると、複数本張設され
たＳ字ばねのそれぞれが、背中のＳ字カーブに沿うよう
にパッドを介して弾性変形するため、着座者は快適な着
座感を得ることができる。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
上記のような背中支持構造にあっては、複数本のＳ字ば
ねが縦フレーム間に張設されているため、各Ｓ字ばね
は、対応した背中の形状に応じて弾性変形するが、上下
で隣接したＳ字ばね間に連係がないことから、縦方向で
は連続した被支持感を得難いという問題点が存在する。

【０００４】そこで、横フレーム間に上下方向に延びる
複数本のワイヤを張設し、これによって縦方向での連続
した被支持感が得られるようにすることが考えられる
が、このようにすると、ワイヤが着座者の背中のＳ字カ
ーブに合致するように弾性変形しないため、ワイヤに対
応した背中の体圧が高くなり、かえって座り心地が悪く
なるという新たな問題点が提起される。

【０００５】本発明は、従来の上記のような問題を解決
するためになされたものであり、Ｓ字ばねの撓み感と、
ワイヤの連続感とを共有し得る背中支持構造を提供する
ことを目的としている。

【０００６】

【課題を解決するための手段】請求項１記載の発明は、
シートのシートバックにおける着座者の背中支持用の支
持構造であって、環状で略矩形状を呈したバックフレー
ムと、このバックフレームの縦フレーム間に張設される
少なくとも1本のＳ字ばねと、このＳ字ばねに支持され
るようにバックフレームの横フレーム間に配設され、背
中のＳ字曲線に合った曲面を有する背中支持ワイヤとか
らなることを特徴とするものである。

【０００７】この発明によれば、シートへの着座者がシ
ートバックに凭れ掛かると、背中は、そのＳ字曲線に合
致した曲面を有する背中支持ワイヤに支持されるため、
背中の一点に反力が集中することはなく、縦方向に連続
した良好な被支持感を得ることができる。しかも、背中
支持ワイヤは、縦フレーム間に張設されたＳ字ばねによ
って支持されているため、このＳ字ばねの弾性力で良好
なクッション性をも得ることができる。

【０００８】請求項２記載の発明は、請求項１記載の発
明において、上記背中支持ワイヤは、下端部を支点とし
て下部の横フレームに前後揺動可能に取り付けられてい
ることを特徴とするものである。

【０００９】この発明によれば、着座者がシートバック
に凭れ掛かることにより、背中支持ワイヤは下部の横フ
レームを支点にして前後に揺動し、これによって例えば
車両の振動等によるシートバックに加わる荷重の変動が
吸収される。

【００１０】請求項３記載の発明は、請求項１記載の発
明において、上記Ｓ字ばねは、少なくとも２本が設けら
れ、上記背中支持ワイヤは、Ｓ字ばねのみによって支持
されていることを特徴とするものである。

【００１１】この発明によれば、着座者がシートバック
に凭れ掛かることにより、背中支持ワイヤはＳ字ばねの
弾性力によって前後動し、これによってシートバックに
対する荷重の変動が確実に吸収されるとともに、着座者
の腰部に対する弾性支持の度合いを大きくすることがで
きる。

【００１２】請求項４記載の発明は、請求項１乃至３の
いずれかに記載の発明において、上記背中支持ワイヤの
中央部に、背中支持ワイヤの上下寸法より短く、幅寸法
より大きい背中支持補助部材が設けられていることを特
徴とするものである。

【００１３】この発明によれば、背中支持補助部材によ
って背中を支持する面積が大きくなるため、体圧の分散
が良好に行われるとともに、様々の着座姿勢に対応し得
るようになり、さらに着座者の身体に対するホールド性
が向上する。

【００１４】

【発明の実施の形態】図１は、本発明に係る背中支持構
造が適用されるシートの一実施形態を示す斜視図であ
る。図１では、シート１として車両用のものを例示して
いる。この図に示すように、シート１は、シートボトム
１１と、このシートボトム１１の後端部に傾倒姿勢可能
に立設されたシートバック１２とからなっている。

【００１５】シートボトム１１には図略のボトムフレー
ムが内装され、このボトムフレームの後端部には、幅方
向一対のボトムブラケット１３が固設されている。ま
た、シートバック１２には方形環状のバックフレーム２
が内装され、このバックフレーム２の下方両側部に上記
ボトムブラケット１３に対応したバックブラケット１４
が固定され、これら両ブラケット１３，１４が当接され
た状態でこれらに水平軸１５が差し通されることにより
シートバック１２が水平軸１５回りに回動自在にシート
ボトム１１に支持されている。

【００１６】また、ボトムブラケット１３とバックブラ
ケット１４との間には図略のナックル機構が介設され、
ボトムブラケット１３から前方に向けて突設された操作
レバー１６の操作でナックル機構を動作させることによ
り、シートバック１２の傾倒角度を調節し得るようにな
っている。

【００１７】図２は、本発明に係る背中支持構造の第１
実施形態を示す斜視図である。この図に示すように、背
中支持構造１０は、金属製のパイプを曲折加工して形成
された方形環状のバックフレーム２と、バックフレーム
２に横方向に横断して取り付けられたＳ字ばね３と、バ
ックフレーム２に縦方向に延びるように取り付けられた
背中支持ワイヤ４とからなっている。

【００１８】上記バックフレーム２は、幅方向一対の縦
フレーム２１と、上下方向一対の横フレーム２２とから
なっている。横フレーム２２のうち上部のもの（上部横
フレーム２２ａ）には、図略のヘッドレストのアンカー
ロッドを嵌挿するための、上下方向に延びた幅方向一対
のヘッドレスト装着筒２３が固定されている。

【００１９】また、一対の縦フレーム２１には、上下方
向の中間位置より若干上方位置にクリップ２４が溶接止
めで固定されている。このクリップ２４は、矩形状の金
属板からなる小片を、Ｕ字形状に折り曲げ成形して得ら
れるものであり、その両側縁を上下方向に延びるように
位置決めして溶接止めすることにより各縦フレーム２１
に固定されている。

【００２０】また、横フレーム２２のうち下部のもの
（下部横フレーム２２ｂ）には、略中央位置に幅方向一
対で上記同様のクリップ２４が溶接止めで固定されてい
る。下部横フレーム２２ｂの場合、クリップ２４は、そ
の両側縁を水平に延びるように位置決めされている。こ
れら上部横フレーム２２ａに固定されたクリップ２４
は、背中支持ワイヤ４を装着するためのものである。

【００２１】上記Ｓ字ばね３は、針金状のばね鋼を波形
に折り曲げ成形することにより形成されたものであり、
その両端部が上方からクリップ２４に差し込まれること
によって、一対の縦フレーム２１間に架橋された状態で
バックフレーム２に装着されている。

【００２２】上記背中支持ワイヤ４は、ピアノ線等のば
ね鋼からなる上記Ｓ字ばね３より若干太めのワイヤを、
縦長の矩形状に折り曲げ成形した後、両端部が溶接され
ることによって形成されている。この背中支持ワイヤ４
は、上記溶接で環状に形成された後、引き続きプレス処
理が施され、これによって下部に前方に膨出した前方膨
出部４１が形成されるとともに、上部に後方に膨出した
後方膨出部４２が形成されて着座者の背中の曲線に沿う
ように側面視でＳ字形状になっている。

【００２３】かかる背中支持ワイヤ４は、下部の横方向
に延びるワイヤの部分（下部ワイヤ４３）が一対のクリ
ップ２４の溝に嵌め込まれた状態で、各クリップ２４の
側縁が下部横フレーム２２ｂに溶接止めされることによ
り、クリップ２４の孔心回りに揺動し得るようになって
いる。そして、このような背中支持ワイヤ４は、下部横
フレーム２２ｂに取り付けられた状態で、縦フレーム２
１間に架橋されたＳ字ばね３に凭れ掛けられ、この状態
で別のクリップ２４ａ（金属片を所定の工具で環状に変
形させて係止する方式のクリップ）によりその上部がＳ
字ばね３に接続されている。

【００２４】第１実施形態の背中支持構造１０によれ
ば、バックフレーム２がシートボトム１１に接続され、
その前面側にパッドＰが積層固定された状態で、シート
１への着座者が背中をシートバック１２に凭れ掛からせ
ると、背中支持ワイヤ４の前方膨出部４１が背中下部の
前方に向かって凹んだ部分に対応するとともに、同後方
膨出部４２が背中上部の肩甲骨によって後方に向かって
膨出した部分に対応するため、上下方向で連続した良好
な背中被支持感を得ることができるとともに、適正な着
座姿勢を保持することができる。そして、車両の振動等
によって背中の荷重に変動があったときは、背中支持ワ
イヤ４は、Ｓ字ばね３の弾性力とのバランスで下部横フ
レーム２２ｂのクリップ２４の孔心回りに揺動する。

【００２５】さらに、背中をシートバック１２に凭れ掛
からせることによる荷重は、背中支持ワイヤ４を介して
Ｓ字ばね３によって受けられ、Ｓ字ばね３の弾性変形に
よって荷重の変動が吸収されるため、背中支持ワイヤ４
のみで背中を支持した場合の硬直感が生ぜず、その分座
り心地が良好になる。

【００２６】図３は、第１実施形態の変形例の背中支持
構造１０ａを示す斜視図である。この変形例の背中支持
構造１０ａは、第１実施形態の背中支持構造１０におい
て、背中支持ワイヤ４の中央部に、ワイヤを正方形状に
折り曲げ成形して形成された、背中支持ワイヤの上下寸
法より短く、幅寸法より大きい背中支持補助部材５が溶
接止めで固定されることによって形成されている。そし
て、この背中支持補助部材５は、両側部のワイヤが前方
に向かって若干突出するように、上下のワイヤが後方に
向かって弓なりに湾曲されている。

【００２７】この変形例の背中支持構造１０ａによれ
ば、幅方向に広い背中支持補助部材５の存在で体圧の分
散を行うことが可能になり、背中支持ワイヤ４のみでは
背中の幅方向の中央位置のみしか支持し得ず、従って、
凭れ心地に若干の改良の余地があるという不都合が解消
されるとともに、背中が背中支持補助部材５の前方に膨
出した両側部のワイヤに保持された状態になり、これに
よって着座者の幅方向のホールド性が向上する。

【００２８】図４は、本発明に係る背中支持構造１０ｂ
の第２実施形態を示す斜視図である。第２実施形態にお
いては、Ｓ字ばね３は、バックフレーム２の上部に加え
て同下部の縦フレーム２１間にも架橋され、これによっ
てバックフレーム２に上下一対のＳ字ばね３が装着され
た状態になっている。そして、背中支持ワイヤ４は、上
下寸法が第１実施形態のものより若干短めに寸法設定さ
れ、その下部ワイヤ４３が下部横フレーム２２ｂとは独
立した状態でこれら一対のＳ字ばね３に支持されてい
る。その他の構成は、第１実施形態の背中支持構造１０
と同様である。

【００２９】第２実施形態の背中支持構造１０ｂによれ
ば、背中支持ワイヤ４は、上部位置のみならず下部位置
も縦フレーム２１間に張設されたＳ字ばね３によって支
持されているため、シートバック１２に凭れ掛かった着
座者は、背中の上部に加えて腰部も背中支持ワイヤ４を
介してＳ字ばね３に弾性的に支持される度合いが大きく
なり、これによってより快適な着座が実現する。

【００３０】図５は、第２実施形態の変形例の背中支持
構造１０ｃを示す斜視図である。この変形例では、第２
実施形態の背中支持構造１０ｂにおいて、背中支持ワイ
ヤ４に背中支持補助部材５が取り付けられている。その
他の構成は第２実施形態のものと同様である。

【００３１】この変形例の背中支持構造１０ｃによれ
ば、背中の上部に加えて腰部も背中支持ワイヤ４を介し
てＳ字ばね３に弾性的に支持されるという第２実施形態
の背中支持構造１０ｂの効果を確保した上で、着座者の
幅方向のホールド性が向上するという第１実施形態の背
中支持構造１０ａの効果をも享受することができる。

【００３２】

【発明の効果】請求項１記載の発明によれば、シートへ
の着座者がシートバックに凭れ掛かると、背中は、その
Ｓ字曲線に合致した曲面を有する背中支持ワイヤに支持
されるため、背中の一点に反力が集中することはなく、
縦方向に連続した良好な被支持感を得ることができる。
しかも、背中支持ワイヤは、縦フレーム間に張設された
Ｓ字ばねによって支持されているため、このＳ字ばねの
弾性力で良好なクッション性をも得ることができる。

【００３３】請求項２記載の発明によれば、背中支持ワ
イヤを、その下端部を支点として横フレームに前後揺動
可能に取り付けたため、着座者がシートバックに凭れ掛
かることにより、背中支持ワイヤは下部の横フレームを
支点にして前後に揺動し、これによってシートバックに
加わる荷重の変動を確実に吸収することができる。

【００３４】請求項３記載の発明によれば、背中支持ワ
イヤを、少なくとも２本設けたＳ字ばねのみによって支
持したため、着座者がシートバックに凭れ掛かることに
より、背中支持ワイヤはＳ字ばねの弾性力によって前後
動し、これによってシートバックに対する荷重の変動が
確実に吸収されるとともに、着座者の腰部に対する弾性
支持の度合いを大きくすることができる。

【００３５】請求項４記載の発明によれば、背中支持ワ
イヤの中央部に背中支持補助部材を設けたため、背中支
持補助部材によって背中を支持する面積が大きくなり、
体圧の分散が良好に行われるとともに、様々の着座姿勢
に対応し得るようになり、さらに身体に対するホールド
性を向上させることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る背中支持構造が適用されるシート
の一実施形態を示す斜視図である。

【図２】本発明に係る背中支持構造の第１実施形態を示
す斜視図である。

【図３】第１実施形態の変形例の背中支持構造を示す斜
視図である。

【図４】本発明に係る背中支持構造の第２実施形態を示
す斜視図である。

【図５】第２実施形態の変形例の背中支持構造を示す斜
視図である。

【符号の説明】

１０，１０ａ，１０ｂ，１０ｃ 背中支持構造 ２ バックフレーム ２１ 縦フレーム ２２ 横フレーム ３ Ｓ字ばね ４ 背中支持ワイヤ ５ 背中支持補助部材

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 シートのシートバックにおける着座者の
   背中支持用の支持構造であって、環状で略矩形状を呈し
   たバックフレームと、このバックフレームの縦フレーム
   間に張設される少なくとも1本のＳ字ばねと、このＳ字
   ばねに支持されるようにバックフレームの横フレーム間
   に配設され、背中のＳ字曲線に合った曲面を有する背中
   支持ワイヤとからなることを特徴とするシートの背中支
   持構造。
2. 【請求項２】 上記背中支持ワイヤは、下端部を支点と
   して下部の横フレームに前後揺動可能に取り付けられて
   いることを特徴とする請求項１記載のシートの背中支持
   構造。
3. 【請求項３】 上記Ｓ字ばねは、少なくとも２本が設け
   られ、上記背中支持ワイヤは、Ｓ字ばねのみによって支
   持されていることを特徴とする請求項１記載のシートの
   背中支持構造。
4. 【請求項４】 上記背中支持ワイヤの中央部に、背中支
   持ワイヤの上下寸法より短く、幅寸法より大きい背中支
   持補助部材が設けられていることを特徴とする請求項１
   乃至３のいずれかに記載のシートの背中支持構造。