JP2000517058A - 電気化学発光標識及び電気化学発光消光剤を用いるアッセイ - Google Patents

電気化学発光標識及び電気化学発光消光剤を用いるアッセイ

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Abstract

(57)【要約】 本発明は、一般的分野として、電気発生化学発光とも呼ばれる電気化学発光(ECL)を使用する化学的及び生物学的アッセイに関する。特に本発明は、ECLを強力に消光する化学的部分の特定の種類、及びECL標識と組合せたそのようなECL消光剤の使用、例えばECL消光剤とECL標識とを使用するECLアッセイ法における使用に関する。そのような消光部分の一の種類は少なくとも一のベンゼン部分を含むものである。そのような消光部分の下位概念種は少なくとも一のフェノール部分、キノン部分、ベンゼンカルボン酸部分及び/またはベンゼンカルボキシレート部分を含むものである。

Description

【発明の詳細な説明】 電気化学発光標識及び電気化学発光消光剤を用いるアッセイ 関連出願 本出願は、1997年5月23日に出願されたアメリカ仮特許出願第60/047,605号に 基づく優先権を主張するものである。その開示は引用により本明細書の一部とす る。 技術の分野 本発明は、電気発生化学発光とも呼ばれる電気化学発光(ECL)を使用する、化 学的及び生物学的アッセイの一般的な分野に関するものである。特に本発明は、 強力にECLを消光させる特定のクラスの化学部分、及びこれらのECL消光剤をE CL標識と組み合わせた使用、例えばECL消光剤とECL標識とを用いるECLアッセイ 法における使用に関する。このような消光部分の1つのクラスは、少なくとも1 つのベンゼン部分を含むものである。またこのような消光部分のサブクラスは、 少なくとも1つのフェノール部分、キノン部分、ベンゼンカルボン酸部分、及び /またはベンゼンカルボキシレート部分を含むものである。 背景 本出願全体を通して、種々の刊行物、特許、公表特許出願を引用を特定するこ とにより参照する。これらの文献の引用の全体は、本明細書の終わりに請求の範 囲の直前に示す。本出願中で引用した刊行物、特許、公表特許明細書の開示は、 本発明が関連する技術の現状をより十分に記載するために、引用により本明細書 の一部とする。 発光とは、物質の温度が上昇すること以外の任意の理由によるその物質からの 光の放出を示すために一般的に用いられる用語である。一般に、原子あるいは分 子は「励起状態」からより低いエネルギー状態(通常、基底状態)へと移動すると きに、電磁エネルギーを有するフォトン(例えば光)を放出する。この過程は多く の場合「放射減衰」と呼ばれる。励起の原因は多数ある。励起の原因がフォトン である場合はその発光の過程は「光発光」と呼ばれる。励起の原因が電子である 場合はその発光の過程は「電気発光」と呼ばれる。より具体的には、電気発光は 、電子の直接的な注入や除去によって電子孔対が形成され、続いて電子孔対の再 編成が起こりフォトンが放出されることにより生じる。化学反応によって引き起 こされる発光は通常「化学発光」と呼ばれる。生きている生物体によって生成さ れる発光は通常「生物発光」と呼ばれる。光発光がスピン許容遷移(例えば一重 項-一重項遷移、三重項-三重項遷移)によって引き起こされる場合は、その光発 光の過程は通常「蛍光」と呼ばれる。一般的に、蛍光発光は、スピン許容遷移に よって急速に緩和され得る短期間の励起状態の結果として、励起の原因が除去さ れた後は持続しない。光発光がスピン禁止遷移(例えば三重項-一重項遷移)によ って引き起こされる場合は、その光発光の過程は通常「りん光」と呼ばれる。一 般的にりん光発光は、スピン禁止遷移によってのみ緩和され得るような長期間続 く励起状態の結果として、励起の原因が除去された後も長く持続する。 電気化学発光(ECL)、または電気生成化学発光とも呼ばれるものは、一般的に 、電気化学的に生成された電子的に励起された化学種からの電磁放射のフォトン の放出(例えば光)をいうものである。単純な例では、基底状態にある化学種Aが はじめに電気化学的に還元されて還元状態の化学種A-を生じ、これはその後電 極の表面から拡散し得る。同様に化学種Aは電気化学的に酸化されて酸化状態の 化学種A+を生じる。そして還元状態の化学種A-と酸化状態の酸化状態の化学種 A+は一緒に拡散し、反応を起こして電子的に励起された化学種Aと基底状態 の化学種Aを生じる。電子的に励起された化学種Aはフォトンを放出すること によって基底状態に緩和される。 A+e-→A- A-e-→A+ -+A+→A+A A→A+hν 通常の同様な例では共反応物CRが、電気化学的に生成された還元状態あるいは 酸化状態の化学種、A+あるいはA-のいずれかと反応して電子的に励起された状 態の化学種Aを生じ、そしてフォトンを放出することによって基底状態に緩 和される。 A+e-→A- A-e-→A+-+CR→A+CR' A++CR→A+CR' A→A+hν A→A+hν ECLは1920年代の終わりに最初に見出され、1960年代の終わりから1970年代の 間、その詳細が探求された。自然界におけるECL(例えば、発光状態、発光メカニ ズム、発光効率等)に関する多くの文献による概説が出版されている。例えば、K nightら、1994及びその中に引用されている参考文献を参照されたい。 多環式芳香族炭化水素のECLは、水性媒体中及び非水性液媒体中の両方におい て広範に研究されている。このような化合物の例としては、ナフタレン、アント ラセン、フェナントレン、ピレン、クリセン、ペリレン、コロネン、ルブレンが 挙げられる。 典型的な例は、9,10-ジフェニルアントラセン(DPA)のECLである。二段階の電 位が白金電極に印加され、アノード酸化生成物(すなわちラジカルカチオン、DPA・+ )が正電極に、カソード還元生成物(すなわちラジカルアニオン、DPA・-)が負電 極に生成される。これらの生成物は電子移動を受け、DPAと電子的な励起(一重項 )状態1DPAを生じ、これは化学発光によりフォトンを放出する(この場合は蛍光 )。この例では、発光状態は直接電子移動によって形成される(いわゆる「S経路 」)。 DPA-e-→DPA・+(電気酸化) DPA+e-→DPA・-(電気還元) DPA・++DPA・-→DPA+1DPA(電子移動) 1DPA→DPA・-+hν(化学発光) ECLはまた、多環式芳香族炭化水素を、電子移動の過程において適切な供与体 あるいは受容体分子として機能し得る他の化学種と組み合わせて用いることによ っても発生させることができる。例えば、別のよく知られたECL系としてDPAと供 与体分子、N,N',N",N'''-テトラメチルパラフェニレンジアミン(TMPD)を使 用するものがある。この場合は、発光状態は最初の電子移動段階の生成物からの 二番目の(効率の悪い)三重項-三重項崩壊の段階において形成される(いわゆる 「T経路」)。 TMPD-e-→TMPD・+(電気酸化) DPA+e-→DPA・-(電気還元) TMPD・++DPA・-→TMPD+3DPA(電子移動1) 3DPA3DPA→DPA+1DPA(電子移動2) 1DPA→DPA・-+hν(化学発光) 無機及び/または有機金属化合物のECLも広範に研究されている。このような 化合物の重要なクラスは、Ru(bpy)3 2+やOs(bpy)3 2+のような2,2'−ビピリジン(b py)のルテニウムやオスミウムとの錯体である。このような化合物のその他の例 としては、トリカルボニル(クロロ)(1,10-フェナントロリン)ルテニウム(I)、方 形平面白金(II)錯体、Cr(bpy)3 2+、Pt2(ジホスホナート)4 4-のような多核錯体、 MO6C12 2-のようなクラスターが挙げられる。例えば、Knightら、1994を参照され たい。 ほとんどの無機及び/または有機金属化合物の研究はRu(bpy)3 2+およびRu(bpy )3 2+と関連する化合物についてのものである。その理由は主としてそれらの化合 物の固有のいくらか例外的な性質によるものであり、そのような性質としては室 温において水溶液中で発光する能力や、容易に得られる電位において可逆的な一 電子移動反応を受けて、十分に安定な還元化学種あるいは酸化化学種を生じる能 力、酸素の存在に対する非感受性、そして特定の条件においては100%近くにも なる崩壊効率が挙げられる。例えば、Ru(bpy)3 2+の溶液を、錯体の酸化及び還元 電位の間を変化する二段階電位変化のサイクルにかけると、オレンジ色の発光が 見られる(約620nm)。 Ru(bpy)3 2+-e-→Ru(bpy)3 3+(電気酸化) Ru(bpy)3 2++e-→Ru(bpy)3 +(電気還元) Ru(bpy)3 2+ →Ru(bpy)3 2++hν(化学発光) Ru(bpy)3 2+を強力な酸化剤種あるいは還元剤種と溶液中で組み合わせて使用す ることによってもECLを発生できる。この方法では、二段階酸化-還元サイクルの 半分のみを印加するだけてよい。例えば、共反応物であるペルオキソジスルフェ ート(すなわちS2O8 2-、ペルスルフェート)とオキサレート(すなわちC204 2-)は不 可逆的にそれぞれ還元あるいは酸化され、酸化性のSO4 ・-イオンあるいは還元性 のCO2 ・-イオンを形成する。例えば以下の通りである。 Ru(bpy)3 2++e-→Ru(bpy)3 +(電気還元) S2O8 2-+e-→S04 2-+S04 ・-(電気還元) S04 ・-+Ru(bpy)3 2+→S04 2-+Ru(bpy)3 3+(電子移動) 同様な方法で、Ru(bpy)3 2+を、還元剤として作用するアミンあるいはアミン基 を含む化合物のような共反応物と組み合わせて使用することによってもECLを生 成できる。一般に、アミンとのRu(bpy)3 2+ECL反応による発光は、一級<二級<三 級の順に増大する。脂肪族あるいは脂環族アミンは一般に芳香族アミンよリも効 率がよい。よく用いられるアミンの一例は、トリ-n-プロピルアミン(すなわちN (CH2CH2CH3)3、TPAH)である。例えば、Lelandら、1990を参照されたい。一般的 に、電気的酸化とそれに続く反応の際に一個のプロピル基のα炭素からプロトン が失われてTPA(すなわち(CH3CH2CH2)2N(CHCH2CH3))が生じると考えられている 。一連のECL反応は下のような反応によって要約される。 Ru(bpy)3 2+-e-→Ru(bpy)3 3+(電気酸化) TPAH+e-→[TPAH]+→TPA+H+(電気酸化及び反応) このように、Ru(bpy)3 2+のECLは広い範囲の共反応物の測定に用いられてきた 。例えば、Ru(bpy)3 2+ECLはシユウ酸塩及び過硫酸塩の10-13モル/リットルとい う低濃度での測定に有効に用いられている。同様に、Ru(bpy)3 2+ECLは脂肪族ア ミン、脂環式アミン(例えばスパルテイン、ニコチン、アトロピン)、エリスロマ イシンのような薬物(トリアルキルアミン基をもつ)、アミノ酸(例えばバリン、 プロリン)、及びタンパク質の測定に用いられている。これは、他のルテニウム やオスミウムキレートと同様に、化学的及び生化学的アッセイのための感受性の 高いECL標識としてのRu(bpy)3 2+の利用につながるものであった。 化学的及び生化学的なアッセイには一般的に、対象とするアナライトを、予め 決められた非限定量の一種以上のアッセイ試薬と接触させ、結果として生じる生 成物(検出生成物)の一種以上の特性を測定し、そして通常は試験されるサンプル に予測される範囲の既知の量の対象のアナライトを含む標準サンプルから決定さ れた関係を用いることによって、測定した値と当初のサンプル中に存在するアナ ライトの量とを関連付けることが含まれる。一般的に、検出生成物には一種以上 のアッセイ試薬によって与えられる一種以上の検出可能な標識が取り込まれる。 通常に用いられる標識の例としては、125I、32P等の放射性同位体標識、酵素( 例えばペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ)及び酵素基質標識、蛍光標識( 例えばフルオロセイン、ローダミン)、電子スピン共鳴標識(例えばニトロオキシ ドフリーラジカル)、免疫反応性標識(例えば抗体、抗原)、結合対(例えばビオチ ン-アビジン、ビオチン-ストレプトアビジン)の一方のメンバーである標識等が 挙げられる。サンドイッチアッセイは一般に、対象となるアナライトが、最終的 に分離に用いられる一種のアッセイ試薬(例えば抗体、抗原、結合対の一方のメ ンバー)と、検出可能な標識を有する第二のアッセイ試薬との間にサンドウィッ チされた複合体を形成することを含む。競合アッセイは一般に、対象となるアナ ライトとアナライトの類似物質の両方が、別の一種の試薬(例えば抗体)に存在す る結合部位について競合し、アナライト、類似物質、あるいは結合試薬のいずれ か一種が検出可能な標識を有する系を含む。 近年、ECL標識は化学的及び生物学的なアッセイにおいてより一般的なものに なってきている。例えば、ECL標識(例えばRu(bpy)3 2+部分を含むもの)は、反応 基を(例えば1つ以上のビピリジルリガンドに)結合することによつて修飾して、 タンパク質、核酸、その他の分子のための活性化された標識試薬を形成すること ができる。この方法は、32P放射活性標識のような他の検出システムと比較して 、以下に述べるような多数の利点、すなわち(1)放射性同位体を用いないので、 サンプルの取り扱いや廃棄に伴う問題が軽減されること、(2)各標識が測定サイ クル一回につき複数のフォトンを放出することができるのでECL標識の検出限界 が非常に低く、0.2ピコモル(2x10-13M)程度である場合も多いこと、(3)多くの 場合6桁のオーダーにもなる標識定量のダイナミックレンジ、(4)長い貯蔵寿 命を有することが多い非常に安定した標識であること、(5)低分子量の標識(約10 00原子単位)であり、多くの場合、免疫的活性、溶解度、ハイブリダイゼーショ ン能力等に影響を与えることなくタンパク質やオリゴヌクレオチド等に結合する ことができること、(6)一連のECL反応は電気化学的に開始され、電極の近傍の適 切な電気化学的特性を有する種のみが検出されるので、選択性が高く、バックグ ラウンドが低いこと、(7)単純で通常は数秒しか要しない迅速な測定であること 等の利点(但し、これらに限定されない)を有する。 近年、ECLは免疫学的アッセイ及びDNAプローブ分析の開発に使用されてい る。例えば、Blackburnら、1991、Kentenら、1991、1992、Lelandら、1992、及 びYost、1993を参照されたい。 典型的で周知のECLを用いたDNA分離アッセイにおいては、標的オリゴヌク レオチドは、ビオチンを含むプライマーオリゴヌクレオチドを用いて増幅され( 例えばPCRを用いて)、ビオチン部分を含む高濃度の標的オリゴヌクレオチドを生 成し、次にECL標識が結合され、標的オリゴヌクレオチドにハイブリダイズして ハイブリダイズしたプローブ-標的二本鎖を形成する過剰量のオリゴヌクレオチ ドハイブリダイゼーションプローブを添加し、強力かつ選択的にビオチンを含む 二本鎖に結合するストレプトアビジンで被覆したビーズを添加し、ビーズを混合 物から分離し(例えば、磁気、重力により)、それにより過剰量の標識オリゴヌク レオチドハイブリダイゼーションプローブを除去し、ビーズに結合し、ECL標識 されたハイブリダイゼーションプローブにハイブリダイズした標的オリゴヌクレ オチドをECLを用いて検出あるいは定量する。 Blackburnら(1991)は、Ru(bpy)3 2+のN-スクシンイミジルエステル誘導体を、 ECL標識をオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションプロープに結合するため の手段として使用することを明確に開示している。ビオチン標識したオリゴヌク レオチドプライマーを用いることにより、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅産物 をストレプトアビジンで被覆した磁気ビーズに結合させることにより分離するこ とを可能としている。分離後、Ru(bpy)3 2+標識されたオリゴヌクレオチドプロー ブを結合PCR産物にハイブリダイズさせ、ECLによって検出している。 Kentenら(1991)は同様に、ガン遺伝子、ウイルス、及びクローン化された遺 伝子からPCRによって増幅された生成物におけるECLアッセイの使用について明確 に開示している。あるアッセイでは、Ru(bpy)3 2+標識をオリゴヌクレオチドプラ イマーの一方あるいは両方に結合し、増幅、結合、及び分離の後にPCR産物をECL によって検出している。別のアッセイでは、結合されたRu(bpy)3 2-を有するオリ ゴヌクレオチドプローブを磁気ビーズに結合したPCR産物にハイブリダイズさせ 、過剰なプローブを洗浄によって除去し、ハイブリダイズした生成物をECLによ って検出している。三番目のアッセイでは、結合されたRu(bpy)3 2+標識を有する オリゴヌクレオチドプローブを非結合PCR産物にハイブリダイズさせ、ハイブリ ダイズした生成物を磁気ビーズに結合させ、余分なプローブを洗浄によって除去 し、ハイブリダイズした生成物をECLによって検出している。それぞれの場合に おいて、所望の生成物はECL標識の存在により検出されている。 Kentenら(1992)はECL標識を用いた「結合アッセイ」を明確に開示している。 明らかに対象となるアナライト、ECL標識、及び粒子を含む複合体が形成され、 その後この複合体の存在をECLによって検出しているようである。 化学的及び生物学的アッセイは便宜的に「分離アッセイ」あるいは「非分離ア ッセイ」に分類されることが多い。一般的には、分離アッセイにおいては、検出 生成物は、他の生成物及び/または未反応の対象となるアナライト及び未反応の アッセイ試薬から物理的に分離される。(例えば、過剰な標識試薬の標識ではな く、検出生成物の一部である標識のみを検出するために検出生成物を物理的に分 離することが必要であることが多い。)その後アナライトの量は標識された検出 生成物の量から直接的に、あるいは使用されなかった標識試薬の量から間接的に 測定することができる。分離は、結合対(例えば、ビオチン-アビジン、抗原-抗 体、オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションプローブ-オリゴヌクレオチド) のメンバー間の選択的な結合反応を利用して行うことができる場合が多い。例え ば、結合対の一方のメンバーを有する標識検出生成物を最初に液体相(例えば溶 液中)で形成し、そして例えば結合対のもう一方のメンバーを有する固体相試薬 によりECL標識された検出生成物を捕捉することにより分離することができ、検 出生成物は未反応のアナライトや試薬を含まない固体相を洗浄することによっ て回収することができる。結合対を用いたその他の多くの分離方法が当分野で周 知である。 分離の段階を必要としないアッセイが非常に望ましい。この理由は、そのよう なアッセイが一般的により少ないサンプルの操作で済み、また「リアルタイム」 のアッセイに容易に適用できることが多いことによる。このようなアッセイは便 宜的に「非分離アッセイ」に分類できることが多い。非分離アッセイにおいては 、検出生成物は一般的に未使用のアッセイ試薬や未使用のアナライトから物理的 に分離されない。そのかわり、検出生成物の存在は通常、アッセイ反応物の少な くとも一種が、対象となるアナライトに接触した結果としてのみ獲得あるいは喪 失する特性によって検出される。多くのこのような非分離アッセイが開発されて いる。 非分離アッセイのある例においては、酵素及び酵素阻害剤の両方が用いられる 。対象となるアナライトに接触すると、その酵素と酵素阻害剤は結合する(酵素 活性を低下させる)か、あるいは分離する(酵素活性を上昇させる)。そしていず れの酵素活性の変化も、対象のアナライトの存在及び/または量と関連付けられ る。例えば、Yoshidaら、1980及びZukら、1980を参照されたい。 非分離アッセイの別の例では、発色団及び発色団修飾剤の両方が用いられる。 この場合も同様に、対象となるアナライトに接触すると、前記発色団と発色団修 飾剤とは結合するか分離し、それによって特定の色の色の変化あるいは強度の変 化が得られる。そして色及び/または色の強度のいずれの変化も、対象となるア ナライトの存在及び/または量に関連付けられる。例えば、Zukら、1980を参照 されたい。 非分離アッセイのさらに別の例においては、蛍光団及び蛍光団消光剤の両方が 用いられる。対象のアナライトに接触すると、その蛍光団及び蛍光団消光剤は結 合する(蛍光を減少させる)か、あるいは分離する(蛍光を増大させる)。例えば、 Ullmanら、1976、Ullman、1979、Zukら、1981年、及びUllmanら、1981を参照さ れたい。光発光消光剤を利用する光発光アッセイ(例えば、蛍光アッセイ)のより 最近の例について以下に記載する。 Tyagiら(1996)は、蛍光団(すなわち標識)と蛍光消光剤の両方を有する、特定 のオリゴヌクレオチドプローブ(「分子ビーコン」と呼ばれる)を用いた、オリゴ ヌクレオチドのアッセイを明確に開示している。標的オリゴヌクレオチドの非存 在下ではオリゴヌクレオチドプローブの部分がそれ自身にハイブリダイズし、蛍 光団と蛍光消光剤を近接させる。この状態では蛍光シグナルは観察されない。標 的オリゴヌクレオチドの存在下では、オリゴヌクレオチドプローブは脱ハイブリ ダイズし、標的オリゴヌクレオチドに優先的にハイブリダイズする。その間に蛍 光団と蛍光消光剤が分離する。この状態では蛍光シグナルが観察される。すなわ ち、標的オリゴヌクレオチドとハイブリダイズしているオリゴヌクレオチドプロ ーブのみから蛍光が観察される。この方法では、蛍光シグナルを測定する前にハ イブリダイズしていないオリゴヌクレオチドプローブを除去する必要がない。 Heidら(1996)は、二重標識した蛍光発生ハイブリダイゼーションプローブを用 いた、DNA分析のためのリアルタイム定量アッセイを明確に開示している。レ ポーターとして機能する第一の蛍光色素(FAM、6-カルボキシフルオレセイン)と 、第一の蛍光色素の放出スペクトルを消光させる第二の蛍光色素(TAMRA,6-カル ボキシテトラメチルローダミン)を有する1つのオリゴヌクレオチドプローブを 調製する。Taqポリメラーゼの5'-特異的エクソヌクレアーゼ活性により、分解さ れる標的オリゴヌクレオチドにハイブリダイズしたプローブのみが生じ、二種の 色素が放出され、結果としてFAMの蛍光発光が増大する。 Wittwerら(1997)は、増幅中のPCR産物の連続的な蛍光モニター方法を明確に開 示している。あるアッセイにおいては、「供与体」部分(例えばフルオレセイン) と「受容体」部分(例えばローダミン)の両方を有する市販の二重標識オリゴヌク レオチドプローブが標的オリゴヌクレオチドにハイブリダイズさせられる。近接 した受容体は供与体からの蛍光シグナルを減衰させる。5'-特異的エクソヌクレ アーゼ活性を有するポリメラーゼを添加すると、重合の間、オリゴヌクレオチド プローブが分解され、供与体及び受容体の両方が放出される。受容体基に近接し た状態でなくなると、供与体は増大した蛍光シグナルを生成する。別のアッセイ では、共鳴エネルギー移動に基づいて、二種の異なるオリゴヌクレオチドプロー ブを調製していた。1つは「供与体」部分(例えばフルオレセイン)を有する のである。標的オリゴヌクレオチドにハイブリダイズするとき、供与体と受容体 部分が近接するように二つのオリゴヌクレオチドプローブが選択された。供与体 が光励起されると、そのエネルギーの一部あるいは全部が受容体に移動し、受容 体からの蛍光シグナルが増大する(例えば、Maliwalら、1995も参照されたい)。 この方法では、標的オリゴヌクレオチドは受容体からの蛍光シグナルの増大によ り検出され、定量される。 ECLの消光とは異なり、光発光の消光は広く研究されており、多数の化合物が 多様な条件下で光発光を消光させることが知られている。これとはまったく対照 的に、ECLを効果的に消光させることが知られている化合物はわずかしかなく、 周知のものの多くはECLを不完全にしか消光させないものやアッセイにおいては 実用的ではないものである(例えばメチルビオロゲンカルボキシレート)。 本発明者らは、1つ以上のベンゼン部分を含む化合物、特に少なくとも1つの フェノール部分、キノン部分、ベンゼンカルボン酸部分、及び/またはベンゼン カルボキシレート部分を含む化合物のような特定の別のクラスの化合物が強力に ECLを消光させることを見出した。 このような化合物のECL特性は広く研究されてはいなかった。アントラセンの ような強力な蛍光化合物を使用してECL発光を増大させることは知られており、 実際に一般的なECLアッセイにおいて広く使用されている。Chmuraら(1994)は、 抗酸化剤とクエン酸塩のようなフリーラジカルスカベンジャーのアッセイであっ て、これらの化合物のアントラセン増感ECLを消光させる能力に基づくものを研 究している。Krickaら(1991)は、p-ヨードフェノールの、消光剤ではなく、化 学発光増強剤としての使用を明確に記載している。Hillら(1988)は、ECLを逆相 液体クロマトグラフィー(RPCL)に適用する研究において、多数のダンシル化誘導 体からのECL発光を研究している。彼らは、周知の蛍光標識であるダンシル基(す なわち、5-ジメチルアミノ-1-ナフタレンスルホニル)の、多くのアミノ酸やフェ ノール化合物におけるECL発光に対する効果を研究し、ダンシル基が存在すると 試験した化合物の多くにおいてそのECL発光が増大することを見出した。Abruna ら(1985)は、オスミウム錯体のECLに関する研究において、フェリセニウム化学 種(フェロセンの酸化形)、二個のシクロペンタジエニル イオン(すなわちC5H5 -)と、その間にはさまれた第一鉄(すなわちFe+2)イオンと を含む化学種によるOs(bpy)2diphos+2化学種のECLの消光について記載している 。 本明細書に開示する効果的なECL消光剤を使用することにより、ECL標識とECL 消光剤を用いるアッセイであって、特にその他の検出法と比べてECL検出法によ ってもたらされる利点の全てではないにしてもその多くのものを与える、非分離 アッセイ等のアッセイを開発し得る。従って本発明は、広義には、ECLを強力に 消光する化学部分の特定のクラス、及びこれらのECL消光剤の例えばECL標識及び ECL消光剤を用いるECLアッセイにおける使用に関するものである。このような消 光部分のクラスの1つは、少なくとも1つのベンゼン部分を含むものである。こ のような消光部分のサブクラスは、少なくとも1つのフェノール部分、キノン部 分、ベンゼンカルボン酸部分、及び/またはベンゼンカルボキシレート部分を有 するものである。 発明の簡単な説明 本発明は、一般的には、ECLを強力に消光する化学部分の特定のクラス、及び これらのECL消光剤の、例えばECL消光剤及びECL標識を用いるECLアッセイ法にお ける、ECL標識と組合せた使用に関連するものである。このような消光部分の1 つのクラスは、少なくとも1つのベンゼン部分を含むものである。このような消 光部分のサブクラスは、少なくとも1つのフェノール部分、キノン部分、ベンゼ ンカルボン酸部分、及び/またはベンゼンカルボキシレート部分を有するもので ある。 本発明の1つの形態は、サンプル組成物中のアナライトを検出する方法であっ て、(a)前記サンプル組成物、ECL標識を有する試薬、及び少なくとも1つのベン ゼン部分を含むECL消光部分を有する試薬を含むアッセイ混合物を調製し、(b)(i )段階(a)で調製したアッセイ混合物、及び(ii)ECL標識を含む前記試薬、ECL消光 部分を有する前記試薬、及び既知量の前記アナライトを含むアッセイ混合物のEC L発光の間の差を測定し、(c)段階(b)で測定された差を前記サンプル中のアナラ イトの量と関連付ける段階を含む前記方法に関する。 ある態様においては、前記ECL消光部分は、フェノール部分、キノン部分、ベ ンゼンカルボン酸部分、及びベンゼンカルボキシレート部分からなる群から選択 される少なくとも1つの部分を含む。ある態様においては、前記ECL消光部分は 少なくとも1つのフェノール部分を含む。ある態様においては、前記ECL消光部 分は少なくとも1つのキノン部分を含む。ある態様においては、前記ECL消光部 分は少なくとも1つのベンゼンカルボン酸部分を含む。ある態様においては、前 記ECL消光部分は少なくとも1つのベンゼンカルボキシレート部分を含む。 ある態様においては、前記ECL標識はルテニウムを含む。ある態様においては 、前記ECL標識はオスミウムを含む。ある態様においては、前記ECL標識は多環式 芳香族炭化水素を含む。 ある態様においては、前記アナライトはオリゴヌクレオチドを含む。ある態様 においては、前記アナライトはDNAを含む。ある態様においては、前記アナラ イトはRNAを含む。ある態様においては、前記アナライトはポリペプチドを含 む。ある態様においては、前記アナライトは抗体を含む。ある態様においては、 前記アナライトは抗原を含む。ある態様においては、前記アナライトは酵素を含 む。ある態様においては、前記アナライトは酵素基質を含む。ある態様において は、前記アナライトは多糖を含む。 ある態様においては、前記アナライトの既知量はゼロである。 ある態様においては、ECL標識を有する試薬及びECL消光部分を有する試薬は同 じ試薬である。別の態様においては、前記のECL標識を有する試薬及びECL消光部 分を有する試薬は異なる試薬である。 1つの態様においては、前記方法は、段階(a)の前に当初のサンプル組成物中 に存在する基質について化学反応を行い、前記サンプル組成物中にアナライト質 を生成し、段階(b)で測定された差を当初のサンプル組成物中の基質の量と関連 付ける段階をさらに含む。1つの態様においては、前記方法は、段階(b)の測定 の前に段階(a)で調製されたアッセイ混合物について化学反応を行う段階をさら に含む。 本発明のもう1つの形態は、ECL消光部分を含み、適当な容器中に入れた状 態で提供される、本発明のアッセイ方法に使用するためのアッセイ試薬に関する 。ある態様においては、前記アッセイ試薬は、ECL消光部分及びECL標識を含み、 適当な容器中に入れた状態で提供される。 本発明のさらに別の形態は、本発明のアッセイ方法に使用するためのアッセイ 試薬キットであって、適当な容器中のECL消光部分を含むアッセイ試薬と、前記 方法を実施するための説明書とを含む前記キットに関する。ある態様においては 、前記アッセイ試薬キットは、適当な容器に入れた、ECL消光部分及びECL標識を 含むアッセイ試薬と、前記方法を実施するための説明書とを含む。 以下に明らかにされるように、本発明の1つの形態における好ましい特徴及び 特性は、本発明のその他のすべての形態に適用され得る。 図面の簡単な説明 図1は、下記実施例1で記載する、フェノール(消光剤としての)の濃度に対す るRu(bpy)3 2+/TPAHのECLの強度を示すグラフである。 図2は、下記実施例2で記載する、フェノール(消光剤としての)の濃度に対す る、Ru(bpy)3 2+/C2O8 -2のECLの強度を示すグラフである。 図3は、下記実施例3で記載する、フェノール、p-ヒドロキシ安息香酸(PHBA )及びp-アミノ安息香酸(PABA)(消光剤としての)の濃度に対する、Ru(bpy)3 2+/T PAHのECLの強度を示すグラフである。 図4は、下記実施例7で記載する、フェノール、カテコール、ヒドロキノン、 及びキノン(消光剤としての)の濃度に対する、Ru(bpy)3 2+/TPAHのECLの強度を示 すグラフである。 図5は、下記実施例8で記載する、フェノール、キノン、及び2,3-ジクロロ-5 ,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン(DDQ)(消光剤としての)の濃度に対する、Ru(bpy)3 +2 /TPAHのECLの強度を示すグラフである。 図6は、下記比較例1で記載する、フェノール(消光剤としての)及びメチルビ オロゲンカルボキシレート(比較として)の濃度に対する、Ru(bpy)3 2+/TPAHのECL の強度を示すグラフである。発明の詳細な説明 本発明は、一般的には、ECLを強力に消光する化学部分の特定のクラスと、例 えばECL消光剤とECL標識とを用いるECLアッセイにおけるこれらのECL消光剤のEC L標識と組み合わせた使用に関するものである。A.電気化学発光標識 上述のように、ECLは、電気化学的に発生し電子的に励起された化学種からの 電磁放射によるフォトンの放出(例えば光)である。 本明細書で使用する用語「電気化学発光標識」及び「ECL標識」は、電気化学 発光特性を有する化学部分をいう。より具体的には、ECL標識は、電子的に励起 された化学種に電気化学的に変換されることのできる化学部分であり、この化学 種はより低いエネルギー状態に緩和されるときに、直接あるいは別の化学反応に よって1つ以上のフォトン(例えば光)を放出するものである。 多数の化学部分がECL標識となり得る。このような部分の重要なクラスは、同 じでもよく異なっていてもよい1つ以上の金属イオンと同じでもよく異なってい てもよい1つ以上の配位子とを含む金属キレートから誘導されるものである。 ある態様においては、金属キレートの金属イオンはその任意の酸化状態にある 遷移金属イオン及び希土類金属イオンからなる群から選択される。別の態様にお いては、金属イオンはその任意の酸化状態にあるルテニウム、オスミウム、レニ ウム、イリジウム、ロジウム、白金、インジウム、パラジウム、モリブデン、テ クネチウム、銅、クロム、及びタングステンのイオンからなる群から選択される 。また別の態様においては、金属イオンはその任意の酸化状態にあるルテニウム 及びオスミウムのイオンからなる群から選択される。 金属キレートの配位子は単座配位子であってもよく多座配位子であってもよく 、また有機物(すなわち少なくとも1つの炭素原子を含んでいる)であっても無機 物であってもよい。単座配位子の例としては、一酸化炭素(すなわちCO)、シアニ ドイオン(すなわちCN-)、イソシアニドイオン(すなわちNC-)、ハライド(例えばF- 、Cl-、Br-、I-)、ホスフィン(例えばPR3)、アミン(例えばNR3)、スチルベン( 例えばSbR3)、アルシン(例えばAsR3)等が挙げられる。多座配位子の例としては 、 窒素を含む芳香族複素環配位子のような芳香族複素環配位子が挙げられる。窒素 を含む芳香族複素環配位子の例としては、非置換のあるいは置換されたビピリジ ル、ビピラジル、テルピリジル、フェナントロリル等が挙げられる。置換基の例 としては、C1-6アルキル、置換C1-6アルキル、C6-15アリール及びヘテロアリ ール、置換C6-15アリール及びヘテロアリール、C7-15アラルキル及びヘテロア ラルキル、置換C7-15アラルキル及びヘテロアラルキル、カルボキシ(すなわち- COOH)、カルボキシレート(すなわち-COO-)、カルボキシエステル(すなわち-COOR 、例えばN-ヒドロキシサクシンイミジルエステル)、カルボキシアルデヒド(す なわち-CHO)、カルボキサミド(すなわち-CONH2)、ヒドロキシ(すなわち-OH)、シ アノ(すなわち-CN)、イソシアノ(すなわち-NC)、アミノ(すなわち-NH2)、イミノ (すなわち=NH)、スルフヒドリル(すなわち-SH)、ホスフィノ(すなわち-PH2)等 が挙げられる。 ある態様においては、ECL標識は、下に示したトリス(2,2'-ビピリジル)ルテニ ウム(II)カチオン、Ru(bpy)3 2+あるいはその誘導体から誘導される。 Ru(bpy)3 2+塩とその誘導体は、一般的に非常に安定であり、化学的に修飾して 反応性の化学基を有する(すなわち、化学的に活性化された化学種を形成する)よ うにすることができる水溶性の化合物である。例えば、1つ以上の反応性の化学 基を1つ以上のビピリジル配位子に結合でき、これはRu(bpy)3 2+様の部分(ECL標 識として)の他の分子への結合を可能とする。例えば、Bardら、1993、及びBlack burnら、1991を参照されたい。 例えば、三つのビピリジル配位子の1つを誘導化して、リンカー基を介してビ ピリジル配位子の1つに結合しているカルボン酸基のN-サクシンイミジルエス テルを有するようにすることができる。このような化合物は、4-(N-サクシンイ ミジルオキシカルボニルプロピル)-4'-メチル-2,2'-ビピリジンビス(2,2'-ビピ リジン)ルテニウム(II)ジヘキサフルオロホスフェートであり、下に示したカチ オンで d)より市販品として入手可能である。下に示したこの活性化型エステルは、Ru(b py)3 2+様ECL標識を、例えばアミン基(例えば-NH2)を有する分子に容易に結合す ることを可能とする。 別の例では、三つのビピリジル配位子の1つを誘導化して、任意にリンカー基 を介してマレイミド基を有するようにすることができる。これは、例えば上に示 したような活性型のエステル誘導体を、マレイミドアルキルアミン(例えばマレ イミドエチルアミン)と反応させることによって得られる。このような化合物は 、4-(マレイミド-エチルアミノカルボニルプロピル)-4'-メチル-2,2'-ビピリジ ンビス(2,2'-ビピリジン)ルテニウム(II)ジヘキサフルオロホスフェートであり 、下に示したカチオンである。このマレイミドはRu(bpy)3 2+様のECL標識を、例 えばチオール基(例えば-SH)を有する分子に容易に結合することを可能とする。 Ru(bpy)3 2+様のECL標識が誘導されうる金属キレートのその他の例としては、 以下のものが挙げられる: ビス[(4,4'-カルボメトキシ)-2,2-ビピリジン]-2-[3-(4-メチル-2,2'-ビピリ ジン-4'-イル)プロピル]-1,3-ジオキソランルテニウム(II)、 ビス[(2,2'-ビピリジン)-[4-(ブタン-1-アール)-4'-メチル-2,2'-ビピリジン] ルテニウム(II)、 ビス[(2,2'-ビピリジン)-[4-(4'-メチル-2,2'-ビピリジン-4'-イル)酪酸]ルテ ニウム(II)、 ビス[(2,2'-ビピリジン)-[4-(4'-メチル-2,2'-ビピリジン)-ブチルアミン]ル テニウム(II)、 ビス[(2,2'-ビピリジン)-[1-ブロモ-4-(4'-メチル-2,2'-ビピリジン-4'-イル )ブタン] ルテニウム(II)、及び ビス[(2,2'-ビピリジン)マレイミドヘキサン酸]-4-メチル-2,2'-ビピリジン-4 '-ブチルアミドルテニウム(II)。 ECL標識が誘導され得る金属キレートのその他の例としては、例えばOs(bpy)3 2 + 及びその誘導体のようなその他の2,2'-ビピリジル錯体、フェナントロリン(phe n)及びその誘導体、トリカルボニル(クロロ)(1,10-フェナントロリン)ルテニウ ム(I)、方形平面白金(II)錯体、Cr(bpy)3 2+等のその他の遷移金属蛍光団、Pt2( ジホスホネート)4 4-のような多核錯体、及びMo6Cl12 2-のようなクラスターが挙 げられる。 ECL標識となり得る化学部分のもう1つの重要なクラスは、例えば、ナフタレ ン、アントラセン、9,10-ジフェニルアントラセン、フェナントレン、ピレン、 クリセン、ペリレン、コロネン、ルブレン等の多環式芳香族炭化水素、及びフル オレセイン、ローダミン等の有機レーザー色素から誘導されるものであり、これ らは電気化学的励起によって発光することができる。 一般的には、一種類以上のECL標識を別の分子(例えば抗体、オリゴヌクレオチ ドプローブ)に結合する(例えば抱合させる)。当業者に周知の標準的な合成法を 用いてECL標識を分子に結合する(標識分子を形成する)ことができる。例えば、 上記したように、ECL標識(例えばRu(bpy)3 2+またはその誘導体)を含む分子を誘 導して化学的に活性化された化学種(例えば、活性化型エステル、マレイミド)を 形成し、これを何らかの分子と反応させ、その分子と共有結合する(例えば、標 識されたアッセイ試薬を生成する)ことができる。B.消光部分 上述のように、ECLは、直接あるいは間接的に電気化学的に発生した、電子的 に励起された化学種からの電磁放射のフォトンの放出(例えば光)の過程である。 観察されるECL放出は、ECL標識と消光接触する消光部分によって、部分的あるい は完全に減衰される。本明細書で使用する用語「消光部分」及び「消光剤」は、 ECL標識と消光接触すると、観察されるECL発光を減衰させる化学部分をいう。 本明細書で使用する用語「消光接触する」は、ECL標識からの観察されるECL発 光がECL消光部分の存在により減衰される状態をいう。ECL標識と消光接触する消 光部分は、その標識から観察されるECL発光を少なくとも10パーセント減衰させ るものである。好ましくは、ECL標識と消光接触する消光部分は、その標識から 観察されるECL発光を少なくとも20パーセント、より好ましくは少なくとも30% 、さらに好ましくは少なくとも40%、さらにより好ましくは少なくとも50%減衰 させるものである。通常は、ECL標識と消光接触する消光部分は、ECL標識と空間 的に近接して物理的に存在する。例えば、ECL標識と消光接触する消光部分は、 一般的にはECL標識から約100nm未満、より一般的には約50nm未満、さらに一 般的には約30nm未満、さらにより一般的には約10nm未満の距離だけ離れてい る。当業者であれば周知の標準的方法を使用して、意図される消光部分が観察さ れるECL発光を実際に減衰させるかどうか、また特定の消光部分が実際にECL標識 と消光接触にあるのかどうかを判断できる。 特定の理論に拘束させるつもりはないが、消光効果についていくつかの可能な メカニズムが仮定される。一つのメカニズムは、電子的に励起された標識が電子 を消光剤に移動させる(おそらく量子力学的トンネルによる)ことによって緩和さ れて、電子的に励起された消光剤が生じ、それが非放射的に(例えば、振動や回 転により)緩和するというものである。別のメカニズムは、電子的に励起された 標識がフォトンを放出することによって緩和され、フォトンが消光剤によって吸 収され、電子的に励起された消光剤が生じ、これがやはりは非放射的に緩和され るというものである。さらに別のメカニズムは、消光部分が電気化学的に電気酸 化型あるいは電気還元型生成物に変換され(典型的にはECL測定の間に)、この生 成物(あるいはさらに続く反応の生成物)が例えば前述のメカニズムの一つによっ てECLを消光させるというものである。さらに別のメカニズムは、消光部分ある いは消光部分の電気酸化型あるいは電気還元型生成物(あるいはさらに続く反応 の生成物)がフリーラジカルスカベンジャーとして作用し、一連のECL反応に関わ る一以上の化学種を遮断し(例えば、TPAがRu(bpy)3 3+との反応の前に というものである。 多数の化学部分が消光部分となり得る。このような消光部分の重要な種類の一 つは、少なくとも一のベンゼン部分を含むものである。好ましい消光部分の下位 概念種の一つは、少なくとも一のフェノール部分を含むものである。別の好まし い消光部分の下位概念種は、少なくとも一のキノン部分を含むものである(例え ば、1,4-ベンゾキノンあるいは1,2-ベンゾキノン)。さらに別の好ましい消光部 分の下位概念種の一つは、少なくとも一のベンゼンカルボン酸部分あるいはベン ゼンカルボキシレート部分を含むものである。 本明細書で使用する用語「消光剤」は、消光部分を含む化学化合物をいう。少 なくとも一のフェノール部分を含む消光剤、及び少なくとも一のフェノール部分 を含む消光部分を誘導し得るものの例としては、限定するものではないが、以下 のものが挙げられる。 フェノール; アルキルフェノール、例えばo-アルキルフェノール、m-アルキルフェノール 、及びp-アルキルフェノール等のC1-6アルキルフェノール、例えばo-メチル フェノール(すなわちo-クレゾール)、m-メチルフェノール(すなわちm-クレゾ ール)、p-メチルフェノール(すなわちp-クレゾール)、o-エチルフェノール、 m-エチルフェノール、p-エチルフェノール、o-プロピルフェノール、m-プロ ピルフェノール、 及びp-プロピルフェノール; アリールフエノール、例えばo-アリールフェノール、m-アリールフェノール 、及びp-アリールフェノール等のC7-10アリールフェノール、例えばp-フェニ ルフェノール; ハロフェノール、例えばo-ハロフェノール、m-ハロフェノール、及びp-ハ ロフェノール、例えばo-フルオロフェノール、m-フルオロフェノール、及びp -フルオロフェノール; ヒドロキシフェノール、例えばo-ヒドロキシフェノール(すなわちカテコール )、m-ヒドロキシフェノール(すなわちレゾルシノール)、及びp-ヒドロキシフ ェノール(すなわちヒドロキシキノン);及び ビフェノール、例えば4,4'-ビフェノール等。 少なくとも一のキノン部分を含む消光剤、及び少なくとも一のキノン部分を含 む消光部分を誘導し得るものの例としては、限定するものではないが、以下のも のが挙げられる: キノン(すなわちベンゾキノン)、例えばo-キノン(すなわち1,2-ベンゾキノン )、及びp-キノン(すなわち1,4-ベンゾキノン); アルキルキノン、例えば、C1-6アルキル-1,4-ベンゾキノン等のC1-6アルキ ルキノン、例えば2-メチル-1,4-ベンゾキノン、2-エチル-1,4-ベンゾキノン、2- n-プロピル-1,4-ベンゾキノン、2,6-ジメチル-1,4-ベンゾキノン、及び2,5-ジ メチル-1,4-ベンゾキノン; ハロキノン、例えばハロ-1,4-ベンゾキノン、例えば2-フルオロ-1,4-ベンゾキ ノン、2-クロロ-1,4-ベンゾキノン、2-ブロモ-1,4-ベンゾキノン、2-ヨード-1,4 -ベンゾキノン、2,6-ジフルオロ-1,4-ベンゾキノン、2,5-ジフルオロ-1,4-ベン ゾキノン、2,6-ジクロロ-1,4-ベンゾキノン、2,5-ジクロロ-1,4-ベンゾキノン、 2,6-ジブロモ-1,4-ベンゾキノン、及び2,5-ジブロモ-1,4-ベンゾキノン; ナフトキノン、例えば1,2-ナフトキノン及び1,4-ナフトキノン、例えば2-メト キシ-3-メチル-1,4-ナフトキノン; アントラキノン、例えば1,2-アントラキノン、1,4-アントラキノン、9,10-ア ントラキノン、例えば1,5-ジヒドロキシ-9,10-アントラキノン、1,2,3,4-テトラ フ ルオロ-5,8-ジヒドロキシ-9,10-アントラキノン、9,10-アントラキノン-2-カル ボン酸、9,10-アントラキノン-2-スルホン酸、9,10-アントラキノン-1,5-ジスル ホン酸、及び9,10-アントラキノン-2,6-ジスルホン酸等。 少なくとも一のベンゼンカルボン酸あるいはベンゼンカルボキシレート部分を 含む消光剤、及び少なくとも一のベンゼンカルボン酸あるいはベンゼンカルボキ シレート部分を含む消光部分を誘導し得るものの例としては、限定するものでは ないが、以下のものが挙げられる: 安息香酸; アミノ安息香酸、例えばo-アミノフェノール、m-アミノフェノール、及びp -アミノフェノール; ヒドロキシ安息香酸、例えばo-ヒドロキシフェノール、m-ヒドロキシフェノ ール、及びp-ヒドロキシフェノール; ニトロ安息香酸、例えばo-ニトロフェノール、m-ニトロフェノール、及びp -ニトロフェノール。 ある態様においては、消光部分はキノンあるいはその誘導体である。キノン及 びその誘導体は通常、化学的に修飾して反応性の化学基を有する(すなわち化学 的に活性化された化学種を形成する)ようにすることができる。例えば、一以上 の反応性の化学基を任意にリンカー基を介して結合させることができ(例えば、1 ,4-ベンゾキノンのオルトあるいはメタ位で)、これによりキノン様の部分(消光 部分としての)を他の分子へ結合することが可能となる。 例えば、1,4-ベンゾキノンを誘導化して、アルキル基のようなリンカー基を介 してオルトあるいはメタ炭素に結合したカルボン酸基(すなわち-COOH)を有する ようにすることができる。このような化合物は、2-(1-カルボキシブト-2-イル)- 5-メチル-1,4-ベンゾキノンである。このカルボン酸誘導体を誘導化して、N-ス クシンイミジルエステル(下に示す)を形成することができ、これはキノン様の消 光部分を例えばアミノ基を有する分子に容易に結合することを可能とする。 消光部分は、一般的な周知の合成法を用いて分子に結合することができる。例 えば、上記したように、消光部分(例えばベンゼンあるいはその誘導体、例えば フェノール、キノン、ベンゼンカルボン酸、ベンゼンカルボキシレート)を有す る分子を誘導化して化学的に活性化された化学種(例えば、活性エステル、マレ イミド)を形成し、これを何らかの分子と反応させてその分子に共有結合により 結合することができる。C.ECL標識及びECL消光剤を使用したアッセイ 本発明は、サンプル組成物中に存在する対象となる一以上のアナライトを検出 し、好ましくは定量するための新規なアッセイ方法を提供する。本明細書で使用 する用語「アッセイ」及び「アッセイ法」は、対象となる一以上のアナライトの 存在を検出し(例えば定性的アッセイ)、好ましくは定量する(例えば定量的アッ セイ)方法をいう。 本発明のアッセイは一般的には、対象となるアナライト(典型的にはサンプル 組成物中の一種の成分)を予め決められた非制限的な量の一種以上のアッセイ試 薬と接触させ、得られる生成物(検出生成物)のECL特性を測定し、典型的には試 験するサンプルに予測される範囲において対象となるアナライトの既知量を含む 標準サンプルから決定された関係を使用することにより測定されたECLを当初の サンプル中に存在するアナライトの量と関連付けることを含む。定性的アッセイ においては、測定されたECLが単に閾値(例えば対象となるアナライトを含むか、 含まないことが判っているサンプルを使用して決められた)を上回るか下回るか を判断することがアッセイ結果を得るのに十分であり得る。従って、特に別の要 請がない限り、用語「測定」は定性的及び定量的測定のいずれかを指す。本発明 のアッセイは不均質(分離)アッセイあるいは均質(非分離)アッセイのいずれでも よい。 本明細書で使用する用語「アナライト」及び「対象となるアナライト」は、検 出される物質、好ましくは定量される物質をいう。アナライトは無機物あるいは 有機物のいずれでもよいが、通常は有機物である。アナライトは天然物あるいは 合成物のいずれでもよい。有機のアナライトの種類の例としては、アミノ酸、タ ンパク質、糖タンパク質、リポタンパク質、糖、多糖、リポ多糖、脂肪酸、核酸 等の生物学的分子を挙げることができる。有機のアナライトとしては、抗体、抗 原、ハプテン、酵素、ホルモン、ステロイド、ビタミン、オリゴヌクレオチド、 医薬等も挙げられる。 本明細書で使用する用語「サンプル」及び「サンプル組成物」は、一種以上の アナライトを含む組成物をいい、あるいは処理されて一種以上のアナライトを含 むものとなるものでもよい。サンプルは固体、エマルション、懸濁物、液体、あ るいは気体の形態とすることができる。典型的には、サンプルは(例えば液体電 解質を添加することにより)液体(すなわち自由に流動する)形態(例えばエマルシ ョン、懸濁物、溶液)になるように処理され、ECL法を使用したアナライトの検出 及び定量を容易かつ単純に行えるようにする。典型的には、対象となるアナライ トはサンプル組成物中において10-3M(μM)以下、例えば多くの場合は10-12M( pM)、さらに10-13M(pM未満)の濃度で存在する。 本発明のアッセイは、ECLアッセイを特徴とすることができ、すなわち、本発 明のアッセイにおいては、対象となるアナライトの存在、好ましくは対象となる アナライトの量をECLを使用して測定する。さらに、本発明のアッセイは、ある 種のECL消光剤と組合せてECL標識を使用することによる。そのような消光部分の 一つの種類は少なくとも一のベンゼン部分を含むものである。そのような消光部 分の下位概念の種類としては、上記したように、少なくとも一のフェノール部分 、キノン部分、ベンゼンカルボン酸、及び/またはベンゼンカルボキシレート部 分を含むものである。 従って本発明は、サンプル組成物中のアナライトを検出する方法であって、 (a)前記サンプル組成物、ECL標識を有する試薬、及び少なくとも一のベンゼン部 分を含むECL消光部分を有する試薬を含むアッセイ混合物を調製し、 (b)(i)段階(a)で調製したアッセイ混合物、及び (ii)ECL標識を有する前記試薬、ECL消光部分を有する前記試薬、及び既知量の前 記アナライトを含むアッセイ混合物 のECL発光の差を測定し、 (c)段階(b)で測定された差を前記サンプル中のアナライトの量と関連付ける段階 を含む前記方法を提供する。 一つの態様においては、前記ECL消光部分は、上記したように、フェノール部 分、キノン部分、ベンゼンカルボン酸部分、及びベンゼンカルボキシレート部分 からなる群から選択される少なくとも一の部分を含む。別の態様においては、前 記ECL消光部分は少なくとも一のフェノール部分を含む。別の態様においては、 前記ECL消光部分は少なくとも一のキノン部分を含む。別の態様においては、前 記ECL消光部分は少なくとも一のベンゼンカルボン酸部分を含む。別の態様にお いては、前記ECL消光部分は少なくとも一のベンゼンカルボキシレート部分を含 む。 一つの態様においては、前記アナライトの既知量はゼロである。 一つの態様においては、ECL標識を有する試薬及びECL消光部分を有する試薬は 同じ試薬である。別の態様においては、前記のECL標識を有する試薬及びECL消光 部分を有する試薬は異なる試薬である。 一つの態様においては、前記方法は、当初のサンプル組成物中に存在する基質 について化学反応を行い、前記サンプル組成物中にアナライト質を生成させる最 初の段階、及び段階(b)で測定された差を当初のサンプル組成物中の基質の量と 関連付ける最終段階をさらに含む。 一つの態様においては、前記方法は、段階(b)の測定の前に段階(a)で調製され たアッセイ混合物について化学反応を行う段階をさらに含む。 一つの態様においては、対象となる特定のアナライトの存在により、例えば、 特にECL標識からのECL発光の減少に由来するECL発光の減少が生じる。そのよう なECL発光における変化は、例えば消光部分をECL標識との消光接触に置くことに より生じる。あるいは別の態様においては、対象となる特定のアナライトの存在 により、例えば、特にECL標識からのECL発光の増加に由来するECL発光の増加が 生じる。そのようなECL発光における変化は、例えばECL標識との消光接触から消 光部分を除去することにより生じる。 一つの態様においては、本発明のアッセイは結合対を使用し、ECL標識及びECL 消光部分を一緒にし(消光接触させる)、あるいは別にする(消光接触させな い)。結合対の例としては、オリゴヌクレオチドとオリゴヌクレオチドハイブリ ダイゼーションプローブ、抗体と抗原、酵素と基質、及びビオチン-アビジン等 の強力な結合対が挙げられる。通常、そのような結合対を本発明のアッセイに使 用して、結合対の一方のメンバーであるかあるいは結合対の一つのメンバーに抱 合された対象となるアナライトの検出を可能とすることができる。 一つの態様においては、本発明のアッセイはオリゴヌクレオチド(例えばDN A、RNA)を検出するのに使用することができる。デオキシリボ核酸(DNA) はポリヌクレオチドであり、より具体的には、デオシキリボヌクレオチド単位の ポリマーである。デオキシリボヌクレオチドは典型的には窒素塩基、糖、及び一 以上のリン酸基からなる。デオキシリボヌクレオシドは典型的には窒素塩基、及 び糖からなる。天然のDNAにおいては、糖基は典型的にはβ-2'-デオキシリボ フラノースであり、窒素塩基は典型的にはプリン(例えばアデニン、A及びグア ニン、G)あるいはピリミジン(例えばチミン、T、あるいはシトシン、C)であ る。最も一般的なものとして、D-2'-デオキシリボースのC-1炭素はピリミジン のN-1またはプリンのN-9に結合し、このN-グリコシド結合の配置はβである( 塩基は糖の平面の上にある)。4種の天然のデオキシリボヌクレオシドはデオキ シアデノシン(dA)、デオキシグアノシン(dG)、デオキシチミジン(dT)、及びデオ キシシチジン(dC)と呼ばれる。デオキシヌクレオチドはデオキシヌクレオシドの リン酸エステルである。最も一般的には、このリン酸エステルは糖基の5'-OH基 において形成され(すなわち5'-OHが5'-OPO3 -2に変換される)、得られる化合物は ヌクレオシド5'−リン酸あるいは5'-ヌクレオチドと呼ばれる。一を越えるリン 酸基が結合し得る(例えば二リン酸、5'-OPO2OPO3 -3、三リン酸、5'-OPO2OPO2PO3 -4 )。例えばDNAの合成における重要な活性前駆体はデオキシアデノシン5'-三 リン酸(dATP)である。 上記したように、DNAはデオキシリボヌクレオチド単位のポリマーである。 最も一般的なものとして、DNAのポリマー主鎖は一定であり、リン酸基により 結合されたデオキシリボース基からなる。より具体的には、デオキシリボース基 の3'-位置(3'-OHであったもの)がホスホジエステル基(すなわち-OP(=O)(O-)O-) を介して隣接するデオキシリボース基の5'-位置(5'-OHであったもの)に結合し て いる。DNAの可変的な領域はその各デオキシリボース基の1'-位置に結合した 塩基の配列である(例えばA、G、C及びT)。従ってDNAに最も一般的に存在 する4種の反復単位(残基と呼ばれることが多い)は、デオキシアデニレート、デ オキシグアニレート、デオキシシチジレート、及びデオキシチミジレートと呼ば れる。 DNAポリマーは便宜的に成分塩基により示され、その「配列」と呼ばれるこ とが多い。DNA分子の一方の末端は遊離の3'-基(例えば3'-OH、3'-OPO3 -2)を 有する糖基で終了しており、他端は遊離の5'-基(例えば5'-OH、5'-OPO3 -2)を有 する糖基で終了しているので、どちらがどちらの末端であるか明確に示す必要が ある。万国共通の慣行として、DNAは左から右へ5'末端から3'末端に向かって 記載される。従って、ACGは、5'-ACG-3'あるいは5'-A-3'-5'-C-3'-5'-G-3'を 示す。DNAポリマーは環状であって末端を有しない場合もある。そのような場 合は配列は適当な、おそらくは任意の開始点から5'から3'に向かって記載される 。 DNAは通常は二重らせん形態(Watson-Crick)で存在し、これは二本のらせん 状ポリヌクレオチド鎖(例えばストランド)が共通の軸の周りにコイル状に巻かれ 、上記したように各鎖は5'-3'の極性について逆の方向に伸びている(「逆平行」 )。プリン及びピリミジン塩基はらせんの内側にあり、リン酸及びデオキシリボ ース基は外側にある。塩基の平面はらせん軸に対してほぼ垂直であり、糖の平面 はらせん軸にほぼ平行である。らせんの直径は約20Åである。隣接する塩基はら せん軸に沿って約3.4Å離れており、約36°の角度で回転した関係にある。すな わち、らせん構造は各鎖における10残基、すなわち34Åの間隔で反復する。各鎖 が1000残基を有する比較的小さいDNAらせんは端から端までで約3.4μmであ る。 二本の鎖は塩基の対(「塩基対」と呼ばれることが多い)の間の水素結合及び隣 接する塩基対のスタッキング相互作用(π-電子シェアリング)により一体に保持 されている。立体的理由及び水素結合に関する理由により、プリンは常にピリミ ジンと対を形成し、より具体的にはアデニンは常にチミンと対を形成し(二つの 水素結合を介して)、グアニンは常にシトシンと対を形成する(三つの水素結合を 介して)。従って、各塩基対は二重らせんの分子量に対して約620ダルトンを占め る。しかし、ポリヌクレオチド鎖に沿った塩基配列に制限はないことに注意しな ければならない。遺伝情報を保有するのはまさにこの塩基配列そのものである。 DNA二重らせんの二本の鎖は、DNAの溶液を加熱したり酸もしくはアルカ リを添加して塩基をイオン化することで達成されるように、その塩基対の間の水 素結合を切断することにより容易に分離する。結果として起こる二重らせんの巻 戻しは通常「融解」あるいは「変性」と呼ばれ、分子の半分が一本鎖になる融解 温度により特徴付けられる。融解は通常は可逆的であり、ほどけた鎖は通常「ア ニーリング」、「再生」あるいは「ハイブリダイゼーション」と呼ばれる過程に おいて一緒になってらせんを再形成する。 リボ核酸(RNA)はポリヌクレオチドのもう一つの例である。DNAと同様に RNAは3'-5'ホスホジエステル結合により結合されたヌクレオチドからなるポ リマーである。RNAの共有結合の構造は二つの重要な点においてDNAのもの と異なっている。RNAにおいては、糖基はβ-D-リボース(β-D-2'-デオキシ リボースに代えて)である。また、RNA中の4種の主要な塩基の一つはピリミ ジンウラシル、U(DNAにおいて見られるチミンに代わるものである)である。 従ってRNAにおいては、塩基対はAU及びGC(DNAにおけるAT及びGCに代えて) である。RNAは一本鎖あるいは二本鎖であり得るが、通常は一本鎖である。R NAはB-DNA型の二重らせんを形成することはできないが、RNAは自己ハ イブリダイゼーション及びヘアピンループの形成により生成される二重らせん構 造の領域を形成することが多い。 DNAは、DNAポリメラーゼと呼ばれる酵素(例えばDNApolα、β、γ、 δ、ε)により複製され得る。通常はDNAポリメラーゼは、前もって存在する DNA鎖(プライマーと呼ばれることが多い)の3'-末端に、そのプライマーがハ イブリダイズした鋳型(通常はDNAの単鎖)に従ってデオキシリボヌクレオチド 単位を一つずつ段階的に付加することを触媒する。通常は、DNAポリメラーゼ により触媒される鎖伸長反応は、デオキシリボヌクレオチド三リン酸の最も内側 のリン酸原子(すなわちα-リン原子)上でのプライマーの3'-OH末端の求核攻撃で あり、ホスホジエステル架橋が形成され、同時にピロリン酸が放出される。DN Aポリメラーゼは、導入されるヌクレオチド上の塩基が鋳型鎖上の塩基に相補 的であるときにのみホスホジエステル結合の形成を触媒し、実際にマッチしない 塩基対は排除される。このようにして鋳型により駆動される複製は非常に高い忠 実度で進行し、エラー率は塩基対あたり10-8未満である。 遺伝子はDNAを含む。特定のDNA配列は特定のアミノ酸配列をコードする 。このようにして、タンパク質(ポリアミノ酸、ポリペプチド)はDNAによりコ ードされる。DNA、好ましくは二本鎖DNAはRNAポリメラーゼ(例えばR NApol I、II、III)の鋳型として使用され、特定のタンパク質をコードするメ ッセンジャーRNA(mRNA)を生成する。このようにDNAはmRNAに転写 される。「コドン」と呼ばれるmRNA残基の三個が遺伝子コードに従って20種 の天然アミノ酸のそれぞれを表す。そしてmRNAそれ自体が鋳型として使用さ れ、リボソーム(リボソームRNA、rRNA、及びリボソームタンパク質を含 む)を「通過(threaded)」して特定のmRNAによりコードされたタンパク質を 生成する。このようにしてmRNAはタンパク質に翻訳される。やはりmRNA の特定のコドンを認識することができるトランスファーRNA(tRNA)の短い 片に結合した各アミノ酸はリボソームにより成長しつつあるタンパク質中に取り 込まれる。コードされたDNA(cDNA)は逆転写酵素と呼ばれる酵素を使用し てmRNA(鋳型として機能する)から得ることができる。このように、特定のタ ンパク質をコードすることはDNA形態で得られ、これはクローニング及びその 他の遺伝子操作により適したものであることが多い。 1980年代半ばに開発されたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、クローニングを使 用することなく、特定のDNA配列を大量に単純な工程で迅速に製造することを 可能とする。PCRはDNAポリメラーゼ(例えばTaqポリメラーゼ)の単鎖鋳型DN AからDNAを複製する能力を使用する。両方のDNA鎖が鋳型として機能し得 、単鎖鋳型は例えば沸騰に近い温度で二本鎖DNAを加熱することにより容易に 製造できる。PCRは反応混合物中に存在する一定の試薬を必要とし、例えば、活 性化ヌクレオチドモノマー(例えばATP、GTP、CTP、TTP)、及びMg+2が挙げられる 。PCRは、複製をそこから開始する(すなわちプライミングする)二本鎖DNAの小 片も必要とし、これは通常は適当なオリゴヌクレオチド「プライマー」をそこか ら複製が開始される部位にアニール(ハイブリダイズ)すること により与えられる。DNAポリメラーゼは3'から5'への方向にDNAを複製する ので、一つが一方の鎖にハイブリダイズし、一つが他方の鎖にハイブリダイズす る二つのプライマーを与えれば両方の鎖が鋳型として機能し得る。複製の後、新 たに成長した二本鎖DNA(鋳型鎖と新たに成長した鎖を含む)を融解すると(例 えば沸騰近くまで加熱することにより)、得られる一本鎖のそれぞれは次のサイ クルにおいて鋳型として機能し得る。このようにして、各サイクルにより所望の 一本鎖DNA断片の数が有効に2倍にされ、同一であるDNA断片(二つのプラ イマーの位置により定義される)の割合が増加する。 PCRは容易に自動化することができる。典型的には、DNAサンプルを最初に 加熱して(例えば94℃、5分)鎖を分離し、試薬(例えばTaqポリメラーゼ、プライ マー、過剰な活性化ヌクレオチドモノマー、Mg2+等)と合わせる。最初の加熱段 階(例えば30〜65℃、30秒)でプライマーをDNA鎖に結合させる。二番目の加熱 段階(例えば65〜75℃、2〜5分)でポリメラーゼにより新たなDNA鎖を合成する 。三番目の加熱段階(例えば94℃、30秒)で得られた二本鎖DNAの鎖を分離する 。これらの三つの段階を各サイクルにおいて反復する。典型的には、10〜60サイ クルを行う。理論的には、32サイクルにより所望の二本鎖DNA断片の約109コ ピーが得られる。 特異的なオリゴヌクレオチド(例えばDNA、RNA)は、ポリメラーゼを使用 せずに、そして鋳型鎖を必要とすることなく、モノマー、ダイマー等から直接合 成することができる場合も多い。典型的には、固相法を使用し、これにおいては ヌクレオチドを固相に結合した新たに生じたオリゴヌクレオチドに付加する。い くつかの固相オリゴヌクレオチド合成が知られており、トリエステル法、亜リン 酸法、ホスホルアミデート法等が知られているが、最後のものが好ましい。 典型的には、ホスホルアミデート法による固相オリゴヌクレオチド合成は、4 つの段階、すなわち脱保護、カップリング、キャッピング、及び酸化を繰り返す ことによりオリゴヌクレオチドを5'-方向に段階的に合成することからなる。最 初の段階(「脱保護」)においては、3'-末端において3'-O-基により固体支持体 に結合された成長中のオリゴヌクレオチドを5'-脱保護して反応性基を与える(す なわち5'-OH基)。二番目の段階(「カップリング」)においては、支持体に結合さ れた 5'-脱保護オリゴヌクレオチドを、それ自体は最初に5'-保護、3'-ホスホルアミ ダイトに変換させた所望のヌクレオチドモノマーと反応させる。例えば、5'-OH 基は5'-ODMT基(DMTは4,4'-ジメトキシトリチルである)の形態で保護でき、3'-OH 基は3'-ホスホルアミダイト、例えば-OP(OR')NR2(Rはイソプロピル基、-CH(CH3 )2であり、R'は例えば-H(ホスホルアミダイトジエステルを生じる)あるいは-C H3、-CH2CH3、あるいはβ-シアノエチル基、-CH2CH2CN(ホスホルアミダイトトリ エステルを生じる)である)に変換させることができる。モノマーの3'-ホスホル アミダイト基は成長中のオリゴヌクレオチドの脱保護された5'-OH基と反応して 亜リン酸結合5'-OP(OR')O-3'を生じる。成長中のオリゴヌクレオチドの全てが与 えられたモノマーと結合する訳ではなく、「成長」しなかったものは不完全なオ リゴヌクレオチドを生成し、従ってその後の合成から除去しなければならない。 これは三番目の段階(キャッピング)において達成され、ここでは残存する-OH基( すなわち未反応の5'-OH基)の全てを、例えば無水酢酸との反応により酢酸エステ ルの形態(5'OC(O)CH3)にキャップする。最後に酸化段階において、例えばヨウ素 水溶液及びピリジンとの反応により、成長中のオリゴヌクレオチドの新たに形成 された亜リン酸基(すなわち5'-OP(OR')O-3')をリン酸基(すなわち5'OP(=O)(OR' )O-3')に変換する。酸化の後に得られるオリゴヌクレオチドは5'-保護されたま まであり、上記した最初の脱保護段階に使用できる状態にあるので、この4段階 工程は上記の後繰り返すことができる。所望のオリゴヌクレオチドが得られたら 、例えばアルカリ及び熱による処理によりそれを固体支持体から切断することが できる。またこの段階によりリン酸トリエステル(すなわちR'が-Hでない場合) がリン酸ジエステル(-OP(=O)2O-)に変換され、アルカリに感受性を有するよう に保護されたヌクレオチド塩基のアミノ基が脱保護される。 特異的なDNA及びRNA配列を検出する方法の殆どのものは核酸ハイブリダ イゼーションによるものである。典型的にはそのような方法は標的DNAあるい はRNA配列と標識核酸ハイブリダイゼーションプローブとの二本鎖の形成によ る。ハイブリダイゼーションプローブは通常は標的核酸の特異的な部分に相補的 なものである。しかし、ハイブリダイゼーションプローブは部分的にのみしか相 補的でなくてもよいが、それでも標的配列と安定な二本鎖を形成するものでなけ ればならないことに注意しなければならない。典型的には、ハイブリダイゼーシ ョンプローブは標的配列に対して少なくとも70%相補的なものであるが、少なく とも90%相補的なものである場合がより一般的である。ハイブリダイゼーション プローブは通常は選択的かつ安定なハイブリダイゼーションを確保するのに十分 な長さの配列を有するものとする。典型的には、ハイブリダイゼーションプロー ブは6〜約500のモノマー単位(例えばヌクレオチド)を有するが、より典型的には 約10〜約100のモノマー単位を有する。所望の配列を有する特異的なハイブリダ イゼーションプローブは、固相オリゴヌクレオチド合成法を使用して直接合成さ れることが多い。標識された核酸プローブは、ドットブロット、サザンブロット (DNA標的)、ノーザンブロット(RNA標的)、in situハイブリダイゼーショ ン、プラークハイブリダイゼーション、コロニーハイブリダイゼーション等の種 々のアッセイ形式に使用される。数多くの様々な物質が核酸プローブを標識する のに使用されており、これらの標識を検出するのに数多くの様々な方法が使用さ れている。例えばKricka,1992参照。 一実施態様において、一方が結合ECL標識を有し他方が結合ECL消光部分 を有する2つのオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションプローブを利用して DNAの検出を行うべく、本発明のアッセイを利用してもよい。標的DNAと共 にアニーリングを行った場合に、ECL標識とECL消光部分との消光接触によって、 観測されるECL発光が減少するように、特定のプローブを選択してもよい。この ようにすると、ECL発光の減少量を、サンプル中に存在する標的DNAの量と相 関付けることが可能となる。 もう1つの実施態様において、ECL標識およびECL消光部分の両方を有するオリ ゴヌクレオチドハイブリダイゼーションプローブとDNA‐ポリメラーゼとを併 用してDNAの検出を行うべく、本発明のアッセイを利用してもよい(典型的に は、非分離アッセイに利用する)。例えば、サンプルと、ECL標識(L)およびECL 消光部分(Q)の両方を有する好適なオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション プローブと、ハイブリダイゼーションプローブから上流の位置で標的DNAにハ イブリダイズする好適なオリゴヌクレオチドプライマーと、周知のTaqポリメラ ーゼ(Thermus Aquaticusから誘導される)などの5'-特異的DNAエキ ソ-ポリメラーゼと、好適な濃度の活性化ヌクレオチドモノマー(例えば、ATP、G TP、CTP、TTP)と、その他の試薬(例えば、KCl、トリスHCl、MgCl2)とを含んでな る混合物を形成することにより、サンプル中の標的DNAを検出してもよい。典 型的には、ハイブリダイズされないオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション プローブのECL標識およびECL消光部分は消光接触を行い、低いECL発光が観測さ れる。ハイブリダイゼーションプローブおよびプライマーが標的DNAにアニー ル化されるように混合物を処理する。典型的には、ハイブリダイズされたプロー ブのECL標識およびECL消光部分は消光接触を行い、この場合にも低いECL発光が 観測される。次いでポリメラーゼ反応を進行させる。5'-特異的DNAエキソ-ポ リメラーゼは、標的DNAを鋳型として使用し、プライマーの3'-末端から始め て5'-方向に一度に1個のヌクレオチドの割合でプライマーを伸長させる。ポリ メラーゼが5'-方向下流に進行して、結合されたハイブリダイゼーションプロー ブのところまでくると、ポリメラーゼは、プライマーを伸長させる際に、結合さ れたプローブを分解するであろう。このハイブリダイゼーションプローブは短い オリゴヌクレオチド断片(典型的にはモノマー)に変換され、標的DNAから遊離 して溶液混合物中に入る。ECL標識およびECL消光部分は異なるモノマー単位に結 合されたため、分解に伴って溶液中に遊離されても、もはや消光接触が保持され なくなる。従って、ECL発光の増加を、サンプル中に存在する標的DNAの量と 相関付けることが可能となる。類似の方法が、蛍光標識および蛍光消光剤に対し て提示されている。例えば、1997年のWittwerの文献を参照されたい。 更にもう1つの実施態様において、ECL標識およびECL消光部分の両方を有しか つ自己ハイブリダイゼーション配列を有するオリゴヌクレオチドハイブリダイゼ ーションプローブを利用してDNAの検出を行うべく、本発明のアッセイを利用 してもよい。標的DNAの不存在下では、プローブが自己ハイブリダイズし(典 型的には、ヘアピン構造またはヘアピン-ループ構造を形成し)、ECL標識およびE CL消光部分は消光接触する。標的DNAの存在下では、プローブが優先的に標的 DNAにアニール化され、そうすることによりECL標識がECL消光部分から分離さ れ、結果として、もはや消光接触ができなくなり、ECL発光は 増加する。従って、ECL発光の増加量を、サンプル中に存在する標的DNAの量 と相関付けるとが可能となる。 一実施態様において、抗体または抗原の検出を行うべく、本発明のアッセイを イムノアッセイとして利用してもよい。抗体は、免疫グロブリンとも呼ばれ、外 来物質の存在に応答して動物により合成されるタンパク質である。これらは、B リンパ球(B細胞)から誘導されるプラズマ細胞により分泌される。これらの溶解 性タンパク質は、体液性免疫応答の認識エレメントである。各抗体は、その合成 を促した外来物質に対して特異的な親和性を有し、この外来物質と容易に結合し て複合体を形成する。抗体形成を誘発することのできる外来巨大分子は抗原(ま たは免疫原)と呼ばれる。タンパク質、多糖、および核酸は、通常、有効な抗原 である。抗体の特異的親和性は、巨大分子抗原全体に対するものではなく、抗原 決定基(またはエピトープ)と呼ばれる抗原上の特定の部位に対するものである。 ほとんどの小分子は、抗体形成を誘発しない。しかしながら、それらが巨大分子 に結合した場合、特異的抗体の形成を誘発する可能性がある。この場合、巨大分 子は、結合された化学基の担体であり、ハプテン決定基と呼ばれる。この小さな 外来分子自体は、ハプテンと呼ばれる。結合されたハプテンにより誘導された抗 体は、未結合ハプテンとも結合するであろう。 構造的には、抗体は、ジスルフィド結合により互いに保持されている4つの個 別的タンパク質鎖、すなわち、分子量約17,000ダルトンの2本の軽(L)鎖および 分子量約35,000の2本の重(H)鎖から成る。ヒトでは、5つのクラスの重鎖、す なわち、μ鎖、δ鎖、γ鎖、ε鎖、およびα鎖、ならびに2つのクラスの軽鎖、 すなわち、κ鎖およびλ鎖が存在する。それぞれIgM、IgD、IgG、IgE、IgAとし て抗体(すなわち、免疫グロブリンIg)を特性付けるのは重鎖のクラスである。一 般的には、軽鎖および重鎖のそれぞれは、可変領域(アミノ末端位において)およ び定常領域(カルボキシ末端位において)から成るが、重鎖の定常領域は、ドメイ ンに細分されることが多い。通常、抗原結合の特異性を決定するのは、軽鎖およ び重鎖の可変領域のアミノ酸配列であり、従って、各抗体は、通常、2つの抗原 結合部位を有する。一般的には、抗体はまた、例えばパパイン、ペプシン、また はトリプシンでの酵素的分解により生じる生成物に従って構造的に記述するこ とも可能である。典型的には、酵素パパインによる消化を行うと、2つのFab断 片(それぞれ1つの完全な軽鎖と1つの重鎖の一部分とを有するとともに、それ ぞれ1つの抗原結合部位を有する)および1つのFc断片(2つの重鎖のそれぞれの 残りの部分を有し、抗原結合部位を持たない)が得られる。典型的には、酵素ペ プシンによる消化を行うと、1つのF(ab')2断片(2つの完全な軽鎖と各重鎖の一 部とを有するとともに、2つの抗原結合部位を有する)および1つのpFc'断片(2 つの重鎖のそれぞれの残りの部分を有するが、抗原結合部位を持たない)が得ら れる。 各抗体産生細胞は、唯一のタイプの抗体を産生し、特定の細胞により産生され る特異的タイプの抗体は、その細胞と抗原との初期相互作用に関連付けられる。 このようにして、外来物質が動物中に導入されると、抗原に対して様々な結合特 異性を有する多数の異なる抗体が産生される。膜に広く存在しかつ結合部位を細 胞表面上に露呈させている抗体分子である受容体に抗原が結合することによって 、プラズマ細胞の前駆体であるBリンパ球の分裂および増殖が誘発される。続い て、活性化された細胞により産生される可溶性抗体は、膜結合抗体と同じ特異性 を有する。 抗体は、例えば、抗原を動物に投与することによって発生させてもよい。典型 的には、抗原には、ハプテン決定基(例えば、担体巨大分子)に結合されたハプテ ンが含まれるが、ハプテン決定基としては、血清アルブミン、血清グロブリン、 リポタンパク質などが挙げられる。抗原は、従来のように、凍結乾燥された抗原 を再水和させて溶液または懸濁液を形成することによって注入用として調製して もよいが、この場合、通常、アジュバントと混合される。アジュバントとしては 、例えば、初回投与用のフロイント完全アジュバントおよび追加投与用のフロイ ント不完全アジュバントなどの油中水型エマルションが挙げられる。典型的には 、抗原組成物は、少なくとも約4週間にわたり投与回数2回以上で様々な部位に 投与される。 血清(すなわち、ポリクロナール抗血清)を動物から採取し、標準的なイムノア ッセイまたは沈降反応において抗原または抗原類似体を用いて所望の抗体が存在 するかを調べる試験にかける。ポリクロナール抗血清は、典型的には、この抗原 と反応しないいくつかの抗体、およびこの抗原と反応するが他の抗原とも交差反 応するいくつかの抗体(例えば、それほど選択性が高くない抗体)を含むであろう 。ポリクロナール抗血清由来の特異的抗体を精製する方法は、当該技術分野で公 知である。特に有効な方法は、固相にコンジュゲートされた抗原を有するカラム (例えば、セファロースカラム)を利用するアフィニティ精製として知られている 。ポリクロナール抗血清をカラムに通し、カラムを洗浄し、穏やかな変性緩衝液 を用いて所望の抗体を溶出させる。抗体の産生、精製、および修飾に使用される 一般的な技法、ならびにイムノアッセイのデザインおよび実施については、例え ば、1996年のWeirらの文献、1991年のColiganらの文献、1994年のWildの文献、 および1993年のMasseyeffらの文献を参照されたい。 特定の抗体産生細胞(例えば、脾細胞)は唯一の特異的抗体を産生するので、通 常、この特異的抗体を多量に発生させるために、例えば、抗体産生細胞と非抗体 産生骨髄腫細胞(抗体産生細胞の悪性疾患である多発性骨髄腫によって生じる細 胞)とを融合させることによって、この細胞のクローニングを行う必要がある。 融合は、例えば、細胞をポリエチレングリコールに暴露することによって行って もよいが、より普通には、エプスタイン‐バールウイルスを用いたトランスフェ クションまたは発癌性DNAを用いたトランスフォーメーションによって行われ る。 抗体産生細胞とは異なり、融合細胞は、骨髄腫細胞の新生物特性を保持してお り、従って、培養時に増殖する。こうして抗体産生細胞は不死化される。典型的 には、多くの抗体産生細胞をクローン化および培養し、所望の特異性をもつ抗体 を産生するクローンを選択する。特異性は、典型的には、例えば、イムノアッセ イにおける検出用試薬としての抗原により培養体の上清から決定される。次に、 選択されたクローンに由来する所望のモノクロナール抗体の供給物を、大量の培 養体の上清から、または適切に準備されかつこのクローンが注入された宿主動物 の腹水から、精製することができる。場合により、硫安沈殿、イオン交換クロマ トグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィーなどの標準的な生化学的調製法を用 いて、抗体を精製してもよい。もう1つの方法において、免疫された動物ドナー から抗体産生細胞を回収してもよく、または免疫されていないドナーから回収 して、抗原および免疫刺激性成長因子の存在下で培養することによりin vitroで 前刺激することができる。所望の特異性をもつ抗体を産生する細胞は、特異的ク ローンの増殖を起こすが非特異的クローンの増殖を起こさない条件下で抗原と接 触させることによって選択することができる。モノクロナール抗体およびハイブ リドーマに関する一般的な技法については、1988年のHarrow & Laneの文献、198 5年のWandsらの文献、1984年のMilsteinらの文献、および1984年のHoffmanの文 献を参照されたい。 従って、本明細書中で使用される用語「抗体」とは、ポリクロナール抗体およ びモノクロナール抗体の両方を指し、完全な状態の抗体分子だけではなく、完全 な状態の免疫グロブリンの抗体活性を保持する抗体断片および抗体誘導体(当該 技術分野で周知の技法で調製しうる)も含まれる。この場合、「抗体活性」とは 、抗体が、抗体の抗原結合部位を介して、他の可能性のある抗原よりも優先的に 特異的抗原に結合する能力を指す。抗体の断片および他の誘導体は、例えば、ペ プシン、パパイン、またはトリプシンのようなタンパク質分解酵素を用いて抗体 を開裂処理にかける方法、ジチオスレイトールのような試薬でジスルフィド結合 を還元する方法など、標準的なタンパク質化学の方法により調製可能である。完 全な状態の抗体の遺伝子操作された変異体は、抗体をコードするボリヌクレオチ ドを入手することと、コード配列のスプライシングまたは突然変異の導入を行い 、変異体を翻訳すべく分子生物学の一般的な方法を適用すること、により産生可 能である。特に興味深い操作された変異体である抗体としては、キメラ抗体およ びヒト化抗体、Fab様断片、一本鎖可変領域断片(scFv)、ならびにダイアボディ が挙げられる。 抗体は、通常、抗原と反応する能力に従ってスクリーニングおよび精製が行わ れるが、このほかに抗体は、妨害を起こす可能性のある物質との交差反応性の低 さ、いずれも抗原‐抗体系の感受性および機能に影響しうる抗体‐抗原反応の速 度および抗原‐抗体親和性、並びに生物学的供給源により産生される抗体の力価 など、他の判定基準に従ってスクリーニングが行われることも多い。抗体の最終 的な選択を行うには、これらの種々の特性間での調整が必要な場合もある。 一実施態様において、抗体または抗原の検出を行うべく、本発明のアッセイを イムノアッセイとして利用してもよい。例えば、最初に、1つ以上のECL消光部 分が含まれるようにサンプル中の(検出対象の)標的抗体の誘導体を形成してもよ い(例えば、アミノ反応性基を有する消光剤を用いる)。次に、ECL標識を有する 抗原または抗原類似体を調製してもよい。混合すると抗体‐抗原複合体が形成さ れるが、この際、ECL標識とECL消光部分とが消光接触するため、観測されるECL 発光が減少する。従って、ECL発光の減少量を、サンプル中に存在する標的抗体 の量と相関付けることが可能となる。このほか、ECL標識が含まれるように標的 抗体の誘導体を形成し、ECL消光部分が含まれるように抗原または抗原類似体を 調製してもよい。同様な方法を用いて標的抗原の検出を行ってもよい。 もう1つの実施態様において、抗体または抗原の検出を行うべく、本発明のア ッセイを競合イムノアッセイとして利用してもよい。例えば、最初に、1つ以上 のECL消光部分が含まれるようにサンプル中の(検出対象の)標的抗体の誘導体を 形成してもよい(例えば、アミノ反応性基を有する消光剤を用いる)。次に、ECL 標識を有する抗原または抗原類似体を調製してもよい。混合すると抗体‐抗原複 合体が形成されるが、この際、ECL標識とECL消光部分とが消光接触するため、観 測されるECL発光が減少する。ECL標識をもたないが標的抗体に対して同じような 結合親和性を有する第2の抗原または抗原類似体を添加してもよい。(このほか 、第1の抗原を標識化せずに、第2の抗原を標識化してもよい。)この場合、非 標識化抗原は標識化抗原と競合し、競合により遊離した標識化抗原はECL発光を 増加させるだろう。従って、ECL発光の変化量を、サンプル中に存在する標的抗 体の量と相関付けることが可能となる。同様な方法を用いて標的抗原の検出を行 ってもよい。 一実施態様において、酵素、酵素アゴニスト、および酵素アンタゴニストの検 出を行うべく、本発明のアッセイを利用してもよい。大部分がタンパク質(ポリ アミノ酸)である酵素は、生体系の触媒である。酵素は、典型的には、かなりの 触媒能力(106倍以上に反応を促進することが多い)およびすぐれた選択性を呈す る。分子内力および分子間力をフル活用することにより、酵素は、化学結合の形 成および開裂のための最適配向を基質にとらせること、および所望の反応経路に 対する遷移状態を安定化することのいずれをも行うことが可能である。酵素は、 通常、望ましからぬ副産物を生じる副反応の割合を非常に低く抑えて、しかも非 常に高い選択率で(実際上、完全な場合が多い)、単一の化学反応または一連の密 接に関連した反応を触媒する。 酵素触媒作用の第1段階では、酵素‐基質複合体の形成が関与するが、この場 合、基質は、典型的には、活性部位と通常呼ばれる酵素の特異的領域に結合する 。活性部位は、典型的には、酵素の全体積の比較的少ない部分を占め、酵素中の アミノ酸残基の多くは、基質と接触しない。活性部位は、酵素の一次、二次、三 次、および四次構造の結果として一体的になる異なるアミノ酸残基(線状アミノ 酸配列中ではかなり離れて存在することが多い)上の化学基によって一般に形成 される三次元要素である。典型的には、基質は、多数の弱い引力(例えば、静電 的結合、水素結合、ファンデルワールス力、疎水的相互作用)によって酵素に結 合する。ほとんどの場合、活性部位は酵素中の間隙溝または裂溝であり、その中 に相補的基質が入り込んで結合する。結合の特異性は、典型的には、活性部位中 の原子の配列に依存する。例えば、酵素および基質をそれぞれ、比喩的に、相補 的構造を有する鍵および鍵穴によって表すことも可能である。このほか、酵素お よび基質は、酵素‐基質複合体の形成後だけ相補的構造をとる可能性もある。 酵素の活性は、特定の小さな分子およびイオン(例えば、薬物、毒素)によって 増加または減少することも多い。酵素阻害剤は、典型的には、酵素活性を低下さ せる。阻害剤は、活性部位に不可逆的に結合することもあるが、この場合、酵素 は本質的に永続的に不活性化される。このほか、阻害剤は、活性部位に可逆的に 結合することもあり、この場合、阻害剤は競合阻害剤と呼ばれ、基質の結合を妨 害し、結合部位に対して基質と競合する。また、阻害剤(典型的には、非競合的 阻害剤またはアンタゴニストと呼ばれる)は、活性部位以外の部位に結合するこ ともあり、これによって酵素が結合部位で基質と結合する能力は低下する。これ とは対照的に、酵素活性を増大させる分子(しばしばアゴニストと呼ばれる)が 典型的には活性部位以外の部位に結合すると、酵素の活性は増大する。 一実施態様において、酵素、基質、不可逆阻害剤、競合阻害剤、アンタゴニス ト、またはアゴニストの検出(または同定)を行うべく、本発明のアッセイを利用 してもよい。例えば、最初に、1つ以上のECL消光部分が含まれるようにサンプ ル中の(検出対象の)酵素の誘導体を形成してもよい(例えば、アミノ反応性基を 有する消光剤を用いる)。次に、ECL標識を有する酵素基質を調製してもよい。混 合すると酵素‐基質複合体が形成されるが、この際、ECL標識と1つ以上のECL消 光部分とが消光接触するため、観測されるECL発光が減少する。従って、ECL発光 の減少量を、サンプル中に存在する標的酵素の量と相関付けることが可能となる 。このほか、ECL標識が含まれるように標的基質の誘導体を形成し、ECL消光部分 が含まれるように酵素を調製してもよい。同様な方法を用いて、標的基質、基質 類似体、不可逆阻害剤、競合阻害剤、アンタゴニスト、およびアゴニストの検出 を行ってもよい。 もう1つの一実施態様において、例えば、酵素、基質、基質類似体、競合阻害 剤、アンタゴニスト、またはアゴニストの検出を行うべく、本発明のアッセイを 競合アッセイとして利用してもよい。例えば、サンプル中の基質を検出するため に、最初に、1つ以上のECL消光部分が含まれるように好適な酵素の誘導体を形 成してもよい(例えば、アミノ反応性基を有する消光剤を用いる)。次に、基質と 同じように酵素に対する結合親和性を有しかつECL標識を有する基質類似体を調 製してもよい。酵素および基質類似体を混合すると酵素‐基質類似体の複合体が 形成されるが、この際、ECL標識と1つ以上のECL消光部分とが消光接触する。こ の後、検出対象の基質を含有するサンプルを添加する。ECL標識をもたない基質 は、標識化された基質類似体と競合し、競合により遊離した標識化基質類似体は 、ECL発光を増大させるだろう。従って、ECL発光の増加量を、サンプル中に存在 する標的基質の量と相関付けることが可能となる。同様な方法を用いて、酵素、 基質類似体、競合阻害剤、アンタゴニスト、およびアゴニストの検出を行っても よい。 一実施態様において、強力な結合対の1メンバーをもつ誘導体を選択的に形成 可能な物質の検出を行うべく、本発明のアッセイを利用してもよい。強力な結合 対の例としては、ビオチン‐アビジンおよびビオチン‐アビジン類似体、例えば 、ビオチン‐ストレプトアビジンが挙げられる。ビタミンB複合体のビタミンH として知られるビオチンは、実験式C10H15O3N2Sで表されるイミダゾ ールペンタン酸である。卵白中に見出される70キロダルトンのタンパク質である アビジンは、ビオチンに対して非常に高い結合親和性を有する。細菌Streptomyc es avidinii中に見出される類似のタンパク質であるストレプトアビジンは、ビ オチンに対して更に高い結合親和性を有するが、この原因の一部分は、その4つ のビオチン結合部位にある。 例えば、ビオチン部分(例えば、市販のビオチニル化剤を用いる)およびECL標 識の両方が含まれるように、(検出対象の)標的分子の誘導体を選択的に形成して もよい。1つ以上の消光部分を有するストレプトアビジン誘導体を調製してもよ い。混合するとビオチン‐ストレプトアビジン複合体が形成されるが、この際、 ECL標識と1つ以上のECL消光部分とが消光接触するため、観測されるECL発光は 減少する。従って、ECL発光の減少量を、サンプル中に存在する標的分子の量と 相関付けることが可能となる。このほか、例えば、ビオチン/ECL消光部分、ア ビジン/ECL標識、またはアビジン/ECL消光部分が含まれるように、標的分子の 誘導体を選択的に形成してもよく、この場合、もう一方の試薬には、それぞれア ビジン/ECL標識、ビオチン/ECL消光部分、およびビオチン/ECL標識が含まれ ることになろう。 本発明はまた、本発明のアッセイ法に使用するための試薬、1つ以上の試薬を 含む試薬セット、および1つ以上の試薬セットを含む試薬キットを提供する。 試薬は、固体、液体、または気体の形態であってもよいが、典型的には、固体ま たは液体の形態である。試薬としては、例えば、ECL標識用試薬、ECL消光部分を 結合するための試薬、電解質組成物、溶剤、および緩衝剤が挙げられるが、これ らに限定されるものではない。本発明のアッセイに使用するための試薬および/ または試薬セットは、典型的には、1つ以上の好適な容器または装置中に提供さ れる。試薬セットは、典型的には、商業用にパッケージ化された形態で、試薬の 算定が可能な場合には組成物または予備混合物の状態で、試薬キットとして提供 される。例えば、1つ以上の試薬を保持する1つ以上の容器、装置、またはそれ らの類似物を組合せてパッケージ化したものとして提供され、通常、アッセイを 実施するための取扱い説明書が添付される。 D.ECLの測定方法 サンプルのECLを測定するための好適な装置の種類については、当該技術分野 で周知である。例えば、1991年のBlackburnらの文献、1990年のLelandらの文献 、1991年のHallらの文献を参照されたい。典型的には、ECLは、(i)サンプル(典 型的には液体である)の受け器と、(ii)受け器中に配置され、検査対象の組成物 と接触する2つ以上の電極であって、そのうちの1つは、電気化学発光種が生成 する「作用電極」である電極と、(iii)電気化学発光に伴って発生するフォトン の一部分を検出する検出器と、を含んでなる装置を用いて測定される。 便宜上、ECL装置は、典型的には3つの電極、すなわち、作用電極、対向電極 、および参照電極を備える。多くの場合、参照電極(例えば、標準Ag/AgCl電極) は、作用電極および対向電極からいくらか離間させて配置されるが、ただし、こ れらの電極と(電解液を介して)接触する。作用電極および対向電極は、典型的に は貴金属または比較的不活性な金属、例えば白金および金である。 検出器は、フォトンの検出(および好ましくは定量)を行う任意の装置であって よく、具体的には、光電子増倍管(PMT)、光ダイオード、電荷結合デバイス、写 真用もしくは感光性のフィルムまたは乳剤が挙げられる。典型的には、検出器は PMTであり、紫外、可視、または赤外など、フォトンの所定の範囲に対して特に 感度をもつように選択可能である。検出器は、典型的には、ECLに伴って発生す るフォトンを容易にかつ効率的に検出できるように配置される。例えば、一実施 態様において、作用電極は、金または白金のディスクであり、PMT検出器は、作 用電極の前側平面とまさに対向して配置され、検査対象の組成物は、ディスクと PMT検出器との間をディスクを越えて横方向に流動する。 便宜上、ECL装置は、典型的には、試薬、電解液/緩衝液、およびサンプル組 成物用の容器と(例えば、管を介して)結合されているサンプル受け器の入口およ び出口、受け器と容器との間で液体を流動させるためのポンプ(例えば、蠕動ボ ンプ)など、流体を取り扱うための手段を備えている。このように装置を用いる と、静的構成または流通型構成のいずれでもECLの測定が可能となる。 は、光度計(検出器として)と、電気化学セル(受け器および電極)と、ポテンショ スタット(電気化学セルを操作するため)と、流体およびサンプルを取り扱うため の手段とを一体化したものである。このアナライザーは、逐次サンプルの迅速か つ再現性のある測定を可能にするフローインジェクション系を利用する。光度計 は、各測定時に電極からの光が記録および積算されるように作用電極の真上に配 置された光電子増倍管(典型的には、Ru(bpy)3 2+標識の最適な検出が行えるよう に赤感性である)である。 上述したように、ECLは、電気化学的に発生させた電子的励起化学種から電磁 放射されるフォトン放出(例えば光)である。従って、特定のサンプルのECLを測 定するためには、サンプルを電解して電解酸化種および/または電解還元種を形 成し、直ちにまたは更なる反応を行ってからフォトンを放出させるようにしなけ ればならない。典型的には、例えば電池または他の起電力(EMF)源を用いて作用 電極に電位を印加することによりサンプルを電解する。便宜上、作用電極と補助 電極との間に電気化学的電流(ファラデー電流)を流しながら、参照電極に対する 作用電極の電位として電位差を報告する。この場合、作用電極の電位は、典型的 には-10.00〜+10.00Vであるが、より一般的には-6.00〜+6.00Vであり、更に一般 的には-3.00〜+3.00Vである。作用電極の電位は、静的であっても、交流的であ っても、あるいはより複雑な機能を反映するものであってもよい。特定の電位( 例えば、波形)を印加する手段は、電気化学分野で周知である。例えば、1992年 のKaminらの文献を参照されたい。ECLを生成するために作用電極に印加しなけれ ばならない電位は、ECL反応シーケンスに関与する正確な化学種ならびにサンプ ル組成物のpHや電極の性質などの他の要因の関数である。ECLを生成するため の最適電位ならびにECLを検出するための最適波長の両方をどのように決定する かは、ECL技術分野の当業者には周知である。 再度記載することになるが、特定のサンプルのECLを測定するためには、サン プルを電解して電解酸化種および/または電解還元種を形成し、直ちにまたは更 なる反応を行ってからフォトンを放出させるようにしなければならない。最適な 電解を行うためには、作用電極と対向電極との間を移動することにより電荷を移 動させることのできるイオンが、サンプル組成物中に存在しなければならない。 従って、ECL測定を容易にするために、サンプルは、典型的には、ECL測定時に電 荷を移動させるがECL反応シーケンスを妨害しないイオンを含んでなるE CLアッセイ媒体(例えば、ECLアッセイ緩衝液)と混合される。 本明細書中で使用される用語「ECLアッセイ媒体」とは、ECL測定を行う前にサ ンプルと場合により混合される(ただし、通常は混合される)組成物を指す。一般 的には、ECLアッセイ媒体は流体であるが、より典型的には液体であり、溶解さ れた1つ以上の塩を含む。典型的には、ECLアッセイは液体であり、1つ以上の 溶剤、および溶解された1つ以上の塩を含む。典型的には、塩はミリモル濃度で 存在する。 一実施態様において、ECLアッセイには、水(すなわちH2O)および溶解された 1つ以上の塩が含まれる。水溶性の塩としては、例えば、NaCl、KCl、N(C4H9)4C lなどの塩化物塩、NaBr、KBr、N(C4H9)4Brなどの臭化物塩、KNO3、NaNO3、N(C4H9 )4NO3などの硝酸塩、Na3PO4、K3PO4、Na2HPO4、K2HPO4、NaH2PO4、KH2PO4など のリン酸塩、およびNa2SO4、K2SO4などの硫酸塩が挙げられる。 もう1つの実施態様において、ECLアッセイには、1つ以上の有機溶剤および 溶解された1つ以上の塩が含まれる。好適な有機溶剤としては、例えば、アセト ニトリル(すなわち、CH3CN、ACN)、ジメチルスルホキシド(すなわち、(CH3)2SO 、DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(すなわち、(CH3)2NCHO、DMF)、メタノー ル(すなわち、CH3OH)、およびエタノール(すなわち、C2H5OH)が挙げられる。典 型的な有機溶剤に溶解可能な塩としては、例えば、テトラブチルアンモニウムテ トラフルオロ硼酸塩(すなわち、(C4H9)4NBF4)などのテトラブチルアンモニウム 塩が挙げられる。 いくつかの実施態様において、特に、ECLアッセイ媒体に水が含まれる場合、E CLアッセイ媒体はpH緩衝される。例えば、便宜上、リン酸塩(例えば、典型的 には約0.01〜0.05MのKH2PO4)を添加し、それに続いて適切な量の好適な強酸(例 えば、HCl)または強塩基(例えば、NaOH)を加えて所望の値(例えば、生理的なp H7.2)にpHを調整することによって、水性ECLアッセイ媒体をpH緩衝しても よい。緩衝されると、ECLアッセイ媒体のpHは、例えばECL測定時に生じる恐れ のある化学組成の小さな変化に比較的影響されなくなる。 ECLアッセイ媒体にはまた、電解酸化種および/または電解還元種が含まれ かつ最終結果としてフォトン放出(すなわち、ECL)が行われる化学反応に関与す る1つ以上のECL共反応体が含まれていてもよい。本明細書中で使用される用語 「ECL共反応体」またはより単純に「共反応体」とは、それ自体またはその電気 化学的還元/酸化生成物がECL反応シーケンスに関与する化合物を指す。 多くの場合、共反応体は、ECLを発生させるためのより単純な手段の使用(例え ば、二段階酸化‐還元サイクルのうちの半分だけを使用)および/またはECL強度 の改良を可能にする。一実施態様において、共反応体は、電気化学的酸化/還元 が起こると直ちにまたは更なる反応を起こして溶液中に強力な酸化性または還元 性の種を生成する化合物である。共反応体としては、例えば、不可逆的に電解還 元されて酸化性のSO4 ・-イオンを形成するペルオクソニ硫酸イオン(すなわち、S2 O8 2-、過硫酸イオン)がある。共反応体のもう1つの例は、不可逆的に電解酸化 されて還元性のCO2 ・-イオンを形成するシュウ酸イオン(すなわち、C2O4 2-)であ る。還元剤として作用する共反応体のクラスとしては、例えば、アミンまたはア ミン基含有化合物があり、具体的には、トリ-n-プロピルアミン(すなわち、N(C H2CH2CH3)3、TPAH)が挙げられる。 共反応体としては、例えば、リンコマイシン、クリンダマイシン-2-ホスフェ ート、スパルテイン、エリスロマイシン、1-メチルピロリドン、N-エチルモル ホリン、ジフェニドール、アトロピン、トラゾドン、1-エチルピペリジン、ヒド ロフルメチアジド、ヒドロクロロチアジド、クリンダマイシン、テトラサイクリ ン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、レセルピン、トリメチルアミン、ト リ-n-ブチルアミン、トリエタノールアミン、ピペリジン、1,4-ピペラジン、ビ ス(エタンスルホン酸)、トリ-n-ブチルホスフィン、N,N-ジメチルアニリン、 フェニラミン(pheniramine)、ブロモフェニラミン(bromopheniramine)、クロロ フェニラミン(chloropheniramine)、ジフェニルヒドラミン、ジ-n-プロピルア ミン、2-ジメチルアミノピリジン、ピリラミン、2-ベンジルアミノピリジン、ロ イシン、バリン、グルタミン酸、フェニルアラニン、アラニン、アルギニン、ヒ スチジン、システイン、トリプトファン、チロシン、ヒドロキシプロリン、アス パラギン、メチオニン、トレオニン、セリン、シクロチアジン、トリクロロメチ アジド、1,3-ジアミノプロパン、ピペラジン、クロロチアジド、ヒドロジノタラ ン ジン、バルビツール酸、ペルスルフェート、ニコチンイミドアデニンジヌクレオ チド、ペニシリン、1-ピペリジニルエタノール、1,4-ジアザビシクロ(2.2.2)オ クタン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、 エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸、ベンゼンスルホンアミド、テトラ メチルスルホン、エチルアミン、n-プロピルアミン、n-ブチルアミン、s-ブ チルアミン、t-ブチルアミン、n-ペンチルアミン、n-ヘキシルアミン、シュ ウ酸、ヒドラジンスルフェート、グルコース、メチルアセトアミド、およびホス ホロ酢酸が挙げられるが、これらに限定されるものではない。 サンプル組成物中の共反応体の濃度は、選択される特異的共反応体により変化 するが、当業者は、好適な濃度を容易に決定することが可能である。典型的には 、ECLレベルの濃度の約1000倍大きくなるように共反応体の濃度を選択する。 ECLアッセイ媒体にはまた、ECL発光を増大させることが可能でしかも界面活性 剤または湿潤剤として機能することにより電極および/またはECL装置の内壁上 への吸着を防止または低減することも可能な1つ以上のECL増強剤が含まれてい てもよい。多数のECL増強剤が当該技術分野で周知である。例えば、1990年のSha hらの文献を参照されたい。ECL増強剤の1グループは、一方の置換基(R1)が水 素またはC1 〜20アルキル基であり、他方の(パラ)置換基(R2)が式-[O-(CH2)n]m OH〔式中、nは1〜20の整数であり、mは0〜70の整数である〕で表されるポリ( アルコキシ)アルコールであるパラ-置換ベンゼンとして表 つは、R1が-C(CH3)2CH2C(CH3)3であり、R2が-(O-CH2CH2)9 〜10OHで 1が-C9H19であり、R2が-(O-CH2CH2)40OHである。ECL増強剤を利用する場合、 一般的には、ECL発光を増大させる量で存在させる。典型的には、その量は約0.0 1〜約5%(v/v)であり、多くの場合、約0.1〜約1%(v/v)である。 E.実施例 本発明のいくつかの実施態様を次の実施例中に記載するが、これらは例示用と して提示されたものであって、限定するためのものではない。実施例1 フェノールによるRu(bpy)3 +2/TPAHのECL消光 適切な量のトリス(2,2-ビピリジル)ルテニウム(II)塩化物六水和物(すなわち 、 ッシュ-ECLアッセイ緩衝液番号1518-001;0.18Mトリ-n-プロピルアミン(TPA 中に溶解し、0.4μM Ru(bpy)3 2+(発光団として)と0.18M TPAH(共反応体として )とのpH6.8のストック溶液が得られるように溶液を希釈した。エタノール中に 溶解されたマイクロリットル量の1Mフェノール(すなわち、C65OH、 加し、フェノール濃度が2〜15mMのサンプルを得た。 各サンプルのECL強度の測定および記録(任意の単位、例えばカウント)は、光 度計と、ポテンショスタットと、電気化学セルと、流体およびサンプルを取り扱 うための手段とを一体化した市販の電気化学発光アナライザーOrigen I Ana のある測定を可能にするフローインジェクション系を利用する。光度計は、各測 定時に電極でまたはその近傍で発生した光が記録および積算されるように作用電 極の真上に配置された赤感性光電子増倍管である。典型的には、酸化的電気化学 子増倍管により光の強度を測定した。典型的には、電位は0から2800mVまで変 化させ、掃引速度は4800mV/s(周波数=0.58sec-1)であった。各実験の前後 識別番号1518470)を用いて電極を清浄にした。すべての電気化学的測定に対しした。 データは図1に示されている。フェノールを含まないサンプルのECLシグナル が装置の検出能力よりも大きく、任意の単位で1000万であったことに注目された い。わずか2mMのフェノールで、ECLは、対照サンプルのECLの7%未満まで低下 した。わずか5mMのフェノールで、ECLは、対照サンプルのECLの約0.01%未満 まで低下した。 この実施例は、マイクロモル濃度のフェノールが、Ru(bpy)3 2+/TPAH ECL反応 シーケンスにおいてマイクロモル濃度のRu(bpy)3 2+の溶液のECLを効率的に消光 することを示している。すなわち、電気化学的酸化が起こると、生成した励起状 態種Ru(bpy)3 2+*が効率的に消光され、その結果、消光剤が存在しない場合と比 べてかなり少ないECL強度が観測される。実施例2 フェノールによるRu(bpy)3 +2/C2O8 -2のECL消光 適切な量のRu(bpy)3Cl2.6H2OおよびNa2208(Aldrich Chemical Company)を 、リン酸緩衝塩類溶液(すなわち、「PBS」;50mM Na3PO4、100mMNaCl、pH7. 0、0.2μm濾過)中に溶解し、0.4μM Ru(bpy)3 2+(発光団として)と200mM C2O8 -2 (共反応体として)とのpH7.0のストック溶液が得られるように希釈した。エ タノール中に溶解されたマイクロリットル量の1Mフェノール(ECL消光剤として )をストック溶液のアリコート1mLに添加し、フェノール濃度が2〜20mMのサ ンプルを得た。各サンプルのECL強度の測定および記録(任意の単位で)を行った 。データは図2に示されている。2mMのフェノールで、ECLは、対照サンプルの ECLの6%未満まで低下した。8mMのフェノールで、ECLは、対照サンプルのECL の約0.1%未満まで低下した。 この実施例は、マイクロモル濃度のフェノールが、Ru(bpy)3 2+/C2O8 -2ECL反 応シーケンスにおいてサブマイクロモル濃度のRu(bpy)3 2+の溶液のECLを効率的 に消光することを示している。Ru(bpy)3 2+/C2O8 -2系のECL強度はRu(bpy)3 2+/T PAH系のものよりも本質的に低いが(約1/10〜1/50)、C2O8 -2系でフェノールを使 用した方が消光効率は約5%高かった。実施例3 p-ヒドロキシ安息香酸およびp-アミノ安息香酸によるRu(bpy)3 +2のECL消光 Ru(bpy)3 2+(発光団として)と0.18M TPAH(共反応体として)とのpH6.8のストッ ク溶液が得られるように希釈した。エタノール中に溶解されたマイクロリットル 量の1M p-ヒドロキシ安息香酸(すなわち、HOC6H4COOH、PHBA、純度99+%、Ald rich Chemical Company)または1M p-アミノ安息香酸(すなわち、 H2NC6H4COOH、PABA、純度99+%、Aldrich Chemical Company)(ECL消光剤として) をストック溶液のアリコート1mLに添加し、消光剤濃度が2〜10mMのサンプル を得た。比較のために、エタノール中に溶解されたマイクロリットル量の1Mフ ェノール(ECL消光剤として)をストック溶液のアリコート1mLに添加し、フェノ ール濃度が2〜10mMのサンプルを得た。各サンプルのECL強度の測定および記録 (任意の単位で)を行った。データは図3に示されている。 この実施例は、同等な濃度において、フェノールが、PHBA(これよりも少 なくとも約8倍の効率)またはPABA(これよりも少なくとも約2倍の効率)のいず れよりもかなり効率的に、Ru(bpy)3 2+/TPAH ECL反応シーケンスにおいてマイク ロモル濃度のRu(bpy)3 2+のECLを消光することを示している。この実施例はまた 、既知のラジカルスカベンジャーであるPHBAおよびPABAを介して、Ru(bpy)3 2+* 励起状態の形成の前のTPA中間体の捕獲の可能性が励起状態の直接的消光の可能 性よりも低いことを示している。実施例4 フェノール誘導体によるRu(bpy)3 2+のECL消光 1つ以上の電子求引性基および/または電子供与性基を有する多数のフェノー ル誘導体の消光効率について、実施例3で使用したのと同様な方法で試験した。 適切な濃度になるように消光剤(いずれもAldrich Chemical Company製で、純度 は>98%であった)をエタノール中に溶解し、適切なアリコートを、Ru(bpy)3 2+/ TPAHストック溶液のアリコート1mLに加えた。消光剤として試験されたこれら のフェノール誘導体としては、o-クレゾール(すなわち、2-メチル-フェノール) 、m-クレゾール(すなわち、3-メチル-フェノール)、p-クレゾール(すなわち、 4-メチル-フェノール)、p-フルオロフェノール、m-フルオロフェノール、o- フルオロフェノール、o-プロピルフェノール、p-プロピルフェノール、p-フ ェニルフェノール、o-トリフルオロメチルフェノール、m-トリフルオロメチル フェノール、p-トリフルオロメチルフェノール、p-ニトロフェノール、p-ニ トロ安息香酸、p-ヒドロキシ安息香酸、および4,4'-ビフェノールが含まれてい た。 様々なフェノール誘導体のECL消光効率にはある傾向が観測された。最も顕著 な傾向として、置換基がフェノールのヒドロキシ基のメタ位に存在する場合に、 より効率的なECL消光が観測された。例えば、m-フルオロフェノールは、o-フ ルオロフェノールまたはp-フルオロフェノールのいずれと比べても、より効率 的なECL消光を呈した。驚くべきことに、フェノールは、試験されたフェノール 誘導体のいずれよりもECL消光の効率が約3倍高かった。実施例5 フェノールがRu(bpy)3 2+の光発光に及ぼす影響 u(bpy)3 2+(発光団として)と0.18M TPAH(共反応体として)とのpH6.8のストッ ク溶液が得られるように希釈した。エタノール中に溶解された所定量の0.2〜0.3 Mフェノールをストック溶液のアリコート10mLに添加し、フェノール濃度が0 〜0.3Mのサンプルを得た。Perkin Elmer LS-50B蛍光光度計を使用し、PMTの電 圧に850Vでバイアスをかけて、(電解を行わずに)各サンプルの光発光を測定し た。励起は、Ru(bpy)3 2+発光団の金属から配位子への電荷移動(MLCT)の最低エネ ルギー吸収のピーク極大である452nmで行い、検出は、550〜650nm(λem=62 0nm)で行った。データから、フェノールの濃度が増大するにつれて光発光が着 実に増大することが分かった。この傾向は、ECLに関してフェノールの濃度を増 大させたときに観測された結果と逆であることに注目されたい。また、このデー タから、フェノールが蛍光に及ぼす影響はECLに及ぼす影響よりもかなり小さい ことが分かった。実施例6 フェノールがRu(bpy)3 2+の光発光に及ぼす影響:バルク電解 し、30μM Ru(bpy)3 2+と0.18M TPAHとのpH6.8のストック溶液が得られるよ うに溶液を希釈した。ストック溶液のアリコート100mLに6mLの1Mフェノー ルを添加し、フェノールの濃度を60mMにした。この初期溶液に対して 準的3-電極系を用いて連続的攪拌を行いながら3時間かけて低電位電量分析(バ ルク電解)を行った。網状ガラス質炭素作用電極にバイアスをかけて+1.3Vの酸 化電位(参照電極として使用したAg/AgClゲル電極に対して)とし、電解を行った 。 適切な電解質溶液中に浸漬させた。3時間にわたるバルク電解の間、〜30分間隔 でサンプル1mLを採取し、実施例5の場合と同じように光発光試験(λexc=452 nm;λem=610nm)を行った。2時間45分後、光発光シグナルの約50%が消失 したが、これは、酸化生成物が光発光の消光に直接関与していることを意味する 。恐らく、この酸化生成物はまた、観測されたECL消光にも関与していると思わ れる。実施例7 Ru(bpy)3 2+ECLのカテコール、ヒドロキノン、および1,4-ベンゾキノン消光 し、0.3μM Ru(bpy)3 2+(発光団として)と0.05M TPAH(共反応体として)とのp H6.8のストック溶液が得られるように該溶液を希釈した。エタノール中に溶解 されたマイクロリットル量の1Mカテコール(すなわち、1,2-ジヒドロキシベンゼ ン)、ヒドロキノン(すなわち、1,4-ジヒドロキシベンゼン)、または1,4-ベンゾ キノン(いずれもAldrich Chemical Company製)(ECL消光剤として)をストック溶 液のアリコート1mLに添加し、消光剤濃度が2〜11mMのサンプルを得た。比較 のために、エタノール中に溶解されたマイクロリットル量の1Mフェノール(ECL 消光剤として)をストック溶液のアリコート1mLに添加し、フェノール濃度が2 〜11mMのサンプルを得た。各サンプルについてECL強度の測定および記録(任意 の単位)を行った。データを図4に示す。 この実施例は、同等な濃度において、カテコール、ヒドロキノン、および1,4- ベンゾキノン(フェノールの電解酸化生成物であると推定される)が、フェノール よりも効率的に、Ru(bpy)3 2+/TPAH ECL反応シーケンスにおいてマイクロモル濃 度のRu(bpy)3 2+のECLを消光することを示しているが、3つの誘導体のうちで最 も効率の高いものはベンゾキノンであり、フェノールの約6倍高い効率を有する 。実施例8 1,4-ベンゾキノン誘導体によるRu(bpy)3 2+ECLの消光 多数のベンゾキノン誘導体の消光効率について、実施例7で使用したのと同 様な方法で試験した。適切な濃度になるように消光剤をエタノール中に溶解し、 適切なアリコートを、Ru(bpy)3 2+/TPAHストック溶液のアリコート1mLに加え た。消光剤として試験されたこれらのベンゾキノン誘導体としては、2,3-ジクロ ロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン(DDQ)、2,5-ジブロモ-1,4-ベンゾキノン(BRB Q)、1,2,3,4-テトラフルオロ-5,8-ジヒドロキシ-アントラキノン(TFDAQ)、2-メ トキシ-3-メチル-1,4-ナフトキノン(MMNQ)、およびアントラキノン-1,5-ジスル ホン酸が含まれていた(いずれもAldrich Chemical Company製で、純度は>98%で あった)。 フェノール、BQ、およびDDQについてのECL消光データを図5に示す。多くのベ ンゾキノン誘導体の場合と同じように、DDQは、フェノールよりもECL消光の効率 が約5倍以上高かった。ベンゾキノンは、試験したベンゾキノンのいずれよりも ECL消光の効率が少なくとも約3倍以上高かった。実施例9 ヒドロキノン、カテコール、およびベンゾキノンがRu(bpy)3 2+の光発光に及ぼす 影響 u(bpy)3 2+(発光団として)と0.18M TPAH(共反応体として)とのpH6.8のストッ ク溶液が得られるように希釈した。ストック溶液のサンプル1.2mLに、エタノ ール中に溶解された1Mヒドロキノン(Aldrich Chemical Company)のアリコート0 .15mLを添加した。各アリコートを添加した後(電解せずに、かつバルク電解を 行う前に)、先の実施例5に記載の方法を用いて光発光を測定した。データから 、0.45mLの1Mヒドロキノン溶液を添加すると光発光が約10%増加することが 分かった。この傾向は、ECLに関してヒドロキノンの濃度を増大させたときに観 測された結果と逆であることに注目されたい。 ヒドロキノンの代わりに1Mカテコール(Aldrich Chemical Company)を用いて 同じような実験を行った。驚くべきことに、カテコールを徐々に増加させると光 発光は減少し、1.2mLの1Mカテコールを添加したところで光発光シグナルの約 70%が消失した。 ヒドロキノンの代わりに0.333Mベンゾキノン(Aldrich Chemical Company) を用いてもう1つの同じような実験を行った。この場合にも、ベンゾキノンを徐 々に増加させると光発光は減少し、0.3mLの0.333Mベンゾキノンを添加したと ころで光発光シグナルの約100%が消失した。これらの結果は明らかに、光発光 消光剤としてのベンゾキノンの効率のよさを示している。実施例10 ヒドロキノン、カテコール、およびベンゾキノンがRu(bpy)3 2+の光発光に及ぼす 影響:バルク電解し、30μM Ru(bpy)3 2+(発光団として)と0.05M TPAH(共反応体として)とのpH 6.8のストック溶液が得られるように溶液を希釈した。ストック溶液のアリコー ト100mLに6mLの1Mヒドロキノン(Aldrich Chemical Company)を添加し、フ ェノール濃度を60mMにした。先の実施例6に記載したように定電位電量分析( バルク電解)を行った。45分後、溶液は赤褐色に変わったが、これは、ベンゾキ ノンまたはなんらかの誘導体の形成を示唆するものである。また、光発光の完全 な消光が45分以内に観測された。これらのデータは、フェノールに対して観測さ れたものと類似しており、この場合、Ru(bpy)3 2+の発光を増強する物質が電気化 学的に酸化されて発光を効率的に消光する生成物を生成する。 ヒドロキノンの代わりに6mLの1Mカテコールを用いて同じような実験を行っ た。30分以内に光発光の完全な消失が観測され、赤褐色溶液の共存物質が形成さ れた。カテコール自体もこれらの濃度において光発光を消光する(実施例Xを参 照されたい)が、カテコールの電解酸化生成物の方が光発光の消光効率がかなり 高い。 ヒドロキノンの代わりに1mLの0.333Mベンゾキノンを用いてもう1つの同じ ような実験を行った。バルク電解酸化を行っても光発光の消光の増加はほとんど またはまったく観測されなかった。この結果は、ベンゾキノンが観測された消光 に関与するという結論と一致する。実際には、光発光強度のわずかな増加が観測 されたが、これは、長時間の酸化をうけると、ベンゾキノンの分解が始まって非 消光性生成物が形成されることを意味する。実施例11 フェノールによるRu(bpy)3 +2/TPAHのECL消光:電位の検討 し、0.3μM Ru(bpy)3 2+(発光団として)と0.05M TPAH(共反応体として)とのp H6.8のストック溶液が得られるように溶液を希釈した。エタノール中に溶解さ れたマイクロリットル量の1Mフェノール(ECL消光剤として)をストック溶液のア リコート1mLに添加し、フェノール濃度が2〜6mMのサンプルを得た。先に記 載した方法を用いて、各サンプルのECL強度の測定および記録(任意の単位)を行 ったが、ただし、ECL消光度および完全なECL消光を生じる電位を評価するために 、600、1000、および2800mVの電位を使用した。 Ru(bpy)3 2+からRu(bpy)3 3+への酸化は、Ag/AgClに対して+1.3Vで進行するこ とが知られている。生成物を生じるフェノールの酸化は、Ag/AgClに対して約+1. 0Vで起こる。予期されたように、Ag/AgClに対して+1.3V未満の電位ではECLが ほとんど観測されなかったが、その理由は、これより低い電位ではRu(bpy)3 +2 が酸化されないためである。予期されたように、フェノール濃度を高くし、更に 電位を高くしたところ、消光の増大が観測されたが、これは、効率的なECL消光 を行うためにはフェノールとRu(bpy)3 +2の両方を酸化する必要があるという結論 を支持する。比較例1 メチルビオロゲンカルボキシレートによるRu(bpy)3 +2のECL消光 Ru(bpy)3 2+(発光団として)のpH6.8のストック溶液が得られるように希釈した 。マイクロリットル量の水性10mMメチルビオロゲンカルボキシレート(MV+2、1 ,1-'ジメチル-4,4'-ビピリジニウムカルボキシレートジクロリド)(ECL消光剤と して)をストック溶液のアリコート1mLに添加し、MV+2濃度が2〜10mMのサン プルを得た。比較のために、エタノール中に溶解されたマイクロリットル量の1 Mフェノール(ECL消光剤として)をストック溶液のアリコート1mLに添加し、フ ェノール濃度が2〜6mMのサンプルを得た。各サンプルのECLを測定し、ECL強度 (任意の単位)を記録した。データを図6に示す。 この実施例は、同等な濃度において、フェノールが、Ru(bpy)3 2+のECL消 光の「優れた標準」であるメチルビオロゲンカルボキシレートよりも約10倍効率 的に、Ru(bpy)3 2+/TPAH ECL反応シーケンスにおいてマイクロモル濃度のRu(bpy )3 2+のECLを消光することを示している。実施例12 フェノールによるRu(bpy)3 +2/TPAHのECL消光:不動化された発光団(磁性粒子を 介して)および溶液状態の消光剤 この実施例では、不動化された標識化複合体(この場合は、発光団Ru(bpy)3 +2 で標識化し続いて常磁性粒子に結合させたオリゴヌクレオチド)の、溶液状態の 消光剤(この場合はフェノール)による消光を示す。 β-シアノエチルアミド亜リン酸(beta−cyanoethyl phosphoramidite)の化学 り、20個のヌクレオチド残基からなる試験用オリゴヌクレオチドを調製した。以 下に示すようにビオチン-TEG基と-DMT保護ヒドロキシル基(すなわち、-ODMT)の 両方を有する市販の(Glen Researchからの)誘導体化された制御細孔ガラス支持 体を用いることにより、得られるオリゴヌクレオチドは、3'-末端に繋がれたビ オチン基を有する。 標準的方法を用いてオリゴヌクレオチドを合成した。20量体のオリゴヌクレオ チド(DMT保護5'-ヒドロキシル基を有する)を合成した後、上記のSynthesizerを 用いて最終反応シーケンスを実施したが、ただし、ヌクレオチドモノマー試薬の 代わりに以下に示すRu(bpy)3 2+のアミド亜リン酸誘導体を使用した。 このようにして、3'-末端に繋がれたビオチン基と、5'-末端に繋がれたRu(bpy )3 +2部分とを有する20量体のオリゴヌクレオチド(以下に示されている)を得た。 この誘導体化オリゴヌクレオチドは、以下のように表すことができる。ただし 、RはRu(bpy)3 +2含有基を意昧し、Bはビオチン含有基を意昧する。 磁鉄鉱(Fe3O4)コアーとポリスチレン外側コーティングを含み、約2.8μmのサ イズを有する超常磁性粒子(ニューヨーク州Lake SuccessのDynal Corp製)を、ポ リ-ストレプトアビジン(Streptomyces avidiniiの培養体の上清から調製された タンパク質で、ビオチンに対して高い親和性をもつ結合部位を有する)で被覆し た。ストレプトアビジン被覆磁性ビーズの懸濁液に、標識化オリゴヌクレオチド 溶液を添加し、結合された標識化オリゴヌクレオチドを有する標識化磁性ビーズ を得た。 ースとした緩衝液を調製し、27.19g/Lの一塩基性リン酸カリウム(KH2PO4)と0. 2g/LのTriton X-100(t-オクチルフェノキシ-ポリエトキシエタノール)と0.0 5M TPAHとを含むように配合した。4M NaOH水溶液を用いて緩衝溶液のpHを7 .0に調節した。緩衝溶液にフェノールを添加する場合、エタノールに溶解した1 Mフェノール1.2μLを添加して1mMフェノールとし、4M NaOH水溶液を用 いて再びpHを7.0に調節した。 標識化磁性ビーズ(546pmol Ru(bpy)3 +2標識)の懸濁液のアリコート3μL を、1mLの緩衝溶液に添加して実験用ビーズ溶液を得た。この実験用ビーズ溶 液をECLセル中に入れ、標識化磁性粒子を作用電極の表面上に固定した。共反応 体(およびいくつかの場合にはフェノール)を含有する緩衝溶液をセル中に流し込 み、シグナルを発生させるべく適切な電位を印加する。5回の対照実験(フェノ ールを含まない緩衝液を使用した)および10回の消光実験(フェノールを添加した 緩衝液を使用した)に対して、ECLの測定および記録(任意の単位)を行った。対照 実験では、フェノールの不存在下において標識化ビーズから任意の単位で約75,0 00のECLシグナルを観測した。フェノールの存在下では、標識化ビーズに対するE CLシグナルは実質的にまったく観測されなかった。 この実施例は、ECL発光団を不動化させた磁性ビーズの形態でも(この場合は、 ECL発光団をオリゴヌクレオチドに結合させ、該オリゴヌクレオチドを磁性ビー ズに結合させた)、ECL発光団の消光は依然として起こることをはっきりと示して いる。実施例13 ベンゾキノンによるRu(bpy)3 +2/TPAHのECL消光:発光団および消光剤の両 方を不動化(磁性粒子を介して) この実施例では、不動化された標識化複合体(この場合は、発光団Ru(bpy)3 +2 で標識化し続いて常磁性粒子に結合させたオリゴヌクレオチド)の、該オリゴヌ クレオチドに更に結合させた消光剤(この場合はベンゾキノン)による消光を示す 。 実施例12に記載したものと同じような方法で、β-シアノエチルアミド亜リン相法により、21個のヌクレオチド残基から成る3つのオリゴヌクレオチドを調製 した。得られた3つの誘導体化オリゴヌクレオチドを以下に示すが、ここで、 RはRu(bpy)3 +2含有基を意味し、Bはビオチン含有基を意味する。 上記の式中、は、以下に示されている市販の(Glen Research製の)修飾チミ ンヌクレオチド残基「アミン修飾C6-dT」を意味するが、これはオリゴヌクレオ チド合成時に導入されたものである。 また、上記の式中、は、以下に示されている市販の(Glen Research製の)試 薬「Label On」を意味し、通常の標識の結合を可能にするものであるが、これは オリゴヌクレオチド合成時に導入されたものである。 上記の3つの誘導体化オリゴヌクレオチド(それぞれRu(bpy)3 2+基を有する)を 対照として使用した。と記された位置およびと記された各位置でベンゾキノ ン部分を結合させることにより、以下に示されている3つの試験用オリゴヌクレ オチドを調製した。 に対して、最初に、保護アミン基(すなわち、-NHC(=O)CF3)の脱保護を行い 、続いて、遊離したアミン基を、以下に示されているベンゾキノン誘導体のN- スクシンイミジルエステルと反応させた。に対して、最初に、保護アミン基( すなわち、-NHFMOC)の脱保護を行い、続いて、遊離したアミンを、同じベンゾキ ノン誘導体のN-スクシンイミジルエステルと反応させた。 456nmにおけるRu(bpy)3 2+部分の吸収(ε=13000M-1cm-1)を用いてUV-VIS 吸収分光法により3つの試験用オリゴヌクレオチド(およびそれらの標準)を定量 し、ECL分析に対して等量の各試験用オリゴヌクレオチドが使用できるようにし た。実施例12の場合と同じような方法で、1/3飽和のストレプトアビジン部位が 得られるように、好適な量の各試験用オリゴヌクレオチドをストレプトアビジン 被覆磁性ビーズの懸濁液に添加し、結合された標識化オリゴヌクレオチドを有す る標識化磁性ビーズを得た(576pmolビオチン/DNA標識化プローブ)。 各標識化磁性ビーズ懸濁液を検査した。標識化磁性ビーズ懸濁液のアリコート験用ビーズ溶液をOrigenアナライザーのECLセル中に入れ、標識化磁性粒子 中に流し込み、シグナルを発生させるべく適切な電位を印加した。4つの試験用 オリゴヌクレオチドのそれぞれについて5回の反復実験を実施し、ECLの測定お よび記録(任意の単位)を行った。 Ru(bpy)3 2+発光団が消光性ベンゾキノン基から4個のヌクレオチド残基だけ離 れた試験用オリゴヌクレオチド13-1-RQに対して観測されたECL強度は、消光性部 分をもたない対照オリゴヌクレオチド13-1-Rに対して観測されたものよりも約5 3%少なかった。 Ru(bpy)3 2+発光団が消光性ベンゾキノン基から21個のヌクレオチド残基だけ離 れた試験用オリゴヌクレオチド13-2-RQに対して観測されたECL強度は、消光性部 分をもたない対照オリゴヌクレオチド13-2-Rに対して観測されたものよりも約4 9%少なかった。 Ru(bpy)3 2+発光団が(5つの)消光性ベンゾキノン基から21個のヌクレオチド残 基だけ離れた試験用オリゴヌクレオチド13-3-RQ5に対して観測されたECL強度は 、消光性部分をもたない対照オリゴヌクレオチド13-3-Rに対して観測されたも のよりも約20%少なかった。 この実施例は、ECL発光団と消光性部分の両方を不動化させた磁性ビーズの形 態でも(この場合は、両方をオリゴヌクレオチドに結合させ、該オリゴヌクレオ チドを磁性ビーズに結合させた)、ECL発光団の消光は依然として起こることをは っきりと示している。実施例14 ベンゾキノンによるRu(bpy)3 +2/TPAHのECL消光:制限酵素法 この実施例では、ビーズ補足(bead capture)に結合させた制限酵素の使用およ びそれに続くECLの検出について示す。この場合、オリゴヌクレオチドハイブリ ダイゼーションプローブはRu(bpy)3 2+で標識化され、3'-末端にビオチンを有し 、5'-末端に消光性部分を有する。実施例12に記載の標準的な固相法を用いて、3 '-末端に繋がれたビオチン基を有する2対のオリゴヌクレオチドを合成し た。 各対は異なる例を示しており、与えられた対の各メンバーは、検出対照のDN A標的中の配列と相補的な同じ特異的プローブ配列を含む。各対の第2のメンバ ーは、消光性部分をもたせる誘導体化は行わず、消光を確認するための比較用と して使用されるものであり、この第2のメンバーは、消光性部分の不存在下にお けるECL発光を示す。下線を付した残基CCT AGGは、以下で説明されるように、Ba mHI酵素の制限部位の一部分を識別する。 上記の式中、は、先の実施例13で規定した通りであり、は、以下に示され ている市販の(Glen Research製の)試薬「5'-アミノ修飾体」(ただし、MMTは4-モ ノメトキシトリチルである)を意味するが、これはオリゴヌクレオチド合成時に 導入されたものである。 また、上記の式中、Tcは、以下に示されている市販の(Glen Research製の)修 飾チミンヌクレオチド残基「カルボキシ修飾dT」を意味するが、これはオリゴヌ クレオチド合成時に導入されたものである。 固相支持体からのオリゴヌクレオチドの開裂に続いて、以下のN-ヒドロキシ スクシンイミジルエステル誘導体をTcのカルボキシ基と反応させることにより、 Ru(bpy)3 2+基を3'-末端に共有結合させる。 次に、実施例13に示されている活性化ベンゾキノン誘導体を用いて、および のアミノ基を介して、各対の第1のメンバーの5'-末端に消光性部分を共有結 合させる。このようにして、以下の2対の誘導体化オリゴヌクレオチドハイブリ ダイゼーションプローブが得られる。各対の第1のメンバーのECL発光は、消光 性部分の存在により消光されるが、これは、消光性部分をもたない対応する第2 のメンバーのECL発光と比較することにより示される。 次に、一対の誘導体化オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションプローブの 第1のメンバー(例えば、14-A-1-BRQまたは14-B-1-BRQ)を、一本鎖DNAを含 有するサンプルに添加する。誘導体化オリゴヌクレオチドプローブは、相補的な 標的配列とだけハイブリダイズするであろう。制限酵素BamH1を添加する。この 酵素は、以下に示されている特異的二本鎖DNAだけを認識する。 制限酵素は、GG残基間でこの配列を切断し、それぞれ以下に示されている5'- オーバーハングを有する2つの断片を形成する。 このようにして、各標的DNA配列は開裂イベントを引き起こし、ECL消光部 分と消光接触するECL標識をもはやもたない開裂断片が形成される。これらの開 裂断片はまた、実施例12の場合と同じようにストレプトアビジン被覆磁性ビーズ による補足(または場合により分離)を可能にするビオチン基(ならびに消光され ないECL標識)を有する。この後、ECL発光を測定し、もとのサンプル中の標的D NAの量と相関付ける。もちろん、ビーズ補足は、酵素的開裂の前または後のい ずれで行ってもよい。 再度、比較のために、所定の対の第1および第2のメンバーに対して、ハイブ リダイゼーションの後かつ酵素的開裂の前にECL発光を測定する。プローブが標 的DNAにハイブリダイズした場合、各対の第1のメンバーのECL発光は、消光 性部分の存在により消光された状態を保つが、これは、消光性部分をもたない対 応する第2のメンバーのECLと比較することによって示される。F.文献 本発明の関連する技術の現状をより完全に説明すべく、以下に引用されている 出版物、特許、および公開特許明細書の開示内容は、引用により本特許の開示内 容に含まれるものとする。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 ベリスレ,クリストファー,エム. アメリカ合衆国 94518 カリフォルニア 州,コンコード,ゲットウン コート 1741

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1. サンプル組成物中のアナライトを検出する方法であって、 (a)前記サンプル組成物、ECL標識を有する試薬、及び少なくとも一のベンゼン部 分を含むECL消光部分を有する試薬を含むアッセイ混合物を調製し、 (b)(i)段階(a)で調製したアッセイ混合物、及び (ii)ECL標識を含む前記試薬、ECL消光部分を有する前記試薬、及び既知量の前記 アナライトを含むアッセイ混合物 のECL発光の差を測定し、 (c)段階(b)で測定された差を前記サンプル中のアナライトの量と関連付ける段階 を含む前記方法。 2. ECL消光部分が、フェノール部分、キノン部分、ベンゼンカルボン酸部分 、及びベンゼンカルボキシレート部分からなる群から選択される少なくとも一の 部分を含む請求項1に記載の方法。 3. ECL消光部分が少なくとも一のフェノール部分を含む請求項1に記載の方 法。 4. ECL消光部分が少なくとも一のキノン部分を含む請求項1に記載の方法。 5. ECL消光部分が少なくとも一のベンゼンカルボン酸部分を含む請求項1に 記載の方法。 6. ECL消光部分が少なくとも一のベンゼンカルボキシレート部分を含む請求 項1に記載の方法。 7. ECL標識がルテニウムを含む請求項1に記載の方法。 8. ECL標識がオスミウムを含む請求項1に記載の方法。 9. ECL標識が多環式芳香族炭化水素を含む請求項1に記載の方法。 10. アナライトがオリゴヌクレオチドを含む請求項1に記載の方法。 11. アナライトがDNAを含む請求項1に記載の方法。 12. アナライトがRNAを含む請求項1に記載の方法。 13. アナライトがポリペプチドを含む請求項1に記載の方法。 14. アナライトが抗体を含む請求項1に記載の方法。 15. アナライトが抗原を含む請求項1に記載の方法。 16. アナライトが酵素を含む請求項1に記載の方法。 17. アナライトが酵素基質を含む請求項1に記載の方法。 18. アナライトが多糖を含む請求項1に記載の方法。 19. アナライトの既知量がゼロである請求項1に記載の方法。 20. ECL標識を有する試薬及びECL消光部分を有する試薬が同じ試薬である請求 項1に記載の方法。 21. ECL標識を有する試薬及びECL消光部分を有する試薬が異なる試薬である請 求項1に記載の方法。 22. 段階(a)の前に当初のサンプル組成物中に存在する基質について化学反応 を行い、前記サンプル組成物中にアナライト質を生成し、段階(b)で測定された 差を当初のサンプル組成物中の基質の量と関連付ける段階をさらに含む請求項1 に記載の方法。 23. 段階(b)の測定の前に段階(a)で調製されたアッセイ混合物との化学反応を 行う段階をさらに含む請求項1に記載の方法。 25. ECL消光部分を含み、適当な容器に入れた状態で提供される請求項1に記 載の方法に使用するためのアッセイ試薬。 26. ECL消光部分及びECL標識を含み、適当な容器に入れた状態で提供される請 求項1に記載の方法に使用するためのアッセイ試薬。 27. 請求項1に記載の方法に使用するためのアッセイ試薬キットであって、適 当な容器に入れたECL消光部分を含むアッセイ試薬と、前記方法を実施するため の説明書とを含む前記キット。 28. 請求項1に記載の方法に使用するためのアッセイ試薬キットであって、適 当な容器に入れたECL消光部分及びECL標識を含むアッセイ試薬と、前記方法を実 施するための説明書とを含む前記キット。
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