JP3951031B2 - 電気化学発光標識及び電気化学発光消光剤を用いるアッセイ - Google Patents

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Description

関連出願
本出願は、1997年5月23日に出願されたアメリカ仮特許出願第60/047,605号に基づく優先権を主張するものである。その開示は引用により本明細書の一部とする。
技術の分野
本発明は、電気発生化学発光とも呼ばれる電気化学発光(ECL)を使用する、化学的及び生物学的アッセイの一般的な分野に関するものである。特に本発明は、強力にECLを消光させる特定のクラスの化学部分、及びこれらのECL消光剤をECL標識と組み合わせた使用、例えばECL消光剤とECL標識とを用いるECLアッセイ法における使用に関する。このような消光部分の1つのクラスは、少なくとも1つのベンゼン部分を含むものである。またこのような消光部分のサブクラスは、少なくとも1つのフェノール部分、キノン部分、ベンゼンカルボン酸部分、及び/またはベンゼンカルボキシレート部分を含むものである。
背景
本出願全体を通して、種々の刊行物、特許、公表特許出願を引用を特定することにより参照する。これらの文献の引用の全体は、本明細書の終わりに請求の範囲の直前に示す。本出願中で引用した刊行物、特許、公表特許明細書の開示は、本発明が関連する技術の現状をより十分に記載するために、引用により本明細書の一部とする。
発光とは、物質の温度が上昇すること以外の任意の理由によるその物質からの光の放出を示すために一般的に用いられる用語である。一般に、原子あるいは分子は「励起状態」からより低いエネルギー状態(通常、基底状態)へと移動するときに、電磁エネルギーを有するフォトン(例えば光)を放出する。この過程は多くの場合「放射減衰」と呼ばれる。励起の原因は多数ある。励起の原因がフォトンである場合はその発光の過程は「光発光」と呼ばれる。励起の原因が電子である場合はその発光の過程は「電気発光」と呼ばれる。より具体的には、電気発光は、電子の直接的な注入や除去によって電子孔対が形成され、続いて電子孔対の再編成が起こりフォトンが放出されることにより生じる。化学反応によって引き起こされる発光は通常「化学発光」と呼ばれる。生きている生物体によって生成される発光は通常「生物発光」と呼ばれる。光発光がスピン許容遷移(例えば一重項-一重項遷移、三重項-三重項遷移)によって引き起こされる場合は、その光発光の過程は通常「蛍光」と呼ばれる。一般的に、蛍光発光は、スピン許容遷移によって急速に緩和され得る短期間の励起状態の結果として、励起の原因が除去された後は持続しない。光発光がスピン禁止遷移(例えば三重項-一重項遷移)によって引き起こされる場合は、その光発光の過程は通常「りん光」と呼ばれる。一般的にりん光発光は、スピン禁止遷移によってのみ緩和され得るような長期間続く励起状態の結果として、励起の原因が除去された後も長く持続する。
電気化学発光(ECL)、または電気生成化学発光とも呼ばれるものは、一般的に、電気化学的に生成された電子的に励起された化学種からの電磁放射のフォトンの放出(例えば光)をいうものである。単純な例では、基底状態にある化学種Aがはじめに電気化学的に還元されて還元状態の化学種A-を生じ、これはその後電極の表面から拡散し得る。同様に化学種Aは電気化学的に酸化されて酸化状態の化学種A+を生じる。そして還元状態の化学種A-と酸化状態の酸化状態の化学種A+は一緒に拡散し、反応を起こして電子的に励起された化学種A*と基底状態の化学種Aを生じる。電子的に励起された化学種A*はフォトンを放出することによって基底状態に緩和される。
A+e-→A-
A-e-→A+
-+A+→A*+A
*→A+hν
通常の同様な例では共反応物CRが、電気化学的に生成された還元状態あるいは酸化状態の化学種、A+あるいはA-のいずれかと反応して電子的に励起された状態の化学種A*を生じ、そしてフォトンを放出することによって基底状態に緩和される。
A+e-→A- A-e-→A+
-+CR→A*+CR' A+CR→A*+CR'
*→A+hν A*→A+hν
ECLは1920年代の終わりに最初に見出され、1960年代の終わりから1970年代の間、その詳細が探求された。自然界におけるECL(例えば、発光状態、発光メカニズム、発光効率等)に関する多くの文献による概説が出版されている。例えば、Knightら、1994及びその中に引用されている参考文献を参照されたい。
多環式芳香族炭化水素のECLは、水性媒体中及び非水性液媒体中の両方において広範に研究されている。このような化合物の例としては、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、クリセン、ペリレン、コロネン、ルブレンが挙げられる。
典型的な例は、9,10-ジフェニルアントラセン(DPA)のECLである。二段階の電位が白金電極に印加され、アノード酸化生成物(すなわちラジカルカチオン、DPA・+)が正電極に、カソード還元生成物(すなわちラジカルアニオン、DPA・-)が負電極に生成される。これらの生成物は電子移動を受け、DPAと電子的な励起(一重項)状態1DPA*を生じ、これは化学発光によりフォトンを放出する(この場合は蛍光)。この例では、発光状態は直接電子移動によって形成される(いわゆる「S経路」)。
DPA-e-→DPA・+(電気酸化)
DPA+e-→DPA・-(電気還元)
DPA・++DPA・-→DPA+1DPA*(電子移動)
1DPA*→DPA・-+hν(化学発光)
ECLはまた、多環式芳香族炭化水素を、電子移動の過程において適切な供与体あるいは受容体分子として機能し得る他の化学種と組み合わせて用いることによっても発生させることができる。例えば、別のよく知られたECL系としてDPAと供与体分子、N,N',N",N"'-テトラメチルパラフェニレンジアミン(TMPD)を使用するものがある。この場合は、発光状態は最初の電子移動段階の生成物からの二番目の(効率の悪い)三重項-三重項崩壊の段階において形成される(いわゆる「T経路」)。
TMPD-e-→TMPD・+(電気酸化)
DPA+e-→DPA・-(電気還元)
TMPD・++DPA・-→TMPD+3DPA*(電子移動1)
3DPA*3DPA*→DPA+1DPA*(電子移動2)
1DPA*→DPA・-+hν(化学発光)
無機及び/または有機金属化合物のECLも広範に研究されている。このような化合物の重要なクラスは、Ru(bpy)3 2+やOs(bpy)3 2+のような2,2'-ビピリジン(bpy)のルテニウムやオスミウムとの錯体である。このような化合物のその他の例としては、トリカルボニル(クロロ)(1,10-フェナントロリン)ルテニウム(I)、方形平面白金(II)錯体、Cr(bpy)3 2+、Pt2(ジホスホナート)4 4-のような多核錯体、Mo612 2-のようなクラスターが挙げられる。例えば、Knightら、1994を参照されたい。
ほとんどの無機及び/または有機金属化合物の研究はRu(bpy)3 2+およびRu(bpy)3 2+と関連する化合物についてのものである。その理由は主としてそれらの化合物の固有のいくらか例外的な性質によるものであり、そのような性質としては室温において水溶液中で発光する能力や、容易に得られる電位において可逆的な一電子移動反応を受けて、十分に安定な還元化学種あるいは酸化化学種を生じる能力、酸素の存在に対する非感受性、そして特定の条件においては100%近くにもなる崩壊効率が挙げられる。例えば、Ru(bpy)3 2+の溶液を、錯体の酸化及び還元電位の間を変化する二段階電位変化のサイクルにかけると、オレンジ色の発光が見られる(約620nm)。
Ru(bpy)3 2+-e-→Ru(bpy)3 3+(電気酸化)
Ru(bpy)3 2+-e-→Ru(bpy)3 +(電気還元)
Ru(bpy)3 ++Ru(bpy)3 3+→Ru(bpy)3 2++Ru(bpy)3 2+*(電子移動)
Ru(bpy)3 2+*→Ru(bpy)3 2++hν(化学発光)
Ru(bpy)3 2+を強力な酸化剤種あるいは還元剤種と溶液中で組み合わせて使用することによってもECLを発生できる。この方法では、二段階酸化-還元サイクルの半分のみを印加するだけてよい。例えば、共反応物であるペルオキソジスルフェート(すなわちS28 2-、ペルスルフェート)とオキサレート(すなわちC24 2-)は不可逆的にそれぞれ還元あるいは酸化され、酸化性のS04 ・-イオンあるいは還元性のC02 ・-イオンを形成する。例えば以下の通りである。
Ru(bpy)3 2+-e-→Ru(bpy)3 +(電気還元)
28 2-+e-→S04 2-+S04 ・-(電気還元)
S04 ・-+Ru(bpy)3 +→S04 2-+Ru(bpy)3 2+*(電子移動)
S04 ・-+Ru(bpy)3 +→S04 2-+Ru(bpy)3 2+*(電子移動)
Ru(bpy)3 ++Ru(bpy)3 3+→Ru(bpy)3 2++Ru(bpy)3 2+*(電子移動)
Ru(bpy)3 2+*→Ru(bpy)3 2++hν(化学発光)
同様な方法で、Ru(bpy)3 2+を、還元剤として作用するアミンあるいはアミン基を含む化合物のような共反応物と組み合わせて使用することによってもECLを生成できる。一般に、アミンとのRu(bpy)3 2+ECL反応による発光は、一級<二級<三級の順に増大する。脂肪族あるいは脂環族アミンは一般に芳香族アミンよりも効率がよい。よく用いられるアミンの一例は、トリ-n-プロピルアミン(すなわちN(CH2CH2CH33、TPAH)である。例えば、Lelandら、1990を参照されたい。一般的に、電気的酸化とそれに続く反応の際に一個のプロピル基のα炭素からプロトンが失われてTPA(すなわち(CH3CH2CH22N(CHCH2CH3)が生じると考えられている。一連のECL反応は下のような反応によって要約される。
Ru(bpy)3 2+-e-→Ru(bpy)3 3+(電気酸化)
TPAH+e-→[TPAH]+→TPA+H+(電気酸化及び反応)
Ru(bpy)3 3++TPA→Ru(bpy)3 2+*+生成物(電子移動)
Ru(bpy)3 2+*→Ru(bpy)3 2++hν(化学発光)
このように、Ru(bpy)3 2+のECLは広い範囲の共反応物の測定に用いられてきた。例えば、Ru(bpy)3 2+ECLはシュウ酸塩及び過硫酸塩の10-13モル/リットルという低濃度での測定に有効に用いられている。同様に、Ru(bpy)3 2+ECLは脂肪族アミン、脂環式アミン(例えばスパルテイン、ニコチン、アトロピン)、エリスロマイシンのような薬物(トリアルキルアミン基をもつ)、アミノ酸(例えばバリン、プロリン)、及びタンパク質の測定に用いられている。これは、他のルテニウムやオスミウムキレートと同様に、化学的及び生化学的アッセイのための感受性の高いECL標識としてのRu(bpy)3 2+の利用につながるものであった。
化学的及び生化学的なアッセイには一般的に、対象とするアナライトを、予め決められた非限定量の一種以上のアッセイ試薬と接触させ、結果として生じる生成物(検出生成物)の一種以上の特性を測定し、そして通常は試験されるサンプルに予測される範囲の既知の量の対象のアナライトを含む標準サンプルから決定された関係を用いることによって、測定した値と当初のサンプル中に存在するアナライトの量とを関連付けることが含まれる。一般的に、検出生成物には一種以上のアッセイ試薬によって与えられる一種以上の検出可能な標識が取り込まれる。通常に用いられる標識の例としては、125I、32P等の放射性同位体標識、酵素(例えばペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ)及び酵素基質標識、蛍光標識(例えばフルオロセイン、ローダミン)、電子スピン共鳴標識(例えばニトロオキシドフリーラジカル)、免疫反応性標識(例えば抗体、抗原)、結合対(例えばビオチン-アビジン、ビオチン-ストレプトアビジン)の一方のメンバーである標識等が挙げられる。サンドイッチアッセイは一般に、対象となるアナライトが、最終的に分離に用いられる一種のアッセイ試薬(例えば抗体、抗原、結合対の一方のメンバー)と、検出可能な標識を有する第二のアッセイ試薬との間にサンドウィッチされた複合体を形成することを含む。競合アッセイは一般に、対象となるアナライトとアナライトの類似物質の両方が、別の一種の試薬(例えば抗体)に存在する結合部位について競合し、アナライト、類似物質、あるいは結合試薬のいずれか一種が検出可能な標識を有する系を含む。
近年、ECL標識は化学的及び生物学的なアッセイにおいてより一般的なものになってきている。例えば、ECL標識(例えばRu(bpy)3 2+部分を含むもの)は、反応基を(例えば1つ以上のビピリジルリガンドに)結合することによって修飾して、タンパク質、核酸、その他の分子のための活性化された標識試薬を形成することができる。この方法は、32P放射活性標識のような他の検出システムと比較して、以下に述べるような多数の利点、すなわち(1)放射性同位体を用いないので、サンプルの取り扱いや廃棄に伴う問題が軽減されること、(2)各標識が測定サイクル一回につき複数のフォトンを放出することができるのでECL標識の検出限界が非常に低く、0.2ピコモル(2 x 10-13 M)程度である場合も多いこと、(3)多くの場合6桁のオーダーにもなる標識定量のダイナミックレンジ、(4)長い貯蔵寿命を有することが多い非常に安定した標識であること、(5)低分子量の標識(約1000原子単位)であり、多くの場合、免疫的活性、溶解度、ハイブリダイゼーション能力等に影響を与えることなくタンパク質やオリゴヌクレオチド等に結合することができること、(6)一連のECL反応は電気化学的に開始され、電極の近傍の適切な電気化学的特性を有する種のみが検出されるので、選択性が高く、バックグラウンドが低いこと、(7)単純で通常は数秒しか要しない迅速な測定であること等の利点(但し、これらに限定されない)を有する。
近年、ECLは免疫学的アッセイ及びDNAプローブ分析の開発に使用されている。例えば、Blackburnら、1991、Kentenら、1991、1992、Lelandら、1992、及びYost、1993を参照されたい。
典型的で周知のECLを用いたDNA分離アッセイにおいては、標的オリゴヌクレオチドは、ビオチンを含むプライマーオリゴヌクレオチドを用いて増幅され(例えばPCRを用いて)、ビオチン部分を含む高濃度の標的オリゴヌクレオチドを生成し、次にECL標識が結合され、標的オリゴヌクレオチドにハイブリダイズしてハイブリダイズしたプローブ-標的二本鎖を形成する過剰量のオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションプローブを添加し、強力かつ選択的にビオチンを含む二本鎖に結合するストレプトアビジンで被覆したビーズを添加し、ビーズを混合物から分離し(例えば、磁気、重力により)、それにより過剰量の標識オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションプローブを除去し、ビーズに結合し、ECL標識されたハイブリダイゼーションプローブにハイブリダイズした標的オリゴヌクレオチドをECLを用いて検出あるいは定量する。
Blackburnら(1991)は、Ru(bpy)3 2+のN-スクシンイミジルエステル誘導体を、ECL標識をオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションプロープに結合するための手段として使用することを明確に開示している。ビオチン標識したオリゴヌクレオチドプライマーを用いることにより、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅産物をストレプトアビジンで被覆した磁気ビーズに結合させることにより分離することを可能としている。分離後、Ru(bpy)3 2+標識されたオリゴヌクレオチドプローブを結合PCR産物にハイブリダイズさせ、ECLによって検出している。
Kentenら(1991)は同様に、ガン遺伝子、ウイルス、及びクローン化された遺伝子からPCRによって増幅された生成物におけるECLアッセイの使用について明確に開示している。あるアッセイでは、Ru(bpy)3 2+標識をオリゴヌクレオチドプライマーの一方あるいは両方に結合し、増幅、結合、及び分離の後にPCR産物をECLによって検出している。別のアッセイでは、結合されたRu(bpy)3 2+を有するオリゴヌクレオチドプローブを磁気ビーズに結合したPCR産物にハイブリダイズさせ、過剰なプローブを洗浄によって除去し、ハイブリダイズした生成物をECLによって検出している。三番目のアッセイでは、結合されたRu(bpy)3 2+標識を有するオリゴヌクレオチドプローブを非結合PCR産物にハイブリダイズさせ、ハィブリダイズした生成物を磁気ビーズに結合させ、余分なプローブを洗浄によって除去し、ハイブリダイズした生成物をECLによって検出している。それぞれの場合において、所望の生成物はECL標識の存在により検出されている。
Kentenら(1992)はECL標識を用いた「結合アッセイ」を明確に開示している。明らかに対象となるアナライト、ECL標識、及び粒子を含む複合体が形成され、その後この複合体の存在をECLによって検出しているようである。
化学的及び生物学的アッセイは便宜的に「分離アッセイ」あるいは「非分離アッセイ」に分類されることが多い。一般的には、分離アッセイにおいては、検出生成物は、他の生成物及び/または未反応の対象となるアナライト及び未反応のアッセイ試薬から物理的に分離される。(例えば、過剰な標識試薬の標識ではなく、検出生成物の一部である標識のみを検出するために検出生成物を物理的に分離することが必要であることが多い。)その後アナライトの量は標識された検出生成物の量から直接的に、あるいは使用されなかった標識試薬の量から間接的に測定することができる。分離は、結合対(例えば、ビオチン-アビジン、抗原-抗体、オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションプローブ-オリゴヌクレオチド)のメンバー間の選択的な結合反応を利用して行うことができる場合が多い。例えば、結合対の一方のメンバーを有する標識検出生成物を最初に液体相(例えば溶液中)で形成し、そして例えば結合対のもう一方のメンバーを有する固体相試薬によりECL標識された検出生成物を捕捉することにより分離することができ、検出生成物は未反応のアナライトや試薬を含まない固体相を洗浄することによって回収することができる。結合対を用いたその他の多くの分離方法が当分野で周知である。
分離の段階を必要としないアッセイが非常に望ましい。この理由は、そのようなアッセイが一般的により少ないサンプルの操作で済み、また「リアルタイム」のアッセイに容易に適用できることが多いことによる。このようなアッセイは便宜的に「非分離アッセイ」に分類できることが多い。非分離アッセイにおいては、検出生成物は一般的に未使用のアッセイ試薬や未使用のアナライトから物理的に分離されない。そのかわり、検出生成物の存在は通常、アッセイ反応物の少なくとも一種が、対象となるアナライトに接触した結果としてのみ獲得あるいは喪失する特性によって検出される。多くのこのような非分離アッセイが開発されている。
非分離アッセイのある例においては、酵素及び酵素阻害剤の両方が用いられる。対象となるアナライトに接触すると、その酵素と酵素阻害剤は結合する(酵素活性を低下させる)か、あるいは分離する(酵素活性を上昇させる)。そしていずれの酵素活性の変化も、対象のアナライトの存在及び/または量と関連付けられる。例えば、Yoshidaら、1980及びZukら、1980を参照されたい。
非分離アッセイの別の例では、発色団及び発色団修飾剤の両方が用いられる。この場合も同様に、対象となるアナライトに接触すると、前記発色団と発色団修飾剤とは結合するか分離し、それによって特定の色の色の変化あるいは強度の変化が得られる。そして色及び/または色の強度のいずれの変化も、対象となるアナライトの存在及び/または量に関連付けられる。例えば、Zukら、1980を参照されたい。
非分離アッセイのさらに別の例においては、蛍光団及び蛍光団消光剤の両方が用いられる。対象のアナライトに接触すると、その蛍光団及び蛍光団消光剤は結合する(蛍光を減少させる)か、あるいは分離する(蛍光を増大させる)。例えば、Ullmanら、1976、Ullman、1979、Zukら、1981年、及びUllmanら、1981を参照されたい。光発光消光剤を利用する光発光アッセイ(例えば、蛍光アッセイ)のより最近の例について以下に記載する。
Tyagiら(1996)は、蛍光団(すなわち標識)と蛍光消光剤の両方を有する、特定のオリゴヌクレオチドプローブ(「分子ビーコン」と呼ばれる)を用いた、オリゴヌクレオチドのアッセイを明確に開示している。標的オリゴヌクレオチドの非存在下ではオリゴヌクレオチドプローブの部分がそれ自身にハイブリダイズし、蛍光団と蛍光消光剤を近接させる。この状態では蛍光シグナルは観察されない。標的オリゴヌクレオチドの存在下では、オリゴヌクレオチドプローブは脱ハイブリダイズし、標的オリゴヌクレオチドに優先的にハイブリダイズする。その間に蛍光団と蛍光消光剤が分離する。この状態では蛍光シグナルが観察される。すなわち、標的オリゴヌクレオチドとハイブリダイズしているオリゴヌクレオチドプローブのみから蛍光が観察される。この方法では、蛍光シグナルを測定する前にハイブリダイズしていないオリゴヌクレオチドプローブを除去する必要がない。
Heidら(1996)は、二重標識した蛍光発生ハイブリダイゼーションプローブを用いた、DNA分析のためのリアルタイム定量アッセイを明確に開示している。レポーターとして機能する第一の蛍光色素(FAM、6-カルボキシフルオレセイン)と、第一の蛍光色素の放出スペクトルを消光させる第二の蛍光色素(TAMRA,6-カルボキシテトラメチルローダミン)を有する1つのオリゴヌクレオチドプローブを調製する。Taqポリメラーゼの5'-特異的エクソヌクレアーゼ活性により、分解される標的オリゴヌクレオチドにハイブリダイズしたプローブのみが生じ、二種の色素が放出され、結果としてFAMの蛍光発光が増大する。
Wittwerら(1997)は、増幅中のPCR産物の連続的な蛍光モニター方法を明確に開示している。あるアッセイにおいては、「供与体」部分(例えばフルオレセイン)と「受容体」部分(例えばローダミン)の両方を有する市販の二重標識オリゴヌクレオチドプローブが標的オリゴヌクレオチドにハイブリダイズさせられる。近接した受容体は供与体からの蛍光シグナルを減衰させる。5'-特異的エクソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼを添加すると、重合の間、オリゴヌクレオチドプローブが分解され、供与体及び受容体の両方が放出される。受容体基に近接した状態でなくなると、供与体は増大した蛍光シグナルを生成する。別のアッセイでは、共鳴エネルギー移動に基づいて、二種の異なるオリゴヌクレオチドプローブを調製していた。1つは「供与体」部分(例えばフルオレセイン)を有するものであり、もう1つは「受容体」部分(例えばシアニン色素Cy5▲R▼)を有するものである。標的オリゴヌクレオチドにハイブリダイズするとき、供与体と受容体応部分が近接するように二つのオリゴヌクレオチドプローブが選択された。供与体が光励起されると、そのエネルギーの一部あるいは全部が受容体に移動し、受容体からの蛍光シグナルが増大する(例えば、Maliwalら、1995も参照されたい)。この方法では、標的オリゴヌクレオチドは受容体からの蛍光シグナルの増大により検出され、定量される。
ECLの消光とは異なり、光発光の消光は広く研究されており、多数の化合物が多様な条件下で光発光を消光させることが知られている。これとはまったく対照的に、ECLを効果的に消光させることが知られている化合物はわずかしかなく、周知のものの多くはECLを不完全にしか消光させないものやアッセイにおいては実用的ではないものである(例えばメチルビオロゲンカルボキシレート)。
本発明者らは、1つ以上のベンゼン部分を含む化合物、特に少なくとも1つのフェノール部分、キノン部分、ベンゼンカルボン酸部分、及び/またはベンゼンカルボキシレート部分を含む化合物のような特定の別のクラスの化合物が強力にECLを消光させることを見出した。
このような化合物のECL特性は広く研究されてはいなかった。アントラセンのような強力な蛍光化合物を使用してECL発光を増大させることは知られており、実際に一般的なECLアッセイにおいて広く使用されている。Chmuraら(1994)は、抗酸化剤とクエン酸塩のようなフリーラジカルスカベンジャーのアッセイであって、これらの化合物のアントラセン増感ECLを消光させる能力に基づくものを研究している。Krickaら(1991)は、p-ヨードフェノールの、消光剤ではなく、化学発光増強剤としての使用を明確に記載している。Hillら(1988)は、ECLを逆相液体クロマトグラフィー(RPCL)に適用する研究において、多数のダンシル化誘導体からのECL発光を研究している。彼らは、周知の蛍光標識であるダンシル基(すなわち、5-ジメチルアミノ-1-ナフタレンスルホニル)の、多くのアミノ酸やフェノール化合物におけるECL発光に対する効果を研究し、ダンシル基が存在すると試験した化合物の多くにおいてそのECL発光が増大することを見出した。Abrunaら(1985)は、オスミウム錯体のECLに関する研究において、フェリセニウム化学種(フェロセンの酸化形)、二個のシクロペンタジエニルイオン(すなわちC55 -)と、その間にはさまれた第一鉄(すなわちFe+2)イオンとを含む化学種によるOs(bpy)2diphos+2化学種のECLの消光について記載している。
本明細書に開示する効果的なECL消光剤を使用することにより、ECL標識とECL消光剤を用いるアッセイであって、特にその他の検出法と比べてECL検出法によってもたらされる利点の全てではないにしてもその多くのものを与える、非分離アッセイ等のアッセイを開発し得る。従って本発明は、広義には、ECLを強力に消光する化学部分の特定のクラス、及びこれらのECL消光剤の例えばECL標識及びECL消光剤を用いるECLアッセイにおける使用に関するものである。このような消光部分のクラスの1つは、少なくとも1つのベンゼン部分を含むものである。このような消光部分のサブクラスは、少なくとも1つのフェノール部分、キノン部分、ベンゼンカルボン酸部分、及び/またはベンゼンカルボキシレート部分を有するものである。
発明の簡単な説明
本発明は、一般的には、ECLを強力に消光する化学部分の特定のクラス、及びこれらのECL消光剤の、例えばECL消光剤及びECL標識を用いるECLアッセイ法における、ECL標識と組合せた使用に関連するものである。このような消光部分の1つのクラスは、少なくとも1つのベンゼン部分を含むものである。このような消光部分のサブクラスは、少なくとも1つのフェノール部分、キノン部分、ベンゼンカルボン酸部分、及び/またはベンゼンカルボキシレート部分を有するものである。
本発明の1つの形態は、サンプル組成物中のアナライトを検出する方法であって、(a)前記サンプル組成物、ECL標識を有する試薬、及び少なくとも1つのベンゼン部分を含むECL消光部分を有する試薬を含むアッセイ混合物を調製し、(b)(i)段階(a)で調製したアッセイ混合物、及び(ii)ECL標識を含む前記試薬、ECL消光部分を有する前記試薬、及び既知量の前記アナライトを含むアッセイ混合物のECL発光の間の差を測定し、(c)段階(b)で測定された差を前記サンプル中のアナライトの量と関連付ける段階を含む前記方法に関する。
ある態様においては、前記ECL消光部分は、フェノール部分、キノン部分、ベンゼンカルボン酸部分、及びベンゼンカルボキシレート部分からなる群から選択される少なくとも1つの部分を含む。ある態様においては、前記ECL消光部分は少なくとも1つのフェノール部分を含む。ある態様においては、前記ECL消光部分は少なくとも1つのキノン部分を含む。ある態様においては、前記ECL消光部分は少なくとも1つのベンゼンカルボン酸部分を含む。ある態様においては、前記ECL消光部分は少なくとも1つのベンゼンカルボキシレート部分を含む。
ある態様においては、前記ECL標識はルテニウムを含む。ある態様においては、前記ECL標識はオスミウムを含む。ある態様においては、前記ECL標識は多環式芳香族炭化水素を含む。
ある態様においては、前記アナライトはオリゴヌクレオチドを含む。ある態様においては、前記アナライトはDNAを含む。ある態様においては、前記アナライトはRNAを含む。ある態様においては、前記アナライトはポリペプチドを含む。ある態様においては、前記アナライトは抗体を含む。ある態様においては、前記アナライトは抗原を含む。ある態様においては、前記アナライトは酵素を含む。ある態様においては、前記アナライトは酵素基質を含む。ある態様においては、前記アナライトは多糖を含む。
ある態様においては、前記アナライトの既知量はゼロである。
ある態様においては、ECL標識を有する試薬及びECL消光部分を有する試薬は同じ試薬である。別の態様においては、前記のECL標識を有する試薬及びECL消光部分を有する試薬は異なる試薬である。
1つの態様においては、前記方法は、段階(a)の前に当初のサンプル組成物中に存在する基質について化学反応を行い、前記サンプル組成物中にアナライトを生成し、段階(b)で測定された差を当初のサンプル組成物中の基質の量と関連付ける段階をさらに含む。1つの態様においては、前記方法は、段階(b)の測定の前に段階(a)で調製されたアッセイ混合物について化学反応を行う段階をさらに含む。
本発明のもう1つの形態は、ECL消光部分を含み、適当な容器中に入れた状態で提供される、本発明のアッセイ方法に使用するためのアッセイ試薬に関する。ある態様においては、前記アッセイ試薬は、ECL消光部分及びECL標識を含み、適当な容器中に入れた状態で提供される。
本発明のさらに別の形態は、本発明のアッセイ方法に使用するためのアッセイ試薬キットであって、適当な容器中のECL消光部分を含むアッセイ試薬と、前記方法を実施するための説明書とを含む前記キットに関する。ある態様においては、前記アッセイ試薬キットは、適当な容器に入れた、ECL消光部分及びECL標識を含むアッセイ試薬と、前記方法を実施するための説明書とを含む。
以下に明らかにされるように、本発明の1つの形態における好ましい特徴及び特性は、本発明のその他のすべての形態に適用され得る。
【図面の簡単な説明】
図1は、下記実施例1で記載する、フェノール(消光剤としての)の濃度に対するRu(bpy)3 2+/TPAHのECLの強度を示すグラフである。
図2は、下記実施例2で記載する、フェノール(消光剤としての)の濃度に対する、Ru(bpy)3 2+/C28 2-のECLの強度を示すグラフである。
図3は、下記実施例3で記載する、フェノール、p-ヒドロキシ安息香酸(PHBA)及びp-アミノ安息香酸(PABA)(消光剤としての)の濃度に対する、Ru(bpy)3 2+/TPAHのECLの強度を示すグラフである。
図4は、下記実施例7で記載する、フェノール、カテコール、ヒドロキノン、及びキノン(消光剤としての)の濃度に対する、Ru(bpy)3 2+/TPAHのECLの強度を示すグラフである。
図5は、下記実施例8で記載する、フェノール、キノン、及び2,3-ジクロロー5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン(DDQ)(消光剤としての)の濃度に対する、Ru(bpy)3 +2/TPAHのECLの強度を示すグラフである。
図6は、下記比較例1で記載する、フェノール(消光剤としての)及びメチルビオロゲンカルボキシレート(比較として)の濃度に対する、Ru(bpy)3 2+/TPAHのECLの強度を示すグラフである。
発明の詳細な説明
本発明は、一般的には、ECLを強力に消光する化学部分の特定のクラスと、例えばECL消光剤とECL標識とを用いるECLアッセイにおけるこれらのECL消光剤のECL標識と組み合わせた使用に関するものである。
A.電気化学発光標識
上述のように、ECLは、電気化学的に発生し電子的に励起された化学種からの電磁放射によるフォトンの放出(例えば光)である。
本明細書で使用する用語「電気化学発光標識」及び「ECL標識」は、電気化学発光特性を有する化学部分をいう。より具体的には、ECL標識は、電子的に励起された化学種に電気化学的に変換されることのできる化学部分であり、この化学種はより低いエネルギー状態に緩和されるときに、直接あるいは別の化学反応によって1つ以上のフォトン(例えば光)を放出するものである。
多数の化学部分がECL標識となり得る。このような部分の重要なクラスは、同じでもよく異なっていてもよい1つ以上の金属イオンと同じでもよく異なっていてもよい1つ以上の配位子とを含む金属キレートから誘導されるものである。
ある態様においては、金属キレートの金属イオンはその任意の酸化状態にある遷移金属イオン及び希土類金属イオンからなる群から選択される。別の態様においては、金属イオンはその任意の酸化状態にあるルテニウム、オスミウム、レニウム、イリジウム、ロジウム、白金、インジウム、パラジウム、モリブデン、テクネチウム、銅、クロム、及びタングステンのイオンからなる群から選択される。また別の態様においては、金属イオンはその任意の酸化状態にあるルテニウム及びオスミウムのイオンからなる群から選択される。
金属キレートの配位子は単座配位子であってもよく多座配位子であってもよく、また有機物(すなわち少なくとも1つの炭素原子を含んでいる)であっても無機物であってもよい。単座配位子の例としては、一酸化炭素(すなわちCO)、シアニドイオン(すなわちCN-)、イソシアニドイオン(すなわちNC-)、ハライド(例えばF-、Cl-、Br-、I-)、ホスフィン(例えばPR3)、アミン(例えばNR3)、スチルベン(例えばSbR3)、アルシン(例えばAsR3)等が挙げられる。多座配位子の例としては、窒素を含む芳香族複素環配位子のような芳香族複素環配位子が挙げられる。窒素を含む芳香族複素環配位子の例としては、非置換のあるいは置換されたビピリジル、ビピラジル、テルピリジル、フェナントロリル等が挙げられる。置換基の例としては、C1-6アルキル、置換C1-6アルキル、C6-15アリール及びヘテロアリール、置換C6-15アリール及びヘテロアリール、C7-15アラルキル及びヘテロアラルキル、置換C7-15アラルキル及びヘテロアラルキル、カルボキシ(すなわち-COOH)、カルボキシレート(すなわち-COO-)、カルボキシエステル(すなわち-COOR、例えばN-ヒドロキシサクシンイミジルエステル)、カルボキシアルデヒド(すなわち-CHO)、カルボキサミド(すなわち-CONH2)、ヒドロキシ(すなわち-OH)、シアノ(すなわち-CN)、イソシアノ(すなわち-NC2)、アミノ(すなわち-NH2)、イミノ(すなわち=NH)、スルフヒドリル(すなわち-SH)、ホスフィノ(すなわち-PH2)等が挙げられる。
ある態様においては、ECL標識は、下に示したトリス(2,2'-ビピリジル)ルテニウム(II)カチオン、Ru(bpy)3 2+あるいはその誘導体から誘導される。
Figure 0003951031
Ru(bpy)3 2+塩とその誘導体は、一般的に非常に安定であり、化学的に修飾して反応性の化学基を有する(すなわち、化学的に活性化された化学種を形成する)ようにすることができる水溶性の化合物である。例えば、1つ以上の反応性の化学基を1つ以上のビピリジル配位子に結合でき、これはRu(bpy)3 2+様の部分(ECL標識として)の他の分子への結合を可能とする。例えば、Bardら、1993、及びBlackburnら、1991を参照されたい。
例えば、三つのビピリジル配位子の1つを誘導化して、リンカー基を介してビピリジル配位子の1つに結合しているカルボン酸基のN-サクシンイミジルエステルを有するようにすることができる。このような化合物は、4-(N-サクシンイミジルオキシカルボニルプロピル)-4'-メチル-2,2'-ビピリジンビス(2,2'-ビピリジン)ルテニウム(II)ジヘキサフルオロホスフェートであり、下に示したカチオンである。これは商品名Origrn▲R▼ECL標識として、IGEN Inc.(Rovkville, Maryland)より市販品として入手可能である。下に示したこの活性化型エステルは、Ru(bpy)3 2+様ECL標識を、例えばアミン基(例えば-NH2)を有する分子に容易に結合することを可能とする。
Figure 0003951031
別の例では、三つのビピリジル配位子の1つを誘導化して、任意にリンカー基を介してマレイミド基を有するようにすることができる。これは、例えば上に示したような活性型のエステル誘導体を、マレイミドアルキルアミン(例えばマレイミドエチルアミン)と反応させることによって得られる。このような化合物は、4-(マレイミド-エチルアミノカルボニルプロピル)-4'-メチル-2,2'-ビピリジンビス(2,2'-ビピリジン)ルテニウム(II)ジヘキサフルオロホスフェートであり、下に示したカチオンである。このマレイミドはRu(bpy)3 2+様のECL標識を、例えばチオール基(例えば-SH)を有する分子に容易に結合することを可能とする。
Figure 0003951031
Ru(bpy)3 2+様のECL標識が誘導されうる金属キレートのその他の例としては、以下のものが挙げられる:
ビス[(4,4'-カルボメトキシ)-2,2'-ビピリジン]-2-[3-(4-メチル-2,2'-ビピリジン-4'-イル)プロピル]-1,3-ジオキンランルテニウム(II)、
ビス[(2,2'-ビピリジン)-[4-(ブタン-1-アール)-4'-メチル-2,2'-ビピリジン]ルテニウム(II)、
ビス[(2,2'-ビピリジン)-[4-(4'-メチル-2,2'-ビピリジン-4'-イル)酪酸]ルテニウム(II)、
ビス[(2,2'-ビピリジン)-[4-(4'-メチル-2,2'-ビピリジン)-ブチルアミン]ルテニウム(II)、
ビス[(2,2'-ビピリジン)-[1-ブロモ-4-(4'-メチル-2,2'-ビピリジン-4'-イル)ブタン]ルテニウム(II)、及び
ビス[(2,2'-ビピリジン)マレイミドヘキサン酸]-4-メチル-2,2'-ビピリジン-4'-ブチルアミドルテニウム(II)。
ECL標識が誘導され得る金属キレートのその他の例としては、例えばOs(bpy)3 2+及びその誘導体のようなその他の2,2'-ビピリジル錯体、フェナントロリン(phen)及びその誘導体、トリカルボニル(クロロ)(1,10-フェナントロリン)ルテニウム(I)、方形平面白金(II)錯体、Cr(bpy)3 2+等のその他の遷移金属蛍光団、Pt2(ジホスホネート)4 4-のような多核錯体、及びMo6Cl12 2-のようなクラスターが挙げられる。
ECL標識となり得る化学部分のもう1つの重要なクラスは、例えば、ナフタレン、アントラセン、9,10-ジフェニルアントラセン、フェナントレン、ピレン、クリセン、ペリレン、コロネン、ルブレン等の多環式芳香族炭化水素、及びフルオレセイン、ローダミン等の有機レーザー色素から誘導されるものであり、これらは電気化学的励起によって発光することができる。
一般的には、一種類以上のECL標識を別の分子(例えば抗体、オリゴヌクレオチドプローブ)に結合する(例えば抱合させる)。当業者に周知の標準的な合成法を用いてECL標識を分子に結合する(標識分子を形成する)ことができる。例えば、上記したように、ECL標識(例えばRu(bpy)3 2+またはその誘導体)を含む分子を誘導して化学的に活性化された化学種(例えば、活性化型エステル、マレイミド)を形成し、これを何らかの分子と反応させ、その分子と共有結合する(例えば、標識されたアッセイ試薬を生成する)ことができる。
B.消光部分
上述のように、ECLは、直接あるいは間接的に電気化学的に発生した、電子的に励起された化学種からの電磁放射のフォトンの放出(例えば光)の過程である。観察されるECL放出は、ECL標識と消光接触する消光部分によって、部分的あるいは完全に減衰される。本明細書で使用する用語「消光部分」及び「消光剤」は、ECL標識と消光接触すると、観察されるECL発光を減衰させる化学部分をいう。
本明細書で使用する用語「消光接触する」は、ECL標識からの観察されるECL発光がECL消光部分の存在により減衰される状態をいう。ECL標識と消光接触する消光部分は、その標識から観察されるECL発光を少なくとも10パーセント減衰させるものである。好ましくは、ECL標識と消光接触する消光部分は、その標識から観察されるECL発光を少なくとも20パーセント、より好ましくは少なくとも30%、さらに好ましくは少なくとも40%、さらにより好ましくは少なくとも50%減衰させるものである。通常は、ECL標識と消光接触する消光部分は、ECL標識と空間的に近接して物理的に存在する。例えば、ECL標識と消光接触する消光部分は、一般的にはECL標識から約100nm未満、より一般的には約50nm未満、さらに一般的には約30nm未満、さらにより一般的には約10nm未満の距離だけ離れている。当業者であれば周知の標準的方法を使用して、意図される消光部分が観察されるECL発光を実際に減衰させるかどうか、また特定の消光部分が実際にECL標識と消光接触にあるのかどうかを判断できる。
特定の理論に拘束させるつもりはないが、消光効果についていくつかの可能なメカニズムが仮定される。一つのメカニズムは、電子的に励起された標識が電子を消光剤に移動させる(おそらく量子力学的トンネルによる)ことによって緩和されて、電子的に励起された消光剤が生じ、それが非放射的に(例えば、振動や回転により)緩和するというものである。別のメカニズムは、電子的に励起された標識がフォトンを放出することによって緩和され、フォトンが消光剤によって吸収され、電子的に励起された消光剤が生じ、これがやはりは非放射的に緩和されるというものである。さらに別のメカニズムは、消光部分が電気化学的に電気酸化型あるいは電気還元型生成物に変換され(典型的にはECL測定の間に)、この生成物(あるいはさらに続く反応の生成物)が例えば前述のメカニズムの一つによってECLを消光させるというものである。さらに別のメカニズムは、消光部分あるいは消光部分の電気酸化型あるいは電気還元型生成物(あるいはさらに続く反応の生成物)がフリーラジカルスカベンジャーとして作用し、一連のECL反応に関わる一以上の化学種を遮断し(例えば、TPAがRu(bpy)3 3+との反応の前に遮断されてRu(bpy)3 2+*の形成が阻止され得る)、それによりECLが消光されるというものである。
多数の化学部分が消光部分となり得る。このような消光部分の重要な種類の一つは、少なくとも一のベンゼン部分を含むものである。好ましい消光部分の下位概念種の一つは、少なくとも一のフェノール部分を含むものである。別の好ましい消光部分の下位概念種は、少なくとも一のキノン部分を含むものである(例えば、1,4-ベンゾキノンあるいは1,2-ベンゾキノン)。さらに別の好ましい消光部分の下位概念種の一つは、少なくとも一のベンゼンカルボン酸部分あるいはベンゼンカルボキシレート部分を含むものである。
Figure 0003951031
本明細書で使用する用語「消光剤」は、消光部分を含む化学化合物をいう。少なくとも一のフェノール部分を含む消光剤、及び少なくとも一のフェノール部分を含む消光部分を誘導し得るものの例としては、限定するものではないが、以下のものが挙げられる。
フェノール;
アルキルフェノール、例えばo-アルキルフェノール、m-アルキルフェノール、及びp-アルキルフェノール等のC1-6アルキルフェノール、例えばo-メチルフェノール(すなわちo-クレゾール)、m-メチルフェノール(すなわちm-クレゾール)、P-メチルフェノール(すなわちp-クレゾール)、o-エチルフェノール、m-エチルフェノール、P-エチルフェノール、o-プロピルフェノール、m-プロピルフェノール、及びp-プロピルフェノール;
アリールフェノール、例えばo-アリールフェノール、m-アリールフェノール、及びp-アリールフェノール等のC7-10アリールフェノール、例えばp-フェニルフェノール;
ハロフェノール、例えばo-ハロフェノール、m-ハロフェノール、及びp-ハロフェノール、例えばo-フルオロフェノール、m-フルオロフェノール、及びp-フルオロフェノール;
ヒドロキシフェノール、例えばo-ヒドロキシフェノール(すなわちカテコール)、m-ヒドロキシフェノール(すなわちレゾルシノール)、及びp-ヒドロキシフェノール(すなわちヒドロキシキノン);及び
ビフェノール、例えば4,4'-ビフェノール等。
少なくとも一のキノン部分を含む消光剤、及び少なくとも一のキノン部分を含む消光部分を誘導し得るものの例としては、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:
キノン(すなわちベンゾキノン)、例えばo-キノン(すなわち1,2-ベンゾキノン)、及びp-キノン(すなわち1,4-ベンゾキノン);
アルキルキノン、例えば、C1-6アルキル-1,4-ベンゾキノン等のC1-6アルキルキノン、例えば2-メチル-1,4-ベンゾキノン、2-エチル-4,4-ベンゾキノン2-n-プロピル-1,4-ベンゾキノン、2,6-ジメチル-1,4-ベンゾキノン、及び2,5-ジメチル-1,4-ベンゾキノン;
ハロキノン、例えばハロ-1,4-ベンゾキノン、例えば2-フルオロ-1,4-ベンゾキノン、2-クロロ-1,4-ベンゾキノン、2-ブロモ-1,4-ベンゾキノン、2-ヨード-1,4-べンゾキノン、2,6-ジフルオロ1-,4-ベンゾキノン、2,5-ジフルオロ-1,4-ベンゾキノン、2,6-ジクロロ-1,4-ベンゾキノン、2,5-ジクロロ-1,4-ベンゾキノン、2,6-ジブロモ-1,4-ベンゾキノン、及び2,5-ジブロモ-1,4-ベンゾキノン;
ナフトキノン、例えば1,2-ナフトキノン及び1,4-ナフトキノン、例えば2-メトキシ-3-メチル-1,4-ナフトキノン;
アントラキノン、例えば1,2-アントラキノン、1,4-アントラキノン、9,10-アントラキノン、例えば1,5-ジヒドロキシ-9,10-アントラキノン、1,2,3,4-テトラフルオロ-5,8-ジヒドロキシ-9,10-アントラキノン、9,10-アントラキノン-2-カルボン酸、9,10-アントラキノン-2-スルホン酸、9,10-アントラキノン-1,5-ジスルホン酸、及び9,10-アントラキノン-2,6-ジスルホン酸等。
少なくとも一のベンゼンカルボン酸あるいはベンゼンカルボキシレート部分を含む消光剤、及び少なくとも一のベンゼンカルボン酸あるいはベンゼンカルボキシレート部分を含む消光部分を誘導し得るものの例としては、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:
安息香酸;
アミノ安息香酸、例えばo-アミノフェノール、m-アミノフェノール、及びp-アミノフェノール;
ヒドロキシ安息香酸、例えばo-ヒドロキシフェノール、m-ヒドロキシフェノール、及びp-ヒドロキシフェノール;
ニトロ安息香酸、例えばo-ニトロフェノール、m-ニトロフェノール、及びp-ニトロフェノール。
ある態様においては、消光部分はキノンあるいはその誘導体である。キノン及びその誘導体は通常、化学的に修飾して反応性の化学基を有する(すなわち化学的に活性化された化学種を形成する)ようにすることができる。例えば、一以上の反応性の化学基を任意にリンカー基を介して結合させることができ(例えば、1,4-ベンゾキノンのオルトあるいはメタ位で)、これによりキノン様の部分(消光部分としての)を他の分子へ結合することが可能となる。
例えば、1,4-ベンゾキノンを誘導化して、アルキル基のようなリンカー基を介してオルトあるいはメタ炭素に結合したカルボン酸基(すなわち-COOH)を有するようにすることができる。このような化合物は、2-(1-カルボキシブト-2-イル)-5-メチル-1,4-ベンゾキノンである。このカルボン酸誘導体を誘導化して、N-スクシンイミジルエステル(下に示す)を形成することができ、これはキノン様の消光部分を例えばアミノ酸を有する分子に容易に結合することを可能とする。
Figure 0003951031
消光部分は、一般的な周知の合成法を用いて分子に結合することができる。例えば、上記したように、消光部分(例えばベンゼンあるいはその誘導体、例えばフェノール、キノン、ベンゼンカルボン酸、ベンゼンカルボキシレート)を有する分子を誘導化して化学的に活性化された化学種(例えば、活性エステル、マレイミド)を形成し、これを何らかの分子と反応させてその分子に共有結合により結合することができる。
C.ECL標識及びECL消光剤を使用したアッセイ
本発明は、サンプル組成物中に存在する対象となる一以上のアナライトを検出し、好ましくは定量するための新規なアッセイ方法を提供する。本明細書で使用する用語「アッセイ」及び「アッセイ法」は、対象となる一以上のアナライトの存在を検出し(例えば定性的アッセイ)、好ましくは定量する(例えば定量的アッセイ)方法をいう。
本発明のアッセイは一般的には、対象となるアナライト(典型的にはサンプル組成物中の一種の成分)を予め決められた非制限的な量の一種以上のアッセイ試薬と接触させ、得られる生成物(検出生成物)のECL特性を測定し、典型的には試験するサンプルに予測される範囲において対象となるアナライトの既知量を含む標準サンプルから決定された関係を使用することにより測定されたECLを当初のサンプル中に存在するアナライトの量と関連付けることを含む。定性的アッセイにおいては、測定されたECLが単に閾値(例えば対象となるアナライトを含むか、含まないことが判っているサンプルを使用して決められた)を上回るか下回るかを判断することがアッセイ結果を得るのに十分であり得る。従って、特に別の要請がない限り、用語「測定」は定性的及び定量的測定のいずれかを指す。本発明のアッセイは不均質(分離)アッセイあるいは均質(非分離)アッセイのいずれでもよい。
本明細書で使用する用語「アナライト」及び「対象となるアナライト」は、検出される物質、好ましくは定量される物質をいう。アナライトは無機物あるいは有機物のいずれでもよいが、通常は有機物である。アナライトは天然物あるいは合成物のいずれでもよい。有機のアナライトの種類の例としては、アミノ酸、タンパク質、糖タンパク質、リポタンパク質、糖、多糖リポ多糖、脂肪酸、核酸等の生物学的分子を挙げることができる。有機のアナライトとしては、抗体、抗原、ハプテン、酵素、ホルモン、ステロイド、ビタミン、オリゴヌクレオチド、医薬等も挙げられる。
本明細書で使用する用語「サンプル」及び「サンプル組成物」は、一種以上のアナライトを含む組成物をいい、あるいは処理されて一種以上のアナライトを含むものとなるものでもよい。サンプルは固体、エマルション、懸濁物、液体、あるいは気体の形態とすることができる。典型的には、サンプルは(例えば液体電解質を添加することにより)液体(すなわち自由に流動する)形態(例えばエマルション、懸濁物、溶液)になるように処理され、ECL法を使用したアナライトの検出及び定量を容易かつ単純に行えるようにする。典型的には、対象となるアナライトはサンプル組成物中において10-3M(μM)以下、例えば多くの場合は10-12M(pM)、さらに10-13M(pM未満)の濃度で存在する。
本発明のアッセイは、ECLアッセイを特徴とすることができ、すなわち、本発明のアッセイにおいては、対象となるアナライトの存在、好ましくは対象となるアナライトの量をECLを使用して測定する。さらに、本発明のアッセイは、ある種のECL消光剤と組合せてECL標識を使用することによる。そのような消光部分の一つの種類は少なくとも一のベンゼン部分を含むものである。そのような消光部分の下位概念の種類としては、上記したように、少なくとも一のフェノール部分、キノン部分、ベンゼンカルボン酸、及び/またはベンゼンカルボキシレート部分を含むものである。
従って本発明は、サンプル組成物中のアナライトを検出する方法であって、
(a)前記サンプル組成物、ECL標識を有する試薬、及び少なくとも一のベンゼン部分を含むECL消光部分を有する試薬を含むアッセイ混合物を調製し、
(b)(i)段階(a)で調製したアッセイ混合物、及び
(ii)ECL標識を有する前記試薬、ECL消光部分を有する前記試薬、及び既知量の前記アナライトを含むアッセイ混合物
のECL発光の差を測定し、
(c)段階(b)で測定された差を前記サンプル中のアナライトの量と関連付ける
段階を含む前記方法を提供する。
一つの態様においては、前記ECL消光部分は、上記したように、フェノール部分、キノン部分、ベンゼンカルボン酸部分、及びベンゼンカルボキシレート部分からなる群から選択される少なくとも一の部分を含む。別の態様においては、前記ECL消光部分は少なくとも一のフェノール部分を含む。別の態様においては、前記ECL消光部分は少なくとも一のキノン部分を含む。別の態様においては、前記ECL消光部分は少なくとも一のベンゼンカルボン酸部分を含む。別の態様においては、前記ECL消光部分は少なくとも一のベンゼンカルボキシレート部分を含む。
一つの態様においては、前記アナライトの既知量はゼロである。
一つの態様においては、ECL標識を有する試薬及びECL消光部分を有する試薬は同じ試薬である。別の態様においては、前記のECL標識を有する試薬及びECL消光部分を有する試薬は異なる試薬である。
一つの態様においては、前記方法は、当初のサンプル組成物中に存在する基質について化学反応を行い、前記サンプル組成物中にアナライトを生成させる最初の段階、及び段階(b)で測定された差を当初のサンプル組成物中の基質の量と関連付ける最終段階をさらに含む。
一つの態様においては、前記方法は、段階(b)の測定の前に段階(a)で調製されたアッセイ混合物について化学反応を行う段階をさらに含む。
一つの態様においては、対象となる特定のアナライトの存在により、例えば、特にECL標識からのECL発光の減少に由来するECL発光の減少が生じる。そのようなECL発光における変化は、例えば消光部分をECL標識との消光接触に置くことにより生じる。あるいは別の態様においては、対象となる特定のアナライトの存在により、例えば、特にECL標識からのECL発光の増加に由来するECL発光の増加が生じる。そのようなECL発光における変化は、例えばECL標識との消光接触から消光部分を除去することにより生じる。
一つの態様においては、本発明のアッセイは結合対を使用し、ECL標識及びECL消光部分を一緒にし(消光接触させる)、あるいは別にする(消光接触させない)。結合対の例としては、オリゴヌクレオチドとオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションプローブ、抗体と抗原、酵素と基質、及びビオチン-アビジン等の強力な結合対が挙げられる。通常、そのような結合対を本発明のアッセイに使用して、結合対の一方のメンバーであるかあるいは結合対の一つのメンバーに抱合された対象となるアナライトの検出を可能とすることができる。
一つの態様においては、本発明のアッセイはオリゴヌクレオチド(例えばDNA、RNA)を検出するのに使用することができる。デオキシリボ核酸(DNA)はポリヌクレオチドであり、より具体的には、デオシキリボヌクレオチド単位のポリマーである。デオキシリボヌクレオチドは典型的には窒素塩基、糖及び一以上のリン酸基からなる。デオキシリボヌクレオシドは典型的には窒素塩基、及び糖からなる。天然のDNAにおいては、糖基は典型的にはβ-2'-デオキシリボフラノースであり、窒素塩基は典型的にはプリン(例えばアデニン、A及びグアニン、G)あるいはピリミジン(例えばチミン、T、あるいはシトシン、C)である。最も一般的なものとして、D-2'-デオキシリボースのC-1炭素はピリミジンのN-1またはプリンのN-9に結合し、このN-グリコシド結合の配置はβである(塩基は糖の平面の上にある)。4種の天然のデオキシリボヌクレオシドはデオキシアデノシン(dA)、デオキシグアノシン(dG)、デオキシチミジン(dT)、及びデオキシシチジン(dC)と呼ばれる。デオキシヌクレオチドはデオキシヌクレオシドのリン酸エステルである。最も一般的には、このリン酸エステルは糖基の5'-OH基において形成され(すなわち5'-OHが5'-OPO3 -2に変換される)、得られる化合物はヌクレオシド5'-リン酸あるいは5'-ヌクレオチドと呼ばれる。一を越えるリン酸基が結合し得る(例えば二リン酸、5'-OPO2OPO3 -3、三リン酸、5'-OPO2OPO2PO3 -4)。例えばDNAの合成における重要な活性前駆体はデオキシアデノシン5'-三リン酸(dATP)である。
上記したように、DNAはデオキシリボヌクレオチド単位のポリマーである。最も一般的なものとして、DNAのポリマー主鎖は一定であり、リン酸基により結合されたデオキシリボース基からなる。より具体的には、デオキシリボース基の3'-位置(3'-OHであったもの)がホスホジエステル基(すなわち-OP(=O)(O-)O-)を介して隣接するデオキシリボース基の5'-位置(5'-OHであったもの)に結合している。DNAの可変的な領域はその各デオキシリボース基の1'-位置に結合した塩基の配列である(例えばA、G、C及びT)。従ってDNAに最も一般的に存在する4種の反復単位(残基と呼ばれることが多い)は、デオキシアデニレート、デオキシグアニレート、デオキシシチジレート、及びデオキシチミジレートと呼ばれる。
DNAポリマーは便宜的に成分塩基により示され、その「配列」と呼ばれることが多い。DNA分子の一方の末端は遊離の3'-基(例えば3'-OH、3'-OPO3 -2)を有する糖基で終了しており、他端は遊離の5'-基(例えば5'-OH、5'-OPO3 -2)を有する糖基で終了しているので、どちらがどちらの末端であるか明確に示す必要がある。万国共通の慣行として、DNAは左から右へ5'末端から3'末端に向かって記載される。従って、ACGは、5'-ACG-3'あるいは5'-A-3'-5'-C-3'-5'-G-3'を示す。DNAポリマーは環状であって末端を有しない場合もある。そのような場合は配列は適当な、おそらくは任意の開始点から5'から3'に向かって記載される。
DNAは通常は二重らせん形態(Watson-Crick)で存在し、これは二本のらせん状ポリヌクレオチド鎖(例えばストランド)が共通の軸の周りにコイル状に巻かれ、上記したように各鎖は5'-3'の極性について逆の方向に伸びている(「逆平行」)。プリン及びピリミジン塩基はらせんの内側にあり、リン酸及びデオキシリボース基は外側にある。塩基の平面はらせん軸に対してほぼ垂直であり、糖の平面はらせん軸にほぼ平行である。らせんの直径は約20Åである。隣接する塩基はらせん軸に沿って約3.4Å離れており、約36°の角度で回転した関係にある。すなわち、らせん構造は各鎖における10残基、すなわち34Åの間隔で反復する。各鎖が1000残基を有する比較的小さいDNAらせんは端から端までで約3.4μmである。
二本の鎖は塩基の対(「塩基対」と呼ばれることが多い)の間の水素結合及び隣接する塩基対のスタッキング相互作用(π-電子シェアリング)により一体に保持されている。立体的理由及び水素結合に関する理由により、プリンは常にピリミジンと対を形成し、より具体的にはアデニンは常にチミンと対を形成し(二つの水素結合を介して)、グアニンは常にシトシンと対を形成する(三つの水素結合を介して)。従って、各塩基対は二重らせんの分子量に対して約620ダルトンを占める。しかし、ポリヌクレオチド鎖に沿った塩基配列に制限はないことに注意しなければならない。遺伝情報を保有するのはまさにこの塩基配列そのものである。
DNA二重らせんの二本の鎖は、DNAの溶液を加熱したり酸もしくはアルカリを添加して塩基をイオン化することで達成されるように、その塩基対の間の水素結合を切断することにより容易に分離する。結果として起こる二重らせんの巻戻しは通常「融解」あるいは「変性」と呼ばれ、分子の半分が一本鎖になる融解温度により特徴付けられる。融解は通常は可逆的であり、ほどけた鎖は通常「アニーリング」、「再生」あるいは「ハイブリダイゼーション」と呼ばれる過程において一緒になってらせんを再形成する。
リボ核酸(RNA)はポリヌクレオチドのもう一つの例である。DNAと同様にRNAは3'-5'ホスホジエステル結合により結合されたヌクレオチドからなるポリマーである。RNAの共有結合の構造は二つの重要な点においてDNAのものと異なっている。RNAにおいては、糖基はβ-D-リボース(β-D-2'-デオキシリボースに代えて)である。また、RNA中の4種の主要な塩基の一つはピリミジンウラシル、U(DNAにおいて見られるチミンに代わるものである)である。従ってRNAにおいては、塩基対はAU及びGC(DNAにおけるAT及びGCに代えて)である。RNAは一本鎖あるいは二本鎖であり得るが、通常は一本鎖である。RNAはB-DNA型の二重らせんを形成することはできないが、RNAは自己ハイブリダイゼーション及びヘアピンループの形成により生成される二重らせん構造の領域を形成することが多い。
DNAは、DNAポリメラーゼと呼ばれる酵素(例えばDNApolα、β、γ、δ、ε)により複製され得る。通常はDNAポリメラーゼは、前もって存在するDNA鎖(プライマーと呼ばれることが多い)の3'-末端に、そのプライマーがハイブリダイズした鋳型(通常はDNAの単鎖)に従ってデオキシリボヌクレオチド単位を一つずつ段階的に付加することを触媒する。通常は、DNAポリメラーゼにより触媒される鎖伸長反応は、デオキシリボヌクレオチド三リン酸の最も内側のリン酸原子(すなわちα-リン原子)上でのプライマーの3'-OH末端の求核攻撃であり、ホスホジエステル架橋が形成され、同時にピロリン酸が放出される。DNAポリメラーゼは、導入されるヌクレオチド上の塩基が鋳型鎖上の塩基に相補的であるときにのみホスホジエステル結合の形成を触媒し、実際にマッチしない塩基対は排除される。このようにして鋳型により駆動される複製は非常に高い忠実度で進行し、エラー率は塩基対あたり10-8未満である。
遺伝子はDNAを含む。特定のDNA配列は特定のアミノ酸配列をコードする。このようにして、タンパク質(ポリアミノ酸、ポリペプチド)はDNAによりコードされる。DNA、好ましくは二本鎖DNAはRNAポリメラーゼ(例えばRNApol I、II、III)の鋳型として使用され、特定のタンパク質をコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を生成する。このようにDNAはmRNAに転写される。「コドン」と呼ばれるmRNA残基の三個が遺伝子コードに従って20種の天然アミノ酸のそれぞれを表す。そしてmRNAそれ自体が鋳型として使用され、リボソーム(リボソームRNA、rRNA、及びリボソームタンパク質を含む)を「通過(threaded)して特定のmRNAによりコードされたタンパク質を生成する。このようにしてmRNAはタンパク質に翻訳される。やはりmRNAの特定のコドンを認識することができるトランスファーRNA(tRNA)の短い片に結合した各アミノ酸はリボソームにより成長しつつあるタンパク質中に取り込まれる。コードされたDNA(cDNA)は逆転写酵素と呼ばれる酵素を使用してmRNA(鋳型として機能する)から得ることができる。このように、特定のタンパク質をコードすることはDNA形態で得られ、これはクローニング及びその他の遺伝子操作により適したものであることが多い。
1980年代半ばに開発されたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、クローニングを使用することなく、特定のDNA配列を大量に単純な工程で迅速に製造することを可能とする。PCRはDNAポリメラーゼ(例えばTaqポリメラーゼ)の単鎖鋳型DNAからDNAを複製する能力を使用する。両方のDNA鎖が鋳型として機能し得、単鎖鋳型は例えば沸騰に近い温度で二本鎖DNAを加熱することにより容易に製造できる。PCRは反応混合物中に存在する一定の試薬を必要とし、例えば、活性化ヌクレオチドモノマー(例えばATP、GTP、CTP、TTP)、及びMg+2が挙げられる。PCRは、複製をそこから開始する(すなわちプライミングする)二本鎖DNAの小片も必要とし、これは通常は適当なオリゴヌクレオチド「プライマー」をそこから複製が開始される部位にアニール(ハイブリダイズ)することにより与えられる。DNAポリメラーゼは3'から5'への方向にDNAを複製するので、一つが一方の鎖にハイブリダイズし、一つが他方の鎖にハイブリダイズする二つのプライマーを与えれば両方の鎖が鋳型として機能し得る。複製の後、新たに成長した二本鎖DNA(鋳型鎖と新たに成長した鎖を含む)を融解すると(例えば沸騰近くまで加熱することにより)、得られる一本鎖のそれぞれは次のサイクルにおいて鋳型として機能し得る。このようにして、各サイクルにより所望の一本鎖DNA断片の数が有効に2倍にされ、同一であるDNA断片(二つのプライマーの位置により定義される)の割合が増加する。
PCRは容易に自動化することができる。典型的には、DNAサンプルを最初に加熱して(例えば94℃、5分)鎖を分離し、試薬(例えばTaqポリメラーゼ、プライマー、過剰な活性化ヌクレオチドモノマー、Mg2+等)と合わせる。最初の加熱段階(例えば30〜65℃、30秒)でプライマーをDNA鎖に結合させる。二番目の加熱段階(例えば65〜75℃、2〜5分)でポリメラーゼにより新たなDNA鎖を合成する。三番目の加熱段階(例えば94℃、30秒)で得られた二本鎖DNAの鎖を分離する。これらの三つの段階を各サイクルにおいて反復する。典型的には、10〜60サイクルを行う。理論的には、32サイクルにより所望の二本鎖DNA断片の約109コピーが得られる。
特異的なオリゴヌクレオチド(例えばDNA、RNA)は、ポリメラーゼを使用せずに、そして鋳型鎖を必要とすることなく、モノマー、ダイマー等から直接合成することができる場合も多い。典型的には、固相法を使用し、これにおいてはヌクレオチドを固相に結合した新たに生じたオリゴヌクレオチドに付加する。いくつかの固相オリゴヌクレオチド合成が知られており、トリエステル法、亜リン酸法、ホスホルアミデート法等が知られているが、最後のものが好ましい。
典型的には、ホスホルアミデート法による固相オリゴヌクレオチド合成は、4つの段階、すなわち脱保護、カップリング、キャッピング、及び酸化を繰り返すことによりオリゴヌクレオチドを5'-方向に段階的に合成することからなる。最初の段階(「脱保護」)においては、3'-末端において3'-O-基により固体支持体に結合された成長中のオリゴヌクレオチドを5'-脱保護して反応性基を与える(すなわち5'-OH基)。二番目の段階(「カップリング」)においては、支持体に結合された5'-脱保護オリゴヌクレオチドを、それ自体は最初に5'-保護、3'-ホスホルアミダイトに変換させた所望のヌクレオチドモノマーと反応させる。例えば、5'-OH基は5'-ODMT基(DMTは4,4'-ジメトキシトリチルである)の形態で保護でき、3'-OH基は3'-ホスホルアミダイト、例えば-OP(OR')NR2(Rはイソプロピル基、-CH(CH32であり、R'は例えば-H(ホスホルアミダイトジエステルを生じる)あるいは-CH3、-CH2CH3、あるいはβ-シアノエチル基、-CH2CH2CN(ホスホルアミダイトトリエステルを生じる)である)に変換させることができる。モノマーの3'-ホスホルアミダイト基は成長中のオリゴヌクレオチドの脱保護された5'-OH基と反応して亜リン酸結合5'-OP(OR')O-3'を生じる。成長中のオリゴヌクレオチドの全てが与えられたモノマーと結合する訳ではなく、「成長」しなかったものは不完全なオリゴヌクレオチドを生成し、従ってその後の合成から除去しなければならない。これは三番目の段階(キャッピング)において達成され、ここでは残存する-OH基(すなわち未反応の5'-OH基)の全てを、例えば無水酢酸との反応により酢酸エステルの形態(5'-OC(O)CH3)にキャップする。最後に酸化段階において、例えばヨウ素水溶液及びピリジンとの反応により、成長中のオリゴヌクレオチドの新たに形成された亜リン酸基(すなわち5'-OP(OR')O-3')をリン酸基(すなわち5'-OP(=O)(OR')O-3')に変換する。酸化の後に得られるオリゴヌクレオチドは5'-保護されたままであり、上記した最初の脱保護段階に使用できる状態にあるので、この4段階工程は上記の後繰り返すことができる。所望のオリゴヌクレオチドが得られたら、例えばアルカリ及び熱による処理によりそれを固体支持体から切断することができる。またこの段階によりリン酸トリエステル(すなわちR'が-Hでない場合)がリン酸ジエステル(-OP(=O)2O-)に変換され、アルカリに感受性を有するように保護されたヌクレオチド塩基のアミノ基が脱保護される。
特異的なDNA及びRNA配列を検出する方法の殆どのものは核酸ハイブリダイゼーションによるものである。典型的にはそのような方法は標的DNAあるいはRNA配列と標識核酸ハイブリダイゼーションプローブとの二本鎖の形成による。ハイブリダイゼーションプローブは通常は標的核酸の特異的な部分に相補的なものである。しかし、ハイブリダイゼーションプローブは部分的にのみしか相補的でなくてもよいが、それでも標的配列と安定な二本鎖を形成するものでなければならないことに注意しなければならない。典型的には、ハイブリダイゼーションプローブは標的配列に対して少なくとも70%相補的なものであるが、少なくとも90%相補的なものである場合がより一般的である。ハイブリダイゼーションプローブは通常は選択的かつ安定なハイブリダイゼーションを確保するのに十分な長さの配列を有するものとする。典型的には、ハイブリダイゼーションプローブは6〜約500のモノマー単位(例えばヌクレオチド)を有するが、より典型的には約10〜約100のモノマー単位を有する。所望の配列を有する特異的なハイブリダイゼーションプローブは、固相オリゴヌクレオチド合成法を使用して直接合成されることが多い。標識された核酸プローブは、ドットブロット、サザンブロット(DNA標的)、ノーザンブロット(RNA標的)、in situハイブリダイゼーション、プラークハイブリダイゼーション、コロニーハイブリダイゼーション等の種々のアッセイ形式に使用される。数多くの様々な物質が核酸プローブを標識するのに使用されており、これらの標識を検出するのに数多くの様々な方法が使用されている。例えばKricka,1992参照。
一実施態様において、一方が結合ECL標識を有し他方が結合ECL消光部分を有する2つのオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションプローブを利用してDNAの検出を行うべく、本発明のアッセイを利用してもよい。標的DNAと共にアニーリングを行った場合に、ECL標識とECL消光部分との消光接触によって、観測されるECL発光が減少するように、特定のプローブを選択してもよい。このようにすると、ECL発光の減少量を、サンプル中に存在する標的DNAの量と相関付けることが可能となる。
もう1つの実施態様において、ECL標識およびECL消光部分の両方を有するオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションプローブとDNA-ポリメラーゼとを併用してDNAの検出を行うべく、本発明のアッセイを利用してもよい(典型的には、非分離アッセイに利用する)。例えば、サンプルと、ECL標識(L)およびECL消光部分(Q)の両方を有する好適なオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションプローブと、ハイブリダイゼーションプローブから上流の位置で標的DNAにハイブリダイズする好適なオリゴヌクレオチドプライマーと、周知のTaqポリメラーゼ(Thermus Aquaticusから誘導される)などの5'-特異的DNAエキソ-ポリメラーゼと、好適な濃度の活性化ヌクレオチドモノマー(例えば、ATP、GTP、CTP、TTP)と、その他の試薬(例えば、KCl、トリスHCl、MgCl2)とを含んでなる混合物を形成することにより、サンプル中の標的DNAを検出してもよい。典型的には、ハイブリダイズされないオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションプローブのECL標識およびECL消光部分は消光接触を行い、低いECL発光が観測される。ハイブリダイゼーションプローブおよびプライマーが標的DNAにアニール化されるように混合物を処理する。典型的には、ハイブリダイズされたプローブのECL標識およびECL消光部分は消光接触を行い、この場合にも低いECL発光が観測される。次いでポリメラーゼ反応を進行させる。5'-特異的DNAエキソ-ポリメラーゼは、標的DNAを鋳型として使用し、プライマーの3'-末端から始めて5'-方向に一度に1個のヌクレオチドの割合でプライマーを伸長させる。ポリメラーゼが5'-方向下流に進行して、結合されたハイブリダイゼーションプローブのところまでくると、ポリメラーゼは、プライマーを伸長させる際に、結合されたプローブを分解するであろう。このハイブリダイゼーションプローブは短いオリゴヌクレオチド断片(典型的にはモノマー)に変換され、標的DNAから遊離して溶液混合物中に入る。ECL票識およびECL消光部分は異なるモノマー単位に結合されたため、分解に伴って溶液中に遊離されても、もはや消光接触が保持されなくなる。従って、ECL発光の増加を、サンプル中に存在する標的DNAの量と相関付けることが可能となる。類似の方法が、蛍光標識および蛍光消光剤に対して提示されている。例えば、1997年のWittwerの文献を参照されたい。
更にもう1つの実施態様において、ECL標識およびECL消光部分の両方を有しかつ自己ハイブリダイゼーション配列を有するオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションプローブを利用してDNAの検出を行うべく、本発明のアッセイを利用してもよい。標的DNAの不存在下では、プローブが自己ハイブリダイズし(典型的には、ヘアピン構造またはヘアピン-ループ構造を形成し)、ECL標識およびECL消光部分は消光接触する。標的DNAの存在下では、プローブが優先的に標的DNAにアニール化され、そうすることによりECL標識がECL消光部分から分離され、結果として、もはや消光接触ができなくなり、ECL発光は増加する。従って、ECL発光の増加量を、サンプル中に存在する標的DNAの量と相関付けるとが可能となる。
一実施態様において、抗体または抗原の検出を行うべく、本発明のアッセイをイムノアッセイとして利用してもよい。抗体は、免疫グロブリンとも呼ばれ、外来物質の存在に応答して動物により合成されるタンパク質である。これらは、Bリンパ球(B細胞)から誘導されるプラズマ細胞により分泌される。これらの溶解性タンパク質は、体液性免疫応答の認識エレメントである。各抗体は、その合成を促した外来物質に対して特異的な親和性を有し、この外来物質と容易に結合して複合体を形成する。抗体形成を誘発することのできる外来巨大分子は抗原(または免疫原)と呼ばれる。タンパク質、多糖、および核酸は、通常、有効な抗原である。抗体の特異的親和性は、巨大分子抗原全体に対するものではなく、抗原決定基(またはエピトープ)と呼ばれる抗原上の特定の部位に対するものである。ほとんどの小分子は、抗体形成を誘発しない。しかしながら、それらが巨大分子に結合した場合、特異的抗体の形成を誘発する可能性がある。この場合、巨大分子は、結合された化学基の担体であり、ハプテン決定基と呼ばれる。この小さな外来分子自体は、ハプテンと呼ばれる。結合されたハプテンにより誘導された抗体は、未結合ハプテンとも結合するであろう。
構造的には、抗体は、ジスルフィド結合により互いに保持されている4つの個別的タンパク質鎖、すなわち、分子量約17,000ダルトンの2本の軽(L)鎖および分子量約35,000の2本の重(H)鎖から成る。ヒトでは、5つのクラスの重鎖、すなわち、μ鎖、δ鎖、γ鎖、ε鎖、およびα鎖、ならびに2つのクラスの軽鎖、すなわち、κ鎖およびλ鎖が存在する。それぞれIgM、IgD、IgG、IgE、IgAとして抗体(すなわち、免疫グロブリンIg)を特性付けるのは重鎖のクラスである。一般的には、軽鎖および重鎖のそれぞれは、可変領域(アミノ末端位において)および定常領域(カルボキシ末端位において)から成るが、重鎖の定常領域は、ドメインに細分されることが多い。通常、抗原結合の特異性を決定するのは、軽鎖および重鎖の可変領域のアミノ酸配列であり、従って、各抗体は、通常、2つの抗原結合部位を有する。一般的には、抗体はまた、例えばパパイン、ペプシン、またはトリプシンでの酵素的分解により生じる生成物に従って構造的に記述することも可能である。典型的には、酵素パパインによる消化を行うと、2つのFab断片(それぞれ1つの完全な軽鎖と1つの重鎖の一部分とを有するとともに、それぞれ1つの抗原結合部位を有する)および1つのFc断片(2つの重鎖のそれぞれの残りの部分を有し、抗原結合部位を持たない)が得られる。典型的には、酵素ペプシンによる消化を行うと、1つのF(ab')2断片(2つの完全な軽鎖と各重鎖の一部とを有するとともに、2つの抗原結合部位を有する)および1つのpFc'断片(2つの重鎖のそれぞれの残りの部分を有するが、抗原結合部位を持たない)が得られる。
各抗体産生細胞は、唯一のタイプの抗体を産生し、特定の細胞により産生される特異的タイプの抗体は、その細胞と抗原との初期相互作用に関連付けられる。このようにして、外来物質が動物中に導入されると、抗原に対して様々な結合特異性を有する多数の異なる抗体が産生される。膜に広く存在しかつ結合部位を細胞表面上に露呈させている抗体分子である受容体に抗原が結合することによって、プラズマ細胞の前駆体であるBリンパ球の分裂および増殖が誘発される。続いて、活性化された細胞により産生される可溶性抗体は、膜結合抗体と同じ特異性を有する。
抗体は、例えば、抗原を動物に投与することによって発生させてもよい。典型的には、抗原には、ハプテン決定基(例えば、担体巨大分子)に結合されたハプテンが含まれるが、ハプテン決定基としては、血清アルブミン、血清グロブリン、リポタンパク質などが挙げられる。抗原は、従来のように、凍結乾燥された抗原を再水和させて溶液または懸濁液を形成することによって注入用として調製してもよいが、この場合、通常、アジュバントと混合される。アジュバントとしては、例えば、初回投与用のフロイント完全アジュバントおよび追加投与用のフロイント不完全アジュバントなどの油中水型エマルションが挙げられる。典型的には、抗原組成物は、少なくとも約4週間にわたり投与回数2回以上で様々な部位に投与される。
血清(すなわち、ポリクロナール抗血清)を動物から採取し、標準的なイムノアッセイまたは沈降反応において抗原または抗原類似体を用いて所望の抗体が存在するかを調べる試験にかける。ポリクロナール抗血清は、典型的には、この抗原と反応しないいくつかの抗体、およびこの抗原と反応するが他の抗原とも交差反応するいくつかの抗体(例えば、それほど選択性が高くない抗体)を含むであろう。ポリクロナール抗血清由来の特異的抗体を精製する方法は、当該技術分野で公知である。特に有効な方法は、固相にコンジュゲートされた抗原を有するカラム(例えば、セファロースカラム)を利用するアフィニティ精製として知られている。ポリクロナール抗血清をカラムに通し、カラムを洗浄し、穏やかな変性緩衝液を用いて所望の抗体を溶出させる。抗体の産生、精製、および修飾に使用される一般的な技法、ならびにイムノアッセイのデザインおよび実施については、例えば、1996年のWeirらの文献、1991年のColiganらの文献、1994年のWildの文献、および1993年のMasseyeffらの文献を参照されたい。
特定の抗体産生細胞(例えば、脾細胞)は唯一の特異的抗体を産生するので、通常、この特異的抗体を多量に発生させるために、例えば、抗体産生細胞と非抗体産生骨髄腫細胞(抗体産生細胞の悪性疾患である多発性骨髄腫によって生じる細胞)とを融合させることによって、この細胞のクローニングを行う必要がある。融合は、例えば、細胞をポリエチレングリコールに暴露することによって行ってもよいが、より普通には、エプスタイン-バールウイルスを用いたトランスフェクションまたは発癌性DNAを用いたトランスフォーメーションによって行われる。
抗体産生細胞とは異なり、融合細胞は、骨髄腫細胞の新生物特性を保持しており、従って、培養時に増殖する。こうして抗体産生細胞は不死化される。典型的には、多くの抗体産生細胞をクローン化および培養し、所望の特異性をもつ抗体を産生するクローンを選択する。特異性は、典型的には、例えば、イムノアッセイにおける検出用試薬としての抗原により培養体の上清から決定される。次に、選択されたクローンに由来する所望のモノクロナール抗体の供給物を、大量の培養体の上清から、または適切に準備されかつこのクローンが注入された宿主動物の腹水から、精製することができる。場合により、硫安沈殿、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィーなどの標準的な生化学的調製法を用いて、抗体を精製してもよい。もう1つの方法において、免疫された動物ドナーから抗体産生細胞を回収してもよく、または免疫されていないドナーから回収して、抗原および免疫刺激性成長因子の存在下で培養することによりin vitroで前刺激することができる。所望の特異性をもつ抗体を産生する細胞は、特異的クローンの増殖を起こすが非特異的クローンの増殖を起こさない条件下で抗原と接触させることによって選択することができる。モノクロナール抗体およびハイブリドーマに関する一般的な技法については、1988年のHarrow & Laneの文献、1985年のWandsらの文献、1984年のMilsteinらの文献、および1984年のHoffmanの文献を参照されたい。
従って、本明細書中で使用される用語「抗体」とは、ポリクロナール抗体およびモノクロナール抗体の両方を指し、完全な状態の抗体分子だけではなく、完全な状態の免疫グロブリンの抗体活性を保持する抗体断片および抗体誘導体(当該技術分野で周知の技法で調製しうる)も含まれる。この場合、「抗体活性」とは、抗体が、抗体の抗原結合部位を介して、他の可能性のある抗原よりも優先的に特異的抗原に結合する能力を指す。抗体の断片および他の誘導体は、例えば、ペプシン、パパイン、またはトリプシンのようなタンパク質分解酵素を用いて抗体を開裂処理にかける方法、ジチオスレイトールのような試薬でジスルフィド結合を還元する方法など、標準的なタンパク質化学の方法により調製可能である。完全な状態の抗体の遺伝子操作された変異体は、抗体をコードするポリヌクレオチドを入手することと、コード配列のスプライシングまたは突然変異の導入を行い、変異体を翻訳すべく分子生物学の一般的な方法を適用すること、により産生可能である。特に興味深い操作された変異体である抗体としては、キメラ抗体およびヒト化抗体、Fab様断片、一本鎖可変領域断片(scFv)、ならびにダイアボディが挙げられる。
抗体は、通常、抗原と反応する能力に従ってスクリーニングおよび精製が行われるが、このほかに抗体は、妨害を起こす可能性のある物質との交差反応性の低さ、いずれも抗原-抗体系の感受性および機能に影響しうる抗体-抗原反応の速度および抗原-抗体親和性、並びに生物学的供給源により産生される抗体の力価など、他の判定基準に従ってスクリーニングが行われることも多い。抗体の最終的な選択を行うには、これらの種々の特性間での調整が必要な場合もある。
一実施態様において、抗体または抗原の検出を行うべく、本発明のアッセイをイムノアッセイとして利用してもよい。例えば、最初に、1つ以上のECL消光部分が含まれるようにサンプル中の(検出対象の)標的抗体の誘導体を形成してもよい(例えば、アミノ反応性基を有する消光剤を用いる)。次に、ECL標識を有する抗原または抗原類似体を調製してもよい。混合すると抗体-抗原複合体が形成されるが、この際、ECL標識とECL消光部分とが消光接触するため、観測されるECL発光が減少する。従って、ECL発光の減少量を、サンプル中に存在する標的抗体の量と相関付けることが可能となる。このほか、ECL標識が含まれるように標的抗体の誘導体を形成し、ECL消光部分が含まれるように抗原または抗原類似体を調製してもよい。同様な方法を用いて標的抗原の検出を行ってもよい。
もう1つの実施態様において、抗体または抗原の検出を行うべく、本発明のアッセイを競合イムノアッセイとして利用してもよい。例えば、最初に、1つ以上のECL消光部分が含まれるようにサンプル中の(検出対象の)標的抗体の誘導体を形成してもよい(例えば、アミノ反応性基を有する消光剤を用いる)。次に、ECL標識を有する抗原または抗原類似体を調製してもよい。混合すると抗体-抗原複合体が形成されるが、この際、ECL標識とECL消光部分とが消光接触するため、観測されるECL発光が減少する。ECL標識をもたないが標的抗体に対して同じような結合親和性を有する第2の抗原または抗原類似体を添加してもよい。(このほか、第1の抗原を標識化せずに、第2の抗原を標識化してもよい。)この場合、非標識化抗原は標識化抗原と競合し、競合により遊離した標識化抗原はECL発光を増加させるだろう。従って、ECL発光の変化量を、サンプル中に存在する標的抗体の量と相関付けることが可能となる。同様な方法を用いて標的抗原の検出を行ってもよい。
一実施態様において、酵素、酵素アゴニスト、および酵素アンタゴニストの検出を行うべく、本発明のアッセイを利用してもよい。大部分がタンパク質(ポリアミノ酸)である酵素は、生体系の触媒である。酵素は、典型的には、かなりの触媒能力(106倍以上に反応を促進することが多い)およびすぐれた選択性を呈する。分子内力および分子間力をフル活用することにより、酵素は、化学結合の形成および開裂のための最適配向を基質にとらせること、および所望の反応経路に対する遷移状態を安定化することのいずれをも行うことが可能である。酵素は、通常、望ましからぬ副産物を生じる副反応の割合を非常に低く抑えて、しかも非常に高い選択率で(実際上、完全な場合が多い)、単一の化学反応または一連の密接に関連した反応を触媒する。
酵素触媒作用の第1段階では、酵素-基質複合体の形成が関与するが、この場合、基質は、典型的には、活性部位と通常呼ばれる酵素の特異的領域に結合する。活性部位は、典型的には、酵素の全体積の比較的少ない部分を占め、酵素中のアミノ酸残基の多くは、基質と接触しない。活性部位は、酵素の一次、二次、三次、および四次構造の結果として一体的になる異なるアミノ酸残基(線状アミノ酸配列中ではかなり離れて存在することが多い)上の化学基によって一般に形成される三次元要素である。典型的には、基質は、多数の弱い引力(例えば、静電的結合、水素結合、ファンデルワールス力、疎水的相互作用)によって酵素に結合する。ほとんどの場合、活性部位は酵素中の間隙溝または裂溝であり、その中に相補的基質が入り込んで結合する。結合の特異性は、典型的には、活性部位中の原子の配列に依存する。例えば、酵素および基質をそれぞれ、比楡的に、相補的構造を有する鍵および鍵穴によって表すことも可能である。このほか、酵素および基質は、酵素-基質複合体の形成後だけ相補的構造をとる可能性もある。
酵素の活性は、特定の小さな分子およびイオン(例えば、薬物、毒素)によって増加または減少することも多い。酵素阻害剤は、典型的には、酵素活性を低下させる。阻害剤は、活性部位に不可逆的に結合することもあるが、この場合、酵素は本質的に永続的に不活性化される。このほか、阻害剤は、活性部位に可逆的に結合することもあり、この場合、阻害剤は競合阻害剤と呼ばれ、基質の結合を妨害し、結合部位に対して基質と競合する。また、阻害剤(典型的には、非競合的阻害剤またはアンタゴニストと呼ばれる)は、活性部位以外の部位に結合することもあり、これによって酵素が結合部位で基質と結合する能力は低下する。これとは対照的に、酵素活性を増大させる分子(しばしばアゴニストと呼ばれる)が典型的には活性部位以外の部位に結合すると、酵素の活性は増大する。
一実施態様において、酵素、基質、不可逆阻害剤、競合阻害剤、アンタゴニスト、またはアゴニストの検出(または同定)を行うべく、本発明のアッセイを利用してもよい。例えば、最初に、1つ以上のECL消光部分が含まれるようにサンプル中の(検出対象の)酵素の誘導体を形成してもよい(例えば、アミノ反応性基を有する消光剤を用いる)。次に、ECL標識を有する酵素基質を調製してもよい。混合すると酵素-基質複合体が形成されるが、この際、ECL標識と1つ以上のECL消光部分とが消光接触するため、観測されるECL発光が減少する。従って、ECL発光の減少量を、サンプル中に存在する標的酵素の量と相関付けることが可能となる。このほか、ECL標識が含まれるように標的基質の誘導体を形成し、ECL消光部分が含まれるように酵素を調製してもよい。同様な方法を用いて、標的基質、基質類似体、不可逆阻害剤、競合阻害剤、アンタゴニスト、およびアゴニストの検出を行ってもよい。
もう1つの一実施態様において、例えば、酵素、基質、基質類似体、競合阻害剤、アンタゴニスト、またはアゴニストの検出を行うべく、本発明のアッセイを競合アッセイとして利用してもよい。例えば、サンプル中の基質を検出するために、最初に、1つ以上のECL消光部分が含まれるように好適な酵素の誘導体を形成してもよい(例えば、アミノ反応性基を有する消光剤を用いる)。次に、基質と同じように酵素に対する結合親和性を有しかつECL標識を有する基質類似体を調製してもよい。酵素および基質類似体を混合すると酵素-基質類似体の複合体が形成されるが、この際、ECL標識と1つ以上のECL消光部分とが消光接触する。この後、検出対象の基質を含有するサンプルを添加する。ECL標識をもたない基質は、標識化された基質類似体と競合し、競合により遊離した標識化基質類似体は、ECL発光を増大させるだろう。従って、ECL発光の増加量を、サンプル中に存在する標的基質の量と相関付けることが可能となる。同様な方法を用いて、酵素、基質類似体、競合阻害剤、アンタゴニスト、およびアゴニストの検出を行ってもよい。
一実施態様において、強力な結合対の1メンバーをもつ誘導体を選択的に形成可能な物質の検出を行うべく、本発明のアッセイを利用してもよい。強力な結合対の例としては、ビオチン-アビジンおよびビオチン-アビジン類似体、例えば、ビオチン-ストレプトアビジンが挙げられる。ビタミンB複合体のビタミンHとして知られるビオチンは、実験式C101532Sで表されるイミダゾールペンタン酸である。卵白中に見出される70キロダルトンのタンパク質であるアビジンは、ビオチンに対して非常に高い結合親和性を有する。細菌Strepto myces avidinii中に見出される類似のタンパク質であるストレプトアビジンは、ビオチンに対して更に高い結合親和性を有するが、この原因の一部分は、その4つのビオチン結合部位にある。
例えば、ビオチン部分(例えば、市販のビオチニル化剤を用いる)およびECL標識の両方が含まれるように、(検出対象の)標的分子の誘導体を選択的に形成してもよい。1つ以上の消光部分を有するストレプトアビジン誘導体を調製してもよい。混合するとビオチン-ストレプトアビジン複合体が形成されるが、この際、ECL標識と1つ以上のECL消光部分とが消光接触するため、観測されるECL発光は減少する。従って、ECL発光の減少量を、サンプル中に存在する標的分子の量と相関付けることが可能となる。このほか、例えば、ビオチン/ECL消光部分、アビジン/ECL標識、またはアビジン/ECL消光部分が含まれるように、標的分子の誘導体を選択的に形成してもよく、この場合、もう一方の試薬には、それぞれアビジン/ECL標識、ビオチン/ECL消光部分、およびビオチン/ECL標識が含まれることになろう。
本発明はまた、本発明のアッセイ法に使用するための試薬、1つ以上の試薬を含む試薬セット、および1つ以上の試薬セットを含む試薬キットを提供する。試薬は、固体、液体、または気体の形態であってもよいが、典型的には、固体または液体の形態である。試薬としては、例えば、ECL標識用試薬、ECL消光部分を結合するための試薬、電解質組成物、溶剤、および緩衝剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明のアッセイに使用するための試薬および/または試薬セットは、典型的には、1つ以上の好適な容器または装置中に提供される。試薬セットは、典型的には、商業用にパッケージ化された形態で、試薬の算定が可能な場合には組成物または予備混合物の状態で、試薬キットとして提供される。例えば、1つ以上の試薬を保持する1つ以上の容器、装置、またはそれらの類似物を組合せてパッケージ化したものとして提供され、通常、アッセイを実施するための取扱い説明書が添付される。
D.ECLの測定方法
サンプルのECLを測定するための好適な装置の種類については、当該技術分野で周知である。例えば、1991年のBlackburnらの文献、1990年のLelandらの文献、1991年のHallらの文献を参照されたい。典型的には、ECLは、(i)サンプル(典型的には液体である)の受け器と、(ii)受け器中に配置され、検査対象の組成物と接触する2つ以上の電極であって、そのうちの1つは、電気化学発光種が生成する「作用電極」である電極と、(iii)電気化学発光に伴って発生するフォトンの一部分を検出する検出器と、を含んでなる装置を用いて測定される。
便宜上、ECL装置は、典型的には3つの電極、すなわち、作用電極、対向電極、および参照電極を備える。多くの場合、参照電極(例えば、標準Ag/AgCl電極)は、作用電極および対向電極からいくらか離間させて配置されるが、ただし、これらの電極と(電解液を介して)接触する。作用電極および対向電極は、典型的には貴金属または比較的不活性な金属、例えば白金および金である。
検出器は、フォトンの検出(および好ましくは定量)を行う任意の装置であってよく、具体的には、光電子増倍管(PMT)、光ダイオード、電荷結合デバイス、写真用もしくは感光性のフィルムまたは乳剤が挙げられる。典型的には、検出器はPMTであり、紫外、可視、または赤外など、フォトンの所定の範囲に対して特に感度をもつように選択可能である。検出器は、典型的には、ECLに伴って発生するフォトンを容易にかつ効率的に検出できるように配置される。例えば、一実施態様において、作用電極は、金または白金のディスクであり、PMT検出器は、作用電極の前側平面とまさに対向して配置され、検査対象の組成物は、ディスクとPMT検出器との間をディスクを越えて横方向に流動する。
便宜上、ECL装置は、典型的には、試薬、電解液/緩衝液、およびサンプル組成物用の容器と(例えば、管を介して)結合されているサンプル受け器の入口および出口、受け器と容器との間で液体を流動させるためのポンプ(例えば、蠕動ポンプ)など、流体を取り扱うための手段を備えている。このように装置を用いると、静的構成または流通型構成のいずれでもECLの測定が可能となる。
よく知られている市販のECL装置はOrigen I Analyzer▲R▼であり、この装置は、光度計(検出器として)と、電気化学セル(受け器および電極)と、ポテンショスタット(電気化学セルを操作するため)と、流体およびサンプルを取り扱うための手段とを一体化したものである。このアナライザーは、逐次サンプルの迅速かつ再現性のある測定を可能にするフローインジェクション系を利用する。光度計は、各測定時に電極からの光が記録および積算されるように作用電極の真上に配置された光電子増倍管(典型的には、Ru(bpy)3 2+標識の最適な検出が行えるように赤感性である)である。
上述したように、ECLは、電気化学的に発生させた電子的励起化学種から電磁放射されるフォトン放出(例えば光)である。従って、特定のサンプルのECLを測定するためには、サンプルを電解して電解酸化種および/または電解還元種を形成し、直ちにまたは更なる反応を行ってからフォトンを放出させるようにしなければならない。典型的には、例えば電池または他の起電力(EMF)源を用いて作用電極に電位を印加することによりサンプルを電解する。便宜上、作用電極と補助電極との間に電気化学的電流(ファラデー電流)を流しながら、参照電極に対する作用電極の電位として電位差を報告する。この場合、作用電極の電位は、典型的には-10.00〜+10.00Vであるが、より一般的には-6.00〜+6.00Vであり、更に一般的には-3.00〜+3.00Vである。作用電極の電位は、静的であっても、交流的であっても、あるいはより複雑な機能を反映するものであってもよい。特定の電位(例えば、波形)を印加する手段は、電気化学分野で周知である。例えば、1992年のKaminらの文献を参照されたい。ECLを生成するために作用電極に印加しなければならない電位は、ECL反応シーケンスに関与する正確な化学種ならびにサンプル組成物のpHや電極の性質などの他の要因の関数である。ECLを生成するための最適電位ならびにECLを検出するための最適波長の両方をどのように決定するかは、ECL技術分野の当業者には周知である。
再度記載することになるが、特定のサンプルのECLを測定するためには、サンプルを電解して電解酸化種および/または電解還元種を形成し、直ちにまたは更なる反応を行ってからフォトンを放出させるようにしなければならない。最適な電解を行うためには、作用電極と対向電極との間を移動することにより電荷を移動させることのできるイオンが、サンプル組成物中に存在しなければならない。従って、ECL測定を容易にするために、サンプルは、典型的には、ECL測定時に電荷を移動させるがECL反応シーケンスを妨害しないイオンを含んでなるECLアッセイ媒体(例えば、ECLアッセイ緩衝液)と混合される。
本明細書中で使用される用語「ECLアッセイ媒体」とは、ECL測定を行う前にサンプルと場合により混合される(ただし、通常は混合される)組成物を指す。一般的には、ECLアッセイ媒体は流体であるが、より典型的には液体であり、溶解された1つ以上の塩を含む。典型的には、ECLアッセイは液体であり、1つ以上の溶剤、および溶解された1つ以上の塩を含む。典型的には、塩はミリモル濃度で存在する。
一実施態様において、ECLアッセイには、水(すなわちH2O)および溶解された1つ以上の塩が含まれる。水溶性の塩としては、例えば、NaCl、KCl、N(C494Clなどの塩化物塩NaBr、KBr、N(C494Brなどの臭化物塩、KNO3、NaNO3、N(C494NO3などの硝酸塩、Na3PO4、K3PO4、Na2HPO4、K2HPO4、NaH2PO4、KH2PO4などのリン酸塩、およびNa2SO4、K2SO4などの硫酸塩が挙げられる。
もう1つの実施態様において、ECLアッセイには、1つ以上の有機溶剤および溶解された1つ以上の塩が含まれる。好適な有機溶剤としては、例えば、アセトニトリル(すなわち、CH3CN、ACN)、ジメチルスルホキシド(すなわち、(CH32SO、DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(すなわち、(CH32NCHO、DMF)、メタノール(すなわち、CH3OH)、およびエタノール(すなわち、C25OH)が挙げられる。典型的な有機溶剤に溶解可能な塩としては、例えば、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロ硝酸塩(すなわち、(C494NBF4)などのテトラブチルアンモニウム塩が挙げられる。
いくつかの実施態様において、特に、ECLアッセイ媒体に水が含まれる場合、ECLアッセイ媒体はpH緩衝される。例えば、便宜上、リン酸塩(例えば、典型的には約0.01〜0.05MのKH2PO4)を添加し、それに続いて適切な量の好適な強酸(例えば、HCl)または強塩基(例えば、NaOH)を加えて所望の例えば、生理的なpH7.2)にpHを調整することによって、水性ECLアッセイ媒体をpH緩衝してもよい。緩衝されると、ECLアッセイ媒体のpHは、例えばECL測定時に生じる恐れのある化学組成の小さな変化に比較的影響されなくなる。
ECLアッセイ媒体にはまた、電解酸化種および/または電解還元種が含まれかつ最終結果としてフォトン放出(すなわち、ECL)が行われる化学反応に関与する1つ以上のECL共反応体が含まれていてもよい。本明細書中で使用される用語「ECL共反応体」またはより単純に「共反応体」とは、それ自体またはその電気化学的還元/酸化生成物がECL反応シーケンスに関与する化合物を指す。
多くの場合、共反応体は、ECLを発生させるためのより単純な手段の使用(例えば、二段階酸化-還元サイクルのうちの半分だけを使用)および/またはECL強度の改良を可能にする。一実施態様において、共反応体は、電気化学的酸化/還元が起こると直ちにまたは更なる反応を起こして溶液中に強力な酸化性または還元性の種を生成する化合物である。共反応体としては、例えば、不可逆的に電解還元されて酸化性のSO4 ・-イオンを形成するペルオクソ二硫酸イオン(すなわち、S28 2-、過硫酸イオン)がある。共反応体のもう1つの例は、不可逆的に電解酸化されて還元性のCO2 ・-イオンを形成するシュウ酸イオン(すなわち、C24 2-)である。還元剤として作用する共反応体のクラスとしては、例えば、アミンまたはアミン基含有化合物があり、具体的には、トリ-n-プロピルアミン(すなわち、N(CH2CH2CH33、TPAH)が挙げられる。
共反応体としては、例えば、リンコマイシン、クリンダマイシン-2-ホスフェート、スパルテイン、エリスロマイシン、1-メチルピロリドン、N-エチルモルホリン、ジフェニドール、アトロピン、トラゾドン、1-エチルピペリジン、ヒドロフルメチアジド、ヒドロクロロチアジド、クリンダマイシン、テトラサイクリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、レセルピン、トリメチルアミン、トリ-n-ブチルアミン、トリエタノールアミン、ピペリジン、1,4-ピペラジン、ビス(エタンスルホン酸)、トリ-n-ブチルホスフィン、N,N-ジメチルアニリン、フェニラミン(pheniramine)、ブロモフェニラミン(bromopheniramine)、クロロフェニラミン(chloropheniramine)、ジフェニルヒドラミン、ジ-n-プロピルアミン、2-ジメチルアミノピリジン、ピリラミン、2-ベンジルアミノピリジン、ロイシン、バリン、グルタミン酸、フェニルアラニン、アラニン、アルギニン、ヒスチジン、システイン、トリプトファン、チロシン、ヒドロキシプロリン、アスパラギン、メチオニン、トレオニン、セリン、シクロチアジン、トリクロロメチアジド、1,3-ジアミノプロパン、ピペラジン、クロロチアジド、ヒドロジノタランジン、バルビツール酸、ペルスルフェート、ニコチンイミドアデニンジヌクレオチド、ペニシリン、1-ピペリジニルエタノール、1,4-ジアザビシクロ(2.2.2)オクタン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸、ベンゼンスルホンアミド、テトラメチルスルホン、エチルアミン、n-プロピルアミン、n-ブチルアミン、s-ブチルアミン、t-ブチルアミン、n-ペンチルアミン、n-ヘキシルアミン、シュウ酸、ヒドラジンスルフェート、グルコース、メチルアセトアミド、およびホスホロ酢酸が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
サンプル組成物中の共反応体の濃度は、選択される特異的共反応体により変化するが、当業者は、好適な濃度を容易に決定することが可能である。典型的には、ECLレベルの濃度の約1000倍大きくなるように共反応体の濃度を選択する。
ECLアッセイ媒体にはまた、ECL発光を増大させることが可能でしかも界面活性剤または湿潤剤として機能することにより電極および/またはECL装置の内壁上への吸着を防止または低減することも可能な1つ以上のECL増強剤が含まれていてもよい。多数のECL増強剤が当該技術分野で周知である。例えば、1990年のShahらの文献を参照されたい。ECL増強剤の1グループは、一方の置換基(Rl)が水素またはC1〜20アルキル基であり、他方の(パラ)置換基(R2)が式-[O-(CH2nmOH〔式中、nは1〜20の整数であり、mは0〜70の整数である〕で表されるポリ(アルコキシ)アルコールであるパラ-置換ベンゼンとして表すこともできる。商品名Triton X-100▲R▼として市販されているECL増強剤の1つは、R1が-C(CH32CH2C(CH33であり、R2が-(O-CH2CH29〜10OHである。商品名Triton X-401▲R▼として市販されているもう1つのECL増強剤は、R1が-C919であり、R2が-(O-CH2CH240OHである。ECL増強剤を利用する場合、一般的には、ECL発光を増大させる量で存在させる。典型的には、その量は約0.01〜約5%(v/v)であり、多くの場合、約0.1〜約1%(v/v)である。
E.実施例
本発明のいくつかの実施態様を次の実施例中に記載するが、これらは例示用として提示されたものであって、限定するためのものではない。
実施例1
フェノールによるRu(bpy)3 2+/TPAHのECL消光
適切な量のトリス(2,2'-ビピリジル)ルテニウム(II)塩化物六水和物(すなわち、Aldrich▲R▼Chemical Co.製のRu(bpy)3Cl2.6H2O)を、Elecsys▲R▼緩衝溶液(フラッシュ-ECLアッセイ緩衝液番号1518-001;0.18Mトリ-n-プロピルアミン(TPAH)と湿潤剤およびECL増強剤としてThesit▲R▼とを含有するリン酸ベース緩衝液)中に溶解し、0.4μM Ru(bpy)3 2+(発光団として)と0.18M TPAH(共反応体として)とのpH6.8のストック溶液が得られるように溶液を希釈した。エタノール中に溶解されたマイクロリットル量の1Mフェノール(すなわち、C65OH、超純粋、Clontech▲R▼)(ECL消光剤として)をストック溶液のアリコート1mLに添加し、フェノール濃度が2〜15mMのサンプルを得た。
各サンプルのECL強度の測定および記録(任意の単位、例えばカウント)は、光度計と、ポテンショスタットと、電気化学セルと、流体およびサンプルを取り扱うための手段とを一体化した市販の電気化学発光アナライザーOrigen I Analyzer▲R▼を用いて行った。このアナライザーは、逐次サンプルの迅速かつ再現性のある測定を可能にするフローインジェクション系を利用する。光度計は、各測定時に電極でまたはその近傍で発生した光が記録および積算されるように作用電極の真上に配置された赤感性光電子増倍管である。典型的には、酸化的電気化学シーケンス/電位を作用電極に与え、標準Origen▲R▼パラメーターを用いて光電子増倍管により光の強度を測定した。典型的には、電位は0から2800mVまで変化させ、掃引速度は4800mV/s(周波数=0.58sec-1)であった。各実験の前後で0.176M KOH緩衝洗浄液(Boehringer Mannheim▲R▼製のフラッシュ-ECL CS、識別番号1518470)を用いて電極を清浄にした。すべての電気化学的測定に対して、EG&G PARモデル263A▲R▼ポテンショスタット/ガルバノスタットを使用した。
データは図1に示されている。フェノールを含まないサンプルのECLシグナルが装置の検出能力よりも大きく、任意の単位で1000万であったことに注目されたい。わずか2mMのフェノールで、ECLは、対照サンプルのECLの7%未満まで低下した。わずか5mMのフェノールで、ECLは、対照サンプルのECLの約0.01%未満まで低下した。
この実施例は、マイクロモル濃度のフェノールが、Ru(bpy)3 2+/TPAH ECL反応シーケンスにおいてマイクロモル濃度のRu(bpy)3 2+の溶液のECLを効率的に消光することを示している。すなわち、電気化学的酸化が起こると、生成した励起状態種Ru(bpy)3 2+*が効率的に消光され、その結果、消光剤が存在しない場合と比べてかなり少ないECL強度が観測される。
実施例2
フェノールによるRu(bpy)3 2+/C28 -2のECL消光
適切な量のRu(bpy)3Cl2.6H2OおよびNa228(Aldrich Chemical Company)を、リン酸緩衝塩類溶液(すなわち、「PBS」;50mM Na3PO4、100mM NaCl、pH7.0、0.2μm濾過)中に溶解し、0.4μM Ru(bpy)3 2+(発光団として)と200mM C28 -2(共反応体として)とのpH7.0のストック溶液が得られるように希釈した。エタノール中に溶解されたマイクロリットル量の1Mフェノール(ECL消光剤として)をストック溶液のアリコート1mLに添加し、フェノール濃度が2〜20mMのサンプルを得た。各サンプルのECL強度の測定および記録(任意の単位で)を行った。データは図2に示されている。2mMのフェノールで、ECLは、対照サンプルのECLの6%未満まで低下した。8mMのフェノールで、ECLは、対照サンプルのECLの約0.1%未満まで低下した。
この実施例は、マイクロモル濃度のフェノールが、Ru(bpy)3 2+/C28 -2ECL反応シーケンスにおいてサブマイクロモル濃度のRu(bpy)3 2+の溶液のECLを効率的に消光することを示している。Ru(bpy)3 2+/C28 -2系のECL強度はRu(bpy)3 2+/TPAH系のものよりも本質的に低いが(約1/10〜1/50)、C28 -2系でフェノールを使用した方が消光効率は約5%高かった。
実施例3
p-ヒドロキシ安息香酸およびp-アミノ安息香酸によるRu(bpy)3 2+のECL消光
適切な量のRu(bpy)3Cl2・6H2OをElecsys▲R▼緩衝溶液中に溶解し、0.3μM Ru(bpy)3 2+(発光団として)と0.18M TPAH(共反応体として)とのpH6.8のストック溶液が得られるように希釈した。エタノール中に溶解されたマイクロリットル量の1M p-ヒドロキシ安息香酸(すなわち、HOC64COOH、PHBA、純度99+%、Aldrich Chemical Company)または1M p-アミノ安息香酸(すなわち、H2NC64COOH、PABA、純度99+%、Aldrich Chemical Company)(ECL消光剤として)をストック溶液のアリコート1mLに添加し、消光剤濃度が2〜10mMのサンプルを得た。比較のために、エタノール中に溶解されたマイクロリットル量の1Mフェノール(ECL消光剤として)をストック溶液のアリコート1mLに添加し、フェノール濃度が2〜10mMのサンプルを得た。各サンプルのECL強度の測定および記録(任意の単位で)を行った。データは図3に示されている。
この実施例は、同等な濃度において、フェノールが、PHBA(これよりも少なくとも約8倍の効率)またはPABA(これよりも少なくとも約2倍の効率)のいずれよりもかなり効率的に、Ru(bpy)3 2+/TPAH ECL反応シーケンスにおいてマイクロモル濃度のRu(bpy)3 2+のECLを消光することを示している。この実施例はまた、既知のラジカルスカベンジャーであるPHBAおよびPABAを介して、Ru(bpy)3 2+*励起状態の形成の前のTPA中間体の捕獲の可能性が励起状態の直接的消光の可能性よりも低いことを示している。
実施例4
フェノール誘導体によるRu(bpy)3 +2のECL消光
1つ以上の電子求引性基および/または電子供与性基を有する多数のフェノール誘導体の消光効率について、実施例3で使用したのと同様な方法で試験した。適切な濃度になるように消光剤(いずれもAldrich Chemical Company製で、純度は>98%であった)をエタノール中に溶解し、適切なアリコートを、Ru(bpy)3 2+/TPAHストック溶液のアリコート1mLに加えた。消光剤として試験されたこれらのフェノール誘導体としては、o-クレゾール(すなわち、2-メチル-フェノール)、m-クレゾール(すなわち、3-メチル-フェノール)、p-クレゾール(すなわち、4-メチル-フェノール)、p-フルオロフェノール、m-フルオロフェノール、o-フルオロフェノール、o-プロピルフェノール、p-プロピルフェノール、p-フェニルフェノール、o-トリフルオロメチルフェノール、m-トリフルオロメチルフェノール、p-トリフルオロメチルフェノール、p-ニトロフェノール、p-ニトロ安息香酸、p-ヒドロキシ安息香酸、および4,4'-ビフェノールが含まれていた。
様々なフェノール誘導体のECL消光効率にはある傾向が観測された。最も顕著な傾向として、置換基がフェノールのヒドロキシ基のメタ位に存在する場合に、より効率的なECL消光が観測された。例えば、m-フルオロフェノールは、o-フルオロフェノールまたはp-フルオロフェノールのいずれと比べても、より効率的なECL消光を呈した。驚くべきことに、フェノールは、試験されたフェノール誘導体のいずれよりもECL消光の効率が約3倍高かった。
実施例5
フェノールがRu(bpy)3 2+の光発光に及ぼす影響
適切な量のRu(bpy)3Cl2.6H2OをElecsys▲R▼緩衝溶液中に溶解し、30μM Ru(bpy)3 2+(発光団として)と0.18M TPAH(共反応体として)とのpH6.8のストック溶液が得られるように希釈した。エタノール中に溶解された所定量の0.2〜0.3Mフェノールをストック溶液のアリコート10mLに添加し、フェノール濃度が0〜0.3Mのサンプルを得た。Perkin Elmer LS-50B蛍光光度計を使用し、PMTの電圧に850Vでバイアスをかけて、(電解を行わずに)各サンプルの光発光を測定した。励起は、Ru(bpy)32+発光団の金属から配位子への電荷移動(MLCT)の最低エネルギー吸収のピーク極大である452nmで行い、検出は、550〜650nm(λem=620nm)で行った。データから、フェノールの濃度が増大するにつれて光発光が着実に増大することが分かった。この傾向は、ECLに関してフェノールの濃度を増大させたときに観測された結果と逆であることに注目されたい。また、このデータから、フェノールが蛍光に及ぼす影響はECLに及ぼす影響よりもかなり小さいことが分かった。
実施例6
フェノールがRu(bpy)3 2+の光発光に及ぼす影響:バルク電解
適切な量のRu(bpy)3Cl2.6H2OおよびTPAHをElecsys▲R▼緩衝溶液中に溶解し、30μM Ru(bpy)3 2+と0.18M TPAHとのpH6.8のストック溶液が得られるように溶液を希釈した。ストック溶液のアリコート100mLに6mLの1Mフェノールを添加し、フェノールの濃度を60mMにした。この初期溶液に対して基準光発光を測定した。次に、BioAnalytical Systems▲R▼Inc.から入手可能な標準的3-電極系を用いて連続的攪拌を行いながら3時間かけて低電位電量分析(バルク電解)を行った。網状ガラス質炭素作用電極にバイアスをかけて+1.3Vの酸化電位(参照電極として使用したAg/AgClゲル電極に対して)とし、電解を行った。
白金ワイヤー対向電極は、多孔質Vycor▲R▼フリットを介して使用液から分離し、適切な電解質溶液中に浸漬させた。3時間にわたるバルク電解の間、〜30分間隔でサンプル1mLを採取し、実施例5の場合と同じように光発光試験(λexc=452nm;λem=610nm)を行った。2時間45分後、光発光シグナルの約50%が消失したが、これは、酸化生成物が光発光の消光に直接関与していることを意味する。恐らく、この酸化生成物はまた、観測されたECL消光にも関与していると思われる。
実施例7
Ru(bpy)3 2+ECLのカテコール、ヒドロキノン、および1,4-ベンゾキノン消光
適切な量のRu(bpy)3Cl2.6H2OおよびTPAHをElecsys▲R▼緩衝溶液中に溶解し、0.3μM Ru(bpy)3 2+(発光団として)と0.05M TPAH(共反応体として)とのpH6.8のストック溶液が得られるように該溶液を希釈した。エタノール中に溶解されたマイクロリットル量の1Mカテコール(すなわち、1,2-ジヒドロキシベンゼン)、ヒドロキノン(すなわち、1,4-ジヒドロキシベンゼン)、または1,4-ベンゾキノン(いずれもAldrich Chemical Company製)(ECL消光剤として)をストック溶液のアリコート1mLに添加し、消光剤濃度が2〜11mMのサンプルを得た。比較のために、エタノール中に溶解されたマイクロリットル量の1Mフェノール(ECL消光剤として)をストック溶液のアリコート1mLに添加し、フェノール濃度が2〜11mMのサンプルを得た。各サンプルについてECL強度の測定および記録(任意の単位)を行った。データを図4に示す。
この実施例は、同等な濃度において、カテコール、ヒドロキノン、および1,4-ベンゾキノン(フェノールの電解酸化生成物であると推定される)が、フェノールよりも効率的に、Ru(bpy)3 2+/TPAH ECL反応シーケンスにおいてマイクロモル濃度のRu(bpy)3 2+のECLを消光することを示しているが、3つの誘導体のうちで最も効率の高いものはベンゾキノンであり、フェノールの約6倍高い効率を有する。
実施例8
1,4-ベンゾキノン誘導体によるRu(bpy)3 2+ECLの消光
多数のベンゾキノン誘導体の消光効率について、実施例7で使用したのと同様な方法で試験した。適切な濃度になるように消光剤をエタノール中に溶解し、適切なアリコートを、Ru(bpy)3 2+/TPAHストック溶液のアリコート1mLに加えた。消光剤として試験されたこれらのベンゾキノン誘導体としては、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン(DDQ)、2,5-ジブロモ-1,4-ベンゾキノン(B−RBQ)、1,2,3,4-テトラフルオロ-5,8-ジヒドロキシ-アントラキノン(TFDAQ)、2-メトキシ-3-メチル-1,4-ナフトキノン(MMNQ)、およびアントラキノン-1,5-ジスルホン酸が含まれていた(いずれもAldrich Chemical Company製で、純度は>98%であった)。
フェノール、BQ、およびDDQについてのECL消光データを図5に示す。多くのべンゾキノン誘導体の場合と同じように、DDQは、フェノールよりもECL消光の効率が約5倍以上高かった。ベンゾキノンは、試験したベンゾキノンのいずれよりもECL消光の効率が少なくとも約3倍以上高かった。
実施例9
ヒドロキノン、カテコール、およびベンゾキノンがRu(bpy)3 2+の光発光に及ぼす影響
適切な量のRu(bpy)3Cl2.6H2OをElecsys▲R▼緩衝溶液中に溶解し、30μM Ru(bpy)3 2+(発光団として)と0.18M TPAH(共反応体として)とのpH6.8のストック溶液が得られるように希釈した。ストック溶液のサンプル1.2mLに、エタノール中に溶解された1Mヒドロキノン(Aldrich Chemical Company)のアリコート0.15mLを添加した。各アリコートを添加した後(電解せずに、かつバルク電解を行う前に)、先の実施例5に記載の方法を用いて光発光を測定した。データから、0.45mLの1Mヒドロキノン溶液を添加すると光発光が約10%増加することが分かった。この傾向は、ECLに関してヒドロキノンの濃度を増大させたときに観測された結果と逆であることに注目されたい。
ヒドロキノンの代わりに1Mカテコール(Aldrich Chemical Company)を用いて同じような実験を行った。驚くべきことに、カテコールを徐々に増加させると光発光は減少し、1.2mLの1Mカテコールを添加したところで光発光シグナルの約70%が消失した。
ヒドロキノンの代わりに0.333Mベンゾキノン(Aldrich Chemical Company)を用いてもう1つの同じような実験を行った。この場合にも、ベンゾキノンを徐々に増加させると光発光は減少し、0.3mLの0.333Mベンゾキノンを添加したところで光発光シグナルの約100%が消失した。これらの結果は明らかに、光発光消光剤としてのべンゾキノンの効率のよさを示している。
実施例10
ヒドロキノン、カテコール、およびベンゾキノンがRu(bpy)3 2+の光発光に及ぼす影響:バルク電解
適切な量のRu(bpy)3Cl2.6H2OおよびTPAHをElecsys▲R▼緩衝溶液中に溶解し、30μM Ru(bpy)3 2+(発光団として)と0.05M TPAH(共反応体として)とのpH6.8のストック溶液が得られるように溶液を希釈した。ストック溶液のアリコート100mLに6mLの1Mヒドロキノン(Aldrich Chemical Company)を添加し、フェノール濃度を60mMにした。先の実施例6に記載したように定電位電量分析(バルク電解)を行った。45分後、溶液は赤褐色に変わったが、これは、ベンゾキノンまたはなんらかの誘導体の形成を示唆するものである。また、光発光の完全な消光が45分以内に観測された。これらのデータは、フェノールに対して観測されたものと類似しており、この場合、Ru(bpy)3 2+の発光を増強する物質が電気化学的に酸化されて発光を効率的に消光する生成物を生成する。
ヒドロキノンの代わりに6mLの1Mカテコールを用いて同じような実験を行った。30分以内に光発光の完全な消失が観測され、赤褐色溶液の共存物質が形成された。カテコール自体もこれらの濃度において光発光を消光する(実施例Xを参照されたい)が、カテコールの電解酸化生成物の方が光発光の消光効率がかなり高い。
ヒドロキノンの代わりに1mLの0.333Mベンゾキノンを用いてもう1つの同じような実験を行った。バルク電解酸化を行っても光発光の消光の増加はほとんどまたはまったく観測されなかった。この結果は、ベンゾキノンが観測された消光に関与するという結論と一致する。実際には、光発光強度のわずかな増加が観測されたが、これは、長時間の酸化をうけると、ベンゾキノンの分解が始まって非消光性生成物が形成されることを意味する。
実施例11
フェノールによるRu(bpy)3 +2/TPAHのECL消光:電位の検討
適切な量のRu(bpy)3Cl2.6H2OおよびTPAHをElecsys▲R▼緩衝溶液中に溶解し、0.3μM Ru(bpy)3 2+(発光団として)と0.05M TPAH(共反応体として)とのpH6.8のストック溶液が得られるように溶液を希釈した。エタノール中に溶解されたマイクロリットル量の1Mフェノール(ECL消光剤として)をストック溶液のアリコート1mLに添加し、フェノール濃度が2〜6mMのサンプルを得た。先に記載した方法を用いて、各サンプルのECL強度の測定および記録(任意の単位)を行ったが、ただし、ECL消光度および完全なECL消光を生じる電位を評価するために、600、1000、および2800mVの電位を使用した。
Ru(bpy)3 2+からRu(bpy)3 3+への酸化は、Ag/AgClに対して+1.3Vで進行することが知られている。生成物を生じるフェノールの酸化は、Ag/AgClに対して約+1.0Vで起こる。予期されたように、Ag/AgClに対して+1.3V未満の電位ではECLがほとんど観測されなかったが、その理由は、これより低い電位ではRu(bpy)3 +2が酸化されないためである。予期されたように、フェノール濃度を高くし、更に電位を高くしたところ、消光の増大が観測されたが、これは、効率的なECL消光を行うためにはフェノールとRu(bpy)3 +2の両方を酸化する必要があるという結論を支持する。
比較例1
メチルビオロゲンカルボキシレートによるRu(bpy)3 +2のECL消光
適切な量のRu(bpy)3Cl2.6H2OをElecsys▲R▼緩衝溶液中に溶解し、0.3μM Ru(bpy)3 2+(発光団として)のpH6.8のストック溶液が得られるように希釈した。マイクロリットル量の水性10mMメチルビオロゲンカルボキシレート(MV+2、1,1-'ジメチル-4,4'-ビピリジニウムカルボキシレートジクロリド)(ECL消光剤として)をストック溶液のアリコート1mLに添加し、MV+2濃度が2〜10mMのサンプルを得た。比較のために、エタノール中に溶解されたマイクロリットル量の1Mフェノール(ECL消光剤として)をストック溶液のアリコート1mLに添加し、フェノール濃度が2〜6mMのサンプルを得た。各サンプルのECLを測定し、ECL強度(任意の単位)を記録した。データを図6に示す。
この実施例は、同等な濃度において、フェノールが、Ru(bpy)3 2+のECL消光の「優れた標準」であるメチルビオロゲンカルボキシレートよりも約10倍効率的に、Ru(bpy)3 2+/TPAH ECL反応シーケンスにおいてマイクロモル濃度のRu(bpy)3 2+のECLを消光することを示している。
実施例12
フェノールによるRu(bpy)3 +2/TPAHのECL消光:不動化された発光団(磁性粒子を介して)および溶液状態の消光剤
この実施例では、不動化された標識化複合体(この場合は、発光団Ru(bpy)3 +2で標識化し続いて常磁性粒子に結合させたオリゴヌクレオチド)の、溶液状態の消光剤(この場合はフェノール)による消光を示す。
β-シアノエチルアミド亜リン酸(beta−cyanoethyl phosphoramidite)の化学を利用し、Perkin Elmer ABI 394 Synthesizer▲R▼を用いて標準的な固相法により、20個のヌクレオチド残基からなる試験用オリゴヌクレオチドを調製した。以下に示すようにビオチン-TEG基とDMT保護ヒドロキシル基(すなわち、-ODMT)の両方を有する市販の(Glen Researchからの)誘導体化された制御細孔ガラス支持体を用いることにより、得られるオリゴヌクレオチドは、3'-末端に繁がれたビオチン基を有する。
Figure 0003951031
標準的方法を用いてオリゴヌクレオチドを合成した。20量体のオリゴヌクレオチド(DMT保護5'-ヒドロキシル基を有する)を合成した後、上記のSynthesizerを用いて最終反応シーケンスを実施したが、ただし、ヌクレオチドモノマー試薬の代わりに以下に示すRu(bpy)3 +2のアミド亜リン酸誘導体を使用した。
Figure 0003951031
このようにして、3'-末端に繋がれたビオチン基と、5'-末端に繋がれたRu(bpy)3 +2部分とを有する20量体のオリゴヌクレオチド(以下に示されている)を得た。
Figure 0003951031
この誘導体オリゴヌクレオチドは、以下のように表すことができる。ただし、RはRu(bpy)3 +2含有基を意味し、Bはビオチン含有基を意味する。
5'-R-AT CGT GCG GTG GTT GAA CTG-B-3'
磁鉄鉱(Fe34)コアーとポリスチレン外側コーティングを含み、約2.8μmのサイズを有する超常磁性粒子(ニューヨーク州 Lake SuccessのDynal Corp製)を、ポリ-ストレプトアビジン(Streptomyces avidiniiの培養体の上清から調製されたタンパク質で、ビオチンに対して高い親和性をもつ結合部位を有する)で被覆した。ストレプトアビジン被覆磁性ビーズの懸濁液に、標識化オリゴヌクレオチド溶液を添加し、結合された標識化オリゴヌクレオチドを有する標識化磁性ビーズを得た。
いくつかのサンプルにフェノールを添加するために、Elecsys▲R▼緩衝溶液をベースとした緩衝液を調製し、27.19g/Lの一塩基性リン酸カリウム(KH2PO4)と0.2g/LのTriton X-100(t-オクチルフェノキシ-ポリエトキシエタノール)と0.05M TPAHとを含むように配合した。4M NaOH水溶液を用いて緩衝溶液のpHを7.0に調節した。緩衝溶液にフェノールを添加する場合、エタノールに溶解した1Mフェノール1.2μLを添加して1mMフェノールとし、4M NaOH水溶液を用いて再びpHを7.0に調節した。
標識化磁性ビーズ(546pmol Ru(bpy)3 +2標識)の懸濁液のアリコート3μLを、1mLの緩衝溶液に添加して実験用ビーズ溶液を得た。この実験用ビーズ溶液をECLセル中に入れ、標識化磁性粒子を作用電極の表面上に固定した。共反応体(およびいくつかの場合にはフェノール)を含有する緩衝溶液をセル中に流し込み、シグナルを発生させるべく適切な電位を印加する。5回の対照実験(フェノールを含まない緩衝液を使用した)および10回の消光実験(フェノールを添加した緩衝液を使用した)に対して、ECLの測定および記録(任意の単位)を行った。対照実験では、フェノールの不存在下において標識化ビーズから任意の単位で約75,000のECLシグナルを観測した。フェノールの存在下では、標識化ビーズに対するECLシグナルは実質的にまったく観測されなかった。
この実施例は、ECL発光団を不動化させた磁性ビーズの形態でも(この場合は、ECL発光団をオリゴヌクレオチドに結合させ、該オリゴヌクレオチドを磁性ビーズに結合させた)、ECL発光団の消光は依然として起こることをはっきりと示している。
実施例13
ベンゾキノンによるRu(bpy)3 +2/TPAHのECL消光:発光団および消光剤の両方を不動化(磁性粒子を介して)
この実施例では、不動化された標識化複合体(この場合は、発光団Ru(bpy)3 +2で標識化し続いて常磁性粒子に結合させたオリゴヌクレオチド)の、該オリゴヌクレオチドに更に結合させた消光剤(この場合はベンゾキノン)による消光を示す。
実施例12に記載したものと同じような方法で、β-シアノエチルアミド亜リン酸の化学を利用し、Perkin Elmer ABI 394 Synthesizer▲R▼を用いて標準的な固相法により、21個のヌクレオチド残基から成る3つのオリゴヌクレオチドを調製した。得られた3つの誘導体化オリゴヌクレオチドを以下に示すが、ここで、RはRu(bpy)3 +2含有基を意味し、Bはビオチン含有基を意味する。
5'-R-CAG TTC CAA CCA ACC GCA CGT-B-3' (13-1-R)
5'-R-CAG TTC CAA CCA ACC GCA CGT-B-3' (13-2-R)
5'-R-CAG TTC CAA CCA ACC GCA CGT LLLLL-B-3' (13-3-R)
上記の式中、は、以下に示されている市販の(Glen Research製の)修飾チミンヌクレオチド残基「アミン修飾C6-dT」を意味するが、これはオリゴヌクレオチド合成時に導入されたものである。
Figure 0003951031
また、上記の式中、は、以下に示されている市販の(Glen Research製の)試薬「Label On」を意味し、通常の標識の結合を可能にするものであるが、これはオリゴヌクレオチド合成時に導入されたものである。
Figure 0003951031
上記の3つの誘導体化オリゴヌクレオチド(それぞれRu(bpy)3 +2基を有する)を対照として使用した。と記された位置およびと記された各位置でベンゾキノン部分を結合させることにより、以下に示されている3つの試験用オリゴヌクレオチドを調製した。
(13-1-RQ)
5'-R-CAG T(Q)TC CAA CCA ACC GCA CGT-B-3'
(13-2-RQ)
5'-R-CAG TTC CAA CCA ACC GCA CGT(Q)-B-3'
(13-3-RQ5
5'-R-CAG TTC CAA CCA ACC GCA CGT L(Q)L(Q)L(Q)L(Q)L(Q)-B-3'
に対して、最初に、保護アミン基(すなわち、-NHC(=O)CF3)の脱保護を行い、続いて、遊離したアミン基を、以下に示されているベンゾキノン誘導体のN-スクシンイミジルエステルと反応させた。に対して、最初に、保護アミン基(すなわち、-NHFMOC)の脱保護を行い、続いて、遊離したアミンを、同じベンゾキノン誘導体のN-スクシンイミジルエステルと反応させた。
Figure 0003951031
456nmにおけるRu(bpy)3 2+部分の吸収(ε=13000M-1cm-1)を用いてUV-VIS吸収分光法により3つの試験用オリゴヌクレオチド(およびそれらの標準)を定量し、ECL分析に対して等量の各試験用オリゴヌクレオチドが使用できるようにした。実施例12の場合と同じような方法で、1/3飽和のストレプトアビジン部位が得られるように、好適な量の各試験用オリゴヌクレオチドをストレプトアビジン被覆磁性ビーズの懸濁液に添加し、結合された標識化オリゴヌクレオチドを有する標識化磁性ビーズを得た(576pmol ビオチン/DNA標識化プローブ)。
各標識化磁性ビーズ懸濁液を検査した。標識化磁性ビーズ懸濁液のアリコート3μLを1mLのElecsys▲R▼緩衝溶液中に入れ、実験用ビーズ溶液を得た。この実験用ビーズ溶液をOrigenアナライザーのECLセル中に入れ、標識化磁性粒子を作用電極の表面上に固定した。共反応体を含有するElecsys▲R▼緩衝溶液をセル中に流し込み、シグナルを発生させるべく適切な電位を印加した。4つの試験用オリゴヌクレオチドのそれぞれについて5回の反復実験を実施し、ECLの測定および記録(任意の単位)を行った。
Ru(bpy)3 2+発光団が消光性ベンゾキノン基から4個のヌクレオチド残基だけ離れた試験用オリゴヌクレオチド13-1-RQに対して観測されたECL強度は、消光性部分をもたない対照オリゴヌクレオチド13-1-Rに対して観測されたものよりも約53%少なかった。
Ru(bpy)3 2+発光団が消光性ベンゾキノン基から21個のヌクレオチド残基だけ離れた試験用オリゴヌクレオチド13-2-RQに対して観測されたECL強度は、消光性部分をもたない対照オリゴヌクレオチド13-2-Rに対して観測されたものよりも約49%少なかった。
Ru(bpy)3 2+発光団が(5つの)消光性ベンゾキノン基から21個のヌクレオチド残基だけ離れた試験用オリゴヌクレオチド13-3-RQ5に対して観測されたECL強度は、消光性部分をもたない対照オリゴヌクレオチド13-3-Rに対して観測されたものよりも約20%少なかった。
この実施例は、ECL発光団と消光性部分の両方を不動化させた磁性ビーズの形態でも(この場合は、両方をオリゴヌクレオチドに結合させ、該オリゴヌクレオチドを磁性ビーズに結合させた)、ECL発光団の消光は依然として起こることをはっきりと示している。
実施例14
ベンゾキノンによるRu(bpy)3 +2/TPAHのECL消光:制限酵素法
この実施例では、ビーズ補足(bead capture)に結合させた制限酵素の使用およびそれに続くECLの検出について示す。この場合、オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションプローブはRu(bpy)3 2+で標識化され、3'-末端にビオチンを有し、5'-末端に消光性部分を有する。実施例12に記載の標準的な固相法を用いて、3'-末端に繋がれたビオチン基を有する2対のオリゴヌクレオチドを合成した。
5'-NAC GCC ACT GGA TCC ACA GTT AGTc-B-3' (14-A-1)
5'- AAC GCC ACT GGA TCC ACA FTT AGTc-B-3' (14-A-2)
5'-T TTG CGC TGA CCT AGG TGT CAA TCA Tc-B-3'(14-B-1)
5'-TTG CGC TGA CCT AGG TGT CCA TCA Tc-B-3' (14-B-2)
各対は異なる例を示しており、与えられた対の各メンバーは、検出対照のDNA標的中の配列と相補的な同じ特異的プローブ配列を含む。各対の第2のメンバーは、消光性部分をもたせる誘導体化は行わず、消光を確認するための比較用として使用されるものであり、この第2のメンバーは、消光性部分の不存在下におけるECL発光を示す。下線を付した残基CCT AGGは、以下で説明されるように、BamHI酵素の制限部位の一部分を識別する。
上記の式中、は、先の実施例13で規定した通りであり、は、以下に示されている市販の(Glen Research製の)試薬「5'-アミノ修飾体」(ただし、MMTは4-モノメトキシトリチルである)を意味するが、これはオリゴヌクレオチド合成時に導入されたものである。
Figure 0003951031
また、上記の式中、Tcは、以下に示されている市販の(Glen Research製の)修飾チミンヌクレオチド残基「カルボキシ修飾dT」を意味するが、これはオリゴヌクレオチド合成時に導入されたものである。
Figure 0003951031
固相支持体からのオリゴヌクレオチドの開裂に続いて、以下のN-ヒドロキシスクシンイミジルエステル誘導体をTcのカルボキシ基と反応させることにより、Ru(bpy)3 2+基を3'-末端に共有結合させる。
Figure 0003951031
次に、実施例13に示されている活性化ベンゾキノン誘導体を用いて、およびのアミノ基を介して、各対の第1のメンバーの5'-末端に消光性部分を共有結合させる。このようにして、以下の2対の誘導体化オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションプローブが得られる。各対の第1のメンバーのECL発光は、消光性部分の存在により消光されるが、これは、消光性部分をもたない対応する第2のメンバーのECL発光と比較することにより示される。
5'-(Q)NAC GCC ACT GGA TCC ACA GTT AGTc(R)-B-3' (14-A-1-BRQ)
5'-AAC GCC ACT GGA TCC ACA FTT AGTc(R)-B-3' (14-A-2-BR)
5'-(Q)T TTG CGG TGA CCT AGG TGT CAA TCA Tc(R)-B-3' (14-B-1BRQ)
5'-TTG CGG TGA CCT AGG TGT CCA TCA Tc(R)-B-3' (14-B-2-BR)
次に、一対の誘導体化オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションプローブの第1のメンバー(例えば、14-A-1-BRQまたは14-B-1-BRQ)を、一本鎖DNAを含有するサンプルに添加する。誘導体化オリゴヌクレオチドプローブは、相補的な標的配列とだけハイブリダイズするであろう。制限酵素BamH1を添加する。この酵素は、以下に示されている特異的二本鎖DNAだけを認識する。
←5'-GGA TCG-3'→
←3'-CCT AGG-5'→
制限酵素は、GG残基間でこの配列を切断し、それぞれ以下に示されている5'-オーバーハングを有する2つの断片を形成する。
←5'-G 5'-GA TCC-3'→
←3'-CCT AG-5' G-5'→
このようにして、各標的DNA配列は開裂イベントを引き起こし、ECL消光部分と消光接触するECL標識をもはやもたない開裂断片が形成される。これらの開裂断片はまた、実施例12の場合と同じようにストレプトアビジン被覆磁性ビーズによる補足(または場合により分離)を可能にするビオチン基(ならびに消光されないECL標識)を有する。この後、ECL発光を測定し、もとのサンプル中の標的DNAの量と相関付ける。もちろん、ビーズ補足は、酵素的開裂の前または後のいずれで行ってもよい。
再度、比較のために、所定の対の第1および第2のメンバーに対して、ハイブリダイゼーションの後かつ酵素的開裂の前にECL発光を測定する。プローブが標的DNAにハイブリダイズした場合、各対の第1のメンバーのECL発光は、消光性部分の存在により消光された状態を保つが、これは、消光性部分をもたない対応する第2のメンバーのECLと比較することによって示される。
F.文献
本発明の関連する技術の現状をより完全に説明すべく、以下に引用されている出版物、特許、および公開特許明細書の開示内容は、引用により本特許の開示内容に含まれるものとする。
Figure 0003951031
Figure 0003951031
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Claims (28)

  1. サンプル組成物中のアナライトを検出する方法であって、
    (a)前記サンプル組成物、前記アナライトの検出のためのECL標識を有する試薬、及び前記ECL標識との消光接触に際して前記ECL標識からのECL発光を減衰させる、少なくとも一のベンゼン部分を含むECL消光部分を有する試薬を含むアッセイ混合物を調製し、
    (b)該アッセイ混合物を作用電極に接触させ、
    (c)該電極に電圧を印加して電気化学発光反応が進行するようにし、
    d)(i)段階(a)で調製したアッセイ混合物、及び
    (ii)ECL標識を含む前記試薬、ECL消光部分を有する前記試薬、及び既知量の前記アナライトを含むアッセイ混合物
    のECL発光の差を測定し、
    e)段階(d)で測定された差を前記サンプル中のアナライトの量と関連付ける段階を含む前記方法。
  2. サンプル組成物中のアナライトを検出する方法であって、
    (a)前記サンプル組成物、ECL標識を有する試薬、少なくとも一のベンゼン部分を含むECL消光部分を有する試薬、及び共反応体を含むアッセイ混合物を調製し、ここで前記共反応体はN-エチルモルホリン、スパルテイン、1,4-ピペラジンビス(エタンスルホン酸)、トリ-n-ブチルアミン、トリエタノールアミン、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、1,4-ジアザビシクロ(2.2.2)オクタン、エチレンジアミン四酢酸、シュウ酸、トリ-n-プロピルアミン、ペルオキソジスルフェート、1-エチルピペリジン、及びジ-n-プロピルアミンから選択され、
    (b)(i)階段(a)で調製したアッセイ混合物、及び
    (ii)ECL標識を含む前記試薬、ECL消光部分を有する前記試薬、及び既知量の前記アナライトを含むアッセイ混合物
    のECL発光の差を測定し、
    (c)段階(b)で測定された差を前記サンプル中のアナライトの量と関連付ける
    段階を含む前記方法。
  3. ECL消光部分が、フェノール部分、キノン部分、ベンゼンカルボン酸部分、及びベンゼンカルボキシレート部分からなる群から選択される少なくとも一の部分を含む請求項1又は2に記載の方法。
  4. ECL消光部分が少なくとも一のフェノール部分を含む請求項1又は2に記載の方法。
  5. ECL消光部分が少なくとも一のキノン部分を含む請求項1又は2に記載の方法。
  6. ECL消光部分が少なくとも一のベンゼンカルボン酸部分を含む請求項1又は2に記載の方法。
  7. ECL消光部分が少なくとも一のベンゼンカルボキシレート部分を含む請求項1又は2に記載の方法。
  8. ECL標識がルテニウムを含む請求項1又は2に記載の方法。
  9. ECL標識がオスミウムを含む請求項1又は2に記載の方法。
  10. ECL標識が多環式芳香族炭化水素を含む請求項1又は2に記載の方法。
  11. アナライトがオリゴヌクレオチドを含む請求項1又は2に記載の方法。
  12. アナライトがDNAを含む請求項1又は2に記載の方法。
  13. アナライトがRNAを含む請求項1又は2に記載の方法。
  14. アナライトがポリペプチドを含む請求項1又は2に記載の方法。
  15. アナライトが抗体を含む請求項1又は2に記載の方法。
  16. アナライトが抗原を含む請求項1又は2に記載の方法。
  17. アナライトが酵素を含む請求項1又は2に記載の方法。
  18. アナライトが酵素基質を含む請求項1又は2に記載の方法。
  19. アナライトが多糖を含む請求項1又は2に記載の方法。
  20. アナライトの既知量がゼロである請求項1又は2に記載の方法。
  21. ECL標識を有する試薬及びECL消光部分を有する試薬が同じ試薬である請求項1又は2に記載の方法。
  22. ECL標識を有する試薬及びECL消光部分を有する試薬が異なる試薬である請求項1又は2に記載の方法。
  23. 段階(a)の前に当初のサンプル組成物中に存在する基質について化学反応を行い、前記サンプル組成物中にアナライトを生成し、ECL発光の差の測定の段階で測定された差を当初のサンプル組成物中の基質の量と関連付ける段階をさらに含む請求項1又は2に記載の方法。
  24. ECL発光の差の測定の段階での測定の前に段階(a)で調製されたアッセイ混合物との化学反応を行う段階をさらに含む請求項1又は2に記載の方法。
  25. ECL消光部分及び共反応体を含み、適当な容器に入れた状態で提供される請求項1に記載の方法に使用するためのアッセイ試薬であって、前記共反応体が、N-エチルモルホリン、スパルテイン、1,4-ピペラジンビス(エタンスルホン酸)、トリ-n-ブチルアミン、トリエタノールアミン、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、1,4-ジアザビシクロ(2.2.2)オクタン、エチレンジアミン四酢酸、シュウ酸、トリ-n-プロピルアミン、ペルオキソジスルフェート、1-エチルピペリジン、及びジ-n-プロピルアミンのうちの少なくとも1つである、前記アッセイ試薬。
  26. ECL消光部分、共反応体、及びECL標識を含み、適当な容器に入れた状態で提供される請求項1に記載の方法に使用するためのアッセイ試薬であって、前記共反応体が、N-エチルモルホリン、スパルテイン、1,4-ピペラジンビス(エタンスルホン酸)、トリ-n-ブチルアミン、トリエタノールアミン、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、1,4-ジアザビシクロ(2.2.2)オクタン、エチレンジアミン四酢酸、シュウ酸、トリ-n-プロピルアミン、ペルオキソジスルフェート、1-エチルピペリジン、及びジ-n-プロピルアミンのうちの少なくとも1つである、前記アッセイ試薬。
  27. 請求項1に記載の方法に使用するためのアッセイ試薬キットであって、請求項25に記載のアッセイ試薬と、前記方法を実施するための説明書とを含む前記キット。
  28. 請求項1に記載の方法に使用するためのアッセイ試薬キットであって、請求項26に記載のアッセイ試薬と、前記方法を実施するための説明書とを含む前記キット。
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