【発明の詳細な説明】
ポリマー
本発明はポリマー、特に細胞へ核酸を送達するためのポリマーに関する。
遺伝子操作および遺伝子工学における多くの研究において、生細胞中で新たな
または修飾された遺伝子を発現させることが求められる。しかしながら、細胞中
へのDNAの取込みは乏しく、一貫した発現を行えない。同様に、遺伝子療法、
アンチセンスオリゴヌクレオチド療法および遺伝子予防接種では、DNAおよび
DNAアナログが、敵対的生物環境下で残存し、生体バリアを通過し、細胞中に
取り込まれて、それらの治療効果を発揮する上で正しい細胞中に移動しうること
を要する。
重要タンパク質の過剰産半、欠損タンパク質の産生または遺伝子産生の欠損コ
ントロールに起因する病状に関与した欠損遺伝子の同定は、疾患の治療に新しい
可能性を提供する。遺伝子レベルで欠損をコントロールすることにより、ある疾
患はこれら疾患の症状を単に治療するよりもむしろ有効に治療できる。これは一
部の場合に達成されており、あるいは新たなコンピテント遺伝子の発現によるか
、望ましくない遺伝子産物の過剰産生を抑制するか、または遺伝子の発現を抑制
することにより今後達成しうると考えられる。これらのプロセスは、新たなDN
Aの挿入によるか、あるいは既存遺伝子の産生を阻害または産生を抑制するDN
AまたはDNAアナログの相補鎖の投与および取込みにより行える〔1〕。これ
ら二つの方法において、修飾された細胞発現を行わせる上で十分なDNAを細胞
に送達することが必要である。しかも、DNAはその変化を行わせる上で正しい
細胞内部分に送達されねばならない。一部のDNAは自然に細胞中に取り込まれ
るが、取込み量は小さくて一貫しておらず、加えられたDNAの発現は乏しい。
DNAは、特にDNAを分解しうる多くの特異的酵素がみられる生物環境下にお
いて、もともと不安定な物質である〔2〕。治療目的において、あるいは研究目
的で新規または修飾遺伝子の発現において、DNAを送達する上でより効率的で
信頼しうる方法が必要とされ、特に代謝作用に対するDNAの防御が高度に望ま
れる。
いくつかの方法がこれらの目的を達成するために提示されてきた。これらには
リポソーム〔3〕、カチオン性脂質〔4〕(不適当だがしばしば‘カチオン性リ
ポソーム’と称されている)の使用と、DNA送達剤としてポリリジン〔5〕ま
たはポリオルニチンのようなカチオン性ポリマーの使用がある。
オリゴヌクレオチドおよびDNA双方の構築物、例えばプラスミドは、ポリリ
ジンのようなポリカチオンとの縮合により、改善された活性を示した。前者の場
合にはポリマーへのオリゴヌクレオチドの化学的接合が要されるが、後者の場合
にもDNAとのポリマーの複合化がこれらの効果を付与する。ポリ‐L‐リジン
(PLL)はDNAをより小さな容量に縮合させ、複合体の過剰正電荷により負
電荷細胞表面と結合して、細胞表面との相互作用と細胞中への取込みを促進させ
ると考えられる。
ポリリジン‐DNA複合体の有効性は、ポリリジンにリガンドをカップリング
させて、細胞への結合および取込みを更に促進させることにより高められた〔6
〕。膜不安定化剤は、細胞の分解性エンドソーム分画からDNAの放出を促進さ
せるために、DNA調製物に加えられた〔7〕。
今まで、いくつかの異なるカチオン性ポリマーがこの研究に用いられてきたが
、利用しうるポリマーはいくつかの点で欠陥がある。この目的で現在用いられて
いる主要ポリマー、ポリ‐L‐リジンは、小さな分子量より上のレベルにおいて
毒性があることが知られており〔8〕、それはDNAと化学量論的に相互作用せ
ず、得られた複合体は信頼性がなく、コントロールが難しく、その性質はDNA
対ポ
リマーの比率に強く依存している。
Ranucci et al.〔15〕はポリ(アミドアミン)の合成について記載しており
、ポリマーへの薬物分子の共有結合を用いたポリマー薬物キャリアとしてそれら
の使用を示唆している。
Ranucci and Ferruti〔12〕は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)お
よびポリ(アミドアミン)(PAA)またはポリ(アミド‐チオエーテル‐アミ
ン)を含んだ加水分解性ブロックコポリマーについて記載している。
Haensler and Szoka〔10〕は、あるサイズのポリアミドアミンカスケードポ
リマー(分岐鎖ポリ(アミドアミン)から作られたデンドリマー)が培養で細胞
のトランスフェクションに有用であるかもしれないと示唆し、直鎖ポリカチオン
が一般的に比較的細胞毒性があり、それら自体さほど効率的でなく、培養での細
胞のトランスフェクションについてそれらの有用性を制限していると述べている
。
Duncan et al.〔16〕は、薬物送達に有用なポリ(アミドアミン)‐Triton
X‐100複合体について記載している。
Katayose and Kataoka〔17〕はPEG‐ポリ(リジン)ブロックコポリマー
が可能性のあるDNA送達系として働くことを示唆している。
高分子およびコロイド粒子へのPEG鎖の結合は、多くの生物医学製品につい
て記載されてきた〔11〕。
DNA送達系としての使用のために、改善された性質を有するポリマーの必要
性が残されている。
本発明の第一の態様によれば、生物学的に活性なポリアニオン性分子を送達す
るための組成物が提供され、その組成物は、主鎖で規則的に配列されたアミドお
よび三級アミノ基を含む主鎖を有した直鎖ポリマーと、そのポリマーに結合され
た上記の生物学的に活性なポリアニオン性分子とを含んでなる。
上記直鎖ポリマーはカチオン性であり、それらの性質に応じて、以下で更に詳
細に記載されているように、そのポリマーはある物理化学的性質を有している。
好ましくは、上記直鎖ポリマーはポリ(アミドアミン)(PAA)を含んでな
る。適切には、上記直鎖ポリマーはポリ(アミドアミン)からなる。PAAは、
β位の求核性三級アミノ官能基と一緒に、それらの主鎖に加水分解性アミド結合
を含んでいるため、水中で分解性である。そのポリマーは、適切な生物活性ポリ
アニオン性分子との相互作用の最適化のために、カチオン基のスペースおよびp
Kaについて完全なコントロールを行える、様々な一級モノアミンまたは二級ビ
スアミンから合成することができる〔9〕。好ましくは、PAAは水溶性であり
、こうして複合体の溶解を促進させる。複合体のそれ以上の溶解性は、親水性P
EG鎖を含むコポリマーの使用により得られる(レファレンス〔9〕は引用する
ことにより本明細書の開示の一部とされる)。
カチオン基のpKaは7〜8であることが好ましい。低pKaのPAAは高p
KaのPAAほどうまくDNAと結合しないことがわかった。PAAのpKaが
約8であれば、更に好ましい。
このように、好ましい態様において、上記直鎖ポリマーはエチレングリコール
またはポリ(エチレングリコール)を更に含んでいる。直鎖ポリマーがポリ(エ
チレングリコール)‐ポリ(アミドアミン)ブロックコポリマーまたはエチレン
グリコール‐ポリ(アミドアミン)ブロックコポリマーであれば、特に好ましい
。
好ましくは、上記直鎖ポリマーは構造〔ポリ(アミドアミン)‐(エチレング
リコール)y〕xのブロックコポリマーであり、すべての位置において、xは1〜
50、yは1〜200である。
更に好ましくは、上記直鎖ポリマーは構造(エチレングリコール)y‐ポリ(
アミドアミン)‐(エチレングリコール)yのブロックコポリマーであり、ここ
で各yは1〜200である。
適切には、直鎖ポリマーは下記式を有するPAA:
(a)
または(b)からなるか、またはそれを含んでなり、あるいは上記直鎖ポリマーは下記式のよ
うなPAA:
(c)
または(d)
あるいは(e)(a)または(b)における
が
に置き換わったPAAを含んでなり、いずれの場合にも、zは0(または適宜に
1)〜70であり、各R1は独立してH、あるいは直鎖または分岐炭化水素鎖‐
CnH2n+1(すべての箇所においてn=1〜4)であり、各R2は独立して直鎖ま
たは分岐アルキレン鎖‐CnH2n‐(すべての箇所においてn=1〜4)であり
、各R3は独立して直鎖または分岐炭化水素鎖‐CnH2n+1(すべての箇所におい
てn=1〜4)であり、各R4は独立して直鎖または分岐アルキレン鎖‐CnH2n
‐(すべての箇所においてn=2〜4)であり、各R5は独立して直鎖または分
岐炭化水素鎖‐CnH2n+1(n=1〜4)であり、各R6は独立して直鎖または分
岐アルキレン鎖‐CnH2n‐(n=2〜4)であり、R7、R8、R9およびR10は
独立してH、あるいは直鎖または分岐炭化水素鎖‐CnH2n+1(すべての箇所に
おいてn=1〜3)である。
好ましくはzは30〜70である。
PAAのMnが10,000より大きく、更に好ましくは15,000より大き
いならば好ましい。
好ましくは、直鎖ポリマーは下記式を有している:
上記式中PAAは上で定義した構造を有してなり、xは1〜50、yは1〜20
0である。
好ましくは直鎖ポリマーは下記式を有している:
上記式中PAAは上で定義したものと同意であり、yは1〜200である。PA
A‐PEGコポリマーでPAAの重合度の好ましさは、PAAポリマーの場合と
同様である(即ち、好ましくはzは30〜70である)。
生物活性ポリアニオン性分子はいずれか適切なこのような分子であるが、好ま
しくは上記分子は負電荷の規則的配列を有している。
負電荷の規則的配列を有する分子が核酸またはその誘導体であるならば、好ま
しい。
分子がヘパリンであるならば、さほど好ましくはない。
核酸またはその誘導体は、DNAでも、またはRNAでもよい。
核酸はアンチセンス核酸でもよい。核酸は、好ましくはアンチセンスオリゴヌ
クレオチドのようなオリゴヌクレオチドである。
分子がオリゴヌクレオチドであるならば、PAAは比較的低い重合度を有する
ことが好ましい。分子が大きなDNAまたはRNA分子であるならば、PAAは
比較的高い重合度を有することが好ましい。
核酸は、下記のように、遺伝子療法、核酸予防接種、アンチセンス療法などに
有用な治療用核酸であることが好ましい。以下で更に詳細に記載されているよう
に、核酸は天然(ホスフェート)ホスホジエステル結合鎖を含んでいても、また
はそれはホスホロチオエートを含んだもののような非天然結合鎖を含んでいても
よい。核酸がDNAまたはその誘導体であるならば、好ましい。
アンチセンスオリゴヌクレオチドとは、相補的核酸配列と特異的に結合しうる
一本鎖核酸である。適切な標的配列と結合することにより、RNA‐RNA、D
NA‐DNAまたはRNA‐DNA二重らせんが形成される。これらの核酸はし
ばしば“アンチセンス”と称されるが、その理由はそれらが遺伝子のセンスまた
はコード鎖と相補的だからである。最近、オリゴヌクレオチドがDNA二重らせ
んと結合している、三重らせんの形成が可能であると証明された。オリゴヌクレ
オチドはDNA二重らせんの主溝(major groove)で配列を認識しうることがわ
かったのである。三重らせんはこうして形成された。これは、主溝水素結合部位
の認識により二本鎖DNAと特異的に結合する配列特異性分子を合成することが
可能なことを示唆している。
明らかに、アンチセンス核酸またはオリゴヌクレオチドの配列は、その機能が
妨げられるようになる遺伝子のヌクレオチド配列を参照して容易に決定できる。
更に別の態様において、標的細胞に送達される核酸はアンチセンスRNAをコ
ードしてなる。
アンチセンスRNAには、タンパク質をコードするmRNA分子とハイブリッ
ド形成して、それからの発現を妨げるか、あるいはプレmRNAまたはtRNA
またはrRNAのような細胞内の別なRNA分子とハイブリッド形成して、遺伝
子からの発現を妨げる、RNA分子がある。
好ましくは、アンチセンスRNAを発現する遺伝子は、そのRNAがmRNA
と相補的であるように適切な向きで、タンパク質をコードするコード配列をプロ
モーター近くに挿入することにより構築される。適切には、アンチセンスRNA
は、癌遺伝子、例えばras、bcl、srcまたは腫瘍サプレッサー遺伝子、
例えばp53およびRbのような、望ましくないポリペプチドの発現を阻止する
。
望ましくないポリペプチドの発現を消失させるよりもむしろその発現を減少さ
せられるならば十分であることは明らかであろう。
アンチセンスRNAとして発現して、他のアンチセンス核酸をデザインするた
めに適したDNA配列が、GenBank およびEMBLのような公にアクセスしうる
データベースから容易に求められることも、更に明らかであろう。
オリゴヌクレオチドは細胞内在ヌクレアーゼにより分解または不活化されやす
い。この問題に対処するため、例えば負電荷を留める改変ヌクレオチド間結合鎖
を有して、天然ホスホジエステル結合鎖が別な結合鎖に代わった、修飾オリゴヌ
クレオチドを用いることが可能である。例えば、Agrawal et al.(1988)Proc.Nat
l.Acad.Sci.USA,85,7079-7083は、オリゴヌクレオチドホスホルアミデートおよ
びホスホロチオエートを用いたHIV‐1の組織培養で、阻止増加を示した。Ag
rawal et al.(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86,7790-7794は、ヌクレオチド配
列特異性オリゴヌクレオチドホスホロチオエートを用いて、早期に感染させたお
よび長期的に感染させた細胞培養物の双方でHIV‐1複製の阻害を示した。Le
ither et al.(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87,3430-3434は、オリゴヌクレオ
チドホスホロチオエートによる、インフルエンザウイルス複製の組織培養におけ
る阻害を報告している。
人工結合鎖を有するオリゴヌクレオチドはin vivo で分解に抵抗することが示
された。例えば、Shaw et al.(1991),Nucleic Acids Res.19,747-750では、未修
飾のオリゴヌクレオチドが、あるキャップ構造により3′末端でブロックされた
ときに、in vivo でヌクレアーゼにもっと抵抗するようになり、未キャップオリ
ゴヌクレオチドホスホロチオエートもin vivo で分解しないことを報告している
。
オリゴヌクレオシドホスホロチオエートを合成するH‐ホスホネートアプロー
チの詳細な記載はAgrawal and Tang(1990),Tetrahedron Letters,31,7541-7544
にみられ、その開示は引用することにより本明細書の開示の一部とされる。オリ
ゴヌクレオシドホスホロジチオエートおよびホスホルアミデートの合成は当業界
で公知である。例えば、Agrawal and Goodchild(1987)Tetrahedron Letters,
28,3539;Nielsen et al.(1988)Tetrahedron Letters,29,2911;Jager et al.(
1988)Biochemistry,27,7237;Uznanski et al.(1987)Tetrahedron Letters,28,
3401;Bannwarth(1988)Helv.Chim.Acta.71,1517;CrosstickandVyle(1989)T
etrahedron Letters,30,4693;Agrawal et al.(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,8
7,1401-1405参照;それらの開示は引用することにより本明細書の開示の一部と
される。合成または産生のための他の方法も可能である。好ましい態様において
、オリゴヌクレオチドはデオキシリボ核酸(DNA)であるが、リボ核酸(RN
A)配列も合成および適用してよい。
本発明で有用なオリゴヌクレオチドは、内在ヌクレオチド分解酵素による分解
に抵抗するようにデザインされていることが好ましい。オリゴヌクレオチドのin
vivo 解は、鎖長が減少したオリゴヌクレオチド分解産物を生じる。このような
分解産物は、それらの全鎖長対合物と比較して、非特異的ハイブリッド形成に関
与しやすく、有効になりにくい。このため、体内で分解に抵抗して、標的細胞に
達しうるオリゴヌクレオチドを用いることが望ましい。本オリゴヌクレオチドは
、例えば結合鎖でホスフェートをイオウに代えて、天然ホスホジエステル結合鎖
の代わりに1以上の内部人工エヌクレオチド間結合鎖を用いることにより、invi
vo で分解にもっと抵抗しうるようになされている。ホスホジエステルヌクレオ
チド間結合鎖の代わりに1以上のこれら結合鎖を有するオリゴヌクレオチドの合
成は、混合ヌクレオチド間結合鎖を有したオリゴヌクレオチドを産生するための
合成経路を含めて、当業界で周知である。
オリゴヌクレオチドは、5′または3′末端ヌクレオチドで“キャッピング”
するかまたは類似した基を導入することにより、内在酵素による伸長に対して抵
抗するようにできる。キャッピング試薬はApplied BioSystems Inc.,FosterCity
,CAから Amino-Link IITMとして市販されている。キャッピング方法は、例えばS
haw et al.(1991),Nucleic Acids Res.19,747-750とAgrawal et al.(1991)
Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88(17),7595-7599に記載されており、その開示は引用
することにより本明細書の開示の一部とされる。
ヌクレアーゼ攻撃に抵抗するオリゴヌクレオチドを作製する別な方法は、引用
することにより本明細書の開示の一部とされるTang et al.(1993),Nucl.AcidsRe
s.21,2729-2735 により記載されたように、それらを“自己安定化”させること
である。自己安定化されたオリゴヌクレオチドはそれらの3′末端にヘアピンル
ープ構造を有していて、ヘビ毒ホスホジエステラーゼ、DNAポリメラーゼIお
よび牛胎児血清による分解に対して増加した抵抗性を示す。オリゴヌクレオチド
の自己安定化領域は相補的核酸とのハイブリッド形成を妨げず、マウスでの薬物
動態および安定性研究では、それらの直鎖対合物と比較して、自己安定化された
オリゴヌクレオチドの増加したin vivo 抗性を示した。
オリゴヌクレオチドはホスホジエステル結合鎖を含んでいることが好ましい。
しかしながら、本発明のポリマーは核酸の緻密化および安定化を助けることが
できて、分解から核酸を防御できると考えられている。
我々は、カチオン性ポリマーのこの一群と、形成される複合体とが、DNA送
達系としての使用にとり、この目的について既に報告された他のカチオン性ポリ
マーと比較して優れた性質を有していることを発見した。
定義されたようなポリマー、特にポリアミドアミンおよびそのコポリマーと、
DNAとの複合体は、DNA対ポリマーの所要比で単純に混合することにより容
易に形成される。常に不溶性であって、100nm〜数μm径のサイズ範囲でコ
ロイド粒子を形成する、ポリ‐L‐リジンおよびDNAの複合体とは対照的に、
PAA‐DNA複合体は一部の条件下で可溶なままである。
PEG含有ポリマーの使用は、可溶性複合体がみられる条件の範囲を増す。通
常、PEG化はスカベンジャーレセプターと細胞との相互作用を減少させて、ひ
いては循環半減期を延ばし、免疫原性応答を減少させる効果を有している。DN
Aとの複合体の場合に、これは血清酵素によるDNAの代謝を減少させることも
予想される。直接DNAに対するよりもむしろポリマーにPEGを結合させた利
点は、親水性PEGが疎水性膜から細胞中へのDNAの取込み、ひいては正しい
細胞内分画への移行を妨げる可能性を減少させることである。しかしながら、P
AAおよびPAA‐PEGの合成では、DNAの取込みと正しい細胞内分画への
移行を更に改善させるために、他の生物活性認識配列の接合もなお行うことがで
きる。
好ましい態様では、ポリマーは生物活性認識シグナルを更に含んでなる。その
シグナルは、組成物、ひいては上記生物活性ポリアニオン性分子のターゲッティ
ング、取込みまたは細胞内局在化を助ける。
適切な上記認識シグナルには、特にトランスフェリンのような、DNA送達系
の結合およびエンドサイトーシスのためのリガンド、例えばE.Wagner,M.Cotten,
R.Foisner and M.L.Bernstiel(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88,4255-4259;
炭水化物残基、例えば肝細胞またはマクロファージを各々標的とするガラクトー
スまたはマンノース残基(G.Ashwell and J.Harford(1982)Ann.Rev.Biochem.5
1,531-54では肝臓の炭水化物特異性レセプターについて記載しており、PLL‐
DNA構築物へのアシアロ‐オロソムコイドの結合による遺伝子ターゲッティン
グにおけるアシアロ糖タンパク質レセプターの使用はG.Y.Wu and C.H.Wu(1988
)Biochemistry,27,887-892に記載されている);C.P.LeamonandP.S.Low(1991)P
roc.Natl.Acad.Sci.USA 88,5572-5576 およびG.Citro,C.Szczylik,P.Ginobbi,G.
Zupi and B.Calabretta(1994)Br.J.Cancer,69,463-464に記載されたような葉
酸レセプター;モノクローナル抗体、特に細胞表面抗原に選択的なもの;高分子
のエンドサイトーシスを媒介するいずれか他のリガンドがある。
これら細胞表面抗原の多くと結合するモノクローナル抗体は既知であるが、い
ずれの場合にもモノクローナル抗体技術に関する現在の技術でほとんどの抗原に
対する抗体が作製できる。抗原結合部分は、抗体の一部(例えばFab断片)で
も、または合成抗体断片(例えば一本鎖Fv断片〔ScFv〕)でもよい。選択
された抗原に対して適切なモノクローナル抗体は公知技術であり、例えば"Monoc
lonal Antibodies:A manual of techniques",H Zola(CRC Press,1988)および
"Monoclonal Hybridoma Antibodies:Techniques and Applications",J GR Hurr
ell(CRC Press,1982)に記載されたものにより作製される。
キメラ抗体はNeuberger et al.(1988,8th International Biotechnology Symp
osium,Part 2,792-799)に記載されている。
適切に作製された非ヒト抗体は公知の手法で、例えばヒト抗体のフレームワー
ク中にマウス抗体のCDR領域を挿入することにより“ヒト化”できる。
ウイルス融合誘導ペプチドおよびアデノウイルス粒子のような適切なエンドソ
ーム破壊物質はJ-P.Bongartz,A-M.Aubertin,P.G.Milhaud and B.Lebleu(1994),N
ucleic Acids Research,22,4681-4688 およびM.Cotten,E.Wagner,K.Zatloukal,S
.Phillips,D.T.Curiel,M.L.Bernstiel(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89,6094
-6098に記載されている。
これらすべての雑誌論文は、引用することにより本明細書の開示の一部とされ
る。
複合体は、ポリマーと、ホスホジエステルおよびホスホロチオエート双方の主
鎖を有する短い一本鎖DNA、および高分子量二本鎖DNAとの間で形成された
。形成された複合体は、マイクロ熱量測定、DNA溶融プロフィール、ゲルシフ
ト電気泳動および光子相関スペクトル測定により特徴付けられた。
生物活性ポリアニオン性分子が治療用核酸のような治療用分子であるならば、
最も好ましい。
治療用核酸には患者にデリバリーすることが有用なあらゆる核酸を含み、核酸
ワクチンも含む。
好ましくは、核酸は遺伝子療法に適している。
一態様において、核酸は直接的または間接的な細胞毒性機能を有した分子をコ
ードしている。“直接的または間接的な”細胞毒性とは、我々は、その遺伝子で
コードされた分子自体が毒性であるか(例えばリシン、腫瘍壊死因子、インター
ロイキン‐2、インターフェロン‐γ、リボヌクレアーゼ、デオキシリボヌクレ
アーゼ、Pseudomonas 外毒素A)、代謝されて毒性産物を形成するか、または
他のものに作用して毒性産物を形成することを意味している。リシンcDNAの
配列は、引用することにより本明細書の開示の一部とされる、Lamb et al.(1985
)Eur.J.Biochem.148,265-270 に開示されている。
例えば、本発明の組成物を用いて、酵素をコードする核酸を患者の癌細胞に送
達することが望ましく、その酵素は比較的無毒性のプロドラッグを毒性薬物に変
換するものである。酵素シトシンデアミナーゼは5‐フルオロシトシン(5FC
)を5‐フルオロウラシル(5FU)に変換し(Mullen et al.(1922)PNAS,89,3
3)、単純ヘルペス酵素チミジンキナーゼは抗ウイルス剤ガンシクロビア(GCV
)またはアシクロビア治療に対して細胞を増感させる(Moolten(1986)CancerR
es,46,5276;Ezzedine et al.(1991)New Biol.3,608)。どの生物、例えばE.col
iまたはSaccharomy cescerevisiaeのシトシンデアミナーゼも用いてよい。
このため、本発明の一態様において、核酸はシトシンデアミナーゼをコードし
てなり、患者には付随的に5FCが与えられる。“付随的に”とは、腫瘍細胞の
形質転換に際して、5FCが上記遺伝子から発現されるシトシンデアミナーゼに
より標的細胞で5FUに変換されるようなときに、5FCが投与されることを意
味する。5FC約0.001〜100.0mg/kg体重/日、好ましくは0.
1〜10.0mg/kg/日の投与量が適切である。
酵素の作用により比較的無毒性の形から細胞毒性形に変換される5FCのよう
な成分は“プロドラッグ”と称される。
別な態様において、標的細胞にデリバリーされた核酸は標的RNAまたはDN
Aを開裂しうるリボザイムであるか、またはそれをコードしてなる。開裂される
標的RNAまたはDNAは細胞の機能に必須なRNAまたはDNAであって、そ
の開裂は細胞死を招くか、あるいは開裂されるRNAまたはDNAは望ましくな
いタンパク質、例えば癌遺伝子産物をコードするRNAまたはDNAであって、
このRNAまたはDNAの開裂は細胞が癌化することを防ぐ。
ここで開示されたウイルスまたはウイルス様粒子のゲノムでコードされたリボ
ザイムは、Cech and Herschlag "Site-specific cleavage of single stranded
DNA",US5,180,818;Altman et al‐Cleavage of targeted RNA by
RNAse P",US5,168,053,Cantin et al."Ribozyme cleavage of HIV
-1 RNA",US5,149,796;Cech et al."RNA ribozyme restriction end
oribonucleases and methods",US5,116,742;Been et al,"RNA rib
ozyme polymerases,dephosphorylases,restriction endonucleases and methods
",US5,093,246;Been et al."RNA ribozyme polymerases,dephosph
orylases,restriction endoribonucleases and methods:cleaves single-stran
ded RNA at specific site by transesterification",US4,987,071
に記載されており、すべて引用することにより本明細書の開示の一部とされる。
本発明のもう1つの態様において、核酸は標的細胞で欠損遺伝子の機能に置き
換わる。
欠損遺伝子により引き起こされる、ヒトを含めた哺乳動物の遺伝疾患は数千あ
る。このような遺伝疾患の例には、CFTR遺伝子に変異があることが知られた
嚢胞性繊維症、ジストロフィン遺伝子に変異があることが知られたDuchenne筋ジ
ストロフィー、HbA遺伝子に変異があることが知られた鎌状赤血球病がある。
多くのタイプの癌は、欠損遺伝子、特にプロト癌遺伝子と、変異をうけた腫瘍サ
プレッサー遺伝子に起因している。
下記表は遺伝子療法の現行ターゲットについて示している。 このリストは遺伝子療法の主要な現在のターゲットを示している。掲載された
疾患の多くは2以上の遺伝子における欠損に起因することがあり、掲載された遺
伝子欠損は現在の研究においてターゲットとされている欠損である。
このため、嚢胞性繊維症の治療に有用な本発明の組成物は、欠損CFTR遺伝
子の機能に置き換わる機能性CFTR遺伝子を含有していることが好ましい。同
様に、癌の治療に有用な本発明のウイルスまたはウイルス様粒子は、欠損プロト
癌遺伝子または腫瘍サプレッサー遺伝子の機能に置き換わる機能性プロト癌遺伝
子または腫瘍サプレッサー遺伝子を含有していることが好ましい。
プロト癌遺伝子の例はras、src、bclなどであり、腫瘍サプレッサー
遺伝子の例はp53およびRbである。
核酸はイントロンを含んでいてもよく、あるいはそれは遺伝子もしくはその断
片、またはcDNAもしくはその断片を含んでいてもよい。
本発明のワクチンにおいて使用に適した核酸には、核酸ワクチンに関するWH
O会議の特別カンファレンス刊行物であるVaccine,Volume 12(16)に記載された
ものがあり、引用することにより本明細書の開示の一部とされる。結核、インフ
ルエンザ、B型肝炎、リーシュマニア症およびHIVの核酸ワクチンが考えられ
ている。
本発明の組成物においてポリマーに結合される核酸、特にDNAは、いかなる
適切なサイズであってもよい。好ましくは、核酸は10〜10百万塩基または塩
基対である。適切には、オリゴヌクレオチドは10〜200塩基、更に適切には
10〜100塩基である。
好ましくは、RNAおよびDNA分子は100〜1百万塩基または塩基対であ
る。
更に好ましくは核酸は20〜1百万塩基または塩基対であり、更に一層好まし
くは核酸は1000〜500,000塩基または塩基対であり、最も好ましくは
核酸は5000〜150,000塩基または塩基対である。
核酸は好ましくはプラスミドDNAであって、超コイル、開環または直鎖プラ
スミドDNAのいずれでもよい。
核酸は非共有結合でポリマーと結合していると考えられる。
本発明の第二の態様によれば、医学上の用途に用いられる、本発明の第一の態
様による組成物が提供される。
本発明の第三の態様によれば、疾患の治療用薬剤の製造のための、本発明の第
一の態様による組成物が提供される。
本発明の第四の態様によれば、本発明の第一の態様による組成物と薬学上有効
なキャリアとを含んでなる医薬組成物が提供される。
処方物は好ましくは単位剤形で供され、製剤業界で周知の方法により製造され
る。このような方法には、活性成分(本発明の組成物)を1種以上の成分からな
るキャリアと一緒にする工程を含んでなる。一般的に、処方物は活性成分を液体
キャリア、微細固体キャリアまたは双方と均一かつ完全に混合して、必要であれ
ば製品を成形することにより製造される。
経口投与に適した本発明による処方物はカプセル、カシェまたは錠剤のような
個別ユニットとして供され、各々が粉末または顆粒、水性液体または非水性液体
中の溶液または懸濁液、または水中油型液体エマルジョンまたは油中水型液体エ
マルジョンとして既定量の活性成分を含有している。活性成分はボーラス、舐剤
またはペーストとして供してもよい。
錠剤は、場合により1種以上の補助成分と共に、圧縮または成形により作って
よい。圧縮錠剤は、場合により結合剤(例えば、ポビドン、ゼラチン、ヒドロキ
シプロピルメチルセルロース)、滑沢剤、不活性希釈物、保存剤、崩壊剤(例え
ば、ナトリウムスターチグリコレート、架橋ポビドン、架橋ナトリウムカルボキ
シメチルセルロース)、界面活性または分散剤と混合して、粉末または顆粒のよ
うな易流動形で活性成分を適切な機械で圧縮することにより製造される。成形錠
剤は、不活性液体希釈物で湿潤された粉末化合物の混合物を適切な機械で成形す
ることにより作られる。錠剤は場合によりコートしてもまたは刻み目をいれても
よく、望ましい放出プロフィールを呈するように様々な割合で、例えばヒドロキ
シプロピルメチルセルロースを用いて、その中の活性成分の緩徐なまたは制御的
な放出を行わせるように処方してもよい。
口内で局所投与用に適した処方物には、香味基剤、通常スクロースおよびアラ
ビアガムまたはトラガカント中に活性成分を含んだロゼンジ;ゼラチンおよびグ
リセリン、またはスクロースおよびアラビアガムのような不活性基剤中に活性成
分を含んだ香錠;および、適切な液体キャリア中に活性成分を含んだ洗口液があ
る。
非経口投与に適した処方物には、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤および所定レシ
ピエントの血液と等張な処方にさせる溶質を含有した水性および非水性無菌注射
液;懸濁剤および増粘剤を含有した水性および非水性無菌懸濁液がある。処方物
は単位用量またはマルチ用量容器、例えば密封されたアンプルおよびバイアルで
供して、使用直前に無菌液体キャリア、例えば注射用水の添加だけを要するフリ
ーズドライ(凍結乾燥)条件下で貯蔵してもよい。直ちに使える注射溶液および
懸濁液は、前記された種類の滅菌粉末、顆粒および錠剤から調製される。
好ましい単位剤形処方物は、活性成分の1日量または単位、1日サブ量または
その適切なフラクションを含有したものである。
特に前記された成分に加えて、本発明の処方物は問題の処方のタイプを考慮し
て当業界で慣用的な他の剤も含有させてよいと理解すべきであり、例えば経口投
与に適したものには香味剤がある。
本発明の第五の態様によれば、上記生物活性ポリアニオン性分子を上記直鎖ポ
リマーと接触させることからなる、本発明の第一の態様による組成物の製造方法
が提供される。
好ましくは、生物活性ポリアニオン性分子と上記直鎖ポリマーは、好ましくは
溶液中で、更に好ましくは水溶液中で単に一緒に混合される。それらは迅速にま
たはゆっくりと一緒に混合される。好ましくは、生物活性ポリアニオン性分子は
核酸、更に好ましくはDNAである。
核酸が用いられるとき、高塩溶液中で核酸およびポリマーを混合して、水に対
して透析することが好ましい。この方法は、>1kbのような大きな核酸分子の
場合に特に好ましい。ポリマーおよび核酸の混合物を加熱して、その混合物をゆ
っくり冷却することも好ましい。好ましくは、混合液は溶液、更に好ましくは水
溶液である。
本発明の第六の態様によればホストに生物活性ポリアニオン性分子を送達する
方法が提供され、その方法は本発明の第一の態様による組成物の有効量をホスト
に投与することからなる。
ホストは、適切には生物活性ポリアニオン性分子で治療される患者である。
ホストは例えばin vitroで培養中の細胞でもよく、またはそれは実験動物でも
よい。
好ましくは、生物活性ポリアニオン性分子は核酸、更に好ましくはDNAであ
る。
ホストが培養中の細胞であるとき、その方法は核酸、好ましくはDNAで細胞
をトランスフェクトまたは形質転換するために用いられる。
本発明の第七の態様によれば、環境中の細胞に生物活性ポリアニオン性分子を
送達する方法が提供され、その方法は本発明の第一面で規定されたような組成物
を上記環境に投与することからなる。
環境とは、治療される患者でも、治療される実験動物でも、または細胞を含有
した培地でもよい。
好ましくは、環境は細胞を含有した培地である。生物活性ポリアニオン性分子
が核酸である場合、細胞は、適切な組成物を培地に投与することにより、この方
法を用いてトランスフェクトまたは形質転換される。
“細胞”には、我々は原核および真核双方の細胞を含めている。このため、細
胞には細菌、酵母、真菌、植物、脊椎動物(例えば、哺乳動物細胞)および無脊
椎動物(例えば、昆虫細胞)の細胞がある。
好ましくは、送達される核酸はDNAである。
好ましくは、この方法において、上記組成物は上記細胞と接触される。
好ましくは、本発明の第五、六および七の態様において記載された方法の場合
には、生物活性ポリアニオン性分子は治療用分子であり、更に好ましくは治療用
分子は核酸を含んでいる。
本発明の第八の態様によれば、多細胞生物が生物活性ポリアニオン性分子の投
与から利益を得られるような多細胞生物の疾患を治療、予防または改善する方法
が提供され、その方法は本発明の第一の態様において規定された組成物を患者に
投与することからなる。
好ましくは、生物活性ポリアニオン性分子は治療用核酸またはその誘導体を含
んでなる。
多細胞生物とは動物、ヒトまたは植物、好ましくは動物、特に哺乳動物、更に
好ましくはヒトである。
したがって、動物またはヒトが患者である。
前記組成物は、いずれか適切な手法で植物に投与される。
本発明の前記組成物またはその処方物は、経口および非経口(例えば、皮下ま
たは筋肉内)注射を含めた常法により患者に投与される。治療は1回投薬または
経時的に複数回投薬からなる。
本発明の組成物は単独で投与することが可能であるが、1種以上の許容される
キャリアと一緒に医薬処方物としてそれを供することが好ましい。キャリアは、
本発明の化合物と適合して、その受容者にとり有害でないという意味で、“許容
”されねばならない。典型的には、キャリアは水、塩水または緩衝液であって、
好ましくはそこでは緩衝剤が無菌かつ無発熱物質となる生理的pH範囲で緩衝化
し
ている。
本発明の第九の態様によれば、式(エチレングリコール)y‐ポリ(アミドア
ミン)‐(エチレングリコール)yのポリマーが提供され、ここで各yは独立し
て1〜200である。
好ましくは、その化合物は下記式を有している:
上記式中PAAは上で定義されたポリ(アミドアミン)であり、各yは独立して
1〜200である。
このポリマーは本発明のすべての前記の態様においてポリマーとして使用でき
、治療される患者へのデリバリ‐用に通常薬物を結合させる上でも有用である。
本発明は、下記図面および例を参考にして更に詳細に記載されている。
図1は、様々なオリゴヌクレオチド:ポリマー比で(a)ポリ‐L‐リジンお
よび(b)PAAとホスホロチオエートオリゴヌクレオチド(15mer)との相
互作用を比較したゲルシフトアッセイについて示している(ゲルに関連して図中
で示されるとき、略語ONはオリゴヌクレオチドを意味し、略語Pはポリマーを
意味する)。
図2はPAAおよびDNA(b)間とポリ‐L‐リジンおよびDNA(a)間
の相互作用を比較する等温滴定マイクロ熱量測定実験の結果を示している。
図3は図2で作成された曲線のリガンド結合特徴の分析を示している。
図4はモル比に対してプロットされたTmを示しており、緩衝剤および塩中に
おけるPLLおよびNG23結合間の差異を示す。
図5はニシン精子DNAの滴定曲線(PAAとDNAとの相互作用)について
示している。
図6はNG30を用いたゲルシフトアッセイの結果を示している。
図7はランダムブロックコポリマ‐NG32(a)およびトリブロックコポリ
マ‐NG33(b)の双方についてホスホロチオエートオリゴヌクレオチドを用
いたゲルシフトアッセイについて示している。
図8はランダムブロックコポリマ‐NG32(a)およびトリブロックコポリ
マーNG33(b)の双方についてニシン精子DNAを用いたマイクロ熱量測定
実験の結果を示している。
図9はフリーDNAと比較したDNAポリカチオン複合体の血清安定性につい
て示している。PLL=ポリ(L‐リジン);PAA=ビスアクリロイルピペラ
ジン‐2‐メチルピペラジン;およびxは重合度である。例1:ポリマーおよびポリマー合成の一般的スキームと後記例において用いられ る分析方法の説明 ポリアミドアミン
直鎖ポリアミドアミンは、ビスアクリルアミドへの一級モノアミン(スキーム
1.a)またはビス(二級アミン)(スキーム1.b)の水素移動重付加反応に
より得る〔9〕:
スキーム1.aスキーム1.b
上記式中xは1〜70である。
各R1は独立してH、あるいは直鎖または分岐炭化水素鎖‐CnH2n+1(すべて
の箇所においてn=1〜4)であり、各R2は独立して直鎖または分岐アルキレ
ン鎖‐CnH2n‐(すべての箇所においてn=1〜4)であり、各R3は独立して
直鎖または分岐炭化水素鎖‐CnH2n+1(すべての箇所においてn=1〜4)で
あり、各R4は独立して直鎖または分岐アルキレン鎖‐CnH2n‐(すべての箇所
においてn=2〜4)である。
好ましくは、xは1〜70である。
レファレンス〔9〕は引用することにより本明細書の開示の一部とされる。
1モルのビスアクリルアミドおよび1モルの一級モノアミンまたは二級ビスア
ミンを水(モノマーの合計g当たり約2〜4ml)またはアルコールの存在下で
混合する。アクリル系モノマーのラジカル重合を避けるために少量のラジカル抑
制剤を加えることが勧められる。窒素雰囲気下で反応を行う方が良いが、厳密に
は不要である。好ましい反応温度は20〜50℃である。反応時間は、反応温度
およびモノマーの性質(アミン窒素の立体障害は重合速度にかなり影響を与える
)に応じて、1〜7日間である。単離は溶媒/非溶媒沈降、または水中で限外ロ
過
または透析により通常行う。PAAの貯蔵安定性を増加させるためには、単離前
に希HClで反応混合液の酸性化によりそれらを塩酸塩に変換した方が良い。ポリ(アミドアミン)‐ポリ(エチレングリコール)ブロックコポリマー
ポリ(アミドアミン)‐ポリ(エチレングリコール)ブロックコポリマー〔1
2〕は、アミノ化PEG、即ち二級アミン単位〔12〕で両末端で官能化された
PEGを、他のアミンと、ビスアクリルアミドの存在下で共重合させることによ
り製造する。実際には、アミン、アミノ化PEGおよびビスアクリルアミドを水
またはアルコールの存在下で一緒に混合するが、そのときアミンおよびアミノ化
PEGのモル合計がビスアクリルアミドのモルと等しくなるように注意する。反
応条件はPAA合成の場合とまさに同様である。単離は水中で限外ロ過または透
析により通常行う。
文献〔12〕は引用することにより本明細書の開示の一部とされる。ポリ(アミドアミン)‐ポリ(エチレングリコール)トリブロックコポリマー
それらは下記からなる2工程操作により製造する:
a)アクリルアミド基で末端キャップされたポリアミドアミンの合成
b)一端において二級アミノ基でアミノ化されたPEGの付加による前者の飽和
第一工程はPAAの合成に関する一般的操作に従い行うが、但し過剰のビスア
クリルアミドを用いる。適度の過剰は、ほぼ希望の長さのPAAを得るために、
段階的重合のFlory's 理論〔13〕に基づき選択する。文献〔13〕は引用する
ことにより本明細書の開示の一部とされる。
第二工程では、過剰ビスアクリルアミドのモル当たり2.1モルのモノアミノ
化PEGを適量の溶媒と−緒に反応混合物に加え、同様の条件下で3〜5日間反
応させる。単離は水中で限外ロ過または透析により通常行う。
単離後、生成物はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)、固有粘度測定およ
び電位差滴定により特徴付けた。
GPC分析は、移動相としてpH8.09のTRIS緩衝液(フロー:1ml/m
in)および230nmで操作するUV検出器を用いて、連結されたTSK‐GE
L G3000PWおよびTSK‐GEL G4000PWカラムを利用するこ
とによりランさせた。GPCクロマトグラムから、数および重量平均分子量(各
々MnおよびMw)をPAAについて意図的に計算された検量線から始めて計算し
〔14〕、固有粘度をUbbelohde 粘度計によりpH8.09のTRIS緩衝液中
30℃で測定した。HClによる電位差滴定はPAAのパーセンテージとPAA
セグメントの分子量を求めるためにコポリマーで行った。文献〔14〕は引用す
ることにより本明細書の開示の一部とされる。DNAとカチオン性ポリマーとの相互作用
DNAとポリアミドアミンポリマーとの相互作用は、オリゴヌクレオチドとの
相互作用により一般的に記載できる。ここに提示された実験作業では、いくつか
の異なるDNAを特徴付けのために用いた。これらは15mer ホスホロチオエー
トオリゴヌクレオチド、ニシン精子DNA、性質上約80%一本鎖である約10
〜30ヌクレオチド鎖長の短鎖長ホスホジエステルオリゴヌクレオチド、および
高分子量の二本鎖ホスホジエステルDNAである子牛胸腺DNAである。下記す
べての作業では、DNA塩基(またはリン酸基)/ポリマーのモノマーにより計
算されるインプットDNA:ポリマー比を参照して、DNAおよびポリマー間の
相対的結合量を測定する。
実験が行われる培地はDNAおよびポリカチオン間の相互作用に対して重要な
作用を有している。相互作用は、塩濃度、緩衝剤イオンおよびイオン化しうる基
のpHに依存している。したがって、実験は、かなり測定し難い生物学的流体に
おいて観察される作用を推測するために、様々な培地で行った。
いくつかの異なる技術を用いて、DNAおよびポリカチオン間の相互作用を調
べた。これらには電気泳動ゲルシフトアッセイ、等温滴定マイクロ熱量測定、D
NA融点の測定、円偏光二色性(CD)および光子相関スペクトル測定(PCS
)がある。ゲルシフト電気泳動
DNAをアガロースゲルの中心ウェルに加えて、電位差をゲルに負荷したなら
ば、DNAは陽極に移動する。カチオン性ポリマーを適用したならば、それは陰
極に移動する。電気的に中性であるおよび/または比較的大きい複合体は、中心
ウェルから動かない。複合体が不完全であるか、または弱く結合しているならば
、それらは複合体の全体電荷に応じて陽極または陰極にもっとゆっくり移動する
。
電気泳動はpH7.6のTrisホウ酸緩衝液中で行う。等温滴定マイクロ熱量測定
事実上すべての化学反応および相互作用は熱の放出または吸収を起こす。十分
に高感度の熱量計によれば、これらの熱変化(エンタルピー)を少量の生物学的
物質でも測定することができる。マイクロシリンジから少量の添加により1成分
を他に対して滴定すると、連続した発熱を起こして、反応が完了したときゼロに
達する。滴定中に放出される熱の分析は、反応の強度、平衡定数および複合化反
応に関する他の情報について尺度を与えることができる。等温滴定マイクロ熱量
測定で提示された結果はTBE緩衝液中で行われたため、それらはゲルシフトア
ッセイと直接比較しうる。DNA融点の測定
熱を二本鎖DNAに加えたとき、DNAは一本鎖に開裂する。これが生じる温
度はDNAの塩基組成に依存し、2つの鎖の相互作用の強度と関連している。こ
の現象は260nmの吸光度でそれに伴う増加により容易に測定できる。吸光度
増加の50%(50%鎖分離)が生じる温度は溶融温度(Tm)として知られて
いる。DNAに結合しているカチオン性ポリマーの存在はDNAを安定化できる
ため、Tmを高める。これらのアッセイも再びTBE中で行った。光子相関スペクトル測定(PCS)
コロイドによるレーザー光の散乱は、コロイドのサイズの正確な測定を行うた
めに分析することができる。この技術は研究された一部の複合体のサイズを評価
するために用いた。
下記例はDNAとポリアミドアミンとの相互作用の特徴付けに関する。例2:BPMP2(ビスアクリロイルピペラジン‐2‐メチルピペラジン)コポ リマー 上記式中xは1〜70である。合成
ビスアクリロイルピペラジン(BAP)(2.718g)14.00mmol)を
0.1402g/ml 2‐メチルピペラジン(2MP)水溶液(10.00m
1、14.00mmol)中に溶解し、蒸留水(5ml)の添加後に反応混合液を2
5℃で5日間放置し、最後に凍結乾燥した。収量:3.58g.GPC保持時間
=825sec.固有粘度=0.45dl/g.Mw=18000.Mn=900
0.実験
ポリアミドアミンとDNAとの相互作用は、安定なホスホロチオエート結合鎖
を有する合成オリゴヌクレオチド15mer を主に用いて特徴付けた。これらの結
合鎖は天然ホスホジエステル結合DNAの場合のように負電荷を帯びている。D
NA送達に適したカチオン性ポリマーとしてPAAの可能性を確立するために、
これらの相互作用をDNA送達に用いられるカチオン性ポリマーの中で最も研究
されているポリ‐L‐リジン(PLL)と比較した。
図1では、様々なオリゴヌクレオチド:ポリマー比で(a)ポリ‐L‐リジン
(PLL)および(b)PAAとホスホロチオエートオリゴヌクレオチド(15
mer)との相互作用を比較した、ゲルシフトアッセイが示されている。サンプル
をアガロースゲルの中心ウェルに適用し、50ボルトで30分間わたり電気泳動
に付した。図1aのポリ‐L‐リジン複合体は、広範囲のヌクレオチド対モノマ
ー比にわたり未複合化DNAまたはポリマーを示していない。これはPLLとD
NAとの間でみられる協同的結合活性におそらく起因しているのであろう。図1
bのPAA/DNA複合体は、ポリマーおよびオリゴヌクレオチドが完全に複合
化しているようにみえる、狭い範囲のDNA:PAA比(1:1〜1:2)を示
している。
これらの相互作用を等温滴定マイクロ熱量測定を用いて調べたとき、相互作用
の正味熱力学的特徴はDNAのポリマー滴定からポリマーの希釈熱を差し引くと
判明する。これらの曲線から、PAAおよびDNA間の相互作用はポリ‐L‐リ
ジンおよびDNAの場合と異なることがわかる(図2&3)。ポリ‐L‐リジン
の場合(図2a)、相互作用ははじめに少量の熱を発してから出熱のピークに至
り、反応はそれほど速く飽和しなかった。これらの結果は協同的結合を強く示唆
している。逆に、PAA(図2b)はもっと単純な熱変化を示し、飽和はもっと
早く達した。このプロフィールもまた多相のようだった。これら曲線のリガンド
結合特徴を分析した(図3aおよび3b)。これらは、PLLとのリガンド結合
が0.5、1.0および1.5のヌクレオチド対モノマー比で相互作用する三相
プロセスであるらしいことを示した。第一相互作用は弱い発熱性であり、第二は
吸熱性であり、第三はもっと強い発熱性であった。逆に、PAAは0.92のオ
リゴヌクレオチド対ポリマー比でDNAと単一の発熱相互作用を与えた。全体的
に、PAA反応はPLL反応よりも発熱性であった。
溶融温度実験では、センスおよびアンチセンスオリゴヌクレオチドをポリマー
と混合した。この混合物中で、センスおよびアンチセンス鎖は結合して、ポリマ
ーと相互作用するDNAの二本鎖ピースを形成する。再び、Tmの変化をある範
囲のオリゴヌクレオチド対モノマー比にわたり測定した。図4では、様々な比率
のポリマー対DNAの相互作用から得られるTm値をTBE緩衝液中で測定した
。PLLはポリマー量を増加させるとオリゴヌクレオチド複合体で安定性増加を
示し、最も安定な複合体は大過剰のポリマーで得られた。しかしながら、PAA
は1:1〜2:1のON:ポリマーのモル比で最大安定性を示した。
いくつか異なるタイプのDNAとPAAとの相互作用をゲルシフト電気泳動お
よび等温滴定マイクロ熱量測定の双方により分析してみると、ニシン精子DNA
および子牛胸腺DNAとの相互作用はホスホロチオエートオリゴヌクレオチドに
ついてみられた場合と類似している。ニシン精子DNAに関する滴定曲線は図5
に示されている。
複合体の粒度はin vivo で複合体の生体内分布を決める上で非常に重要であろ
う。様々な条件下で生産される複合体のサイズは、光子相関スペクトル測定を用
いて測定しており、表1でみられる。PLL複合体は1:1比の後(即ち、電荷
中和後)に通常不溶性であるが、オリゴヌクレオチド:PAA複合体はポリマー
の飽和レベル(即ち1:2 ON:ポリマー比)以下で可溶性であった。通常、
緩衝液中で、PLLとの凝集物は、光子相関スペクトル測定(PCS)により測
定すると、PAAの場合より大きい。水中では、PAA複合体は可溶性であり、
PCSにより検出しえない。
表1:PCSにより測定されたオリゴヌクレオチド‐カチオン性ポリマー複合体
のサイズ
例3:他のポリアミドアミン構造
アミド基のpKと、DNAとの相互作用を支配する荷電アミド基間のスペース
のようなそれらの物理化学的性質に違いがある、様々な構造のポリアミドアミン
を合成することができる。
MBA‐2MP(メチレンビスアクリルアミド‐2‐メチルピペラジン)コポリ
マー上記式中xは1〜70である。合成
N,N′‐メチレンビスアクリルアミド(MBA)(1.177g、7.63
mmol)を4‐メトキシフェノール(6mg)の存在下で0.0780g/ml2
MP水溶液(10.00ml、7.79mmol)中に懸濁し、反応混合液を窒素雰
囲気下暗所中20℃で4日間撹拌した。その後、HClをpH2〜3まで加え、
得られた溶液をMwカットオフ3000の膜を介して水中で限外ロ過し、凍結乾
燥した。収量=1.30g.GPC保持時間=890sec.固有粘度=0.24
dl/g.Mw=8500.Mn=5300.
MBA‐MMA(メチレンビスアクリルアミド‐メチルアミン)コポリマー
上記式中xは1〜70である。合成
MBA(1.668g、10.82mmol)を4‐メトキシフェノール(8mg
)の存在下で0.0343g/ml メチルアミン水溶液(10.00ml、1
1.04mmol)中に懸濁し、反応混合液を窒素雰囲気下暗所中20℃で4日間撹
拌した。その後、HClをpH2〜3まで加え、得られた溶液をMwカットオフ
3000の膜を介して水中で限外ロ過し、凍結乾燥した。収量=0.93g.G
PC保持時間=875sec.固有粘度=0.24dl/g.Mw=9500.M
n=6000.
MBA‐DMEDA(メチレンビスアクリルアミド‐ジメチルエチレンジアミン
)コポリマー
上記式中xは1〜70である。合成
MBA(1.980g、12.84mmol)を4‐メトキシフェノール(11m
g)の存在下で0.148g/ml N,N′‐ジメチルエチレンジアミン水溶
液(7.51ml、12.58mmol)中に懸濁し、反応混合液を窒素雰囲気下暗
所中25℃で4日間撹拌した。その後、HClをpH2〜3まで加え、得られた
溶液をMwカットオフ3000の膜を介して水中で限外ロ過し、凍結乾燥した。
収量=2.80g.GPC保持時間=780sec.固有粘度=0.53dl/g
.Mw=21500.Mn=9500.実験
いくつか異なる構造の結合性能を、ゲルシフトアッセイによりDNAとの結合
性に関して試験した。上記すべての構造は、NG23でみられる場合と類似した
DNAとの結合性を示した。NG30を用いたこれらゲルの1つの例は図6に示
されている。
2つの異なるタイプのPEG‐ポリアミドアミンコポリマーを合成した。最初
にランダムブロックコポリマー(NG32)、第二にトリブロックコポリマー(
NG33)である。これらは例4および5に記載されている。例4:PEG‐BP2MP2〔ポリエチレングリコール‐(ビスアクリロイルピ
ペラジン‐2‐メチルピペラジン)〕ブロックコポリマー NG32=PEG BP2 MP2 構造
:上記式中:
y値は約45であり、xは1〜70であり、
‐PAA‐は:
であり、z値は約6.6である。合成
1,4‐ビス(アクリロイル)ピペラジン(1.003g、5.16mmol)、
2‐メチルピペラジン(0.455g、4.54mmol)、〔18〕に記載された
ように製造されたPEG2000のピペラジニルホルメート(1.536g、0
.69mmol)および4‐メトキシフェノール(5mg)を蒸留水(5ml)に溶
解し、不活性雰囲気下暗所中25℃で3日間放置した。Mwカットオフ10,0
00の膜を介して水中で限外ロ過後、溶液を凍結乾燥した。収量=1.93g.
GPC保持時間=785sec.固有粘度=0.55dl/g.Mw=36000
.Mn=10000.PAAのパーセンテージ=53%(w/w).PAAセグ
メントのMn=2300.例5:PEG‐BP2MP‐PEG〔PEG‐(ビスアクリロイルピペラジン‐ 2‐メチルピペラジン)‐PEG〕トリブロックコポリマー NG33=PEG BP2MP‐PEG 構造
:
上記式中:
y値は約43であり、
‐PAA‐は:
であり、z値は約6.7である。合成
1,4‐ビス(アクリロイル)ピペラジン(1.081g)5.56mmol)、
2‐メチルピペラジン(0.491g、4.90mmol)および4‐メトキシフェ
ノール(7mg)を蒸留水(4ml)に溶解した。得られた溶液を不活性雰囲気
下暗所中25℃で2日間放置し、その後〔18〕に記載されたように製造された
PEG1900モノメチルエーテルのピペラジニルホルメート(2.978g、
1.47mmol)および蒸留水(20ml)を加え、反応混合液を同様の条件下で
更に4日間反応させた。最後に、溶液をMwカットオフ10,000の膜で限外
ロ過し、凍結乾燥した。収量=2.85g.GPC保持時間=875sec.固有
粘度=0.20dl/g.Mw=11400.Mn=3300.PAAのパーセ
ンテージ=37%(w/w).PAAセグメントのMn=2350.実験
ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドを用いたゲルシフトアッセイ(図7)
およびニシン精子DNAを用いたマイクロ熱量滴定分析(図8)の双方が、ラン
ダムブロックコポリマ‐NG32(a)およびトリブロックコポリマ‐NG33
(b)の双方について提示されている。DNAがPEG部分ではなくPAAと相
互作用すると仮定すれば、相互作用はPAA単独の場合と一致するようであり、
そのため複合化はPEG部分の付加により影響されなかった。
光子相関スペクトル測定(例2の表1)では、緩衝液または水中で、PAA‐
PEG複合体について、どのオリゴヌクレオチド対ポリマー比でも、粒子の存在
を検出できなかった。これはDNAデリバリーにとりかなり重要であると考えら
れる。例6:PAAとオリゴヌクレオチドとの相互作用に関する発見の要旨
これらのポリマーは、DNAデリバリー系について改善された性質の複合体を
形成するために、ポリ‐L‐リジンのような他の直鎖カチオン性ポリマーについ
て記載された場合と異なる様式でDNAと相互作用することが示された。結合は
協同的ではなく、PLLのような一級アミンのポリマーでみられる場合よりも狭
い範囲でpH依存性である。DNAに対するPAAの結合は性質上協同的でなく
、もっと限定された範囲のヌクレオチド対モノマー比で生じる。ポリマーのpK
以下では、結合はPLLについて記載された場合よりもPAAの方が強く、しか
もPAAとの複合体はPLLでみられる場合よりも可溶性であり、PEG‐PA
Aポリマーはすべてのヌクレオチド対モノマー比で可溶性のようである。繰返し
ブロックコポリマー構造またはABAブロックコポリマー構造として、ポリマー
中へのPEGの取込みは、ポリマーに対するDNAの結合性に影響を与えること
なく、複合体の溶解性を改善する。複合化は、あるポリアミドアミン構造につい
て、天然(ホスホジエステル)および合成(ホスホロチオエート)DNA双方で
観察される。例7:PEG‐PAA‐PEG‐I 構造
:
上記式中
y値は約43であり、
‐PAA‐は:
であり、z値は約6.4である。合成
:
NG33と同様の操作により、但し2‐メチルピペラジンの代わりにN,N′
‐ジメチルエチレンジアミン(0.527ml、4.90mmol)を用いて製造し
た。収量=2.74g.GPC保持時間=880sec.固有粘度=0.18dl
/g.Mw=10300.Mn=3500.PAAのパーセンテージ=36%(
w/w).PAAセグメントのMn=2170.例8:PEG‐PAA‐PEG‐II 構造
:
上記式中
y値は約43であり、
‐PAA‐は:
であり、z値は約4.2である。合成
:
NG33と同様の操作により、但し1,4‐ビス(アクリロイル)ピペラジン
の代わりにN,N′‐メチレンビスアクリルアミド(0.922g、5.98mm
ol)を用いて製造した。収量=3.08g.GPC保持時間=890sec.固有
粘度=0.15dl/g.Mw=9600.Mn=2500.PAAのパーセン
テージ=26%(w/w).PAAセグメントのMn=1350.例9:PEG‐PAA‐PEG‐III 上記式中
y値は約113であり、
‐PAA‐は:
であり、z値は約6.3である。合成
:
NG33と同様の操作により、但しPEG1900モノメチルエーテルのピペ
ラジニルホルメートの代わりに、〔18〕に記載されたように製造されたPEG
5000モノメチルエーテルのピペラジニルホルメート(7.534g、1.4
7mmol)を用いて製造した。収量=3.83g.GPC保持時間=840sec.
固有粘度=0.30dl/g.Mw=25000.Mn=8000.PAAのパ
ーセンテージ=18%(w/w).PAAセグメントのMn=2200.例10 :PEG‐PAA‐I 上記式中
y値は約45であり、
‐PAA‐は:
であり、z値は約6.9である。合成
:
NG32と同様の操作により、但し2‐メチルピペラジンの代わりにN,N′
‐ジメチルエチレンジアミン(0.489ml、4.54mmol)を用いて製造し
た。収量=2.12g.GPC保持時間=780sec.固有粘度=0.58dl
/g.Mw=42000.Mn=11500.PAAのパーセンテージ=54%
(w/w).PAAセグメントのMn=2310.例11:PEG‐PAA‐I
I
上記式中
y値は約45であり、xは1〜70であり、
‐PAA‐は:
であり、z値は約4.3である。合成
:
NG32と同様の操作により、但し1,4‐ビス(アクリロイル)ピペラジン
の代わりにN,N′‐メチレンビスアクリルアミド(0.854g、5.54mm
ol)を用いて製造した。収量=1.83g.GPC保持時間=795sec.固有
粘度=0.49dl/g.Mw=34000.Mn=10500.PAAのパー
センテージ=42%(w/w).PAAセグメントのMn=1420.例12:PEG‐PAA‐III 構造
:上記式中
y値は約90であり、xは1〜70であり、
‐PAA‐は:
であり、z値は約6.5である。合成
:
NG32と同様の操作により、但しPEG2000のピペラジニルホルメート
の代わりに、〔18〕に記載されたように製造されたPEG4000のピペラジ
ニルホルメート(2.915g、0.69mmol)を用いて製造した。収量=2.
94g.GPC保持時間=760sec.固有粘度=0.64dl/g.Mw=5
8000.Mn=16000.PAAのパーセンテージ=36%(w/w).P
AAセグメントのMn=2250.例13:T24膀胱癌細胞へのHa‐rasアンチセンス配列の投与
ポリマーNG23(PAA‐PEG)をHa‐rasアンチセンスオリゴヌク
レオチドと混合して、前記例におけるようなポリマー‐オリゴヌクレオチド組成
物を形成する。
その組成物を、培養増殖しているT24膀胱癌細胞に加える。
これは、細胞の生存率の減少と、Ha‐rasタンパク質産生の阻害とを導く
。例14:クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子保 有プラスミドによる哺乳動物細胞のトランスフェクション
ポリマーNG23(PAA‐PEG)を、哺乳動物細胞でCAT遺伝子を発現
するプラスミドと混合して、前記例におけるようなポリマー‐DNA組成物を形
成する。
その組成物を、培養増殖している適切な哺乳動物細胞に加える。その細胞をプ
ラスミドでトランスフェクトし、CAT遺伝子発現を14C標識クロラムフェニコ
ールで標準法を用いて測定する。例15:嚢胞性繊維症患者へのCFTR(嚢胞性繊維症貫膜レギュレーター)c DNAの投与
ポリマーNG23(PAA‐PEG)(無菌条件下で製造および保持されてい
る)を、CFTR cDNAをコードしてヒト肺細胞で発現しうる無菌無発熱物
質プラスミドDNAと混合する。得られた組成物を肺への投与に適した無菌無発
熱物質処方物に調製する。その処方物の有効量をCF患者の肺に投与する。例16:フリ−DNAと比較したDNAポリカチオン性複合体の血清安定性
DNAプラスミド(PCT0297L、30μg)をポリマーと最適の比率(
DNA:PAA1:2、DNA:PLLl:1.5)で混合して、DNAポリカ
チオン複合体を形成させる。次いで複合体を新生牛血清に加え、37℃で様々
な時間にわたりインキュベートした(全容量100μl、64%血清)。インキ
ュベート後、サンプル(10μl)をスナップ凍結してこれ以上の分解を防ぎ、
すべてのサンプルを取り出してから、臭化エチジウムで前染色されたアガロース
電気泳動ゲル上に担持させた。ゲル緩衝液は、複合体を解離させてDNAを分子
量に応じて分離させる、pH12.5のNaOH/KCl/EDTA系であった
。バンドはCCDカメラを用いて記録されるUV光ボックスを用いて視覚化させ
、画像は550nmでShimadzu濃度計を用いてスキャンし、未処理複合体と比較
して未分解プラスミドの量の定量的評価を行った。
結果は図9に示されている。フリーDNAはこの系で5分以内に分解される。
ポリ‐L‐リジン複合体はやや防御効果を有しているが、ポリアミドアミンとの
複合体ほど有効ではない。我々は、高い重合度を有するポリアミドアミンほど分
解から守る上で有効であることを、この研究からわかった。参考文献
[1] R.G.Crystal(1995)Science 270,404.
[2] L.Ledoux(1965)Prog.Nucl.Acid.Res.4,231.
[3] R.T.Fraley,C.S.Fornari and S.Kaplan(1979)Proc.Natl.Acad.
Sci.USA 76,3348.
[4] L.Felgner,T.R.Gadek,M.Holm,R.Roman,H.W.Chan,M.
Wenz,J.P.Northrop,G.M.Ringold and M.Danielsen(1987)
Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84,7413.
[5] F.E.Farber,J.L.Melnick and J.S.Butel(1975)Biochim.Biophys.
Acta 390,298.
[6] E.Wagner,M.Zenke,M.Cotten,H.Beug and M.L.Birnstiel
(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.乙μ込487,3410.
[7] C.Plank,B.Oberhauser,K.MechUer.C.Koch and E.Wagner
(1994)J.Biol.Chem.269,12918.
[8] J-P.Clarenc,G.Degols,J.P.Leonetti,P.Milhaud and B.Lebleu
(1993)Anticancer Drug Design 8,81.
[9] P.Ferruti,R.Barbucci and M.A.Marchisio(1985)Polymer26,
1336.
[10] J.Haensler and F.C.Szoka(1993)Bioconjugate Chem.4,372-
379.
[11] M.L.Nucci,R.Shorr and A.Abuchowski(1991)Adv.Drug Del.
Rev.6,133.
[12] E.Ranucci and P.Ferrti(1991)Macromolecules 24,3747.
[13] P.J.Flory,“Principles of Polymer Chemistry”,Cornell University
Press,Ithaca,New ork(1953).
[14] F.Bignotti,P.Sozzani,E.Ranucci and P.Ferruti(1994)
Macromolecules 27,7171.
[15] E.Ranucci,G.Spagnoli,P.Ferruti,D.Sgouras and R Duncan
(1991)J.Biomater.Sci.Polymer Edn 2,303-315.
[16] R.Duncan,P.Ferruti,D.Sgouras,A.Tuboku-Metzgcr,E.
Ranucci and F.Bignotti(1994)J.Drug Targeting 2,341-347.
[17] S.Katayose and K.Kataoka(1994)Salt Lake City Symposium of
the Controlled Release Society(Abstract).
[18] E.Ranucci and P.Ferruti(1990)Synthetic Commun.20,2951.
ポリマーコードおよび構造についての注記
NG23=BPMP2(ビスアクリロイルピペラジン‐2‐メチルピペラジン
)
NG28=MBA‐2MP(メチレンビスアクリルアミド‐2‐メチルピペラ
ジン)
NG29=MBA‐MMA(メチレンビスアクリルアミド‐メチルアミン)
NG30=MBA‐DMEDA(メチレンビスアクリルアミド‐ジメチルエチ
レンジアミン)
NG32=PEG BP2MP2(ポリエチレングリコール‐(ビスアクリロ
イルピペラジン‐2‐メチルピペラジン)ブロックコポリマー
NG33=PEG BP2MP2‐PEGトリブロックコポリマー
略語
PAAはポリ(アミドアミン);PLLはポリ(‐L‐リジン);PEGはポ
リ(エチレングリコール)である。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(72)発明者 スタンリー、スチュワート、デイビス
イギリス国ノッチンガム、ザ、パーク、カ
ベンディッシュ、クレセント、ノース、19
(72)発明者 ファビオ、ビニョッチ
イタリー国ベディッツォーレ、ビアーレ、
リベルタ、78
(72)発明者 パオロ、フェルチ
イタリー国ミラノ、ビア、プルタルコ、13