JP2000352221A - 免震建築物のはね出し板の支持構造 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 はね出し板を軽量化できると共に、それの上
部構造体に対する取付構造も簡素化でき、免震性能への
影響が少なく、制約の少ない建築計画と良好な施工性お
よび低コスト化を実現できる免震建築物のはね出し板の
支持構造を提供すること。 【解決手段】 免震建築物の上部構造体（建物ユニッ
ト）２よりはね出したはね出し板の支持構造において、
はね出し板５は、一端５ａを上部構造体２に接続され、
他端５ｂを地盤側に設けられた玄関ステップ４上に滑り
支持機構１０により相対変位可能に支持され、はね出し
板５の自重およびはね出し板５に作用する荷重の一部を
滑り支持機構１０によって支持するように構成し、滑り
支持機構１０は、地盤側に固定されるベース部材１２
と、ベース部材１２に対して高さ調整される高さ位置調
整部材１３とからなる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明は、免震建築物の出
入り口等に設けられるはね出し板（渡り板）の支持構造
に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】戸建て住宅等において、上部構造物を積
層ゴム支承、転がり支承、滑り支承等により基礎より相
対変位可能に支承し、地震エネルギが上部構造物に作用
することを阻止、緩和し、建物の地震による崩壊を避け
る試みは、既に種々の態様で行われており、このように
支承された建物を免震建築物と云う。この種の免震建築
物は、上部構造物が工場で組立生産されるラーメン構造
の建物ユニットであるユニット式免震建物にも適用され
る。

【０００３】免震建築物では、地震時に上部構造体と地
盤とが相対変位できるよう、上部構造体と玄関ステップ
との間に余裕空間が設けられており、そこを渡って通行
できるように、上部構造体より玄関ステップ上にはね出
したはね出し板が設けられている。このはね出し板は、
玄関ステップ側が突き出し端である片持ち梁をなし、そ
こを通行するものの荷重、建築基準法上の積載荷重に耐
え、最大相対変位に対応した設計のものになっている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】免震建築物において、
はね出し板が設計荷重による曲げ応力に耐え、しかも、
撓みの無い良好な歩行感が得られると云う要求を満たす
ためには、片持ち梁によるはね出し板は、断面設計寸法
が大きくなり、はね出し板の基端における上部構造物と
の取付部の取付強度を相当高くする必要が生じる。この
ため、はね出し板の自重も大きくなり、コストも上昇す
る。特に、ユニット式免震建物等による軽量な戸建て免
震住宅の場合、はね出し板の自重による偏荷重のため
に、免震性能に影響を与えることがあり、また、はね出
し板の取付設計によって建築計画に制約を与えることが
ある。

【０００５】この発明は、上述の如き問題点を解消する
ためになされたもので、はね出し板を軽量化できると共
に、それの上部構造体に対する取付構造も簡素化でき、
免震性能への影響が少なく、制約の少ない建築計画と良
好な施工性および低コスト化を実現でき、しかも耐久性
に優れた免震建築物のはね出し板の支持構造を提供する
ことを目的としている。

【０００６】

【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するた
めに、請求項１に記載の発明による免震建築物のはね出
し板の支持構造は、免震建築物の上部構造体よりはね出
したはね出し板の支持構造において、前記はね出し板
は、一端を前記上部構造体に接続され、他端を地盤側に
設けられた滑り支持機構により相対変位可能に支持さ
れ、前記はね出し板の自重および当該はね出し板に作用
する荷重の一部を前記滑り支持機構によって支持するよ
うに構成し、前記滑り支持機構は、前記地盤側に固定さ
れるベース部材と、該ベース部材に対して高さ調整され
る高さ位置調整部材とから構成されるものである。

【０００７】この構成によれば、はね出し板の他端（突
き出し端）が滑り支持機構により相対変位可能に支承さ
れ、滑り支持機構によってはね出し板の自重および当該
はね出し板に作用する荷重が支持され、高さ位置調整部
材により滑り支持機構の設置高さの調整を行うことがで
き、滑り支持機構とはね出し板の施工高さのばらつきに
拘わらず、滑り支持機構とはね出し板との間に不必要な
隙間を生じることなく、はね出し板の他端が滑り支持機
構により相対変位可能に支承される。

【０００８】請求項２に記載の発明による免震建築物の
はね出し板の支持構造の前記ベース部材は、長孔状また
は切り込み長孔状のアンカー係合部を備えていることを
特徴とするものである。この構成によれば、アンカー係
合部により滑り支持機構の位置調整を容易に行うことが
できる。

【０００９】請求項３に記載の発明による免震建築物の
はね出し板の支持構造の前記滑り支持機構は、前記はね
出し板との対接面に平板状の低摩擦材を付与しているも
のである。この構成によれば、はね出し板の他端（突き
出し端）が滑り支持機構により低摩擦抵抗の下に相対変
位可能に支承され、しかも低摩擦材は平板状であるため
材料使用量を削減でき、加工が容易となり構成を簡素化
できる。

【００１０】請求項４に記載の発明による免震建築物の
はね出し板の支持構造は、前記滑り支持機構のベース部
材はベース板であり、高さ位置調整部材は前記ベース板
に対して高さ調整されるプレート台であることを特徴と
するものである。この構成によれば、滑り支持機構を薄
型に構成することができ、構成を簡単にすることができ
る。

【００１１】請求項５に記載の発明による免震建築物の
はね出し板の支持構造は、前記高さ位置調整部材に球面
継手を介して接続され前記ベース部材に対して傾動可能
な摺動面部材を有し、前記摺動面部材が前記はね出し板
と対接しているものである。この構成によれば、摺動面
部材のはね出し板に対する傾斜に対して摺動面部材がは
ね出し板の傾斜に倣って傾動し、摺動面部材とはね出し
板とが相対変位可能に適切に面接触する。

【００１２】

【発明の実施の形態】以下に添付の図面を参照して、こ
の発明の実施の形態を詳細に説明する。図１、図２はこ
の発明によるはね出し板の支持構造を適用される免震建
築物を示している。免震建築物は、地盤上に免震層１を
介して上部構造体である建物ユニット２を据え置かれ
る。これにより、建物ユニット２は免震層１によって地
盤に対して水平方向に相対変位可能に免震支承される。
建物ユニット２には玄関開口３が設けられており、玄関
開口３の前方部に余裕空間をおいてコンクリート打ちの
玄関ステップ４が地盤上に固定状態で設けられ、上部構
造体である建物ユニット２より玄関ステップ４上に、は
ね出す形態で、はね出し板５が設けられる。

【００１３】なお、図１、図２において、６は玄関ド
ア、７ははね出し板５上に建てられたポーチ柱、８はポ
ーチ柱７により支持された玄関ポーチである。はね出し
板５の基端（一端）５ａは建物ユニット２の床梁等（図
示省略）に接続されており、突き出し端５ｂ（他端）側
は玄関ステップ４上にオーバーラップしている。玄関ス
テップ４には、摺動面部材として上部にフッ素樹脂等の
低摩擦材による低摩擦摺動プレート１５を取り付けられ
た滑り支持体１０が固定設置されている。

【００１４】滑り支持体１０は、玄関ステップ４上にお
いて、はね出し板５の幅方向に複数個設けられており、
はね出し板５の突き出し端５ｂ近傍を低摩擦抵抗で、水
平方向に相対変位可能に支承している。この支持構造に
より、はね出し板５は、玄関ステップ４に対して水平方
向の相対変位を低摩擦抵抗で許容された状態で、自重お
よびはね出し板５に作用する荷重の一部を滑り支持体１
０によって支持され、両持ち梁状になる。

【００１５】従って、片持ち梁の場合に比して、はね出
し板５の断面設計寸法を小さくでき、はね出し板５を軽
量化できると共に、はね出し板５の建物ユニット２に対
する取付構造も簡素化でき、免震性能への影響が少な
く、制約の少ない建築計画と、良好な施工性および低コ
スト化を実現できる。また、滑り支持体１０は、ボール
を使用する転がり支持機構とは異なって転動部を含まな
いから、錆び付きによる動作不良を起こすことがなく、
念入りな防錆対策を講ずる必要がない。

【００１６】つぎに、図３、図４を参照して滑り支持体
１０の具体的構造例を説明する。滑り支持体１０は、一
方に開口する切り込み長孔状のアンカー係合部１１を有
し、アンカー係合部１１に係合するアンカーボルト９に
よって玄関ステップ４上に固定されるベース板１２と、
ベース板１２上に載置されたプレート台１３と、プレー
ト台１３の上面にねじ１４により固定されたフッ素樹脂
板等による平板状の低摩擦摺動プレート１５と、プレー
ト台１３の周りに一体に設けられている矩形フランジ部
１６の４隅に各々貫通形成されたねじ孔１７にねじ係合
している中空の調整ねじ１８と、下端をベース板１２に
固定されて調整ねじ１８の中空部を貫通延在するセンタ
固定ねじ１９と、調整ねじ１８の上方に形成した六角ね
じ部２０を介してセンタ固定ねじ１９の上端にねじ締結
されるロックナット２１により構成されている。なお、
アンカー係合部１１は切り込み長孔状でなく、単なる長
孔状でもよい。

【００１７】この滑り支持体１０では、矩形フランジ部
１６の４隅に設けられている調整ねじ１８を回し、調整
ねじ１８の矩形フランジ部１６よりの突出量を調整する
ことにより、プレート台１３が調整ねじ１８を脚体とし
てベース板１２上に浮き上がり、ロックナット２１を締
め付けることで、ロックされ、低摩擦摺動プレート１５
の高さ位置調整が行われる。

【００１８】これにより、滑り支持体１０とはね出し板
５の施工高さのばらつきに拘わらず、滑り支持体１０と
はね出し板５との間に不必要な隙間を生じることなく、
滑り支持体１０の低摩擦摺動プレート１５がはね出し板
５の下底面に対接し、滑り支持体１０の突き出し端５ｂ
側が、滑り支持体１０より低摩擦抵抗の下に、がたつき
を生じることなく玄関ステップ４に対して円滑に相対変
位可能に支承される。また、矩形フランジ部１６の４隅
に設けられている調整ねじ１８の各々の回転量を個別に
設定することにより、水平性に関する傾斜補正も行え
る。

【００１９】図５は滑り支持体１０の他の実施の形態を
示している。この滑り支持体１０は、前記した実施形態
と同様に、一方に開口する切り込み長孔状のアンカー係
合孔３１を有し、アンカー係合孔３１に係合する図示さ
れていないアンカーによって玄関ステップ４上に固定さ
れるベース部材３２と、ベース部材３２に垂直に形成さ
れたねじ孔３３にねじ係合したねじ部３４を一体に有す
る高さ位置調整部材３５と、ねじ部３４にねじ係合した
ロックナット３６と、半球部３７を一体に有し半球部３
７にて高さ位置調整部材３５の上部に形成された半球凹
部３８に球面継手式に係合した上部可動部材３９と、上
部可動部材３９の上面に固定された平板状の低摩擦材に
よる摺動面部材４０とにより構成されている。このよう
に、摺動面部材４０は高さ位置調整部材３５に球面継手
を介して接続されている。

【００２０】この滑り支持体１０では、高さ位置調整部
材３５をベース部材３２に対して回すことにより、ベー
ス部材３２に対する高さ位置調整部材３５、上部可動部
材３９、摺動面部材４０の高さ位置が調整され、摺動面
部材４０がはね出し板５の下底面に対接する。この対接
に伴い、球面継手運動により、摺動面部材４０のはね出
し板５の下底面に対する傾斜に対して上部可動部材３
９、摺動面部材４０がはね出し板５の下底面の傾斜に倣
って傾動し、水平性に関する傾斜補正が自動的に行わ
れ、摺動面部材４０とはね出し板５とが相対変位可能に
適切に面接触する。

【００２１】これにより、滑り支持体１０とはね出し板
５の施工高さのばらつき、傾斜誤差に拘わらず、滑り支
持体１０とはね出し板５との間に不必要な隙間を生じる
ことなく、滑り支持体１０の摺動面部材４０がはね出し
板５の下底面に対接し、滑り支持体１０の突き出し端５
ｂ側が、滑り支持体１０により低摩擦抵抗の下に、がた
つきを生じることなく玄関ステップ４に対して円滑に相
対変位可能に支承される。

【００２２】

【発明の効果】以上の説明から理解される如く、請求項
１に記載の発明による免震建築物のはね出し板の支持構
造によれば、免震建築物の上部構造体よりはね出したは
ね出し板の支持構造において、はね出し板は、一端を上
部構造体に接続され、他端を地盤側に設けられた滑り支
持機構により相対変位可能に支持され、はね出し板の自
重および当該はね出し板に作用する荷重の一部を前記滑
り支持機構によって支持する構成とし、滑り支持機構
は、前記地盤側に固定されるベース部材と、該ベース部
材に対して高さ調整される高さ位置調整部材とから構成
したので、はね出し板の他端が滑り支持機構により相対
変位可能に支承され、滑り支持機構によってはね出し板
の自重および当該はね出し板に作用する荷重が支持さ
れ、高さ位置調整部材により滑り支持機構の設置高さの
調整を行うことができ、滑り支持機構とはね出し板の施
工高さのばらつきに拘わらず、滑り支持機構とはね出し
板との間に不必要な隙間を生じることなく、はね出し板
の他端が滑り支持機構により相対変位可能に支承するこ
とができる。

【００２３】このため、片持ち梁の場合に比して、はね
出し板の断面設計寸法を小さくでき、はね出し板を軽量
化できると共に、はね出し板の建物ユニットに対する取
付構造も簡素化でき、免震性能への影響が少なく、制約
の少ない建築計画と、良好な施工性および低コスト化を
実現できる。また、滑り支持体は、ボールを使用する転
がり支持機構とは異なって転動部を含まないから、錆び
付きによる動作不良を起こすことがなく、念入りな防錆
対策を講ずる必要がなく、耐久性、長期間に亙る動作信
頼性に優れている。

【００２４】請求項２に記載の発明による免震建築物の
はね出し板の支持構造によれば、ベース部材は、長孔状
または切り込み長孔状のアンカー係合部を介して固定さ
れるものであり、アンカー係合部により滑り支持機構の
位置調整を容易に行うことができる。請求項３に記載の
発明による免震建築物のはね出し板の支持構造によれ
ば、滑り支持機構は、はね出し板との対接面に平板状の
低摩擦材を付与しているため、はね出し板の他端が滑り
支持機構により低摩擦抵抗の下に相対変位可能に支承さ
れ、免震装置への影響を極力少なくすることができ、し
かも低摩擦材は平板状であるため材料使用量を削減で
き、加工が容易となり構成を簡素化できる。

【００２５】請求項４に記載の発明による免震建築物の
はね出し板の支持構造によれば、滑り支持機構のベース
部材はベース板であり、高さ位置調整部材は前記ベース
板に対して高さ調整されるプレート台であるので、滑り
支持機構を薄型に構成することができ、構成を簡単にす
ることができる。請求項５に記載の発明による免震建築
物のはね出し板の支持構造によれば、滑り支持機構は、
高さ位置調整部材に球面継手を介して接続されベース部
材に対して傾動可能な摺動面部材を有し、摺動面部材が
はね出し板と対接している構成としたので、摺動面部材
のはね出し板に対する傾斜に対して摺動面部材がはね出
し板の傾斜に倣って傾動し、傾斜誤差に拘わらず、摺動
面部材とはね出し板とが相対変位可能に適切に面接触す
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明によるはね出し板の支持構造を適用さ
れる免震建築物の要部を示す正面図である。

【図２】この発明によるはね出し板の支持構造を適用さ
れる免震建築物の要部を示す側面図である。

【図３】この発明による免震建築物のはね出し板の支持
構造の一つの具体的構成を示す半断面図である。

【図４】この発明による免震建築物のはね出し板の支持
構造の一つの具体的構成を示す平面図である。

【図５】この発明による免震建築物のはね出し板の支持
構造の他の具体的構成を示す断面図である。

【符号の説明】

１ 免震層 ２ 建物ユニット ３ 玄関開口 ４ 玄関ステップ ５ はね出し板 ９ アンカーボルト １０ 滑り支持体 １２ ベース板 １３ プレート台 １５ 低摩擦摺動プレート １７ ねじ孔 １８ 調整ねじ １９ センタ固定ねじ ２１ ロックナット ３２ ベース部材 ３５ 高さ位置調整部材 ３６ ロックナット ３７ 半球部 ３８ 半球凹部 ３９ 上部可動部材 ４０ 摺動面部材

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 免震建築物の上部構造体よりはね出した
   はね出し板の支持構造において、 前記はね出し板は、一端を前記上部構造体に接続され、
   他端を地盤側に設けられた滑り支持機構により相対変位
   可能に支持され、前記はね出し板の自重および当該はね
   出し板に作用する荷重の一部を前記滑り支持機構によっ
   て支持するように構成し、前記滑り支持機構は、前記地
   盤側に固定されるベース部材と、該ベース部材に対して
   高さ調整される高さ位置調整部材とから構成されること
   を特徴とする免震建築物のはね出し板の支持構造。
2. 【請求項２】 免震建築物の上部構造体よりはね出した
   はね出し板の支持構造において、 前記はね出し板は、一端を前記上部構造体に接続され、
   他端を地盤側に設けられた滑り支持機構により相対変位
   可能に支持され、前記はね出し板の自重および当該はね
   出し板に作用する荷重の一部を前記滑り支持機構によっ
   て支持するように構成し、前記滑り支持機構はベース部
   材を備え、該ベース部材は、長孔状または切り込み長孔
   状のアンカー係合部を備えていることを特徴とする免震
   建築物のはね出し板の支持構造。
3. 【請求項３】 免震建築物の上部構造体よりはね出した
   はね出し板の支持構造において、 前記はね出し板は、一端を前記上部構造体に接続され、
   他端を地盤側に設けられた滑り支持機構により相対変位
   可能に支持され、前記はね出し板の自重および当該はね
   出し板に作用する荷重の一部を前記滑り支持機構によっ
   て支持するように構成し、前記滑り支持機構は前記はね
   出し板との対接面に平板状の低摩擦材を付与しているこ
   とを特徴とする免震建築物のはね出し板の支持構造。
4. 【請求項４】 前記滑り支持機構のベース部材は、ベー
   ス板であり、高さ位置調整部材は、前記ベース板に対し
   て高さ調整されるプレート台であることを特徴とする請
   求項１に記載の免震建築物のはね出し板の支持構造。
5. 【請求項５】 前記滑り支持機構は、前記高さ位置調整
   部材に球面継手を介して接続され前記ベース部材に対し
   て傾動可能な摺動面部材を有し、該摺動面部材が前記は
   ね出し板と対接していることを特徴とする請求項１に記
   載の免震建築物のはね出し板の支持構造。