JP2000340097A - 含浸形カソード及びその製造方法 - Google Patents

含浸形カソード及びその製造方法

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JP2000340097A
JP2000340097A JP14663999A JP14663999A JP2000340097A JP 2000340097 A JP2000340097 A JP 2000340097A JP 14663999 A JP14663999 A JP 14663999A JP 14663999 A JP14663999 A JP 14663999A JP 2000340097 A JP2000340097 A JP 2000340097A
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metal porous
impregnated
emitting substance
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Ikumitsu Nonaka
育光 野中
Tadanori Taguchi
貞憲 田口
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Hitachi Ltd
Original Assignee
Hitachi Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】動作初期から所望の安定した特性を有し、安定
した熱電子放出効率特性を有する長寿命の含浸形カソー
ドを得る。 【解決手段】高純度タングステン粉粒体101、10
2、103、・・・111などの高融点金属を圧縮整形
し焼結して得られた高融点金属多孔質基体1に、熱電子
放出物質3(301、302、・・・・305)を含浸
してなり、高融点金属多孔質基体1と電子放出物質3と
の間に酸化膜2(201、202、203、・・・・2
06)を介在させた。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、OA機器端末用
や、投射形を含めたTVセット用等のブラウン管や、放
送用の撮像管等の陰極線管に係り、特にこれら陰極線管
に使用される長寿命で終始安定した高電流密度特性が得
られる含浸形カソ−ド及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】この種の陰極線管、例えばOA機器端末
用カラ−陰極線管は一般に蛍光体を塗布したパネルと、
電子銃を収容するネック、および上記パネルとネックを
連接するファンネルとからなる真空外囲器を有する。
【0003】上記した陰極線管に用いられる電子銃で
は、その構成部品で有る陰極構造体として、含浸形カソ
−ドを用いたものが知られている。この含浸形カソ−ド
は、電子放出物質を基体金属に塗布するタイプの酸化物
カソードに比較して、高密度電流で長時間の使用が可能
であり、高電流密度の陰極に適している。
【0004】この様な含浸形カソ−ドは、高融点金属の
タングステン(W)やモリブデン(Mo)からなる高融
点金属粉末集積体を圧縮整形し焼結して高融点金属多孔
質基体を形成し、この高融点金属多孔質基体に、酸化バ
リウム(BaO)と酸化カルシウム(CaO)およびア
ルミナ(Al2 3 )で構成される電子放出物質つま
り、バリウム・カルシウム・アルミネートを含浸させた
ものや、さらに電子放出特性を向上させるために、前記
高融点金属多孔質基体の電子放出面となる部分の表面上
にオスミウム(Os)、ルテニウム(Ru)の一種、あ
るいはこれらの合金物質からなる被覆膜を備えたもの等
があり、この種の含浸形カソ−ドは、高輝度で、且つ高
解像度特性を必要とする前記OA機器端末用をはじめ大
型TV用等に使用するブラウン管や、撮像管等の陰極線
管に使用されて、これらの陰極線管の必要特性に応えら
れる高い熱電子放出電流密度を有し、しかも、その高電
流密度特性が数万時間と言った長時間にわたって持続で
きる特性を有している。
【0005】この含浸形カソ−ドは、常用動作温度が1
000〜1100゜Cb(輝度温度表示)と言った高温
を必要としている為に、構造体としては、信頼性を考え
て各構成部材は互いに溶着固定する構成が知られている
(例えば特許公報第2735955号公報参照)。
【0006】図8は含浸形カソ−ドを用いた陰極構造体
の一例を示す概略的断面図で、このような含浸形カソ−
ドを持つ陰極構造体は、一般には次のような方法で製造
される。
【0007】まず、タングステン、モリブデンなどの高
融点金属粉末をバインダーと共に造粒後圧縮整形し、焼
結して高融点金属多孔質基体81を得る。一方、カップ
状ホルダ−82、スリーブ83、ヒータ84はそれぞれ
公知の工程を通じて製造される。
【0008】このカップ状ホルダ−82に、高融点金属
多孔質基体81をその電子放出面81aの反対側の面8
1bが前記カップ状ホルダ−82の内側底面82aに対
面するように挿入し、この高融点金属多孔質基体81を
カップ状ホルダ−82の内側底面82aに強く圧着し、
その状態でレーザ溶接の手段でカップ状ホルダ−82の
外側底面82bにレーザビームを当て、両者をスポット
溶接により溶着する。この時、数点、例えば4〜6個程
度の溶接部位SW1を形成するのが望ましい。この結
果、前記高融点金属多孔質基体81は、電子放出面81
aとなる面を除くほぼ全表面を前記カップ状ホルダ−8
2で覆われた構造となる。
【0009】次いで、前記高融点金属多孔質基体81
に、バリウム・カルシウム・アルミネートの電子放出物
質85を接触させ、水素又は真空雰囲気中で前記電子放
出物質85を溶融し、これを前記高融点金属多孔質基体
81に含浸させる。含浸完了後にショットピーニング
(shot peening)法で高融点金属多孔質基体81の表面
等に付着した余剰の含浸残留物を除去し、前記カップ状
ホルダ−82で保持された前記高融点金属多孔質基体8
1と前記電子放出物質85とからなる含浸形カソ−ド8
6を形成する。
【0010】次にこのカップ状ホルダ−82と含浸形カ
ソ−ド86の結合体をスリーブ83の一端側83aに挿
入した後、レーザビーム溶接または抵抗溶接によりスリ
ーブ83の側面を介して溶接固定する。SW2はその際
の溶接部位を示す。87は陰極構造体である。
【0011】さらに電子放出特性を向上させるために、
前記高融点金属多孔質基体81に前記電子放出物質85
を含有した状態で電子放出面81aの表面上にオスミウ
ム(Os)、ルテニウム(Ru)の一種、あるいはこれ
らの合金物質からなる被覆膜(図示せず)を備えたもの
もある。
【0012】この様な陰極構造体87のスリーブ83内
に、ヒ−タ84を配置し、含浸形カソ−ド86を動作さ
せるに必要な1000゜Cb(輝度温度表示)程度の高
温に保持して使用している。
【0013】ところで、含浸形カソードからの熱電子放
出の動作機構は次のように考えられる。
【0014】まず、含浸形カソードを1000〜115
0゜Cbの高温に加熱する。そこで、含浸されたバリウ
ム・カルシウム・アルミネートの熱電子放出物質と高融
点金属多孔質基体とが、その接触面で化学反応を起こ
し、Ba原子が生成される。生成されたBa原子は、常
に含浸形カソードの電子放出面上に供給され,これによ
って出来る双極子モーメントの作用により、金属の仕事
関数を減少させ、上記加熱条件の1000〜1150゜
Cbでも熱電子流が得られる。これは、高融点、高仕事
関数を有するOsとかRu、更には、それらの合金とい
った金属の被覆膜を有する構成では前記仕事関数の減少
がより顕著となる。
【0015】図9は含浸形カソ−ドを有する陰極構造体
の強制評価寿命条件における動作時間と飽和電流密度の
関係を示すグラフ図で、図8に示す陰極構造体を用い、
これとアノード(図示せず)とを組み合わせて二極真空
管とし、アノードに170Vの電圧を印加し、一方ヒ−
タに通電して前記含浸形カソードを1150゜Cbの高
温で連続動作させ、この条件での経過時間とその経過時
間での1000゜Cbの高温における熱電子放出能力
(零電界での飽和電流密度:A/cm2 )の推移を線L
0 で示したものである。
【0016】この図9の線L0 から明らかなように、こ
のような含浸形カソードを使用した陰極構造体では、初
期から2千時間迄に飽和電流密度が徐々に増大し、初期
値の1.30倍も変動してやっと安定するという特性を
有している。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】上記の様に、従来の含
浸形カソードを使用した陰極構造体では、飽和電流密度
が安定するのに長時間を要し、しかも初期値の1.30
倍も変動するもので、このような陰極構造体を持つ陰極
線管では、調整電圧特性が変動し、陰極線管としては動
作不能と言った致命的欠陥の生ずる恐れも有り、またO
A機器端末用やTVセット用等に用いられるカラ−陰極
線管の場合、色バランスを大きく崩し、画質を著しく損
ねると云う問題も有った。
【0018】本発明の目的は、この様な従来技術の問題
点を解消し、初期から所望の安定した特性を有し、しか
も、長寿命の含浸形カソード及びその製造方法を提供す
ることにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明は、高融点金属粉末集積体を圧縮整形し焼結
して得られた高融点金属多孔質基体に、バリウムを含む
アルカリ土類金属酸化物とアルミナとの化合物を主成分
とする電子放出物質を含浸して成る含浸形カソードであ
って、前記高融点金属多孔質基体と前記電子放出物質と
の間に酸化膜を介在させた点に特徴を有する。
【0020】本発明の典型的な構成を列挙すれば下記の
通りである。すなわち、 (1)高融点金属粉末集積体を圧縮整形し焼結して得ら
れた高融点金属多孔質基体に、電子放出物質を含浸して
なる含浸形カソードであって、前記高融点金属多孔質基
体と前記電子放出物質との間に酸化膜を有する事とし
た。
【0021】(2)高融点金属粉末集積体を圧縮整形し
焼結して得られた高融点金属多孔質基体に、電子放出物
質を含浸してなる含浸形カソードの製造方法であって、
前記高融点金属多孔質基体にバリウムを含むアルカリ土
類金属酸化物とアルミナとの混合化合物を主成分とする
電子放出物質を含浸する工程と、前記電子放出物質を含
浸した前記高融点金属多孔質基体から余剰の前記電子放
出物質を除去する工程と、前記電子放出物質を含浸した
前記高融点金属多孔質基体を真空中で熱処理する工程と
を有し、前記高融点金属多孔質基体を形成した後、前記
電子放出物質を含浸する迄に前記高融点金属多孔質基体
を酸化する工程を含む事とした。
【0022】上記(1)、(2)の構成によれば、高融
点金属多孔質基体の表面の酸化に伴い、そこに取り込ま
れた酸素原子が、反応開始時、触媒として働き、バリウ
ム・カルシウム・アルミネートから成る電子放出物質と
の化学反応をスムーズに行い、動作(使用)開始から経
過時間に関係なく反応速度を一定に保持し、且つ、含浸
形カソードからの電子放出に必要、且つ、十分なBa原
子をカソード面に供給し続けることが出来、初期から安
定した特性を得る事が出来る。
【0023】(3)高融点金属粉末集積体を圧縮整形し
焼結して得られた高融点金属多孔質基体に、電子放出物
質を含浸してなる含浸形カソードの製造方法であって、
前記高融点金属多孔質基体にバリウムを含むアルカリ土
類金属酸化物とアルミナとの化合物を主成分とする電子
放出物質を含浸する工程と、前記電子放出物質を含浸し
た前記高融点金属多孔質基体から余剰の前記電子放出物
質を除去する工程と、前記電子放出物質を含浸した前記
高融点金属多孔質基体を真空中で熱処理する工程とを有
し、前記高融点金属多孔質基体を形成した後、前記電子
放出物質を含浸する迄に前記高融点金属多孔質基体を酸
化する工程と、この酸化した前記高融点金属多孔質基体
に前記電子放出物質を含浸した後余剰の前記電子放出物
質を除去し前記電子放出物質を含浸した前記高融点金属
多孔質基体のその電子放出面に高融点、高仕事関数を有
する物質の被覆膜を形成する工程を含む事とした。
【0024】この構成によれば、高融点金属多孔質基体
の表面の酸化に伴い、そこに取り込まれた酸素原子が、
反応開始時、触媒として働き、バリウム・カルシウム・
アルミネートから成る電子放出物質との化学反応をスム
ーズに行い、動作(使用)開始から経過時間に関係なく
反応速度を一定に保持し、且つ、含浸形カソードからの
電子放出に必要、且つ、十分なBa原子をカソード面に
供給し続けることが出来、初期から安定した特性を得る
事が出来ると共に、含浸形カソード表面の電子放出面に
オスミウム(Os)、ルテニウム(Ru)等の高融点、
高仕事関数を有する物質の被覆膜を形成したことによ
り、前記被覆膜の物質と高融点金属多孔質基体のタング
ステンの様な高融点金属、更に微量の酸素の相互作用に
より、Ba原子と成す双極子モーメントがより一層大き
くなり、更に高い飽和電流密度値を得ることが可能とな
る。
【0025】(4)前記高融点金属多孔質基体を酸化す
る工程は、大気中、400゜C以下の条件で実施するこ
ととした。
【0026】(5)前記高融点金属多孔質基体を酸化す
る工程は、大気中、200゜C〜400゜Cの条件で実
施する事とした。
【0027】上記(4)、(5)の構成によれば、前記
高融点金属多孔質基体の金属表面への酸素原子の取り込
みを適正に制御でき、このことが、バリウム・カルシウ
ム・アルミネートから成る電子放出物質の早期枯渇現象
を防止し、長寿命特性を保証できる。
【0028】(6)前記電子放出面に形成する被覆膜
は、オスミウム(Os)とルテニウム(Ru)の合金物
質からなる事とした。
【0029】この構成によれば、含浸形カソード表面の
電子放出面が、オスミウム(Os)、ルテニウム(R
u)、前記高融点金属多孔質基体のタングステン等の金
属、更に微量の酸素の4元固溶体物質となり、Ba原子
と成す双極子モーメントがより一層大きくなって、更に
大きな飽和電流密度値を得ることが出来る。
【0030】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につ
き、実施例を参照して詳細に説明する。
【0031】図1は本発明の含浸形カソードの一実施例
を説明するための陰極構造体の一例の概略断面図であ
る。又、図2(a)は図1に示す本発明に成る含浸形カ
ソードの一実施例の断面図、図2(b)は図2(a)の
“A”部拡大断面図を示したものである。
【0032】これらの図において、1は高融点金属多孔
質基体、2は酸化膜で、この酸化膜2は前記高融点金属
多孔質基体1内に含浸された電子放出物質3との間に介
在している。4は被覆膜で、この被覆膜4は高融点、高
仕事関数を有する物質からなり前記高融点金属多孔質基
体1の電子放出面1aに形成されている。5は含浸形カ
ソードで、この含浸形カソード5は前記高融点金属多孔
質基体1、酸化膜2、電子放出物質3及び被覆膜4から
構成されている。6はカップ状ホルダ−で、前記含浸形
カソード5を収容固着している。7はスリーブで、一端
側7aで前記含浸形カソード5を収容固着しているカッ
プ状ホルダ−6を収容固着し、他端側7bでディスク8
と固着している。9はヒータ、10はこれらの組合せ体
からなる陰極構造体である。
【0033】次に、これらの図1及び図2(a)、
(b)を用いて本発明の含浸形カソードの製造方法の一
実施例の詳細を説明する。
【0034】まず、高融点金属粉末として粒径3〜10μ
mの高純度タングステン粉粒体101、102、10
3、・・・111を用い、その所要量を、アクリル系の
バインダーと共に長時間かけロ−リングを行い、扱いや
すい大きさに造粒作業を行う。こうして造粒したもの
を、所定量秤取り、専用プレス整形機を用いて所定の圧
力で、外径寸法1.30mm、厚み0.55mmのタブ
レット状に整形する。この時の圧力は、焼結後のタング
ステンからなる高融点金属多孔質基体1の空孔率が20
%となるように選ぶ。前記タブレット状とした後、水素
雰囲気中で600℃、1時間加熱して前記バインダーを
取り除き、その後、本焼結として水素雰囲気で1200
℃、1時間の加熱処理を行い、タングステンからなる高
融点金属多孔質基体1を得る。
【0035】次に、この焼結体のタングステンからなる
高融点金属多孔質基体1を大気中、400℃以下の温度
で熱処理し、前記タングステンからなる高融点金属多孔
質基体1を酸化させ、酸化膜2(201、202、20
3、・・・・206)を得る。この酸化のための処理条
件、即ち後述する目的に対し最も優れた特性を示す処理
条件は、大気中、200〜400℃の範囲内である。
又、酸化膜2の厚さは150Å〜1200Å程度が望ま
しい。
【0036】次に、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、酸
化アルミニウムをモル比で4:1:1の割合で秤取り、
更に、瑪瑙乳鉢で十分に混合したものを、酸化膜201
〜206を有するタングステンからなる高融点金属多孔
質基体1と混ぜ合わせ、モリブデン(Mo)容器に入れ
て水素雰囲気中で加熱する。この時、1900゜Cの高
温で加熱すると上記炭酸塩の分解とバリウム・カルシウ
ム・アルミネートからなる熱電子放出物質3(301、
302、・・・・305)の生成、溶融が起こり、酸化
膜201〜206を有するタングステンからなる高融点
金属多孔質基体1の空孔部に含浸させる。含浸作業後、
前記タングステンからなる高融点金属多孔質基体1の周
辺に付着した余剰の含浸残留物は、温水中で超音波洗浄
により除去する。
【0037】次に、洗浄後乾燥させた後、電子放出面1
aとなる部分に、高融点、高仕事関数を有する物質であ
るオスミウム(Os)とルテニウム(Ru)を、85w
t%のオスミウム(Os)と15wt%のルテニウム
(Ru)の合金からなる被覆膜4を電子ビーム蒸着方法
で設ける。
【0038】次に、以上の様にして得られたものを7×
10-7Torrの高真空中で、1200゜C、2時間の
熱処理を行い含浸形カソード5を製造する。前記高真
空、高温処理工程を行なう事で、含浸形カソード表面の
電子放出面が、Os、Ru、高融点金属多孔質基体金
属、更に微量の酸素の4元固溶体物質となり、Ba原子
と成す双極子モーメントが一層大きくなり、更に高い飽
和電流密度値が可能となる。
【0039】なお、高融点金属粉としては、タングステ
ンに限定されるものではなく、モリブデン(Mo)にタ
ンタル(Ta)やニッケル(Ni)、その他これに類す
るもの、更にはそれらの合金でも同様の効果が得られ、
又、被覆膜もOs−Ru合金に限ったものではなく、そ
れぞれ単独でも、またIr(イリジウム)、Sc(スカ
ンジウム)等の単独、合金、ないしは酸化物を含めた物
質でも同様の効果が得られる。
【0040】また他の実施例としては、前記実施例では
電子放出面1aとなる部分に、85wt%のオスミウム
(Os)と15wt%のルテニウム(Ru)の合金から
なる被覆膜4を形成したが、この被覆膜を形成しない構
造でも良いことは勿論である。
【0041】この様に形成された含浸形カソードを、カ
ップ状ホルダ−、スリーブ等と組み合わせて前述のよう
な陰極構造体を構成している。
【0042】図3は含浸形カソ−ドを有する陰極構造体
の強制評価寿命条件における動作時間と飽和電流密度の
関係を示すグラフで、本発明の含浸形カソードの製造工
程において高融点金属多孔質基体の酸化処理を、それぞ
れ大気中、200゜Cで行ったもの、同じく400゜C
のもの、500゜Cのもの、更には600゜Cのものと
4種類に分けて熱処理し、前記図1及び図2(a)、
(b)に示す構成とした4種類のものをそれぞれアノー
ド(図示せず)と組み合わせて二極真空管とし、アノー
ドに170Vの電圧を印加し、一方ヒ−タに通電して前
記4種類共各含浸形カソードを1150゜Cbの高温で
連続動作させ、この条件での経過時間とその経過時間で
の1000゜Cbの高温における熱電子放出能力(零電
界での飽和電流密度:A/cm2 )の推移を実験的に得
たものである。
【0043】図3においてL2 は200゜C、L4 は4
00゜C、L5 は500゜C、L6は600゜Cで処理
したものをそれぞれ示す。又、L0は前記図9に示した
従来の特性を比較用に示した。
【0044】図3に示す実験結果から明らかなように、
電子放出物質含浸前の高融点金属多孔質基体の酸化処理
を行うことにより、初期から電子放出能力を示す数値の
飽和電流密度値がほぼ一定となり、又線L2 、L4 で示
す処理温度200゜C及び400゜Cのものでは、線L
5 、L6 で示す処理温度500゜C及び600゜Cのも
のに比較して一定時間経過後においても特性が安定して
いることが明らかである。又、酸化膜介在の有無もこれ
らのデ−タから判断出来る。
【0045】図4は、図3で説明した酸化処理を行った
陰極構造体の含浸形カソードを、1150゜Cbの温度
で連続動作させ6千時間経過時に、前記二極真空管から
各種実験カソードを測定する真空容器中に取り出し、質
量分析計を用いて前記含浸形カソードからの生成Ba原
子の蒸発量(ここでは1150゜Cb加熱時)をBaイ
オン電流量にて測定したものである。 図4によれば、
処理温度500゜C及び600゜Cのものは、Ba原子
の蒸発量が、それより低温の処理のものに比べて小さく
なっている事が分かる。それも、熱処理温度が高いほ
ど、より小さくなる事を示している。これは、発明者等
の長年に亘る同様な分析経験からすると、先のバリウム
・カルシウム・アルミネートからなる電子放出物質の枯
渇が始まったことを指し示していると言える。この電子
放出物質の枯渇は、取りも直さず当該含浸形カソードの
寿命終止が近い事を示している。
【0046】以上の実験結果からすると、熱処理温度を
400゜C以下にすれば、より望ましい含浸形カソード
を提供できる。
【0047】図5は本発明による含浸形カソードを、カ
ラ−陰極線管に実装する際の陰極組立体の具体的な全体
構成例を説明するインライン方向断面図である。傍熱形
の陰極構造体10はヒ−タの図示を省略してあるが、前
述した図1の実施例の構成を有する。図5において、5
1は陰極支持体、52は絶縁基板で、この絶縁基板52
は前記陰極支持体51を貫通させて3個のデイスク8を
固定した部分とは反対側の一端部51aで傍熱形の陰極
構造体10を所定の間隔に保持している。53は陰極組
立体で、この陰極組立体53を電子銃を構成する他の電
極と共に絶縁支持杆に所定の相互関係で固定してインラ
イン型の電子銃を組み立てる。図中×印は固定点を示
す。
【0048】図6は図5に示す陰極組立体を実装したカ
ラ−陰極線管に用いる電子銃構体の一例を示す側面図で
ある。図6において60は陰極組立体、61は第1電
極、62は第2電極、63は第3電極、64は第4電
極、65は第5電極、66は第6電極、67は第7電
極、68はビーディングガラス(絶縁支持杆)、69は
ステム、69aはステムピンである。
【0049】同図において、陰極組立体60、第1電極
61、第2電極62、第3電極63、第4電極64、第
5電極65、第6電極66及び第7電極67は一対のビ
ーディングガラス68で同軸に固定される。
【0050】陰極組立体60から発射された電子ビーム
は第1電極61、第2電極62、第3電極63、第4電
極64、第5電極65、第6電極66及び第7電極67
で所要の加速、集束を受け、第7電極67から蛍光面方
向に出射する。なお、ステムピン69aは、電子銃を構
成する所定の電極に必要とする電圧および画像信号を印
加する端子である。
【0051】図7は本発明による含浸形カソードを具備
した陰極線管の一例を説明するシャドウマスク型カラー
陰極線管の部分断面図で、同図において71はパネル、
72はネック、73はファンネル、74は蛍光面、75
は多数の電子ビーム通過孔を有するシャドウマスク、7
6はマスクフレーム、77は磁気シールド、78はシャ
ドウマスク懸架機構、79は3本の電子ビームBc(セ
ンター電子ビーム)、Bs(2本のサイド電子ビーム)
を発射する電子銃、DYは電子ビームを水平と垂直に偏
向する偏向ヨーク、MAはピュリティ補正等の外部磁気
装置である。
【0052】同図において、蛍光面74を内面に有する
パネル71と,ファンネル73とは、パネル71とファ
ンネル73で形成されるバルブ内部にシャドウマスク7
5および磁気シールド77等を固定したマスクフレーム
76をシャドウマスク懸架機構78で装架し、フリット
ガラスでパネル71とファンネル73を溶着固定した
後、ネック72に電子銃79を封入して、ネック72に
おいて真空封止される。
【0053】電子銃79から発射された電子ビームB
c、Bsはネック72とファンネル73の遷移部分に装
着された偏向ヨークDYで水平と垂直の2方向に偏向を
受け、色選択電極であるシャドウマスク75の電子ビー
ム通過孔を通して蛍光面を構成する所定色の蛍光面74
に射突することにより画像を形成する。
【0054】本発明は上記の実施例に限定されるもので
はなく、特許請求の範囲に記載した本発明の思想を逸脱
しない範囲で種々の変更が可能である。
【0055】
【発明の効果】以上説明したように、本発明による含浸
形カソード及びその製造方法は、高融点金属多孔質基体
と、これに含浸される電子放出物質との間に酸化膜を介
在させたことにより、この酸化膜中の酸素原子が、前記
含浸形カソードの動作開始と同時に、前記高融点金属多
孔質基体とバリウム・カルシウム・アルミネートから成
る前記電子放出物質との化学反応の触媒として働き、こ
れにより前記化学反応をスムーズに行なわせ、その結果
前記含浸形カソードの動作開始と同時に含浸形カソード
からの電子放出に必要、且つ、十分なBa原子をカソー
ド面に供給し続けることができ、動作初期から特性の変
動が無く、飽和電流密度値の高い含浸形カソードを提供
出来るものである。
【0056】又、前記高融点金属多孔質基体の酸化処理
も金属表面への酸素原子の取り込みを適正に制御でき、
このことが、バリウム・カルシウム・アルミネートから
成る電子放出物質の早期枯渇現象を防止し、長寿命特性
の含浸形カソードを提供出来るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の含浸形カソードを用いた陰
極構造体の一例を示す縦断面図である。
【図2】本発明の含浸形カソードの一実施例をを示す縦
断面図及び一部拡大断面図である。
【図3】本発明の含浸形カソードの強制評価寿命条件に
おける動作時間と飽和電流密度の関係を示すグラフ図で
ある。
【図4】動作時間6千時間経過時点における図3の含浸
形カソードの1150゜Cbでの酸化処理温度とBa原
子蒸発量との関係を示すグラフ図である。
【図5】本発明による含浸形カソードを具備する陰極組
立体の具体的な全体構成例を説明するインライン方向断
面図である。
【図6】図5に示す陰極組立体を実装したカラ−陰極線
管に用いる電子銃構体の一例を示す側面図である。
【図7】本発明による含浸形カソードを具備する陰極線
管の一例を示すシャドウマスク形カラー陰極線管の部分
断面図である。
【図8】従来の含浸形カソードを搭載した陰極構体を示
す側面断面図である。
【図9】従来の含浸形カソードの強制評価寿命条件にお
ける動作時間と飽和電流密度の関係を示すグラフ図であ
る。
【符号の説明】
1 高融点金属多孔質基体 2(201〜206) 酸化膜 3(301〜305) 電子放出物質 4 被覆膜 5 含浸形カソード 101〜111 高融点金属粉体 10 陰極構造体。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】高融点金属粉末集積体を圧縮整形し焼結し
    て得られた高融点金属多孔質基体に、電子放出物質を含
    浸してなる含浸形カソードであって、前記高融点金属多
    孔質基体と前記電子放出物質との間に酸化膜を有するこ
    とを特徴とする含浸形カソード。
  2. 【請求項2】高融点金属粉末集積体を圧縮整形し焼結し
    て得られた高融点金属多孔質基体に、電子放出物質を含
    浸してなる含浸形カソードの製造方法であって、 前記高融点金属多孔質基体にバリウムを含むアルカリ土
    類金属酸化物とアルミナとの化合物を主成分とする電子
    放出物質を含浸する工程と、 前記電子放出物質を含浸した前記高融点金属多孔質基体
    から余剰の前記電子放出物質を除去する工程と、 前記電子放出物質を含浸した前記高融点金属多孔質基体
    を真空中で熱処理する工程とを有し、 前記高融点金属多孔質基体を形成した後、前記電子放出
    物質を含浸する迄に前記高融点金属多孔質基体を酸化す
    る工程を含む事を特徴とする含浸形カソードの製造方
    法。
  3. 【請求項3】高融点金属粉末集積体を圧縮整形し焼結し
    て得られた高融点金属多孔質基体に、電子放出物質を含
    浸してなる含浸形カソードの製造方法であって、 前記高融点金属多孔質基体にバリウムを含むアルカリ土
    類金属酸化物とアルミナとの化合物を主成分とする電子
    放出物質を含浸する工程と、 前記電子放出物質を含浸した前記高融点金属多孔質基体
    から余剰の前記電子放出物質を除去する工程と、 前記電子放出物質を含浸した前記高融点金属多孔質基体
    を真空中で熱処理する工程とを有し、 前記高融点金属多孔質基体を形成した後、前記電子放出
    物質を含浸する迄に前記高融点金属多孔質基体を酸化す
    る工程と、 この酸化した前記高融点金属多孔質基体に前記電子放出
    物質を含浸した後余剰の前記電子放出物質を除去し前記
    電子放出物質を含浸した前記高融点金属多孔質基体のそ
    の電子放出面に高融点・高仕事関数を有する物質の被覆
    膜を形成する工程を含む事を特徴とする含浸形カソード
    の製造方法。
  4. 【請求項4】前記高融点金属多孔質基体を酸化する工程
    は、大気中、400゜C以下の条件で実施する事を特徴
    とする請求項2及び3に記載の含浸形カソードの製造方
    法。
  5. 【請求項5】前記高融点金属多孔質基体を酸化する工程
    は、大気中、200゜C〜400゜Cの条件で実施する
    事を特徴とする請求項2及び3に記載の含浸形カソード
    の製造方法。
  6. 【請求項6】前記電子放出面に形成する被覆膜は、オス
    ミウム(Os)とルテニウム(Ru)の合金物質からな
    る事を特徴とする請求項3に記載の含浸形カソードの製
    造方法。
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