JP2000325776A - 粉体化マイクロカプセル及びその製造方法 - Google Patents

粉体化マイクロカプセル及びその製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】優れた分散性を発揮できるマイクロカプセルを
提供する。 【解決手段】マイクロカプセルの製造方法であって、
(1)アニオン性水溶性高分子物質を含む水溶液に疎水
性物質を分散させる第1工程、(2)上記水溶液にアミ
ノアルデヒド樹脂を配合することにより、疎水性物質表
面に樹脂皮膜が形成されてなるマイクロカプセルを含む
スラリーを調製する第2工程、(3)下記の工程a)又
は工程b)を実施する第3工程 a)上記スラリーから上記水溶液を除去して回収された
マイクロカプセルを界面活性剤により表面処理する工程 b)粉体化マイクロカプセルに対するアニオン性水溶性
高分子物質の含有量が0.01重量%以下となるよう
に、上記スラリーから上記水溶液を除去する工程 を有する粉体化マイクロカプセルの製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、粉体化マイクロカ
プセル及びその製造方法に関する。さらに、本発明は、
粉体化マイクロカプセルを利用した可逆的熱変色性塗膜
及び起電力チェッカーに関する。
【0002】
【従来技術】マイクロカプセルは、芯物質が壁材に被覆
された粒状体であり、医薬品、化粧品、農薬、香料、接
着剤、着色剤、触媒等として各種分野において幅広く利
用されている。
【0003】マイクロカプセルの製造方法(マイクロカ
プセル化方法)としては、これまでに化学的製法、物理
的製法等の種々の方法が提案されている。化学的製法と
しては界面重合法、in situ 重合法、コアセルベーショ
ン法等、物理的製法としてスプレードライ法、凍結乾燥
法、熱風流動床法等がそれぞれ知られている。
【0004】物理的製法ではマイクロカプセルが凝集し
て二次粒子を形成しやすいのに対し、化学的製法では特
にマイクロカプセルが比較的良好に分散した水(又は水
性溶媒)分散体として得ることができる。このため、化
学的製法は、マイクロカプセルを水分散体としてそのま
ま使用できる用途においては、その良好な分散性もその
まま活かすことができるため、物理的製法よりも有利な
方法と言える。
【0005】ところが、化学的製法により得られる水分
散体から水(溶媒)を除去し、マイクロカプセルを粉体
(乾燥粉末)として使用する場合、凝集の問題が生じ
る。すなわち、水分散体中では、マイクロカプセルの分
散性は良好であるものの、これを取り出した後に乾燥さ
せると、マイクロカプセルどうしがくっつき合い、凝集
体を形成してしまう。いったん凝集体が形成されると、
これを解すには相当のエネルギー(負荷)が必要とな
る。このため、このような粉体化マイクロカプセルを溶
媒に再分散させることは非常に困難である。
【0006】これに対し、マイクロカプセルの水性分散
液から凝集、破壊のない粉体化マイクロカプセルを製造
する方法として、疎水性液体を内包するマイクロカプセ
ルの水性分散液中に高級脂肪酸アミドあるいは高級脂肪
酸金属塩の水性分散液を、該マイクロカプセルと高級脂
肪酸アミドあるいは高級脂肪酸金属塩との重量固形分比
が1:0.05〜1:3で混合し、凍結真空乾燥法又は
スプレードライ法により乾燥し、粉体化することを特徴
とする粉体化マイクロカプセルの製造方法が提案されて
いる(特開平8−182927号)。上記方法によれ
ば、凝集の少ない粉体化マイクロカプセルが製造できる
とされている。
【0007】しかしながら、上記方法でも、粉体化マイ
クロカプセルの凝集防止効果は不十分であり、さらなる
改善が必要とされる。特に、粉体化マイクロカプセルを
印刷用インキとして用いる場合、油性メジウム中におけ
るマイクロカプセルの分散性も高める必要がある。
【0008】また、上記方法では、凍結真空乾燥法又は
スプレードライ法による乾燥工程を必要としているの
で、工程としても煩雑であり、生産性、経済性等の面に
おいても不利と言える。
【0009】他方、マイクロカプセルの分散性を高める
ことを目的として、液体ビヒクル連続相中に芯物質を分
散して生じる界面に樹脂皮膜を形成するマイクロカプセ
ル製造法において、最外周面の樹脂皮膜として固着する
針状樹脂微小片を、予め液体ビヒクル連続相中に析出さ
せた後、固着することを特徴とする微小粒子マイクロカ
プセルの製造法が提案されている(特開平5−2122
68号)。この製造法によれば、凝結・凝集が防止され
た微小粒子マイクロカプセルが得られる、とされてい
る。
【0010】しかしながら、上記方法によるマイクロカ
プセルにおいても分散性が不十分であり、さらなる改善
が必要とされる。
【0011】また、上記方法では、実際には一次樹脂皮
膜の着膜工程と二次樹脂皮膜の着膜工程の2段階からな
るものであり、工程としても煩雑であり、生産性、経済
性等の面においても不利と言える。
【0012】加えて、上記方法では、針状樹脂微小片が
最外周膜に着膜せず、それが一次粒子として存在した場
合、固形分の粒度分布が広がり、各粒子間の空隙部がか
えって狭くなる結果、濾過・乾燥に長時間を必要とする
おそれもある。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の主な
目的は、優れた分散性を発揮できる粉体化マイクロカプ
セルを効率的に製造することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明者は、従来技術に
鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定工程からなる製法に
よって粉体化マイクロカプセルを製造することにより、
上記目的を達成できることを見出し、ついに本発明を完
成するに至った。
【0015】すなわち、本発明は、下記の粉体化マイク
ロカプセル及びその製造方法に係るものである。
【0016】1.マイクロカプセルの製造方法であっ
て、 (1)アニオン性水溶性高分子物質を含む水溶液に疎水
性物質を分散させる第1工程、 (2)上記水溶液にアミノアルデヒド樹脂を配合するこ
とにより、疎水性物質表面に樹脂皮膜が形成されてなる
マイクロカプセルを含むスラリーを調製する第2工程、
及び (3)下記の工程a)又は工程b)を実施する第3工程 a)上記スラリーから上記水溶液を除去して回収された
マイクロカプセルを界面活性剤により表面処理する工程 b)粉体化マイクロカプセルに対するアニオン性水溶性
高分子物質の含有量が0.01重量%以下となるよう
に、上記スラリーから上記水溶液を除去する工程 を有する粉体化マイクロカプセルの製造方法。
【0017】2.第3工程の工程a)における界面活性
剤が、カチオン性界面活性剤又はノニオン性界面活性剤
である第1項に記載の製造方法。
【0018】3.第3工程の工程a)において、マイク
ロカプセルに対するアニオン性水溶性高分子物質の含有
量が0.3重量%以下となるように上記水溶液を除去す
る第1項記載の製造方法。
【0019】4.第3工程の工程a)又は工程b)にお
いて、濾過又は遠心分離により上記水溶液を除去する第
1項記載の製造方法。
【0020】5.第3工程の工程b)におけるスラリー
のpHを2〜4に調整する第1項記載の製造方法。
【0021】6.第1項〜第5項のいずれかに記載の製
造方法により得られる粉体化マイクロカプセル。
【0022】7.第6項記載の粉体化マイクロカプセル
を油性メジウムに分散させてなる印刷用インキ。
【0023】8.基材上に形成された塗膜であって、可
逆的熱変色性組成物を芯物質として含むマイクロカプセ
ルが上記塗膜中に存在しており、かつ、上記マイクロカ
プセルの粒径が20μmを超えないことを特徴とする可
逆的熱変色性塗膜。
【0024】9.塗膜の光沢度(60゜)が60以上で
ある第8項記載の可逆的熱変色性塗膜。 10.変色温度範囲が4℃以下である第8項又は第9項
に記載の可逆的熱変色性塗膜。 11.変色前後の色差(ΔE*ab)が50以上である
第8項〜第10項のいずれかに記載の可逆的熱変色性塗
膜。 12.少なくとも基板、導電層及び熱変色層を含む起電
力チェッカーにおいて、上記熱変色層が第8項〜第11
項のいずれかに記載の可逆的熱変色性塗膜からなること
を特徴とする起電力チェッカー。
【0025】
【発明の実施の形態】以下、本発明をその実施の形態に
基づき詳細に説明する。1 使用材料 (1)アニオン性水溶性高分子物質 上記高分子物質は、アニオン性でかつ水に可溶性もので
あれば特に限定されず、公知のもの又は市販品を用いる
こともできる。例えば、無水マレイン酸系、アクリル酸
系、スルホン酸系等の各高分子物質が使用できる。無水
マレイン酸系としては、エチレン−無水マレイン酸系共
重合体、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸系共重
合体、酢酸ビニル−無水マレイン酸系共重合体、ブタジ
エン−無水マレイン酸系共重合体、イソブチレン−無水
マレイン酸系共重合体、スチレン−無水マレイン酸系共
重合体、αメチルスチレン−無水マレイン酸系共重合体
等が例示される。アクリル酸系としては、ポリアクリル
酸、イタコン酸−アクリル酸系共重合体、メタクリル酸
−アクリル酸系共重合体等が例示される。スルホン酸系
としては、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルトルエ
ンスルホン酸、スチレンスルホン酸−無水マレイン酸系
共重合体、ビニルトルエンスルホン酸−無水マレイン酸
系共重合体等が例示される。これらアニオン性水溶性高
分子物質は1種又は2種以上で使用することができる。
本発明では、特に無水マレイン酸系が好ましく、この中
でもエチレン−無水マレイン酸系共重合体が最も好まし
い。 (2)アミノアルデヒド樹脂 アミノアルデヒド樹脂は、本発明による粉体化マイクロ
カプセルの壁材を形成できるものであれば特に限定され
ず、公知のもの又は市販品を用いることもできる。例え
ば、尿素−ホルムアルデヒド系樹脂、メラミン−ホルム
アルデヒド系樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ブチル化メ
ラミン樹脂、ブチル化尿素樹脂、尿素−メラミン系樹脂
等が挙げられる。これらアミノアルデヒド樹脂は1種又
は2種以上で使用することができる。本発明では、特に
メラミン−ホルムアルデヒド系樹脂が好ましい。
【0026】また、これら樹脂の重合度等は、最終製品
の用途、高分子物質の種類等に応じて適宜設定すること
ができる。例えば、メラミン−ホルムアルデヒド系樹脂
としてメラミン−ホルムアルデヒド初期縮合物も好適に
用いることができる。このような縮合物も公知のもので
あり、公知の方法に従って調製することができる。 (3)疎水性物質 疎水性物質は、本発明の粉体化マイクロカプセルにおけ
る芯物質となるものであり、樹脂皮膜として上記アミノ
アルデヒド樹脂でマイクロカプセル化できるものであれ
ば特に制限されず、最終製品の用途等に応じて適宜選択
することができる。具体的には、農薬、顔料、接着剤、
医薬品、液晶材料、接着剤、各種ワックス・オイル類、
化粧品等の用途に応じて疎水性物質を適宜採用すること
ができる。
【0027】特に、粉体化マイクロカプセルを印刷用イ
ンキとして用いる場合は、疎水性物質として、各種の着
色剤(無機顔料、有機顔料、染料等)のほか、顕色剤、
バインダー、溶剤、紫外線吸収剤、防腐剤、乾燥促進
剤、酸化防止剤、紫外線安定剤等の添加剤も用いること
ができる。従って、これらのインキ成分を組み合わせる
ことにより、通常の印刷インキのほか、熱硬化性タイ
プ、紫外線硬化タイプ、電子線硬化タイプ等の各種機能
を有する印刷用インキも製造することができる。
【0028】本発明では、疎水性物質(芯物質)として
可逆的熱変色性組成物を用いることができる。可逆的熱
変色性組成物としては、公知のもの又は市販品を使用す
ることができる。例えば、電子供与性呈色性有機化合
物、電子受容性化合物及び減感剤の3成分を必須成分と
する組成物が挙げられる。電子供与性呈色性有機化合物
としては、例えばトリフェニルメタンフタリド系化合
物、フルオラン系化合物、スピロピラン系化合物、イン
ドリノフタリド系化合物、ローダミンラクタム系化合
物、ロイコオーラミン系化合物等が挙げられる。電子受
容性化合物としては、例えばフェノール性化合物、チオ
尿素誘導体、オキシ芳香族カルボン酸、カルボン酸及び
その金属塩等が挙げられる。減感剤としては、例えば高
沸点のアルコール類、エステル類、酸アミド類、カルボ
ン酸類等が挙げられる。これにより、本発明の可逆的熱
変色性塗膜を好適に得ることができる。 (4)界面活性剤 界面活性剤としては、マイクロカプセルの性状、最終製
品の用途等に応じて公知のもの又は市販品の中から適宜
選択することができる。例えば、アニオン性界面活性剤
としては、脂肪酸石鹸等のカルボン酸型、長鎖アルコー
ル硫酸エステル等の硫酸エステル型、アルキルベンゼン
スルホン酸塩等のスルホン酸型、ポリオキシエチレンア
ルキルフェニルエーテルリン酸エステル等のリン酸エス
テル型等;カチオン性界面活性剤としては、長鎖1級ア
ミン塩等のアミン塩型、アルキルトリメチルアンモニウ
ム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルピ
リジニウム塩等の4級アンモニウム塩型、ポリオキシエ
チレンアルキルアミン等の脂肪族アミン型、アルキルイ
ミダゾリン等の複素環アミン型等;ノニオン性界面活性
剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポ
リオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキ
シエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンアルキル
チオエーテル等のエーテル型、ポリオキシエチレンモノ
脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンジ脂肪酸エステ
ル、ポリオキシエチレンプロピレングリコール脂肪酸エ
ステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオ
キシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステル、グリセリ
ンモノ脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等のエス
テル型、ポリオキシエチレンアルキルアミド等のアルカ
ノールアミド型等;両性界面活性剤としては、N−アル
キルアミノ酸型、イミダゾリン型等が挙げられる。これ
ら界面活性剤の中でも、本発明ではノニオン性界面活性
剤(特に、HLB3〜9)又はカチオン性界面活性剤が
好ましい。 (5)その他の成分 上記水溶液中には、本発明の効果を妨げない範囲内で、
必要に応じて水溶液のpHを調整するための添加剤等を
配合することもできる。2 製造方法 本発明の粉体化マイクロカプセルの製造方法は、前記の
とおり、(1)アニオン性水溶性高分子物質を含む水溶
液に疎水性物質を分散させる第1工程、(2)上記水溶
液にアミノアルデヒド樹脂を配合することにより、疎水
性物質表面に樹脂皮膜が形成されてなるマイクロカプセ
ルを含むスラリーを調製する第2工程、及び(3)下記
の工程a)又は工程b)を実施する第3工程 a)上記スラリーから上記水溶液を除去して回収された
マイクロカプセルを界面活性剤により表面処理する工程 b)粉体化マイクロカプセルに対するアニオン性水溶性
高分子物質の含有量が0.01重量%以下となるよう
に、上記スラリーから上記水溶液を除去する工程 を有する。 (1)第1工程 第1工程では、アニオン性水溶性高分子物質を含む水溶
液に疎水性物質を分散させる。上記水溶液のアニオン性
水溶性高分子物質濃度は、用いるアニオン性水溶性高分
子物質の種類等によって適宜設定すれば良いが、通常
0.1〜20重量%程度、好ましくは2〜8重量%とす
れば良い。
【0029】疎水性物質の使用量は、最終製品の用途、
疎水性物質の種類等に応じて適宜設定すれば良い。例え
ば、粉体化マイクロカプセルを印刷用インキとして用い
る場合は、上記水溶液100重量部に対して通常50〜
120重量部程度、好ましくは70〜90重量部の範囲
内で設定すれば良い。
【0030】分散方法は、疎水性物質を均一に分散でき
る限り特に制限されず、公知の方法に従って実施するこ
とができる。例えば、ホモミキサー、ホモジナイザー、
デゾルバー等の公知の攪拌装置を用いて分散させること
ができる。なお、本発明における分散は、分散のみなら
ず、乳化も含む概念である。従って、疎水性物質を分散
させてなるO/W型乳化液とすることもできる。
【0031】本発明では、疎水性物質を分散した後にお
いて、第2工程で配合するアミノアルデヒド樹脂の種類
等に応じてpH調整を行っても良い。例えば、アミノア
ルデヒド樹脂としてメラミン−ホルムアルデヒド系樹脂
等を用いる場合は、上記水溶液のpHを3.5〜6.5
程度に調節すれば良い。 (2)第2工程 第2工程では、上記水溶液にアミノアルデヒド樹脂を配
合することにより、疎水性物質表面に樹脂皮膜が形成さ
れてなるマイクロカプセルを含むスラリーを調製する。
【0032】アミノアルデヒド樹脂の配合量は、用いる
アミノアルデヒド樹脂の種類、所望の皮膜厚さ等によっ
て適宜変更すれば良いが、通常は疎水性物質を分散した
後の水溶液(分散液)100重量部に対して1〜25重
量部程度、好ましくは10〜15重量部とすれば良い。 (3)第3工程 第3工程では、下記の工程a)又は工程b)を実施す
る。
【0033】a)上記スラリーから上記水溶液を除去し
て回収されたマイクロカプセルを界面活性剤により表面
処理する工程 b)粉体化マイクロカプセルに対するアニオン性水溶性
高分子物質の含有量が0.01重量%以下となるよう
に、上記スラリーから上記水溶液を除去する工程 ・工程a) 工程a)では、上記スラリーから上記水溶液を除去して
回収されたマイクロカプセルを界面活性剤により表面処
理する。
【0034】まず、第2工程で調製されたスラリーから
上記水溶液を除去してマイクロカプセルを回収する。水
溶液の除去方法は、マイクロカプセルを回収できれば特
に限定されず、公知の固液分離方法に従って実施するこ
とができる。固液分離方法としては、例えば濾過、遠心
分離等を好適に採用することができる。上記水溶液を除
去した後、必要に応じて水洗し又は水に分散させ、さら
に同様の固液分離を実施しても良い。
【0035】工程a)では、マイクロカプセル(固形
分)に対するアニオン性水溶性高分子物質の含有量が
0.3重量%以下となるように上記水溶液を除去するこ
とが好ましい。従って、上記含有量となるまで、必要に
応じて上記の固液分離及び水洗を繰り返しても良い。
【0036】次いで、マイクロカプセルを界面活性剤に
より表面処理する。処理方法は、マイクロカプセル表面
に界面活性剤を付与できる限り特に制限されないが、好
ましくは界面活性剤を含む水溶液中にマイクロカプセル
を分散させ、攪拌することにより実施できる。この水溶
液中における界面活性剤の濃度は、使用する界面活性剤
の種類等に応じて適宜設定できるが、通常0.001〜
5重量%程度、好ましくは0.01〜0.5重量%とす
れば良い。界面活性剤の濃度が低すぎる場合にはマイク
ロカプセル表面に界面活性剤が十分付与できず、また濃
度が高すぎる場合には乾燥状態の粉体化マイクロカプセ
ルを得ることが困難となるおそれがある。
【0037】また、上記水溶液に対するマイクロカプセ
ル(固形分)の使用量(処理量)も攪拌が可能な限り特
に制限されないが、通常は上記水溶液100重量部に対
して1〜100重量部程度、好ましくは10〜30重量
部とすれば良い。
【0038】マイクロカプセルを界面活性剤を含む水溶
液中で攪拌した後、常法に従って固液分離すれば良い。
また、本発明では、必要に応じて、上記の界面活性剤に
よる表面処理及び固液分離を繰り返して実施しても良
い。固液分離後は、必要に応じて乾燥することもでき
る。乾燥方法も、公知の方法を採用すれば良く、また自
然乾燥又は強制乾燥のいずれであっても良い。 ・工程b) 工程b)では、粉体化マイクロカプセルに対するアニオ
ン性水溶性高分子物質の含有量が0.01重量%以下、
好ましくは0.005重量%以下となるように、上記ス
ラリーから上記水溶液を除去する。上記含有量が0.0
1重量%を超える場合は、そのままでは粉体化マイクロ
カプセルが凝集しやすくなる。水溶液の除去方法は、上
記含有量が制御できる限り特に限定されず、公知の固液
分離方法に従って実施することができる。固液分離方法
としては、例えば濾過、遠心分離等を好適に採用するこ
とができる。上記水溶液を除去した後、必要に応じて水
洗し又は水に分散させ、さらに同様の固液分離を実施す
ることができる。また、必要に応じて、これら固液分離
又は水洗の各操作を繰り返しても良い。
【0039】固液分離後又は水洗後は、必要に応じて乾
燥することもできる。乾燥方法も公知の方法を採用すれ
ば良く、例えば自然乾燥又は強制乾燥のいずれであって
も良い。
【0040】工程b)では、予めスラリーのpHを2〜
4に調整することが好ましい。すなわち、マイクロカプ
セルが生成した後のスラリーのpHを2〜4の範囲に制
御することが望ましい。かかる範囲にpHを制御するこ
とによって、上記の固液分離(特に、濾過、遠心分離
等)が容易となる。これにより、どのようなpHで調製
されたスラリーであっても容易に固液分離することが可
能になる。pH調整剤としては、公知のものを使用でき
る。例えば、塩酸、リン酸等の無機酸、酢酸、リンゴ
酸、酒石酸、クエン酸等の有機酸、また場合によっては
アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリ
エタノールアミン等のアルカリも使用することができ
る。3 粉体化マイクロカプセル及び印刷用インキ 本発明の粉体化マイクロカプセルは、例えば本発明の製
造方法によって得ることができる。粉体化マイクロカプ
セルの平均粒径は、最終製品の用途等によって異なる
が、通常1〜100μm程度、好ましくは2〜10μm
の範囲内に制御できる。
【0041】本発明による粉体化マイクロカプセルは凝
集しにくく、ほぼ1次粒子の状態で存在することができ
る。また、一時的に凝集していたとしても、容易に1次
粒子の状態になり得る。粉体化マイクロカプセルの分散
性は、一般的には、グラインドゲージによる値で10μ
m以下である。
【0042】本発明の粉体化マイクロカプセルは、特
に、油性メジウム中においても、優れた分散性を発揮す
ることから、例えば印刷用インキをはじめ、その他にも
各種マスターバッチ、各種塗料等として有効に利用する
ことができる。
【0043】印刷用インキとして使用する場合には、マ
イクロカプセルとして本発明により得られる粉体化マイ
クロカプセルを使用するほかは、公知の印刷用インキの
製法に従って印刷用インキを製造することができる。例
えば、着色剤を含む芯物質を用いた粉体化マイクロカプ
セルを樹脂類、有機溶剤等と混合攪拌することにより、
油性メジウムに粉体化マイクロカプセルが分散した印刷
用インキを製造することができる。また、この印刷用イ
ンキは、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印
刷等の公知の印刷方法に従って紙、無機材料、樹脂シー
ト等に印刷することができる。4 可逆的熱変色性塗膜 本発明の可逆的熱変色性塗膜は、基材上に形成された塗
膜であって、可逆的熱変色性組成物を芯物質として含む
マイクロカプセルが上記塗膜中に存在しており、かつ、
上記マイクロカプセルの粒径が20μmを超えないこと
を特徴とする。
【0044】基材としては、本発明塗膜が形成できるも
のであれば特に制限されない。例えば、金属・合金材
料、セラミックス、プラスチックス、ガラス、紙・繊維
類等又はこれらの複合材料を用いることができる。
【0045】マイクロカプセルの構成は、芯物質として
可逆性熱変色組成物を含むものであれば特に限定的でな
い。このような組成物自体は、公知のインキを用いるこ
とができ、例えば前記のような電子供与性呈色性有機化
合物、電子受容性化合物及び減感剤の3成分を必須成分
とする組成物が使用できる。
【0046】また、マイクロカプセルの壁材も限定され
ず、通常は樹脂皮膜により形成することができる。樹脂
皮膜における樹脂としては、その種類は限定されない
が、特にアミノアルデヒド樹脂を好適に用いることがで
きる。アミノアルデヒド樹脂としては、前記で掲げた各
種のものを採用することができる。
【0047】このようなマイクロカプセルは、本発明の
製造方法によって得られたマイクロカプセルを用いるこ
とが好ましい。本発明塗膜では、特に、粒径が20μm
を超えない範囲、好ましくは粒径1〜10μm程度の範
囲に粒度調整する。粒度調整は、前記の製造方法によっ
て得られた粉体化マイクロカプセルがすでに粒径20μ
m以下のものから構成されている場合は不要である。一
方、前記の製造方法によって得られた粉体化マイクロカ
プセルが粒径20μmを超えるものを含む場合は、公知
の分級方法によって20μmを超えるものを除去すれば
良い。
【0048】本発明塗膜は、その光沢度(60゜)は通
常60以上、好ましくは80以上である。また、塗膜の
変色温度範囲は、通常4℃以下、好ましくは3.5℃以
下である。さらに、本発明塗膜の変色前後の色差(ΔE
*ab)は、通常50以上、好ましくは70以上であ
る。これらの特性を1又は2以上有することによって、
より優れた熱変色性能、例えばより優れた光沢性、熱応
答性、色濃度、変色の鮮明性等を得ることができる。
【0049】本発明塗膜は、例えば前記の本発明印刷用
インキを公知の方法で基材上に塗布することによって形
成することができる。このような可逆的熱変色性塗膜
は、例えば起電力チェッカーに適用することができる。
すなわち、本発明は、少なくとも基板、導電層及び熱変
色層を含む起電力チェッカーにおいて、上記熱変色層が
本発明の可逆的熱変色性塗膜からなることを特徴とする
起電力チェッカーを包含する。
【0050】本発明の起電力チェッカーは、熱変色層と
して本発明塗膜を用いる以外、公知の要素を採用するこ
とができる。例えば、基板としてポリイミドフィルム、
ポリエチレンテレフタレート(PET)等のフィルム状
基板を用い、この基板の表面上に導電性インキで形成さ
れた導電層が積層され、基板の裏面上に熱変色層を本発
明塗膜により形成すれば良い。この場合、必要に応じ
て、基板と熱変色層の間に、熱によって変色しない熱不
変色層を介在させても良い。また、必要に応じて、熱変
色層上に透明性樹脂等からなる保護層を設けることもで
きる。これら各層の厚みは、最終製品の使用目的等に応
じて適宜設定すれば良いが、通常は0.01〜1mm程
度の範囲内で定めれば良い。本発明の起電力チェッカー
では、導電層の接触部に電池の電極を接触させることに
よって、導電層で発生した熱が熱変色層に伝わり、熱変
色層の変色が起こる。このようにして熱変色層の変化
(場合によっては熱不変色層との色差)によって電池の
起電力が明示されることとなる。より具体的には、起電
力との関係で予め設定された熱変色層の変色領域の面積
の大小によって、測定する電池の起電力を定量的に測定
することも可能である。本発明の起電力チェッカーは、
例えば乾電池等のバッテリーの起電力チェッカー等とし
て有用である。
【0051】
【発明の効果】本発明の製造方法は、特定工程によりマ
イクロカプセル表面に界面活性剤を付与するので、分散
性に優れた粉体化マイクロカプセルを得ることができ
る。特に、この粉体化マイクロカプセルは、油性メジウ
ム中においても実質的に一次粒子として存在し、良好な
分散性を示すので、印刷用インキをはじめ、各種塗料等
の従来からの用途にも好適に用いることができる。
【0052】また、本発明の製造方法では、比較的簡単
な工程で粉体化マイクロカプセルを製造できるので、粉
体化マイクロカプセルの工業的規模での生産にも適して
おり、優れた生産性、経済性等をも発揮することができ
る。
【0053】本発明の可逆的熱変色性塗膜は、実質的に
一次粒子からなる特定のマイクロカプセルを含んでいる
ので、優れた熱変色性能等を発揮することができる。特
に、光沢性、熱変色性(熱応答性)、色濃度、変色の鮮
明度等において優れた効果が得られる。このような塗膜
は、例えば乾電池等に用いられる起電力チェッカーとし
て有用である。
【0054】
【実施例】以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特
徴をより明確にする。但し、本発明は、これら実施例に
限定されるものではない。
【0055】実施例1 (1)マイクロカプセルスラリーの調製 まずアミノアルデヒド樹脂を製造した。37重量%ホル
ムアルデヒド溶液14重量部にメラミン6重量部を配合
して60℃で加熱溶解した。溶解後、室温まで冷却する
ことにより、メラミンーホルムアルデヒド初期縮合物を
得た。
【0056】他方、アニオン性水溶性高分子物質として
エチレン−無水マレイン酸共重合体(ジーランドケミカ
ル社製)を用い、これを水に溶解して5重量%水溶液を
調製し、さらにpH4.0に調節した。
【0057】疎水性物質として、クリスタルバイオレッ
トラクトン2重量部及びビスフェノールA4重量部をス
テアリルアルコール70重量部に加熱溶解させた混合物
をつくり、この混合物を上記水溶液に配合し、ホモミキ
サーで攪拌することによりメジアン径3μmのO/W型
乳化液を調製した。
【0058】この乳化液100重量部に対して上記メラ
ミンーホルムアルデヒド初期縮合物20重量部を攪拌し
ながら添加した後、60℃に昇温し、さらに2時間攪拌
を続けた。その後、冷却してから1時間攪拌することに
より、マイクロカプセルスラリーを得た。 (2)粉体化マイクロカプセルの回収 上記スラリー200gをブフナーロートで吸引濾過し、
ウェットケーキを得た。次いで、水100gに上記ケー
キを流し込み、続けて吸引濾過を実施して同様にケーキ
を得た。このケーキの重量は120gであり、含水率は
40%であった。さらに、このケーキを、水500g及
びポリオキシエチレンドデシルアミン(「ナイミーンL
−202」日本油脂製)0.1gの混合液中に投入して
リスラリー化した。得られたスラリーを上記と同様にし
て吸引濾過してマイクロカプセルを回収した後、乾燥す
ることにより粉体化マイクロカプセルを得た。この粉体
化マイクロカプセルを走査型電子顕微鏡で観察したとこ
ろ、凝集することなく、ほぼ1次粒子の状態で存在して
いることを確認した。 (3)印刷用インキの調製 上記粉体化マイクロカプセルを用いて印刷用インキを製
造した。まず上記マイクロカプセル40重量部をエポキ
シ樹脂(「エピコート828」油化シェル製)100重
量部に混合攪拌し、インキ主剤を得た。次いで、この主
剤に硬化剤(「エピキュアU」油化シェル製)25重量
部を混合攪拌して印刷用インキを得た。 (4)印刷用インキによる印刷 この印刷用インキを用い、200メッシュのシルクスク
リーンを用いて白色陶板上に印刷し、120℃で30分
間加熱することにより印刷塗膜を形成した。印刷時にお
けるスクリーンの目詰まりもなく、また形成された塗膜
表面はきわめて滑らかであった。このことから、上記印
刷用インキ中におけるマイクロカプセルはその分散性に
優れていることがわかる。
【0059】実施例2 実施例1で得られた粉体化マイクロカプセルを用いて印
刷用インキを製造した。まず上記マイクロカプセル25
重量部を、2,4−ジエチルチオキサントン1部、芳香
族型ウレタンアクリレート(「アロニックスM−110
0」東亞合成化学工業製)40重量部及びネオペンチル
グリコールジアクリレート30重量部に混合攪拌するこ
とにより、印刷用インキを得た。
【0060】この印刷用インキを用い、200メッシュ
のシルクスクリーンを用いてポリエチレンテレフタレー
ト製白色フィルム上に印刷した後、紫外線照射(120
W/cmの高圧水銀ランプにより照射、照射距離10c
m、コンベアスピード10m/分)して硬化塗膜を形成
した。印刷時におけるスクリーンの目詰まりもなく、ま
た形成された塗膜表面はきわめて滑らかであった。この
ことから、上記印刷用インキ中におけるマイクロカプセ
ルはその分散性に優れていることがわかる。
【0061】実施例3 まず実施例1(1)で得られたマイクロカプセルスラリ
ーを用いて、粉体化マイクロカプセルを製造した。
【0062】まず上記マイクロカプセルスラリー200
gをブフナーロートで吸引濾過し、ウェットケーキを得
た。次いで、水100gに上記ケーキを流し込み、続け
て吸引濾過を実施して同様にケーキを得た。このケーキ
の重量は120gであり、含水率は40%であった。さ
らに、このケーキを、水500g及びポリオキシエチレ
ンノニルフェニルエーテル(「ノニオンNS−204.
5」日本油脂製)0.8gの混合液中に投入してリスラ
リー化した。得られたスラリーを上記と同様にして吸引
濾過してマイクロカプセルを回収した後、乾燥すること
により粉体化マイクロカプセルを得た。この粉体化マイ
クロカプセルを走査型電子顕微鏡で観察したところ、凝
集することなく、ほぼ1次粒子の状態であることを確認
した。
【0063】得られた粉体化マイクロカプセルを用い、
実施例1(3)と同様にして印刷用インキを調製した。
この印刷用インキを用い、実施例1(4)と同様にして
白色陶板上にシルクスクリーン印刷を行った。印刷時に
おけるスクリーンの目詰まりもなく、また形成された塗
膜表面はきわめて滑らかであった。このことから、上記
印刷用インキ中におけるマイクロカプセルはその分散性
に優れていることがわかる。
【0064】実施例4 実施例3で得られた粉体化マイクロカプセルを用いたほ
かは、実施例2と同様にして印刷用インキを調製した。
この印刷用インキを用い、実施例2と同様にしてポリエ
チレンテレフタレート製白色フィルム上にシルクスクリ
ーン印刷した後、紫外線照射により硬化塗膜を形成し
た。印刷時におけるスクリーンの目詰まりもなく、また
形成された塗膜表面はきわめて滑らかであった。このこ
とから、上記印刷用インキ中におけるマイクロカプセル
はその分散性に優れていることがわかる。
【0065】比較例1 実施例1で得られたマイクロカプセルスラリー200g
をブフナーロートで吸引濾過し、ウェットケーキを得
た。次いで、水100gに上記ケーキを流し込み、続け
て吸引濾過を実施して同様にケーキを得た。このケーキ
の重量は120gであり、含水率は40%であった。こ
れを乾燥することにより粉体化マイクロカプセルを得
た。このマイクロカプセルを走査型電子顕微鏡で観察し
たところ、凝集体が数多く形成されていた。
【0066】この粉体化マイクロカプセルを用い、実施
例1(3)と同様にして印刷用インキを調製した。得ら
れた印刷用インキを用いて、実施例1(4)と同様に白
色陶板上にシルクスクリーン印刷した後、加熱して印刷
塗膜を形成した。印刷時においてスクリーンの目詰まり
が発生し、また形成された塗膜表面には粗大粒子の存在
が確認された。
【0067】比較例2 比較例1の粉体化マイクロカプセルを用い、実施例2と
同様にしてポリエチレンテレフタレート製白色フィルム
上にシルクスクリーン印刷した後、紫外線照射により硬
化塗膜を形成した。印刷時においてスクリーンの目詰ま
りが発生し、また形成された塗膜表面には粗大粒子の存
在が確認された。
【0068】試験例1 実施例及び比較例における粉体化マイクロカプセルのア
ニオン性水溶性高分子物質の残存量、粉体化マイクロカ
プセルの性状、印刷用インキにおける粉体化マイクロカ
プセルの分散性、印刷塗膜の状態等について調べた。そ
の結果を表1に示す。なお、各物性については以下の方
法でそれぞれ測定した。 (1)アニオン性水溶性高分子物質の残存量 各粉体化マイクロカプセルを固形分濃度40重量%とな
るように水でリスラリー化し、そのスラリー中のアニオ
ン性水溶性高分子物質の含有量をGPC(ゲル浸透クロ
マトグラフィー)により測定した。測定装置として「G
PCクロマトグラフィー GULLIVERシリーズ」
日本分光製(使用カラム:TOSOHTSK−GEL
G4000PW)を使用した。 (2)粉体化マイクロカプセル分散性 グラインドゲージ(100μm)を用い、メジウム中の
マイクロカプセル粒子が確認できた箇所の目盛りを読み
取り、その分散度を調べた。 (3)塗膜の状態 塗膜表面を目視により観察した。目視により粗大粒子が
認められないものを○、粗大粒子が目視により粗大粒子
が確認できるものを×とした。
【0069】
【表1】
【0070】表1からも明らかなように、本発明による
粉体化マイクロカプセルは、ほぼ1次粒子の形態で存在
し、また印刷用インキ中においても優れた分散性を示す
ことがわかる。
【0071】実施例5 (1)マイクロカプセルスラリーAの調製 まずアミノアルデヒド樹脂を製造した。37重量%ホル
ムアルデヒド溶液14重量部にメラミン6重量部を配合
して60℃で加熱溶解した。溶解後、室温まで冷却する
ことにより、メラミンーホルムアルデヒド初期縮合物を
得た。
【0072】他方、アニオン性水溶性高分子物質として
エチレン−無水マレイン酸共重合体(ジーランドケミカ
ル社製)を用い、これを水に溶解して5重量%水溶液を
調製し、さらにpH4.0に調節した。疎水性物質とし
て、合成香料(日進香料製、シトラス)70重量部を上
記水溶液に配合し、ホモミキサーで攪拌することにより
メジアン径3μmのO/W型乳化液を調製した。
【0073】この乳化液100重量部に対して上記メラ
ミンーホルムアルデヒド初期縮合物20重量部を攪拌し
ながら添加した後、60℃に昇温し、さらに2時間攪拌
を続けた。その後、冷却してから1時間攪拌することに
より、マイクロカプセルスラリーAを得た。 (2)マイクロカプセルスラリーBの調製 アニオン性水溶性高分子物質としてエチレン−無水マレ
イン酸共重合体の代わりにビニルトルエンスルホン酸−
無水マレイン酸共重合体(カネボウNSC社製)を用い
たほかは、上記スラリーAと同様にしてマイクロカプセ
ルスラリーBを得た。
【0074】実施例6 上記スラリーA200gを10重量%塩酸水溶液を用い
てスラリーのpHを3に調整した。その後、このスラリ
ーをブフナーロートで吸引濾過したところ、問題なく容
易にウェットケーキを得ることができた。さらに、水1
00gに上記ケーキを流し込み、続けて吸引濾過すると
いう操作を3回繰り返し実施した。得られたケーキを5
0℃で加熱乾燥することにより粉体化マイクロカプセル
を得た。このマイクロカプセルを走査型電子顕微鏡で観
察したところ、凝集することなく、ほぼ1次粒子の状態
で存在していることを確認した。
【0075】実施例7 上記スラリーB200gを10重量%塩酸水溶液を用い
てスラリーのpHを3に調整した。その後、このスラリ
ーを遠心分離してマイクロカプセルを沈降させた。分離
した上澄液を除去し、除去した量と同量の水をさらに添
加し、同様に遠心分離を行った。さらに、水の添加及び
遠心分離を2回繰り返し実施した。得られた沈降物を5
0℃で加熱乾燥することにより粉体化マイクロカプセル
を得た。このマイクロカプセルを走査型電子顕微鏡で観
察したところ、凝集することなく、ほぼ1次粒子の状態
で存在していることを確認した。
【0076】比較例3 上記スラリーA200gを10重量%塩酸水溶液を用い
てスラリーのpHを3に調整した。その後、このスラリ
ーをブフナーロートで吸引濾過したところ、問題なく容
易にウェットケーキを得ることができた。得られたケー
キを水洗することなく、50℃で加熱乾燥することによ
り粉体化マイクロカプセルを得た。このマイクロカプセ
ルは凝集しており、手で解すことも困難であった。
【0077】比較例4 上記スラリーB200gを10重量%塩酸水溶液を用い
てスラリーのpHを3に調整した。その後、このスラリ
ーを遠心分離してマイクロカプセルを沈降させた。得ら
れた沈降物を水洗することなく、50℃で加熱乾燥する
ことにより粉体化マイクロカプセルを得た。このマイク
ロカプセルは凝集しており、手で解すことも困難であっ
た。
【0078】試験例2 実施例6及び7、比較例3及び4で得られた粉体化マイ
クロカプセルのアニオン性水溶性高分子物質の含有量を
調べた。測定方法は、粉体化マイクロカプセルを固形分
濃度40重量%となるように水でリスラリー化し、その
スラリー中のアニオン性水溶性高分子物質(エチレン−
無水マレイン酸共重合体)の含有量をGPC(ゲル浸透
クロマトグラフィー)により定量した。GPC装置とし
て「GPCクロマトグラフィー GULLIVERシリ
ーズ」日本分光製(使用カラム:TOSOH TSK−
GEL G4000PW)を用いた。これらの結果を粉
体化マイクロカプセルの状態とともに表2に示す。
【0079】
【表2】
【0080】表2の結果からも明らかなように、水洗等
によって、粉体化マイクロカプセルのアニオン性水溶性
高分子物質の含有量を0.01重量%以下にした実施例
6及び7の粉体化マイクロカプセルは、ほぼ1次粒子の
形態で存在しているのに対し、上記含有量が0.01重
量%を超える比較例3及び4では凝集が生じており、実
施例のものに比して分散性に劣ることがわかる。
【0081】実施例8 (1)粉体化マイクロカプセルAの調製 実施例1で得られたマイクロカプセルスラリー200g
を10重量%塩酸水溶液を用いてスラリーのpHを3に
調整した。その後、このスラリーをブフナーロートで吸
引濾過したところ、容易にウェットケーキを得ることが
できた。さらに、水100gを上記ケーキに流し込み、
続けて吸引濾過するという操作を3回繰り返し実施し
た。得られたケーキを50℃で加熱乾燥することにより
粉体化マイクロカプセルを得た。このマイクロカプセル
を走査型電子顕微鏡で観察したところ、凝集することな
く、ほぼ1次粒子の状態で存在していることを確認し
た。この粉体化マイクロカプセルのアニオン性水溶性高
分子物質の残存量を試験例1と同様にして測定した結
果、0.005重量%であった。 (2)粉体化マイクロカプセルBの調製 実施例1で得られたマイクロカプセルスラリー200g
をブフナーロートで吸引濾過してウェットケーキを得
た。水100gをこのケーキ上に流し込み、続けて吸引
濾過を実施した。得られたケーキの重量は120gであ
り、含水率は40%であった。さらに、このケーキを、
水500g及びポリオキシエチレンドデシルアミン
(「ナイミーンL−202」日本油脂製)0.1g中に
リスラリー化した。得られたスラリーを濾過、乾燥して
粉体化マイクロカプセルを得た。このマイクロカプセル
を走査型電子顕微鏡で観察したところ、凝集することな
く、ほぼ1次粒子の状態で存在していることを確認し
た。この粉体化マイクロカプセルのアニオン性水溶性高
分子物質の残存量を試験例1と同様にして測定した結
果、0.08重量%であった。 (3)粉体化マイクロカプセルCの調製 実施例1で得られたマイクロカプセルスラリー200g
をブフナーロートで吸引濾過してウェットケーキを得
た。さらに、水100gをこのケーキ上に流し込み、続
けて吸引濾過を実施した。得られたケーキの重量は12
0gであり、含水率は40%であった。このマイクロカ
プセルを走査型電子顕微鏡で観察したところ、凝集体を
形成していることを確認した。この粉体化マイクロカプ
セルのアニオン性水溶性高分子物質の残存量を試験例1
と同様にして測定した結果、0.08重量%であった。
【0082】実施例9 実施例8の粉体化マイクロカプセルA40重量部とエポ
キシ樹脂(「エピコート828」油化シェル製)100
重量部を混合撹拌し、インキ主剤を得た。さらに、この
主剤に硬化剤(「エピキュアU」油化シェル製)25重
量部を混合撹拌し、印刷用インキを得た。このインキを
150メッシュシルクスクリーンを用いて白色陶板上に
印刷し、120℃で30分間加熱して印刷塗膜を得た。
塗膜表面はきわめて滑らかな表面を有しており、印刷時
のスクリーンの目詰まりもなく、きわめて分散性の良好
なものであった。
【0083】実施例10 実施例8の粉体化マイクロカプセルB40重量部とエポ
キシ樹脂(「エピコート828」油化シェル製)100
重量部を混合撹拌し、インキ主剤を得た。さらに、この
主剤に硬化剤(「エピキュアU」油化シェル製)25重
量部を混合撹拌し、印刷用インキを得た。このインキを
150メッシュシルクスクリーンを用いて白色陶板上に
印刷し、120℃で30分間加熱して印刷塗膜を得た。
塗膜表面はきわめて滑らかな表面をしており、印刷時の
スクリーンの目詰まりもなく、きわめて分散性の良好な
ものであった。
【0084】実施例11 実施例8の粉体化マイクロカプセルA25重量部を2,
4−ジエチルチオキサントン1重量部、芳香族型ウレタ
ンアクリレート(「アロニックスM−1100」東亞合
成化学工業製)40重量部及びネオペンチルグリコール
ジアクリレート30重量部を混合撹拌し、印刷用インキ
を得た。このインキを200メッシュシルクスクリーン
を用いて白色PET(ポリエチレンテレフタレート)フ
ィルム上に印刷し、120W/cmの高圧水銀ランプを
用いて照射距離10cm、コンベアスピード10m/分
で紫外線照射して硬化塗膜を得た。塗膜表面はきわめて
滑らかな表面をしており、印刷時のスクリーンの目詰ま
りもなく、きわめて分散性の良好なものであった。
【0085】実施例12 実施例8の粉体化マイクロカプセルB25重量部を2,
4−ジエチルチオキサントン1重量部、芳香族型ウレタ
ンアクリレート(「アロニックスM−1100」東亞合
成化学工業製)40重量部及びネオペンチルグリコール
ジアクリレート30重量部を混合撹拌し、印刷用インキ
を得た。このインキを200メッシュシルクスクリーン
を用いて白色PETフィルム上に印刷し、120W/c
mの高圧水銀ランプを用いて照射距離10cm、コンベ
アスピード10m/分で紫外線照射して硬化塗膜を得
た。塗膜表面はきわめて滑らかな表面を有しており、印
刷時のスクリーンの目詰まりもなく、きわめて分散性の
良好なものであった。
【0086】実施例13 実施例11で調製された印刷用インキを用い、厚さ0.
5mmの熱変色層が得られるように、裏面に導電層が形
成されたPET製フィルム状基板の表面上に印刷して乾
電池用起電力チェッカーを作製した。その構成の概要を
図1に示す。上記チェッカーは、裏面に導電層(2)が
形成されたフィルム状基板(1)の表面上に、熱により
変色しない熱不変色層(3)、その上に熱変色層(4)
が順次形成されている。上記チェッカーの接触部(5)
(6)に乾電池の電極部分を接触させることにより乾電
池の電池残量を調べたところ、約10秒で正確に確認す
ることができた。
【0087】実施例14 実施例12で調製された印刷用インキを用い、厚さ0.
5mmの熱変色層が得られるように実施例13と同様の
基材上に印刷し、実施例13と同様の構成をもつ乾電池
用起電力チェッカーを作製した。これを用いて実施例1
3と同様にして乾電池の電池残量を調べたところ、約1
0秒で正確に確認することができた。
【0088】比較例5 粉体化マイクロカプセルC40重量部とエポキシ樹脂
(「エピコート828」油化シェル製)100重量部を
混合撹拌し、インキ主剤を得た。さらに、この主剤に硬
化剤(「エピキュアU」油化シェル製)25重量部を混
合撹拌し、印刷用インキを得た。このインキを200メ
ッシュシルクスクリーンを用いて白色陶板上に印刷し、
120℃で30分間加熱して印刷塗膜を得た。塗膜表面
にはマイクロカプセルの凝集体が存在することが肉眼に
より観察された。
【0089】比較例6 上記の粉体化マイクロカプセルC25重量部を2,4−
ジエチルチオキサントン1重量部、芳香族型ウレタンア
クリレート(「アロニックスM−1100」東亞合成化
学工業製)40重量部及びネオペンチルグリコールジア
クリレート30重量部を混合撹拌し、印刷用インキを得
た。このインキを200メッシュシルクスクリーンを用
いて白色PETフィルム上に印刷し、120W/cmの
高圧水銀ランプを用いて照射距離10cm、コンベアス
ピード10m/分で紫外線照射して硬化塗膜を得た。塗
膜表面にはマイクロカプセルの凝集体が存在することが
肉眼により観察された。
【0090】比較例7 比較例6で調製された印刷用インキを用い、厚さ0.5
mmの熱変色層が得られるように、実施例13と同様の
基材上に印刷して実施例13と同様の構成をもつ乾電池
用起電力チェッカーを作製した。これを用いて実施例1
3と同様にして乾電池の電池残量を調べたところ、電池
残量を正確に確認できるまでに約13秒かかった。
【0091】試験例3 実施例9〜12及び比較例5〜6で用いた粉体化マイク
ロカプセルの分散性、印刷塗膜の性状について、それぞ
れ調べた。その結果を表3に示す。
【0092】
【表3】
【0093】なお、表3中の各物性の測定方法は以下の
ようにして実施した。 (1)粉体化マイクロカプセル分散性 試験例1と同様にして調べた。 (2)塗膜の状態 試験例1と同様にして調べた。 (3)変色温度範囲 塗膜を20℃から60℃まで加熱速度0.5℃/秒で加
熱し、0.5℃ごとに塗膜表面の色度をL*a*b*表
色系で測定する。次に、スタート時の塗膜表面と加熱さ
せた塗膜表面との色差ΔE*abをそれぞれ算出し、色
差の値が2以上になった温度から色差の値が安定しはじ
める温度までの温度範囲を変色温度範囲とした。
【0094】なお。色度L*a*b*の測定には、色彩
色差計(「CR−300」ミノルタ製)を使用し、下式
により色差ΔE*abを求めた。
【0095】ΔE*ab={(ΔL*)2}+(Δa
*)2+(Δb*)21/2 (4)光沢度 測定角度が60゜から−60゜の光沢度計(「IG−3
10」堀場製作所製)を用いて測定した。 (5)変色前後の色差 塗膜表面の発色時の色度L*a*b*と、消色時の色度
L*a*b*との色差を求めた。色度の測定は、上記
(3)の場合と同様にして行った。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例13で作製された起電力チェッカーの断
面構成を示す図である。

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】マイクロカプセルの製造方法であって、 (1)アニオン性水溶性高分子物質を含む水溶液に疎水
    性物質を分散させる第1工程、 (2)上記水溶液にアミノアルデヒド樹脂を配合するこ
    とにより、疎水性物質表面に樹脂皮膜が形成されてなる
    マイクロカプセルを含むスラリーを調製する第2工程、
    及び (3)下記の工程a)又は工程b)を実施する第3工程 a)上記スラリーから上記水溶液を除去して回収された
    マイクロカプセルを界面活性剤により表面処理する工程 b)粉体化マイクロカプセルに対するアニオン性水溶性
    高分子物質の含有量が0.01重量%以下となるよう
    に、上記スラリーから上記水溶液を除去する工程 を有する粉体化マイクロカプセルの製造方法。
  2. 【請求項2】第3工程の工程a)における界面活性剤
    が、カチオン性界面活性剤又はノニオン性界面活性剤で
    ある請求項1に記載の製造方法。
  3. 【請求項3】第3工程の工程a)において、マイクロカ
    プセルに対するアニオン性水溶性高分子物質の含有量が
    0.3重量%以下となるように上記水溶液を除去する請
    求項1記載の製造方法。
  4. 【請求項4】第3工程の工程a)又は工程b)におい
    て、濾過又は遠心分離により上記水溶液を除去する請求
    項1記載の製造方法。
  5. 【請求項5】第3工程の工程b)におけるスラリーのp
    Hを2〜4に調整する請求項1記載の製造方法。
  6. 【請求項6】請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法
    により得られる粉体化マイクロカプセル。
  7. 【請求項7】請求項6記載の粉体化マイクロカプセルを
    油性メジウムに分散させてなる印刷用インキ。
  8. 【請求項8】基材上に形成される塗膜であって、可逆的
    熱変色性組成物を芯物質として含むマイクロカプセルが
    上記塗膜中に存在しており、かつ、上記マイクロカプセ
    ルの粒径が20μmを超えないことを特徴とする可逆的
    熱変色性塗膜。
  9. 【請求項9】塗膜の光沢度(60゜)が60以上である
    請求項8記載の可逆的熱変色性塗膜。
  10. 【請求項10】変色温度範囲が4℃以下である請求項8
    又は9に記載の可逆的熱変色性塗膜。
  11. 【請求項11】変色前後の色差(ΔE*ab)が50以
    上である請求項8〜10のいずれかに記載の可逆的熱変
    色性塗膜。
  12. 【請求項12】少なくとも基板、導電層及び熱変色層を
    含む起電力チェッカーにおいて、上記熱変色層が請求項
    8〜11のいずれかに記載の可逆的熱変色性塗膜からな
    ることを特徴とする起電力チェッカー。
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