JP2000311703A - 密閉型アルカリ蓄電池 - Google Patents

密閉型アルカリ蓄電池

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 電極缶1,2,3と、中空状の正極5と、負
極7と、セパレータ6と、負極集電棒4を備える密閉型
アルカリ蓄電池において、充放電サイクルの長期にわた
って電解液が外部に漏出しにくく、かつ信頼性の高い放
電スタートの密閉型アルカリ蓄電池を得る。 【解決手段】 正極活物質であるγ型オキシ水酸化ニッ
ケルがマンガンを5〜50重量%固溶しており、かつ正
極5中に含まれる電解液にリチウムイオンが含有されて
いることを特徴としている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、放電スタートの密
閉型アルカリ蓄電池に関するものである。放電スタート
の蓄電池とは、予め充電することなく初回の放電を行う
ことができる蓄電池のことである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】従来、
亜鉛を負極活物質とする密閉型アルカリ蓄電池用の正極
活物質としては、二酸化マンガンが提案されている(特
公昭45−3570号公報参照)。また、亜鉛を負極活
物質とするアルカリ蓄電池の正極活物質として、酸化ニ
ッケルと二酸化マンガンを混合したものが提案されてい
る(特公昭49−114741号公報参照)。
【0003】しかしながら、二酸化マンガンは充放電サ
イクルにおける可逆性が悪く、初回の放電を行った後充
電しても当初の二酸化マンガンに戻らないので、充放電
サイクルにおいて放電容量が急激に低下する。また、二
酸化マンガンの酸素過電圧が低いために、充電時に正極
側で酸素ガス(水の電気分解による)が発生して電池内
圧が上昇し、それに伴い電池外装部材の接合部における
密着性が低下して、電解液が外部に漏出しやすい。ま
た、酸化ニッケルと二酸化マンガンとの混合物を蓄電池
に用いた場合、活物質である酸化ニッケルの酸素過電圧
が低いために、二酸化マンガンを単独で使用した場合と
同様に、電池内圧が上昇しやすく漏液が起こりやすい。
【0004】このような問題を解消し得る正極活物質と
して、本出願人はマンガンを固溶したγ型オキシ水酸化
ニッケルを提案している(特開平10−214621号
公報参照)。マンガンを固溶したγ型オキシ水酸化ニッ
ケルを正極活物質として用いることにより、充放電サイ
クルの長期に渡って電解液が外部に漏出しにくい、信頼
性の高い放電スタートの密閉型アルカリ蓄電池を得るこ
とができる。
【0005】しかしながら、このような密閉型アルカリ
蓄電池においては、さらに酸素過電圧を高め、電解液の
漏出をより完全に防止することを要求される場合があ
る。本発明の目的は、充放電サイクルの長期にわたって
電解液が外部に漏出し難い、より信頼性の高い放電スタ
ートの密閉型アルカリ蓄電池を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の密閉型アルカリ
蓄電池は、電池缶と、電池缶と電気的に接触するように
電池缶内に配置される、γ型オキシ水酸化ニッケルを正
極活物質とした中空状の正極と、正極の内側に配置され
る、亜鉛を負極活物質とした負極と、正極と負極の間に
配置されるセパレータと、負極内に挿入された状態で配
置される負極集電体と、電池缶内に充填され、正極、負
極、及びセパレータ内に含浸される電解液とを備える密
閉型アルカリ蓄電池であって、γ型オキシ水酸化ニッケ
ルがマンガンを5〜50重量%固溶しており、かつ正極
中に含まれる電解液にリチウムイオンが含有されている
ことを特徴としている。
【0007】本発明において正極活物質として用いるγ
型オキシ水酸化ニッケルは、マンガン(Mn)を5〜5
0重量%固溶している。本発明におけるマンガンの固溶
量は以下の式により定義される。
【0008】マンガンの固溶量(重量%)=(γ型オキ
シ水酸化ニッケル中のマンガン量)/(γ型オキシ水酸
化ニッケル中のニッケル及びマンガンの合計量)×10
0 本発明に従いγ型オキシ水酸化ニッケルにマンガンを固
溶させることにより、酸素過電圧を増加させることがで
きる。マンガンの固溶量が5重量%未満であると、酸素
過電圧を十分に向上させることができないため、充放電
を繰り返した際に電解液の漏れが発生する。マンガンの
固溶量が50重量%を超えると、活物質であるγ型オキ
シ水酸化ニッケルの量が相対的に減少するため、十分な
放電容量が得られない。
【0009】さらに、本発明においては、正極中に含ま
れる電解液にリチウムイオンが含有されている。リチウ
ムイオンを含有させることにより、酸素過電圧をさらに
高めることができ、電解液の漏出をより有効に防止する
ことができる。リチウムイオンは、電解液に水酸化リチ
ウムや炭酸リチウムなどのリチウム化合物を添加し溶解
させることにより電解液中に含有させることができる。
電解液中に含まれるリチウムイオンの濃度としては、
0.01〜0.3重量%が好ましい。なお、このリチウ
ムイオン濃度は以下の式により定義される。
【0010】リチウムイオン濃度(重量%)=(電解液
中のリチウムイオンの重量)/(電解液の重量)×10
0 正極中に含まれる電解液中のリチウムイオン濃度が0.
01重量%未満であると、リチウムイオンによる酸素過
電圧の上昇が十分ではなく、リチウムイオンによる電池
の液漏れ防止の効果が十分に得られない場合がある。ま
た、0.3重量%を超えると、電解液の導電性が低下す
るため、電池の内部抵抗が上昇し、放電容量が低下する
場合がある。
【0011】本発明において、正極中に含まれる電解液
は、30〜45重量%の濃度の水酸化カリウム水溶液で
あることが好ましい。また、負極及びセパレータ中に含
まれる電解液も、同様に30〜45重量%の濃度の水酸
化カリウム水溶液であることが好ましい。30重量%未
満であると、充電受け入れ性が低下するため、十分な放
電容量が得られない場合がある。また、45重量%を超
えると、正極活物質の放電生成物であるα型の水酸化ニ
ッケルの結晶構造がβ型に変化しやすくなるため、酸素
過電圧を向上させることができなくなり、充放電を繰り
返した際に電解液の漏れが発生する場合がある。
【0012】また、本発明において、正極中に含まれる
電解液の量は、マンガンを固溶したγ型オキシ水酸化ニ
ッケルに対して5〜20重量%であることが好ましい。
すなわち、マンガンを固溶したγ型オキシ水酸化ニッケ
ル100重量部に対して、5〜20重量部含まれている
ことが好ましい。一般に、本発明のタイプの密閉型アル
カリ蓄電池を充放電した場合、サイクル経過時に電解液
中の水が正極活物質中に取り込まれる、いわゆるドライ
アウトと呼ばれる現象が生じる。このようなドライアウ
トが生じると、電池の内部抵抗が上昇し、放電容量が低
下する。正極中に含まれる電解液の量が、5重量%未満
となると、正極中の水が不足するため、このようなドラ
イアウトが生じやすくなる。また、正極中に含まれる電
解液が20重量%を超えると、正極活物質であるγ型水
酸化ニッケルの量が相対的に減少するため、十分な放電
容量が得られない場合がある。
【0013】本発明におけるγ型オキシ水酸化ニッケル
中のニッケル原子の価数は、初回放電前において、すな
わち満充電状態で、3.4〜3.8価であることが好ま
しい。ニッケル原子の価数が3.4未満になると、十分
な放電容量が得られにくく、また酸素過電圧が低いため
充電時に電解液の漏れが発生する場合がある。また、一
般にオキシ水酸化ニッケルにおいては、ニッケル原子の
価数が3.8価よりも大きなものは存在しない。従っ
て、満充填状態の後にさらに充電を続けても、水が分解
して酸素ガスが発生するだけであり、ニッケル原子の価
数が3.8価を超えることはない。
【0014】本発明において用いるγ型オキシ水酸化ニ
ッケルは、例えば水酸化ニッケルを次亜塩素酸ナトリウ
ム(NaClO)等の酸化剤で酸化することにより得ら
れる。またニッケルの価数は、反応させる酸化剤の添加
量により調整することができる。
【0015】本発明において用いるγ型オキシ水酸化ニ
ッケルには、マンガン以外に、さらに亜鉛、コバルト、
ビスマス、アルミニウム、イットリウム、エルビウム、
イッテルビウム及びガドリニウムよりなる群から選ばれ
た少なくとも1種の元素が固溶されていてもよい。これ
らの元素が固溶したγ型オキシ水酸化ニッケルを用いる
ことにより、正極の酸素過電圧をさらに高めることがで
きる。これらの元素の固溶量としては、0.5〜5重量
%程度が好ましい。なお、この固溶量は以下の式により
定義される。
【0016】他の元素の固溶量(重量%)=(γ型オキ
シ水酸化ニッケル中の他の元素の量)/(γ型オキシ水
酸化ニッケル中のニッケル及び他の元素の合計量)×1
00 また、本発明においては、正極、負極、セパレータ、負
極集電体、及び電解液が、電池缶内の容積の75体積%
以上を占めることが好ましい。これにより、電池缶内に
おける活物質の充填量を高めることができ、放電容量の
高い密閉型アルカリ蓄電池とすることができる。また、
このような放電容量の高い密閉型アルカリ蓄電池におい
て、電池内圧の上昇を抑制し、充放電を繰り返した際に
電解液が外部へ漏出するのを防止することができる。
【0017】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細
に説明するが、本発明は以下の実施例により限定される
ものではない。
【0018】(実施例1) (実験1)この実験では、正極活物質にマンガン固溶量
の異なるγ型オキシ水酸化ニッケル、濃度の異なる水酸
化カリウム水溶液にリチウムイオンを含有させたアルカ
リ水溶液を添加して作製した正極を用いた電池A1〜A
10、二酸化マンガンに30重量%の電解液を添加した
正極活物質を使用した比較電池C1の1サイクル目の放
電容量、25サイクル目の放電容量維持率及び漏液電池
発生数を調べた。
【0019】〔電解液の作製〕水1177gに水酸化カ
リウム(含有量85重量%)823gを投入し、十分に
溶解させた(35重量%水酸化カリウム水溶液)。これ
に水酸化リチウム(LiOH・H2 O)を12.2g溶
解させた。原子吸光法で定量分析した結果、リチウムイ
オンが0.10重量%含有されていることを確認した。
【0020】〔正極の作製〕硫酸マンガン40.4g、
硫酸ニッケル154.8gを溶解した水溶液を5000
ml用意し、60℃に保持したこの水溶液に、10重量
%アンモニアと10重量%水酸化ナトリウムを重量比で
1:1に混合した水溶液を滴下しpHを9.5±0.3
に保持した。pHが低下した際には混合水溶液を滴下し
pHが一定になった後1時間混合した。混合後、ろ過、
水洗し、80℃にて乾燥して、マンガンを固溶した水酸
化ニッケル粉末を得た。
【0021】10モル/リットルの水酸化ナトリウム水
溶液500mlと10重量%次亜塩素酸ナトリウム水溶
液1500mlの混合液に、上記のマンガンを固溶した
水酸化ニッケル粉末100gを攪拌しながら投入し、1
時間攪拌混合した後、沈殿物をろ過し、水洗し、60℃
で乾燥して、γ型オキシ水酸化ニッケルを得た。この
時、マンガンがγ型オキシ水酸化ニッケル中のニッケル
とマンガンの総量に対して20重量%固溶されているこ
とを原子吸光法で確認した。また、この時のニッケル原
子の価数は鉄の2価・3価の酸化還元滴定により測定し
た結果3.6であった。
【0022】このようにして得たγ型オキシ水酸化ニッ
ケル(正極活物質)100重量部と、黒鉛粉末10重量
部と、上記のリチウムイオンを溶解させた電解液として
の水酸化カリウム水溶液10重量部とを、らいかい機で
30分間混合し、加圧成型して、外径1.3cm、内径
0.95cm、高さ1.15cmの円筒中空状の成型体
を作製した。なお、電池の作製においては、この円筒中
空状の正極を3個直列に重ねて、全体として1個の円筒
中空状正極として使用した。
【0023】〔負極の作製〕負極活物質としての亜鉛粉
末65重量部と酸化亜鉛(ZnO)を飽和量含む40重
量%水酸化カリウム水溶液34重量部と、ゲル化剤とし
てのアクリル酸樹脂(日本純薬社製、商品名「ジュンロ
ンPW150」)1重量部とを混合して、ゲル状の負極
を作製した。
【0024】〔電池の作製〕上記の正極及び負極を用い
て、通称「インサイドアウト型」と呼ばれている構造
(電池缶側が正極側、電池蓋側が負極側:「アウトサイ
ド・正極型」とも呼ばれる)で、AAサイズの密閉型ア
ルカリ蓄電池(本発明電池)A1を作製した。なお、放
電容量を正極容量で規定するために、正極と負極との電
気化学的な容量を1:1.2とした(以下の電池も全て
これと同じ容量比にした)。また、負極、正極、電解
液、セパレータ、負極集電体、及び電解液からなる発電
要素体が占める体積を、電池缶内の容積に対して、80
体積%とした(以下の電池も全てこれと同じ充填率にし
た)。
【0025】図1は、作製した密閉型アルカリ蓄電池を
示す部分断面図である。図示の密閉型アルカリ蓄電池
は、有底円筒状の正極缶(正極外部端子)1、負極蓋
(負極外部端子)2、絶縁パッキング3、真鍮製の負極
集電棒4、円筒中空状の正極(ニッケル極)5、ビニロ
ンを主材とする円筒フィルム状のセパレータ6、ゲル状
負極(亜鉛極)7などからなる。
【0026】正極缶1には、正極缶1の円筒部の内周面
に当接させて正極5が収納されており、該円筒中空状の
正極5の内周面には、セパレータ6が外周面を当接させ
て設けられており、セパレータ6の内側には、ゲル状の
負極7が充填されている。負極7の中央部には、正極缶
1と負極蓋2とを電気的に絶縁する絶縁パッキング3に
より一端を支持された負極集電棒(負極集電体)4が挿
入されている。正極缶1の開口部は、負極蓋2により閉
蓋されている。電池内部の密閉は、正極缶1の開口部に
絶縁パッキング3を嵌め込み、その上に負極蓋2を載置
した後、正極缶1の閉口端を内側にかしめることにより
なされている。本実施例の密閉型アルカリ蓄電池におい
て、電極缶は、正極缶1、負極蓋2及び絶縁パッキング
3から構成される。
【0027】なお、上記実施例の密閉型アルカリ蓄電池
においては中空状正極として円筒状の正極を用いている
が、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、
角筒状などの中空状正極であってもよい。
【0028】(実験2)正極の作製で、硫酸マンガンの
量を5.1gとしたこと以外は同様にして電池A2を作
製した。このときのマンガン固溶量は、2.5重量%で
あることを原子吸光法で確認した。
【0029】(実験3)正極の作製で、硫酸マンガンの
量を10.2gとしたこと以外は同様にして電池A3を
作製した。このときのマンガン固溶量は、5重量%であ
ることを原子吸光法で確認した。
【0030】(実験4)正極の作製で、硫酸マンガンの
量を20.2gとしたこと以外は同様にして電池A4を
作製した。このときのマンガン固溶量は、10重量%で
あることを原子吸光法で確認した。
【0031】(実験5)正極の作製で、硫酸マンガンの
量を101gとしたこと以外は同様にして電池A5を作
製した。このときのマンガン固溶量は、50重量%であ
ることを原子吸光法で確認した。
【0032】(実験6)正極の作製で、硫酸マンガンの
量を121gとしたこと以外は同様にして電池A6を作
製した。このときのマンガン固溶量は、60重量%であ
ることを原子吸光法で確認した。
【0033】(実験7)水1294gに水酸化カリウム
(含有量85重量%)706gを投入し、十分に溶解さ
せた(30重量%水酸化カリウム水溶液)。これに水酸
化リチウム(LiOH・H2 O)を2.0g溶解させ
た。原子吸光法で定量分析した結果、リチウムイオンが
0.10重量%含有されていることを確認した。このア
ルカリ水溶液を電解液として用いたことを除いては実験
1と同様にして電池A7を作製した。このときの正極活
物質中のマンガン固溶量は20重量%である。
【0034】(実験8)水941gに水酸化カリウム
(含有量85重量%)1059gを投入し、十分に溶解
させた(45重量%水酸化カリウム水溶液)。これに水
酸化リチウム(LiOH・H2 O)を2.0g溶解させ
た。原子吸光法で定量分析した結果、リチウムイオンが
0.10重量%含有されていることを確認した。このア
ルカリ水溶液を電解液として用いたことを除いては実験
1と同様にして電池A8を作製した。このときの正極活
物質中のマンガン固溶量は20重量%である。
【0035】(実験9)水1341gに水酸化カリウム
(含有量85重量%)659gを投入し、十分に溶解さ
せた(28重量%水酸化カリウム水溶液)。これに水酸
化リチウム(LiOH・H2 O)を2.0g溶解させ
た。原子吸光法で定量分析した結果、リチウムイオンが
0.10重量%含有されていることを確認した。このア
ルカリ水溶液を電解液として用いたことを除いては実験
1と同様にして電池A9を作製した。このときの正極活
物質中のマンガン固溶量は20重量%である。
【0036】(実験10)水894gに水酸化カリウム
(含有量85重量%)1106gを投入し、十分に溶解
させた(47重量%水酸化カリウム水溶液)。これに水
酸化リチウム(LiOH・H2 O)を2.0g溶解させ
た。原子吸光法で定量分析した結果、リチウムイオンが
0.10重量%含有されていることを確認した。このア
ルカリ水溶液を電解液として用いたことを除いては実験
1と同様にして電池A10を作製した。このときの正極
活物質中のマンガン固溶量は20重量%である。
【0037】(比較例1)実験1でLiOH・H2 Oを
溶解させなかったアルカリ水溶液を用いたことを除いて
は同様にして電池Xを作製した。
【0038】(比較例2)正極活物質として、りん状黒
鉛27重量部とアセチレンブラック3重量部の混合粉末
にパラフィンの懸濁液(固形分40重量%含有)0.1
5重量部を添加し、これに二酸化マンガン150重量部
と30重量%の水酸化カリウム水溶液からなる電解液を
15重量部を添加して混合したものを用いたことを除い
て、同様にして電池Yを作製した。
【0039】(各電池の種々の充放電サイクルにおける
容量維持率及び漏液電池発生数)正極活物質のみが異な
る上記12種の密閉型アルカリ蓄電池について、100
mAで電池電圧が1Vになるまで放電した後、100m
Aで電池電圧が1.95V(比較例2では1.65V)
に達するまで充電を行う工程を1サイクルとする充放電
サイクル試験を行って、各電池の初期放電容量、25サ
イクル目における容量維持率及び漏液電池発生数を調べ
た。
【0040】結果を表1に示す。表1中の初期放電容量
は、電池A1の1サイクル目の容量を100とした指数
である。また25サイクルにおける容量維持率は、各電
池の1サイクル目の放電容量に対する比率(%)であ
り、かつ電解液が漏出しなかった電池の容量維持率の平
均値である。
【0041】
【表1】
【0042】表1から、マンガンの固溶量としては、5
〜50重量%が好ましいことがわかる。また、電解液で
ある水酸化カリウム水溶液の濃度としては、30〜45
重量%が好ましいことがわかる。これらの範囲内とする
ことにより、サイクル特性及び耐漏液特性において特に
優れた電池とすることができる。
【0043】電池Xと電池A1との比較から明らかなよ
うに、正極に添加する電解液にリチウムイオンを添加す
ることにより、サイクル特性を高め、耐漏液特性を高め
ることができる。これは、リチウムイオンを電解液に添
加することより、充電時の酸素過電圧を高めることがで
きるからであると考えられる。
【0044】電池Yの放電容量が低いのは、充放電によ
り結晶構造が変化したためであると考えられる。また耐
漏液特性が悪いのは、正極の酸素過電圧が低いためであ
ると考えられる。
【0045】(実施例2) (実験11)この実験では、正極に添加する電解液への
リチウムイオンの添加量について検討した。実験1の電
解液作製で、水酸化リチウムの添加量を49.5g、3
6.9g、6.1g、1.2g、0.6gとしたこと以
外は同様にして電池B1〜B5を作製した。
【0046】このときのアルカリ水溶液中のリチウムイ
オンの溶解量は0.4重量%、0.3重量%、0.05
重量%、0.01重量%、0.005重量%である。こ
れらB1〜B5の各電池について実験1で行ったのと同
じ条件で充放電サイクル試験を行い、1サイクル目の放
電容量並びに25サイクル目の放電容量及び漏液電池発
生数を調べた。結果を表2に示す。表2中の初期放電容
量は、電池A1の1サイクル目の容量を100とした指
数である。また25サイクルにおける容量維持率は、各
電池の1サイクル目の放電容量に対する比率(%)であ
る。A1は表1中のA1と同じ電池である。
【0047】
【表2】
【0048】表2から明らかなように、電解液である水
酸化カリウム水溶液にリチウムイオンを添加することに
より、サイクル特性及び耐漏液特性に優れた電池とする
ことができる。特に、リチウムイオンの添加量を0.0
1〜0.3重量%とすることにより良好な特性が得られ
る。電池B1の放電容量が低くなっているのは、リチウ
ムイオンの含有量が多いため電解液の導電性が低くなっ
たためであると考えられる。また、電池B5の耐漏液特
性が悪くなっているのは、添加するリチウムイオンの量
が少ないため、充電時の酸素過電圧の上昇が少ないため
であると考えられる。
【0049】(実施例3) (実験12)この実験では、γ型オキシ水酸化ニッケル
100重量部に対する電解液の添加量について検討し
た。35重量%水酸化カリウム(リチウムイオン0.1
0重量%含有)の添加量を、γ型オキシ水酸化ニッケル
100重量部に対して、3重量部、5重量部、20重量
部、25重量部とし、それ以外は同様にして電池C1〜
C4を作製した。従って、電池C1〜C4における、電
解液の添加量は、それぞれγ型オキシ水酸化ニッケルに
対して、3重量%、5重量%、20重量%、25重量%
である。
【0050】各電池C1〜C4について、実験1で行っ
たのと同じ条件で充放電サイクル試験を行い、1サイク
ル目の放電容量並びに25サイクル目の放電容量及び漏
液電池発生数を調べた。結果を表3に示す。表3中の初
期放電量は、電池A1の1サイクル目の放電容量を10
0とした指数である。また25サイクルにおける容量維
持率は、各電池の1サイクル目の放電容量に対する比率
(%)である。A1は表1中のA1と同じ電池である。
【0051】
【表3】
【0052】表3から明らかなように、電解液の添加量
としては、γ型オキシ水酸化ニッケルに対し5〜20重
量%が特に好ましいことがわかる。電池C1のサイクル
特性が悪くなっているのは、電解液の添加量が少ないた
めサイクル経過時にドライアウトが生じるためであると
考えられる。また、C4の放電容量が低いのは、電解液
の添加量が多いため、活物質であるγ型オキシ水酸化ニ
ッケルの量が相対的に少なくなっているためであると考
えられる。
【0053】(実施例4) (実験13)この実験では、γ型オキシ水酸化ニッケル
中のニッケル原子の価数と放電容量及び漏液電池発生数
の関係を調べた。
【0054】実験1の正極の作製において水酸化ナトリ
ウム水溶液500mlと混合する10重量%次亜塩素酸
ナトリウム水溶液の量を、1500mlに代えて、13
50ml、1400ml、または1600mlとしたこ
と以外は電池A1の作製と同様にして、密閉型アルカリ
蓄電池D1〜D3を作製した。なおこのときのニッケル
原子の価数は、3.3、3.4、3.8である。アルカ
リ水溶液としては35重量%水酸化カリウム水溶液(リ
チウムイオン0.10重量%含有)を用い、添加量は1
0重量%とした。そして、活物質中のマンガンの固溶量
は20重量%のものを用いた。これらD1〜D3の各電
池について実験1で行ったのと同じ条件で充放電サイク
ル試験を行い、1サイクル目の放電容量並びに25サイ
クル目の放電容量及び漏液電池発生数を調べた。結果を
表4に示す。表4中の1サイクル目の放電容量は、電池
A1の1サイクル目の放電容量を100とした指数であ
る。また25サイクル目における容量維持率は、各電池
の1サイクル目の放電容量に対する比率(%)であり、
かつ電解液が漏出しなかった電池の容量維持率の平均値
である。A1は表1中のA1と同じ電池である。
【0055】
【表4】
【0056】表4から明らかなように、放電容量が大き
くかつ電解液の漏れの少ない電池を得るためには、正極
活物質としてニッケルの原子の価数が3.4〜3.8の
γ型オキシ水酸化ニッケルを使用することが好ましいこ
とがわかる。
【0057】(実施例5)この実施例では、マンガン以
外に固溶させる元素の影響について検討した。なお、固
溶量の定義を以下に示す。
【0058】固溶量(重量%)=(γ型オキシ水酸化ニ
ッケル中のマンガン以外の固溶元素量)/(γ型オキシ
水酸化ニッケル中のニッケル量+マンガン以外の固溶元
素量)×100 (実験14) 実験1の正極の作製において硫酸マンガン、硫酸ニッケ
ル以外に硫酸亜鉛(ZnSO4 )を1.46g溶解させ
たこと以外は同様にして電池E1を作製した。このと
き、亜鉛の固溶量が1重量%、マンガンの固溶量が20
重量%であることを原子吸光法で確認した。
【0059】(実験15)実験1の正極の作製において
硫酸マンガン、硫酸ニッケル以外に硫酸コバルト(Co
SO4 )を1.55g溶解させたこと以外は同様にして
電池E2を作製した。このとき、コバルトの固溶量が1
重量%、マンガンの固溶量が20重量%であることを原
子吸光法で確認した。
【0060】(実験16)実験1の正極の作製において
硫酸マンガン、硫酸ニッケル以外に硝酸ビスマス(Bi
(NO3 3 )を0.96g溶解させたこと以外は同様
にして電池E3を作製した。このとき、ビスマスの固溶
量が1重量%、マンガンの固溶量が20重量%であるこ
とを原子吸光法で確認した。
【0061】(実験17)実験1の正極の作製において
硫酸マンガン、硫酸ニッケル以外に硫酸アルミニウム
(Al2 (SO4 3 )を3.74g溶解させたこと以
外は同様にして電池E4を作製した。このとき、アルミ
ニウムの固溶量が1重量%、マンガンの固溶量が20重
量%であることを原子吸光法で確認した。
【0062】(実験18)実験1の正極の作製において
硫酸マンガン、硫酸ニッケル以外に硫酸イットリウム
(Y2 (SO4 3 )を1.55g溶解させたこと以外
は同様にして電池E5を作製した。このとき、イットリ
ウムの固溶量が1重量%であることを発光分析法(IC
P)で確認した。また、マンガンの固溶量が20重量%
であることを原子吸光法で確認した。
【0063】(実験19)実験1の正極の作製において
硫酸マンガン、硫酸ニッケル以外に硫酸エルビウム(E
r(SO4 3 )を1.10g溶解させたこと以外は同
様にして電池E6を作製した。このとき、エルビウムの
固溶量が1重量%であることを発光分析法(ICP)で
確認した。また、マンガンの固溶量が20重量%である
ことを原子吸光法で確認した。
【0064】(実験20)実験1の正極の作製において
硫酸マンガン、硫酸ニッケル以外に硫酸イッテルビウム
(Yb2 (SO4 3 )を1.08g溶解させたこと以
外は同様にして電池E7を作製した。このとき、イッテ
ルビウムの固溶量が1重量%であることを発光分析法
(ICP)で確認した。また、マンガンの固溶量が20
重量%であることを原子吸光法で確認した。
【0065】(実験21)実験1の正極の作製において
硫酸マンガン、硫酸ニッケル以外に硫酸ガドリニウム
(Gd2 (SO4 3 )を1.13g溶解させたこと以
外は同様にして電池E8を作製した。このとき、ガドリ
ニウムの固溶量が1重量%であることを発光分析法(I
CP)で確認した。また、マンガンの固溶量が20重量
%であることを原子吸光法で確認した。
【0066】(実験22)実験1の正極の作製において
硫酸マンガン、硫酸ニッケル以外に硫酸エルビウムを
1.10g、硫酸アルミニウムを3.74g溶解させた
こと以外は同様にして電池E9を作製した。このとき、
エルビウムの固溶量が1重量%であることを発光分析法
(ICP)で確認した。また、アルミニウムの固溶量が
1重量%、マンガンの固溶量が20重量%であることを
原子吸光法で確認した。
【0067】これらE1〜E9の各電池について実験1
で行ったのと同じ条件で充放電サイクル試験を行い、1
サイクル目の放電容量並びに25サイクル目の放電容量
及び漏液電池数を調べた。結果を表5に示す。表5中の
1サイクル目の放電容量は、電池A1の1サイクル目の
放電容量を100とした指数である。また25サイクル
における容量維持率は、各電池の1サイクル目の放電容
量に対する比率(%)であり、かつ電解液が漏出しなか
った電池の容量維持率の平均値である。A1は表1中の
A1と同じ電池である。
【0068】
【表5】
【0069】表5に示す結果から明らかなように、マン
ガン以外に亜鉛、コバルト、ビスマス、アルミニウム、
イットリウム、エルビウム、イッテルビウム及びガドリ
ニウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種を固溶さ
せても優れた特性が得られることがわかる。
【0070】
【発明の効果】本発明によれば、充放電サイクルの長期
にわたって電解液が外部に漏出しにくい、信頼性の高い
放電スタートの密閉型アルカリ蓄電池とすることができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従う一実施例の密閉型アルカリ蓄電池
を示す部分断面図。
【符号の説明】
1…正極缶 2…負極蓋 3…絶縁パッキング 4…負極集電棒 5…正極 6…セパレータ 7…ゲル状負極
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 木本 衛 大阪府守口市京阪本通2丁目5番5号 三 洋電機株式会社内 (72)発明者 伊藤 靖彦 大阪府守口市京阪本通2丁目5番5号 三 洋電機株式会社内 Fターム(参考) 5H003 AA00 BA00 BB02 BB04 BD04 5H016 AA02 BB11 EE01 EE05 HH01 HH08 5H028 AA01 AA06 BB10 CC17 EE01 EE05 FF00 HH00 HH01 HH02

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電池缶と、前記電池缶と電気的に接触す
    るように前記電池缶内に配置される、γ型オキシ水酸化
    ニッケルを正極活物質とした中空状の正極と、前記正極
    の内側に配置される、亜鉛を負極活物質とした負極と、
    前記正極と前記負極の間に配置されるセパレータと、前
    記負極内に挿入された状態で配置される負極集電体と、
    前記電池缶内に充填され、前記正極、前記負極、及び前
    記セパレータ内に含浸される電解液とを備える密閉型ア
    ルカリ蓄電池であって、 前記γ型オキシ水酸化ニッケルがマンガンを5〜50重
    量%固溶しており、かつ前記正極中に含まれる電解液に
    リチウムイオンが含有されていることを特徴とする密閉
    型アルカリ蓄電池。
  2. 【請求項2】 前記電解液中のリチウムイオン濃度が
    0.01〜0.3重量%であることを特徴とする請求項
    1に記載の密閉型アルカリ蓄電池。
  3. 【請求項3】 前記正極中に含まれる電解液が30〜4
    5重量%の濃度の水酸化カリウム水溶液であることを特
    徴とする請求項1または2に記載の密閉型アルカリ蓄電
    池。
  4. 【請求項4】 前記正極中に含まれる電解液の量が、マ
    ンガンを固溶したγ型オキシ水酸化ニッケルに対して5
    〜20重量%であることを特徴とする請求項1〜3のい
    ずれか1項に記載の密閉型アルカリ蓄電池。
  5. 【請求項5】 初回放電前の前記γ型オキシ水酸化ニッ
    ケル中のニッケル原子の価数が3.4〜3.8価である
    ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の
    密閉型アルカリ蓄電池。
  6. 【請求項6】 前記γ型オキシ水酸化ニッケルに、マン
    ガン以外に、さらに亜鉛、コバルト、ビスマス、アルミ
    ニウム、イットリウム、エルビウム、イッテルビウム及
    びガドリニウムよりなる群から選ばれた少なくとも1種
    の元素が固溶していることを特徴とする請求項1〜5の
    いずれか1項に記載の密閉型アルカリ蓄電池。
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WO2002041422A1 (en) * 2000-11-17 2002-05-23 Toshiba Battery Co., Ltd. Enclosed nickel-zinc primary battery, its anode and production methods for them
WO2004021484A1 (en) * 2002-08-28 2004-03-11 The Gillette Company Alkaline battery including nickel oxyhydroxide cathode and zinc anode

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