JP2000301379A - 高張力鋼用溶接ワイヤ - Google Patents

高張力鋼用溶接ワイヤ

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JP2000301379A
JP2000301379A JP11115515A JP11551599A JP2000301379A JP 2000301379 A JP2000301379 A JP 2000301379A JP 11115515 A JP11115515 A JP 11115515A JP 11551599 A JP11551599 A JP 11551599A JP 2000301379 A JP2000301379 A JP 2000301379A
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 全姿勢溶接において耐割れ性及び耐欠陥性が
優れた高張力鋼用溶接ワイヤを提供する。 【解決手段】 Si:0.20乃至0.55重量%、M
n:1.30乃至1.90重量%、Ni:2.0乃至
3.5重量%、Cr:0.1乃至0.9重量%及びM
o:0.1乃至0.9重量%からなる群から選択された
少なくとも1種、N、S、O、H、Ti及びVからなる
群から選択された少なくとも1種を含有し、Nb、A
l、B、Cu、P、Ca及びMgの含有量を規制し、更
にCの含有量を[C]、Niの含有量を[Ni]とする
とき、[C]を(12−[Ni])/100以下に規制
し、残部がFe及び不可避的不純物からなる。特に、シ
ールドガスとして80乃至95%のArガスと5乃至2
0%のCO2ガスとの混合ガス及び電源としてパルス電
源を使用する、例えば、管材の溶接に好適である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、引張強さが780
MPa以上の高張力鋼に使用される高張力鋼用溶接ワイ
ヤに関し、特に、パイプ等の全姿勢溶接において、良好
な耐割れ性及び耐欠陥性が優れた高張力鋼用溶接ワイヤ
に関する。
【0002】
【従来の技術】近時、揚水型水力発電用水圧鉄管及び海
洋構造物等の構造物において、高強度化及び高靭性化の
方向にある。このため、高品質な継手であると共に、溶
接コストダウンが強く要望されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、海洋構造物及
び水圧鉄管等において、特にパイプ等の全姿勢ミグ溶接
では低電流領域の溶接なので、溶滴移行が不安定とな
り、溶け込み形状が不安定になる。このため、溶接金属
にブローホール又は融合不良が発生しやすい。このこと
から、補修溶接が必要となり、溶接工程数の増大が大き
な問題点になっている。
【0004】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたも
のであって、パイプ溶接等の全姿勢溶接において良好な
耐割れ性及び耐欠陥性が優れた高張力鋼用溶接ワイヤを
提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明に係る高張力鋼用
溶接ワイヤは、Si:0.20乃至0.55重量%、M
n:1.30乃至1.90重量%、Ni:2.0乃至
3.5重量%、Cr:0.1乃至0.9重量%及びM
o:0.1乃至0.9重量%からなる群から選択された
少なくとも1種、N:20乃至150重量ppm、S:
0.002乃至0.012重量%、O:20乃至150
重量ppm、H:0.5乃至4重量ppm並びにTi:
0.01乃至0.08重量%及びV:0.01乃至0.
18重量%からなる群から選択された少なくとも1種を
含有し、Nbを0.01重量%以下、Alを0.02重
量%以下、Bを10重量ppm以下、Cuを0.4重量
%以下、Pを0.012重量%以下、Caを50重量p
pm以下及びMgを50重量ppm以下に規制し、更に
Cの含有量を[C]、前記Niの含有量を[Ni]とす
るとき、[C]を(12−[Ni])/100以下に規
制し、残部がFe及び不可避的不純物からなることを特
徴とする。
【0006】この場合、シールドガスとして80乃至9
5%のArガスと5乃至20%のCO2ガスとの混合ガ
スを使用し、電源としてパルス電源を使用して溶接され
ることが好ましい。また、管材の溶接に使用される。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例に係る高張
力鋼用溶接ワイヤについて詳細に説明する。全姿勢ミグ
溶接うち、パイプの全姿勢ミグ溶接では、低電流領域に
よる溶接を余儀なくされ、溶滴移行が不安定であるた
め、溶け込み形状が不安定になり、ブローホール又は融
合不良が発生しやすく、溶接欠陥が発生しやすい。特
に、パイプ溶接においては、45°上向溶接部において
この現象が著しく認められる。この問題点を解消すべく
本願発明者等は鋭意実験研究の結果、S、O及びHを添
加し、ワイヤ先端の溶滴の表面張力を減少させ、溶滴を
細かい状態で連続的にワイヤから離脱させて低電流での
アークの安定性を向上させ、また、Si、Al及びTi
の夫々の最大量を限定し、ワイヤ先端の溶滴の粘性増加
を抑制し、溶滴を細かい状態で連続的にワイヤから離脱
させて低電流でのアークの安定性を向上させる知見を得
た。また、C、Cu、Ni及びPの夫々の最大量を限定
し、耐凝固割れを向上させ、Ca及びMgの夫々の最大
量を限定し、スラグ剥離性を向上させて、Mn、Ni、
N、Cr、Mo、Ti及びVを添加し、溶接金属の強度
を向上させ、更に、Mn、Ni及びNを添加して、N
b、V、Ti及びBの夫々の最大量を限定し、溶接金属
の靭性を向上させる知見を得た。これらのことにより、
鋼構造物の品質の確保及び溶接能率の向上が図れること
を見出した。
【0008】以下、本発明の高張力鋼用溶接ワイヤの組
成限定理由について詳細に説明する。
【0009】Si:0.20乃至0.55重量% Siは脱酸性元素である。Siの含有量が0.20重量
%未満では、脱酸効果が弱くなり気孔が発生しやすくな
る。一方、Siの含有量が0.55重量%を超えると、
溶滴の粘性が高くなり、ワイヤ先端からの溶滴の離脱が
不安定になり、アークの安定性を劣化させる。従って、
Siの含有量は0.20乃至0.55重量%とする。
【0010】Mn:1.30乃至1.90重量% Mnは脱酸元素であると共に、強度及び靭性を高める元
素でもある。Mnの含有量が1.30重量%未満では強
度と靭性が不足する。一方、Mnの含有量が1.90重
量%を超えると、ラス状組織を呈し溶接金属の靭性を劣
化させる。従って、Mnの含有量は1.30乃至1.9
0重量%とする。
【0011】Ni:2.0乃至3.5重量% Niは強度と靭性とを高める元素である。Niの含有量
が2.0重量%未満では、高靭性を得ることができな
い。一方、Niの含有量が3.5重量%を超えると、凝
固割れが発生しやすくなる。従って、Niの含有量は
2.0乃至3.5重量%とする。
【0012】Cr:0.1乃至0.9重量%及びMo:
0.1乃至0.9重量%からなる群から選択された少な
くとも1種 Cr及びMoは同様の効果を有する物質で、強度を向上
させるのに有効である。Cr及びMoの含有量が夫々
0.1重量%未満では、強度向上に十分な効果を得るこ
とができない。一方、Cr及びMoの含有量が夫々0.
9重量%を超えると、溶接金属がラス状組織になり、靭
性が低下する。従って、Cr:0.1乃至0.9重量%
及びMo:0.1乃至0.9重量%からなる群から選択
された少なくとも1種を含有する。
【0013】N:20乃至150重量ppm Nは強度と靭性を高めるために有効な元素である。Nの
含有量が20重量ppm未満では、強度と靭性を高める
効果を得ることができない。一方、Nの含有量が150
重量ppmを超えると、気孔が発生しやすくなる。従っ
て、Nの含有量は20乃至150重量ppmとする。
【0014】S:0.002乃至0.012重量% Sは溶滴の表面張力を減少させて、ワイヤ先端の溶滴を
細かい状態で連続的に離脱させ低電流でのアークを安定
させる。また、溶融金属の粘性を減少させて、鋼材への
融合性を向上させる。Sの含有量が0.002重量%未
満では、低電流でのアーク安定性及び溶融金属の粘性の
減少の効果がない。一方、Sの含有量が0.012重量
%を超えると、溶接金属の靭性を低下させる。従って、
Sの含有量は0.002乃至0.012重量%とする。
なお、Sの含有量は0.005重量%を超えると、低電
流でのアーク安定性及び溶融金属の粘性の減少の効果が
著しくなる。
【0015】O:20乃至150重量ppm Oは溶滴の表面張力を減少させて、ワイヤ先端の溶滴を
細かい状態で連続的に離脱させ低電流でのアークを安定
化させる。Oの含有量が20重量ppm未満では、溶滴
の表面張力を減少させる効果がない。一方、Oの含有量
が150重量ppmを超えると、溶接金属の酸素量を増
加させて靭性を劣化させる。従って、Oの含有量は20
乃至150重量ppmとする。
【0016】H:0.5乃至4重量ppm HはS及びOと同様に溶滴を細かい状態で連続的に離脱
させ、低電流でのアークを安定化させる。Hの含有量が
0.5重量ppm未満では、アークを安定化させる効果
がない。一方、Hの含有量が4重量ppmを超えると、
溶接金属の耐割れ性を著しく劣化させる。従って、Hの
含有量は0.5乃至4重量ppmとする。
【0017】Ti:0.01乃至0.08重量%及び
V:0.01乃至0.18重量%からなる群から選択さ
れた少なくとも1種 Tiは脱酸性元素であると共に、強度の向上に有効であ
る。Tiの含有量が0.01重量%未満では、十分な脱
酸性及び強度の向上の効果を発現しない。一方、Tiの
含有量が0.08重量%を超えると、溶滴の粘性を高め
て溶滴の離脱を不連続にし、アークの安定性を劣化させ
る。また、靭性も劣化させる。
【0018】また、Vは強度、特に耐力の向上に有効で
ある。Vの含有量が0.01重量%未満では、耐力の向
上に十分な効果が発現しない。一方、Vの含有量が0.
18重量%を超えると、靭性が低下する。従って、T
i:0.01乃至0.08重量%及びV:0.01乃至
0.18重量%からなる群から選択された少なくとも1
種を含有する。
【0019】Nb:0.01重量%以下 Nbは炭化物を形成して溶接金属の靭性を劣化させる。
Nbの含有量が0.01重量%を超えると、炭化物を形
成する作用が顕著になる。従って、Nbの含有量は0.
01重量%以下に規制する。
【0020】Al:0.02重量%以下 Alは強脱酸性元素である。Alの含有量が0.02重
量%を超えると、溶滴の粘性を高めて溶滴の離脱を不連
続にし、アークの安定性を著しく劣化する。従って、A
lの含有量は0.02重量%以下に規制する。
【0021】B:10重量ppm以下 Bは焼入れ性の強い元素である。Bの含有量が10重量
ppmを超えると、ラス状組織を呈して、靭性を劣化さ
せる。従って、Bの含有量は10重量ppm以下に規制
する。
【0022】Cu:0.4重量%以下 Cuは防錆用メッキ分を含む。Cuの含有量が0.4重
量%を超えると、溶接金属に凝固割れが発生しやすくな
る。従って、Cuの含有量は0.4重量%以下に規制す
る。
【0023】P:0.012重量%以下 Pは靭性及び耐凝固割れ性を著しく劣化させる。Pの含
有量が0.012重量%を超えると、靭性及び耐凝固割
れ性を著しく劣化させる。従って、Pの含有量は0.0
12重量%以下に規制する。
【0024】Ca:50重量ppm以下 CaはMgと同効物質であり、Caの含有量が50重量
ppmを超えると、スラグの剥離性を劣化させ、溶接作
業性を著しく低下させる。従って、Caは50重量pp
m以下に規制する。
【0025】Mg:50重量ppm以下 MgはCaと同効物質であり、Mgの含有量が50重量
ppmを超えると、スラグの剥離性を劣化させ、溶接作
業性を著しく低下させる。従って、Mgは50重量pp
m以下に規制する。
【0026】[C]:(12−[Ni])/100以下 Cは溶融金属の凝固初晶を変化させNiと共に、溶接金
属の耐凝固割れ性を変化させる。Cの含有量、即ち
[C]の値が(12−[Ni])/100の値を超える
と、γ凝固主体になり、凝固割れが発生しやすくなる。
従って、[C]は(12−[Ni])/100以下に規
制する。
【0027】シールドガス シールドガスは種々のガスがあるが、全姿勢溶接での溶
接作業性を考慮すると、80乃至95%のArガスと5
乃至20%のCO2ガスとの混合ガスが好ましい。その
中でも、特に、95%のArガスと5%のCO2ガスと
の混合ガスがスパッタが最も少なく好適である。
【0028】電源 電源は、立向姿勢でショートアーク溶接を行うと多層溶
接時に融合不良を生じやすい。このため、パルス電源を
使用したスプレーアーク溶接が好ましい。
【0029】
【実施例】以下、本発明の範囲に入る高張力鋼用溶接ワ
イヤの実施例について、その特性を比較例と比較して具
体的に説明する。図1は本発明の実施例に係る開先形状
を示す模式図である。
【0030】試験材としてHT780及びHT950を
使用し、図1に示すように、斜面が形成された試験材1
を斜面を対向させて、ルートギャップを5mmに調整し
て突き合わせて、このルートギャップの裏面側に裏当材
2を設置した。これに表1乃至表6に示す化学組成の高
張力鋼用溶接ワイヤを使用して、一部を除きパルス電源
で表7に示す溶接条件で多層盛溶接を行った。
【0031】なお、表1乃至6中の「tr.」は、その量
が微量であることを示す。
【0032】溶接終了後、JIS Z3104に従って
X線による溶接欠陥検査を行い、溶接作業性が良好なも
のについては、多層盛溶接部から機械試験用試験片を採
取し、溶接金属の強度、延性及び靭性を評価した。
【0033】溶接作業性の評価は、X線による溶接欠陥
検査が無欠陥であるもの及びJISZ3104による欠
陥の等級分類が1類であるものを良好とした。
【0034】強度の評価は引張強さが780MPa以上
であるものを良好とした。延性の評価は、延びが18%
以上のものを良好とした。靭性については、温度−60
℃における吸収エネルギが69J以上であり、延性脆性
遷移温度vTrSが−50℃以下であるものを良好とし
た。これらの結果を表8乃至11に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
【表3】
【0038】
【表4】
【0039】
【表5】
【0040】
【表6】
【0041】
【表7】
【0042】
【表8】
【0043】
【表9】
【0044】
【表10】
【0045】
【表11】
【0046】上記表8及び10に示すように、本発明の
範囲に入る実施例No.1乃至9は作業性、X線による溶
接欠陥、溶接金属の強度、延性及び靭性の全てについて
良好な結果を得ることができた。なお、実施例No.1乃
至6は、作業性、耐欠陥性、溶接金属の強度、延性及び
靭性の全てについて極めて良好であった。
【0047】実施例No.7はシールドガス中のCO2の含
有量が30%と若干多いため、靭性が若干低いが目標値
を満足しており、その他の特性は良好であった。
【0048】実施例No.8はシールドガス中のCO2の含
有量が2%と少ないため、フィンガー状の溶け込み形状
になり、微小なブローホールの発生が認められるもの
の、欠陥等級分類は1類と良好であり、他の特性も良好
である。
【0049】実施例No.9は電源として定電圧電源を使
用したため、アーク形状が十分なスプレーアークとはな
らず、ルート部付近に微小なブローホールが発生した。
但し、欠陥等級分類は1類と良好であり、機械試験の結
果も良好であった。
【0050】一方、表8乃至表11に示すように、本発
明の範囲から外れる比較例No.10乃至46は作業性、
X線による溶接欠陥、溶接金属の強度、延性及び靭性の
全てについて良好な結果を得ることができなかった。
【0051】比較例No.10はSiの含有量が本発明の
範囲未満であるため、溶接中にピットが発生し、溶接作
業性が悪かったため、溶接を中止した。
【0052】比較例No.11はSiの含有量が本発明の
範囲を超えているため、溶滴移行が不安定であり融合不
良が発生し、溶接作業性が悪かったため、溶接を中止し
た。
【0053】比較例No.12はMnの含有量が本発明の
範囲未満であるため、焼入れ性が不足して靭性が乏し
く、延性脆性遷移温度が高くなった。
【0054】比較例No.13はMn、Cr及びMoの含
有量が本発明の範囲を超えているため、焼入れ性が過大
になり、溶接金属にラス状マルテンサイトが生成し、延
性及び靭性が乏しく、延性脆性遷移温度が高くなった。
【0055】比較例No.14はS及びOの含有量が本発
明の範囲未満であるため、溶滴の大きさが大きくなって
溶滴の移行が不安定になりカットが生じ、融合不良が発
生した。このため機械試験を中止した。
【0056】比較例No.15はSの含有量が本発明の範
囲を超えているため、溶接金属の延性及び靭性が乏しく
なり、延性脆性遷移温度が高くなった。
【0057】比較例No.16はP及びCuの含有量が本
発明の範囲を超えているため、初層溶接金属に微小な割
れが発生した。このため溶接を中止した。
【0058】比較例No.17及び18は、Cの含有量が
本発明の範囲を超えているため、初層溶接金属に微小な
割れが発生した。このため溶接を中止した。
【0059】比較例No.19は、Niの含有量が本発明
の範囲未満であるため、焼入れ性が不足して十分な靭性
を得ることができないと共に、延性脆性遷移温度も高く
なった。
【0060】比較例No.20はNiの含有量が本発明の
範囲を超えているため、初層溶接金属に凝固割れが発生
した。このため溶接を中止した。
【0061】比較例No.21はCr及びMoの含有量が
本発明の範囲を超えているため、ラス状マルテンサイト
が溶接金属に生成し、溶接金属の延性及び靭性が乏しく
なり、延性脆性遷移温度が高くなった。
【0062】比較例No.22はNbの含有量が本発明の
範囲を超えているため、炭化物が多く析出し、溶接金属
の延性及び靭性が乏しくなり、延性脆性遷移温度が高く
なった。
【0063】比較例No.23はVの含有量が本発明の範
囲を超えているため、炭化物が多く析出し、溶接金属の
延性及び靭性が乏しくなり、延性脆性遷移温度が高くな
った。
【0064】比較例No.24はVの含有量が本発明の範
囲未満であり、Tiの含有量が本発明の範囲を超えてい
るため、溶滴サイズが大きくなって溶滴の移行が不安定
になり、一部融合不良が発生した。このため機械試験を
中止した。
【0065】比較例No.25はAlの含有量が本発明の
範囲を超えているため、溶滴サイズが大きくなって溶滴
の移行が不安定になり、一部融合不良が発生した。この
ため機械試験を中止した。
【0066】比較例No.26はBの含有量が本発明の範
囲を超えているため、ラス状マルテンサイトが溶接金属
に生成し、溶接金属の延性及び靭性が乏しくなり、延性
脆性遷移温度が高くなった。
【0067】比較例No.27はCa及びMgの含有量が
本発明の範囲を超えているため、スラグの発生量が増加
すると共に、スラグの剥離性も劣化した。
【0068】比較例No.28はNの含有量が本発明の範
囲を超えているため、ブローホールが発生した。このた
め機械試験を中止した。
【0069】比較例No.29はHの含有量が本発明の範
囲を超えているため、溶接終了後、溶接金属に低温割れ
による横割れが発生した。
【0070】比較例No.30はN及びHの含有量が本発
明の範囲未満であるため、溶滴サイズが大きくなって溶
滴の移行が不安定になり、融合不良が発生した。
【0071】比較例No.31はOの含有量が本発明の範
囲を超えているため、溶接作業性は良好であったが、溶
接金属の靭性が乏しく、延性脆性遷移温度が高かった。
【0072】比較例No.32はPの含有量が本発明の範
囲を超えているため、初層溶接金属に微小な割れが発生
した。このため溶接を中止した。
【0073】比較例No.33はCuの含有量が本発明の
範囲を超えているため、初層溶接金属に微小な割れが発
生した。このため溶接を中止した。
【0074】比較例No.34はSの含有量が本発明の範
囲未満であるため、溶滴の移行が不安定になり、融合不
良が発生した。このため機械試験を中止した。
【0075】比較例No.35はOの含有量が本発明の範
囲未満であるため、溶滴の移行が不安定になり、融合不
良が発生した。このため機械試験を中止した。
【0076】比較例No.36はCaの含有量が本発明の
範囲を超えているため、スラグの発生量が増加し、剥離
性も劣化した。このため機械試験を中止した。
【0077】比較例No.37はMgの含有量が本発明の
範囲を超えているため、スラグの発生量が増加し、剥離
性も劣化した。このため機械試験を中止した。
【0078】比較例No.38はHの含有量が本発明の範
囲未満であるため、溶滴の移行が不安定になり融合不良
が発生した。このため機械試験を中止した。
【0079】比較例No.39はNの含有量が本発明の範
囲未満であるため、強度が不足した。
【0080】比較例No.40はCr及びMoの含有量が
本発明の範囲を超えているため、靭性が劣化した。
【0081】比較例No.41はCrの含有量が本発明の
範囲を超えているため、靭性が劣化した。
【0082】比較例No.42はMoの含有量が本発明の
範囲を超えているため、靭性が劣化した。
【0083】比較例No.43はV及びTiの含有量が本
発明の範囲を超えているため、溶滴の移行が不安定にな
り融合不良が発生した。このため機械試験を中止した。
【0084】比較例No.44はV及びTiの含有量が本
発明の範囲未満であるため、強度が不足した。
【0085】比較例No.45はTiの含有量が本発明の
範囲を超えているため、溶滴の離脱が不連続になり一部
融合不良が発生した。このため機械試験を中止した。
【0086】比較例No.46はVの含有量が本発明の範
囲を超えているため、靭性が劣化した。
【0087】
【発明の効果】以上詳述したように本発明においては、
パイプ溶接等の全姿勢溶接において良好な耐割れ性及び
耐欠陥性が優れた高張力鋼用溶接ワイヤを得ることがで
きる。このため、鋼構造物の品質の確保及び溶接能率の
向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係る開先形状を示す模式図で
ある。
【符号の説明】
1;試験材 2;裏当材
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成12年7月24日(2000.7.2
4)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】特許請求の範囲
【補正方法】変更
【補正内容】
【特許請求の範囲】
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正内容】
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明に係る高張力鋼用
溶接ワイヤは、Si:0.20乃至0.55質量%、M
n:1.30乃至1.90質量%、Ni:2.0乃至
3.5質量%、N:20乃至150質量ppm、S:
0.002乃至0.012質量%、O:20乃至150
質量ppm、H:0.5乃至4質量ppmを含有し、
た、Cr:0.1乃至0.9質量%及びMo:0.1乃
至0.9質量%からなる群から選択された少なくとも1
種を含有し、更に、Ti:0.01乃至0.08質量
及びV:0.01乃至0.18質量%からなる群から選
択された少なくとも1種を含有するものである。また、
本発明は、Nbを0.01質量%以下、Alを0.02
質量%以下、Bを10質量ppm以下、Cuを0.4
%以下、Pを0.012質量%以下、Caを50質量
ppm以下及びMgを50質量ppm以下に規制し、更
にCの含有量を[C]、前記Niの含有量を[Ni]と
するとき、[C]を(12−[Ni])/100以下に
規制し、残部がFe及び不可避的不純物からなるもので
る。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正内容】
【0009】Si:0.20乃至0.55質量% Siは脱酸性元素である。Siの含有量が0.20質量
%未満では、脱酸効果が弱くなり気孔が発生しやすくな
る。一方、Siの含有量が0.55質量%を超えると、
溶滴の粘性が高くなり、ワイヤ先端からの溶滴の離脱が
不安定になり、アークの安定性を劣化させる。従って、
Siの含有量は0.20乃至0.55質量%とする。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正内容】
【0010】Mn:1.30乃至1.90質量% Mnは脱酸元素であると共に、強度及び靭性を高める元
素でもある。Mnの含有量が1.30質量%未満では強
度と靭性が不足する。一方、Mnの含有量が1.90
%を超えると、ラス状組織を呈し溶接金属の靭性を劣
化させる。従って、Mnの含有量は1.30乃至1.9
質量%とする。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正内容】
【0011】Ni:2.0乃至3.5質量% Niは強度と靭性とを高める元素である。Niの含有量
が2.0質量%未満では、高靭性を得ることができな
い。一方、Niの含有量が3.5質量%を超えると、凝
固割れが発生しやすくなる。従って、Niの含有量は
2.0乃至3.5質量%とする。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正内容】
【0012】Cr:0.1乃至0.9質量%及びMo:
0.1乃至0.9質量%からなる群から選択された少な
くとも1種 Cr及びMoは同様の効果を有する物質で、強度を向上
させるのに有効である。Cr及びMoの含有量が夫々
0.1質量%未満では、強度向上に十分な効果を得るこ
とができない。一方、Cr及びMoの含有量が夫々0.
質量%を超えると、溶接金属がラス状組織になり、靭
性が低下する。従って、Cr:0.1乃至0.9質量
及びMo:0.1乃至0.9質量%からなる群から選択
された少なくとも1種を含有する。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正内容】
【0013】N:20乃至150質量ppm Nは強度と靭性を高めるために有効な元素である。Nの
含有量が20質量ppm未満では、強度と靭性を高める
効果を得ることができない。一方、Nの含有量が150
質量ppmを超えると、気孔が発生しやすくなる。従っ
て、Nの含有量は20乃至150質量ppmとする。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正内容】
【0014】S:0.002乃至0.012質量% Sは溶滴の表面張力を減少させて、ワイヤ先端の溶滴を
細かい状態で連続的に離脱させ低電流でのアークを安定
させる。また、溶融金属の粘性を減少させて、鋼材への
融合性を向上させる。Sの含有量が0.002質量%未
満では、低電流でのアーク安定性及び溶融金属の粘性の
減少の効果がない。一方、Sの含有量が0.012質量
%を超えると、溶接金属の靭性を低下させる。従って、
Sの含有量は0.002乃至0.012質量%とする。
なお、Sの含有量は0.005質量%を超えると、低電
流でのアーク安定性及び溶融金属の粘性の減少の効果が
著しくなる。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正内容】
【0015】O:20乃至150質量ppm Oは溶滴の表面張力を減少させて、ワイヤ先端の溶滴を
細かい状態で連続的に離脱させ低電流でのアークを安定
化させる。Oの含有量が20質量ppm未満では、溶滴
の表面張力を減少させる効果がない。一方、Oの含有量
が150質量ppmを超えると、溶接金属の酸素量を増
加させて靭性を劣化させる。従って、Oの含有量は20
乃至150質量ppmとする。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正内容】
【0016】H:0.5乃至4質量ppm HはS及びOと同様に溶滴を細かい状態で連続的に離脱
させ、低電流でのアークを安定化させる。Hの含有量が
0.5質量ppm未満では、アークを安定化させる効果
がない。一方、Hの含有量が4質量ppmを超えると、
溶接金属の耐割れ性を著しく劣化させる。従って、Hの
含有量は0.5乃至4質量ppmとする。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正内容】
【0017】Ti:0.01乃至0.08質量%及び
V:0.01乃至0.18質量%からなる群から選択さ
れた少なくとも1種 Tiは脱酸性元素であると共に、強度の向上に有効であ
る。Tiの含有量が0.01質量%未満では、十分な脱
酸性及び強度の向上の効果を発現しない。一方、Tiの
含有量が0.08質量%を超えると、溶滴の粘性を高め
て溶滴の離脱を不連続にし、アークの安定性を劣化させ
る。また、靭性も劣化させる。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正内容】
【0018】また、Vは強度、特に耐力の向上に有効で
ある。Vの含有量が0.01質量%未満では、耐力の向
上に十分な効果が発現しない。一方、Vの含有量が0.
18質量%を超えると、靭性が低下する。従って、T
i:0.01乃至0.08質量%及びV:0.01乃至
0.18質量%からなる群から選択された少なくとも1
種を含有する。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正内容】
【0019】Nb:0.01質量%以下 Nbは炭化物を形成して溶接金属の靭性を劣化させる。
Nbの含有量が0.01質量%を超えると、炭化物を形
成する作用が顕著になる。従って、Nbの含有量は0.
01質量%以下に規制する。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正内容】
【0020】Al:0.02質量%以下 Alは強脱酸性元素である。Alの含有量が0.02
%を超えると、溶滴の粘性を高めて溶滴の離脱を不連
続にし、アークの安定性を著しく劣化する。従って、A
lの含有量は0.02質量%以下に規制する。
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正内容】
【0021】B:10質量ppm以下 Bは焼入れ性の強い元素である。Bの含有量が10質量
ppmを超えると、ラス状組織を呈して、靭性を劣化さ
せる。従って、Bの含有量は10質量ppm以下に規制
する。
【手続補正16】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正内容】
【0022】Cu:0.4質量%以下 Cuは防錆用メッキ分を含む。Cuの含有量が0.4
%を超えると、溶接金属に凝固割れが発生しやすくな
る。従って、Cuの含有量は0.4質量%以下に規制す
る。
【手続補正17】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正内容】
【0023】P:0.012質量%以下 Pは靭性及び耐凝固割れ性を著しく劣化させる。Pの含
有量が0.012質量%を超えると、靭性及び耐凝固割
れ性を著しく劣化させる。従って、Pの含有量は0.0
12質量%以下に規制する。
【手続補正18】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0024
【補正方法】変更
【補正内容】
【0024】Ca:50質量ppm以下 CaはMgと同効物質であり、Caの含有量が50質量
ppmを超えると、スラグの剥離性を劣化させ、溶接作
業性を著しく低下させる。従って、Caは50質量pp
m以下に規制する。
【手続補正19】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】変更
【補正内容】
【0025】Mg:50質量ppm以下 MgはCaと同効物質であり、Mgの含有量が50質量
ppmを超えると、スラグの剥離性を劣化させ、溶接作
業性を著しく低下させる。従って、Mgは50質量pp
m以下に規制する。
【手続補正20】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0035
【補正方法】変更
【補正内容】
【0035】
【表1】
【手続補正21】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0036
【補正方法】変更
【補正内容】
【0036】
【表2】
【手続補正22】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0037
【補正方法】変更
【補正内容】
【0037】
【表3】
【手続補正23】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0038
【補正方法】変更
【補正内容】
【0038】
【表4】
【手続補正24】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0039
【補正方法】変更
【補正内容】
【0039】
【表5】
【手続補正25】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0040
【補正方法】変更
【補正内容】
【0040】
【表6】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4E001 AA03 BB08 CA02 CC03 DA06 DC01 DD02 DD04 DE04 EA05 4E081 AA05 BA05 BA27 BB03 CA08 DA11 DA23 DA49 DA58 FA01

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Si:0.20乃至0.55重量%、M
    n:1.30乃至1.90重量%、Ni:2.0乃至
    3.5重量%、Cr:0.1乃至0.9重量%及びM
    o:0.1乃至0.9重量%からなる群から選択された
    少なくとも1種、N:20乃至150重量ppm、S:
    0.002乃至0.012重量%、O:20乃至150
    重量ppm、H:0.5乃至4重量ppm並びにTi:
    0.01乃至0.08重量%及びV:0.01乃至0.
    18重量%からなる群から選択された少なくとも1種を
    含有し、Nbを0.01重量%以下、Alを0.02重
    量%以下、Bを10重量ppm以下、Cuを0.4重量
    %以下、Pを0.012重量%以下、Caを50重量p
    pm以下及びMgを50重量ppm以下に規制し、更に
    Cの含有量を[C]、前記Niの含有量を[Ni]とす
    るとき、[C]を(12−[Ni])/100以下に規
    制し、残部がFe及び不可避的不純物からなることを特
    徴とする高張力鋼用溶接ワイヤ。
  2. 【請求項2】 シールドガスとして80乃至95%のA
    rガスと5乃至20%のCO2ガスとの混合ガスを使用
    し、電源としてパルス電源を使用して溶接されることを
    特徴とする請求項1に記載の高張力鋼用溶接ワイヤ。
  3. 【請求項3】 管材の溶接に使用されることを特徴とす
    る請求項1又は2に記載の高張力鋼用溶接ワイヤ。
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