JP2000282600A - 建物の防火構造及びその施工方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 壁内に設ける引き戸収納においても火災の恐
れがない建物の防火構造及びその施工方法を提供するこ
とである。 【解決手段】 隣接配置される建物ユニット間の隣り合
う壁パネルと壁パネルとの間に周枠を設けて引き戸収納
が形成され、この引き戸収納が上記それぞれの壁パネル
と上記周枠とを防火材として防火被覆されてなる。施工
は、弾性防火材を設けた周枠を一方の壁パネルに設けて
おき、他の壁パネルに当接させる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は壁内に引き戸収納を
設ける場合の建物の防火構造及びその施工方法に関す
る。

【０００２】

【従来の技術】従来、建物の防火構造においては、室内
で火災が発生した場合、上階の部屋や隣室に火炎が達し
ないように工夫している。例えば、火炎により天井板や
壁板が焼損しないようにこれらを防火板にしている。更
には、実公平１−２５１３４号公報に記載の技術では、
天井防火板の上方に小梁を介して防火板を張って空間を
形成して仕切り、天井裏や上階の部屋に火炎が達するの
を防止するように工夫している。

【０００３】このように、建物の防火構造については、
いろいろ工夫されてきているが、なお、防火が完全では
ないところがある。例えば、建物内の部屋間を間仕切壁
で仕切り、間仕切壁に引き戸による出入口を設け、この
間仕切壁内に引き戸収納を設けることがある。

【０００４】特開平１１−２０７３号公報には、複数の
箱形状の建物ユニットからなるユニット建物が記載され
ており、この隣接する建物ユニット間の隣り合う壁パネ
ルと壁パネルとに連通する出入口を形成し、両壁パネル
間に引き戸収納を設けている。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記間
仕切壁内の引き戸収納においても、部屋で火災が発生し
た場合、間仕切壁の表面の壁材を防火材にしても、この
引き戸収納の材料が木材などの可燃物からなっている
と、この引き戸収納内に火炎が侵入し、この中から延焼
が始まり、間仕切壁、天井裏、上階などに更に延焼する
危険がある。

【０００６】また、特開平１１−２０７３号公報の建物
ユニット間の隣り合う壁パネルと壁パネルとの間に引き
戸収納を設ける場合も、建物ユニットの壁パネル全体を
防火材にしないと、その引き戸収納から延焼が起こり、
建物全体に火災が広がる恐れがある。

【０００７】そこで、本発明の目的は、壁内に設ける引
き戸収納においても火災の恐れがない建物の防火構造及
びその施工方法を提供することである。

【０００８】

【課題を解決するための手段】請求項１記載の本発明
は、壁内に引き戸収納が設けられ、この引き戸収納が防
火被覆されてなることを特徴とする建物の防火構造であ
る。

【０００９】請求項２記載の本発明は、箱形状の建物ユ
ニットが隣接配置され、これらの建物ユニット間の隣り
合う壁パネルと壁パネルとの間に周枠を設けて引き戸収
納が形成され、この引き戸収納が上記それぞれの壁パネ
ルと上記周枠とを防火材として防火被覆されてなること
を特徴とする建物の防火構造である。

【００１０】請求項３記載の本発明は、隣り合う壁材と
壁材との間に周枠を設けて引き戸収納を設けるに際し、
両壁材及び周枠を防火材で形成するとともに、弾性防火
材を設けた周枠を一方の壁材に設けておき、この周枠の
弾性防火材を他の壁材に当接させることにより引き戸収
納の防火被覆を形成することを特徴とする建物の防火構
造の施工方法である。

【００１１】本発明において引き戸収納とは、内部に引
き戸を収納することができる空間を有する箱形状のもの
などであり、例えば、引き戸の両面を覆う壁材と引き戸
の周囲を覆う周枠とで厚みの薄い箱形に形成したものな
どが使用できる。

【００１２】本発明において防火被覆とは、防火材によ
って隙間なく被覆して火炎がその反対側まで直ちには達
しないようにするものである。

【００１３】本発明においては引き戸収納を壁パネルと
周枠や、壁材と周枠によって形成しこれらを防火材とし
て防火被覆しているが、これらの全体を防火材とする
他、これらのそれぞれの一部を防火材として防火被覆が
完成されるものであってもよい。各構成材の一部を防火
材として引き戸収納の防火被覆を完成させる場合は、高
価な防火材の使用量が少なくなり安価になったり、他の
材料で補強できるなどの効果がある。

【００１４】本発明における防火材とは、防火材料から
なる被覆材だけでなく耐火被覆材も含むものである。防
火材としては、コンクリート板、セメント板、ＡＬＣ
板、繊維補強セメントけい酸カルシウム板、火山性ガラ
ス質発泡体、ロックウール、セラミック等の無機繊維を
主材としたフェルト材、鉄鋼板、アルミニウム板などの
不燃材料からなるもの、木毛セメント板、木片セメント
板、石膏ボードなどの準不燃材料からなるもの、シリコ
ーンスポンジ、難燃繊維板、難燃プラスチック板、熱膨
張性難燃プラスチックシートなどの難燃材料からなるも
の、これらの複合材料からなるもの等が使用できる。

【００１５】本発明における弾性防火材とは、弾力性を
有しその形状が変化して隙間閉塞作用を持つものであ
り、例えば、上記防火材のうち、ロックウール、セラミ
ック等の無機繊維を主材としたフェルト材、難燃繊維
板、シリコーンスポンジ、上記ロックウールやフェルト
材にシリコーンなどを含侵させたもの、これらの複合材
などが使用できる。

【００１６】

【作用】請求項１記載の本発明の建物の防火構造は、壁
内の引き戸収納が防火被覆されているから、部屋で火災
が発生して火炎が引き戸収納内に達しても、防火被覆に
よって火炎を阻止し、引き戸収納外の壁内に火炎が達す
るのが防がれ、したがってこの引き戸収納から壁、天井
へと火災が拡大延焼するのを防止できる。

【００１７】請求項２記載の本発明の建物の防火構造
は、隣接配置される建物ユニット間の隣り合う壁パネル
と壁パネルとの間に周枠を設けて引き戸収納が形成さ
れ、この引き戸収納が上記それぞれの壁パネルと周枠と
を防火材として防火被覆されてなるから、部屋で火災が
発生して火炎が引き戸収納内に達しても、防火被覆によ
って火炎を阻止し、引き戸収納外の建物ユニット間内に
火炎が達するのが防がれ、したがってこの引き戸収納か
ら他の部屋や天井へと火災が拡大延焼するのを防止でき
る。また、防火材からなる壁パネルを有する建物ユニッ
トと、防火材からなる周枠を予め工場などで製造してお
くことにより、建築現場で簡単に引き戸収納の防火被覆
を行なうことができる。

【００１８】請求項３記載の本発明の建物の防火構造の
施工方法は、隣り合う壁材と壁材との間に周枠を設けて
引き戸収納を設けるに際し、両壁材及び周枠を防火材で
形成するとともに、弾性防火材を設けた周枠を一方の壁
材に設けておき、この周枠の弾性防火材を他の壁材に当
接させることにより引き戸収納の防火被覆を形成するか
ら、建築現場で、一方の壁材の周枠の弾性防火材に他方
の壁材を当接する簡単な作業で引き戸収納の防火被覆が
形成でき、安価になるとともに、弾性防火材の弾力性に
より隙間の発生がなく、建物の防火性を優れたものにで
きる。

【００１９】

【発明の実施の形態】以下、本発明の建物の防火構造及
びその施工方法の実施の形態を図面を参照して説明す
る。図１は本発明の実施例である建物の引き戸収納の部
分の防火構造を示す断面図、図２は本発明の防火構造の
施工方法を説明する斜視図、図３は本発明における引き
戸収納の周枠の部分を説明する断面図である。

【００２０】図１において、壁１内に引き戸収納２が設
けられ、この引き戸収納２が防火被覆されている。壁１
には出入口３が設けられ、この出入口３を開閉する引き
戸４が、上記引き戸収納２と出入口３とを移動可能に設
けられている。引き戸４は防火材の表面が化粧されたも
のからなり、出入口３を防火区画している。

【００２１】壁１は、図２に示すように、箱形状の建物
ユニットＵ１の壁パネル１１と建物ユニットＵ２の壁パ
ネル１２とを重ねることにより、構成されている。

【００２２】建物ユニットＵ１は、床パネル５１の３つ
の側縁に壁パネル１１、１１ａ、１１ｂが立設されて箱
形状に形成されている。建物ユニットＵ２も同様に床パ
ネル５２の３つの側縁に壁パネル１２、１２ａ、１２ｂ
が立設されて箱形状に形成されている。建物ユニットＵ
１は、これと対称の同形状の建物ユニットＵ３と向き合
わせて接合され、一つの部屋を構成する。建物ユニット
Ｕ２も同様にして部屋を構成する。

【００２３】建物ユニットＵ１の壁パネル１１には、出
入口３用の開口３１が形成されており、周枠６がこの開
口３１の周縁にその３辺を略一致させるようにして設け
られている。周枠６は、開口３１の略２倍の大きさにな
っており、開口３１の横に引き戸収納２の部分を内蔵し
ている。周枠６には引き戸４が移動可能に取り付けられ
ている。建物ユニットＵ２の壁パネル１２には、出入口
３用の開口３２が形成されている。

【００２４】壁パネル１１は、図１に示すように、厚み
９０ｍｍの木材からなる枠組１１１の両面に厚み１２ｍ
ｍの繊維強化石膏ボードからなる防火材１１２が張られ
てなる。壁パネル１２も同様には厚み９０ｍｍの木材か
らなる枠組１２１の両面に厚み１２ｍｍの繊維強化石膏
ボードからなる防火材１２２が張られてなる。

【００２５】壁パネル１１の開口３１の周囲には、火山
性ガラス質発泡体とロックウールとの積層板からなる防
火材１１３、１１３、１１４を介して、木質の枠材３１
１、３１２が取り付けられている。この開口３１の周縁
を含んで設けた周枠６は木製枠６１の内側と壁パネル１
２側に防火材６２、６３が設けられて防火被覆されてい
る。防火材６２、６３は火山性ガラス質発泡体とロック
ウールとの積層板からなる。

【００２６】周枠６の壁パネル１２側には、図３にも示
すように、シリコーンスポンジからなる弾性防火材６４
がタッカー６４１によって取り付けられている。

【００２７】周枠６の下枠部にはレール枠材６５と床材
３１４が張られ、これらにレール４１が設けられてい
る。

【００２８】壁パネル１２の開口３２の周囲には、火山
性ガラス質発泡体とロックウールとの積層板からなる防
火材１２３、１２３、１２４を介して、木質の枠材３２
１、３２２が取り付けられている。図１における開口３
２の右側縁の防火材１２５、１２６、つなぎ縦枠材３２
３及びつなぎ床材３２４などは、建物ユニットＵ１と建
物ユニットＵ２とを接合してから張られる。

【００２９】次に、引き戸収納２の施工手順を説明す
る。建物ユニットＵ１の壁パネル１１に、弾性防火材６
４を設けた周枠６を工場で取り付ける。周枠６には、レ
ール４１と引き戸４を取り付けておく。建物ユニットＵ
２には、建築現場で取り付ける部材の防火材１２５、１
２６、つなぎ縦枠材３２３、つなぎ床材３２４、及び出
入口３の上枠の一部となるつなぎ上枠材３２５を積み込
んでおく。

【００３０】建築現場においては、建物ユニットＵ１に
建物ユニットＵ２を隣接配置する。このとき、図１に示
すように、周枠６に設けた弾性防火材６４を、壁パネル
１２の表面の防火材１２２に当接させるようにして、両
建物ユニットＵ１、Ｕ２を設置する。両建物ユニットＵ
１、Ｕ２の設置に多少の誤差があっても、弾性防火材６
４の弾性力により追随し、隙間が生じることがない。

【００３１】次いで、図１に示すように、両建物ユニッ
トをＵ１、Ｕ２の壁パネル１１、１２の開口３１、３２
の隙間を、防火材１２５、１２６、つなぎ縦枠材３２
３、つなぎ床材３２４、つなぎ上枠材３２５を取り付け
ることにより、塞ぐとともに化粧し、出入口３を完成す
る。引き戸４は、出入口３と引き戸収納２とをレール４
１上で移動可能となり、出入口３を開閉する。

【００３２】このように施工すると、引き戸収納２は、
外壁パネル１１の防火材１１２、１１３と、外壁パネル
１２の防火材１２２、１２３と、周枠６の防火材６２、
６３、弾性防火材６４により、隙間なく防火被覆され
る。

【００３３】この建物の防火構造は、隣接配置される建
物ユニットＵ１、Ｕ２間の隣り合う壁パネル１１と壁パ
ネル１２との間に周枠６を設けて引き戸収納２が形成さ
れ、この引き戸収納２が上記のように防火被覆されてな
るから、部屋で火災が発生して火炎が引き戸収納２内に
達しても、防火被覆によって火炎を阻止し、引き戸収納
２外の建物ユニットＵ１、Ｕ２間内に火炎が達するのが
防がれる。したがってこの引き戸収納２から他の部屋や
天井、上階の部屋へと火災が拡大延焼するのを防止でき
るのである。

【００３４】また、防火材１１２、１２２…からなる壁
パネル１１、１２を有する建物ユニットＵ１、Ｕ２と、
防火材６２、６３からなる周枠６と弾性防火材６４を予
め工場で製造しておくので、建築現場では上記のように
簡単に引き戸収納２の防火被覆を行なうことができる。

【００３５】この建物の防火構造の施工方法は、両壁パ
ネル１１、１２及び周枠６を防火材で形成するととも
に、弾性防火材６４を設けた周枠６を一方の壁パネル１
１に設けておき、この周枠６の弾性防火材６４を他の壁
パネル１２に当接させることにより引き戸収納２の防火
被覆を形成するから、建築現場で、一方の壁パネル１１
の周枠６の弾性防火材６４に他方の壁パネル１２を当接
する簡単な作業で引き戸収納２の防火被覆が形成でき、
安価になる。しかも、弾性防火材６４の弾力性により隙
間の発生がなく、建物の防火性を優れたものにできる。

【００３６】以上、本発明の実施の形態を図面により詳
述したが、本発明の具体的な構成はこの実施の形態に限
られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の
設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、単
一の間仕切壁や壁パネル内に引き戸収納を設けてもよ
い。また、弾性防火材は周枠と壁とを施工してから隙間
に挿入するようにしてもよい。周枠は防火材と弾性防火
材とが一体のものや、全体が弾性防火材のものでもよ
い。

【００３７】

【発明の効果】請求項１記載の本発明の建物の防火構造
は、壁内の引き戸収納が防火被覆されてなるから、部屋
で火災が発生して火炎が引き戸収納内に達しても、この
引き戸収納から壁、天井へと火災が拡大延焼するのを防
止できる。

【００３８】請求項２記載の本発明の建物の防火構造
は、隣接配置される建物ユニット間の隣り合う壁パネル
と壁パネルとの間の引き戸収納が、上記それぞれの壁パ
ネルと周枠とを防火材として防火被覆されてなるから、
部屋で火災が発生して火炎が引き戸収納内に達しても、
この引き戸収納から他の隣接する部屋や天井、上階の部
屋へと火災が拡大延焼するのを防止できる。また、これ
らの建物ユニットと周枠とを予め工場などで製造してお
くことにより、建築現場で簡単に引き戸収納の防火被覆
を行なうことができる。

【００３９】請求項３記載の本発明の建物の防火構造の
施工方法は、両壁材及び周枠を防火材で形成し、弾性防
火材を設けた周枠を一方の壁材に設けておき、この周枠
の弾性防火材を他の壁材に当接させることにより引き戸
収納の防火被覆を形成するから、建築現場での作業が簡
単になり、安価になるとともに、建物の防火性を優れた
ものにできる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施例である建物の引き戸収納の部分
の防火構造を示す断面図である。

【図２】本発明の防火構造の施工方法を説明する斜視図
である。

【図３】本発明における引き戸収納の周枠の部分を説明
する断面図である。

【符号の説明】

Ｕ１、Ｕ２ 建物ユニット １ 壁 １１、１２ 壁パネル １１２、１１３、１２２、１２３ 防火材 ２ 引き戸収納 ３ 出入口 ４ 引き戸 ６ 周枠 ６２、６３ 防火材 ６４ 弾性防火材

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 壁内に引き戸収納が設けられ、この引き
   戸収納が防火被覆されてなることを特徴とする建物の防
   火構造。
2. 【請求項２】 箱形状の建物ユニットが隣接配置され、
   これらの建物ユニット間の隣り合う壁パネルと壁パネル
   との間に周枠を設けて引き戸収納が形成され、この引き
   戸収納が上記それぞれの壁パネルと上記周枠とを防火材
   として防火被覆されてなることを特徴とする建物の防火
   構造。
3. 【請求項３】 隣り合う壁材と壁材との間に周枠を設け
   て引き戸収納を設けるに際し、両壁材及び周枠を防火材
   で形成するとともに、弾性防火材を設けた周枠を一方の
   壁材に設けておき、この周枠の弾性防火材を他の壁材に
   当接させることにより引き戸収納の防火被覆を形成する
   ことを特徴とする建物の防火構造の施工方法。