JP2000280132A - カムシャフトミラーのワークレスト装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 前加工されたワークの加工精度の影響を受け
て精度の高いワークの加工ができない。 【解決手段】 外周面にチップ８ａを有するカッタ８に
よりミーリング加工されるワーク２を、複数のレスト部
材６，７により下方及び側方より支持するようにしたカ
ムシャフトミラーのレスト装置において、上記レスト部
材６，７の一方６に、カッタ８によりワーク２をミーリ
ング加工する際発生する主分力を支持する主分力方向パ
ッド６ｂを、また他方のレスト部材７に背分力を支持す
る背分力方向パッド７ｂを設けると共に、上記背分力方
向パッド７ｂを、主分力方向に対して傾斜させたもの
で、ワーク２を加工する際背分力方向パッド７ｂの傾斜
に沿ってワーク２が移動できるので、前加工精度にバラ
ツキがあっても、この影響を少なくでき、これによって
加工精度の向上が図れるようになる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明はワークを支持する
パッドの位置を改善したカムシャフトミラーのワークレ
スト装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来エンジンなどに使用するカムシャフ
トは、カムシャフトミラーにより外周面をミーリング加
工するが、ワークの径が細く、剛性が小さいため、加工
中にワークが撓んで、加工精度が上がらない。

【０００３】このため従来では、ワークレスト装置を使
用してワークの複数のジャーナル部を支持することによ
り、加工中ワークが撓んだり、振動するのを防止して加
工精度を上げており、ワークレスト装置も種々の構成の
ものが提案され、また実用化されている。

【０００４】例えば実開平４−４２３３８号公報や、実
開平５−１６０３２号公報、実開平５−４１６１９号公
報には、加工するワークの下方と側方の２方向にレスト
部材を設けて、これらレスト部材の先端に取付けたパッ
ドにより、ワークのジャーナル外周面を支持することに
より、加工中の切削力によりワークが撓むのを防止し
て、加工精度を向上させたワークレスト装置が記載され
ている。

【０００５】しかしこれら公報のワークレスト装置は、
ワークのジャーナルを下方より支持するパッドの支持面
は水平に、そしてジャーナル側方より支持する支持面は
垂直に形成されているため、前加工されているジャーナ
ル径にバラツキがあると、ジャーナルを側方より支持す
るパッドの支持面とジャーナル外周面に隙間が発生する
ことがあり、その結果加工中の切削力によりワークが撓
んで加工精度が低下したり、加工中に振動が発生して、
騒音の原因となるなどの不具合があった。

【０００６】かかる不具合を改善するため、実開平５−
８６４３５号公報で、ワークのジャーナルを下方より支
持するパッドの支持面を、ジャーナルの側面を支持する
パッド側へ１０度程度低く傾斜する傾斜面とすることに
より、切削力によりジャーナル外周面が、側方を支持す
るパッドの支持面に常時当接するようにしたワークレス
ト装置が記載されている。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】しかし上記実開平５−
８６４３５号公報のように、ジャーナルを下方より支持
するパッドの支持面を１０度程度傾斜させたものでは、
次のような不具合がある。

【０００８】すなわち図１に示すようにワークａのジャ
ーナルｂ下方をパッドｃで、またジャーナルｂの側方を
パッドｄで支持して、カッタｅによりワークａのカムｆ
をミーリング加工するに当り、前加工されたジャーナル
ｂの外径^φＤにバラツキがあって、ジャーナル径が例え
ば^φＤ＋△ｄのジャーナルｂをパッドｃ，ｄで支持した
場合、正規のジャーナル径^φＤの中心に対して、図１の
（イ）の仮想線で示すように、△ｄ／２だけ支持するジ
ャーナルｂの中心がカッタｅ側へ移動した状態で、カッ
タｅによりカムｆが加工されるようになる。

【０００９】その結果、図１の（ロ）の実線で示す本来
の加工形状に対して、仮想線で示すようにカムｆの短径
及び長径で△ｄだけ余分に切削されるなど、カムｆの加
工精度がジャーナルｂの前加工精度に影響されて、精度
の高い加工ができないなどの不具合がある。

【００１０】この発明はかかる従来の不具合を改善する
ためになされたもので、ジャーナルの前加工精度に影響
されることの少ないカムシャフトミラーのワークレスト
装置を提供して、加工精度の向上を図ることを目的とす
るものである。

【００１１】

【課題を解決するための手段及び作用効果】上記目的を
達成するため請求項１記載の発明は、外周面にチップを
有するカッタによりミーリング加工されるワークを、複
数のレスト部材により下方及び側方より支持するように
したカムシャフトミラーのレスト装置において、上記レ
スト部材の一方に、カッタによりワークをミーリング加
工する際発生する主分力を支持する主分力方向パッド
を、また他方のレスト部材に背分力を支持する背分力方
向パッドを設けると共に、上記背分力方向パッドを、主
分力方向に対して傾斜させたものである。

【００１２】上記構成により、前加工されたワークのジ
ャーナル径にバラツキがあっても、切削力により背分力
方向パッドの傾斜に沿って移動し、そのカッタ側への離
接量が少なくなるので、従来の背分力方向パッドを垂直
面としたものに比べて前加工精度のバラツキによる影響
を半減することができる。これによってワークの加工精
度を向上させることができると共に、背分力方向パッド
を傾斜させるだけでよいため、容易かつ安価に実施する
ことができる。

【００１３】上記目的を達成するため請求項２記載の発
明は、外周面にチップを有するカッタによりミーリング
加工されるワークを、複数のレスト部材により下方及び
側方より支持するようにしたカムシャフトミラーのレス
ト装置において、上記レスト部材の一方に、カッタによ
りワークをミーリング加工する際発生する主分力を支持
する主分力方向パッドを、また他方のレスト部材に背分
力を支持する背分力方向パッドを設けると共に、上記背
分力方向パッドを、主分力方向に対して、上方へ開く方
向へ１５゜〜４５゜（好ましくは２０゜〜４０゜）の角
度で傾斜させたものである。

【００１４】上記構成により、前加工されたワークのジ
ャーナル径にバラツキがあっても、切削力により背分力
方向パッドの傾斜に沿って上方へ移動し、そのカッタ側
への離接量が少なくなるので、従来の背分力方向パッド
を垂直面としたものに比べて前加工精度のバラツキによ
る影響を半減することができる。これによってワークの
加工精度を向上させることができると共に、背分力方向
パッドを傾斜させるだけでよいため、容易かつ安価に実
施することができる。また背分力方向パッドの傾斜角を
１５゜〜４５゜（好ましくは２０°〜４０°）の範囲と
することにより、前加工精度のバラツキによる影響を最
小限にすることができる。

【００１５】上記目的を達成するため請求項３記載の発
明は、主分力方向パッドを、背分力方向に対して傾斜さ
せたものである。

【００１６】上記構成により、主分力方向パッドの傾斜
によりワークが背分力方向へ移動されるため、背分力方
向パッドの傾斜と、主分力方向パッドの相乗効果によ
り、前加工精度の影響をより小さくできる。

【００１７】上記目的を達成するため請求項４記載の発
明は、主分力方向パッドを、背分力方向パッド側へ順次
低くなるように、０゜〜４５゜（好ましくは１０°〜４
０°）の角度で傾斜させたものである。

【００１８】上記構成により、主分力方向パッドの傾斜
によりワークが背分力方向へ移動されるため、背分力方
向パッドの傾斜と、主分力方向パッドの相乗効果によ
り、前加工精度の影響をより小さくできる。また主分力
方向パッドの傾斜角を０゜〜４５゜（好ましくは１０°
〜４０°）の範囲とすることにより、前加工精度の影響
をさらに小さくできる。

【００１９】

【発明の実施の形態】この発明の実施の形態を図２以下
に示す図面を参照して詳述する。図２はカムシャフトミ
ラーに設けられたワークレスト装置の側面図、図３はワ
ークを支持するレスト部材の拡大側面図、図４はワーク
レスト装置の作用説明図である。

【００２０】これら図において１はカムシャフトミラー
で、手前側に低く傾斜し、かつワーク２の長手方向に長
尺なベッド１ａを有しており、このベッド１ａの両端側
に、加工すべきワーク２の両端を支持して、ワーク２を
回転させる一対のワークヘッド（図示せず）が設けられ
ている。

【００２１】３は上記ベッド１ａ上に設置されたワーク
レスト本体で、ベッド１ａ上をワーク２の長手方向へ移
動自在なスライドベース３ａを有しており、このスライ
ドベース３ａはクランプ手段４によりベッド１ａの任意
な位置に固定できるようになっている。上記スライドベ
ース３ａ上にはレスト支持部材３ｂが設けられていて、
このレスト支持部材３ｂに、ワーク２のジャーナル２ａ
を下方より支持するレスト部材６と、ジャーナル２ａを
側方より支持するレスト部材７が固着具５により着脱自
在に取付けられており、ジャーナル２ａを側方より支持
するレスト部材６と、ワーク２を挟んで対向する側に、
外周面に複数のチップ８ａが取付けられたカッタ８が回
転自在に設けられている。

【００２２】またワーク２のジャーナル２ａを下方より
支持するレスト部材６のワーク支持面６ａは、側方を支
持するレスト部材７側へ順次低くなるよう水平面に対し
て２０゜〜４０゜の角度に傾斜されていて、このワーク
支持面６ａに、ワーク２のジャーナル２ａを下方より支
持するパッド６ｂ（以下主分力方向パッドという）がワ
ーク支持面６ａと同じ角度αで取付けられている。上記
ワーク２を側方から支持するレスト部材７のワーク支持
面７ａは、垂直面に対して、上方へ開く方向へ１５゜〜
４５゜、好ましくは２０゜〜４０゜の角度に傾斜されて
いて、このワーク支持面７ａに、ワーク３のジャーナル
３ａを側方より支持するパッド７ｂ（以下背分力方向パ
ッドという）がワーク支持面７ａと同じ角度βで取付け
られている。

【００２３】次に上記構成されたワークレスト装置を使
用してカムシャフト（ワーク２）を加工する際の作用を
説明する。カムシャフトミラー１によりカム２ｂの外周
面をミーリング加工したり、面取り加工するワーク２
は、予めレスト部材６，７により支持されるジャーナル
２ａが前加工されており、カムシャフトミラー１に搬入
されたワーク２は、両端がワークヘッドに設けられたチ
ャック（何れも図示せず）にクランプされて、回転され
る。

【００２４】また回転するワーク２を回転するカッタ８
でミーリング加工すると、カッタ８の切削力により図３
に示すように垂直方向の主分力Ａと水平方向の背分力Ｂ
が発生し、主分力方向パッド６ｂに主分力Ａが、そして
背分力方向パッド７ｂに背分力Ｂが作用する。

【００２５】いま各パッド６ｂ，７ｂの傾斜角α、βを
例えば３０゜とし、ジャーナル径が ^φＤのワーク２を各
パッド６ｂ，７ｂで支持し、ワーク２の加工を行うに当
たって、前加工されたワーク２のジャーナル径^φＤが△
ｄだけ大きいワーク２を加工する場合、従来の主分力方
向パッド６ｂのみを傾斜させた場合、寸法のバラツキ＋
△ｄによる中心のずれ（偏心量）は、図４の（イ）に示
すようにε＝△ｄ／２となる。

【００２６】これに対して、主分力方向パッド６ｂと背
分力方向パッド７ｂの何れも３０゜傾斜させた場合、寸
法のバラツキ＋△ｄによる中心のずれεは、図４の
（ロ）に示すようにε＝△ｄ／５，６となって、従来の
パッドに対して偏心量εが１／２．８に低減される。そ
の理由は、切削時の主分力Ａがジャーナル２ａを介し
て、主分力方向パッド６ｂに作用すると、ジャーナル２
ａは主分力方向パッド２ａの傾斜に沿って背分力方向パ
ッド７ｂ側へ移動しようとすることにある。

【００２７】従来の背分力方向パッド７ｂは、ワーク支
持面７ａが垂直に形成されているため、主分力方向パッ
ド６ｂが傾斜していても、ジャーナル２ａは背分力方向
パッド７ａと当接する位置までしか移動できず、その結
果偏心量εは△ｄ／２となって、例えばジャーナル径^φ
Ｄが^φ２４のワーク２の場合、偏心量εは０．０５０に
達する。

【００２８】しかしこの発明のように、背分力方向パッ
ド７ｂを傾斜させておくことにより、主分力方向パッド
６ｂの傾斜に沿って移動しようとしたジャーナル２ａ
は、背分力方向パッド７ｂの傾斜により、図４の（ハ）
の仮想線で示すように上方向へ逃げることができ、その
結果偏心量εは、従来のε＝０．０５０に対して、ε＝
０．０１８とほぼ１／２．８に低減されるため、前加工
されたジャーナル２ａの加工精度のバラツキの影響を１
／２以下に低減することができる。

【００２９】なお従来のワークレスト装置を使用してワ
ーク２の加工を行った場合と、この発明のワークレスト
装置を使用してワーク２の加工を行った場合の加工精度
のバラツキを測定した結果を図５に示す。カムシャフト
ミラー１により加工したワーク２は、１本の軸の８個所
にカムが設けられたカムシャフトで、１ｃ，２ｃ…８ｃ
は、測定したカムの番号を示す。また縦軸は、加工精度
のバラツキを示すもので、カムの短径、長径、リフトエ
ラー（Ｍａｘ）、リフトエラー（Ｍｉｎ）についてそれ
ぞれ測定した結果を示してある。

【００３０】この図から明らかなように、従来のワーク
レスト装置でジャーナル２ａを支持して例えば第５カム
５ｃの加工を行った場合、従来では短径で０．２１、長
径で０．２１、リフトエラー（Ｍａｘ）０．１０、リフ
トエラー（Ｍｉｎ）で０．１２のバラツキがあったのに
対して、この発明の主分力方向及び背分力方向パッド６
ｂ，７ｂをそれぞれ３０゜傾斜させたものでは、短径で
０．１２、長径で０．１０、リフトエラー（Ｍａｘ）で
０．０８、リフトエラー（Ｍｉｎ）で０．０５となり、
主分力方向パッド６ｂを２０゜、背分力方向パッド７ｂ
を３０゜傾斜させた場合は、短径で０．０９、長径で
０．０９、リフトエラー（Ｍａｘ）で０．０１５、リフ
トエラー（Ｍｉｎ）で０．０５となり、従来のものより
加工精度が大幅に向上したことが確認できた。

【００３１】一方図６は主分力方向パッド６ｂと背分力
方向パッド７ｂの傾斜角と、偏心量εの関係を示す線
図、図７の（イ）ないし（リ）及び図８の（イ）ないし
（ヘ）は、主分力方向パッド６ｂと、背分力方向パッド
７ｂの角度α、βを変えてワーク２を加工した場合の背
分力方向の偏心量εと、主分力方向の偏心量ε′を測定
した結果を示す。これら図から明らかなように、主分力
方向パッド６ｂの傾斜角αは０゜〜４５゜、好ましくは
１０゜〜４０゜、背分力方向パッド７ｂの傾斜角βは、
１５゜〜４５゜、好ましくは１０゜〜４０゜の範囲でよ
い結果が得られる。

【図面の簡単な説明】

【図１】（イ）及び（ロ）は従来のカムシャフトミラー
のワークレスト装置を示す説明図である。

【図２】この発明の実施の形態になるカムシャフトミラ
ーのワークレスト装置を示す側面図である。

【図３】この発明の実施の形態になるカムシャフトミラ
ーのワークレスト装置に設けられたレスト部材の拡大側
面図である。

【図４】この発明の実施の形態になるカムシャフトミラ
ーのワークレスト装置の作用説明図である。

【図５】この発明の実施の形態になるワークレスト装置
を使用してワークを加工した場合と、従来のワークレス
ト装置でワークを加工した場合の加工精度のバラツキを
示す説明図である。

【図６】主分力方向パッドの角度と背分力方向パッドの
傾斜の組合わせにより生じる偏心量を示す線図である。

【図７】（イ）ないし（リ）は主分力方向パッドと、背
分力方向パッドの傾斜を変えたことにより生じる主分力
方向の偏心量及び背分力方向の偏心量を示す説明図であ
る。

【図８】（イ）ないし（ヘ）は主分力方向パッドと、背
分力方向パッドの傾斜を変えたことにより生じる主分力
方向の偏心量及び背分力方向の偏心量を示す説明図であ
る。

【符号の説明】

２…ワーク ６…レスト部材 ６ｂ…主分力方向パッド ７…レスト部材 ７ｂ…背分力方向パッド ８…カッタ ８ａ…チップ

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 外周面にチップ（８ａ）を有するカッタ
   （８）によりミーリング加工されるワーク（２）を、複
   数のレスト部材（６，７）により下方及び側方より支持
   するようにしたカムシャフトミラーのワークレスト装置
   において、上記レスト部材（６，７）の一方（６）に、
   カッタ（８）によりワーク（２）をミーリング加工する
   際発生する主分力を支持する主分力方向パッド（６ｂ）
   を、また他方のレスト部材（７）に背分力を支持する背
   分力方向パッド（７ｂ）を設けると共に、上記背分力方
   向パッド（７ｂ）を、主分力方向に対して傾斜させたこ
   とを特徴とするカムシャフトミラーのワークレスト装
   置。
2. 【請求項２】 外周面にチップ（８ａ）を有するカッタ
   （８）によりミーリング加工されるワーク（２）を、複
   数のレスト部材（６，７）により下方及び側方より支持
   するようにしたカムシャフトミラーのワークレスト装置
   において、上記レスト部材（６，７）の一方（７）に、
   カッタ（８）によりワーク（２）をミーリング加工する
   際発生する主分力を支持する主分力方向パッド（６ｂ）
   を、また他方のレスト部材（７）に背分力を支持する背
   分力方向パッド（７ｂ）を設けると共に、上記背分力方
   向パッド（７ｂ）を、主分力方向に対して、上方へ開く
   方向へ１５゜〜４５゜の角度で傾斜させたことを特徴と
   するカムシャフトミラーのワークレスト装置。
3. 【請求項３】 主分力方向パッド（６ｂ）を、背分力方
   向に対して傾斜させてなる請求項１または２記載のカム
   シャフトミラーのワークレスト装置。
4. 【請求項４】 主分力方向パッド（６ｂ）を、背分力方
   向パッド（７ｂ）側へ順次低くなるように、０゜〜４５
   ゜の角度で傾斜させてなる請求項１または２記載のカム
   シャフトミラーのワークレスト装置。