JP2000277815A - 金属短細線分散熱電材料およびその作製方法 - Google Patents

金属短細線分散熱電材料およびその作製方法

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公洋 尾崎
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 マグネシウム−シリコン化合物熱電材料にお
いて、金属短細線を均一に分散させる方法および優れた
熱電特性を有する熱電材料を提供する。 【解決手段】 マグネシウム粉末、シリコン粉末、とそ
の不可避なる金属元素を、マグネシウムとシリコンの原
子比を2:1として機械的合金化処理を行い、X線回折
結果より明瞭なるマグネシウム−シリコン化合物の生成
が確認できる混合粉末を作製し、次いで、得られた粉末
に金属短細線を体積率で5から30%の割合になるよう
に添加して乾式混合した後、これらの粉末を加圧下にて
焼結することによって、マグネシウム−シリコン化合物
と金属短細線が均一に分散した焼結体を製造する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は金属短細線で複合化
した熱電材料およびその作製方法に関する。さらに詳し
くは、本発明は、シリコン粉末およびマグネシウム粉末
を機械的合金化法により合金化し、金属短細線を混合し
てマグネシウム−シリコン化合物と金属短細線からなる
熱電材料を製造する方法およびその材料に関するもので
ある。本発明は、マグネシウム−シリコン金属間化合物
内に金属短細線を均一に分散し、複合化することによ
り、他の物性を損なうことなしに優れた熱電特性を有す
る熱電材料を作製し、提供することを可能とするもので
ある。
【0002】
【従来の技術】マグネシウムに対するシリコンの原子比
率を2:1とした金属間化合物は400℃から500℃
で優れた性能を発揮する熱電材料である。しかし、熱電
材料の性能を評価する性能指数Zは依然として低く、性
能指数の向上が期待されている。性能指数Zはゼーベッ
ク係数、電気伝導率、熱伝導率によって評価され、いず
れの物性値を向上させても、逆に低下する物性値が生じ
てしまう可能性がある。例えば、熱伝導率は小さいほ
ど、電気伝導率は大きいほど性能指数は高くなるが、一
般的に電気伝導率が大きな材料は熱伝導率が大きい。従
来、機械的合金化法を利用し、結晶内に歪みを生じさ
せ、熱伝導率を低下させて、性能指数の向上が図られて
きた。しかし、歪みが大量に導入されるため、電気伝導
率が低下するという問題がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明はマグネシウム
−シリコン金属間化合物に金属短細線を均一分散させ、
電気伝導率を向上させつつ、他の物性を低下させずに熱
電材料を作製する方法を提供するためになされたもので
ある。本発明者らは、上記の問題点を解決するために鋭
意研究した結果、以下の結果を見いだし、本発明を完成
した。まず、マグネシウム粉末とシリコン粉末を原子比
でMg:Si=2:1となるように配合したものを機械
的合金化処理を行い、X線回折により明瞭に確認できる
マグネシウム−シリコン化合物が存在する混合粉末を得
ることができることを見いだした。さらに、機械的合金
化処理後の粉末に金属短細線を体積比率で5から30%
乾式混合した粉末を焼結することによってマグネシウム
−シリコン金属間化合物と金属短細線が均一に分散、複
合化した熱電材料を得ることができることを見いだし
た。すなわち、本発明は、マグネシウム−シリコン金属
間化合物と金属短細線からなる優れた熱電特性を有する
熱電材料およびその製造方法を提供することを目的とす
るものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
の本発明は、以下の技術的手段から構成される。 (1)マグネシウム−シリコン化合物熱電材料に金属短
細線を均一に分散させてなる金属短細線分散熱電材料。 (2)前記(1)に記載の熱電材料を製造する方法であ
って、マグネシウム粉末、シリコン粉末およびその不可
避なる金属元素を、マグネシウムとシリコンの原子比を
2:1として機械的合金化処理を行い、明瞭なるマグネ
シウム−シリコン化合物を生成させた混合粉末に対し、
金属の短細線を体積率で5から30%乾式混合した後、
当該混合粉末を加圧しながら成形し、焼結して焼結体と
することを特徴とする方法。 (3)焼結体を熱処理することを特徴とする前記(2)
に記載の方法。
【0005】
【発明の実施の形態】次に、本発明についてさらに詳細
に説明する。本発明に用いる材料には、市販のマグネシ
ウム粉末、シリコン粉末が利用できる。本発明では、出
発材料として、マグネシウム粉末、シリコン粉末および
その不可避なる金属元素が使用されるが、これは、不可
避的に金属元素が混在する通常のマグネシウム粉末、シ
リコン粉末が用いられることを意味する。粉末の大きさ
については特に指定しないが、一般的には数十ミクロン
から数ミリの粉末が利用できる。これらの材料を、マグ
ネシウムとシリコンの原子比を2:1として機械的合金
化処理を施すが、それには、マグネシウム粉末とシリコ
ン粉末を重量比で63.4:36.6の割合で混合す
る。これらの材料は、上記組成となるように配合すれば
よく、その方法は特に限定されるものではない。
【0006】機械的合金化処理には乾式の粉砕機が利用
でき、振動型ボールミル、遊星型ボールミル、転動型ボ
ールミル、アトライターなどが利用できる。機械的合金
化処理時の雰囲気は粉末の酸化を防止するため、不活性
ガス雰囲気や減圧雰囲気が好ましい。また、機械的合金
化処理時に金属粉末が容器やボールに付着しないように
するためにミリング助剤を総重量の5重量%以下程度添
加してもよい。
【0007】機械的合金化に供する時間は特に指定しな
いが、50時間から300時間が好ましい。50時間よ
り短いと各元素の混合状態が不十分であり、微細混合に
は至っていない可能性がある。また300時間を超える
と機械的合金化処理時に粉末の酸化あるいは窒化が多く
なり、熱電材料の性能劣化をもたらす酸化物や窒化物が
生成される。さらに、機械的合金化時の圧力伝達媒体と
しては、鋼球、セラミックス球、超硬球などの一般的な
粉砕球が利用できる。
【0008】所定の組成に配合されたマグネシウム、シ
リコンの粉末を機械的合金化処理により合金化した粉末
は、数マイクロメートル以下の微細な粉末であり、その
内部は微細な結晶や非晶質で構成されている。また、こ
の粉末には明瞭なるマグネシウム−シリコン化合物の生
成が認められることが特徴である。
【0009】機械的合金化処理を行った粉末とともに混
合する金属短細線には市販の金属細線が利用できる。金
属細線の種類は特に指定しないが、電気伝導率の高いも
のが望ましい。当該金属短細線としては、好適には、例
えば、銅、SUS434、SUS304、チタン、ニッ
ケル細線などが例示されるが、これらに限らず、これら
と同効のものであれば適宜使用することができる。金属
細線の直径は指定しないが、一般的には数十ミクロンか
ら数百ミクロンの直径のものが利用できる。また、金属
短細線の長さも指定しないが、一般的には数百ミクロン
から数ミリのものが利用できる。
【0010】機械的合金化処理を行った粉末とともに混
合する金属短細線の混合割合は、体積率で5から30%
とする。5%より少ないと伝導率向上の効果はなく、3
0%より多いと細線同士が短絡する可能性があり、得ら
れた材料が導体化して熱電材料ではなくなる。金属短細
線の混合には、細線同士あるいは細線と粉末の合金化を
防ぐため、乳鉢混合や湿式混合など低いエネルギーでの
混合を行う必要がある。
【0011】得られた粉末を固化するための雰囲気は、
粉末の酸化を防止するため、不活性ガス雰囲気や減圧あ
るいは真空雰囲気が好ましい。加熱方法は特に指定しな
いが、短時間で目的温度に到達する方法が好ましく、例
えば、通電加熱や赤外線イメージ炉、高周波加熱炉など
が利用できる。また、加熱時には成形性を向上するた
め、加圧しなければならない。加圧方法は特に指定しな
いが、一般的には油圧や空圧を利用した一軸の加圧や、
ガス圧を利用した等方的な加圧が利用される。焼結は、
例えば、3000〜3500kgf/cm2 の圧力下に
500〜600℃で適宜の時間保持して行い、これによ
り、マグネシウム−シリコン化合物と金属短細線が均一
に分散、複合化した緻密な焼結体を作製する。さらに、
熱処理を施すが、これにより、マグネシウム−シリコン
化合物をより安定化させ、金属短細線との結合をより強
固にすることができる。
【0012】
【実施例】以下実施例で本発明をさらに詳細に説明す
る。以下の実施例は本発明の好適な一例を示すものであ
り、本発明は、該実施例により何ら限定されるものでは
ない。 実施例1 マグネシウム粉末(和光純薬試薬特級)9.5gにシリ
コン粉末(ナカライテスク試薬特級)5.5gを添加
し、ミリング助剤としてステアリン酸を0.7gを加え
て遊星型ボールミルにて100時間の機械的合金化処理
を行った。機械的合金化処理時の雰囲気は500mmH
gの減圧アルゴンガス雰囲気とし、粉末とボールの重量
比が約1:10になるようにした。容器と10mm径の
粉砕球にはクロム鋼を用いた。得られた材料は数マイク
ロメートル程度の粉末であり、X線回折により明瞭なる
マグネシウム−シリコン化合物の合成が認められた(図
1)。
【0013】得られた混合粉末1.43gに、直径70
μm で長さが3mmから5mmの銅の細線を0.34g
加え、乳鉢にて乾式混合した。
【0014】機械的合金化後の粉末に銅細線を混合した
粉末を直径10mmの超硬合金製の型にいれ、約1mm
Hgの真空中で通電加熱による固化成形を行った。焼結
は、3000kgf/cm2 の加圧下にて550℃で5
分間保持した。
【0015】得られた成形体は、マグネシウム−シリコ
ン化合物と銅の細線が均一に分散しており、かつ、緻密
な成形体となっていた。また、銅の細線の添加により電
気伝導率は20倍程度大きくなった。そのデータを表1
に示す。
【0016】
【表1】
【0017】実施例2 マグネシウム粉末(和光純薬試薬特級)12.7gにシ
リコン粉末(ナカライテスク試薬特級)7.3gを添加
し、遊星型ボールミルにて200時間の機械的合金化処
理を行った。機械的合金化処理時の雰囲気は500mm
Hgの減圧アルゴンガス雰囲気とし、粉末とボールの重
量比が約1:10になるようにした。容器と10mm径
の粉砕球にはクロム鋼を用いた。得られた材料は数マイ
クロメートル程度の粉末であり、X線回折によりマグネ
シウム−シリコン化合物の合成が認められた。
【0018】得られた粉末1.43gに、直径70μm
で長さが3mmから5mmのSUS434の細線を0.
3g加え、乳鉢にて乾式混合した。
【0019】得られた混合粉末を直径15mmの黒鉛型
にいれ、約1mmHgの減圧雰囲気で通電加熱による固
化成形を行った。焼結は、340kgf/cm2 の加圧
下にて400℃で5分間保持した後、800℃まで昇温
し、800℃で5分間保持した。
【0020】得られた成形体は、マグネシウム−シリコ
ン化合物とSUS434の細線が均一に分散しており緻
密な成形体となっていた。また、SUS434の細線の
添加により電気伝導率は5倍程度大きくなった。そのデ
ータを表2に示す。
【0021】
【表2】
【0022】実施例3 マグネシウム粉末(和光純薬試薬特級)12.7gにシ
リコン粉末(ナカライテスク試薬特級)7.3gを添加
し、ミリング助剤としてステアリン酸を0.7gを加え
て遊星型ボールミルにて150時間の機械的合金化処理
を行った。機械的合金化処理時の雰囲気は500mmH
gの減圧窒素ガス雰囲気とし、粉末とボールの重量比が
約1:10になるようにした。容器と10mm径の粉砕
球にはクロム鋼を用いた。得られた材料は数マイクロメ
ートル程度の粉末であり、X線回折によりマグネシウム
−シリコン化合物の合成が認められた。
【0023】得られた粉末1.43gに、直径50μm
で長さが3mmから5mmのチタンの細線0.35gを
加え、乳鉢にて乾式混合した。
【0024】得られた混合粉末を直径10mmの黒鉛型
にいれ、約1mmHgの減圧雰囲気で通電加熱による固
化成形を行った。焼結は、340kgf/cm2 の加圧
下にて800℃で5分間保持した。さらに、焼結後、大
気圧のアルゴン雰囲気中、600℃で3時間熱処理し
た。
【0025】得られた成形体は、マグネシウム−シリコ
ン化合物とチタンの細線が均一に分散しており緻密な成
形体が得られた。また、チタンの細線の添加により電気
伝導率は2倍程度大きくなった。また、熱処理を施すこ
とにより、マグネシウム−シリコン化合物がより安定
し、チタン細線との結合が強固になった。そのデータを
表3に示す。
【0026】
【表3】
【0027】
【発明の効果】本発明の熱電材料およびその作製方法を
用いることにより、1)マグネシウム−シリコン化合物
内に金属細線を分散し、他の物性を損なうことなく電気
伝導性を向上させることが可能であり、優れた熱電特性
を有する熱電材料を作ることができる、2)従来、熱電
材料の性能向上にはドーピング材の適正添加、機械的合
金化処理による結晶格子への大歪みの導入などがあげら
れるが、本発明では、さらに金属短細線を用いること
で、熱伝導率の低下とともに電気伝導率の向上が期待で
きる、3)他の物性に悪影響を与えることなく電気伝導
率を向上させ、性能指数を高めることが可能であるた
め、熱電材料の工業的な用途の拡大に貢献することがで
きる、4)さらに、金属細線による繊維強化により、従
来、もろい材料として知られる熱電材料の高強度化がは
かられ、その用途の拡大をはかることができる、等の格
別の効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【図1】マグネシウム−シリコン化合物のピークが明瞭
に現れたX線回折結果を示す説明図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // C22C 23/00 C22C 1/09 B (72)発明者 松本 章宏 愛知県名古屋市名東区平和が丘1丁目70番 地 猪子石住宅6棟401号 (72)発明者 尾崎 公洋 愛知県名古屋市名東区平和が丘1丁目70番 地 猪子石住宅6棟503号 (72)発明者 西尾 敏幸 愛知県名古屋市名東区平和が丘1丁目70番 地 猪子石住宅1棟501号 Fターム(参考) 4K018 AA13 AB08 AC01 BA07 BC12 BC16 CA01 CA11 DA32 EA22 FA08 KA32 4K020 AA10 AC02 AC07 BB08 BC02

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 マグネシウム−シリコン化合物熱電材料
    に金属短細線を均一に分散させてなる金属短細線分散熱
    電材料。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の熱電材料を製造する方法
    であって、マグネシウム粉末、シリコン粉末およびその
    不可避なる金属元素を、マグネシウムとシリコンの原子
    比を2:1として機械的合金化処理を行い、明瞭なるマ
    グネシウム−シリコン化合物を生成させた混合粉末に対
    し、金属の短細線を体積率で5から30%乾式混合した
    後、当該混合粉末を加圧しながら成形し、焼結して焼結
    体とすることを特徴とする方法。
  3. 【請求項3】 焼結体を熱処理することを特徴とする請
    求項2記載の方法。
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