JP5728684B2 - 快削性セラミックス及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、快削性を付与するために六方晶系窒化ホウ素を含有させた快削性セラミックス及びその製造方法に関する。
セラミックスは高温特性や機械的特性に優れているものも多く、その特性を活かせる箇所に適用されれば、優れた機能性材料となる可能性を秘めている。しかしながら、製造工程における焼結時の収縮が大きいため、形状や寸法を高精度とするためには、焼結後に研削加工をする必要がある。しかも、セラミックスは一般に硬くて脆いため、切削加工が困難であるという欠点を有しており、これが実用化を阻む理由となっていた。
こうした欠点を克服するため、セラミックスに六方晶系窒化ホウ素(以下「h-BN」という場合がある)を分散させることにより劈開性を付与し、これにより切削加工を容易にした快削性セラミックス(マシナブルセラミックスとも呼ばれる)が開発されている。
例えば特許文献1では、快削性セラミックスの製造方法として、ZrO2とh-BN、Si3N4、焼結助剤(Al2O3、Y2O3等)を湿式で混合し、乾燥させた後、ホットプレスにて窒素雰囲気中1600℃、2時間、30MPaで焼成することが開示されている。
また、特許文献2では、h-BNとSi3N4と焼結助剤(Al2O3、Y2O3等)とを湿式で混合し、これを乾燥させた粉末をホットプレスにて窒素雰囲気中1850℃、 2h、30MPaで焼成することが開示されている。
さらに、特許文献3では、h-BNとAlNと金属もしくは金属化合物からなる焼結助剤を湿式で混合し、これを乾燥させた粉末をホットプレスにて窒素雰囲気中2000℃、3h、20MPaで焼成することが開示されている。
特開2005−119941号公報 特許第3586784号 特開2008−24530号公報
上記従来の六方晶系窒化ホウ素を快削性付与剤として分散させた快削性セラミックスでは、1450℃以上という高温下、ホットプレス装置を用いて20MPa以上という高圧で焼結させなければならない。このため、製造が困難で且つ製造コストが高いものとなっていた。
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであり、六方晶系窒化ホウ素を快削性付与剤として含み、無加圧下で焼成が可能な快削性セラミックス及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記従来の課題を解決するため、六方晶系窒化ホウ素の焼結助剤として酸化ホウ素を添加することを考えた。これは、酸化ホウ素が長石等他の焼結助剤よりも融点が低く、焼結温度を低くすることが予想されたからである。ところが、予想に反し、基材となるセラミックス粉体と六方晶系窒化ホウ素と酸化ホウ素とを混合してプレ成形し、これを非酸化雰囲気下で焼結しようとしても焼結は困難であった。このため、発明者らはさらに研究を重ね、この焼結失敗の原因について検討を重ねた。
その結果、酸化ホウ素の溶融物はh-BNの粒子表面に濡れるものの、次の2つの理由から、焼結が困難となるとのではないかと推論した。すなわち、
(1)基材となるセラミック粉体との混合時にh-BNが破断されて新たに露出した破断面には酸化ホウ素が存在しないこと。
(2)基材となるセラミックス粉体と六方晶系窒化ホウ素と酸化ホウ素とを混合しても、基材セラミックス粉体と六方晶系窒化ホウ素の接触界面に酸化ホウ素が均質に分散された状態にはならない。
の2つの理由である。
そして、この推論に基づき、さらに鋭意研究を重ねた結果、快削性付与剤として用いる六方晶系窒化ホウ素からなる粉体の各粒子の表面のみならず内部にも酸素が含まれている場合(すなわち、六方晶系窒化ホウ素の各粒子の内部にまで酸化ホウ素が分散して存在している場合)には、特にホットプレス装置を用いて加圧下での焼成を行わなくても、六方晶系窒化ホウ素の焼結が可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の快削性セラミックスの製造方法では、快削性付与剤としての六方晶系窒化ホウ素粉体と、基材としてのセラミックス粉体との混合物を非酸化性ガス雰囲気下又は真空中において焼結する快削性セラミックスの製造方法であって、前記六方晶系窒化ホウ素粉体の各粒子には表面のみならず内部にも酸素が含まれていることを特徴とする。
本発明の快削性セラミックスの製造方法では、加圧下での焼成を行なわなくても、六方晶系窒化ホウ素の焼結が可能となる。これは、次のような理由によるものと考えられる。すなわち、まず焼成に先立って快削性付与剤としての六方晶系窒化ホウ素粉体と、基材としてのセラミックス粉体とを混合して成形するとき、六方晶系窒化ホウ素はさらに細かい粒子となる。しかしながら、六方晶系窒化ホウ素からなる粉体粒子は、表面のみならず内部にも酸素が含まれているため、細かくされた六方晶系窒化ホウ素粒子の新たに現れた断面部分にも、酸化ホウ素(B)が存在することとなる。このため、焼成時において、細かくされた六方晶系窒化ホウ素粒子が溶解した酸化ホウ素に濡れる。このため、無加圧下で焼成が可能なとなり、機械的強度も優れたものとなるのである。
これに対し、粒子の表面のみに酸素を有する(換言すれば表面のみに酸化ホウ素を有する)六方晶系窒化ホウ素粉末を用いた場合には、快削性付与剤としての六方晶系窒化ホウ素粉体と、基材としてのセラミックス粉体とを混合して成形するとき、六方晶系窒化ホウ素はさらに細かい粒子となり、細かくされた六方晶系窒化ホウ素粒子の新たに現れた断面部分には酸化ホウ素(B)が存在しない。このため、焼成時において、細かくされた六方晶系窒化ホウ素粒子表面には焼結助剤として機能すべき酸化ホウ素が存在しない。このため、無加圧下で焼成は不能となる。
焼結温度は1000℃以上1500℃未満であることが好ましい。焼結温度が1000℃未満では焼結が不十分となり、その結果、機械的強度も不十分となる。また、焼結温度が1500℃以上では、製造のためのエネルギー消費量が多くなるだけでなく、六方晶系窒化ホウ素の酸化反応が生じて酸化ホウ素となり、さらには酸化ホウ素が蒸発し、焼結助剤としての役割が不十分となり、やはり機械的強度が不十分となる。
快削性セラミックスの製造に際しては、遊星ボールミル等を用いて窒化ホウ素の粉末と基材としてのセラミックス粉体塩とをよく混合し、これを一定の形状に成形して焼成に付することが好ましい。六方晶系窒化ホウ素粉体の仕込み量は10〜70容積%であり、前記セラミックス粉体の仕込み量は30〜90容積%であることが好ましい。六方晶系窒化ホウ素粉体が10容積%より少ないと快削性の向上効果が低下する。
六方晶系窒化ホウ素の粒子の内部に酸素が含まれているか否かを調べる方法としては、オージェ電子分光分析におけるイオンミリング法を用いた深さ方向の測定によって、確認することができる。発明者らは、この方法により、SiO換算で300nmの深さにおいて酸素の存在が確認された六方晶系窒化ホウ素を用いて焼結体を製造することにより、機械的強度に優れたものとなることを確認している。さらに好ましいのは600nmの深さにおいて酸素の存在が確認される六方晶系窒化ホウ素であり、最も好ましいのは900nmの深さにおいて酸素の存在が確認される六方晶系窒化ホウ素である。
また、六方晶系窒化ホウ素の酸素含有量は10質量%以上であることが好ましい。こうであれば、六方晶系窒化ホウ素に対する濡れ性が良好となる。
本発明の快削性セラミックスにおいて、基材となるのはセラミックス粉体(ただし六方晶系窒化ホウ素は除く)である。ここで、「基材」とは、本発明における快削性セラミックスに含まれる成分のうち、快削性付与剤としての六方晶系窒化ホウ素粉体を除いたセラミックス成分をいう。
基材となるセラミックス粉体は酸化物、窒化物、炭化物及びこれらの複合化合物からなる群の1種又は2種以上からなることが好ましい。セラミックス粉体のうちでも酸化物や窒化物や炭化物からなるセラミックスは、一般に硬度や融点が高く、こうした高度な機能を快削性セラミックスに付与することができるからである。酸化物、窒化物、炭化物及びこれらの複合化合物として、具体的にはAl、Si、TiC、SiC、ZrO及びサイアロン等が挙げられるが、これらを2種以上組み合わせて用いてもよい。
また、本発明の快削性セラミックスにおいて、六方晶系窒化ホウ素粉体の仕込み量は10〜70容積%であり、前記セラミックス粉体の仕込み量は30〜90容積%であることが好ましい。
本発明の快削性セラミックスの製造方法では、まず混合工程として、粒子の表面のみならず内部にも酸素が含まれている快削性付与剤としての六方晶系窒化ホウ素粉体と、基材としてのセラミックス粉体(ただし六方晶系窒化ホウ素は除く)とを混合して焼結用混合粉とし、ついでプレ形成工程として該焼結用混合粉を圧力成形してプレ成形体とし、さらに焼結工程として、プレ成形体を非酸化性ガス雰囲気下又は真空中において焼結する。
混合粉砕工程後における六方晶系窒化ホウ素の平均粒径は10μm以下とされていることが好ましい。平均粒径を10μm以下まで細かくすれば、焼結体が緻密となり、機械的強度の高い焼結体をより低い温度で得ることができるからである。
また、混合粉砕工程は、湿式で行うこともできるが、その場合には有機溶媒中で行なうことが好ましい。水中で行なうと、酸化ホウ素が溶出するおそれがあるからである。
本発明において、焼結工程では、特に圧力をかけなくても、焼結を行うことができる。このため、ホットプレス装置等の複雑な装置を用意しなくてもよく、製造装置の設備費が低廉化し、ひいては製造コストを低廉化することができる。
また、焼結工程における焼結温度は、原料として用いる六方晶系窒化ホウ素の粒径、酸素の含有量等によって適宜最適な量を決定すればよいが、一般的には1000℃以上1500℃未満であることが好ましい。焼結温度が1000℃未満では焼結が不十分となり、その結果、機械的強度も不十分となる。また、焼結温度が1500℃以上では、製造のためのエネルギー消費量が多くなるだけでなく、六方晶系窒化ホウ素の酸化反応が生じて酸化ホウ素となり、さらには酸化ホウ素が蒸発し、焼結助剤としての役割が不十分となり、やはり機械的強度が不十分となる。
発明者らは、本発明の快削性セラミックスの製造方法により、相対密度が60%以上の焼結体が得られることを確認している。また、得られた焼結体の走査型電子顕微鏡による観察から、焼結体中の六方晶系窒化ホウ素の結晶は、非板状の形態をなすことを確認している。
以上のように、本発明によれば、六方晶系窒化ホウ素を快削性付与剤として含み、無加圧下で製造が可能な快削性セラミックスを製造することができる。
実施例1で使用した窒化ホウ素粉末粒子のオージェ電子分光測定による深さ方向の元素分析結果である。 比較例1で使用した99重量%の窒化ホウ素粉末粒子のオージェ電子分光測定による深さ方向の元素分析結果である。 実施例1及び比較例1の焼結体の外観写真である。 実施例1及び比較例1の焼結体の破断面の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例1の焼結体のXRD測定のチャートである。 比較例1の焼結体のXRD測定のチャートである。
本発明快削性セラミックスの製造方法では、表面のみならず内部にも酸素が含まれている六方晶系窒化ホウ素からなる粉体粒子を用い、アルミナ等のセラミックス粉体と混合して焼結用粉体としてから、焼結を行う。六方晶系窒化ホウ素粉体と、基材としてのセラミックス粉体とを混合するとき、六方晶系窒化ホウ素はさらに細かい粒子となる。しかしながら、六方晶系窒化ホウ素からなる粉体粒子は、表面のみならず内部にも酸素が含まれているため、細かくされた六方晶系窒化ホウ素粒子の新たに現れた断面部分にも、酸化ホウ素(B)が存在することとなる。このため、焼成時において、細かくされた六方晶系窒化ホウ素粒子が溶解した酸化ホウ素に濡れる。このため、無加圧下で焼成が可能なとなり、機械的強度も優れたものとなるのである。焼結は、非酸化性ガス雰囲気下又は真空中において焼結する。ここで、非酸化性ガスとは、焼結時に窒化ホウ素と反応しないガスをいい、アルゴン、ヘリウム等の希ガスの他、窒素ガスも含む。
本発明に使用する六方晶系窒化ホウ素は、六方晶系窒化ホウ素粒子が含有する酸素が当該六方晶系窒化ホウ素粒子の表面のみならず内部にも分布してなる六方晶系窒化ホウ素であれば、特に制限はない。具体的には、例えば市販品としては、六方晶系窒化ホウ素粉末(有限会社オクトム製、商品名:SFM、BNとしての純度40重量%、Bを57重量%含有)が挙げられる。六方晶系窒化ホウ素粉末粒子表面の酸素の存在の有無についてはオージェ電子分光測定によって確認できる。またその内部の酸素の存在については、その窒化ホウ素粒子の観察面をイオンエッチング装置によりエッチングを行うことにより粉体粒子内部の測定を行うことができる。
また、本発明に使用する六方晶系窒化ホウ素は、表面のみならず各粒子の内部まで酸素が存在するため、解砕・粉砕して生じる新生面にも酸素が分布している。このため、酸化処理を特に施さなくても、六方晶系窒化ホウ素粒子やセラミックス粉体との濡れ性が良好であることが特徴である。解砕・粉砕処理を行なう場合の方法について得に制限は無いが、湿式が好ましい。ただし、湿式における媒体として水を用いると、窒化ホウ素に含まれている酸化ホウ素(B)が水に溶出するため、水を含む媒体は避けるべきである。好ましくは、エタノールやイソプロピルアルコール等の有機溶媒中で行う。また解砕・粉砕処理に用いるボールミルは、5mm以下のアルミナ製ボールを用いた遊星ボールミルによる処理が好適であるがこれに制限するものではない。
(実施例1)
<原 料>
実施例1では、原料として以下のものを用いた。
基材:低温焼結性アルミナ(商品名:TM−DAR、大明化学工業製)
快削性付与剤:六方晶系窒化ホウ素粉末(有限会社オクトム製、商品名:SF
M、BNとしての純度40重量%、Bを57重量%含有)
上記酸素含有六方晶系窒化ホウ素を、蛍光X線による定量分析を行ったところ、酸素含有量は25重量%であった。また、オージェ電子分光測定により、この六方晶系窒化ホウ素の深さ方向の元素分析を行った。その結果を図1に示す。図1において200eV、410eV及び540eV付近にあるピークがそれぞれホウ素(B)、窒素(N)及び酸素(O)のピークに相当する。また、イオンエッチングする前の測定結果(すなわちB、N及びOの各プロファイルにおいて、最も手前側のプロファイル)が粒子表面での分析結果である。さらに、イオンエッチング装置によりSiO換算で30nm/1分となるような条件(イオンガンの加速電圧は3kV、イオン生成用のエミッション電流は20mA)で10分間ずつ粉末粒子を表面からエッチングを行って削り取り、粉末内部の分析も行った。その結果、少なくともSiO換算で900nmまでは、相当量の酸素原子が存在していることが分かった。
<混合工程>
上記原料を用いて以下のように混合工程を行った。すなわち、低温焼結性アルミナ粉末と六方晶系窒化ホウ素とを75:25の容積比となるように秤り取り、遊星ボールミルの容器に入れ、さらにイソプロピルアルコール(IPA)を加え、1時間混合した。その後、混合物を乾燥し、焼成用粉末を得た。
<プレ成形工程>
次に、直径16mm、長さ50mmの円筒形の金型に上記焼成用粉末を充填し、30MPaの圧力で圧粉し、さらにCIP(Cold Isostatic Press)を用いて200MPaでプレ成形を行った。こうして得られたプレ成形体の厚さは約6mmとなった。
<焼成工程>
こうして得られたプレ成形体を窒素雰囲気下、昇温速度5℃/minで昇温させ,1300℃で1時間保持した。その後、炉冷し、実施例1の快削性アルミナ基セラミックスを得た。
(比較例1)
比較例1では、実施例1において原料として用いた六方晶系窒化ホウ素粉末(有限会社オクトム製、商品名:SFM、BNとしての純度40重量%、Bを57重量%含有)の替わりに、純度99重量%の六方晶系窒化ホウ素粉末(昭和電工製 UHP)を用いた。その他の条件については、実施例1と同様であり、詳細な説明を省略する。
比較例1で用いた純度99重量%の六方晶系窒化ホウ素粉末のオージェ電子分光測定を行い、深さ方向の元素分析を行った。その結果を図2に示す。図2において184eV及び405eV付近にあるピークがそれぞれホウ素(B)及び窒素(N)のピークに相当する。また、酸素は存在していれば540eV付近に出現するはずであるが、認められなかった。イオンエッチングする前の測定結果(すなわちB、N及びOの各プロファイルにおいて、最も手前側のプロファイル)が粒子表面での分析結果である。さらに、イオンエッチング装置によりSiO換算で30nm/1分となるような条件(イオンガンの加速電圧は3kV、イオン生成用のエミッション電流は20mA)で10分間ずつ粉末粒子を表面からエッチングを行って削り取り、粉末内部の分析も行った。その結果、表面から少なくともSiO換算で900nmまでは、酸素原子がほとんど検出されなかった。
−評 価−
(外観観察及び走査電子顕微鏡による観察)
こうして得られた実施例1及び比較例1の六方晶系窒化ホウ素焼成体の外観写真を図3に示す。また、それらの破断面の走査型電子顕微鏡写真を図4に示す。図4の実施例1の破断面には、六方晶系窒化ホウ素によく見られる板状結晶が認められなかった。これは、酸化ホウ素が粒子内部にまで存在することに起因するものと考えられる。これに対して図4の比較例1の破断面には、六方晶系窒化ホウ素によく見られる板状結晶が認められた。
(相対密度)
また、実施例1及び比較例1の六方晶系窒化ホウ素焼成体の密度を焼結体の寸法、重量及び理論密度から算出した。
(3点曲げ試験)
さらに、実施例1及び比較例1の六方晶系窒化ホウ素焼成体の3点曲げ試験をおこなった。
実施例1及び比較例1の密度と曲げ強度の結果を表1に示す。密度測定の結果、実施例1では2.16(相対密度60.9%)、比較例1では2.49(相対密度70.3)となった。また、3点曲げ試験では、実施例1では37.5MPaと高いのに対し、比較例1では、10.1MPaと小さかった。これは、比較例1では焼結助剤となる酸化ホウ素の含有量が実施例1と比較して少なく、また、粒子の内部にまで酸素が存在することがなかったため、酸化ホウ素が焼成助剤の役割を十分に果たせなかったためであると考えられる。
(XRD測定)
また、実施例1及び比較例1の六方晶系窒化ホウ素焼結体並びに実施例1及び比較例1の焼結前における焼結用粉体のXRDを測定した。その結果、比較例1では、焼結の前後でほとんど変化がなかったのに対し、実施例1では、焼成後にホウ酸アルミニウムのピークが認められ、ホウ酸の一部が酸化アルミニウムと反応することが分かった。
この発明は、上記発明の実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
本発明の方法によれば、六方晶系窒化ホウ素を快削性付与剤として含み、無加圧下で焼成が可能な快削性セラミックス及びその製造方法を提供することができる。このため、これを材料とした潤滑材、電気絶縁材、隙間充填材のような多くの部材を低コストで製造することができる。

Claims (12)

  1. 快削性付与剤としての六方晶系窒化ホウ素粉体と、基材としてのセラミックス粉体との混合物を非酸化性ガス雰囲気下又は真空中において焼結する快削性セラミックスの製造方法であって、
    焼結温度は1450℃未満であり、焼結時に加圧することはなく、前記六方晶系窒化ホウ素粉体の各粒子には表面のみならず内部にも酸素が含まれており、オージェ電子分光分析におけるイオンミリング法を用いた深さ方向の測定において、SiO 換算で少なくとも300nmの深さまでは酸素の存在が確認されることを特徴とする快削性セラミックスの製造方法。
  2. 焼結温度は1000℃以上1450℃未満であることを特徴とする請求項1記載の快削性セラミックスの製造方法。
  3. 前記六方晶系窒化ホウ素粉体の酸素含有量は10質量%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の快削性セラミックスの製造方法。
  4. 前記セラミックス粉体は酸化物、窒化物、炭化物及びこれらの複合化合物からなる群の1種又は2種以上からなることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項記載の快削性セラミックスの製造方法。
  5. 前記セラミックス粉体はAl、Si、TiC、SiC、ZrO及びサイアロンからなる群の1種又は2種以上からなることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項記載の快削性セラミックスの製造方法。
  6. 前記セラミックス粉体はAl及び/又はSiからなることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項記載の快削性セラミックスの製造方法。
  7. 前記六方晶系窒化ホウ素粉体の仕込み量は10〜70容積%であり、前記セラミックス粉体の仕込み量は30〜90容積%であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項記載の快削性セラミックスの製造方法。
  8. 粒子の表面のみならず内部にも酸素が含まれている快削性付与剤としての六方晶系窒化ホウ素粉体と、基材としてのセラミックス粉体(ただし六方晶系窒化ホウ素は除く)とを混合して焼結用混合粉とする混合工程と、
    該焼結用混合粉を圧力成形してプレ成形体とするプレ成形工程と、
    該プレ成形体を非酸化性ガス雰囲気下又は真空中において焼結する焼結工程と、
    を有することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項記載の快削性セラミックスの製造方法。
  9. 焼結温度は1000℃以上1450℃未満であることを特徴とする請求項記載の快削性セラミックスの製造方法。
  10. 前記混合工程は、有機溶媒中で行なうことを特徴とする請求項又は記載の快削性セラミックスの製造方法。
  11. 前記焼結工程は、圧力をかけることなく焼結を行なうことを特徴とする請求項乃至10のいずれか1項に記載の快削性セラミックスの製造方法。
  12. 請求項1乃至1のいずれか1項記載の製造方法で製造されており、焼結体中の六方晶系窒化ホウ素の結晶が非板状の形態をなすことを特徴とする快削性セラミックス。
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