JP2000273660A - 鋳鉄管の防食方法 - Google Patents

鋳鉄管の防食方法

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JP2000273660A JP11083520A JP8352099A JP2000273660A JP 2000273660 A JP2000273660 A JP 2000273660A JP 11083520 A JP11083520 A JP 11083520A JP 8352099 A JP8352099 A JP 8352099A JP 2000273660 A JP2000273660 A JP 2000273660A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 軽量で、耐久性に優れ、かつ鋳鉄管外面のプ
ライマーが内面の粉体塗料塗装時の予熱で劣化せず、白
錆が発生し難い、鋳鉄管の防食方法を提供する。 【解決手段】 工程として、(A)鋳鉄管の外面に、亜
鉛、亜鉛−アルミニウム擬合金、又は亜鉛−アルミニウ
ム合金を溶射し、溶射被膜層を形成する工程、(B)溶
射被膜層表面に、固形分酸価20〜80(mgKOH)
を有し、ゲルパーミュエイションクロマトグラフによる
数平均分子量が8,000〜50,000の範囲にあり、ア
クリル樹脂を固形分換算で80重量%以上の比率で含有
するアクリル系樹脂からなるプライマーを塗装し、プラ
イマー層を形成する工程、(C)前記鋳鉄管を予熱しな
がら、前記予熱工程の間に、前記鋳鉄管の内面に、エポ
キシ樹脂系粉体塗料を塗装して、前記予熱により、前記
エポキシ樹脂系粉体塗料を硬化させ、粉体塗膜層を形成
する工程、及び(D)前記プライマー層の表面に上塗塗
料を塗装し、上塗塗膜層を形成する工程、を含む。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水道管等の各種の
鋳鉄管に適用される鋳鉄管の防食方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、鋳鉄管の防食方法として、次
の工程による方法が広く採用されている。 (1)鋳鉄管の外面に、亜鉛溶射被膜層を形成する工
程。 (2)該亜鉛溶射被膜層表面に、アクリル樹脂系エマル
ジョンプライマー層を形成する工程。 (3)該鋳鉄管の内面に、セメントモルタルライニング
層を形成する工程。 (4)該鋳鉄管を養生する工程。 (5)前記プライマー層表面に上塗塗膜層を形成する工
程。 しかしながら、この従来法は、セメントモルタルライニ
ング層が、鋳鉄管の重量を大巾に増加させることにな
り、また、養生工程により、プライマー層があっても、
白錆が発生しやすく、白錆が発生したプライマー層に上
塗塗膜を形成させた場合、上塗塗膜が剥離しやすい問題
点があった。
【0003】そこで、管内面を、セメントモルタルの代
りに粉体塗料を塗装する方法が、軽量化、耐久性の観点
から優れているため注目されてきている。ところが、粉
体塗料を塗装する鋳鉄管は、プライマー層を形成させた
後、保管スペース等の関係で一般的に屋内外での仮置き
が避けられず、仮置き期間が長いとその間に白錆が発生
し、それが原因で上塗塗膜の密着性が低下するという問
題点がある。また、粉体塗料を塗装する方法は、予め管
体を高温に予熱する必要があるため、その熱によりプラ
イマー層が劣化し、剥離しやすくなる問題点がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、粉体塗料塗
装による軽量化、耐久性の優れた特徴を生かしつつ、管
体の予熱によりプライマー層が劣化せず、また屋内外で
の仮置きでも白錆の発生し難く、それ故、上塗塗膜の密
着性のよい鋳鉄管の防食方法を提供することを目的とす
る。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、前記課題
を解決するために、鋭意研究を行った結果、固形分酸価
20〜80(mgKOH)を有し、ゲルパーミュエイシ
ョンクロマトグラフによる数平均分子量が8,000〜5
0,000の範囲にあり、アクリル樹脂を固形分換算で8
0重量%以上の比率で含有するアクリル系樹脂からなる
プライマー層を鋳鉄管の外面に形成することにより、上
記課題が解決され、防食性に優れた鋳鉄管が製造される
という知見を得た。本発明は、かかる知見に基づき完成
したものである。従って、本発明は、以下の工程、
(A)鋳鉄管の外面に、亜鉛、亜鉛−アルミニウム擬合
金、又は亜鉛−アルミニウム合金を溶射し、溶射被膜層
を形成する工程、(B)溶射被膜層表面に、固形分酸価
20〜80(mgKOH)を有し、ゲルパーミュエイシ
ョンクロマトグラフによる数平均分子量が8,000〜5
0,000の範囲にあり、アクリル樹脂を固形分換算で8
0重量%以上の比率で含有するアクリル系樹脂の溶液か
らなるプライマーを塗装し、プライマー層を形成する工
程、(C)前記鋳鉄管を予熱しながら、前記予熱工程の
間に、前記鋳鉄管の内面に、エポキシ樹脂系粉体塗料を
塗装して、前記予熱により、前記エポキシ樹脂系粉体塗
料を硬化させ、粉体塗膜層を形成する工程、及び(D)
前記プライマー層の表面に上塗塗料を塗装し、上塗塗膜
層を形成する工程、を特徴とする鋳鉄管の防食方法に関
するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。 (A)工程では、鋳鉄管外面を必要に応じて、ブラスト
処理、清掃等の素地調整を行なった後、ガス溶射法、ア
ーク溶射法、プラズマ溶射法等の溶射手段により、亜
鉛、亜鉛−アルミニウム擬合金、又は亜鉛−アルミニウ
ム合金を溶射し、鋳鉄管外面に亜鉛、亜鉛−アルミニウ
ム擬合金、又は亜鉛−アルミニウム合金の溶射被膜層を
形成する。亜鉛−アルミニウム合金における、亜鉛とア
ルミニウムとの重量割合は、例えば、(95:5〜4
0:60)、が防食性の観点から適当である。亜鉛とア
ルミニウムとからなる擬合金は、溶射された亜鉛とアル
ミニウムとが不規則に重なり合い、外見的に亜鉛−アル
ミニウム合金を形成している状態をいう。この場合も、
亜鉛とアルミニウムとの重量割合は、亜鉛−アルミニウ
ム合金の場合と同様である。
【0007】溶射被膜層の厚さは、通常、70〜300
g/m2 、好ましくは、100〜260g/m2 である
ことが、長期防食性、密着性の観点から適当である。溶
射方法としては、回転しながら管軸方向に移送される鋳
鉄管に、固定した溶射ガンより亜鉛、亜鉛−アルミニウ
ム擬合金、又は亜鉛−アルミニウム合金(以下、三者を
単に「亜鉛」と総称する。)を溶射する方法、回転させ
た鋳鉄管に、溶射ガンを移動させながら亜鉛を溶射する
方法が適当であるが、これらに限定されるものではな
く、周知の各種方法で亜鉛を溶射することも可能であ
る。 (B)工程では、鋳鉄管外面に形成させた亜鉛溶射被膜
表面に、溶射被膜から白錆発生防止と、後述する上塗塗
膜の密着性とを向上させるためにプライマーを塗装す
る。
【0008】なお、プライマーを塗装する前に、予め鋳
鉄管を50〜80℃前後の温度になる様、温水槽に浸漬
する等の手段により鋳鉄管を加温した状態でプライマー
を塗装すると乾燥が早くなるので望ましい。本発明で使
用するプライマーは、固形分酸価20〜80(mgKO
H)を有し、ゲルパーミュエイションクロマトグラフに
よる数平均分子量が8,000〜50,000の範囲にあ
り、アクリル樹脂を固形分換算で80重量%以上の比率
で含有するアクリル系樹脂からなる水性アクリル系樹
脂、顔料及び界面活性剤、顔料分散剤、消泡剤等の各種
添加剤からなる。本発明の防食工法においては、亜鉛犠
牲防食層の上にプライマーを塗装して次工程の塗装まで
屋内外に長期間放置される場合も想定される。その場
合、プライマーに要求される性能として、塗膜の耐候
性、下地の亜鉛犠牲防食属との付着性及び亜鉛の防食
性、就中亜鉛の白錆防止性、更に、上塗りとの良好な付
着性が要求される.特に塗膜の耐候性とその他の上記し
た諸要求性能のバランスより、樹脂の種類としてはアク
リル系樹脂が使用される。
【0009】プライマーの主要成分であるアクリル系樹
脂は、(メタ)アクリル酸エステル類及びカルボキシル
基含有のビニル系単量体、更に、必要に応じて、その他
共重合可能なビニル系単量体をラジカル重合開始剤を使
用して重合することにより得られる。溶融練合や、乳化
重合、又は懸濁重合等の公知慣用の手法で樹脂が合成さ
れる。(メタ)アクリル酸エステル類としては、(メ
タ)アクリル酸メチルや、(メタ)アクリル酸エチル、
(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エ
チルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)
アクリル酸ステアリル、(メタ)シクロヘキシル、(メ
タ)アクリル酸ベンジル等が挙げられ、その一種もしく
は二種以上の混合物として用いられる。
【0010】カルボキシル基含有のビニル単量体として
は、例えば、アクリル酸や、メタアクリル酸、クロトン
酸等の一塩基酸単量体や、イタコン酸、マレイン酸、フ
マル酸等の二塩基酸単量体、及びこれらのアルコールハ
ーフエステル類が挙げられる。更に、その他共重合可能
な単量体としては、スチレン、ビニルトルエン、d−メ
チルスチレン等の芳香族単量体や、2−ヒドロキシエチ
ル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレ
ート、(メタ)アクリルアミド等の水酸基、グリシジル
基、アミド基を始め、アルコキシシリル基、アミノ基、
エチレンオキシド基、燐酸基、スルホニル基等の官能基
を分子内に有する官能性基単量体が必要に応じて、任意
選択、使用される。かくして得られるアクリル系樹脂の
固形分の酸価は、良好な下地の亜鉛犠牲防食層への付着
性や、防食性、更には得られる塗膜の耐水性等の兼ね合
いより、固形分の酸価が、20〜80(mgKOH/
g)、好ましくは、40〜60(mgKOH/g)の範
囲にあるのが適当である。
【0011】固形分酸価が20未満の場合には、どうし
ても基材付着性が劣る傾向にあり、酸価が80を越える
と、塗膜の耐水性や防食性が劣るようになる。アクリル
系樹脂の分子量は、ゲルパーミュエイションクロマトグ
ラフによるポリスチレン換算の数平均分子量で、800
0〜50000、好ましくは、15,000〜35,000
の範囲にあるのが適当である。分子量8000未満の場
合得られる塗膜の耐水性、耐候性が劣るようになり、5
0000を超えると基材付着性が劣るようになり、好ま
しくない。アクリル系樹脂のガラス転移温度には特に制
限がないものの、得られる塗膜の基材付着性や、耐ブロ
ッキング性、耐候性、耐水性、防食性等の兼ね合いで、
理論計算値で、0〜30℃の範囲にあるのが、好まし
い。
【0012】一方、本発明の塗装工程での作業環境の確
保と、引火火災防止の観点、更には地球環境の保全等の
観点より、プライマーが水性であることが好ましく、上
記アクリル系樹脂は、水性のアクリルとすることが好ま
しい。水性アクリル樹脂は、水溶性有機溶剤中で溶液重
合を行い、樹脂の酸価を一部又は全て、アンモニアやア
ミン類のような揮散性の塩基性物質で中和し、水性化す
るのが簡便である。本発明で使用する水性アクリル系樹
脂の溶液は、固形分換算で、アクリル樹脂を、80重量
%以上含有することが好ましい。樹脂分が80重量%未
満の場合には、得られる塗膜の基材付着性と防食性が劣
る傾向にある。以下で説明するように、本発明の鋳鉄管
の防食方法では、プライマーの塗装後に鋳鉄管内面の防
食性を付与させるために内面に、エポキシ系等の粉体焼
付塗料を塗装する(工程(C))。この際、プライマー
塗膜が、150〜300℃の温度範囲で20分から8時
間程度の高温雰囲気下に曝されることになる。この観点
よりプライマーの耐熱性に考慮すると、アクリル系樹脂
の数平均分子量は、例えば、12000以上、好ましく
は、15,000〜35,000であることが好ましく、樹
脂組成としては、スチレン等の芳香族ビニル単量体が全
単量体中、例えば、30重量%以下、好ましくは、10
〜20重量%であることが好ましい。この範囲を逸脱す
ると、高温雰囲気下での曝露後のプライマーと、上塗り
塗料との付着性が低下するので注意を要する。
【0013】顔料としては、カーボンブラックや、酸化
チタン等の着色顔料;タルク、沈降性硫酸バリウム、炭
酸カルシウム、シリカ等の体質顔料が挙げられる。プラ
イマーの塗装方法としては、鋳鉄管を回転させながら、
固定もしくは往復移動させるスプレーガンによりスプレ
ー塗装する方法が適当であるが、ハケ塗装、ローラ塗装
等の周知の各種方法で塗装することも可能である。塗装
されたプライマーは、前記温水槽で加温された熱あるい
は自然乾燥により硬化させ、プライマー層が形成され
る。プライマー層の膜厚は、乾燥膜厚で、例えば、5〜
40μm、好ましくは、10〜20μmが適当である。
このようにしてプライマー層を形成させた鋳鉄管は、保
管スペースや、製造ラインの関係で通常屋内外に仮置保
管される。しかしながら、当然直ちに次工程に進むこと
も可能である。
【0014】次いで、(C)工程の前に、必要に応じて
鋳鉄管内面を研磨、清掃等の手段により素地調整を行な
うのが望ましい。 (C)工程では、塗装する粉体塗料を硬化させるため
に、鋳鉄管を予熱する。予熱する手段としては、ガス
炉、電気炉等の周知の加熱炉による方法が挙げられる
が、予熱することができる限り、これら手段に限定され
るものではない。予熱温度は、使用するエポキシ樹脂系
粉体塗料の種類、硬化時間等により、任意に決定される
が、通常、管体温度が(220℃±50℃)、になる程
度が適当であり、この温度範囲でエポキシ樹脂系粉体塗
料が溶融するとともに、エポキシ樹脂と硬化剤との間で
架橋反応が起こる。そして、(C)工程では、予熱しな
がら、鋳鉄管の内面に、エポキシ樹脂系粉体塗料を塗装
する。
【0015】本発明で使用するエポキシ樹脂系粉体塗料
は、常温で固形のエポキシ樹脂、該エポキシ樹脂用硬化
剤、更に必要に応じて、各種顔料、添加剤等からなるも
のである。前記エポキシ樹脂としては、ビスフェノール
Aとエピクロルヒドリンとの縮合物に代表されるグリシ
ジルエーテル型樹脂、グリシジルエステル型樹脂、グリ
シジルアミン型樹脂、脂環式エポキシ樹脂、線状脂肪族
エポキシ樹脂などの常温で固形の通常の粉体塗料用エポ
キシ樹脂が使用できる。ただし、エポキシ樹脂は、例え
ば、軟化点60〜150℃、エポキシ当量400〜30
00、のものが適当である。軟化点が60℃より低いも
の、或いはエポキシ基当量が400より小さいと、粉体
塗料が貯蔵中固まり易くなり、一方軟化点が150℃よ
り高いもの、或いはエポキシ当量が3000より大きい
と、溶融粘度が高くなり、それ故平滑な塗面が得難くな
り、ピンホール等が発生し易くなる傾向にある。
【0016】前記エポキシ樹脂用硬化剤としては、通常
用いられている酸無水物系、ジシアンジアミド系、芳香
族アミン系、有機酸ジヒドラジド系、BF3 −アミン錯
塩系、イミダゾール系、多価フェノール系等が代表的な
硬化剤として挙げられる。なお、エポキシ樹脂と硬化剤
との配合割合は、各硬化剤の特性に応じて、エポキシ樹
脂本来の塗膜性能が発揮することができる公知の範囲内
で決定される。例えば、多価フェノール系硬化剤を使用
した場合、硬化剤中の水酸基対エポキシ樹脂中のエポキ
シ基の当量比は(0.7〜1.3:1)の範囲が適当で
ある。酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラック、フタロ
シアニンブルー、炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウ
ム、シリカ、タルク等の各種着色顔料、もしくは体質顔
料、ガラス繊維等の充填剤、更には分散剤、表面調整剤
等の各種添加剤を必要に応じて配合してもよい。
【0017】前記顔料と充填剤との総量は、粉体塗料中
へ20〜50重量%配合するのが、厚膜化できるので望
ましい。なお、粉体塗料の製法については従来から公知
のドライブレンド法や、熱溶融練合法等により製造する
ことができる。鋳鉄管内面のエポキシ樹脂系粉体塗料の
塗装方法としては、スプレーノズルを回転する鋳鉄管の
内部に挿入し、管軸方向に移動させながら塗装する方法
や、粉体塗料を気体とともに回転する鋳鉄管の内部に大
過剰送入し、管内壁に融着させ、余剰の粉体塗料を除去
する方法等の周知の各種方法で粉体塗料を塗装すること
が可能である。形成される粉体塗膜層の膜厚は、例え
ば、300μm以上、好ましくは、400〜700μm
が適当である。
【0018】(D)工程では、溶射被膜層、プライマー
層を施した鋳鉄管の外面に、上塗塗料を塗装し、上塗塗
膜層を形成する。上塗塗膜は、プライマー層だけであれ
ば、光沢、耐久性等に劣るため、光沢のある美観付与や
耐候性、耐久性等を向上させる目的で形成させる。本発
明で使用する上塗塗料は、従来から鋳鉄管外面用上塗塗
料に使用されている各種塗料が、使用可能であり、具体
的には、フッ素樹脂や、ポリエステル樹脂、アルキド樹
脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ある
いはシリコーン樹脂等を結合剤とする有機溶剤型もしく
は、水希釈型塗料が挙げられる。これら上塗塗料の塗装
方法は、前述のプライマー塗装と同様の塗装方法が可能
であり、自然乾燥もしくは、強制乾燥させることにより
硬化させる。上塗塗膜層の膜厚は、乾燥膜厚で、例え
ば、40〜120μm、好ましくは、60〜80μmが
適当である。
【0019】
【実施例】以下、本発明について更に、実施例により詳
細に説明する。なお、実施例中「部」、「%」は重量基
準で示す。 <エポキシ樹脂系粉体塗料の調製> エポキシ樹脂(エポキシ当量780、軟化点95℃) 95部 アジピン酸ジヒドラジド 5部 炭酸カルシウム 10部 シリカ 15部 二酸化チタン 15部 カーボンブラック 0.2部 流動調整剤 0.5部 上記成分をヘンシェルミキサーにて混合した後、約11
0℃の温度条件下において、押出機で溶融練合し、冷却
後バンタムミルで粉砕したものを150メッシュの金網
で篩い、粉体塗料を調製した。 <水性アクリル系樹脂Aの合成>環流冷却器、撹拌装
置、温度計、窒素導入管を備えたフラスコに、イソプロ
ピルアルコール600部を仕込み、80℃に昇温した。
80℃に保持したまま、スチレン150部、n−ブチル
アクリレート350部、n−ブチルメタクリレート25
0部、メチルメタクリレート180部、メタクリル酸7
0部より成る単量体混合物と、t−ブチルパーオキシー
2−エチルヘキサノエート15部をエチレングリコール
モノブチルエーテル100部に溶解した開始剤混合物と
を4時間かけて滴下した。その後、同温度で4時間保持
して反応を完結せしめて、室温まで冷却した。その後、
トリエチルアミン75部と水1570部とを加え撹拌し
た。得られた水性樹脂は、固形分30%、固形分酸価4
5(mgKOH/g)、ゲルパーミュエーションクロマ
トグラフによる数平均分子量20000、理論Tg12
℃であった。 <水性アクリル系樹脂Bの合成>水性アクリル系樹脂A
の合成と同様の反応装置を用いイソプロピルアルコール
600部を仕込み80℃に昇温した。80℃に保持した
まま、スチレン150部、n−ブチルアクリレート35
0部、n−ブチルメタクリレート250部、メチルメタ
クリレート90部、メタクリル酸160部よりなる単量
体混合物と、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサ
ノエート15部をエチレングリコールモノブチルエーテ
ル100部に溶解した開始剤混合物を4時間かけて滴下
した。その後同温度で4時間保持して反応を完結せしめ
て室温まで冷却した。その後トリエチルアミン75部と
水1570部を加え攪拌した。得られた水性樹脂は、固
形分30%、固形分酸価105、数平均分子量7,00
0、理論Tg14℃であった。 <プライマーAの調製> 水性アクリル系樹脂A 30部 タルク 15部 カーボンブラック 2.5部 増粘剤 1部 消泡剤 0.5部 顔料分散剤 0.5部 ノニオン界面活性剤 0.5部 水 50部 上記成分からなる黒色水性アクリル系樹脂塗料であるプ
ライマーAを調製した。 <プライマーBの調製>上記黒色水性アクリル系樹脂塗
料の水性アクリル系樹脂Aを水性アクリル系樹脂Bに変
更する以外は、プライマーAの調製と同様に黒色水性ア
クリル系樹脂塗料であるプライマーBを調製した。実施例1 70×150mmに切り出した厚さ7mmの150φ鋳
鉄管片をブラスト処理し、清掃し、鋳鉄管片外面側に、
アーク溶射法にて亜鉛線材を溶射し、150g/m2
溶射被膜層を形成した。
【0020】次いで、溶射被膜を施した鋳鉄管片を温水
槽に浸漬し、鋳鉄管片温度を約60℃に加温した後、プ
ライマーAを溶射被膜層表面にスプレー塗装し、乾燥膜
厚約20μmのプライマー層を形成した。このようにし
て外面のみ塗装した鋳鉄管片を、2週間屋外に仮置保管
した。次いで、鋳鉄管片内面側を研磨し、清掃した後、
250℃の熱風加熱炉に鋳鉄管片を2時間滞留し、鋳鉄
管片温度を250℃にした後、加熱炉から取り出し、直
ちに鋳鉄管片内面側に粉体塗料をスプレーを塗装し、膜
厚約500μmの粉体塗膜層を形成した。このようにし
て内面に粉体塗料を塗装した鋳鉄管片を、1週間屋外に
仮置保管した後、水性型アクリル樹脂系塗料〔「クリモ
トコートWR」(大日本塗料株式会社製商品名)〕を鋳
鉄管片外面側にスプレー塗装し、自然乾燥させ、乾燥膜
厚約60μmの上塗塗膜層を形成した。比較例1 実施例1において、プライマーAの代りにプライマーB
を使用する以外は、同様にして鋳鉄管片外面側に溶射被
膜層、プライマー層、上塗塗膜層を形成し、鋳鉄管片内
面側に粉体塗膜層を形成した。実施例2 実施例1において、亜鉛の代りに亜鉛とアルミニウムと
の(87:13)〔重量〕からなる亜鉛−アルミニウム
擬合金を溶射する以外は、同様にして鋳鉄管片外面側に
溶射被膜層、プライマー層、上塗塗膜層を形成し、鋳鉄
管片内面側に粉体塗膜層を形成した。比較例2 比較例1において、亜鉛の代りに亜鉛とアルミニウムと
の(87:13)〔重量〕からなる亜鉛−アルミニウム
擬合金を溶射する以外は、同様にして鋳鉄管片外面側に
溶射被膜層、プライマー層、上塗塗膜層を形成し、鋳鉄
管片内面側に粉体塗膜層を形成した。実施例1〜2及び
比較例1〜2で得られた試験片につき、付着性及び白錆
発生のしやすさを試験するために、以下の方法にて試験
し、その結果を以下の表1に示した。 <付着性試験>カッターナイフで素地に達する2×2m
mのゴバン目を25個作り、その表面にセロハン粘着テ
ープを貼り、それを剥し、鋳鉄管片に上塗塗膜層が残存
したゴバン目の数を数え、残存数/25で付着性を評価
した。 <白錆発生性試験>実施例1〜2及び比較例1〜2にお
いて上塗塗膜層を形成させない以外は、同様にして試験
片を作り、JISK5400.9.2.2に定められた
湿潤箱に、24時間試験片をつるし、取り出した後、更
に24時間放置し、白錆発生状態を目視評価した。 <耐塩水噴霧試験>JIS K 5400の方法により
1000時間の噴霧 <耐湿性試験>40℃、相対温度95%の恒温恒湿槽内
に試験片を300時間放置後、室温にて24時間放置
後、目視評価した。
【0021】表1より明らかの通り、固形分酸価及び数
平均分子量を特定した水性アクリル系樹脂からなるプラ
イマーを使用した本発明の方法による実施例1〜2は、
いずれも付着性が良好で、白錆も発生しなかった。一
方、特定範囲外にある水性アクリル系樹脂からなるプラ
イマーを使用した比較例1〜2は、いずれもプライマー
層劣化により付着性が悪く、白錆が発生した。なお、粉
体塗膜層を形成させた側は、白錆発生の試験において実
施例1〜2及び比較例1〜2のいずれも全く異常なかっ
た。
【0022】
【表1】 表1試験項目 実施例 比較例 1 2 1 2 付着性 25/25 25/25 0/25 0/25 白錆発生性 白錆 白錆 白錆多く 白錆多く なし なし 発生 発生 耐塩水噴霧 異常なし 〃 フクレ発生 〃耐湿試験 異常なし 〃 フクレ発生 〃
【0023】
【発明の効果】本発明の鋳鉄管の防食方法は、管内面を
セメントモルタルライニングの代りにエポキシ樹脂系粉
体塗料を塗装しているので、軽量化が可能となり、耐久
性も優れている。また、鋳鉄管外面のプライマーとし
て、特定の固形分酸価及び特定の数平均分子量を有する
アクリル系樹脂プライマーを塗装しているので、粉体塗
料を硬化させるための予熱にも劣化せず、白錆が発生し
にくく、その結果、防食性に優れた鋳鉄管が得られる特
徴を有している。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 杉村 誠司 大阪市西区北堀江1−12−19 株式会社栗 本鐵工所内 (72)発明者 道浦 吉貞 大阪市西区北堀江1−12−19 株式会社栗 本鐵工所内 (72)発明者 西島 忠彦 奈良県桜井市桜井613−62 (72)発明者 為 信一郎 大阪市鶴見区緑1丁目10番33−1002号 Fターム(参考) 4J038 CG141 CH031 CH041 CH081 CJ021 CJ131 CJ141 DB021 DB031 DB041 DB091 DB151 MA02 MA12 MA14 NA03 NA12 PA02 PA13 PA19 PB06 PC02 4K031 AA01 AB02 AB09 BA01 CB31 CB37 CB39 FA09 4K044 AA04 AB03 BA10 BA21 BB01 BB04 BC02 CA11 CA53 4K062 AA01 AA05 BA01 BA20 BC09 BC12 EA02 EA08 EA11 FA04 FA16

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (A)鋳鉄管の外面に、亜鉛、亜鉛−ア
    ルミニウム擬合金、又は亜鉛−アルミニウム合金を溶射
    し、溶射被膜層を形成する工程、(B)溶射被膜層表面
    に、固形分酸価20〜80(mgKOH)を有し、ゲル
    パーミュエイションクロマトグラフによる数平均分子量
    が8,000〜50,000の範囲にあり、アクリル樹脂を
    固形分換算で80重量%以上の比率で含有するアクリル
    系樹脂からなるプライマーを塗装し、プライマー層を形
    成する工程、(C)前記鋳鉄管を予熱しながら、前記鋳
    鉄管の内面に、エポキシ樹脂系粉体塗料を塗装して、前
    記予熱により、前記エポキシ樹脂系粉体塗料を硬化さ
    せ、粉体塗膜層を形成する工程、及び(D)前記プライ
    マー層の表面に上塗塗料を塗装し、上塗塗膜層を形成す
    る工程、を特徴とする鋳鉄管の防食方法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN102564827A (zh) * 2012-02-09 2012-07-11 新兴铸管股份有限公司 冶金复合管覆层金属晶间腐蚀试样的制备方法
JP2013136798A (ja) * 2011-12-28 2013-07-11 Kubota Corp 外面防食体
JP2015183283A (ja) * 2014-03-26 2015-10-22 株式会社栗本鐵工所 溶射下地の形成方法
JP2017101310A (ja) * 2015-12-04 2017-06-08 日東電工株式会社 防食ペースト、防食構造体、および、防食構造体の製造方法

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