JP2000272936A - 合わせガラス用中間膜及び合わせガラス - Google Patents

合わせガラス用中間膜及び合わせガラス

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JP2000272936A JP11081853A JP8185399A JP2000272936A JP 2000272936 A JP2000272936 A JP 2000272936A JP 11081853 A JP11081853 A JP 11081853A JP 8185399 A JP8185399 A JP 8185399A JP 2000272936 A JP2000272936 A JP 2000272936A
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glass
film
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 低温から高温までの広い温度領域において優
れた遮音性能を長期安定的に発揮し、且つ、透明性、接
着性、耐貫通性、衝撃エネルギー吸収性、耐候性等の合
わせガラスとして必要な基本性能にも優れる合わせガラ
スを得るに適する合わせガラス用中間膜、及び、その中
間膜を用いた合わせガラスを提供することを課題とす
る。 【解決手段】 損失正接の最大値が20〜40℃の温度
範囲内にあり且つ該最大値を示す温度から±5℃以上の
温度範囲内における損失正接が0.5以上である樹脂膜
(A)からなる外層と、損失正接の最大値が0〜10℃
の温度範囲内にあり且つ該最大値を示す温度から±5℃
以上の温度範囲内における損失正接が0.5以上である
樹脂膜(B)からなる内層とが積層されてなり、且つ、
上記外層と内層との層厚比が1/1〜1/4の範囲内に
あることを特徴とする合わせガラス用中間膜、及び、少
なくとも一対のガラス間に、上記合わせガラス用中間膜
を介在させ、一体化させてなることを特徴とする合わせ
ガラス。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、合わせガラス用中
間膜及びその中間膜を用いた合わせガラスに関する。
【0002】
【従来の技術】可塑化ポリビニルアセタール樹脂のよう
な透明で柔軟性に富む樹脂を製膜してなる合わせガラス
用中間膜で少なくとも一対のガラス板を接着して得られ
る合わせガラスは、破損時に破片が飛散せず安全性に優
れているため、例えば自動車のような車輌や建築物等の
窓ガラスとして広く用いられている。
【0003】このような中間膜のなかでも、可塑剤の添
加により可塑化されたポリビニルブチラール樹脂が製膜
されてなる中間膜は、ガラスに対する適正な接着力、強
靱な引張り強度、優れた透明性等の諸性能を兼備してい
るので、特に車輌の窓ガラス用として好適に用いられて
いるが、反面、建築物の窓ガラス用としては遮音性に劣
るという問題点がある。
【0004】一般に、遮音性能は、図1に示されるよう
に、周波数の変化に対応した透過損失として示される。
上記透過損失は、JIS A−4706「サッシ」で
は、図1中に実線で示されるように、周波数500Hz
以上の領域において遮音等級に応じてそれぞれ一定値で
規定されている。
【0005】ところで、ガラスの遮音性能は、図1中に
破線で示されるように、周波数2000Hz近辺の領域
でコインシデンス効果により著しく低下する。即ち、図
1中の破線の谷部がコインシデンス効果による遮音性能
の低下に相当し、所定の遮音性能を保持しないことを示
している。
【0006】上記コインシデンス効果とは、ガラスに音
波が入射した時、ガラスの剛性と慣性とによってガラス
面上を横波が伝播し、この横波と入射音とが共鳴した結
果、音の透過が起こる現象を言う。
【0007】従来の合わせガラスは、破損時における破
片の飛散防止に関しては極めて優れているものの、遮音
性能に関しては、通常のガラス同様、周波数2000H
z近辺の領域でコインシデンス効果による遮音性能の低
下が避けられず、この点の改善が求められている。
【0008】又、等ラウドネス曲線より、人間の聴覚
は、他の周波数領域に比較して、周波数1000〜60
00Hzの領域における感度が非常に高いことが知られ
ており、コインシデンス効果による遮音性能の低下を防
止することが、窓ガラスや壁等の遮音性(防音性)の向
上にとって極めて重要なこととなる。
【0009】コインシデンス効果による遮音性能の低下
に関して問題となるのは、コインシデンス効果によって
生じる図1中の透過損失の極小部(以下、「極小部の透
過損失(dB)」を「TL値」と記す)であり、遮音性
能を向上させるためには、コインシデンス効果を緩和し
て、上記TL値の低下を防止することが必要である。
【0010】従来、TL値の低下を防止する手段とし
て、合わせガラスの質量の増大、ガラスの複層化、ガラ
ス面積の細分化、ガラス支持手段の改善等の種々の方策
が採られているが、これらの方策は、いずれも十分なT
L値の低下防止効果をもたらさない上に、コスト面でも
実用的な価格ではないという問題点がある。
【0011】一方、遮音性能に対する要求は最近ますま
す高まっており、例えば建築物の窓ガラスの場合、常温
付近で優れた遮音性能を発揮することが要求される。即
ち、温度に対してTL値をプロットして求められる、遮
音性能が最も優れている温度{遮音性能最大温度(TL
max温度)}が常温付近であり、且つ、遮音性能の最
大値{遮音性能最大値(TLmax値)}そのものが大
きいという、優れた遮音性能が要求されている。
【0012】自動車の窓ガラスの場合も同様な状況にあ
り、高速走行時の風切り音やエンジン部からの振動音
等、高い遮音性能が要求される部位は増加しつつある。
【0013】又、実際に使用される場合には、これら合
わせガラスは低温域から高温域までの幅広い環境温度の
変化に曝される。即ち、常温付近のみならず低温から高
温までの広い温度領域で優れた遮音性能を発揮すること
が要求される。しかし、従来の最も一般的な中間膜であ
る可塑化ポリビニルブチラール樹脂膜を用いた合わせガ
ラスの場合でも、遮音性能最大温度(TLmax温度)
が常温より高く、常温付近での遮音性能は必ずしも良く
ないという問題点がある。
【0014】これらの問題点に対応するため種々の試み
がなされており、例えば、特開平2−229742号公
報では、「高分子物質を主成分とするガラス転移温度が
15℃以下の層Aと可塑化ポリビニルアセタール膜Bと
がガラス板の間に積層されていることを特徴とする遮音
性合わせガラス」が開示されている。
【0015】しかし、上記開示にある遮音性合わせガラ
スは、JIS A−4706の規定による遮音等級でT
s−35等級を超える遮音性能を発揮しない上に、良好
な遮音性能を発揮する温度領域が狭く限定されていると
いう問題点がある。
【0016】又、特開平4−254444号公報では、
「2種の樹脂膜(A)及び(B)からなる積層膜であっ
て、樹脂膜(A)はポリビニルアルコールを炭素数6〜
10のアルデヒドでアセタール化して得たポリビニルア
セタール樹脂と可塑剤とからなり、樹脂膜(B)はポリ
ビニルアルコールを炭素数1〜4のアルデヒドでアセタ
ール化して得たポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とか
らなることを特徴とする遮音性合わせガラス用中間膜」
が開示されている。
【0017】しかし、上記開示にある遮音性中間膜は、
確かに遮音性能の改善効果は認められ且つ温度変化によ
る遮音性能の変動も大きくないが、過酷な条件下での実
用面を考慮すると、これらの改善効果は未だ十分なもの
とは言えない。
【0018】上述の如く、合わせガラスとして必要な基
本性能に優れ、且つ、広い温度領域において優れた遮音
性能を長期安定的に発揮する合わせガラスを得るに適す
る合わせガラス用中間膜は未だ実用化されていないのが
現時点での実態である。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来の
問題点を解決するため、低温から高温までの広い温度領
域において優れた遮音性能を長期安定的に発揮し、且
つ、透明性、接着性、耐貫通性、衝撃エネルギー吸収
性、耐候性等の合わせガラスとして必要な基本性能にも
優れる合わせガラスを得るに適する合わせガラス用中間
膜、及び、その中間膜を用いた合わせガラスを提供する
ことを課題とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】本発明者は、合わせガラ
スの遮音性能が中間膜の動的粘弾性特性により左右さ
れ、特に貯蔵弾性率と損失弾性率との比で表される損失
正接が最も遮音性能に影響を与えることを見出した。こ
のことから、中間膜の損失正接を制御することにより、
それを用いた合わせガラスに低温から高温までの広い温
度領域における優れた遮音性能を付与すべく鋭意検討を
行った。
【0021】その結果、特定の損失正接を有する2種類
の樹脂膜を特定の層厚比で積層して中間膜を作製するこ
とにより、その中間膜を用いた合わせガラスは、広い温
度領域、特に常温から低温側の領域において優れた遮音
性能を発揮することを見出し、本発明を完成するに至っ
た。
【0022】即ち、請求項1に記載の発明(以下、「第
1発明」と記す)による合わせガラス用中間膜は、損失
正接の最大値が20〜40℃の温度範囲内にあり且つ該
最大値を示す温度から±5℃以上の温度範囲内における
損失正接が0.5以上である樹脂膜(A)からなる外層
と、損失正接の最大値が0〜10℃の温度範囲内にあり
且つ該最大値を示す温度から±5℃以上の温度範囲内に
おける損失正接が0.5以上である樹脂膜(B)からな
る内層とが積層されてなり、且つ、上記外層と内層との
層厚比が1/1〜1/4の範囲内にあることを特徴とす
る。
【0023】又、請求項2に記載の発明(以下、「第2
発明」と記す)による合わせガラスは、少なくとも一対
のガラス間に、上記第1発明による合わせガラス用中間
膜を介在させ、一体化させてなることを特徴とする。
【0024】第1発明による合わせガラス用中間膜(以
下、単に「中間膜」と記す)の外層を構成する樹脂膜
(A)は、損失正接の最大値が20〜40℃の温度範囲
内にあり、且つ、該最大値を示す温度から±5℃以上の
温度範囲内における損失正接が0.5以上であることが
必要である。
【0025】又、第1発明による中間膜の内層を構成す
る樹脂膜(B)は、損失正接の最大値が0〜10℃の温
度範囲内にあり、且つ、該最大値を示す温度から±5℃
以上の温度範囲内における損失正接が0.5以上である
ことが必要である。
【0026】第1発明による中間膜において、外層を構
成する樹脂膜(A)は、常温から高温側の領域における
優れた遮音性能を確保する機能を有すると共に、中間膜
として必要な優れた力学的特性と良好な成形性や取扱い
作業性を付与する機能をも有する。
【0027】従って、樹脂膜(A)の損失正接が最大値
になる温度は20〜40℃の範囲内に限定される。上記
温度が20℃未満であると、常温から高温側の領域にお
ける遮音性能が不十分となる。逆に上記温度が40℃を
超えると、高温側の領域における遮音性能はより向上す
るものの、中温領域(常温付近)における遮音性能が低
下し、又、膜が硬くなり過ぎるため、成形性や取扱い作
業性も低下する。
【0028】一方、第1発明による中間膜において、内
層を構成する樹脂膜(B)は、常温から低温側の領域に
おける優れた遮音性能を確保する機能を有すると共に、
中間膜として必要な良好な成形性や取扱い作業性と合わ
せガラスとして必要な優れた耐貫通性や衝撃エネルギー
吸収性を付与する機能をも有する。
【0029】従って、樹脂膜(B)の損失正接が最大値
になる温度は0〜10℃の範囲内に限定される。上記温
度が0℃未満であると、膜が柔らかくなり過ぎるため、
成形性や取扱い作業性が低下すると共に、得られる合わ
せガラスの耐貫通性も低下する。逆に上記温度が10℃
を超えると、前記樹脂膜(A)と類似の特性となるた
め、常温から低温側の領域における遮音性能が不十分と
なる。
【0030】又、第1発明による中間膜において、外層
を構成する樹脂膜(A)及び内層を構成する樹脂膜
(B)の損失正接は、それぞれの損失正接が最大値を示
す温度から±5℃以上の温度範囲内において0.5以上
であることが必要である。
【0031】上記温度範囲が±5℃未満であると、樹脂
膜(A)と樹脂膜(B)とを積層して中間膜を作製して
も、低温から高温までの広い温度領域において優れた遮
音性能を確保することが困難となる。
【0032】又、上記温度範囲内における樹脂膜(A)
及び/又は樹脂膜(B)の損失正接が0.5未満であっ
ても、低温から高温までの広い温度領域において優れた
遮音性能を確保することが困難となる。
【0033】ここで言う損失正接(tanδ)とは、動
的粘弾性特性の測定により求められる貯蔵弾性率
(G’)と損失弾性率(G”)との比を意味する。これ
は制振性能の指標として用いられる値でもある。
【0034】上記動的粘弾性特性の測定は、例えば固体
粘弾性測定装置(型式「RSA−II」、レオメトリッ
ク社製)のような一般的に用いられる動的粘弾性測定装
置を用いて行えば良く、その原理は、微小振動を有する
歪みを試料に印加し、その応答である応力を検出して弾
性率を算出するものである。第1発明においては、試料
に印加する歪みの周波数は10Hzとする。この周波数
は、測定の容易さと合わせガラスとしての遮音性能との
相関性から設定した。
【0035】第1発明による中間膜は、前記損失正接を
有する樹脂膜(A)からなる外層と前記損失正接を有す
る樹脂膜(B)からなる内層とが積層されてなり、且
つ、上記外層と内層との層厚比が1/1〜1/4の範囲
内にあることが必要であり、好ましくは1/2〜1/3
である。
【0036】ここで言う外層とは、合わせガラスに加工
する時にガラスと接触する側の層を意味する。従って、
中間膜の両面の外層が樹脂膜(A)から構成されている
ことになる。
【0037】樹脂膜(A)を外層とすることにより、中
間膜の取扱い作業性や力学的特性が優れたものとなる。
換言すれば、もし樹脂膜(B)を外層とすると、樹脂膜
(B)は柔らかいため、中間膜の取扱い作業性が著しく
悪くなる。
【0038】又、樹脂膜(A)からなる外層と樹脂膜
(B)からなる内層とを積層した時の層厚比が1/1を
超えると、常温付近での遮音性能が十分に向上しない。
逆に上記外層と内層との層厚比が1/4未満であると、
中間膜の剛性が著しく低下し、取扱い作業性や力学的特
性が悪くなる。
【0039】樹脂膜(A)と樹脂膜(B)との積層形態
は、外層が樹脂膜(A)から構成され且つ外層と内層と
の層厚比が1/1〜1/4の範囲内にあれば、特に限定
されるものではなく、例えば、樹脂膜(A)/樹脂膜
(B)/樹脂膜(A)の三層積層であっても良いし、樹
脂膜(A)/樹脂膜(B)/樹脂膜(A)/樹脂膜
(B)/樹脂膜(A)の五層積層であっても良く、より
多層積層であっても良い。
【0040】上記積層の方法としては、特に限定される
ものではないが、例えば、各層をそれぞれ別々に成形し
た後、合わせガラス加工時に各層を上記条件を満たすよ
うにガラス間に積層する方法、多層成形機を用いて、各
層を上記条件を満たすように一体成形する方法等が挙げ
られ、いずれの方法も好適に採用される。
【0041】こうして得られる中間膜の膜厚は、特に限
定されるものではないが、従来の中間膜の場合と同様
に、0.3〜1.6mmであることが好ましい。膜厚が
大きいほど遮音性能はより向上するが、合わせガラスと
して必要な耐貫通性やコストを考慮すると、実用的には
上記膜厚であることが好ましい。
【0042】第1発明による中間膜を構成する樹脂膜
(A)及び/又は樹脂膜(B)を得るための熱可塑性樹
脂組成物の主成分として用いられる熱可塑性樹脂として
は、特に限定されるものではないが、例えば、可塑剤の
添加により可塑化されたポリビニルブチラール樹脂のよ
うな可塑化ポリビニルアセタール樹脂、エチレン−酢酸
ビニル共重合体、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポ
リ塩化ビニル樹脂、ブチルゴム、ポリブタジエンゴム等
の透明な粘弾性ポリマーが挙げられ、好適に用いられ
る。
【0043】上記熱可塑性樹脂は、単独で用いられても
良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0044】又、樹脂膜(A)用及び/又は樹脂膜
(B)用として用いられる熱可塑性樹脂は同種の熱可塑
性樹脂であっても良いし、例えば樹脂膜(A)用として
可塑化ポリビニルブチラール樹脂を用い、樹脂膜(B)
用としてエチレン−酢酸ビニル共重合体を用いるという
ように異種の熱可塑性樹脂であっても良い。
【0045】上記熱可塑性樹脂のなかでも、合わせガラ
スとした時に優れた透明性、接着性、耐貫通性、耐候性
等を発揮する可塑化ポリビニルアセタール樹脂がより好
適に用いられるが、なかでも可塑化ポリビニルブチラー
ル樹脂が特に好適に用いられる。
【0046】又、可塑剤としては、特に限定されるもの
ではないが、例えば、一塩基酸エステル系、多塩基酸エ
ステル系等の有機系可塑剤や、有機リン酸系、有機亜リ
ン酸系等のリン酸系可塑剤等が挙げられ、好適に用いら
れる。
【0047】上記可塑剤は、単独で用いられても良い
し、2種類以上が併用されても良い。
【0048】上記一塩基酸エステル系可塑剤としては、
特に限定されるものではないが、例えば、トリエチレン
グリコールと、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2−エチ
ル酪酸、ヘプタン酸、2−エチルヘキシル酸等の有機酸
との反応によって得られるグリコール系エステルが挙げ
られ、これらの1種もしくは2種以上が好適に用いられ
る。
【0049】又、上記リン酸系可塑剤としては、特に限
定されるものではないが、例えば、トリブトキシエチル
フォスフェート、イソデシルフェニルフォスフェート等
が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上が好適に用
いられる。
【0050】樹脂膜(A)及び/又は樹脂膜(B)を得
るための熱可塑性樹脂組成物中には、前記熱可塑性樹
脂、上記可塑剤以外に、本発明の課題達成を阻害しない
範囲で必要に応じて、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防
止剤、接着性調整剤、界面活性剤、着色剤等の各種添加
剤の1種もしくは2種以上が含有されていても良い。
【0051】次に、第2発明による合わせガラスは、少
なくとも一対のガラス間に、上述した第1発明による中
間膜を介在させ、一体化させることにより作製される。
【0052】上記ガラスには、通常の無機透明ガラスの
みならず、例えばポリカーボネート板やポリメチルメタ
クリレート板等のような有機透明ガラスも包含される。
【0053】上記ガラスの種類としては、特に限定され
るものではないが、例えば、フロート板ガラス、磨き板
ガラス、平板ガラス、曲板ガラス、並板ガラス、型板ガ
ラス、金網入り型板ガラス、着色されたガラス等の各種
無機ガラスや有機ガラスが挙げられ、これらの1種もし
くは2種以上が好適に用いられる。又、上記ガラスの厚
みは、用途や目的によって適宜選択されれば良く、特に
限定されるものではない。
【0054】上記合わせガラスの製造方法は、特別なも
のではなく、通常の合わせガラスの場合と同様の製造方
法が採用される。例えば、二枚の透明なガラス板の間
に、第1発明による中間膜を挟み、これをゴムバックに
入れて減圧下で吸引脱気しながら70〜110℃程度の
温度で予備接着した後、オートクレーブもしくはプレス
を用いて、120〜150℃程度の温度、及び、10〜
15kg/cm2 程度の圧力で加熱加圧して本接着を行
うことにより所望の合わせガラスを得ることが出来る。
【0055】
【作用】第1発明による中間膜は、特定の損失正接を有
する樹脂膜(A)を外層としてなるので、常温から高温
側の領域における優れた遮音性能と、優れた力学的特性
及び良好な成形性や取扱い作業性を発揮する。又、特定
の損失正接を有する樹脂膜(B)を内層としてなるの
で、常温から低温側の領域における優れた遮音性能と、
優れた耐貫通性や衝撃エネルギー吸収性及び良好な成形
性や取扱い作業性を発揮する。
【0056】又、第1発明による中間膜は、上記樹脂膜
(A)からなる外層と上記樹脂膜(B)からなる内層と
の層厚比が特定の範囲となるように積層されてなるの
で、低温から高温までの広い温度領域において優れた遮
音性能を長期安定的に発揮し、且つ、透明性、接着性、
耐貫通性、衝撃エネルギー吸収性、耐候性等の合わせガ
ラスとして必要な基本性能にも優れる合わせガラスを得
るに適する。
【0057】第2発明による合わせガラスは、上記第1
発明による中間膜を用いて製せられるので、低温から高
温までの広い温度領域において優れた遮音性能を有し、
且つ、透明性、接着性、耐貫通性、衝撃エネルギー吸収
性、耐候性等の基本性能にも優れる。
【0058】
【発明の実施の形態】本発明をさらに詳しく説明するた
め以下に実施例をあげるが、本発明はこれら実施例のみ
に限定されるものではない。尚、実施例中の「部」は
「重量部」を意味する。
【0059】(実施例1)
【0060】(1)樹脂膜(A)の作製 熱可塑性樹脂としてポリビニルブチラール樹脂{PVB
−a(ブチラール化度:65.9モル%、アセチル基
量:0.9モル%)}100部に対し、可塑剤としてト
リエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート(3
GH)40部を添加し、ミキシングロールで十分に混練
した後、プレス成形機を用いて、150℃で30分間プ
レス成形し、膜厚0.2mmの樹脂膜(A)を作製し
た。
【0061】(2)樹脂膜(B)の作製 熱可塑性樹脂としてPVB−c(ブチラール化度:6
0.2モル%、アセチル基量:11.9モル%)100
部に対し、可塑剤として3GH60部を添加し、ミキシ
ングロールで十分に混練した後、プレス成形機を用い
て、150℃で30分間プレス成形し、膜厚0.4mm
の樹脂膜(B)を作製した。
【0062】(3)損失正接の測定 上記で得られた樹脂膜(A)及び樹脂膜(B)の損失正
接を以下の方法で測定した。その結果は表1に示すとお
りであった。 〔損失正接の測定〕樹脂膜(A)及び樹脂膜(B)を1
0mm×16mmの矩形に裁断し、試験片を準備した。
次いで、固体粘弾性測定装置(型式「RSA−II」、
レオメトリック社製)を用いて、試験片の動的粘弾性特
性を測定し、それぞれの試験片が損失正接の最大値を示
す温度(Tmax)及び損失正接の最大値を求めた。
又、損失正接が0.5以上となるTmaxからの温度範
囲を求めた。尚、上記動的粘弾性特性の測定条件は以下
のとおりであった。 印加した歪み:周波数10Hzの正弦歪みを剪断方向に
歪み量0.1%で印加した 測定温度範囲:−50℃〜+100℃ 昇温速度:3℃/分
【0063】(4)中間膜及び合わせガラスの作製 上記で得られた樹脂膜(A)及び樹脂膜(B)を用い、
樹脂膜(A)/樹脂膜(B)/樹脂膜(A)となるよう
に積層して、3層中間膜を得た。次いで、この中間膜を
2枚の透明なフロートガラス(縦30cm×横30cm
×厚み3mm)の間に挟み、これをゴムバックに入れて
20torrの真空度で20分間脱気した後、脱気した
ままの状態で90℃のオーブンに移し、90℃で30分
間保持しつつ真空プレスし、合わせガラスの予備接着を
行った。
【0064】次いで、上記予備接着された合わせガラス
をオートクレーブに入れ、温度135℃、圧力12kg
/cm2 の条件で20分間本接着を行って、合わせガラ
スを作製した。
【0065】(5)評価 上記で得られた合わせガラスの性能(遮音性、耐貫
通性)を以下の方法で評価した。その結果は表1に示す
とおりであった。
【0066】遮音性:上記で得られた合わせガラスか
ら供試体を切り出し、この供試体をダンピング試験用の
振動発生機(商品名「G21−005D」、振研社製)
により加振し、そこから得られる振動特性を、機械イン
ピーダンスアンプ(商品名「XG−81」、リオン社
製)にて増幅し、振動スペクトルをFFTアナライザー
(商品名「FFTスペクトラムアナライザーHP−35
82AA」、横河ヒューレットパッカー社製)により解
析した。こうして得られた損失係数と、ガラスとの共振
周波数の比とから、周波数(Hz)と透過損失(dB)
との関係を示すグラフを作成し、周波数2000Hz近
辺における極小の透過損失(TL値)を求めた。尚、測
定は、0℃、10℃、20℃、30℃及び40℃の各温
度でそれぞれ行い、遮音性の合格基準をTL値30以上
とした。
【0067】耐貫通性:JIS R−3212「自動
車用安全ガラス試験方法」に準拠し、300mm×30
0mmの合わせガラス(供試体)の端部を支持枠に固定
して水平に保持した状態で、その4m真上から、重量が
2260±20g、直径が約82mmの表面が滑らかな
鋼球を自然落下させ、鋼球が供試体を貫通しない場合を
合格、鋼球が供試体を貫通した場合を不合格とした。
尚、供試体は、試験の直前まで、23±2℃の室内に少
なくとも4時間以上放置したものを用いた。
【0068】(実施例2)熱可塑性樹脂としてPVB−
b(ブチラール化度:68.9モル%、アセチル基量:
0.9モル%)100部に対し、可塑剤としてトリエチ
レングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(3G
O)39部を添加したこと以外は実施例1の場合と同様
にして、膜厚0.15mmの樹脂膜(A)を作製した。
又、実施例1の樹脂膜(B)で用いたPVB−c100
部に対し、可塑剤として3GO70部を添加したこと以
外は実施例1の場合と同様にして、膜厚0.4mmの樹
脂膜(B)を作製した。
【0069】(実施例3)実施例2で作製した樹脂膜
(A)をそのまま樹脂膜(A)として用いた。又、実施
例1の樹脂膜(B)で用いたPVB−c100部に対
し、可塑剤としてトリエチレングリコール−ジ−n−ヘ
プタネート(3G7)65部を添加したこと以外は実施
例1の場合と同様にして、膜厚0.6mmの樹脂膜
(B)を作製した。
【0070】(実施例4)膜厚を0.2mmとしたこと
以外は実施例2の場合と同様にして、樹脂膜(A)を作
製した。又、熱可塑性樹脂としてエチレン−酢酸ビニル
共重合体{EVA(商品名「ウルトラセン725」、酢
酸ビニル含有量28%、東ソー社製)}をそのまま用い
たこと以外は実施例1の場合と同様にして、膜厚0.4
mmの樹脂膜(B)を作製した。
【0071】(実施例5)膜厚を0.1mmとしたこと
以外は実施例1の場合と同様にして、樹脂膜(A)を作
製した。又、膜厚を0.2mmとしたこと以外は実施例
1の場合と同様にして、樹脂膜(B)を作製した。
【0072】(実施例6)実施例1で作製した樹脂膜
(A)をそのまま樹脂膜(A)として用いた。又、熱可
塑性樹脂として、ポリオール(商品名「N4002」、
アジピン酸とエチレングリコールとの縮合生成物、日本
ポリウレタン工業社製)とイソシアネート(水添MD
I、住友バイエルウレタン社製)との反応生成物に、硬
化剤として1,4−ブタンジオールを添加して得られた
ポリウレタン樹脂(PU)をそのまま用いたこと以外は
実施例1の場合と同様にして、膜厚0.4mmの樹脂膜
(B)を作製した。
【0073】(比較例1)実施例1で作製した樹脂膜
(A)をそのまま樹脂膜(A)として用いた。又、実施
例1の樹脂膜(B)で用いたPVB−c100部に対す
る3GH(可塑剤)の添加量を30部としたこと以外は
実施例1の場合と同様にして、膜厚0.4mmの樹脂膜
(B)を作製した。
【0074】(比較例2)膜厚を0.4mmとしたこと
以外は実施例1の場合と同様にして、樹脂膜(A)を作
製した。又、膜厚を0.2mmとしたこと以外は実施例
1の場合と同様にして、樹脂膜(B)を作製した。
【0075】(比較例3)膜厚を0.3mmとしたこと
以外は実施例1の場合と同様にして、樹脂膜(A)を作
製した。又、膜厚を0.2mmとしたこと以外は実施例
1の場合と同様にして、樹脂膜(B)を作製した。
【0076】(比較例4)実施例1で作製した樹脂膜
(A)をそのまま樹脂膜(A)として用いた。又、熱可
塑性樹脂としてPVB−d(ブチラール化度:30.0
モル%、アセチル基量:11.9モル%)100部に対
し、可塑剤として3GH70部を添加したこと以外は実
施例1の場合と同様にして、膜厚0.4mmの樹脂膜
(B)を作製した。
【0077】実施例2〜6、及び、比較例1〜4で得ら
れた各樹脂膜(A)及び各樹脂膜(B)の損失正接を実
施例1の場合と同様にしてそれぞれ測定した。その結果
は表1に示すとおりであった。
【0078】次に、実施例2〜4及び6、及び、比較例
1、3及び4で得られた各樹脂膜(A)及び各樹脂膜
(B)を用い、実施例1の場合と同様にして、それぞれ
樹脂膜(A)を外層とし、樹脂膜(B)を内層とする3
層中間膜及び合わせガラスを得た。
【0079】又、実施例5では、中間膜及び合わせガラ
スの作製において、樹脂膜(A)/樹脂膜(B)/樹脂
膜(A)/樹脂膜(B)/樹脂膜(A)となるように積
層したこと以外は実施例1の場合と同様にして、5層中
間膜及び合わせガラスを得た。
【0080】さらに、比較例2では、中間膜及び合わせ
ガラスの作製において、樹脂膜(B)を外層とし、樹脂
膜(A)を内層とするために、樹脂膜(B)/樹脂膜
(A)/樹脂膜(B)となるように積層したこと以外は
実施例1の場合と同様にして、3層中間膜及び合わせガ
ラスを得た。
【0081】次いで、実施例2〜6、及び、比較例1〜
4で得られた合わせガラスの性能(遮音性、耐貫通
性)を実施例1の場合と同様にして評価した。その結果
は表1に示すとおりであった。
【0082】
【表1】
【0083】表1から明らかなように、第1発明による
実施例1〜6の中間膜を用いて作製された第2発明によ
る実施例1〜6の合わせガラスは、いずれも、0℃〜4
0℃の広い温度領域において優れた遮音性能を発揮し、
且つ、耐貫通性にも優れていた。
【0084】これに対し、損失正接の最大値を示す温度
が10℃を超えていた樹脂膜(B)を内層とする比較例
1の中間膜を用いて作製された比較例1の合わせガラ
ス、及び、損失正接が0.5以上である温度範囲が最大
値を示す温度から±5℃未満であった樹脂膜(B)を内
層とする比較例4の中間膜を用いて作製された比較例4
の合わせガラスは、いずれも、常温から低温側の温度領
域における遮音性能が劣っていた。又、外層{樹脂膜
(A)}と内層{樹脂膜(B)}との層厚比が1/1を
超えていた比較例3の中間膜を用いて作製された比較例
3の合わせガラスも、常温から低温側の温度領域におけ
る遮音性能がやや劣っていた。
【0085】さらに、樹脂膜(B)を外層とし、樹脂膜
(A)を内層とする比較例2の中間膜を用いて作製され
た比較例2の合わせガラスは、遮音性能は優れていたも
のの、耐貫通性が悪く、合わせガラスとしての実用性に
欠けるものであった。
【0086】
【発明の効果】以上述べたように、第1発明による合わ
せガラス用中間膜は、低温から高温までの広い温度領域
において優れた遮音性能を長期安定的に発揮し、且つ、
透明性、接着性、耐貫通性、衝撃エネルギー吸収性、耐
候性等の合わせガラスとして必要な基本性能にも優れる
合わせガラスを得るに適する。
【0087】又、上記中間膜を用いた第2発明による合
わせガラスは、低温から高温までの広い温度領域におい
て優れた遮音性能を長期安定的に発揮すると共に、合わ
せガラスとして必要な上記基本性能にも優れるので、建
築物や自動車、車輛等の遮音性合わせガラスとして好適
に用いられる。
【0088】
【図面の簡単な説明】
【図1】合わせガラスの遮音性能を示すグラフである。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 損失正接の最大値が20〜40℃の温度
    範囲内にあり且つ該最大値を示す温度から±5℃以上の
    温度範囲内における損失正接が0.5以上である樹脂膜
    (A)からなる外層と、損失正接の最大値が0〜10℃
    の温度範囲内にあり且つ該最大値を示す温度から±5℃
    以上の温度範囲内における損失正接が0.5以上である
    樹脂膜(B)からなる内層とが積層されてなり、且つ、
    上記外層と内層との層厚比が1/1〜1/4の範囲内に
    あることを特徴とする合わせガラス用中間膜。
  2. 【請求項2】 少なくとも一対のガラス間に、請求項1
    に記載の合わせガラス用中間膜を介在させ、一体化させ
    てなることを特徴とする合わせガラス。
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