JP2000265352A - 不織布製拭き布及び印刷機ブランケット洗浄用不織布 - Google Patents

不織布製拭き布及び印刷機ブランケット洗浄用不織布

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JP2000265352A JP7179999A JP7179999A JP2000265352A JP 2000265352 A JP2000265352 A JP 2000265352A JP 7179999 A JP7179999 A JP 7179999A JP 7179999 A JP7179999 A JP 7179999A JP 2000265352 A JP2000265352 A JP 2000265352A
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岳彦 安島
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Abstract

(57)【要約】 【課題】清浄時における断裂がなく、洗浄液の保液性に
優れ、繊維の脱落がなく、インク汚れに対する拭き取り
性を向上させた不織布及びこの不織布を用いてなること
を特徴とする印刷機ブランケット洗浄用不織布を提供す
る。 【解決手段】主として重量平均繊維長1.5mm以上の
セルロース繊維および合成繊維からなり3次元交絡され
た不織布で、該セルロース繊維と合成繊維あるいは該合
成繊維同士の少なくとも一部が熱接着された不織布であ
り、且つ端裂抵抗が10N/cm以上であることを特徴
とする不織布及びこの不織布を用いてなることを特徴と
する印刷機ブランケット洗浄用不織布、および、該不織
布の製造法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、工業用拭き布、特
に印刷機ブランケット洗浄用不織布に関するものであ
り、さらに詳しくは、洗浄時のロール端部からの断裂や
不織布製造時および洗浄時の繊維の脱落が少なく、洗浄
液の濡れ性に優れ、拭き取り性を向上させた拭き布およ
びその製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】オフセット輪転印刷機においては、ブラ
ンケットがインクや紙粉により汚れた場合、印刷が不鮮
明になってしまうことから、手替わり時にブランケット
を洗浄する作業が必要である。従来、この作業として、
ウェスなどを用いた手作業で行われており、きれいに拭
き取れなかったり、時間がかかってしまうなど、種々問
題があったばかりか、ブランケット等の回転体付近での
作業であることから巻き込まれる危険性もあった。
【0003】そこで、近年、ブランケットの自動洗浄装
置が導入されるようになってきた。この装置に用いられ
る洗浄用基布としては不織布が一般的であり、使用され
る不織布としては、スパンボンド不織布、熱融着不織
布、ウォータージェット不織布などがある。一般的なオ
フセット輪転印刷機では、拭き取り性や省コスト性か
ら、合成繊維を主体とする乾式ウェブとセルロース繊維
を湿式抄造したシートを積層し3次元交絡した不織布、
合成繊維とセルロース繊維を混抄したシートを3次元交
絡した不織布などがブランケット洗浄用不織布として広
く利用されている。
【0004】これらブランケットの自動洗浄装置では、
一般的に、基布供給ロールから巻き出された洗浄用不織
布に、洗浄液が噴射され、その後パッドでブランケット
に押しつけられ、ブランケットに付着したインク、紙粉
などの汚れを除去する。その後、洗浄用不織布は装置本
体内にある基布巻き取りロールに巻き付けられ回収され
る。ブランケットの洗浄時に、洗浄用不織布には湿潤状
態で強いテンションがかかるため、洗浄用不織布の物理
的耐久性が低い場合、ロール端部から断裂が発生し、断
裂程度によっては自動洗浄装置に故障が発生するといっ
た問題がある。また、断裂しないまでも、不織布自体が
伸びてシワが発生し、そのため拭きムラができ、拭き取
り性能が低下するという問題がある。
【0005】また、セルロース繊維を用いたものでは、
3次元交絡時にセルロース繊維が脱落し、歩留まりが著
しく減少する問題点がある。また、一定の拭き取り性を
有するものの、拭き取り時にセルロース繊維の脱落がみ
られ、これら脱落繊維によりブランケットが汚れること
で、印刷物の表面性が悪化するという問題がある。そこ
で、低融点の合成繊維を混合し、セルロース繊維と融着
させることで脱落を抑制したものもあるが、低融点の合
成繊維がセルロース繊維の表面を覆い、不織布の吸水性
が低下するという問題点がある。また、繊維長の短いセ
ルロース繊維は、低融点の合成繊維を用いても、単位重
量あたりの繊維本数が多くなり、脱落の抑制は十分とは
言えない。
【0006】一方、セルロース繊維を使用しない場合、
即ち合成繊維のみを用いた場合は、洗浄液の保液性が悪
く、フィブリル化したセルロース繊維による拭き取り性
能のような効果を発揮できないことから、洗浄能力が低
下するという問題がある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の問題を
解決したものであり、清浄時に不織布端部から断裂する
ことがなく、また、不織布製造時や清浄時の繊維の脱落
が少なく、洗浄液の濡れ性に優れ、拭き取り性を向上さ
せた不織布製拭き布およびこの不織布を用いてなる印刷
機ブランケット洗浄用不織布に関するものである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上記課題を解決するた
め、鋭意検討した結果、本発明の不織布を発明するに至
った。
【0009】即ち、主として重量平均繊維長1.5mm
以上のセルロース繊維および合成繊維からなり3次元交
絡された不織布で、該セルロース繊維と合成繊維あるい
は該合成繊維同士の少なくとも一部が熱接着された不織
布であって、該不織布の縦方向の端裂抵抗が10N/c
m以上であることを特徴とする不織布である。
【0010】また、好ましくは、片面または両面にコロ
ナ放電処理した不織布であり、且つJIS L1907
の滴下法で測定した吸水速度と該滴下法に準拠した方法
により、灯油を用いて測定した吸油速度がいずれも10
秒以下であることを特徴とする不織布である。
【0011】また、コロナ放電処理が、好ましくは片面
当たりの総エネルギーとして0.05〜2.0kW分/
2であることを特徴とする不織布である。
【0012】また、好ましくは、合成繊維のアスペクト
比(繊維長/繊維径)が700〜2000であることを
特徴とする不織布である。
【0013】また、セルロース繊維を30〜70重量%
含有する不織布である。
【0014】さらには、これらの不織布からなる印刷機
ブランケット洗浄用不織布を提供するものである。
【0015】本発明の不織布の製造法は、重量平均繊維
長1.5mm以上のセルロース繊維と合成繊維を水中に
て均一に分散し、湿式抄造法にてウェブとした後、多孔
質支持体上に積載して高圧柱状水流を噴射して、繊維を
3次元交絡させた後、水分を除去し、合成繊維の融点よ
り高い温度で処理した後、さらに少なくとも片面に放電
加工処理を施すことを特徴とするものである。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明の不織布及びこの不織布を
用いてなることを特徴とする印刷機ブランケット洗浄用
不織布は、特定のセルロース繊維と合成繊維からなり3
次元交絡された不織布で、熱接着され、端裂抵抗が高く
物理的耐久性に優れ、コロナ放電処理を施し、吸水性、
吸油性に優れ、洗浄液とのなじみがよく、拭き取り性が
優れた特性を有するものである。
【0017】本発明において、JIS C2318にお
ける規格は、端裂抵抗試験方法について規定するもの
で、「端裂抵抗」とは、端部が裂け始めるのに必要な力
を測定したものである。
【0018】本発明において、印刷ブランケット洗浄用
不織布の縦方向の端裂抵抗が10N/cm以上であるこ
とが好ましい。その範囲にある場合、ロールに強くテン
ションがかかった場合でも、不織布端部からの断裂やシ
ワが発生せず、良好な拭き取り性能を発揮することがで
きる。一方、端裂抵抗の平均値が10N/cm以下の場
合、ロール端部からの断裂が発生し、自動清浄装置の故
障を招いたり、シワの発生により良好な拭き取り性能が
十分発揮されないといった問題が発生する可能性があ
る。なお、縦方向とは、不織布が形成されている際、繊
維が配向される形成表面の進行方向をいう。
【0019】本発明の端裂抵抗10N/cm以上の不織
布は、例えば、使用するセルロース繊維の重量平均繊維
長、3次元交絡性、合成繊維の熱接着性、合成繊維の繊
維長と繊維径、セルロース繊維の配合量および不織布の
目付け等に留意して、本発明が発現するような範囲内で
それぞれ選択することによって達成される。これらの中
で、セルロース繊維の重量平均繊維長と合成繊維の熱接
着性に特に留意することが好ましい。
【0020】本発明の印刷機ブランケット洗浄用不織布
は、主としてセルロース繊維と合成繊維を構成成分とす
るものである。
【0021】セルロース繊維は、木本系セルロース繊
維、草本系セルロース繊維の植物性セルロースとレーヨ
ン等の再生セルロース繊維に分類される。木本系セルロ
ース繊維としては、針葉樹材、広葉樹材の木部繊維から
なるクラフトパルプ、サルファイトパルプ、サーモメカ
ニカルパルプ、メカニカルパルプや、竹などの維管束繊
維、楮、雁皮などの靭皮繊維をパルプとしたものが挙げ
られる。草本系セルロース繊維としては、綿繊維、麻繊
維、エスパルト、ケナフなどが挙げられる。藁、古紙な
どから得られるパルプも含まれる。これらセルロース繊
維を化学的に処理したものも使用可能である。これらの
繊維から少なくとも1種以上を選択して使用できる。
【0022】本発明におけるセルロース繊維としては、
拭き取り性、経済性等の観点から植物性セルロース繊維
であることが好ましい。更には重量平均繊維長が1.5
mm以上であり、針葉樹のセルロース繊維であることが
好ましい。本発明で用いられる繊維長とは、JAPAN
TAPPI 紙パルプ試験法No.52−89記載の
方法で測定された重量平均繊維長を示す。
【0023】ここで、重量平均繊維長が1.5mmより
短い場合、繊維間の3次元交絡の際に繊維の脱落が生
じ、目標の目付けが得られないばかりか、端裂抵抗も低
下する。また、セルロース繊維が減少することで、吸水
速度の低下も見られる。また、短い繊維が多いため、ブ
ランケット洗浄用不織布の使用時に繊維の脱落が起こっ
てブランケットを汚すという問題があり好ましくない。
【0024】一方、本発明で使用される合成繊維には、
特に制限はないが、例えば、ポリエチレン、ポリエステ
ル、ポリプロピレン、ポリアクリル、ポリ塩化ビニル、
芳香族ポリアミド、芳香族ポリエステル、ビニロン、ビ
ニリデン、ベンゾエート、ポリクラールなどのポリマー
繊維が挙げられ、これらの他に、アセテート、プロミッ
クスなどの半合成繊維も含むものである。
【0025】上記の合成繊維の中では、ポリエステル系
繊維、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフ
ィン系繊維、アクリル系繊維、ナイロン66などのポリ
アミド系繊維、ポリビニルアルコール繊維などが好まし
い。これらの繊維については、剛性が余り高くなく、セ
ルロース繊維が3次元交絡時に流出しない範囲の柱状水
流圧力で3次元交絡できるので好ましい。
【0026】余り剛性の高い繊維を使用した場合、繊維
が曲がりにくく、3次元交絡させるためには柱状水流圧
力を高くする必要がある。柱状水流圧力を高くするとセ
ルロース繊維が流出し、端裂抵抗が低下するばかりか、
地合いが悪化するという問題が起こる。
【0027】これらの合成繊維については、複合繊維で
あっても良い。また、分割性繊維や異形断面繊維であっ
ても良い。繊維径や繊維長が異なる複数の繊維を使用目
的に応じて混合使用することもできる。
【0028】本発明におけるこれらの合成繊維の役割
は、合成繊維同士が絡み合うことで不織布に端裂抵抗を
付与することや、インクを効率良く拭き取り、保持する
こと、またセルロース繊維の脱落を防止することであ
る。
【0029】また、合成繊維は、少なくともその一部が
合成繊維同士、またはセルロース繊維と熱接着すること
で、繊維間の3次元交絡と相俟って不織布に端裂抵抗を
与える。さらには、セルロース繊維の脱落も抑制させる
ことができる。
【0030】本発明で用いる合成繊維の繊維径は、1〜
30μmが好ましく、さらに好ましくは3〜25μmで
ある。ここで、1μmより細い繊維を主体として用いた
場合、不織布が緻密になりインク成分や洗浄液の保液性
が低下して好ましくない。また、30μmを超えて太い
繊維を用いた場合、3次元交絡時のセルロース繊維の脱
落が多くなり、端裂抵抗が低下するために好ましくな
い。しかし、該不織布の性能を阻害しない範囲であれば
少量使用することが可能である。
【0031】合成繊維の繊維長は、繊維同士が絡み合う
長さであれば良い。絡み合いの度合いは、アスペクト比
(繊維長/繊維径)に影響を受ける。アスペクト比は混
合する対象によってもその最適なる大きさは異なる。本
発明のように、セルロース繊維と混合する場合は、70
0〜2000の範囲が好ましい。700未満の場合、繊
維が屈曲しにくいために繊維間の絡みが弱くなり、端裂
抵抗が低くなる可能性がある。絡みを強くするために柱
状水流圧力を高くすることが必要であるが、セルロース
繊維の脱落が多くなり、端裂抵抗が低下するため好まし
くない。2000を超えて大きい場合、抄造工程で良好
な不織布を得ることが難しく好ましくない。
【0032】本発明の印刷機ブランケット洗浄用不織布
に占めるセルロース繊維の配合量はシート重量に対し、
30〜70重量%がもっとも好ましい範囲である。この
範囲で用いた場合、端裂抵抗、保液性、拭き取り性が優
れ、しかも、セルロース繊維自体の脱落も少ない。
【0033】本発明の印刷機ブランケット洗浄用不織布
の目付けは、30〜100g/m2の範囲が好ましい。
30g/m2より軽いと、端裂抵抗、保液が十分でなく
好ましくない。100g/m2を超えると、洗浄に多量
の洗浄液を必要とするため、好ましくないが、インクが
多量に付着し、多量の洗浄液が必要な場合等はこの限り
ではない。
【0034】本発明において、JIS L1907にお
ける規格は、吸水性試験方法について規定するものであ
る。「吸水性」は、吸水速度、吸水率、最大吸水速度お
よび最大吸水速度時点の吸水量のいずれかで表されるも
ので、本発明ではこの内の吸水速度で特定化している。
さらに、吸水速度としては、滴下法、バイレック法、沈
降法と分けられるが、その中でも滴下法を適用するもの
である。
【0035】本発明におけるブランケット自動洗浄装置
を用いた印刷機ブランケット洗浄用不織布に対して、該
不織布の吸水速度の測定は、上記のJIS L1907
の滴下法を用いて測定し、吸油速度に関しては、水に変
えて灯油を用いることで、該滴下法に準拠して測定す
る。
【0036】ブランケットの汚れは、主としてベヒクル
や顔料を含むインク、および紙粉によるものである。イ
ンク成分には、例えば、アマニ油、スタンド油、ヒマシ
油、キリ油などがあり、その油性洗浄液として、一般的
には、灯油、軽油、ガソリン、トリクレン、メチルクロ
ロホルムがあり、灯油が安全性からも常用されている。
ブランケットを洗浄する場合、インク汚れに対してイン
ク成分のベヒクルと親和性を有する油性洗浄液による洗
浄、およびそれらの清掃や紙粉などの洗浄に対して水性
洗浄液を用いた洗浄という、油性および水性の2通りの
洗浄を要する。このためには、印刷機ブランケット洗浄
用不織布には、油性および水性の両特性を備えているこ
とが必須となる。特に、後者の水性洗浄液を用いた洗浄
が最終的にブランケットの清掃状態を左右することか
ら、印刷機ブランケット洗浄用不織布の親水化特性が欠
かせない。この印刷機ブランケット洗浄用不織布の親水
化特性とは、該不織布の吸水速度に他ならない。
【0037】本発明において、印刷機ブランケット洗浄
用不織布の吸水速度および吸油速度はいずれも10秒以
下であることが好ましい。その範囲内にある場合、優れ
た洗浄効果を発揮することができる。吸水速度、吸油速
度が10秒を越えると、洗浄液の保液が十分でなく、イ
ンク等の親油成分の洗浄効果が十分発揮されない。ま
た、保液しきれない洗浄液は不織布から液だれをおこ
し、逆にブランケットや印刷物を汚染するという問題も
ある。
【0038】本発明の印刷機ブランケット洗浄用不織布
としては、親水性のセルロース繊維を構成成分の1つに
しているが、疎水性の合成繊維もまたその1つであり、
少なくとも一部分が熱接着されているため、該不織布に
おける水性洗浄液の保液性を維持させるには不十分であ
ることから親水化処理を施す必要がある。親水化処理と
しては親水化剤を別途付与する方法や、コロナ処理等に
よる物理的処理がある。親水化剤を付与する場合、洗浄
の工程で親水化剤が溶出し、ブランケットに転写して、
印刷物に影響を与える可能性がある。本発明の印刷機ブ
ランケット洗浄用不織布は、吸水速度、吸油速度を特定
範囲内に規定するものであり、親水化剤を用いた場合に
見られる可能性のある問題を回避し、その範囲内に納め
るための制御する手段として該不織布の片面あるいは両
面にコロナ放電処理を施すことは好ましい方法である。
【0039】このコロナ放電処理は、高電圧発生装置に
接続した電極と回転ロールの間に適度の間隔を設け、高
周波で数千〜数万ボルトの電圧を掛けて高圧コロナを発
生させる。この間隔に3次元交絡させた不織布を適度な
速度で通過させて、不織布面にコロナが生成したオゾ
ン、あるいは酸化窒素を反応させて、カルボキシル基、
ヒドロキシル基、ペルオキシド基などの親水性基を生成
させるものであり、この親水性基が不織布の親水性の向
上、およびその持続性に寄与する。
【0040】コロナ放電処理条件としては、片面当たり
の総エネルギーが0.05〜2.0kW分/m2である
ことが好ましい。
【0041】片面当たりの総エネルギーが0.05kW
分/m2より小さい場合、コロナ処理が行われない場合
に比べ、親水性は向上しているが、本発明の範囲で処理
を行うことで、より大きな親水性効果および持続性を有
する印刷機ブランケット洗浄用不織布を得ることがで
き、保液性、拭き取り性に優れた印刷機ブランケット洗
浄用不織布を得ることができる。一方、2.0kW分/
2を超えて大きい場合、親水性の向上が顕著に現れな
い。
【0042】次に、印刷機ブランケット洗浄用不織布の
製造方法について、説明する。柱状水流圧力で3次元交
絡する前のウェブの製造方法については、特に制限はな
い。3次元交絡においては、該ウェブを単層で用いて
も、2層以上を積層しても良い。しかし、厚みを増大さ
せないよう均一な不織布を製造することが好ましく、こ
の点から少なくとも1層以上は湿式抄造法による不織布
を使用することが好ましい。乾式法などで得られた不織
布のみを用いた場合、均一な不織布を製造することが困
難であるうえ、セルロース繊維と合成繊維を均一に混合
することも困難である。
【0043】湿式抄造法について説明すると、まず、セ
ルロース繊維および合成繊維を水中に投入し、パルパー
などで離解、分散、混合を行い、水性スラリーを調製す
る。水性スラリーの濃度は、0.1〜3%が好ましい。
次に、この水性スラリーを用いて、円網、長網、短網な
どのワイヤーを少なくとも1つ有する抄紙機で抄造し、
3次元交絡前のウェブを得る。
【0044】続いて、該ウェブを3次元交絡させるが、
その工程を以下に説明する。抄造によって得られた該ウ
ェブをワイヤー、パンチングプレートなどの多孔質支持
体にのせて、高圧柱状水流を噴射し、繊維同士を3次元
交絡させる。この時、用いる多孔質支持体としては、ワ
イヤーを例にとると60〜150メッシュ相当のものが
好ましい。
【0045】3次元交絡を強固なものにするためには、
高圧柱状水流が噴射されるノズルの水流噴射孔径が10
〜500μm、ノズルの水流噴射孔の間隔が10〜15
00μmであることが好ましい。ノズルの数や3次元交
絡の回数は、不織布の目付けや種類、加工速度、水圧な
どを考慮して適宜変えることができる。
【0046】高圧柱状水流の水圧は、10〜250kg
/cm2 の範囲が好ましく、さらに好ましくは10〜1
00kg/cm2である。加工速度は、3〜200m/
分が好ましく、さらに好ましくは3〜30m/分であ
る。
【0047】以上のようにして得られた3次元交絡した
不織布について、ウエットプレスなどの方法により余分
な水分を取り除いた後、エアードライヤー、シリンダー
ドライヤー、エアースルードライヤー、サクションドラ
イヤーなどを使用して乾燥させる。
【0048】3次元交絡された不織布は、合成繊維の少
なくとも一部以上をセルロース繊維、あるいは合成繊維
同士と共に熱接着させる。
【0049】合成繊維の一部以上を熱接着させる場合、
ここで述べる熱接着とは、繊維の一部分、または一部の
繊維が融解して他の繊維と接着した状態をいう。絡み合
った繊維間で、この熱接着が起こることによって、端裂
抵抗の向上、洗浄時における不織布からの繊維の脱落を
防ぐ役割を果たす。さらに、洗浄液を吹き付けたときの
不織布の伸びが抑えられることから、安定した拭き取り
性を維持することが可能となる。
【0050】合成繊維の融点以上で熱処理するには、エ
アードライヤー、エアースルードライヤーなどにより3
次元交絡された不織布の雰囲気を融点以上にする方法、
融点以上の温度に保たれたシリンダードライヤーに不織
布を接触させる方法、あるいはエンボスロールとフラッ
トロールを組み合わせて用い、ポイントボンドを施す方
法が好ましい方法である。また、これらを組み合わせて
用いることもできる。
【0051】処理温度は、合成繊維の融点を超える温度
であれば良いが、熱接着をより強固なものとするには、
合成繊維の融点より20℃以上高い温度であることが好
ましい。
【0052】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明の印刷機ブラン
ケット洗浄用不織布を説明するが、本発明は本実施例に
限定されるものではない。なお、実施例中の「部」およ
び「%」は、それぞれ「重量部」「重量%」であること
を意味する。
【0053】予め、本発明の印刷機ブランケット洗浄用
不織布について、下記に評価方法を記載する。なお、後
記表1〜4中で使用した言葉は次のとおりである。 パルプの繊維長; セルロース繊維の繊維長はJAPA
N TAPPI 紙パルプ試験法No.52−89記載
の方法により、カヤニ繊維長測定装置(KAJJANI
社、FS−100)を用い測定した。単位はmmであ
る。 熱接着処理;加熱処理による不織布の熱接着処理の有無
と強弱 コロナ放電処理;コロナ放電処理出力(kW分/m2
【0054】<端裂抵抗>JIS C2318記載の方
法に準拠して、縦方向の端裂抵抗を測定した。幅20m
m、長さ200mmの試験片を縦方向から全幅にわたっ
て平均するように20枚採取し、つかみ間隔50mmで
それぞれ測定し、平均値であらわした。単位はN/cm
である。
【0055】<交絡時の繊維の脱落>抄紙したウェブの
絶乾重量M1(g)を測定し、ついで3次元交絡後に得
られた不織布の絶乾重量M2(g)を測定した。M1から
2を引いた差をM1で除して、百分率を求め、繊維の脱
落とした。
【0056】<吸水速度>吸水速度は、水を滴下して試
験片が水滴を吸収するにつれて鏡面反射が消え、湿潤だ
けが残った状態の時間を目視観察するもので、単位は秒
である。試験方法は、以下のとおりである。200×2
00mmの試験片を用意する。JIS L1907に規
定する試験片保持枠に試験片を取り付ける。試験片の表
面からビュレットの先端までが10mmの高さになるよ
うに調整し、ビュレットから水を1滴滴下させ、水滴が
試験片の表面に達した時からその水滴が特別な反射をし
なくなるまでの時間をストップウォッチで測定する。こ
の操作を試験片5枚について行い、その平均した値を吸
水速度とした。
【0057】<吸油速度>吸油速度は吸水速度の測定法
において、水の代わりに灯油を用いた方法で測定した値
を用いる。単位は秒。
【0058】<保液性>保液性は、同量の灯油と水を混
合した洗浄液を印刷機ブランケット洗浄用不織布に浸漬
し、保持量(g/m2)として測定した。まず、100
mm×100mmの大きさの試験片について、重量W1
(g)を測定する。次に、洗浄液中に試験片を広げて浸
漬し、10分間放置したのち洗浄液中から取り出し、直
ちに濾紙(アドバンテックNo.26)で挟み、軽く押
さえて表面の洗浄液を吸い取り、その試験片の重量W2
(g)を測定した。重量W2から重量W1を引いた差をW
1で除して、百分率を求め保持率(%)を算出した。
【0059】<ロール端部の異常、拭き取り性、印刷性
>オフセット輪転印刷機におけるブランケット自動洗浄
機ユニット(ボールドウイン社製、形式ABC−MW)
に、本発明の印刷機ブランケット洗浄用不織布(920
mm幅、13.5m巻きとしたもの)を取り付けた。洗
浄液(ダイクリーン、大日本インキ化学工業社製)と水
を計4回スプレーし、送り回数13回、洗浄時間150
秒で、ブランケットを自動洗浄した。洗浄後、ロール端
部の断裂やシワの発生の有無を目視観察し、ロール端部
の異常とした。断裂が見られたものについては断裂と、
シワが見られたものについてはシワ、異常がなかったも
のについては無しと評価した。洗浄後、ブランケット面
におけるインクの汚れや紙粉の有無、不織布から脱落し
たと見られる繊維の有無を目視観察し、拭き取り性とし
た。拭き取り性の評価は、インク汚れ、紙粉および繊維
の脱落がなく清浄なものを○、やや清浄なものを△、イ
ンク汚れ、紙粉が残ったり、繊維の脱落が見られるもの
を×とし、また、ロール端部からの断裂により評価でき
なかったものについては評価不可としたた。また、印刷
物の表面の状態を目視観察し、これを印刷性とした。印
刷性は良い物を○、少し劣る物を△、乱れのある物を×
とし、また、ロール端部からの断裂により評価できなか
ったものについては評価不可とした。
【0060】実施例1 セルロース繊維として、重量平均繊維長1.8mmの針
葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、合成繊維として、
繊度0.7デニール(繊維径10.5μm)繊維長10
mm(アスペクト比950)で芯がポリプロピレン、鞘
がポリエチレンからなる芯鞘構造のオレフィン系合成繊
維(大和紡績社製NBF−H、鞘融点130℃)をそれ
ぞれ60/40とする配合で水中に順次添加混合し、1
%濃度の水性スラリーを調製した。この水性スラリーを
用いて乾燥重量60g/m2のウェブを傾斜短網抄紙機
で抄造した。次に、該抄造ウェブを76メッシュの平織
りのプラスチックワイヤー上に積載し、以下に示す3列
のノズル列にて、圧力(50kg/cm2)、交絡速度
15m/分で交絡を行った。さらにウェブを反転し、同
様の条件で水流噴射して、交絡を行った。ノズル径とノ
ズル間隔、ノズルの配列を以下に示す。第1列目はノズ
ル径120μm、ノズル間隔1.2mmが千鳥状に2列
配列、第2列目はノズル径100μm、ノズル間隔0.
6mmがストレートに1列、第3列目はノズル径100
μm、ノズル間隔0.6mmがストレートに1列であ
る。続いて、パッダーにて水を絞った後、エアドライア
ーを用い、100℃で乾燥した後、合成繊維の鞘融点以
上の150℃で加熱処理し、合成繊維同士あるいは合成
繊維とセルロース繊維とを熱接着させた。その後、片面
当たりの総エネルギーが1.0kW分/m2の条件で不
織布の両面にコロナ放電処理を施して、実施例1の印刷
機ブランケット洗浄用不織布を作製した。
【0061】実施例2 実施例1で行った熱処理を130℃で行った以外は、実
施例1と同様にして印刷機ブランケット洗浄用不織布を
作製した。
【0062】実施例3 合成繊維の繊維長を6mm(アスペクト比570)と
し、熱処理を130℃で行った以外は、実施例1と同様
の方法で印刷機ブランケット洗浄用不織布を作製した。
【0063】比較例1 実施例1で行った熱処理を行わなかった以外は、実施例
1と同様にして印刷機ブランケット洗浄用不織布を作製
した。
【0064】比較例2 合成繊維の繊維長を6mm(アスペクト比570)と
し、熱処理を行わなかった以外は、実施例1と同様の方
法で印刷機ブランケット洗浄用不織布を作製した。上記
の実施例1〜3、比較例1〜2で得られた不織布につい
て、上述した評価試験により評価し、その結果を表1に
示す。
【0065】
【表1】
【0066】表1より、端裂抵抗が本発明の範囲である
10N/cm以上の不織布を用いた場合には、拭き取り
試験中にロール端部からの断裂やシワの発生は見られ
ず、また、優れた拭き取り効果を有する印刷機ブランケ
ット洗浄用不織布が得られることが判明した。これに対
して、比較例1は端裂抵抗が本発明の範囲外であるた
め、拭き取り試験中にシワが発生し、拭きムラにより拭
き取り性及び印刷性が悪化した。また、比較例2では端
裂抵抗が本発明の範囲外であるため、拭き取り試験中
に、洗浄液が吹き付けられてロール端部から断裂が発生
し、不織布が破断した。
【0067】実施例4 セルロース繊維として、重量平均繊維長1.8mmのN
BKP、合成繊維として、繊度2.0デニール(繊維径
17.5μm)、繊維長15mmで芯がポリプロピレ
ン、鞘がポリエチレンからなる芯鞘構造のオレフィン系
合成繊維(大和紡績社製NBF−H、鞘融点130℃、
アスペクト比850)、および、繊度1.5d(繊維径
12.5μm)、繊維長15mmのポリエステル繊維
(帝人社製テピルス、融点230℃、アスペクト比12
00)をそれぞれ50/20/30で配合した以外は、
実施例1と同様にして印刷機ブランケット洗浄用不織布
を作製した。
【0068】実施例5 ポリエステル繊維の繊維長を8mm(アスペクト比64
0)とし、熱処理を130℃で行った以外は、実施例1
と同様の方法で印刷機ブランケット洗浄用不織布を作製
した。 比較例3 ポリエステル繊維の繊維長を8mm(アスペクト比64
0)とし、熱処理を行わなかった以外は、実施例1と同
様の方法で印刷機ブランケット洗浄用不織布を作製し
た。
【0069】上記の実施例4〜5、比較例3で得られた
不織布について、上述した評価試験により評価し、その
結果を表2に示す。
【0070】
【表2】
【0071】実施例4〜5より、重量平均繊維長1.5
mm以上のセルロース繊維と150℃の熱処理温度で熱
接着を行う合成繊維のほかに同温度では熱接着を行わな
い合成繊維を混合しても、端裂抵抗が10N/cm以上
であれば、ロール端部からの断裂もなく、また、優れた
拭き取り効果を有する印刷機ブランケット洗浄用不織布
が得られることが判明した。
【0072】実施例6 実施例1で使用したセルロース繊維を重量平均繊維長
1.6mmのNBKPに代えた以外は、実施例1と同様
にして実施例6の印刷機ブランケット洗浄用不織布を作
製した。
【0073】実施例7 実施例1で使用したセルロース繊維を重量平均繊維長
2.0mmの麻パルプに代えた以外は、実施例1と同様
にして実施例7の印刷機ブランケット洗浄用不織布を作
製した。
【0074】比較例4 実施例1で使用したセルロース繊維を重量平均繊維長
1.2mmのNBKPに代えた以外は、実施例1と同様
にして比較例4の印刷機ブランケット洗浄用不織布を作
製した。
【0075】上記の実施例6〜7および比較例4で得た
印刷機ブランケット洗浄用不織布について、上述した評
価試験により評価し、その結果を表3に示す。
【0076】
【表3】
【0077】パルプの繊維長が本発明の範囲内である実
施例6、7では、繊維の脱落も少なく、吸水・吸油性、
保液性にも優れており、拭き取り性や印刷性も良好であ
った。一方、比較例4では、セルロース繊維の繊維長が
本発明の範囲外であるため、製造時の繊維の脱落が多
く、ロール端部からの断裂はなかったものの、結果とし
て吸水性、保液性が低下して、その結果、拭き取り性や
印刷性は本実施例より劣った物となった。
【0078】実施例8 実施例1で行ったコロナ放電処理を行わなかった以外
は、実施例1と同様にして実施例8の印刷機ブランケッ
ト洗浄用不織布を作製した。
【0079】実施例9 コロナ放電処理出力を0.03kW分/m2で行った以
外は、実施例1と同様にして実施例9の印刷機ブランケ
ット洗浄用不織布を作製した。
【0080】実施例10 コロナ放電処理出力を0.1kW分/m2で行った以外
は、実施例1と同様にして実施例10の印刷機ブランケ
ット洗浄用不織布を作製した。
【0081】実施例11 コロナ放電処理出力を2.0kW分/m2で行った以外
は、実施例1と同様にして実施例11の印刷機ブランケ
ット洗浄用不織布を作製した。
【0082】実施例12 コロナ放電処理出力を2.8kW分/m2で行った以外
は、実施例1と同様にして実施例12の印刷機ブランケ
ット洗浄用不織布を作製した。
【0083】上記の実施例8〜12で得た印刷機ブラン
ケット洗浄用不織布について、上述した評価試験により
評価し、その結果を表4に示す。
【0084】
【表4】
【0085】実施例8〜12より、コロナ放電処理条件
を変えても優れた印刷機ブランケット洗浄用不織布が得
られることが判明した。特に実施例10〜11の範囲の
ものは、効率よく吸水速度、保液性向上した。従って、
拭き取り性の高い印刷機ブランケット洗浄用不織布が得
られることが判明した。
【0086】
【発明の効果】本発明の不織布及びこの不織布を用いて
なることを特徴とする印刷機ブランケット洗浄用不織布
は、主としてセルロース繊維、合成繊維からなり3次元
交絡および熱処理してなるものであり、オフセット輪転
印刷機におけるブランケット自動洗浄機に使用した場
合、洗浄時における断裂がなく、洗浄液の保液性に優
れ、繊維の脱落がなく、インク汚れに対する拭き取り性
に優れた効果を発揮するものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) D21H 15/10 D21H 15/10 Fターム(参考) 3B074 AA01 AA02 AA08 AB01 AC03 4L031 AA02 AA12 AB01 AB34 BA09 CA00 CA08 CB06 DA08 DA19 4L047 AA08 AA14 AA27 AB09 BA04 BA08 BA21 BB09 CA15 CB07 CC16 4L055 AF09 AF16 AF17 AF33 AF47 BE20 EA04 EA07 EA10 EA16 EA34 FA11 FA13 FA30 GA39 GA46

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 主として重量平均繊維長1.5mm以上
    のセルロース繊維および合成繊維からなり3次元交絡さ
    れた不織布で、該セルロース繊維と合成繊維あるいは該
    合成繊維同士の少なくとも一部が熱接着された不織布で
    あって、該不織布の縦方向の端裂抵抗が10N/cm以
    上であることを特徴とする不織布。
  2. 【請求項2】 片面または両面にコロナ放電処理した不
    織布であり、且つJIS L1907の滴下法で測定し
    た吸水速度と該滴下法に準拠した方法により、灯油を用
    いて測定した吸油速度がいずれも10秒以下であること
    を特徴とする請求項1記載の不織布。
  3. 【請求項3】 コロナ放電処理が、片面当たりの総エネ
    ルギーとして0.05〜2.0kW分/m2であること
    を特徴とする請求項1または2記載の不織布。
  4. 【請求項4】 合成繊維のアスペクト比(繊維長/繊維
    径)が700〜2000であることを特徴とする請求項
    1〜3のいずれか1項記載の不織布。
  5. 【請求項5】 セルロース繊維を30〜70重量%含有
    することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載
    の不織布。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5のいずれか1項記載の不織
    布を用いてなる印刷機ブランケット洗浄用不織布。
  7. 【請求項7】 重量平均繊維長1.5mm以上のセルロ
    ース繊維と合成繊維を水中にて均一に分散し、湿式抄造
    法にてウェブとした後、多孔質支持体上に積載して高圧
    柱状水流を噴射して、繊維を3次元交絡させた後、水分
    を除去し、合成繊維の融点より高い温度で処理した後、
    さらに少なくとも片面に放電加工処理を施すことを特徴
    とする不織布の製造法。
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