JP2000256946A - 2層構造部を有する衿付き身頃の編成方法 - Google Patents

2層構造部を有する衿付き身頃の編成方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、ホールディング技術を応用するこ
とで2層状に編成される衿部分を編機ゲージに相当する
ゲージにて編成することでしっかりとした衿を得ること
を目的とする。 【解決手段】 身頃の衿部の2層構造部分を、衿部基端
部において編目の増殖を行い、衿部を2層構造に編成す
るためのステップ、前左身頃に属する衿側を編成するた
めに前右身頃の衿部の一部の編目を隣接する該衿部の編
目を係止する針にホールディングさせるステップ、前記
形成された空針に前左身頃に属する衿部の編目の一部を
目移しするステップ、衿部を含む前左身頃の編目を係止
する針に給糸して編目コースを編成するステップ、上記
と同様の編成を適用して衿部を含む前右身頃の編目コー
スを編成するステップ、と上記各ステップを繰り返すス
テップにより編成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、先端にフックを備
えた針本体と、2枚の薄板を重ね合わせて構成したタン
グを備えたスライダーとを備え、該針本体とスライダー
とを個別に前後進自在に構成した複合針を備えた横編機
を用いて行う編目ループの預け置き技術(以下、ホール
ディングという。)を応用した衿等の編成方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】本出願人は、特公平3−75656号に
より前後に針床を対向配置させた所謂2枚ベッド横編機
を用いてリンクス、ガーター、リブ等の表目/裏目が混
在した組織柄を有する編地を、前側編地と後側編地から
なる筒状編地として編成する方法を提案した。この方法
を利用すれば前側編地と後側編地が前後に2枚重なり合
った2層状態で編成することもできる。
【0003】これは前側編地の編成を例えば奇数番目の
針に、後側編地を偶数番目の針に割り当て、前後針床の
それぞれ1本置きの針を使用して各編地を編成するもの
で俗称“針抜き編成”と呼ばれる。前側編地を編成する
際に後側編地を後針床の針に付属(係止)させ、反対に
後側編地を編成する際に前側編地を前後針床の針に付属
させて前後に重ね合わせた状態で編地を編成することで
各編地は対向する針床上に目移し用の空針を常に確保さ
せるというものである。
【0004】しかしながら上記した針抜き編成による方
法では、針1本置きに空き針を用意せねばならず、所望
するウエール数(針立て)の編地を得るには倍の針数が
必要となり、またこれにより編まれた編地は上記した理
由で実際の編機ゲージよりも粗いものとならざるを得な
かった。
【0005】そこで本出願人は、先端にフックを備えた
針本体と、2枚の薄板を重ね合わせて構成したタングを
備えたスライダーとを備え、該針本体とスライダーとを
個別に前後進自在に構成した複合針を列設した針床を備
えた横編機を用いて行う編目ループのホールディングに
ついて特願平10−111842号、発明の名称「編目
ループの預け置き方法」を出願した。これによれば編目
ループをフックに係止した複合針は、更にスライダーの
タング上に他の針が係止していた編目ループを受け取り
ホールディングさせ、また必要なときにこのホールディ
ングした編目ループを移し戻すことができるので目移し
用の空き針を設ける必要がなく、編機ゲージに相当する
編地を編成できる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、上記
した編目ループのホールディング技術を応用することで
2層状に編成される衿部分を編機ゲージに相当するゲー
ジにて編成することでしっかりとした衿を得る編成方法
を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明では、先端にフッ
クを備えた針本体と、2枚の薄板を重ね合わせて構成し
たタングを備えたスライダーとを備え、該針本体とスラ
イダーとを個別に前後進自在に構成した複合針を列設し
た少なくとも前後一対の第1ベッドと、第2ベッドを設
けた横編機を用いて、前身頃を裾から肩に向かって編成
する間に、衿開口部を形成し、以降前記前身頃を衿開口
部を挟んで前左身頃、前右身頃として分岐して編成する
とともに衿開口部に沿って各身頃に衿部分を形成すると
ともに各衿部が開口基端側において重なり合った2層構
造として編成される衿部を含んだ身頃の前記衿部の2層
構造部分は、 a)衿部基端部において編目の増殖を行い、衿部を2層
構造に編成するための準備ステップ、 b)前左身頃に属する衿部分を表目・裏目の混在した編
み組織で編成するために、前右身頃の衿部の一部の編目
を隣接する該衿部の編目を係止する針にホールディング
させて空針を形成するステップ、 c)前記ステップbにて形成された空針に、前左身頃に
属する衿部の編目の一部を目移しするステップ、 d)衿部を含む前記前左身頃の編目を係止する針に給糸
して編目コースを編成するステップ、 e)前右身頃の衿部を表目・裏目の混在した編み組織で
編成するために前記前左身頃に属する衿部の空針に目移
された編目を対向する該衿部の編目を係止する針にホー
ルディングさせて空針を形成するステップ、 f)前記ステップeにて形成された空針に前記前右身頃
に属する衿部の編目の一部を目移しするステップ、 g)衿部を含む前記他前右身頃の編目を係止する針に給
糸して編目コースを編成するステップ、 h)上記b〜gのステップを繰り返すステップを含むよ
うにした。
【0008】これによると前身頃を裾から肩に向かって
編成する間に、2層構造の衿部分をもつ衿開口部を形成
するために編目の増殖を行って、その準備を行った後、
以降前身頃を衿開口部を挟んで前左身頃と前右身頃に分
岐して編成するとともに各身頃に属する衿部分を、それ
ぞれ表目・裏目の混在した編み組織、例えばリブ編みす
るために、前左身頃に対しては、前右身頃の衿部の一部
の編目を隣接する該衿部の編目を係止する針にホールデ
ィングさせて空針を形成し、この形成された空針に、前
左身頃に属する衿部の編目の一部を目移して衿部分の編
目を前後の針床の針へ係止させ、この状態で衿部分を含
む前左身頃に給糸することで衿部分を表目・裏目の混在
した編み組織で編成する。上記のように他方の衿の編目
をホールディングさせて空針を形成し、この空針にこれ
から編まれる衿部の編目を移して表目・裏目の混在した
編み組織で編成するので従来のような針抜き編成と異な
りしっかりした衿部分を得ることができる。同様に前右
身頃に対しては、前記前左身頃に属する衿部の空針に目
移された編目を対向する該衿部の編目を係止する針にホ
ールディングさせて空針を形成し、この形成された空針
に、前右身頃に属する衿部の編目の一部を目移して衿部
分の編目を前後の針床の針へ係止させ、この状態で衿部
分を含む前右身頃に給糸することで衿部分を表目・裏目
の混在した編み組織で編成する。このような編成を繰り
返し行うことで開口基端側において重なり合った2層構
造を有する衿部を含んだ身頃を編成する。
【0009】
【発明の実施の形態】次に編目のホールディング技術を
応用した実施例として、V型に形成した開口部5の先端
を2層構造とした衿を有する前身頃の編成方法について
以下図面とともに説明する。
【0010】本実施例では、図1に示すように全体を2
×2の編み組織でリブ編みされるとともに袖刳り3L,
3R、衿開口部5を成形編みされる前身頃1に表目・裏
目の混在した編み組織として1×1リブの編み組織から
なる衿部分7を編成する場合を示す。前身頃は矢印で示
すように裾2から肩4に向かって編み進められる。
【0011】図2と図3にその編成ステップを示す。図
中のFBは前ベッド、BBは後ベッドを示し、アルファ
ベットa〜zは各ベッドに装着された針を示す。各ベッ
ドには先端にフックを備えた針本体と、2枚の薄板を重
ね合わせて構成したタングを備えたスライダーとを備え
た複合針が装着され、複合針の針本体とスライダーは針
床上を往復走行する不図示のキャリッジに設けたカムに
より個別に前後進自在に構成される。
【0012】本実施例では、編目のホールディングは、
一方の針床の針から直接他方の針床の針に対して行われ
る場合を示すが、例えば目移し用のトランスファージャ
ックベッドを備えた横編機(例えば株式会社島精機製コ
ンピュータ横編機、製品名FIRST)では、トランス
ファージャックを経由させて編目を対向する他方の針床
の針または同じ針床上の隣の針へホールディングさせる
ことも可能である。
【0013】先ず、ステップ1は、ラインPにおけるコ
ース編成を示す。裾2からラインP迄の編成は公知の方
法にて行われるので説明の便宜上省略する。ステップ1
において給糸口11を右行させ、前ベッドの針a,b、
後ベッドc,d、前ベッドの針e,f、…、に給糸して
前身頃を2×2のリブ編み組織にてコース編成する。次
のステップ2は、続くステップ3にて行われる割増やし
編成のための準備工程で、衿部分を形成する針i〜rの
範囲内にある裏目(針k,l,o,p)を前ベッドの針
へ目移しする。ステップ3では、給糸口11を左行さ
せ、前ベッドの針z,y,v,u,r〜i,f,e,
b,aと、後ベッドの針x,w,t,s,h,g,d,
cに給糸して編目コースの編成を行うとともに、前ベッ
ドの針i〜rに係止されていたステップ1で形成された
編目を後ベッドの対向する針へ移す割増やし編成を行
う。割増やし編成は、編目の増殖(増し目)を意味し、
単層の編地として編成されていた身頃に続けて衿部分を
前後の編地からなる2層状に編むために行われる。上記
した形式の複合針による割増やし編成についての詳細
は、本出願人による特願平10−187892、発明の
名称「編目形成方法及び該編目形成のための横編機」に
言及される。上記割増やしによる方法では増し目箇所に
孔があかないといったメリットがあるが、他の増し目方
法にて編目の増殖を行ってもよい。
【0014】そしてステップ4以降からは開口部5を形
成するために前身頃1を左右に分けて編成する。前右身
頃1R(紙面向かって左側)の編成には給糸口11が引
き続き使われ、前左身頃1L(紙面向かって右側)の編
成には給糸口13が新たに導入される。ステップ4で、
給糸口13を左行させ前ベッドの針z,y,v,uと、
後ベッドの針x,w,t〜iに給糸して前左身頃1Lの
コース編成を行う。ここで衿部分の針i〜rを平編みす
るのは、上記割増やし編成により形成された編目を緩め
て編成を容易にするためであり、この編成を省略して直
ぐに後述の1×1のリブ編みを行うようにしてもよい。
【0015】ステップ5〜7は、ステップ8において前
左身頃1Lの衿部分7Lを1×1のリブ編みするための
準備工程を示す。まずステップ5では、前右身頃1Rの
衿部分7Rの編目となる前ベッドの針i,k,m,o,
qに係止される編目を後ベッドの対向する針にホールデ
ィングさせ、続くステップ6で後ベッドを1針分右へラ
ッキングしてステップ5でホールディング状態に置かれ
た編目を前ベッドの針j,l,n,p,rへホールディ
ングさせる。これにより前右身頃1Rの衿部分7Rを構
成する針i,k,m,o,qに係止されていた編目は同
じ前ベッドの隣の針j,l,n,p,rへホールディン
グされたこととなり、前ベッドの針i,k,m,o,q
に空針を形成する。そしてステップ7では、前左身頃1
Lの衿部分7Lの後ベッドの針i,k,m,o,qに係
止される編目を前ベッドの空針へ目移しする。以上の準
備工程の後、ステップ8において給糸口13を右行さ
せ、前ベッドの針i,k,m,o,q,u,v,y,z
と、後ベッドの針j,l,n,p,r,s,t,w,x
に給糸して前左身頃1Lの続くコース編成を行う。
【0016】ステップ9、10はステップ11において
前右身頃1Rのコース編成を行うための準備工程を示
し、ステップ8で前ベッドの針i,k,m,o,qで編
まれた前左身頃1Lの編目を同じ前右左身頃1Lの衿部
分7Lの編目を係止する後ベッドの針j,l,n,p,
rにホールディングさせるた後、ステップ10で前ベッ
ドの針j,l,n,p,rでホールディングされていた
前右身頃1Rの衿部分7Rの編目を後ベッドの空針i,
k,m,o,qへ目移しする。
【0017】上記準備工程の後、ステップ11において
給糸口11を右行させ、前ベッドの針a,b,e,f,
j,l,n,p,rと、後ベッドの針c,d,g,h,
i,k,m,o,qに給糸して衿部分7Rを含む前右身
頃1Rのコース編成を行う。ステップ12で給糸口を左
行させ前記ステップ11と同じ針に給糸して前右身頃1
Rの続くコース編成を行う。
【0018】そしてステップ13〜14は、ステップ1
5において前左身頃1Lのコース編成を行うための準備
工程を示し、上記したステップと同様にホールディング
と編目の移し分けのステップを伴い行われる。上記ステ
ップ8〜15のステップが1回行われることで、前右身
頃1Rと前左身頃1Lにはそれぞれ2コースの編目コー
スが形成されるこことなる。
【0019】そして上記ステップ8〜15を所定の回数
繰り返す毎に前身頃1R,1Lの各衿部分7R,7Lを
それが属する身頃側に寄せて重ねていくことで衿開口部
5を徐々に広げてV字状に形成する。例えば衿7Lを前
左身頃1L側に寄せて重ねるステップにおいては、衿7
Rの編目を係止する針に衿7Lの編目を一旦ホールディ
ングさせてから編目を身頃側に寄せて重ねるようにすれ
ばよく、これは比較的広幅な衿部分を編成するときに用
いる。また衿幅が比較的細い場合には、1回のラッキン
グにより2層状態にある衿部分を互いに重なり合わない
程度までシフトできるのでホールディングを使わずその
状態で存在する空針を使用して編目を身頃側に寄せるこ
とができる。その際、身頃も同様に他方の身頃から離れ
る向きに移動させるようにすればより大きくラッキング
できる。このようにして互いに重なり合わない状態まで
各衿部分7R,7Lが移動された後は、公知の衿付き身
頃と同様な編成を行いながら肩部に向けて編成する。
【0020】なお上記実施例では、重ねた状態で2層状
に編まれる衿部分に表目・裏目の混在した編み組織を編
む例として1×1リブを例に説明したが、これに限らず
ワイドリブ、リンクス、ガーターをはじめ表目と裏目を
混在して編める編み組織であれば何でもよい。また、形
成される衿の形状も上記したV型のものに限らず、2層
状に重なって形成されるものであれば何でもよい。
【0021】
【発明の効果】上記したように本発明の方法では、ホー
ルディング技術を応用することで2層構造に編まれる衿
部分を針抜き編成を行わないので編機ゲージに相当する
編地とすることができ衿部分を従来のものに比べよりし
っかりしたものにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の方法により編まれた衿部を有する前身
頃を示す。
【図2】前身頃の編成ステップの前半部分を示した図で
ある。
【図3】前身頃の編成ステップの後半部分を示した図で
ある。
【符号の説明】
1…前身頃、1R…前右身頃、1L…前左身頃、2…
裾、3…袖刳り、4…肩、5衿開口、7…衿

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 先端にフックを備えた針本体と、2枚の
    薄板を重ね合わせて構成したタングを備えたスライダー
    とを備え、該針本体とスライダーとを個別に前後進自在
    に構成した複合針を列設した少なくとも前後一対の第1
    ベッドと、第2ベッドを設けた横編機を用いて、前身頃
    を裾から肩に向かって編成する間に、衿開口部を形成
    し、以降前記前身頃を衿開口部を挟んで前左身頃、前右
    身頃として分岐して編成するとともに衿開口部に沿って
    各身頃に衿部分を形成するとともに各衿部が開口基端側
    において互いに重なり合った2層構造として編成される
    衿部を含んだ身頃の前記衿部の2層構造部分は、以下の
    ステップにより編成される; a)衿部基端部において編目の増殖を行い、衿部を2層
    構造に編成するための準備ステップ、 b)前左身頃に属する衿部分を表目・裏目の混在した編
    み組織で編成するために、前右身頃の衿部の一部の編目
    を隣接する該衿部の編目を係止する針にホールディング
    させて空針を形成するステップ、 c)前記ステップbにて形成された空針に、前左身頃に
    属する衿部の編目の一部を目移しするステップ、 d)衿部を含む前記前左身頃の編目を係止する針に給糸
    して編目コースを編成するステップ、 e)前右身頃の衿部を表目・裏目の混在した編み組織で
    編成するために前記前左身頃に属する衿部の空針に目移
    された編目を対向する該衿部の編目を係止する針にホー
    ルディングさせて空針を形成するステップ、 f)前記ステップeにて形成された空針に前記前右身頃
    に属する衿部の編目の一部を目移しするステップ、 g)衿部を含む前記他前右身頃の編目を係止する針に給
    糸して編目コースを編成するステップ、 h)上記b〜gのステップを繰り返すステップ。
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