JP2000256873A - リン酸塩処理用アルミニウム合金材およびアルミニウム合金材のリン酸塩処理方法 - Google Patents

リン酸塩処理用アルミニウム合金材およびアルミニウム合金材のリン酸塩処理方法

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JP2000256873A
JP2000256873A JP11055509A JP5550999A JP2000256873A JP 2000256873 A JP2000256873 A JP 2000256873A JP 11055509 A JP11055509 A JP 11055509A JP 5550999 A JP5550999 A JP 5550999A JP 2000256873 A JP2000256873 A JP 2000256873A
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aluminum alloy
phosphating
coating
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Masao Takemoto
政男 竹本
Fumihiro Sato
文博 佐藤
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Kobe Steel Ltd
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Kobe Steel Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 鋼材とともに同一のラインでリン酸塩処理
されたとしても、Al合金材表面からのAlイオンの溶出を
抑えることのできるAl合金材を提供することを目的とす
る。 【解決手段】 Al合金材表面にリン酸塩浴に対し非反
応性のプレコート皮膜を有することである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鋼材とともに同一
のラインでリン酸塩処理された後に塗装される板材ある
いは押出材 (形材) 等のアルミニウム合金材 (以下、ア
ルミニウムを単にAlと言う) およびAl合金材のリン酸塩
処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、排気ガス等による地球環境問題に
対して、自動車車体の軽量化による燃費の向上が追求さ
れており、自動車車体への圧延板材あるいは押出材等の
Al合金材の適用も増加しつつある。現在の車体は、成形
した鋼板を抵抗スポット溶接にてハット形状に組み立て
て構成すモノコック構造である。しかし、前記軽量化の
ために、これらの板材をAl合金材にするための板材の成
形技術や接合、溶接技術が開発され、Al合金の押出によ
り一体化させた押出材( 中空断面など断面形状が長さ方
向のどの位置でも本質的に同一である形材) を使用した
スペースフレーム構造なども提案されている。
【0003】また、Al合金は、鋼に比してその比重が1/
3 であること、優れたエネルギー吸収性を有すること、
更には断面形状の自由度が高いという特性を有すること
から、車体重量を増加させずに、安全基準への対応や車
体性能を向上させるために、自動車のドアビームやサイ
ドメンバーなどのフレーム、バンパーステイなどのバン
パー補強材等に採用され、これらの需要が伸びている。
【0004】これら自動車などの輸送機の構造材あるい
は部品用としてのAl合金材には、AA乃至JIS 5000系、60
00系、7000系等のAl合金が使用されている。
【0005】しかし、例えば自動車車体にAl合金材が使
用される場合、オールアルミ車などの一部を除いて、大
部分の自動車車体は従来からの鋼板などの鋼材とAl合金
材とが複合化されて用いられる。例えば鋼板製からなる
ドアの部材とAl合金押出材製のドアビームとが複合材料
のドア部材として車体に取り付けられる。
【0006】通常、自動車の製造ラインにおいて、成
形、組み立て後の車体は、リン酸亜鉛処理およびカチオ
ン電着塗装処理などの塗装下地処理を施された後、焼付
け硬化する中塗り、上塗りなどの塗装を施される。そし
て、この製造ラインにおける各工程条件は基本的に、こ
れまで使用されている鋼材の条件に見合ったものとなっ
ている。したがって、自動車車体に使用されるAl合金材
は、従来の鋼材とともに、言い換えると、鋼材と同じ条
件で表面にリン酸亜鉛処理およびカチオン電着塗装処理
などの塗装下地処理が施されることになる。
【0007】しかし、Al合金材の場合、鋼材よりもリン
酸亜鉛処理性が劣るため、Al合金材表面に、均一で適当
量のリン酸亜鉛の皮膜が確保されにくいという問題があ
る。仮にリン酸塩処理性が悪いと、その後に塗装により
形成される塗膜の密着性が低下する。そしてこの結果、
塗装後に糸錆状の腐食や塗膜のふくれが生じ、自動車と
しての耐食性や外観性を低下させるという問題がある。
【0008】このため、Al合金材のリン酸塩処理性を改
善するために、従来からリン酸塩処理浴の側を改善する
ことが行われている。例えば、その代表例としては、リ
ン酸塩処理浴に数十〜数百ppm 程度の高濃度のフリーフ
ッ素(F) イオンを添加することが行われている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】このフリーフッ素(F)
イオンの添加によって、Al合金材のリン酸塩処理性は改
善される。しかし、Al合金材表面へのリン酸塩皮膜の形
成は、Al合金材表面からのAlイオンの溶出によって促進
されるため、Al合金材のリン酸塩処理性がよくなるほ
ど、Al合金材表面からのAlイオンの溶出量が多くなる。
そして、このAlイオンの溶出が多くなると、肝心の鋼材
の方のリン酸塩処理性を阻害するという新たな問題を生
じる。
【0010】勿論、リン酸塩処理浴より、蓄積したAlイ
オンを除去してやれば良いが、除去に伴うリン酸塩浴の
ロス分や、処理設備のコストが大きく、省エネや効率化
が厳しく追求される自動車の製造ラインからすると、こ
れらのコストアップはとても容認できるものではない。
【0011】本発明はこの様な事情に着目してなされた
ものであって、その目的は、従来の輸送機用のAl合金材
の問題点を解決し、鋼材とともに同一のラインでリン酸
塩処理されたとしても、Al合金材表面からのAlイオンの
溶出を抑えることのできるAl合金材を提供しようとする
ものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するため
に、本発明アルミニウム合金材の要旨は、鋼材とともに
同一のラインでリン酸塩処理された後に塗装されるアル
ミニウム合金材であって、リン酸塩処理浴に対し非反応
性のプレコート皮膜を、アルミニウム合金材表面に有す
ることである。
【0013】また、本発明アルミニウム合金材のリン酸
塩処理方法の要旨は、アルミニウム合金材を鋼材ととも
に同一のラインでリン酸塩処理した後に塗装する方法で
あって、リン酸塩処理浴に対し非反応性のプレコート皮
膜を、アルミニウム合金材表面に設け、リン酸塩処理に
おけるアルミニウムの溶出を防止することである。
【0014】
【発明の実施の形態】(非反応性のプレコート皮膜)本発
明における非反応性のプレコート皮膜とは、必要条件と
して、リン酸塩処理浴に対し反応性が無い乃至反応性が
低いことを言い、更には、十分条件として、リン酸亜鉛
などのリン酸塩処理浴に対し、母材のAlの溶出を実質的
に防止乃至低減できる皮膜を言う。そして、本発明にお
けるプレコート皮膜とは、リン酸塩処理に先立って、予
め設ける皮膜のことを言い、リン酸塩処理の直前乃至リ
ン酸塩処理工程中で設けられても、或いは、Al合金材自
体の製造後で、製品への成形加工前に設けられても良
い。
【0015】本発明におけるプレコート皮膜には、前記
リン酸塩処理浴に対し非反応性である他に、塗装用であ
ることから、リン酸塩処理に続く塗装工程での、樹脂塗
膜 (樹脂塗料乃至樹脂塗装皮膜) との良好な密着性を有
することが必要である。
【0016】そして、条件乃至用途によっては他の特性
も必要となる。例えば、プレコート皮膜を設けたAl合金
材の状態で、プレス成形や曲げ加工などの成形加工され
ることが板材の場合に多いため、また、押出材でも曲げ
加工が行われることが多いため、このような場合には、
プレス成形性を有すること乃至プレス成形性を阻害しな
いことが必要となる。また、成形後に部材同士の溶接あ
るいは接着剤による接合が行われるため、このような場
合には、溶接性を有すること乃至溶接性を阻害しないこ
とが必要となる。この他、腐食環境での使用を前提とす
ると、塗装後の耐蝕性として、耐糸さび性を有すること
乃至耐糸さび性を阻害しないことが好ましい。
【0017】これらの特性を有するプレコート皮膜皮膜
としては、アルミニウムの水和酸化物 (ベーマイト)
皮膜、クロメート皮膜、樹脂皮膜、リチウム塩,
マグネシウム塩, セリウム塩, カルシウム塩などの皮
膜、過マンガン酸カリウム皮膜、蒸着によるAlの酸
化皮膜が例示される。
【0018】これに対し、鋼板やAl合金板のリン酸塩処
理性向上のために、従来から汎用されている電気乃至置
換亜鉛めっきは、自らリン酸塩と反応して溶出するた
め、Alの溶出を促進し、本発明の皮膜には適さない。
【0019】更に、蒸着による以外のAlの酸化皮膜は、
樹脂塗膜との密着性が劣り、塗膜のつきまわり性を阻害
するとともに、塗膜ふくれなどを生じやすく、塗装後の
耐蝕性が劣る。
【0020】(ベーマイトなどのAlの水和酸化物皮膜)ま
ず、本発明におけるAlの水和酸化物皮膜とは、一般式、
Al2O3 ・XH2Oで表され、Alの酸化物の水和反応により生
成したAlの水和酸化物の皮膜を言う。そして、本発明に
おけるAlの水和酸化物とは、水和の程度(Xの値) などに
よる水和酸化物の種類や、形態、結晶構造や結晶度など
に特に限定されるものではない。ただ、Alの水和酸化物
の中でも、前記X の値が約1.5 〜1.9 の擬ベーマイトの
ものは、ベーマイト皮膜と一般的に総称されている。
【0021】そして、これらのAlの水和酸化物の皮膜構
造の同定は、前記走査型電子顕微鏡による形態的な観察
の他に、赤外線分光分析法(FT −IR) で行うことができ
る。即ち、FT−IRにより、3000〜3700cm-1付近に認めら
れるAlO ←→H の伸縮振動による吸収スペクトル、およ
び1000〜1050cm-1付近に認められるAl←→OHの伸縮振動
による吸収スペクトル、更に800 〜600cm -1付近に認め
られるOAl ←→O の伸縮振動による吸収スペクトルの、
いずれか一つ以上が認められることにより、本発明のAl
の水和酸化物皮膜の存在が確認される。また、Alの水和
酸化物皮膜の膜厚は、Al合金材の破面 (例えばAl合金押
出材の180 °曲げによる破面) を前記した走査型電子顕
微鏡による2 万倍以上の観察で行うことができる。
【0022】また、本発明におけるAlの水和酸化物皮膜
とは、Al2O3 ・XH2Oの純粋なAlの水和酸化物からのみ構
成される皮膜だけではなく、Alの水和酸化物皮膜を主成
分とするものであれば、混合物、即ち、Alの水和酸化物
皮膜形成時に混入してくる可能性や必然性のある不純物
元素などを含むものであっても構わない。
【0023】例えば、Alの水和酸化物と、Fe、Ni、Co、
Znから選択される1 種以上の金属化合物との複合皮膜と
する (これら金属の金属塩、例えば、硫酸塩、炭酸塩、
酸化物、水酸化物を複合皮膜へのこれら金属化合物の含
有量を金属元素に換算して1.0 at% 以上含有させる) 。
或いは、Alの自然電位よりも電位的に卑な金属化合物で
あるSi、Mnなどの金属化合物を、総和でかつ皮膜中の平
均含有量で1at%以上含む複合乃至混合皮膜とする (これ
ら金属の金属塩、例えば、硫酸塩、炭酸塩、酸化物、水
酸化物を複合皮膜へのこれら金属化合物の含有量を金属
元素に換算して1.0 at% 以上含有させる) 。これらの場
合には、Alの水和酸化物単味の皮膜の場合に比して、耐
水性や耐糸さび性、更には全面腐食などの耐食性がより
優れる。但し、これら金属化合物或いは不純物元素など
の許容量は、Alの水和酸化物皮膜の耐食性や密着性など
の特性を阻害しない範囲とする。
【0024】ベーマイトなどのAlの水和酸化物皮膜の膜
厚は、前記リン酸塩浴に対するAlの溶出防止のために必
要な膜厚下限と、プレス成形性や溶接性など他の特性を
阻害しない膜厚上限という点から決定される。最適な膜
厚は、これの具体的な条件によっても異なるので一概に
は決めにくいが、10〜6000Å( オングストローム) の範
囲が好ましい。
【0025】Alの水和酸化物皮膜の形成は、Al合金材
を、例えば輸送機用の部材に成形および/ または溶接接
合、更にAl合金材の全面あるいは一部を研削した後に行
っても良く、或いはこれらの加工に先立って行っても良
い。また、Al合金材乃至成形材のAl合金表面を、有機溶
剤やアリカリ性溶液あるいは酸性溶液により脱脂乃至洗
浄する適当な前処理を行う。この前処理の中でも、硝酸
水溶液により前処理した場合、後の工程で生成するAlの
水和酸化物皮膜の緻密さを向上させ、水分の浸透を抑制
して耐水性をより向上される効果を有する。
【0026】そして、この前処理の後に、Al合金材表面
を、高温水や水蒸気に直接接触させる方法、あるいはAl
合金材表面にAlの酸化物層を設けた後で水和反応により
Alの水和酸化物皮膜に変換する方法、更に、これらAlの
水和酸化物皮膜を設けた後に、加熱により水和量を調節
する方法、あるいは前記特開平05-70969号公報などのよ
うな、高温の中性または弱アルカリ性浴( 純水、水道
水、トリエタノールアミンやアンモニアの水溶液) に接
触させる方法等を適宜選択して、本発明における2 層の
Alの水和酸化物皮膜を作成する。また、押出材の場合に
は、特に、Al合金の熱間押出直後にオンラインでシャワ
ーやスプレー等により水冷して、高温の水蒸気乃至水分
存在下に一定時間保持することにより、生成するAlの酸
化皮膜中に、Alの水和酸化物を実質量含ませ、Alの水和
酸化物のみの層と同じ機能を有させることも可能であ
る。
【0027】(クロメート皮膜)本発明におけるクロメー
ト (クロム酸) 皮膜は、Al合金材をCrO3、Na2Cr2O7等の
クロム酸溶液により処理する公知の方法により設けた皮
膜である。クロメート皮膜の膜厚は、前記リン酸塩浴に
対するAlの溶出防止のために必要な膜厚とし、プレス成
形性や溶接性など他の特性を阻害しない膜厚を上限とす
る。この点、最適な膜厚はリン酸塩等の具体的な条件に
よっても異なるので一概には決めにくいが、1 μm 以下
とすることが好ましい。
【0028】(リチウム塩, マグネシウム塩, セリウム
塩, カルシウム塩)本発明におけるリチウム塩皮膜は、A
l合金材をLiCO3 、LiOH、MgSO4 、Ca(OH) 2 、CaSO4 、C
e(NO3)3、CeCl3 溶液により処理して設けた皮膜であ
る。これらの塩皮膜の膜厚は、前記リン酸塩浴に対する
Alの溶出防止のために必要な膜厚とし、プレス成形性や
溶接性など他の特性を阻害しない膜厚を上限とする。こ
の点、最適な膜厚はリン酸塩等の具体的な条件によって
も異なるので一概には決めにくいが、5 μm 以下とする
ことが好ましい。
【0029】(過マンガン酸カリウム皮膜)本発明におけ
る過マンガン酸カリウム皮膜は、Al合金材をKMnO溶液に
より処理して設けた皮膜である。この皮膜の膜厚は、前
記リン酸塩浴に対するAlの溶出防止のために必要な膜厚
とし、プレス成形性や溶接性など他の特性を阻害しない
膜厚を上限とする。この点、最適な膜厚はリン酸塩等の
具体的な条件によっても異なるので一概には決めにくい
が、5 μm 以下とすることが好ましい。
【0030】(蒸着によるAlの酸化皮膜)本発明における
Alの酸化皮膜は、Al合金材表面に、PVD あるいはCVD な
どの蒸着法により、人工的なAl酸化物を被覆した皮膜で
ある。この皮膜の膜厚は、前記リン酸塩浴に対するAlの
溶出防止のために必要な膜厚とし、プレス成形性や溶接
性など他の特性を阻害しない膜厚を上限とする。この
点、最適な膜厚はリン酸塩等の具体的な条件によっても
異なるので一概には決めにくいが、1000Å( オングスト
ローム) 以下とすることが好ましい。
【0031】(樹脂皮膜)本発明における樹脂皮膜は、Al
合金材との密着性があり、リン酸塩浴に対するAlの溶出
防止のために、リン酸塩浴との反応性が少ない樹脂であ
れば、通常汎用される樹脂が適宜使用可能である。例え
ば、ポリメチルメタアクリレート等のアクリル樹脂、ビ
スフェノール型やノボラック型等のエポキシ樹脂、フェ
ノール樹脂、ポリエステル樹脂等の公知の樹脂が使用可
能である。そして、これらを単一で、あるいは混合乃至
積層して用いる。
【0032】また、通常の成形加工用に用いられる液体
潤滑剤や固体潤滑剤も適宜使用可能である。液体潤滑剤
としては、鉱油や合成油乃至防錆油を主体とする油性潤
滑剤、エマルジョンやソルブル乃至ケミカルソリューシ
ョンタイプの水溶性潤滑油などが例示される。また、固
体潤滑剤としては、ワックス、フッ素系樹脂、金属石
鹸、二硫化モリブデン、グラファイト、アクリルポリマ
ー、ボンデライト等の化成皮膜、ポリ塩化ビニールやポ
リエチレン等のプラスチックフィルムなどが例示され
る。更に具体的には、前記ワックスとして、天然ワック
ス、パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス( ポ
リエチレンワックス、ポリプロピレンワックスを含む)
、酸化あるいは変性ポリオレフィンワックスなどが例
示される。また、フッ素系樹脂としては、ポリ4 フッ化
エチレン樹脂、ポリフッ化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニ
リデン樹脂などが例示される。
【0033】これら樹脂皮膜の膜厚は、前記リン酸塩浴
に対するAlの溶出防止のために必要な膜厚下限と、プレ
ス成形性や溶接性など他の特性を阻害しない膜厚上限と
いう点から決定される。最適な膜厚は、樹脂の種類やリ
ン酸塩等の具体的な使用条件によっても異なるので一概
には決めにくいが、0.3 〜5.0 μm の範囲が好ましい。
【0034】そして、これらリン酸塩処理浴に対し非反
応性のプレコート皮膜を設けたAl合金材に、現行の自動
車の塗装ラインに従い、鋼材とともにリン酸塩処理など
の塗装下地処理を施した後、カチオン電着塗装および中
塗り、上塗りの仕上げ塗装を行う。なお、本発明で言う
鋼材とともにリン酸塩処理するとは、鋼材とAl合金材と
の複合材を同時にリン酸塩処理する場合だけではなく、
鋼材と同じ条件で乃至鋼材が処理されるラインで、Al合
金材のみをリン酸塩処理する場合も含む。
【0035】次に、本発明における適用対象Al合金は、
JIS 5000系、JIS 6000系、JIS 7000系の成分規格のAl合
金が適宜適用可能である。このJIS 規格以外のAl合金で
も、本発明の輸送機などの用途の要求特性を満足するAl
合金は、全て本発明の適用対象となる。
【0036】しかし、自動車、船舶などの輸送機材や構
造材あるいは部品用の内、特に自動車のパネル材やフレ
ーム材としては、合金元素が少なくリサイクル性に優れ
ることが好ましい。また、基本的な特性として、引張強
度が200N/mm2以上および耐力で 90N/mm2以上を有してプ
レス成形性に優れることや、プレス成形後の塗装焼付後
には、好ましくは200N/mm2以上の高い耐力となる焼付硬
化性などの特性に優れていることが必要である。
【0037】したがって、本発明Al合金の化学成分組成
は、前記諸特性を満足するために、Al-Mg-Si系のJIS 60
00系Al合金の成分規格 (JIS 6101、6003、6151、6061、
6N01、6063など) に相当するものとして、Si:0.2〜1.8%
(質量mass% 、以下同じ) 、Mg:0.2〜1.6%を基本的に含
有し、その他、Fe:1.0以下、Cu:1.5% 以下、Mn:1.0%以
下、Cr:1.0以下、Zn:1.0% 以下、Ti:0.15%以下、B:300p
pm以下などを必要により選択的に含むAl合金とすること
が好ましい。
【0038】また、JIS 6000系Al合金の各成分規格通り
にならずとも、前記基本的な特性を有してさえいれば、
更なる特性の向上や他の特性を付加するための、適宜成
分組成の変更は許容される。この点、上記元素の成分範
囲の変更や、より具体的な用途および要求特性に応じ
て、その他、Ni、V 、Zr、Sc、Agなどの他の元素やH 等
の不純物を適宜含むことは許容される。
【0039】更に、本発明に係るAl合金材は、常法によ
る圧延加工、あるいは常法による押出加工等によって、
板材や押出材として製造される。即ち、成分規格範囲内
に溶解調整されたアルミ合金溶湯を、例えば、連続鋳造
圧延法、半連続鋳造法(DC鋳造法)等の通常の溶解鋳
造法を適宜選択して鋳造する。次いで、このアルミ合金
鋳塊に均質化熱処理を施し、熱間圧延−冷間圧延−調質
処理 (溶体化および焼き入れ処理や時効硬化処理) 、押
出加工−調質処理、熱間鍛造−調質処理、あるいはこれ
らの組み合わせにより、板材、形材、鍛造材等の所望の
断面形状のAl合金材とする。
【0040】
【実施例】次に、本発明の実施例を説明する。前記常法
により、表1 に示すA 〜F までの組成のAl合金の押出材
(形材) 、板材を製造し、各々溶体化処理および焼入処
理後に時効処理(T6 処理) を行った。これら、Al合金材
の後述する塗装焼きつけ硬化処理後の耐力は、いずれも
150N/mm2以上であった。そして、これらのAl合金材から
試験片を取り出し、この試験片表面に、リン酸塩処理浴
に対し非反応性のプレコート皮膜を表2 、3 に示すよう
な条件で設けた。
【0041】表2 の発明例No.1〜3 の水和酸化物皮膜に
ついては、各試験片を40℃の30% 硝酸に2 分間浸漬して
水洗後、70〜90℃の0.5%トリエタノールアミン(TEA) 水溶液中に10
秒〜50秒浸漬してAlの水和酸化物皮膜を形成するととも
に、TEA 水溶液の温度と浸漬時間を変えて、Alの水和酸
化物の皮膜厚みを制御した。
【0042】表2 の発明例No.4〜9 のリチウム塩、マグ
ネシウム塩、セリウム塩、カルシウム塩については、各
試験片を次の条件で形成した。リチウム塩皮膜について
はLiCO3:7.4g/l、LiOH:6.9g/l を含む30℃のクロム酸水
溶液により1 分処理した。マグネシウム塩皮膜について
は、MgSO4:6.02g/l 、NaHCO3:0.42g/lを含む90℃のマグ
ネシウム塩水溶液により60分処理した。セリウム塩につ
いては、Ce(NO3)3.6H2O:2.2g/lを含む沸騰水で120 分処
理後、CeCl3.7H2O:1.9g/l を含む沸騰水で120分処理し
た。カルシウム塩については、Ca(OH)2 :1wt% 、CaSO4:
1wt%を含む85℃のカルシウム塩水溶液により60分処理し
た。
【0043】表2 の発明例No.10 の過マンガン酸カリウ
ム皮膜については、KMnO4:10mM( モル)/l 、硫酸:102mM
(モル)/l を含む室温の過マンガン酸カリウム水溶液に
より5 分処理した。
【0044】また、表2 の発明例No.11 のクロメート皮
膜については、試験片をCrO3:4g/l、Na2Cr2O7:3.5g/l
、NaF:1g/lを含む30℃のクロム酸水溶液により1 分処
理した。
【0045】表2 の発明例No.12 〜15の樹脂皮膜は、各
々の樹脂を混合した溶剤をスプレーによりAl合金材表面
に被覆した。
【0046】表2 の発明例No.16 の蒸着によるAlの酸化
皮膜は、Al合金材表面に、マグネトロンスパッタ蒸着法
により、反応性ガスとして酸素を用いて、作業圧力5 ×
10-2Pa、膜の成長速度0.02μm/min.の条件で設けた。
【0047】比較のために、表2 の比較例No.17 、19に
は、表面に亜鉛置換めっきを行い、亜鉛めっき皮膜を設
けたAl合金材の試験片を準備した。また、No.18 、20に
は、Alの自然酸化皮膜を設けた通常のAl合金材の試験片
を準備した。更に、No.21 には、リン酸亜鉛処理直前に
アルカリエッチングを行い、酸化皮膜を除去したAl合金
材の試験片を準備した。
【0048】(化成処理条件) 各試験片 (供試材) をU
曲げした成形材の曲げ部分(R部分)を、塗装後の耐蝕性
試験片として採取し、表面の潤滑剤を脱脂して完全に除
去し、その後、発明例および比較例とも、リン酸チタン
のコロイド分散液コロイダル液 (コロイダルチタン溶
液: 日本パーカーライジング (株) 社製、商品名PBL302
0 システム、温度25℃、浸漬1 分) 処理およびリン酸亜
鉛処理 (フリーフッ素イオン量 50ppm、温度42℃、浸漬
2 分) した。この際、Al試験片からのAlの溶出量を、リ
ン酸亜鉛溶液1 リットル中に存在する総Alの量(mg)を、
単位面積当たり(1m2) に換算して求めた。これらの結果
を表2 に示す。
【0049】(塗装条件) これらの化成処理を行った
後、カチオン電着塗装を行い、しかる後に、2 コート2
ベーク塗装として、より具体的には、中塗り塗装とし
て、30μm 厚さのポリエステルメラミン系塗装皮膜を設
けた。ベークハード処理( 焼き付け硬化処理) は170 ℃
×20分とした。
【0050】(塗装後耐蝕性試験) そして、これら発明
例、比較例の塗装試験片に、全て同じ条件で、耐糸さび
評価試験を行った。これらの評価結果も表2 に示す。耐
糸さび評価試験は、塗装試験片の皮材側表面に一片が7c
m のクロスカットを施した後、35℃の3%HCl 水溶液に2
分間浸漬した後、次いで40℃、85%RH の恒温恒湿の雰囲
気に1500時間放置し、その後発生した糸さびの最大長さ
L(クロスカットより垂直方向の距離) を測定した。そし
て、糸さびの最大長さL が、L ≦1mm のものを○、1mm
<L ≦3mm のものを△、L >3mm のものを×として評価
した。
【0051】表2 の結果から明らかな通り、本発明のリ
ン酸亜鉛と非反応性の皮膜を有する発明例No.1〜16は、
リン酸亜鉛処理におけるAlの溶出量が少なく、かつ塗装
後の耐糸さび性などの耐蝕性にも優れる。一方、これに
対し、リン酸亜鉛と反応する皮膜を有する比較例No.17
〜20の内、亜鉛置換めっきを施した比較例No.17 、19
は、塗装後の耐糸さび性などの耐蝕性は優れるものの、
リン酸亜鉛処理におけるAlの溶出量が多い。また、自然
酸化皮膜を有する通常のAl合金材である比較例No.18 、
20は、リン酸亜鉛処理におけるAlの溶出量が多く、かつ
塗装後の耐糸さび性などの耐蝕性も劣っている。この点
は、リン酸亜鉛処理直前にアルカリエッチングを行い、
酸化皮膜を除去したAl合金材の例である比較例No.21 も
同様である。
【0052】したがって、以上の事実から、本発明規定
の臨界的な意義や好ましい条件の意義が裏付けられる。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
【発明の効果】本発明によれば、鋼材とともに同一のラ
インでリン酸塩処理されたとしても、Al合金材表面から
のAlイオンの溶出を抑えることのできるAl合金材を提供
することができる。したがって、Al合金材の自動車、車
両、船舶などの輸送機材用への用途の拡大を図ることが
できる点で、多大な工業的な価値を有するものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4K026 AA09 AA25 BA01 BA03 BA04 BA06 BA08 BA12 BB06 BB08 BB10 CA16 CA18 CA20 CA21 CA23 CA28 CA32 CA33 CA36 CA39 EA11

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼材とともに同一のラインでリン酸塩処
    理された後に塗装されるアルミニウム合金材であって、
    リン酸塩処理浴に対し非反応性のプレコート皮膜を表面
    に有することを特徴とするリン酸塩処理用アルミニウム
    合金材。
  2. 【請求項2】 前記プレコート皮膜の膜厚が 5μm 以下
    である請求項1に記載のリン酸塩処理用アルミニウム合
    金材。
  3. 【請求項3】 前記プレコート皮膜がアルミニウムの水
    和酸化物である請求項1または2に記載のリン酸塩処理
    用アルミニウム合金材。
  4. 【請求項4】 前記プレコート皮膜がカルシウム塩、リ
    チウム塩、マグネシウム塩、セリウム塩から選択された
    ものである請求項1乃至3のいずれか1項に記載のリン
    酸塩処理用アルミニウム合金材。
  5. 【請求項5】 前記プレコート皮膜がクロメートである
    請求項1乃至4のいずれか1項に記載のリン酸塩処理用
    アルミニウム合金材。
  6. 【請求項6】 前記プレコート皮膜が樹脂である請求項
    1乃至5のいずれか1項に記載のリン酸塩処理用アルミ
    ニウム合金材。
  7. 【請求項7】 前記アルミニウム合金材がSi:0.2〜1.8%
    (質量% 、以下同じ) 、Mg:0.2〜1.6%を含有するAl-Mg-
    Si系アルミニウム合金である請求項1乃至6のいずれか
    1項に記載のリン酸塩処理用アルミニウム合金材。
  8. 【請求項8】 前記アルミニウム合金材の塗装焼き付け
    後の耐力 (σ0.2)が160N/mm2以上である請求項1乃至7
    に記載のリン酸塩処理用アルミニウム合金材。
  9. 【請求項9】 前記アルミニウム合金材の用途が輸送機
    用である請求項1乃至8に記載のリン酸塩処理用アルミ
    ニウム合金材。
  10. 【請求項10】 前記アルミニウム合金材の用途が自動
    車用である請求項1乃至9に記載のリン酸塩処理用アル
    ミニウム合金材。
  11. 【請求項11】 アルミニウム合金材を鋼材とともに同
    一のラインでリン酸塩処理した後に塗装する方法であっ
    て、リン酸塩処理浴に対し非反応性のプレコート皮膜を
    アルミニウム合金材表面に設け、リン酸塩処理における
    アルミニウムの溶出を防止することを特徴とするアルミ
    ニウム合金材のリン酸塩処理方法。
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