JP2000212674A - 塗装後耐食性に優れたアルミニウム合金材 - Google Patents

塗装後耐食性に優れたアルミニウム合金材

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JP2000212674A
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Takenori Nakayama
武典 中山
Hidekazu Ido
秀和 井戸
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 鉛系顔料を含まない塗装においても、塗装後
耐蝕性が劣化しないAl合金材を提供する。 【解決手段】 鉛系顔料を含まない塗装を施されるアル
ミニウム合金材が、Cuを0.1 〜3.0 質量% 含有すること
である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鉛系顔料を含まな
い塗装を施した際に、塗装後の耐糸錆性や外観性(美観
や鮮映性など) などの塗装後耐食性に優れたアルミニウ
ム合金材 (以下、アルミニウムを単にAlと言う) に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】自動車、船舶、航空機などの輸送機材の
外板や構造材あるいは部品用として、更には建材などの
分野に、軽量化のために、種々のAl合金が使用されてい
る。この中でも、自動車の分野では、省エネルギーを目
的に、外板や構造材として、AA乃至JIS 5000系乃至6000
系などのAl合金の板材や形材が使用されている。
【0003】このAl合金材は、前記自動車材用途として
は、Al合金の圧延板材や押出形材などを、プレスや曲げ
加工などの成形加工後、鋼部材と同様にあるいは鋼部材
とともに、塗装下地処理としてリン酸塩処理などの化成
処理が施され、次いでカチオン電着塗装が施された後、
スプレー塗装などにより塗装が施されて使用されること
も多い。自動車材用途では、鋼部材とともに複合材化し
て用いられることが多く、この場合、美観や意匠性確
保、或いは耐食性確保のために、鋼部材と同じライン乃
至同じライン条件で、あるいはこれらのラインで鋼部材
とともに、Al合金材は塗装されて用いられるからであ
る。
【0004】しかし、この塗装されたAl合金材は、鋼部
材に比して、塗膜下腐食 (糸状腐食や膨れ) を生じやす
い欠点がある。このため、この塗膜下腐食の中でも糸状
腐食の防止、即ち耐糸錆び性の向上など、Al合金材の塗
装後耐蝕性を向上させることが、大きな技術的課題とな
っている。
【0005】一方、前記リン酸塩処理後のカチオン電着
塗装などでは、通常、塗料の硬化性向上のための触媒お
よび耐蝕性向上のためのインヒビターや防錆顔料とし
て、酸化鉛などの鉛化合物を、鉛系顔料として、電着塗
料に含有させるのが一般的である。
【0006】しかしながら、この鉛系顔料は人体に有害
であり、環境問題を含め、鉛系顔料を含有しない (鉛フ
リー) 塗料による塗装が望まれている。ただ、前記電着
塗料に含有させる鉛系顔料は、前記顔料機能を発揮し、
鋼板などの鋼部材やAl合金材の塗装後耐蝕性を保証して
いる。したがって、電着塗料から単に鉛系顔料を除いた
電着塗装とした場合、鋼部材やAl合金材の耐糸錆び性な
どの塗装後耐蝕性が、著しく劣化する。
【0007】このため、鉛フリー塗料による電着塗装に
おいても、特にAl合金材の塗装後耐蝕性を劣化させない
ことが重要な技術的課題となる。このために、鉛系に代
わる新たな防錆顔料を添加するなどの電着塗料側の改良
が、従来から種々行われている。
【0008】例えば、特開平05-339004 号公報には、亜
リン酸亜鉛カルシウムを有効成分とする白色防錆顔料が
開示されている。また、特開平06-200192 号公報には、
亜鉛化合物でコーティングされた酸化チタン顔料を用い
る方法が開示されている。更に、特開平08-41374号公報
には、シアナミド亜鉛およびリン酸カルシウムを有効成
分とする白色防錆顔料が開示されている。また、特開平
09-157541 号公報には、Mg、Ca、Ba、Sr、Zn、Alの一種
または二種以上から選択される変成リンのオキシ酸金属
塩と、変成酸化亜鉛との粉末組成物からなる白色防錆顔
料が開示されている。
【0009】また、鉛フリー塗料による電着塗装工程の
前処理工程を改善する技術も提案されている。例えば、
特開平07-150393 号公報には、鋼板、亜鉛めっき鋼板、
Al合金材をリン酸塩処理後に、Cuイオンを1 〜100ppm含
有するpH1 〜4 の酸性水溶液で処理し、その後、鉛入り
乃至鉛フリー塗料による電着塗装をすることが開示され
ている。更に、ポリ-4- ビニルフェノール誘導体ポリマ
ーまたはその誘導体ポリマーと酸との塩で処理した後
に、鉛レス塗装する方法が特開平08-3483 号公報に開示
されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】これら鉛に代わる新た
な防錆顔料を添加する方法では、新たな防錆顔料に環境
問題が無いことや、鋼部材やAl合金材に対し、鉛と同等
の防錆効果を発揮することが必要である。しかし、前記
新たな防錆顔料は、確かに、鋼部材には有効であるもの
の、Al合金材に対して、鉛系顔料と同等の塗装後耐食性
を確保することができず、鉛系顔料に比して、塗装後耐
食性能は十分ではない。また、鉛系顔料に比して高価で
あるという問題もある。
【0011】また、前記特開平08-3483 号公報のような
ポリ-4- ビニルフェノール誘導体ポリマーにより処理す
る方法や、前記特開平07-150393 号公報のようなCu (イ
オン) などを付着させる技術は、リン酸塩処理と電着塗
装との間に工程を付加することになり、自動車パネルな
どの製造コスト引き上げ、生産効率を下げることにつな
がるため、非現実的である。また、Al合金板のリン酸塩
皮膜表面にCu (イオン) などを付着させる技術は、Al合
金板のリン酸塩皮膜表面に付着したCuが、電着塗装後に
も、塗膜とAl合金板表面との界面に残留して、却って塗
装後の耐蝕性の内、特に耐糸さび性を劣化させる可能性
があるという問題がある。
【0012】本発明はこの様な事情に着目してなされた
ものであって、その目的は、鉛系顔料を含まない塗装に
おいても、塗装後耐蝕性が劣化しないAl合金材を提供し
ようとするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するため
に、本発明Al合金材の要旨は、鉛系顔料を含まない塗装
を施されるアルミニウム合金材が、Cuを0.1 〜3.0%含有
することである。
【0014】本発明の上記要旨とすることにより、鉛系
顔料を含まない塗装においても、耐糸さび性などの塗装
後耐蝕性に優れ、自動車のパネル材などの耐食性ととも
に、外観性が重視される用途においても、これを低下さ
せることが無いAl合金材を提供できる。
【0015】なお、本発明の鉛系顔料を含まない塗装と
は、顔料を全く含有しない塗料だけではなく、鉛に代わ
る防錆顔料として、前記ほう酸バリウム、リン酸塩、シ
アナミド亜鉛などの、従来の鉛に代わる防錆顔料を含む
ものを言う。勿論、これら鉛に代わる新たな防錆顔料を
添加する場合でも、新たな防錆顔料に環境問題などが無
いことが必要である。
【0016】本発明者らは、Al合金材に含有されるCu
が、鉛系顔料を含まない塗膜の塗装後耐蝕性、特に耐糸
さび性に対し、大きく影響することを知見した。即ち、
後述する通り、Al合金材の電着塗装の場合、鋼板の電着
塗装の場合とは全く逆に、耐糸さび性などの塗装後耐蝕
性の向上のためには、鉛系顔料を含まない塗料の方が却
って良いこと、そして鉛系顔料を含まない塗料の場合に
は、Al合金材に含有されるCu量によって、耐糸さび性の
特性が大きく異なることを知見した。
【0017】元々、強度や成形性の改善のために、6000
系Al合金材などに、Cuを3.0%以下添加することは公知で
ある。また、特開平6-287672号公報では、Al合金板に0.
01〜5%添加してエッチングなどの処理により表面にCuを
0.1 〜10wt% 析出させ、析出したCuをリン酸塩処理の際
のカソード反応点として働かせて、リン酸塩処理性を改
善することが開示されている。更に、軽金属学会第93回
秋期大会講演概要集(1997 年、10月20日発行) 第61頁に
も、JIS 6000系Al合金にCuを0.30、0.69wt% 含有させ
て、酸洗などによりAl合金板表面にCuを0.98、3.98wt%
析出させて、リン酸塩処理性を改善することが開示され
ている。
【0018】しかし、これらの公知例が対象とするカチ
オン電着塗装は、前記した通り、全て塗料硬化性向上の
ための触媒および耐蝕性向上のためのインヒビターや防
錆顔料として、酸化鉛などの鉛系顔料を必ず含有させて
いる。そうでなければ、例えば研究室における塗装乃至
耐食試験においては、試験結果と、実際の自動車塗装ラ
インや自動車材の耐食性との対応や整合性が図れないか
らである。
【0019】したがって、これらCuを添加したAl合金材
の公知例は、本発明のような鉛系顔料を含まない、カチ
オン電着塗装などの塗料を対象とするものでは一切な
い。そして、本発明の土台となる、Al合金材に含有され
るCuと、電着塗装塗料の鉛顔料との関係や、耐糸さび性
などの塗装後耐蝕性との関係についての知見は、勿論一
切ないものである。
【0020】また、一方、CuはAl合金の一般耐食性や耐
粒界割れ性、耐応力腐食割れ性を劣化させる有害元素と
しても公知であり、これら特性を劣化させないために、
Cuを規制することも知られている。したがって、用途や
要求特性によって、Cuは有効元素とも有害元素とも扱わ
れてきたのが実情であり、本発明のような鉛系顔料を含
まない、カチオン電着塗装などの塗装において、耐糸さ
び性などの塗装後耐蝕性に対して、Cuが有効であるか有
害であるかの挙動は、全く不明乃至不知であったのが実
情である。
【0021】
【発明の実施の形態】本発明Al合金材における、化学成
分組成について説明する。本発明に用いるAl合金材の種
類は、Cu含有を必須とする以外は、輸送機用として用い
られるAA乃至JIS に規定される3000系、5000系、6000
系、7000系などのAl合金材が適宜用いられて良い。
【0022】この点、塗装される代表的な用途としての
自動車、船舶などの輸送機材の構造材あるいは部品用と
しては、成形性とともに、輸送機としての特性を満足す
る必要がある。この内、特に自動車のパネル材やフレー
ム材としては、基本的に引張強度が200N/mm2以上および
耐力で90〜130N/mm2以上を有して、プレス成形後の焼付
塗装後に好ましくは200N/mm2以上の耐力となる時効硬化
性、あるいはリサイクル性に優れるための低合金化など
の特性に優れていることが好ましい。
【0023】この諸特性を満足するためには、Al-Mg 系
の5000系或いは、Al-Mg-Si系の6000系Al合金材が好まし
い。そして、特に、自動車のパネルやフレームの板材や
形材については、成形性や時効硬化性などの特性ととも
に、リサイクル性に優れることから、AA乃至JIS 6000系
のAl合金の使用が検討されている。この6000系Al合金
は、Al-Mg-Si系Al合金であり、Al-Mg 系のMg量が多い50
00系Al合金に比して、合金量が少なく、成形加工時にSS
(ストレッチャーストレイン) マークが発生しにくい点
や、スクラップをAl合金溶解原料として再利用する点で
有利である。
【0024】この6000系Al合金材(6101 、6003、6151、
6061、6N01、6063など) としては、化学成分組成が、S
i:0.2〜2.0% (質量% 、以下同じ) 、Mg:0.1〜1.6%を含
有し、その他、更に選択的に、Zn:0.005〜1.0%、Ti:0.0
01〜0.1%の一種または二種以上、B:1 〜300ppm、Be:0.1
〜100ppmの一種または二種、Mn:1.0% 以下、Cr:0.3% 以
下、Zr:0.15%以下、V:0.15% 以下の一種または二種以上
を、選択的に合計で0.01〜1.5%含み、残部Alおよび不可
避的不純物からなるAl合金が例示される。
【0025】但し、本発明Al合金材においては、鉛系顔
料を含まない塗装を施されるAl合金材として、一義的に
は、塗装後耐食性に優れることを目的とし、Cuを0.1 〜
3.0%含有するAl合金であれば適用可能である。
【0026】次に、本発明Al合金材の、鉛系顔料を含ま
ない塗装における塗装後耐食性を改善する、必須と好ま
しい元素について、含有量範囲と臨界的意義について説
明する。
【0027】(Cu:0.1〜3.0%)まず、Cuの含有は、鉛系顔
料を含まない電着塗装などの塗装を施される場合におい
て、Al合金材の耐糸さび性などの塗装後耐蝕性を向上さ
せるために必須となる。Cuの含有量が0.1%未満では、鉛
フリーの電着塗装において、耐糸さび性などの塗装後耐
蝕性に優れる塗装皮膜ができない。
【0028】一方、Cuの含有量が3.0%を越えると、一般
耐食性や耐粒界割れ性、耐応力腐食割れ性を、却って劣
化させる。また、前記特開平6-287672号公報のように、
Al合金板をエッチング処理した際に、Al合金板表面にCu
が多量に析出し、析出したCuがリン酸塩処理によっても
除去されずに残留する。このため、Al合金板表面に付着
したCuが、電着塗装後にも、塗膜とAl合金板表面との界
面に残留して、却って塗装後の耐蝕性の内、特に耐糸さ
び性を劣化させる可能性もある。したがって、Cuの含有
量は0.1 〜3.0%とする。
【0029】鉛系顔料を含まない塗装におけるAl合金材
の耐糸さび性向上に対するCuの作用は、塗膜下腐食 (糸
状腐食) である糸さびの発生、成長の直接の駆動力とな
る、Al合金材のカソード部とアノード部の電位差への作
用の点から説明される。
【0030】即ち、塗膜下腐食では、腐食溶解反応を生
じるアノード部が卑な電位( 電位列でマイナス方向) と
なる。一方、腐食溶解反応より余剰となった電子を貰い
受けて、溶存酸素の還元反応が生じるカソード部は貴な
電位( 電位列でプラス方向)となる。そして、このカソ
ード部とアノード部とがカップルを組んだ、所謂通気差
電池が形成されて、腐食が進行すると考えられている。
【0031】カソード部とアノード部の電位差が大きい
ほど、腐食反応の駆動力が増大して、塗膜下腐食が進行
乃至生じやすくなる。この際、Cuは貴な元素( 溶存酸素
の還元反応が生じるカソード部に近い元素) であること
から、アノード部で腐食溶解した際に、Cuが存在する
と、カソード部に加えて、アノード部近傍においても吸
着・析出し、アノード部の電位がカソード部に近い貴な
電位にまで引き上げられると考えられる。即ち、Cuはカ
ソード部とアノード部の電位差を小さくする作用があ
り、その結果、塗膜下腐食が起き難くなって、塗装後の
耐蝕性を向上させるものと考えられる。
【0032】そして、本発明者らは、塗料中に鉛が存在
するよりも、塗料中に鉛が存在しない方が、このCuの作
用が顕著に発揮されることを知見した。即ち、塗料中に
鉛が存在すると、鉛自身もアノード部近傍での吸着・析
出作用があるため、Cuと競合し、前記Cuのアノード部で
の吸着・析出作用を阻害し、カソード部とアノード部の
電位差を小さくする作用を阻害する。したがって、Cuの
作用が顕著に発揮されるためには、却って塗料中に鉛系
顔料が存在しない方が良いことを知見した。つまり、Cu
含有による塗装後の耐蝕性向上効果は、鉛系顔料が存在
せず、且つ前記通気差電池が形成されるという、本発明
が対象とする条件下で始めて発揮される。
【0033】(Mg:0.1〜6.0%)MgはSiとともに、鉛系顔料
を含まぬ塗装において、前記Cuの効果を一層有効に発揮
させる効果を有する。これは、MgはSiとともに、前記ア
ノード部先端の腐食生成物を緻密化する効果があり、こ
の効果によって、Cuのカソード部とアノード部の電位差
を小さくする作用を促進しているものと考えられる。Mg
の0.1%未満の含有、より厳密には、0.5%未満の含有では
この効果が少なく、一方、6.0%を越えて含有しても、こ
の効果は飽和する。したがって、含有する場合のMgの量
は0.1〜6.0%の範囲、より好ましくは0.5 〜6.0%の範
囲、また、6000系のAl合金系を選択する時には前記6000
系Al合金の利点から前記1.6%の上限値とする。
【0034】(Si:0.2〜2.0%)SiもMgとともに、前記Cuの
効果を一層有効に発揮させる効果を有する。0.2%未満の
含有、より厳密には、0.5%未満の含有ではこの効果が少
なく、一方、2.0%を越えて含有してもこの効果は飽和す
る。したがって、含有する場合のSiの量は0.2 〜2.0%の
範囲、より好ましくは0.5 〜2.0%の範囲とする。
【0035】なお、本発明では更に、Mn、Cr、Zr、V 、
Ti、Ni、Fe、Zn、Bi、B 、Be、Gaなどを選択的に含有し
ても良い。これらの元素も、前記Cuの効果を一層有効に
発揮させる効果を有する。
【0036】本発明におけるAl合金材自体は常法により
製造が可能である。例えば、所望Al合金成分に溶解調整
されたAl合金溶湯を、例えば、連続鋳造圧延法、半連続
鋳造法(DC鋳造法)等の通常の溶解鋳造法を適宜選択
して鋳造する。次いで、このAl合金鋳塊に均質化熱処理
を施した後、熱間圧延および冷間圧延、または押出、或
いは鍛造などの加工方法により、板材、形材、線棒な
ど、所望Al合金材の形状に塑性加工される。そして、塑
性加工された圧延材あるいは押出材は、圧延あるいは押
出ままか、必要により溶体化および焼入れ処理などの調
質熱処理が行われる。
【0037】
【実施例】次に、本発明の実施例を説明する。表1 に示
すAl合金鋳塊を溶製後、500 ℃×4 時間の範囲で均質化
熱処理を施し、500 〜280 ℃間で厚さ5mm まで熱間圧延
した。次に厚さ1mm まで冷間圧延後、560 ℃で1 時間の
溶体化処理した後水冷 (水焼入れ) を行ってAl合金板を
作製した。
【0038】これらのAl合金板から70mm×150mm の試験
片を採取し、供試材とした。この供試材を脱脂洗浄した
後、リン酸亜鉛処理を行ってAl合金板表面にリン酸亜鉛
皮膜を設け、更に、鉛系顔料および他の顔料を含まない
カチオン型電着塗装を行い、170 ℃×30分の塗装焼き付
けを行った。更に、この上に、メラミンアルキド系の中
塗および上塗り塗装 (鉛フリー) をスプレー塗装により
行い、各々140 ℃×30分の塗装焼き付けを行った。
【0039】そして、塗装を行った供試材の耐糸さび性
を調査および評価した。これらの結果も表1 に示す。耐
糸さび性評価試験は、塗装試験片に総長さが280mm のク
ロスカット (×印のきず) をカッターナイフで付与施し
た後、神戸製鋼所加古川製鉄所の岸壁 (海水腐食環境
下) に6 カ月間大気暴露した。そして、この間、更なる
腐食促進のために、0.1%の塩水を週1 回供試材に散布し
た。この試験後、各供試材のクロスカットから垂直方向
に伸びた最大の糸さび長さ(mm)を測定し、耐糸さび性を
評価した。
【0040】表1 から明らかな通り、Cuの含有量が0.1
〜3.0%% までの発明例No.4〜12は、Cuの含有量が0.1%未
満の比較例No.1、2 、3 に比して、鉛系顔料を含有しな
いカチオン電着塗装において耐糸さび性に優れているこ
とが分かる。そして、この結果は本発明に係る塗装Al合
金材が塗装後耐食性だけでなく、外観性や美観性に優れ
ていることも示している。
【0041】なお、Cuの含有量が0.1%〜3.0%の本発明範
囲であっても、鉛系顔料を含有したカチオン電着塗装を
行った場合には、発明例、比較例ともに耐糸さび性が劣
る結果となる。
【0042】そして、これらの結果、鉛系顔料を含まな
い塗装に対するCu含有と、含有量の臨界的意義が裏付け
られる。
【0043】
【表1】
【0044】
【発明の効果】本発明によれば、鉛系顔料を含まない塗
装において、塗装後耐蝕性を向上させ、耐糸錆性や外観
性を保証するAl合金材を提供することができる。したが
って、Al合金材の自動車、車両、船舶などの輸送機材用
への用途の拡大を図ることができる点で、多大な工業的
な価値を有するものである。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鉛系顔料を含まない塗装を施されるアル
    ミニウム合金材であって、該アルミニウム合金材がCuを
    0.1 〜3.0%含有することを特徴とする塗装後耐食性に優
    れたアルミニウム合金材。
  2. 【請求項2】 前記アルミニウム合金材が、Si:0.2〜2.
    0% (質量% 、以下同じ) 、Mg:0.1〜6.0%を含むアルミニ
    ウム合金材である請求項1に記載の塗装後耐食性に優れ
    たアルミニウム合金材。
  3. 【請求項3】 前記アルミニウム合金材が、Si:0.5〜2.
    0%、Mg:0.5〜6.0%を含むアルミニウム合金材である請求
    項1または2に記載の塗装後耐食性に優れたアルミニウ
    ム合金材。
  4. 【請求項4】 前記塗装がカチオン電着塗装を含む請求
    項1乃至3の何れか1項に記載の塗装後耐食性に優れた
    アルミニウム合金材。
  5. 【請求項5】 前記アルミニウム合金材が板材である請
    求項1乃至4の何れか1項に記載の塗装後耐食性に優れ
    たアルミニウム合金材。
  6. 【請求項6】 前記アルミニウム合金材が押出形材であ
    る請求項1乃至5の何れか1項に記載の塗装後耐食性に
    優れたアルミニウム合金材。
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