JP2000234215A - 水溶性に優れる熱可塑性ポリビニルアルコール繊維およびその製造方法 - Google Patents

水溶性に優れる熱可塑性ポリビニルアルコール繊維およびその製造方法

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JP2000234215A JP35441199A JP35441199A JP2000234215A JP 2000234215 A JP2000234215 A JP 2000234215A JP 35441199 A JP35441199 A JP 35441199A JP 35441199 A JP35441199 A JP 35441199A JP 2000234215 A JP2000234215 A JP 2000234215A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ポリビニルアルコールからなる水溶性の溶融
紡糸繊維を提供する。 【解決手段】 重合度が200〜500、鹸化度が90
〜99.99モル%、カルボン酸およびラクトン環が
0.02〜0.15モル%であり、融点が160℃〜2
30℃であるα−オレフィン変性ポリビニルアルコール
(A)およびアルカリ金属イオン(B)からなり、成分
(A)100質量部に対する成分(B)の含有割合が
0.0003〜1質量部である繊維であって、該繊維表
面に繊維軸方向に伸びる長さ0.5μm以上の溝を実質
的に有していない水溶性熱可塑性繊維。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は水溶性の熱可塑性ポ
リビニルアルコール繊維とその溶融紡糸法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ポリビニルアルコール(以下、P
VAと略称することもある)系水溶性繊維としては、
1)原液溶媒と固化浴のいずれもが水系である湿式・乾
湿式紡糸法による繊維、2)原液溶媒が水系である乾式
紡糸法による繊維、3)原液溶媒と固化浴のいずれもが
非水溶媒系の湿式・乾湿式紡糸(ゲル紡糸)法による繊
維が知られている。
【0003】これらのPVA系水溶性繊維は、ステープ
ルまたはショートカット繊維として乾式不織布や紡績
糸、製紙分野などで用いられたり、マルチフィラメント
として織物や編物に用いられている。特に80℃〜90
℃の熱水に可溶のショートカット繊維は繊維状バインダ
ーとして製紙工業において重要な位置を占め、マルチフ
ィラメントもケミカルレースの基布として多く用いられ
ている。また近年の環境問題において、環境にやさしい
生分解性繊維としても注目されている。
【0004】しかしながら、一般的にこれらの紡糸方法
では、例えば、500m/分を超える高速紡糸が困難である
こと、繊維断面を異形度の大きい複雑な異形断面にする
ことが困難であること、紡糸工程で使用される各種溶剤
の回収のための設備が必要であることなどの点におい
て、溶融紡糸法に比較すると種々の制限を受け、特別な
配慮が必要であることは否めなかった。さらにまた、一
般的に紡糸ノズルから吐出された紡出物に含まれる溶媒
を除去して繊維とする紡糸技術においては、得られる繊
維表面を2000倍以上に拡大観察すると、繊維表面に繊維
軸方向にたて筋等の微細凹凸が確認されるが、かかる微
細凹凸が繊維化以降の工程におけるガイド等での擦れに
よりフィブリル化を誘発し、製品の外観不良や断糸の要
因の一つとなっていた。
【0005】PVAを溶融紡糸法で繊維化した例として
は、例えば、少量のオレフィンを共重合したPVAと疎
水性高分子物質とを、前者が鞘成分、後者が芯成分とな
るようにして複合溶融紡糸し、得られた芯鞘型複合繊維
から織物を作成し、次いで複合繊維中の共重合PVA成
分を水溶液で溶解除去することにより、クレープ調織物
を製造することが特開昭50−152062号公報に提
案されており、また、特開昭50−152063号公報
においては、PVAと可塑剤との混合物を鞘成分とし、
疎水性高分子物質を芯成分とする芯鞘型複合繊維を用い
て織物を作成し、次いで鞘成分を水溶液で溶解除去する
ことによりクレープ調織物を製造する技術が提案されて
いる。
【0006】上記の従来技術のように、水溶性のPVA
を一成分とする複合紡糸繊維を用いて織編物などの布帛
を製造する場合は、PVA除去後に複合繊維の芯成分が
布帛の形態を保持することとなるが、水溶性繊維の用途
には、ケミカルレースや中空紡績糸の製造技術のよう
に、繊維が完全に除去されることが要求される場合も多
く、そのような場合は、複合繊維ではなく水溶性PVA
単独で構成される繊維が要求される。複合紡糸の場合
は、水溶性PVAとして繊維形成性がないようなもので
あっても、該PVAと組合せられるもう一方の重合体が
繊維形成性を有していれば繊維化が可能であるが、単独
繊維を製造する場合は、PVA自体が充分な繊維形成性
を有していなければならず、単独紡糸するためには、一
からの重合体設計及び紡糸条件の設定が必要となり、複
合紡糸技術の延長として単独紡糸を考えることは困難で
ある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上述
した従来の水溶性PVA繊維が有する課題を解決するも
のであり、湿式法、乾湿式法、乾式法、溶剤紡糸法にお
ける生産性の限界、繊維断面形状の制限、回収設備の設
置を伴わず、水溶性のポリビニルアルコール繊維を溶融
紡糸法で安定して提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】すなわち本発明は、粘度
平均重合度が200〜500、鹸化度が90〜99.9
9モル%であり、カルボン酸およびラクトン環を0.0
2〜0.15モル%含有し、融点が160℃〜230℃
であるポリビニルアルコール(A)からなり、かつ
(A)100質量部に対してアルカリ金属イオン(B)
がナトリウムイオン換算で0.0003〜1質量部含有
されていることを特徴とする水溶性熱可塑性ポリビニル
アルコール繊維であり、また、本発明は、粘度平均重合
度が200〜500、鹸化度が90〜99.99モル%
であり、カルボン酸およびラクトン環を0.02〜0.
15モル%含有し、融点Tmが160℃〜230℃であ
るポリビニルアルコール(A)であって、かつ(A)1
00質量部に対してアルカリ金属イオン(B)がナトリ
ウムイオン換算で0.0003〜1質量部含有されてい
るポリビニルアルコールを、口金温度がTm〜Tm+80
℃、せん断速度(γ)が1,000〜25,000sec-1、ドラフト
が10〜500の条件で溶融紡糸することを特徴とする
水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール繊維の製造方法で
ある。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明のポリビニルアルコール繊
維におけるポリビニルアルコールとは、ポリビニルアル
コールのホモポリマーは勿論のこと、例えば、共重合、
末端変性、および後反応により官能基を導入した変性ポ
リビニルアルコールをも包含するものである。本発明に
用いられるPVAの粘度平均重合度(以下、単に重合度
と略記する)は200〜500であり、230〜470
が好ましく、250〜450が特に好ましい。重合度が
200未満の場合には紡糸時に十分な曳糸性が得られ
ず、繊維化できない。重合度が500を越えると溶融粘
度が高すぎて、紡糸ノズルからポリマーを吐出すること
ができない。また重合度500以下のいわゆる低重合度
のPVAを用いることにより、水溶液で繊維を溶解する
ときに溶解速度が速くなるばかりでなく繊維が溶解する
時の収縮率を小さくすることができる。
【0010】PVAの重合度(P)は、JIS−K67
26に準じて測定される。すなわち、PVAを再鹸化
し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度
[η](dl/g)から次式により求められるものであ
る。 P=([η]×103/8.29)(1/0.62) 重合度が上記範囲にある時、本発明の目的がより好適に
達せられる。
【0011】本発明のPVAの鹸化度は90〜99.9
9モル%でなければならない。93〜99.98モル%
が好ましく、94〜99.97モル%がより好ましく、
96〜99.96モル%が特に好ましい。鹸化度が90
モル%未満の場合には、PVAの熱安定性が悪く熱分解
やゲル化によって満足な溶融紡糸を行うことができない
のみならず、後述する共重合モノマーの種類によっては
PVAの水溶性が低下し、本発明の水溶性繊維を得るこ
とができない場合がある。一方、鹸化度が99.99モ
ル%よりも大きいPVAは安定に製造することができ
ず、安定した繊維化もできない。
【0012】本発明において、PVAのカルボン酸およ
びラクトン環の含有量は0.02〜0.15モル%であ
り、0.022〜0.145モル%が好ましく、0.0
24〜0.13モル%がより好ましく、0.025〜
0.13モル%が特に好ましい。本発明におけるカルボ
ン酸はそのアルカリ金属塩を包含し、アルカリ金属とし
てはカリウム、ナトリウムなどがあげられる。PVAの
カルボン酸およびラクトン環の含有量が0.02モル%
未満の場合には、PVAの溶融紡糸のゲル化が大きく溶
融紡糸性が低下すると同時に、水溶性が低下し、本発明
の水溶性繊維を得ることができない。PVAのカルボン
酸およびラクトン環の含有量が0.15モル%を超える
場合にはPVAの熱安定性が悪く熱分解とゲル化によっ
て溶融紡糸することができない。
【0013】カルボン酸およびラクトン環を有するPV
Aの製法としては、 酢酸ビニルなどのビニルエステル系単量体とカルボン
酸およびラクトン環を生成する能力を有する単量体とを
共重合して得られたビニルエステル系重合体を、アルコ
ールあるいはジメチルスルホキシド溶液中で鹸化する方
法、 メルカプト酢酸、3−メルカプトプロピオン酸などの
カルボン酸を含有するチオール化合物の存在下で、ビニ
ルエステル系単量体を重合した後それを鹸化する方法、 酢酸ビニルなどのビニルエステル系単量体を重合する
際に、ビニルエステル系単量体およびビニルエステル系
重合体のアルキル基への連鎖移動反応を起こし、高分岐
ビニルエステル系重合体を得た後に鹸化する方法、 エポキシ基を有する単量体とビニルエステル系単量体
との共重合体をカルボキシル基を有するチオール化合物
と反応させた後鹸化する方法、 PVAとカルボキシル基を有するアルデヒド類とのア
セタール化反応による方法などが挙げられる。
【0014】ビニルエステル系単量体としては、ギ酸ビ
ニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビ
ニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリ
ン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニルおよび
バーサティック酸ビニル等が挙げられ、これらの中でも
PVAを得る点からは酢酸ビニルが好ましい。カルボン
酸およびラクトン環を生成する能力を有する単量体とし
ては、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレ
イン酸または無水イタコン酸等に由来するカルボキシル
基を有する単量体、アクリル酸およびその塩、アクリル
酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピ
ル、アクリル酸i−プロピル等のアクリル酸エステル
類、メタクリル酸およびその塩、メタクリル酸メチル、
メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタ
クリル酸i−プロピル等のメタクリル酸エステル類、ア
クリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチル
アクリルアミド等のアクリルアミド誘導体、メタクリル
アミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタ
クリルアミド等のメタクリルアミド誘導体が挙げられ
る。
【0015】PVA系重合体のカルボン酸およびラクト
ン環の含有量はプロトンNMRのピークから求めること
ができる。鹸化度99.95モル%以上に完全に鹸化
後、十分にメタノール洗浄を行い、次いで90℃減圧乾
燥を2日間して分析用のPVAとする。上記の場合、
作成した分析用PVAをDMSO−D6に溶解し、50
0MHzのプロトンNMR(JEOL GX−500)
を用いて60℃で測定した。アクリル酸、アクリル酸エ
ステル類、アクリルアミドおよびアクリルアミド誘導体
の単量体は、主鎖メチンに由来するピーク(2.0pp
m)を用いて、メタクリル酸、メタクリル酸エステル
類、メタクリルアミドおよびメタクリルアミド誘導体の
単量体は、主鎖に直結するメチル基に由来するピーク
(0.6〜1.1ppm)を用いて、常法により含有量
を算出した。フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、無
水マレイン酸または無水イタコン酸等に由来するカルボ
キシル基を有する単量体は、作成した分析用PVAをD
MSO−D6に溶解後トリフルオロ酢酸を数滴加え、5
00MHzのプロトンNMR(JEOL GX−50
0)を用いて60℃で測定した。定量は4.6〜5.2
ppmに帰属されるラクトン環のメチンピークを用いて
常法により含有量を算出する。およびの場合、硫黄
原子に結合するメチレンに由来するピーク(2.8pp
m)を用いて含有量を算出する。の場合、作成した分
析用PVAをメタノール−D4/D2O=2/8に溶解
し、500MHzのプロトンNMR(JEOL GX−
500)を用いて80℃で測定した。末端のカルボン酸
もしくはそのアルカリ金属塩のメチレン由来ピーク(下
記の構造式1および構造式2)は2.2ppm(積分値
A)および2.3ppm(積分値B)に帰属し、末端の
ラクトン環のメチレン由来ピークは(下記の構造式3)
は2.6ppm(積分値C)、ビニルアルコール単位の
メチン由来ピークは3.5〜4.15ppm(積分値
D)に帰属し、下記の式3でカルボン酸およびラクトン
環の含有量を算出する。ここで△は変性量(モル%)を
表す。カルボン酸およびラクトン環の含有量(モル%)
=50×(A+B+C)×{(100-△)/(100×D)}×100 構造式1 (Na)HOOCC2 CH2CH2〜 構造式2 NaOOCC2 CH2CH(OH)〜 構造式3
【化1】
【0016】の場合、作成した分析用PVAをDMS
O−D6に溶解し、500MHzのプロトンNMR(J
EOL GX−500)を用いて60℃で測定した。ア
セタール部分のメチンに由来するピーク4.8〜5.2
ppm(下記の構造式4)を用いて、常法により含有量
を算出した。構造式4
【化2】 (ここでXは、単結合又は炭素数1〜10のアルキル基
を表す。)
【0017】本発明に用いられるPVAの融点(Tm)は
160〜230℃であり、170〜227℃が好ましく、175〜224℃
がより好ましく、180〜220℃が特に好ましい。融点が16
0℃未満の場合にはPVAの結晶性が低下し繊維強度が
低くなると同時に、熱安定性が悪くなり、繊維化できな
い場合がある。一方、融点が230℃を越えると溶融紡糸
温度が高くなり紡糸温度とPVAの分解温度が近づくた
めにPVA繊維を安定に製造することができない。
【0018】PVAの融点は、DSCを用いて、窒素中、
昇温速度10℃/分で250℃まで昇温後、室温まで冷却し、
再度昇温速度10℃/分で250℃まで昇温した場合のPVA
の融点を示す吸熱ピークのピークトップの温度を意味す
る。
【0019】PVAは、ビニルエステル系重合体のビニ
ルエステル単位を鹸化することにより得られる。ビニル
エステル単位を形成するためのビニル化合物単量体とし
ては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、
バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニ
ル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸
ビニルおよびバーサティック酸ビニル等が挙げられ、こ
れらの中でもPVAを得る点からは酢酸ビニルが好まし
い。
【0020】本発明のポリビニルアルコール繊維を構成
する重合体は、ポリビニルアルコールのホモポリマーで
あっても共重合単位を導入した変性PVAであってもよ
いが、溶融紡糸性、水溶性、繊維物性の観点からは、共
重合単位を導入した変性ポリビニルアルコールを用いる
ことが好ましい。共重合単量体の種類としては、例え
ば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、
1−ヘキセン等のα−オレフィン類、アクリル酸および
その塩、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリ
ル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル等のアクリ
ル酸エステル類、メタクリル酸およびその塩、メタクリ
ル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プ
ロピル、メタクリル酸i−プロピル等のメタクリル酸エ
ステル類、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミ
ド、N−エチルアクリルアミド等のアクリルアミド誘導
体、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、
N−エチルメタクリルアミド等のメタクリルアミド誘導
体、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n
−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテ
ル、n−ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、
エチレングリコールビニルエーテル、1,3−プロパン
ジオールビニルエーテル、1,4−ブタンジオールビニ
ルエーテル等のヒドロキシ基含有のビニルエーテル類、
アリルアセテート、プロピルアリルエーテル、ブチルア
リルエーテル、ヘキシルアリルエーテル等のアリルエー
テル類、オキシアルキレン基を有する単量体、ビニルト
リメトキシシラン等のビニルシリル類、酢酸イソプロペ
ニル、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オ
ール、5−ヘキセン−1−オール、7−オクテン−1−
オール、9−デセン−1−オール、3−メチル−3−ブ
テン−1−オール等のヒドロキシ基含有のα−オレフィ
ン類、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレ
イン酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸または無水
イタコン酸等に由来するカルボキシル基を有する単量
体;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリ
ルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパ
ンスルホン酸等に由来するスルホン酸基を有する単量
体;ビニロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライ
ド、ビニロキシブチルトリメチルアンモニウムクロライ
ド、ビニロキシエチルジメチルアミン、ビニロキシメチ
ルジエチルアミン、N−アクリルアミドメチルトリメチ
ルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドエチル
トリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミ
ドジメチルアミン、アリルトリメチルアンモニウムクロ
ライド、メタアリルトリメチルアンモニウムクロライ
ド、ジメチルアリルアミン、アリルエチルアミン等に由
来するカチオン基を有する単量体が挙げられる。これら
の単量体の含有量は、通常20モル%以下である。
【0021】これらの単量体の中でも、入手のしやすさ
などから、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブ
テン、1−ヘキセン等のα−オレフィン類、メチルビニ
ルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニ
ルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビ
ニルエーテル等のビニルエーテル類、エチレングリコー
ルビニルエーテル、1,3−プロパンジオールビニルエ
ーテル、1,4−ブタンジオールビニルエーテル等のヒ
ドロキシ基含有のビニルエーテル類、アリルアセテー
ト、プロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、
ヘキシルアリルエーテル等のアリルエーテル類、オキシ
アルキレン基を有する単量体、3−ブテン−1−オー
ル、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オ
ール、7−オクテン−1−オール、9−デセン−1−オ
ール、3−メチル−3−ブテン−1−オール等のヒドロ
キシ基含有のα−オレフィン類に由来する単量体が好ま
しい。
【0022】特に、共重合性、溶融紡糸性および繊維の
水溶性の観点からエチレン、プロピレン、1−ブテン、
イソブテンの炭素数4以下のα−オレフィン類、メチル
ビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピル
ビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチ
ルビニルエーテル等のビニルエーテル類がより好まし
い。炭素数4以下のα−オレフィン類および/またはビ
ニルエーテル類に由来する単位は、PVA中に0.1〜
20モル%存在していることが好ましく、より好ましく
は1〜20モル%、さらに4〜15モル%が好ましく、
6〜13モル%が特に好ましい。さらに、α−オレフィ
ンがエチレンである場合において、繊維物性が高くなる
ことから、特にエチレン単位が4〜15モル%、より好
ましくは6〜13モル%導入された変性PVAを使用す
ることが好ましい。
【0023】本発明で使用されるPVAは、塊状重合
法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などの公知の
方法が挙げられる。その中でも、無溶媒あるいはアルコ
ールなどの溶媒中で重合する塊状重合法や溶液重合法が
通常採用される。溶液重合時に溶媒として使用されるア
ルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコー
ル、プロピルアルコールなどの低級アルコールが挙げら
れる。共重合に使用される開始剤としては、α,α'-ア
ゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,
4−ジメチル−バレロニトリル)、過酸化ベンゾイル、
n−プロピルパーオキシカーボネートなどのアゾ系開始
剤または過酸化物系開始剤などの公知の開始剤が挙げら
れる。重合温度については特に制限はないが、0℃〜1
50℃の範囲が適当である。
【0024】本発明の繊維におけるアルカリ金属イオン
(B)の含有割合は、PVA(A)100質量部に対し
てナトリウムイオン換算で0.0003〜1質量部であ
り、0.0003〜0.8質量部が好ましく、0.00
05〜0.6質量部がより好ましく、0.0005〜
0.5質量部が特に好ましい。アルカリ金属イオンの含
有割合が0.0003質量部未満の場合には、得られた
繊維が十分な水溶性を示さず未溶解物が残る場合があ
る。またアルカリ金属イオンの含有量が1質量部より多
い場合には溶融紡糸時の分解及びゲル化が著しく繊維化
することができない。アルカリ金属イオンとしては、カ
リウムイオン、ナトリウムイオン等があげられる。
【0025】本発明において、特定量のアルカリ金属イ
オン(B)をPVA中に含有させる方法は特に制限され
ず、PVAを重合した後にアルカリ金属イオン含有の化
合物を添加する方法、ビニルエステルの重合体を溶媒中
において鹸化するに際し、鹸化触媒としてアルカリイオ
ンを含有するアルカリ性物質を使用することによりPV
A中にアルカリ金属イオンを配合し、鹸化して得られた
PVAを洗浄液で洗浄することにより、PVA中に含ま
れるアルカリ金属イオン含有量を制御する方法などが挙
げられるが後者のほうが好ましい。なお、アルカリ金属
イオンの含有量は、原子吸光法で求めることができる。
【0026】鹸化触媒として使用するアルカリ性物質と
しては、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムがあげ
られる。鹸化触媒に使用するアルカリ性物質のモル比
は、酢酸ビニル単位に対して0.004〜0.5が好ま
しく、0.005〜0.05が特に好ましい。鹸化触媒
は、鹸化反応の初期に一括添加してもよいし、鹸化反応
の途中で追加添加してもよい。鹸化反応の溶媒として
は、メタノール、酢酸メチル、ジメチルスルホキシド、
ジメチルホルムアミドなどがあげられる。これらの溶媒
の中でもメタノールが好ましく、含水率を0.001〜
1質量%に制御したメタノールがより好ましく、含水率
を0.003〜0.9質量%に制御したメタノールがよ
り好ましく、含水率を0.005〜0.8質量%に制御
したメタノールが特に好ましい。洗浄液としては、メタ
ノール、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、ヘキサ
ン、水などがあげられ、これらの中でもメタノール、酢
酸メチル、水の単独もしくは混合液がより好ましい。洗
浄液の量としてはアルカリ金属イオン(B)の含有割合
を満足するように設定されるが、通常、PVA100質
量部に対して、300〜10000質量部が好ましく、
500〜5000質量部がより好ましい。洗浄温度とし
ては、5〜80℃が好ましく、20〜70℃がより好ま
しい。洗浄時間としては20分間〜10時間が好まし
く、1時間〜6時間がより好ましい。
【0027】また本発明の目的や効果を損なわない範囲
で、必要に応じて銅化合物等の安定剤、着色剤、紫外線
吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、
可塑剤、潤滑剤、結晶化速度遅延剤を重合反応時、また
はその後の工程で添加することができる。特に熱安定剤
としてヒンダードフェノール等の有機系安定剤、ヨウ化
銅等のハロゲン化銅化合物、ヨウ化カリウム等のハロゲ
ン化アルカリ金属化合物を添加すると、繊維化の際の溶
融滞留安定性が向上するので好ましい。
【0028】また必要に応じて平均粒子径が0.01μ
m以上5μm以下の微粒子を0.05質量%以上10質量
%以下、重合反応時、またはその後の工程で添加するこ
とができる。微粒子の種類は特に限定されず、たとえば
シリカ、アルミナ、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸
バリウム等の不活性微粒子を添加することができ、これ
らは単独で使用しても2種以上併用しても良い。特に平
均粒子径が0.02μm以上1μm以下の無機微粒子が好
ましく、紡糸性、延伸性が向上する。
【0029】本発明のポリビニルアルコールからなる繊
維の製造においては、公知の溶融紡糸装置を用いること
ができる。すなわち、溶融押出機でPVAのペレットを
溶融混練し、溶融したポリマー流を紡糸頭に導き、ギヤ
ポンプで計量し、紡糸ノズルから吐出させた糸条を巻き
取ることで得られる。
【0030】但し、本発明においては繊維化条件とし
て、紡糸口金温度がTm〜Tm+80℃で、せん断速度
(γ)1,000〜25,000sec-1、ドラフトV10〜500で
紡糸することが重要である。
【0031】本発明におけるPVAの融点Tmとは、示
差走査熱量計(DSC:例えばMettler社TA3000)で観
察される主吸熱ピークのピーク温度である。せん断速度
(γ)はノズル半径をr(cm)、単孔あたりのポリマ
ー吐出量をQ(cm3/sec)とするときγ=4Q/πr3で計
算される。またドラフトVは、引取速度をA(m/分)とす
るときV=A・πr2/Qで計算される。
【0032】本発明の繊維を製造するに際して、紡糸口
金温度がPVAの融点Tmより低い温度では該PVAが
溶融しないために紡糸できない。またTm+80℃を越え
るとPVAが熱分解しやすくなるために紡糸性が低下す
る。また、せん断速度は1,000sec-1よりも低いと断糸し
やすく、25,000sec-1より高いとノズルの背圧が高くな
り紡糸性が悪くなる。ドラフトは10より低いと繊度むら
が大きくなり安定に紡糸しにくくなり、ドラフトが50
0より高くなると断糸しやすくなる。
【0033】紡糸ノズルから吐出された糸条は延伸せず
にそのまま高速で巻き取るか必要に応じて延伸される。
延伸は破断伸度(HDmax)×0.55〜0.9倍の延伸倍率でガラ
ス転移点(Tg)以上の温度で延伸される。延伸倍率がHD
max×0.55未満では十分な強度を有する繊維が安定して
得られず、HDmax×0.9を越えると断糸しやすくなる。延
伸は紡糸ノズルから吐出された後に一旦巻き取ってから
延伸する場合と、延伸に引き続いて施される場合がある
が、本発明においてはいずれでもよい。延伸は通常熱延
伸され、熱風、熱板、熱ローラー、水浴等のいずれを用
いて行ってもよい。
【0034】延伸する場合の延伸温度は、未延伸糸の結
晶化部分が少ない場合には、Tgを延伸温度の目安とす
るが、本発明に用いるポリビニルアルコールは結晶化速
度が速いため未延伸糸の結晶化がかなり進み、Tg前後
では結晶部分の可塑変形が生じにくい。このため熱ロー
ラー延伸などの接触加熱延伸をする場合でも比較的高い
温度(70〜120℃程度)を目安に延伸する。また、
加熱チューブなどの非接触タイプのヒーターを使用して
加熱延伸する場合は、さらに高温で150〜200℃程
度の温度条件とすることが好ましい。ガラス転移点以上
の延伸温度で破断伸度(HDmax)×0.55〜0.9倍の延伸倍率
の範囲を外れた条件で延伸処理を行うと、得られる繊維
表面に繊維軸方向に沿ってたて筋状の溝が形成され、繊
維化以降の工程のガイド等での擦れや製編織工程で糸条
に働く擦過力により、繊維に形成された溝からフィブリ
ル化が発生し、スカムになって織編物中に入り込んで欠
点になったり、工程中で断糸が生じるので好ましくな
い。本発明では、上記のような条件を採用することによ
り、繊維表面に繊維軸方向に伸びる長さ0.5μm以上
の溝が実質的に存在しないポリビニルアルコール繊維が
得られ、繊維化工程以降においてもフィブリル化や断糸
が発生しないという特徴を有している。一方、従来の湿
式紡糸法、乾湿式紡糸法、乾式紡糸法、ゲル紡糸法など
で製造されたPVA繊維は、繊維表面の全面に繊維軸方
向に伸びる溝が多数形成され、これらの手法で長さ0.5
μm以上の溝をなくすことは極めて困難である。
【0035】なお、本発明での溝は、繊維軸方向にほぼ
沿った方向に、長さが0.5μm以上の細長い溝状の凹
部を指し、繊維表面を走査電子顕微鏡で2000倍〜2
0000倍に拡大することで観察される凹凸構造を指す
ものであり、上記のように従来公知の湿式紡糸、乾湿式
紡糸、乾式紡糸、ゲル紡糸などの紡糸技術にとっては、
殆ど回避不能のものであり、溶融紡糸法であっても、延
伸倍率を高くするなど繊維の配向を大きくするような条
件下で形成されやすいものである。
【0036】また、本発明の繊維断面形状は特に限定さ
れず、湿式紡糸、乾式紡糸、乾湿式紡糸と異なり、通常
の溶融紡糸の手法を用いてノズルの形状により真円状に
も中空にも異型断面にもできる。繊維化や製織化での工
程通過性の点からは真円が好ましい。
【0037】紡糸された繊維には、通常油剤が付与され
るが、本発明の繊維は水溶性であり、吸湿性も高い繊維
であるので、水を含まないストレート油剤を付与するこ
とが好ましい。油剤成分は水を含まない静電剤成分と平
滑剤成分とからなるが、たとえば、ポリオキシエチレン
ラウリルホスフェートジエタノールアミン塩、ポリオキ
シエチレンセチルホスフェートジエタノールアミン塩、
アルキルイミダゾリウムエトサルフェート、ポリオキシ
エチレンラウリルアミノエーテルカチオン化物、モノス
テアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、
ポリオキシエチレンモノステアリン酸ソルビタン、ポリ
オキシエチレントリステアリン酸ソルビタン、ステアリ
ン酸グリセライド、ポリオキシエチレンステアリルエー
テル、ポリエチレングリコールステアレート、ポリエチ
レングリコールアルキルエステル、ポリオキシエチレン
カスターワックス、プロピレンオキサイド/エチレンオ
キサイド(PO/EO)ランダムエーテル、PO/EOブ
ロックエーテル、PO/EO変性シリコーン、ヤシ脂肪
酸ジエタノールアミド、高分子アマイド、ブチルセロソ
ルブ、鉱物油、中性油から選んで配合したものを用いる
ことが出来る。油剤を付与する方法は、通常行われてい
るローラータッチ、烏口による方法でよい。
【0038】また、引取り速度は、一旦巻き取ってから
延伸処理を行う場合、紡糸直結延伸の一工程で紡糸延伸
して巻き取る場合、延伸を行わずに高速でそのまま巻き
取る場合で異なるが、大凡500m/分〜7000m/分
の範囲で引き取られ、従来の湿式、乾湿式、乾式紡糸法
などで採用されている紡糸速度に比べて極めて高速での
繊維化が可能である。500m/分未満で紡糸できない
ことはないが、生産性の点からは意味が少ない。一方、
7000m/分を超えるような超高速では、繊維の断糸
が起こりやすい。
【0039】本発明の水溶性PVA繊維は、製造条件に
よって水溶解時の収縮挙動を制御することが可能であ
り、繊維が水溶解時に収縮しないか収縮量を小さく抑え
ようとする場合には、繊維に熱処理を施しておくことが
望ましい。この熱処理は、延伸を伴う繊維化工程におい
ては、延伸と同時に行なってもよいし、延伸と別個に行
う熱処理であってもよい。熱処理温度を高くすると水溶
解時の最大収縮率を低くすることができるが、逆に繊維
の水中溶断温度が高くなる傾向にあるので、用途に応じ
て水中溶断温度と溶解時の最大収縮率とのバランスを見
ながら、熱処理条件を設定することが望ましく、大凡は
PVAのガラス転移点〜(Tm−10)℃の範囲内で条件
設定することが好ましい。処理温度がTgより低い場合
には十分に結晶化した繊維が得られず、布帛にして熱セ
ットして用いる場合の収縮が大きくなったり、該繊維を
熱水で溶解したときの最大収縮率が70%を越えたり、
吸湿しやすくなるので保存中に繊維間が膠着することが
ある。また処理温度が(Tm-10)℃を越える場合には
繊維が熱により膠着して好ましくない。
【0040】熱処理は延伸後の繊維に収縮を加えて行っ
てもよい。繊維に収縮を加えると水中での溶断までの繊
維の収縮率が小さくなる。加える収縮は0.01〜5%
が好ましく、0.1〜4.5%がより好ましく、1〜4
%が特に好ましい。加える収縮が0.01%以下の場合
には水溶断時の最大収縮率を小さくする効果が実質的に
得られず、加える収縮が5%を越える場合には収縮処理
中に繊維がたるんで安定に収縮を加えることができな
い。なお、本発明で用いられるPVAは水に溶解しやす
いので、水分の影響の少ない熱風等による乾熱延伸する
ことが好ましいが、やむを得ず、水浴延伸する場合は、
40℃以下の水浴で延伸することが好ましい。
【0041】水中での溶断温度および最大収縮率は、用
途によって異なるが、低温で溶解し、しかも溶解するま
での収縮率は低いものが経済性および寸法安定性の面か
らは好ましい。溶断温度は、繊維に2.2mg/デシテ
ックスの荷重をかけて、水中に吊るし、水温を上げてい
ったときに繊維が溶断する温度であり、溶断するまでの
最も高い収縮率を最大収縮率とする。本発明において、
「水溶性」であるということは、溶解までの時間の長短
に拘わらず、上記の方法で測定した時に所定の温度で溶
断することを意味する。そして、PVAの種類や繊維の
製造条件を変更することにより、本発明では約10℃〜
100℃の溶断温度を持つ水溶性繊維を得ることが可能
であるが、低温で溶解するような繊維は吸湿しやすかっ
たり、繊維強度が低かったりする場合があるので、取り
扱い性、実用性及び水溶性のすべての特性のバランスを
とるためには、40℃以上の溶断温度を有する繊維とす
ることが好ましい。
【0042】溶解処理温度は水溶性繊維の溶断温度や用
途に応じて適宜調整すればよいが、処理温度は高いほど
処理時間が短くなる。熱水を用いて溶解する場合には、
50℃以上で処理するのが好ましく、60℃以上がさら
に好ましく、70℃以上が特に好ましく、80℃以上が
最も好ましい。またPVAからなる溶融紡糸繊維の溶解
処理は該繊維の分解を伴うものであってもよい。なお、
水溶液には、通常は軟水が用いられるがアルカリ水溶
液、酸性水溶液等であってもよいし、界面活性剤や浸透
剤を含んだものであってもよい。
【0043】また、水中で溶断するまでの繊維の最大収
縮率は70%以下が好ましく、60%以下がより好まし
く、50%以下がさらに好ましく、40%以下が特に好
ましく、30%以下が最も好ましい。最大収縮率が大き
すぎると、例えば、低収縮性の他の合成繊維と混用して
布帛を作成した場合、水中で溶解する際にPVA繊維が
激しく収縮し、布帛が引きつったり、皺になるなど製品
形態が不良になりやすい。
【0044】本発明で使用されるPVAは生分解性を有
しており、活性汚泥処理あるいは土壌に埋めておくと分
解されて水と二酸化炭素になる。該PVAは水溶液の状
態で活性汚泥で連続処理すると2日〜1ヶ月でほぼ完全
に分解される。生分解性の点から該繊維の鹸化度は90
〜99.99モル%が好ましく、92〜99.98モル
%がより好ましく、93〜99.97モル%が特に好ま
しい。また該繊維の1,2−グリコール結合含有量は
1.2〜2.0モル%が好ましく、1.25〜1.95
モル%がより好ましく、1.3〜1.9モル%が特に好
ましい。PVAの1,2−グリコール結合量が1.2モ
ル%未満の場合には、PVAの生分解性が悪くなるばか
りでなく、溶融粘度が高すぎて紡糸性が悪くなる場合が
ある。PVAの1,2−グリコール結合含有量が2.0
モル%以上の場合にはPVAの熱安定性が悪くなり紡糸
性が低下する場合がある。PVAの1,2−グリコール
結合含有量はNMRのピークから求めることができる。
鹸化度99.9モル以上に鹸化後、十分にメタノール洗
浄を行い、次いで90℃減圧乾燥を2日間したPVAを
DMSO−D6に溶解し、トリフルオロ酢酸を数滴加え
た試料を500MHzのプロトンNMR(JEOL G
X−500)を用いて80℃で測定する。ビニルアルコ
ール単位のメチン由来ピークは3.2〜4.0ppm
(積分値A)、1,2−グリコール結合の1つのメチン
由来のピークは3.25ppm(積分値B)に帰属さ
れ、次式で1,2−グリコール結合含有量を算出でき
る。ここでΔは変性量(モル%)を表す。 1,2-グリコール結合含有量(モル%)=100B/{100A/(1
00-Δ)}
【0045】このような本発明のPVA繊維からは、製
紙用バインダー繊維、不織布用バインダー繊維、乾式不
織布用ステープル、紡績用ステープル、織物用マルチフ
ィラメント、編み物用マルチフィラメント、セメント用
配合材、ゴム用配合材、ケミカルレース基布、空羽織
物、水溶性ロープ、釣り糸、縫い糸、水溶性包装材、衛
生材料、メディカル用ディスポ製品、農業用被履材、フ
ィルター類、ワイパー類等の用途に用いることができ
る。
【0046】
【実施例】次に本発明を具体的に実施例で説明するが、
本発明はこれら実施例に限定されるものではない。な
お、実施例中の部及び%はことわりのない限り質量に関
するものである。
【0047】[PVAの分析方法]PVAの分析方法は
特に記載のない限りはJIS−K6726に従った。変
性量は変性ポリビニルエステルあるいは変性PVAを用
いて500MHz プロトンNMR(JEOL GX-500)装置による測
定から求めた。アルカリ金属イオンの含有量は原子吸光
法で求めた。
【0048】本発明のPVAのカルボン酸およびラクト
ン環の含有量の測定は前述のとおり。
【0049】[融点]PVAの融点は、DSC(メトラー
社、TA3000)を用いて、窒素中、昇温速度10℃/
分で250℃まで昇温後室温まで冷却し、再度、昇温速度1
0℃/分で250℃まで昇温した場合のPVAの融点を示す
吸熱ピークのピークトップの温度で表した。
【0050】[水溶性]本発明のPVA繊維の水中での溶
断温度は、繊維に2.2mg/デシテックスの荷重をか
けて、目盛りつきの板と共に繊維の浸水長が約10cm
となるように水中に浸漬し、水温20℃から昇温速度1
℃/分の条件で昇温したときに繊維が溶断する温度と
し、繊維が溶断するまで、繊維長を目盛りで読み取って
繊維長の変化から最大の収縮率を求めた。また、これと
は別に、90℃の水中で1時間撹拌したときの未溶解物
の有無を目視観察した。
【0051】[繊維の強度、伸度]JIS L1013
に準拠して測定した。
【0052】[紡糸性]PVAを溶融押し出し機を用い
て溶融混練し、溶融したポリマー流を紡糸頭に導き、ギ
ヤポンプで計量し、孔径0.25mm、ホール数24の
ノズルから吐出させた糸条を800m/分の速度で巻き
取る試験を6時間行い、その時の紡糸調子で評価した。 ◎:全く単糸切れなく、6時間巻き取ることが出来る。 ○:6時間で1回の単糸切れは有るが、マルチフィラメ
ントとして6時間巻き取ることが出来る。 ○〜△:6時間で2回以上の単糸切れが生じるが、マル
チフィラメントとして6時間巻き取ることが出来る。 △:単糸切れが著しく、マルチフィラメントとして約5
分程度しか巻き取れない。 ×:単糸切れが著しく、全く巻き取れない。
【0053】実施例1 [PVAの製造]撹拌機、窒素導入口および開始剤添加
口を備えた100L加圧反応槽に酢酸ビニル27.4k
gおよびメタノール32.6kgを仕込み、60℃に昇
温した後30分間窒素バブリングにより系中を窒素置換
した。開始剤として1,1’−アゾビス(シクロヘキサ
ン−2−カルボニトリル)(V―40)をメタノールに
溶解した濃度0.5g/L溶液を調整し、窒素ガスによ
るバブリングを行って窒素置換した。重合槽を昇温して
重合槽内温を90℃に調整した後、上記の開始剤溶液1
09mlを注入し重合を開始した。重合中は重合温度を
90℃に維持し、上記の開始剤溶液を用いて394ml
/hrでV−40を連続添加して重合を実施した。15
時間後に重合率が75%となったところで冷却して重合
を停止した。次いで減圧下に未反応酢酸ビニルモノマー
を除去しポリ酢酸ビニルのメタノール溶液とした。得ら
れた該ポリ酢酸ビニル溶液にメタノールを加えて濃度が
50%となるように調整したポリ酢酸ビニルのメタノー
ル溶液200g(溶液中のポリ酢酸ビニル100g)
に、46.5g(ポリ酢酸ビニル中の酢酸ビニルユニッ
トに対してモル比(MR)0.10)のアルカリ溶液
(NaOHの10%メタノール溶液)を添加して鹸化を
行った。アルカリ添加後約2分で系がゲル化したものを
粉砕器にて粉砕し、40℃で1時間放置して鹸化を進行
させた後、酢酸メチル1000gを加えて残存するアル
カリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて
中和の終了を確認後、濾別して得られた白色固体のPV
Aにメタノール1000gを加えて室温で3時間放置洗
浄した。上記洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱液し
て得られたPVAを乾燥機中70℃で2日間放置して乾
燥PVAを得た。
【0054】得られたPVAの鹸化度は97.9モル%
であった。また該PVAを灰化させた後、酸に溶解した
ものを用いて原子吸光光度計により測定したナトリウム
の含有量は、PVA100質量部に対して0.03質量
部であった。また、重合後未反応酢酸ビニルモノマーを
除去して得られたポリ酢酸ビニルのメタノール溶液をア
ルカリモル比0.5で鹸化した後、粉砕したものを60
℃で5時間放置して鹸化を進行させた後、メタノールソ
ックスレーを3日間実施し、次いで80℃で3日間減圧
乾燥を行って精製されたカルボン酸およびラクトン環を
有するPVAを得た。該PVAの平均重合度を常法のJ
IS K6726に準じて測定したところ350であっ
た。該精製PVAのカルボン酸およびラクトン環の含有
量および1,2−グリコール結合量を500MHzプロ
トンNMR(JEOL GX−500)装置による測定
から前述のとおり求めたところ、それぞれ0.09モル
%、1.75モル%であった。さらに該精製されたPV
Aの5%水溶液を調整し厚み10ミクロンのキャスト製
フィルムを作成した。該フィルムを80℃で1日間減圧
乾燥を行った後に、DSC(メトラー社、TA300
0)を用いて、前述の方法によりPVAの融点を測定し
たところ219℃であった(表1)。
【0055】
【表1】
【0056】得られたPVAを溶融押し出し機を用いて
250℃で溶融混練し、溶融したポリマー流を紡糸頭に
導き、ギヤポンプで計量し、孔径0.25mm、ホール
数36のノズルから吐出させ950m/分の速度で巻き
取った(せん断速度8,200sec-1、ドラフト6
2)。得られた紡糸原糸をホットローラー温度90℃、
ホットプレート温度170℃で2倍(HDmax×0.7に相当)
にローラープレート延伸し、75d/36f(83dtex/36
f)の延伸糸を得た。得られた延伸糸の断面形状は均一な
真円状であり、繊維表面を2000倍に拡大して走査電
子顕微鏡で観察したところ、長さ0.5μm以上の溝は
全く認められなかった。延伸糸の強度、伸度、水溶性、
溶断温度および溶断までの最大収縮率を表2に示す。次
いで筒編機を用いて該延伸糸から編み地を作成したが、
工程で繊維のフィブリル化は全く発生しなかった。
【0057】
【表2】
【0058】実施例2〜14 実施例1で用いたPVAの代わりに表1に示すPVAを
用い、表2に示した紡糸温度、延伸・熱処理条件で繊維
化したこと以外は実施例1と全く同様にしてPVAの延
伸糸を得た。紡糸性および得られた延伸糸の強度、伸
度、水溶性、溶断温度、溶断までの最大収縮率を表2に
示す。
【0059】実施例15 実施例1で得られた紡糸原糸を第1ローラー95℃、第
2ローラー160℃、第3ローラー30℃で、第1ロー
ラーと第2ローラーの間で2.06倍(HDmax×0.72に相
当)延伸し、第2ローラーと第3ローラーの間で3%収
縮となるように熱処理を行ない、75d/24f(83dte
x/24f)の延伸糸を得た。得られた延伸糸の強度、伸度、
水溶性、溶断温度、溶断までの最大収縮率を表2に示
す。
【0060】実施例16 実施例4で得られた紡糸原糸を用い、表2に示した延伸
・熱処理温度、延伸倍率で繊維化したこと以外は実施例
15と全く同様にしてPVAの延伸糸を得た。得られた
延伸糸の強度、伸度、水溶性、溶断温度、溶断までの最
大収縮率を表2に示す。
【0061】実施例17 実施例5で得られた紡糸原糸を用い、表2に示した延伸
・熱処理温度、延伸倍率で繊維化したこと以外は実施例
15と全く同様にしてPVAの延伸糸を得た。得られた
延伸糸の強度、伸度、水溶性、溶断温度、溶断までの最
大収縮率を表2に示す。
【0062】実施例18 実施例6で得られた紡糸原糸を用い、表2に示した延伸
・熱処理温度、延伸倍率で繊維化したこと以外は実施例
15と全く同様にしてPVAの延伸糸を得た。得られた
延伸糸の強度、伸度、水溶性、溶断温度、溶断までの最
大収縮率を表2に示す。
【0063】実施例19 実施例8で得られた紡糸原糸を用い、表2に示した延伸
・熱処理温度、延伸倍率で繊維化したこと以外は実施例
15と全く同様にしてPVAの延伸糸を得た。得られた
延伸糸の強度、伸度、水溶性、溶断温度、溶断までの最
大収縮率を表2に示す。
【0064】実施例20 実施例10で得られた紡糸原糸を用い、表2に示した延
伸・熱処理温度、延伸倍率で繊維化したこと以外は実施
例15と全く同様にしてPVAの延伸糸を得た。得られ
た延伸糸の強度、伸度、水溶性、溶断温度、溶断までの
最大収縮率を表2に示す。
【0065】実施例21 実施例11で得られた紡糸原糸を用い、表2に示した延
伸・熱処理温度、延伸倍率で繊維化したこと以外は実施
例15と全く同様にしてPVAの延伸糸を得た。得られ
た延伸糸の強度、伸度、水溶性、溶断温度、溶断までの
最大収縮率を表2に示す。
【0066】実施例22 実施例5で用いたPVAを溶融押出機を用いて240℃
で溶融混練し、溶融したポリマー流を紡糸頭に導き、ギ
ヤポンプで計量し、孔径0.4mm、ホール数24のノ
ズルから吐出させ1,000m/分の速度で巻き取った
(せん断速度2,000、ドラフト170)。得られた
紡糸原糸を1炉温度140℃、2炉温度170℃で2.
7倍(HDmax×0.77に相当)熱風延伸し、75d/24f
(83dtex/24f)の延伸糸を得た。得られた延伸糸の繊維断
面形状は均一な真円状であり、繊維表面を2000倍に
拡大して走査電子顕微鏡で観察したところ、0.5μm
以上の溝は全く認められなかった。延伸糸の紡糸性、水
溶性、溶断温度および溶断するまでの最大収縮率を表3
に示す。また、筒編み機を用いて該延伸糸から編み地を
作成したが編成工程で繊維のフィブリル化は発生してい
なかった。
【0067】
【表3】
【0068】実施例23 実施例22で得られた紡糸原糸を1炉130℃で2.7
倍(HDmax×0.77に相当)延伸し、2炉180℃で定長熱
処理し、75d/24f(83dtex/24f)の延伸糸を得た。
得られた延伸糸の断面形状は均一な真円状であり、繊維
表面を2000倍に拡大して走査電子顕微鏡で観察した
が、繊維表面には長さ0.5μm以上の溝は全く認めら
れなかった。延伸糸の紡糸性、水溶性、溶断温度、溶断
するまでの最大収縮率を表3に示す。また、筒編み機を
用いて該延伸糸から編み地を作成したが編成工程で繊維
のフィブリル化は発生しなかった。
【0069】実施例24 実施例5で用いたPVAを溶融押し出し機を用いて24
0℃で溶融混練し、溶融したポリマー流を紡糸頭に導
き、ギヤポンプで計量し、孔径0.25mm、ホール数
24のノズルから吐出させた糸条を190℃のヒートチ
ューブを用いて延伸すると同時に熱処理し、4,500
m/分の速度で巻き取った(せん断速度8,200、ド
ラフト290)。得られた延伸糸の繊維表面を2000
倍に拡大して走査電子顕微鏡で観察したところ、長さ
0.5μm以上の溝は全く認められなかった。延伸糸の
紡糸性、水溶性、溶断温度、溶断するまでの最大収縮
率、筒編性を表3に示す。
【0070】実施例25 実施例5で用いたPVAを溶融押出機で240℃で溶融
混練し、溶融したポリマー流を紡糸頭に導き、ギヤポン
プで計量し、孔径0.25mm、ホール数24のノズル
から吐出させ5,500m/分の速度で巻き取り、75
d/24f(83dtex/24f)の延伸糸を得た(せん断速度2
0,800sec-1、ドラフト140)。得られた繊維の
断面形状は均一な真円状であり、繊維表面を2000倍
に拡大して走査電子顕微鏡で観察したところ、長さ0.
5μm以上の溝は全く認められなかった。次いで筒編機
を用いて該延伸糸から編み地を作成したが、工程で繊維
のフィブリル化は全く発生しなかった。繊維の紡糸性、
水溶性、溶断温度および溶断までの最大収縮率、筒編性
を表3に示す。
【0071】比較例1〜5 実施例1で用いたPVAの代わりに表1に示すPVAを
用い、表2に示した紡糸温度、延伸倍率で繊維化したこ
と以外は実施例1と全く同様にしてPVAの延伸糸を得
た。紡糸性および得られた延伸糸の強度、伸度、水溶
性、溶断温度、溶断までの最大収縮率を表2に示す。比
較例1に示したPVAは、重合度が500を超えてお
り、溶融粘度が高すぎるために紡糸パックから十分にポ
リマーが吐出せず巻き取ることができなかった。一方、
重合度が低い比較例2のPVAを用いたものは、溶融粘
度が低すぎて曳糸性がなく捲き取れなかった。比較例3
では鹸化度が90%未満と低いためPVAが熱分解・ゲ
ル化して紡糸性が悪く捲き取れなかった。高融点の比較
例4では紡糸温度240℃ではポリマーが十分に溶融せ
ず粘度が高すぎて紡糸パックから十分にポリマーが吐出
しないため、紡糸温度を270℃にしたがこの温度では
PVAが熱分解するため、紡糸性が悪く巻き取ることが
出来なかった。比較例5ではPVAの結晶性が低下して
いるため、紡糸原糸が一部熱や吸湿で膠着して糸を解舒
することができなかった。また膠着した原糸の水溶性を
調べると原糸は膨潤して少しは溶解するが、継粉状にな
って完全には溶解しなかった。
【0072】比較例6 実施例1で用いたPVAを製造する際に、実施例1と同
様のメタノール洗浄を4回実施した後、さらにメタノー
ル/水=90/10の混合溶液で洗浄を3回実施したP
VAを用いて、実施例1と同様に紡糸した。ゲル化のた
め極短時間(約5分)しか、巻き取ることができなかっ
た。得られた原糸を実施例1と同様にして延伸し、90
℃の水中で1時間溶解処理を施したが、一部未溶解物が
残り完全には溶解しなかった(表2)。
【0073】比較例7 実施例1で用いたPVAを製造する際に、メタノール洗
浄を実施しなかったPVAを用いて実施例1と同様にし
て紡糸を試みたが、PVAが熱分解して捲き取りできな
かった(表2)。
【0074】比較例8、9 実施例1で用いたPVAの代わりに表1に示すPVAを
用い、表2に示した紡糸温度、延伸倍率で繊維化したこ
と以外は実施例1と全く同様にしてPVAの延伸糸を得
た。紡糸性および得られた延伸糸の強度、伸度、水溶
性、溶断温度、溶断までの最大収縮率を表2に示す。比
較例8に示したPVAは、カルボン酸およびラクトン環
の含有量が多いためPVAが熱分解・ゲル化して紡糸性
が悪く、極短時間(約5分)しか巻き取ることができな
かった。得られた原糸を実施例1と同様にして延伸し、
90℃の水中で1時間溶解処理を施したが、一部未溶解
物が残り完全には溶解しなかった。比較例9では紡糸温
度200℃では溶融粘度が高すぎて紡糸パックから十分
にポリマーが吐出しないため、240℃で紡糸すると熱
分解・ゲル化して紡糸性が悪く、極短時間(約5分)し
か巻き取ることができなかった。得られた原糸を実施例
1と同様にして延伸し、90℃の水中で1時間溶解処理
を施したが、一部未溶解物が残り完全には溶解しなかっ
た。
【0075】比較例10 実施例1で得られた紡糸原糸を用い、ホットローラー温
度40℃、ホットプレート温度150℃でHDmax×
0.95倍の延伸倍率でローラープレート延伸を行った
が、断糸が多く極短時間しか巻き取りができなかった。
得られた繊維は肉眼で見てもフィブリル化が発生してお
り、繊維表面を2000倍に拡大して走査電子顕微鏡で
観察したところ、長さ0.5μm以上の溝が多数認めら
れ、実用性のある繊維を得ることはできなかった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) D01F 6/50 D01F 6/50 Z

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 粘度平均重合度が200〜500、鹸化
    度が90〜99.99モル%であり、カルボン酸および
    ラクトン環を0.02〜0.15モル%含有し、融点が
    160℃〜230℃であるポリビニルアルコール(A)
    からなり、かつ(A)100質量部に対してアルカリ金
    属イオン(B)がナトリウムイオン換算で0.0003
    〜1質量部含有されていることを特徴とする水溶性熱可
    塑性ポリビニルアルコール繊維。
  2. 【請求項2】 ポリビニルアルコールが、炭素数4以下
    のα-オレフィン単位および/またはビニルエーテル単
    位を0.1〜20モル%含有する変性ポリビニルアルコ
    ールである請求項1に記載の水溶性熱可塑性ポリビニル
    アルコール繊維。
  3. 【請求項3】 ポリビニルアルコールがエチレン単位を
    4〜15モル%含有する変性ポリビニルアルコールであ
    る請求項2に記載の水溶性熱可塑性ポリビニルアルコー
    ル繊維。
  4. 【請求項4】 繊維表面に繊維軸方向に伸びる長さ0.5
    μm以上の溝を有していない請求項1〜3のいずれか1項
    に記載の水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール繊維。
  5. 【請求項5】 水溶解時の最大収縮率が70%以下であ
    る請求項1〜4のいずれか1項に記載の水溶性熱可塑性
    ポリビニルアルコール繊維。
  6. 【請求項6】 1,2−グリコール結合の含有量が1.2〜
    2.0モル%である請求項1〜5のいずれか1項に記載の水
    溶性熱可塑性ポリビニルアルコール繊維。
  7. 【請求項7】 粘度平均重合度が200〜500、鹸化
    度が90〜99.99モル%であり、カルボン酸および
    ラクトン環を0.02〜0.15モル%含有し、融点T
    mが160℃〜230℃であるポリビニルアルコール
    (A)であって、かつ(A)100質量部に対してアル
    カリ金属イオン(B)がナトリウムイオン換算で0.0
    003〜1質量部含有されているポリビニルアルコール
    を、口金温度がTm〜Tm+80℃、せん断速度(γ)が
    1,000〜25,000sec-1、ドラフトが10〜500の条件で
    溶融紡糸することを特徴とする水溶性熱可塑性ポリビニ
    ルアルコール繊維の製造方法。
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