JP2000224982A - 短鎖分岐脂肪酸非生産納豆菌 - Google Patents

短鎖分岐脂肪酸非生産納豆菌

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JP2000224982A
JP2000224982A JP11006658A JP665899A JP2000224982A JP 2000224982 A JP2000224982 A JP 2000224982A JP 11006658 A JP11006658 A JP 11006658A JP 665899 A JP665899 A JP 665899A JP 2000224982 A JP2000224982 A JP 2000224982A
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Abstract

(57)【要約】 【解決手段】 短鎖分岐脂肪酸生産酵素遺伝子であるロ
イシンデヒドロゲナーゼ遺伝子および/または分岐ケト
酸デヒドロゲナーゼ遺伝子の機能を低下または欠損さ
せ、それらの酵素活性を低下または消失させることによ
り短鎖分岐脂肪酸生産能を低下または消失させた納豆菌
を育種開発し、その納豆菌を用いて納豆を生産する方法
を提供する。 【効果】 本発明によれば、不快臭の一つであるムレ臭
が低下したまたはムレ臭のない高品質の納豆を生産する
ことができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、納豆の不快臭のひ
とつであるムレ臭の低下ないし消失システムに関するも
のである。特に本発明は、納豆のムレ臭の原因物質が短
鎖分岐脂肪酸(イソ酪酸、イソ吉草酸、2−メチル酪
酸)であることをはじめて見出しただけでなく、その生
成メカニズムをはじめて解明してそれに関与する酵素に
着目し、該酵素活性を遺伝子操作などによって低下ない
し失活せしめることによりムレ臭の低下ないし消失を確
認し、これらの新規知見に基きはじめて完成されたもの
である。さらに、納豆中の短鎖分岐脂肪酸のより好まし
い含有量についても明らかにし、ムレ臭が低下したまた
はムレ臭のない納豆を提供することを可能として、本発
明は完成されたものである。
【0002】すなわち、本発明は、納豆のムレ臭原因物
質である短鎖分岐脂肪酸(イソ酪酸、イソ吉草酸、2−
メチル酪酸)の生産能が低下または消失した納豆菌とそ
の開発方法ならびにその菌を用いたムレ臭低下納豆の生
産に関する。さらに詳しくは、短鎖分岐脂肪酸(short
branched chain fatty acids)生産酵素遺伝子であるロ
イシンデヒドロゲナーゼ(leucine dehydrogenase, EC
1.4.1.9)遺伝子および/または分岐ケト酸デヒドロゲ
ナーゼ(branched chain α−keto acid dehydrogenas
e, EC 1.2.1.25)遺伝子の機能を低下または欠損させ、
それらの酵素活性を低下または失活させることによる短
鎖分岐脂肪酸生産能を低下または消失させたムレ臭低下
納豆菌の開発方法とその菌ならびにその菌を用いて生産
されたムレ臭が低下したまたはムレ臭がない納豆の生産
に関する。さらに本発明は、納豆中の短鎖分岐脂肪酸の
より好ましい含有量についても検討し、ムレ臭が低下し
たまたはムレ臭のない納豆を提供し、さらに短鎖分岐脂
肪酸の含有量がより好ましくは100mg/100g納
豆以下である納豆を提供することにも関する。
【0003】
【従来の技術】納豆は、大豆を原料に納豆菌による発酵
を行って生産され、納豆菌がつくる粘質物と共に、その
臭いに特徴のある食品である。納豆中には、ピラジン
類、アセトイン、ジアセチル、酢酸、プロピオン酸、短
鎖分岐脂肪酸(イソ酪酸、イソ吉草酸、2−メチル酪
酸)、アンモニアなどを中心とした種々の揮発性成分が
含有されていることが知られているが(日本食品工業学
会誌、31巻、p.587−595(1984))、こ
れらの内のピラジン類、ジアセチルなどは、納豆好きの
消費者に好まれるいわゆる納豆臭の主成分であるといわ
れている。
【0004】その一方で、いわゆるアンモニア臭やムレ
臭は代表的な不快臭であるといわれており、なるべくこ
れらの不快臭の原因となる物質の含量の低い納豆を開発
することができれば、納豆の品質を向上させることがで
きると期待できる。
【0005】このような観点から、不快臭の一つである
アンモニア臭を抑制する方法としては、特開昭64−8
6854、特開平1−191655、特開平4−173
069、特開平6−269281、特開平8−1546
16、特開平8−275772などに開示の如く、発酵
中や保存中にアンモニアをあまり生産しないように改良
した納豆菌を開発し、その納豆菌を使用して納豆を生産
しようとする試みが多くなされてきている。これらの殆
どは、納豆菌が本来保有するプロテアーゼ活性を低下さ
せた納豆菌を開発し、このようなプロテアーゼ活性低下
納豆菌を用いて納豆を生産する方法であった。このよう
な方法により、アンモンニアの生産がある程度抑えら
れ、アンモニア臭が低下した納豆を製造できることが期
待されている。
【0006】しかし、納豆のもう一方の代表的不快臭で
あるムレ臭を抑えることについては、これまでに全く検
討されていなかった。むしろムレ臭の原因物質を特定す
ることも出来ておらず、従ってムレ臭を抑制する方法の
開発も大幅に遅れているのが現状であって、ムレ臭低下
納豆の製造方法の開発が望まれていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、納豆の有用
性、特に嗜好食品としてのみでなく健康保健食品として
の面からの有用性にも鑑み、更なる摂取量の増加を図る
目的でなされたものであり、その際において、従来未解
決のまま残されていたムレ臭の消失という技術課題を解
決する目的でなされたものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的
を達成するため、先ずはじめに、納豆におけるムレ臭の
原因物質を特定すべく各方面から鋭意検討を重ねた結
果、短鎖分岐脂肪酸(イソ酪酸、イソ吉草酸、2−メチ
ル酪酸)であることをはじめてつきとめた。そして、分
岐アミノ酸を出発物質とする短鎖分岐脂肪酸の生合成経
路について、図1のような仮説を設定した。そしてこの
仮説にしたがってロイシンデヒドロゲナーゼ/分岐ケト
酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を欠損させることにより、短
鎖分岐脂肪酸の少なくともひとつを生産できないように
育種した短鎖分岐脂肪酸非生産納豆菌を開発するのには
じめて成功し、その納豆菌を用いて納豆を製造したとこ
ろ、上記仮説どおり、ムレ臭が著しく低下した納豆であ
ることがはじめて確認できた。
【0009】その結果、ムレ臭の原因物質が短鎖分岐脂
肪酸、すなわちイソ酪酸、イソ吉草酸、2−メチル酪酸
であることをつきとめることができ、同時に上記仮説の
正しいことが確認された。そして、納豆菌においてロイ
シンデヒドロゲナーゼおよび/または分岐ケト酸デヒド
ロゲナーゼ遺伝子の機能を低下または欠損する手法も確
立して、ムレ臭の生産能が低下または消失した納豆菌と
いう従来未知の新規納豆菌を創製するのにはじめて成功
し、そして更に、このようにして開発した新規納豆菌を
用いることにより、ムレ臭の低下ないし消失した納豆と
いう新規食品の製造が可能であることも確認し、遂に本
発明の完成に至ったものである。さらに本発明者らは、
納豆中の短鎖分岐脂肪酸のより好ましい含有量について
も検討し、ムレ臭が低下したまたはムレ臭のない納豆で
あれば良く、さらに短鎖分岐脂肪酸の含有量がより好ま
しくは100mg/100g納豆以下であれば良いこと
を確認して、本発明を完成させることができた。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。本発明で育種改良に用いるもとの納豆菌には特に
制限はないが、通常納豆工業で使用されている発酵能力
に優れた納豆菌や、自然界から分離取得された納豆菌、
市販の納豆から分離した納豆菌、およびさらに改良を重
ねた優れた納豆菌を用いるのが望ましい。
【0011】納豆菌は、枯草菌Bacillus su
btilisに分類されているが、粘質物(糸引物質)
などの納豆としての特徴をつくり出すことができ、納豆
発酵での主体をなす細菌であって、また生育にビオチン
を要求するとされるなどの特性を有していることなどか
ら、Bacillus nattoに分類されたり、枯
草菌の変種としてBacillus subtilis
var.nattoあるいはBacillus su
btilis(natto)などと分類する文献もあ
る。納豆菌としては、例えばBacillus nat
to IFO 3009、Bacillus subt
ilis IFO 3335、同IFO3336、同I
FO 3936、同IFO 13169などがあるほ
か、上記した各種納豆菌が広く使用される。
【0012】具体的には、市販納豆から分離したO−2
株、市販の納豆菌高橋3号菌(T3株、東京農業大学菌
株保存室)、宮城野納豆菌(宮城野納豆製造所)等、各
種の納豆菌が適宜使用できる。
【0013】本発明では、ロイシンデヒドロゲナーゼ遺
伝子および/または分岐ケト酸デヒドロゲナーゼの遺伝
子を欠損させ、これらの酵素活性を失活させた納豆菌を
育種することにより短鎖分岐脂肪酸すなわちイソ酪酸、
イソ吉草酸、2−メチル酪酸を生産しない納豆菌を取得
するのである。育種の方法のひとつとしては、スタール
らがBacillus subtilisにおいて開発
した相同組換え能を利用した遺伝子失活法(J. Bacteri
ol., Vol.158, p.411-418(1984))を納豆菌用に改変し
た方法が用いられる。
【0014】本方法が納豆菌においても有効であること
は本発明者らにより初めて立証されたことである。本方
法の利点は狙いを定めた遺伝子だけを特異的に欠損させ
ることが可能であり、そのため納豆菌などの工業的に利
用される微生物においては、他の優れた特性は壊さず
に、欠点となっている性質に関与する遺伝子だけに変異
を起こさせて改良することができることである。また本
方法は、最終的には、育種のための遺伝子破壊などの目
的で納豆菌に導入した異種遺伝子を完全に除去すること
ができる方法であるため、異種蛋白質が発現されること
は全くなく、育種された菌は遺伝子組換え菌とはならな
いなどの、特に食品として利用する場合に重要な長所を
有している。
【0015】また、このような遺伝子組換え法を納豆菌
で利用するには、納豆菌への遺伝子導入のための形質転
換系が必要であるが、本発明者らは、形質転換能の向上
した納豆菌を取得することにより、納豆菌の実用的なレ
ベルの形質転換系を開発することも可能としており、こ
の形質転換系を利用してプラスミドベクターを納豆菌に
効率良く導入し、目的の遺伝子欠損株を育種することが
出来たのである。また、納豆菌の遺伝子組換え系の一つ
としては、Appl. Environ. Microbiol.,Vol.63., p.408
7-4089(1997)に記載のファージベクターを利用した形質
導入法(transduction)が既に開発されて
おり、本発明ではこの方法も利用される。
【0016】なお、上記のような遺伝子組換え技術以外
によっても、すなわち、既に目的遺伝子の機能が低下ま
たは欠損している納豆菌を自然界から選抜するいわゆる
スクリーニング法や、ニトロソグアニジン(NTG)や
エチルメタンスルホン酸(EMS)等による薬剤変異法
や、γ線や紫外線等を用いる方法などによってこれらの
遺伝子を変異させて機能を低下または欠損させるなど
の、従来から実施されているような他の方法によっても
育種が可能である。このような通常の変異手段によれ
ば、ロイシンデヒドロゲナーゼ及び/または分岐ケト酸
デヒドロゲナーゼの酵素活性が完全に失活した納豆菌以
外にも、これらの酵素活性が中間程度に低下した納豆菌
も取得することができる。このような納豆菌を用いて納
豆を生産する場合は、ムレ臭原因物質である短鎖分岐脂
肪酸の含有量が中間程度に低下した納豆が製造可能とな
る。本発明においては、このようにして得た短鎖分岐脂
肪酸すなわちイソ酪酸、イソ吉草酸、2−メチル酪酸の
生産能が低下ないし消失した納豆菌を使用する。
【0017】このようにして開発された短鎖分岐脂肪酸
非生産納豆菌の納豆生産への利用は、従来から実施され
ている方法を採用すれば良く、何ら制限がない。このよ
うにして短鎖分岐脂肪酸非生産納豆菌を用いて生産した
納豆と、従来から利用されている通常の納豆菌を用いた
納豆とを比較すると、短鎖分岐脂肪酸非生産納豆菌で製
造した納豆は、短鎖分岐脂肪酸をほとんど含有しておら
ず、いわゆるムレ臭がほとんどないことが確認される。
また、短鎖分岐脂肪酸の生産能が低下または消失した上
記の納豆菌を通常の納豆菌と適当な比率で混合して使用
して納豆の発酵をさせることによっても、納豆のムレ臭
原因物質である短鎖分岐脂肪酸の含有量が通常の納豆よ
りも低下しており、かつ任意の含有量の納豆を製造する
ことができる。
【0018】ここに開発された短鎖分岐脂肪酸非生産納
豆菌は、ロイシンデヒドロゲナーゼ遺伝子及び/または
分岐ケト酸デヒドロゲナーゼ遺伝子が欠損しており、こ
れらの酵素活性がほとんど消失した納豆菌である。この
ような納豆菌を用いて生産された納豆は、短鎖分岐脂肪
酸すなわちイソ酪酸、イソ吉草酸、2−メチル酪酸をほ
とんど含有しておらず、そしてムレ臭が低下した納豆で
あることが確認されたことから、納豆のムレ臭の原因物
質がイソ酪酸、イソ吉草酸、2−メチル酪酸などの短鎖
分岐脂肪酸であることが明白となり、ここに、これらの
短鎖分岐脂肪酸は納豆菌においては、図1に示すような
代謝経路により生産されることが初めて確認されたので
ある。
【0019】したがって、ムレ臭が低下ないし消失した
納豆を生産する目的で短鎖分岐脂肪酸(イソ酪酸、イソ
吉草酸、2−メチル酪酸の少なくともひとつ)の生産能
が低下または消失した納豆菌を開発するには、図1に示
すような代謝経路に係わる酵素群の内の一つもしくはそ
れ以上の酵素の活性を失活させれば良いことが示された
ことになる。そして本発明に係る納豆菌を育種するに
は、遺伝子組み換えの手法によるだけでなく、通常行わ
れている変異手段によればよく、あるいは、自然界から
分離してもよい。これらの短鎖分岐脂肪酸の生産能が低
下または消失した納豆菌を用いて納豆を製造する方法以
外にも、通常の納豆菌を用いた納豆の製造における発酵
条件を種々工夫するなどして短鎖分岐脂肪酸の生産を抑
制したり、さらに通常の納豆の発酵が終了した後に、納
豆を吸引−吸着などの物理的手段などによって処理する
などの方法によっても、納豆中のムレ臭原因物質である
短鎖分岐脂肪酸の含有量を低下または消失させて、ムレ
臭が低下したまたはムレ臭がない納豆を製造することが
可能である。さらに、納豆中の短鎖分岐脂肪酸の含有量
は、より好ましくは100mg/100g納豆以下であ
れば良く、上記の短鎖分岐脂肪酸の生産能が低下または
消失した納豆菌を用いて、あるいは発酵条件の改良や納
豆を物理的手段などによって処理することなどによって
製造することが可能となる。
【0020】
【実施例】以下、本発明の実施例を示す。
【0021】
【実施例1】使用菌株等 納豆菌O−2株は、市販納豆から常法により分離した納
豆菌である。納豆菌r22株はO−2株の形質転換能を
高めた変異株であり、後述の如く、O−2株をニトロソ
グアニジン(NTG)を用いて化学変異処理することに
より取得した。大腸菌BMH71−18mutS、枯草
菌ベクターpHY300PLKおよび大腸菌ベクターp
HSG399は宝酒造株式会社より購入した。培地は、
納豆試験法(光琳)p.85−97(1990)記載の
肉汁培地、胞子形成培地、NP再生培地等を用いた。た
だし、必要な場合は、テトラサイクリン(2μg/m
l)や短鎖分岐脂肪酸(イソ吉草酸、2−メチル酪酸、
イソ酪酸、各0.1mM)を添加した。
【0022】納豆菌r22株は、以下の方法で取得し
た。すなわち、市販納豆分離菌O−2株を、常法に準
じ、NTG変異処理(NTG濃度160μg/ml、3
0℃・1hr、生存率7.3%)した。その結果得られ
た変異処理菌(5×106個)を、Mol. Gen. Genet., V
ol.168, p.111(1979)に記載のBacillus su
btilisの方法に準じたプロトプラスト法により枯
草菌ベクターpHY300PLKで形質転換した。この
場合、形質転換後のプロトプラストの再生培地はNP再
生培地を用い、テトラサイクリン耐性を指標として数十
株の形質転換株を得た。これらの株は親株O−2株に比
較して形質転換能が向上していることが期待されたが、
これらの株にはベクターpHY300PLKが導入され
ており、このことが形質転換に利用する際に障害となる
のでベクターpHY300PLKを除去する必要があっ
た。
【0023】ベクターpHY300PLKの除去は、納
豆菌O−2株が胞子を形成する際にベクターpHY30
0PLKが欠落しやすい性質を本発明実施の中で見出
し、利用することにした。そこで、これらの形質転換株
の内30株を選択し、胞子形成培地で培養して胞子を形
成させた。その後、それぞれの形質転換株から得られた
胞子各16個を培養後、ベクターpHY300PLKの
保持の有無を調べた結果、30株中の21株についてベ
クターpHY300PLKの除去に成功したことが確認
できた。
【0024】さらに得られた21株のベクター除去株に
ついて、プロトプラストを作成し、ベクターpHY30
0PLKで再度形質転換し、親株O−2よりも形質転換
能が向上しているかを比較し、15株で形質転換能が向
上していることを確認した。さらに、これら15株につ
いて常法による納豆製造試験を行い、発酵能や品質評価
を比較検討した結果、外観上納豆となったものを製造で
きる株は4株だけであった。さらにこれら4株中2株は
納豆の香りで硫黄臭などの不快臭の強い品質の悪いもの
しか製造できず、また1株は糸引きが極端に悪くなった
ものであった。残る1株(r22株と命名)のみが9名
のパネラーによる評価の結果、親株O−2株を用いて製
造した納豆よりは少し品質が劣るものの、納豆として許
容される範囲の品質のものを製造できた。
【0025】r22株で製造した納豆を親株O−2株で
製造した納豆と比較した品質評価結果を表1に、またr
22株の形質転換能を親株O−2株と比較した結果を表
2に示した。なお、表1において、評価点は、対照(O
−2株で製造)を3とした5段階評価の結果で示した。
但し、総合評価は、対照(O−2株で製造)を0とした
±5段階評価の結果で示した。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】 ロイシンデヒドロゲナーゼ遺伝子欠損
株の分離 ロイシンデヒドロゲナーゼ遺伝子欠損株は、ロイシンデ
ヒドロゲナーゼ遺伝子(yqiT)内部の約0.24k
bのEcoRV断片を以下の方法で脱落させることによ
り分離した。
【0029】i)ベクター構築(図2、図3) Jpn. J. Genet. Vol.61, p.515-528に記載された、pH
Y300PLKの塩基配列を基に、5′−AAAAGA
ATTCCTGTTATAAAAAAAG−3′、およ
び、5′−AAAAGAATTCTATTATTGCA
ATGTGGT−3′の2種のオリゴDNAを調製し、
pHY300PLKを鋳型に用い、常法どおりPCRを
行い、pHY300PLK上のテトラサイクリン耐性遺
伝子全長を増幅すると共に両末端に、制限酵素EcoR
Iの認識サイトを導入した。得られたDNA断片を制限
酵素EcoRIで切断後、プラスミドpHSG399の
EcoRIサイトに導入し、プラスミドpHSG399
Tを得た。(図3)
【0030】アミノ酸配列のデータベースSWISS−
PLOTに登録されている(登録番号P54531)B
acillus subtilisのロイシンデヒドロ
ゲナーゼ遺伝子の塩基配列を基に、5′−GCCGGA
TCCATGGAACTTTTTAAATATAT−
3′、および、5′−GCCGGATCCTTAACG
TCTGCTTAATACAC−3′の2種のオリゴD
NAを合成し、O−2株の全DNAを鋳型に、通常の条
件でPCRを行い、ロイシンデヒドロゲナーゼ遺伝子の
オープンリーディングフレーム全長(1095塩基)を
増幅すると共に、両端に制限酵素BamHIの認識サイ
トを導入した。得られた断片をpHSG399のBam
HIサイトに導入し、pHSG399yqiTを得た。
(図2)
【0031】pHSG399yqiTを制限酵素Eco
RVで切断後、アガロース電気泳動した。2本生じるバ
ンドのうち、長いほうのバンド(約3.1kb)をアガ
ロースから回収し、セルフライゲーションし、大腸菌を
形質転換することによりpHSG399yqiT上のロ
イシンデヒドロゲナーゼ遺伝子のほぼ中央部に存在する
約0.24kbのEcoRV断片を脱落させたプラスミ
ドpHSG399yqiTΔEcoRVを得た。(図
2)
【0032】pHSG399yqiTΔEcoRVをB
amHIで切断し、電気泳動後、約0.86kbの断片
を回収し(この断片は、中央部の0.24kbEcoR
V断片が脱落したロイシンデヒドロゲナーゼ遺伝子)、
pHSG399TのBamHIサイトに導入した。得ら
れたプラスミドはpHSG399TyqiTΔEcoR
Vと命名し、以下の実験に供した。(図3)
【0033】ii)形質転換(図4、図5) プラスミドpHSG399TyqiTΔEcoRVを大
腸菌BMH71−18mutSを宿主にして調製した。
本大腸菌はrecA+株であるので、pHSG399T
yqiTΔEcoRVの2量体が得られる。得られた2
量体を用いて、納豆菌r22株を常法どおりプロトプラ
スト法により形質転換した。形質転換体の選択は、テト
ラサイクリン耐性を指標に行った。得られた形質転換体
では、染色体上のロイシンデヒドロゲナーゼ遺伝子とp
HSG399TyqiTΔEcoRV上のロイシンデヒ
ドロゲナーゼ遺伝子の間で1回又はそれ以上の回数の相
同組換えが起こり、pHSG399TyqiTΔEco
RVが染色体上のロイシンデヒドロゲナーゼ遺伝子に組
み込まれている。
【0034】複数の形質転換株より全DNAを調製し、
ロイシンデヒドロゲナーゼ遺伝子の増幅に使用した合成
DNAを用いPCRを行った。増幅された断片のパター
ンをアガロースゲル電気泳動により解析し、各形質転換
株で何回組換えが起こっているか確認した。そして、2
回組換えが起こっている株を選択し、yqiT7株と命
名した。(図5)
【0035】iii)形質導入(図5) 上記の形質転換に用いたr22株よりも、親株であるO
−2株の方が、品質のよい納豆を生産する能力があるた
め、yqiT7上に挿入されたpHSG399Tyqi
TΔEcoRVをAppl. Environ. Microbiol., Vol.63,
p.4087-4089(1997)記載の、納豆菌ファージφBN1
00を用いた形質導入法(transduction)
により、O−2株に導入した。得られた形質導入株をy
qiTt1株と命名した。
【0036】iv)脱落株の選択(図5) yqiTt1株上のpHSG399TyqiTΔEco
RV挿入は、染色体上で相同組換えが起こると脱落す
る。そして、脱落した株では、結果として、ロイシンデ
ヒドロゲナーゼ遺伝子上の0.24kbEcoRV断片
が脱落し、ロイシンデヒドロゲナーゼ遺伝子の欠損株が
取得できる。この相同組換えによる脱落株は、テトラサ
イクリンを含まない栄養培地上中で、約10世代液体培
養する事により、約0.1%の確率で得られる。得られ
た株をBacillus subtilis B2(以
下、B2株)と命名し、以下の実験に供した。本菌株
は、FERM BP−6605として、工業技術院生命
工学工業技術研究所特許微生物寄託センターに寄託し
た。
【0037】v)ロイシンデヒドロゲナーゼの酵素活性 納豆菌O−2株およびB2株を100mlの肉汁培地
(各0.1mMのイソ酪酸、イソ吉草酸、2−メチル酪
酸を含む)入りの坂口フラスコ中で37℃、振とう培養
した。定常期初期(OD660が約1)まで菌が生育し
た時点で、集菌し、10mMリン酸緩衝液(pH7.
2、0.002%β−メルカプトエタノールを含む)に
懸濁後、フレンチプレスにて、菌体を破砕した。菌体破
砕液を3.5krpm、15分遠心分離し、上清を粗酵
素液として用いた。
【0038】酵素活性は、J. Ferment. Bioeng., Vol.6
9, p.199-203(1990)に記載の方法に従って測定した。表
3に結果を示す。
【0039】
【表3】
【0040】O−2株では、活性が検出されたのに対
し、B2株では、活性が検出されず、B2株がロイシン
デヒドロゲナーゼ失活株となっている事が確認された。
【0041】vi)短鎖分岐脂肪酸要求性の確認 ロイシンデヒドロゲナーゼが失活すると、分岐アミノ酸
(ロイシン、イソロイシン、バリン)から、分岐脂肪酸
の合成ができなくなるため、最少培地上での生育に短鎖
分岐脂肪酸を要求するようになる(J. Biol. Chem., Vo
l.246, 5264-5272(1971))。
【0042】O−2株およびB2株について、短鎖分岐
脂肪酸を生育に要求するかどうかを、短鎖分岐脂肪酸
(イソ酪酸、イソ吉草酸、2−メチル酪酸、各0.1m
M)を含む最少培地および含まない最少培地上で確認し
た。尚、O−2株は、グルタミン酸を生育に要求するた
め、最少培地には10mg/lのグルタミン酸ナトリウ
ムを添加した。O−2株は短鎖分岐脂肪酸の有無に関係
なく生育したのに対し、B2株は、イソ酪酸、イソ吉草
酸、2−メチル酪酸の3種の短鎖分岐脂肪酸のうち、い
ずれか1つ以上を添加した培地でのみ生育した。本結果
により、B2株が、短鎖分岐脂肪酸合成能を失った短鎖
分岐脂肪酸要求株であることが確認された。
【0043】vii)納豆製造(官能検査、短鎖分岐脂肪
酸分析) B2株を用い、常法に従って納豆を製造し、納豆中の短
鎖分岐脂肪酸含量の測定を以下のごとく行った。対照と
しては、市販の宮城野納豆菌を用いた。
【0044】試作した納豆検体約20gをブレンダーで
粉砕した。粉砕した納豆約2gに4倍量の蒸留水を加
え、納豆を良く分散させた後、4℃で、約2時間放置
し、短鎖分岐脂肪酸を溶出させた。1.5mlのテスト
チューブに移し、4℃で、15000rpm、10分遠
心し、上清を回収した。得られた上清液を0.20μm
のセルロースアセテートフィルターで濾過し、HPLC
による短鎖分岐脂肪酸(イソ酪酸、イソ吉草酸、2−メ
チル酪酸)の分析に供した。なお、イソ吉草酸と2−メ
チル酪酸は、ピークが重なるため、両物質の総和をイソ
吉草酸として計算した。結果を表4に記す。
【0045】
【表4】
【0046】B2株を用いて製造した納豆には、短鎖分
岐脂肪酸はほとんど含まれていなかった。B2株を用い
て製造した納豆の品質は、専門のパネラーによる官能検
査の結果、外観、糸引きの強さ、味、ともに、宮城野納
豆菌を用いて作成した対照と同等のものであった。香り
に関しては、独特のムレ臭が抑えられていた。
【0047】
【実施例2】使用菌株等 納豆菌O−2株は、r22株、大腸菌BMH71−18
mutS、枯草菌ベクターpHY300PLK、大腸菌
ベクターpHSG399及び培地などは実施例1と同様
に実施した。
【0048】 分岐ケト酸デヒドロゲナーゼ遺伝子欠
損株の分離 分岐ケト酸デヒドロゲナーゼ遺伝子欠損株は、分岐ケト
酸デヒドロゲナーゼオペロン上のE2サブユニット遺伝
子(odb2)内部の約0.53kbのCfr10I断
片を以下の方法で脱落させることにより分離した。
【0049】i)ベクター構築(図6) Eur. J. Biochem., Vol.213, p.1091-1099(1993)に報告
されているBacillus subtilisの分岐
ケト酸デヒドロゲナーゼオペロン上のE2サブユニット
遺伝子(odb2)の塩基配列を基に、5′−GCCG
GATCCATGGCAATTGAACAAATGAC
−3′、および、5′−GCCGGATCCTTAGT
AAACAGATGTCTTCT−3′の2種のオリゴ
DNAを合成し、O−2株の全DNAを鋳型に、通常の
条件でPCRを行い、分岐ケト酸デヒドロゲナーゼのE
2サブユニットのオープンリーディングフレーム全長
(1275塩基)を増幅すると共に、両端に制限酵素B
amHIの認識サイトを導入した。得られた断片をpH
SG399のBamHIサイトに導入し、pHSG39
9odb2を得た。
【0050】pHSG399odb2を制限酵素Cfr
10Iで切断後、アガロース電気泳動した。2本生じる
バンドのうち、長いほうのバンド(約3.0kb)をア
ガロースから回収し、セルフライゲーションし、大腸菌
を形質転換することによりpHSG399odb2上の
E2サブユニット遺伝子のほぼ中央部に存在する約0.
53kbのCfr10I断片を脱落させたプラスミドp
HSG399odb2ΔCfr10Iを得た。
【0051】pHSG399odb2ΔCfr10Iを
BamHIで切断し、電気泳動後、約0.74kbの断
片を回収し(この断片は、中央部の0.53kbのCf
r10I断片が脱落したE2サブユニット遺伝子)、p
HSG399TのBamHIサイトに導入した。得られ
たプラスミドはpHSG399Todb2ΔCfr10
Iと命名し、以下の実験に供した。(図7)
【0052】ii)形質転換(図8) プラスミドpHSG399Todb2ΔCfr10Iを
大腸菌JM109を宿主にして調製した。得られたプラ
スミドを用いて、納豆菌r22株を常法どおりプロトプ
ラスト法により形質転換した。形質転換体の選択は、テ
トラサイクリン耐性を指標に行った。得られた形質転換
体では、染色体上のE2サブユニット遺伝子とpHSG
399Todb2ΔCfr10I上のE2サブユニット
遺伝子の間で1回相同組換えが起こり、pHSG399
Todb2ΔCfr10Iが染色体上のE2サブユニッ
ト遺伝子に組み込まれている。
【0053】複数の形質転換株より全DNAを調製し、
E2サブユニット遺伝子の増幅に使用した合成DNAお
よび、市販のM13用プライマーM4、RVを用いPC
Rを行った。増幅された断片のパターンをアガロースゲ
ル電気泳動により解析することにより、E2サブユニッ
ト遺伝子上のCfr10Iサイトの上流(5′末端側)
で組換えが起こっているのか、下流(3′末端側)で組
換えが起こっているのか確認した。E2サブユニット遺
伝子のCfr10Iサイトの下流で組換えが起こってい
る株1株を選択し、odb2−1株と命名した。
【0054】iii)形質導入(図8) 上記の形質転換に用いたr22株より、親株であるO−
2株の方が、品質のよい納豆を生産する能力があるた
め、odb2−1株の遺伝子上に挿入されたpHSG3
99Todb2ΔCfr10IをAppl. Environ. Micro
biol., Vol.63, p.4087-4089(1997)記載の納豆菌ファ
ージφBN100を用いた形質導入法(transdu
ction)により、O−2株に導入した。得られた形
質導入株をodb2t1株と命名した。
【0055】iv)脱落株の選択(図8) odb2t1株上のpHSG399Todb2ΔCfr
10I挿入は、染色体上で重複しているE2サブユニッ
ト遺伝子の5′末端からCfr10Iサイトの間で相同
組換えが起こると脱落する。そして、脱落した株では、
結果として、E2サブユニット遺伝子上の0.53kb
のCfr10I断片が脱落し、E2サブユニット遺伝子
の欠損株が取得できる。相同組換えによる脱落株は、テ
トラサイクリンを含まない栄養培地上中で、約10世代
液体培養する事により、約0.1%の確率で得られる。
得られた株をBacillus subtilis B
5(以下、B5株)と命名し、以下の実験に供した。本
菌株は、FERM BP−6606として、工業技術院
生命工学工業技術研究所特許微生物寄託センターに寄託
した。
【0056】v)短鎖分岐脂肪酸要求性の確認 分岐ケト酸デヒドロゲナーゼが失損すると、分岐アミノ
酸(ロイシン、イソロイシン、バリン)から、分岐脂肪
酸の合成ができなくなるため、最少培地上での生育に短
鎖分岐脂肪酸を要求するようになる(J. Biol. Chem.,
Vol.246, p.5264-5272(1971))。O−2株およびB5株
について、短鎖分岐脂肪酸を生育に要求するかどうか
を、短鎖分岐脂肪酸(イソ酪酸、イソ吉草酸、2−メチ
ル酪酸、各0.1mM)を含む最少培地および含まない
最少培地上で確認した。尚、O−2株は、グルタミン酸
を生育に要求するため、最少培地には10mg/lのグ
ルタミン酸ナトリウムを添加した。
【0057】O−2株は、短鎖分岐脂肪酸の有無に関係
なく生育したのに対し、B5株は、イソ酪酸、イソ吉草
酸、2−メチル酪酸の3種の短鎖分岐脂肪酸のうち、い
ずれか1つ以上を添加した培地でのみ生育した。本結果
によりB5株が、短鎖分岐脂肪酸合成能を失った短鎖分
岐脂肪酸要求株であることが確認された。
【0058】vi)納豆製造(官能検査、短鎖分岐脂肪酸
分析) B5株を用い、常法に従って納豆を製造し、納豆中の短
鎖分岐脂肪酸含量の測定を以下のごとく行った。対照と
しては、市販の宮城野納豆菌を用いた。
【0059】試作した納豆検体約20gをブレンダーで
粉砕した。粉砕した納豆約2gに4倍量の蒸留水を加
え、納豆を良く分散させた後、4℃で、約2時間放置
し、短鎖分岐脂肪酸を溶出させた。1.5mlのテスト
チューブに移し、4℃で、15000rpm、10分遠
心し、上清を回収した。得られた上清液を0.20μm
のセルロースアセテートフィルターで濾過し、HPLC
による短鎖分岐脂肪酸(イソ吉草酸、2−メチル酪酸、
イソ酪酸)の分析に供した。
【0060】なお、イソ吉草酸と2−メチル酪酸は、ピ
ークが重なるため、両物質の総和をイソ吉草酸をスタン
ダードとして計算した。結果を表5に記す。
【0061】
【表5】
【0062】B5株を用いて製造した納豆には、短鎖分
岐脂肪酸はほとんど含まれていなかった。B5株を用い
て作製した納豆の品質は、専門のパネラーによる官能検
査の結果、外観、糸引きの強さ、味、ともに、宮城野納
豆菌を用いて作成した対照と同等のものであった。香り
に関しては、独特のムレ臭が抑えられていた。
【0063】
【発明の効果】本発明により、納豆の不快臭のひとつで
あるムレ臭の原因物質である短鎖分岐脂肪酸の生産量の
非常に低い納豆菌を育種開発する方法が提供され、その
方法により開発された短鎖分岐脂肪酸非生産納豆菌を用
いて納豆を生産することにより短鎖分岐脂肪酸含量が非
常に低くムレ臭の著しく少ない納豆が製造可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】納豆菌における短鎖分岐脂肪酸の合成経路を示
す。
【図2】ロイシンデヒドロゲナーゼ欠損変異株取得の為
のベクター構築過程の概略(1)を示す。
【図3】ロイシンデヒドロゲナーゼ欠損変異株取得の為
のベクター構築過程の概略(2)を示す。
【図4】ロイシンデヒドロゲナーゼ欠損変異株取得の為
の脱落株の構築過程の概略(1)を示す。
【図5】ロイシンデヒドロゲナーゼ欠損変異株取得の為
の脱落株の構築過程の概略(2)を示す。
【図6】分岐ケト酸デヒドロゲナーゼ欠損変異株取得の
為のベクター構築過程の概略(1)を示す。
【図7】分岐ケト酸デヒドロゲナーゼ欠損変異株取得の
為のベクター構築過程の概略(2)を示す。
【図8】分岐ケト酸デヒドロゲナーゼ欠損変異株取得の
為の脱落株構築過程の概略を示す。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成11年4月19日(1999.4.1
9)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】特許請求の範囲
【補正方法】変更
【補正内容】
【特許請求の範囲】
【提出日】平成12年2月14日(2000.2.1
4)
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正内容】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、納豆の不快臭のひ
とつであるムレ臭の低下ないし消失システムに関するも
のである。特に本発明は、納豆のムレ臭の原因物質が短
鎖分岐脂肪酸(イソ酪酸、イソ吉草酸、2−メチル酪
酸)であることをはじめて見出しただけでなく、その生
成メカニズムをはじめて解明してそれに関与する酵素に
着目し、該酵素活性を遺伝子操作などによって低下ない
し失活せしめることによりムレ臭の低下ないし消失を確
認し、これらの新規知見に基きはじめて完成されたもの
である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0002
【補正方法】変更
【補正内容】
【0002】すなわち、本発明は、納豆のムレ臭原因物
質である短鎖分岐脂肪酸(イソ酪酸、イソ吉草酸、2−
メチル酪酸)の生産能が低下または消失した納豆菌とそ
の開発方法ならびにその菌を用いたムレ臭低下納豆の生
産に関する。さらに詳しくは、短鎖分岐脂肪酸(short
branched chain fatty acids)生産酵素遺伝子であるロ
イシンデヒドロゲナーゼ(leucine dehydrogenase, EC
1.4.1.9)遺伝子および/または分岐ケト酸デヒドロゲ
ナーゼ(branched chain α−keto acid dehydrogenas
e, EC 1.2.1.25)遺伝子の機能を低下または欠損させ、
それらの酵素活性を低下または失活させることによる短
鎖分岐脂肪酸生産能を低下または消失させたムレ臭低下
納豆菌の開発方法とその菌ならびにその菌を用いて生産
されたムレ臭が低下したまたはムレ臭がない納豆の生産
に関する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正内容】
【0009】その結果、ムレ臭の原因物質が短鎖分岐脂
肪酸、すなわちイソ酪酸、イソ吉草酸、2−メチル酪酸
であることをつきとめることができ、同時に上記仮説の
正しいことが確認された。そして、納豆菌においてロイ
シンデヒドロゲナーゼおよび/または分岐ケト酸デヒド
ロゲナーゼ遺伝子の機能を低下または欠損する手法も確
立して、ムレ臭の生産能が低下または消失した納豆菌と
いう従来未知の新規納豆菌を創製するのにはじめて成功
し、そして更に、このようにして開発した新規納豆菌を
用いることにより、ムレ臭の低下ないし消失した納豆と
いう新規食品の製造が可能であることも確認し、遂に本
発明の完成に至ったものである。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正内容】
【0019】したがって、ムレ臭が低下ないし消失した
納豆を生産する目的で短鎖分岐脂肪酸(イソ酪酸、イソ
吉草酸、2−メチル酪酸の少なくともひとつ)の生産能
が低下または消失した納豆菌を開発するには、図1に示
すような代謝経路に係わる酵素群の内の一つもしくはそ
れ以上の酵素の活性を失活させれば良いことが示された
ことになる。そして本発明に係る納豆菌を育種するに
は、遺伝子組み換えの手法によるだけでなく、通常行わ
れている変異手段によればよく、あるいは、自然界から
分離してもよい。これらの短鎖分岐脂肪酸の生産能が低
下または消失した納豆菌を用いて納豆を製造する方法以
外にも、通常の納豆菌を用いた納豆の製造における発酵
条件を種々工夫するなどして短鎖分岐脂肪酸の生産を抑
制したり、さらに通常の納豆の発酵が終了した後に、納
豆を吸引−吸着などの物理的手段などによって処理する
などの方法によっても、納豆中のムレ臭原因物質である
短鎖分岐脂肪酸の含有量を低下または消失させて、ムレ
臭が低下したまたはムレ臭がない納豆を製造することが
可能である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) (C12N 1/21 C12R 1:19) Fターム(参考) 4B020 LB14 LC01 LP18 LY04 4B024 AA05 BA77 CA03 DA07 EA04 GA11 HA01 4B065 AA19X AA19Y AB01 AC20 BA02 CA42

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ムレ臭が低下したまたはムレ臭のない納
    豆を生産する納豆菌。
  2. 【請求項2】 短鎖分岐脂肪酸非生産納豆菌。
  3. 【請求項3】 ロイシンデヒドロゲナーゼおよび/また
    は分岐ケト酸デヒドロゲナーゼの酵素活性を低下ないし
    失活せしめたことを特徴とする請求項1または2に記載
    の納豆菌。
  4. 【請求項4】 Bacillus subtilis
    B2(FERM BP−6605)またはBacill
    us subtilis B5(FERMBP−660
    6)。
  5. 【請求項5】 ロイシンデヒドロゲナーゼおよび/また
    は分岐ケト酸デヒドロゲナーゼの酵素活性を低下ないし
    失活せしめることを特徴とする請求項1〜4のいずれか
    1項に記載の納豆菌の育種方法。
  6. 【請求項6】 請求項1〜4のいずれか1項に記載の納
    豆菌を用いて生産された納豆。
  7. 【請求項7】 ムレ臭が低下したまたはムレ臭がないこ
    とを特徴とする納豆。
  8. 【請求項8】 短鎖分岐脂肪酸の含有量が100mg/
    100g納豆以下であることを特徴とする請求項7に記
    載の納豆。
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